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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002599
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質E4の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221227BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20221227BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221227BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G01N33/53 W ZNA
G01N33/543 575
G01N33/543 541B
G01N33/543 545A
G01N33/552
G01N33/543 501J
C07K16/18
C12N15/13
C12M1/34 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161201
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2019519414の分割
【原出願日】2017-10-12
(31)【優先権主張番号】16193587.9
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】514122524
【氏名又は名称】シュピーンゴテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベルクマン
(57)【要約】
【課題】個体のアポリポタンパク質E(ApoE)状態を判定するための単純かつコスト効率的な方法を提供すること。
【解決手段】血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片の検出方法を提供する。当該方法は、前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4またはその断片に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成させ、そして前記ApoE4-結合剤複合体を検出する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片のインビトロ(in vitro)検出方法であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化される
を含む方法。
【請求項2】
ApoE4またはその断片が前記固相に固定化されそして前記結合剤がApoE4に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ApoE4の断片が長さ少なくとも6アミノ酸を含み、ただしアミノ酸158(アルギニン)が前記断片中に含まれ、ここでアミノ酸158を含む配列を配列番号1と称する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ApoE4-結合剤複合体が定性的にまたは定量的に検出される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ApoE4-結合剤複合体の定量的検出が前記サンプル中のApoE4の濃度を示し、ここで該濃度が前記被験体がApoE4対立遺伝子についてホモ接合であるかヘテロ接合であるかの指標を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤が、少なくとも107 M-1、好ましくは108 M-1の結合親和定数を有する抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、好ましい親和定数が109 M-1より大きく、最も好ましくは1010 M-1より大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記結合剤が検出のために標識で標識され、ここで前記標識が化学発光標識、酵素標識、蛍光標識または放射性ヨウ素標識を含む群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ApoE4の検出が、ApoE4の検出レベルが一定の閾値より上であるときに、被験体がApoE4陽性であるかApoE4陰性であるかの分類に用いられ、ここで前記閾値が特定の内部陽性コントロールにより決定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固相がポリマー表面(例えばポリスチレン)、ガラス表面、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン、ナイロン)の群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記固相がガラスまたはポリマー表面の群より選択され、ここでポリマー表面が非限定的にポリスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(スチレン-オキシエチレン)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリグルタルアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリジメチルシロキサン、熱分解物質、ブロックコポリマー、並びに前記のもののコポリマー、シリコーンまたはシリカを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記血液サンプルが未飽和の固相と接触される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応液中の任意の安定化タンパク質が、非特異的結合部位をブロックしそしてApoE4のコンホメーションと相互作用することにより、血液サンプル中のApoE4およびその断片の固相への結合を安定化し、ここで前記安定化タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清由来のアルブミン、カゼイン、乳タンパク質、免疫グロブリンおよび安定化アミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、グリシン、イソロイシン、リジン、プロリン、セリン)を含む群より選択され、好ましくは安定化タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)である、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
安定化タンパク質としてのBSAの濃度が0~10%、好ましくは0.2~5%、最も好ましくは0.5~2.5%の範囲内である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、カチオン性界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB))、両イオン性界面活性剤(例えばCHAPS)および/または非イオン性界面活性剤(例えばTween-20、Triton X-100)の群より選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記Tween-20濃度が0.001~10%、好ましくは0.01~1%、最も好ましくは0.2~0.5%の範囲から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記Triton X-100濃度が0.001~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、最も好ましくは0.05~0.1%の範囲から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記血液サンプルが全血、血清およびクエン酸塩血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が生存しているヒトまたはヒト生物体、好ましくはヒト被験体であり、ここで前記被験体は健常、見かけ上健常、認識障害、認知症、特にADを罹患している、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
キットであって、
a. ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
b. 固相、
c. 界面活性剤を含有する反応緩衝液
を含んで成るキット。
【請求項20】
被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片のインビトロ検出および/または定量のための、請求項19に記載のキットの使用。
【請求項21】
上昇したApoE4レベルに関連した疾患もしくは状態のリスク層化のためのまたは治療的尺度の適用の層別化のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項22】
前記疾患または状態が、認知症および/またはアルツハイマー病(AD)を含む認識障害および神経変性疾患の群より選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項23】
一定の閾値より上のApoE4の上昇レベルがADを発症する高リスクの予測となる、ADを発症するリスクを検出するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ApoE4またはApoE4-結合剤複合体の存在が、ADを発症/発生するリスクと相関する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体のアポリポタンパク質E(ApoE)状態を判定するための単純かつコスト効率的な方法を提供する。そのような個体としては、限定されないが、認識機能障害、認知症および/またはアルツハイマー病(AD)を有する患者が含まれる。
【背景技術】
【0002】
遅発性アルツハイマー病(LOAD)や他の神経学的状態のリスクに関連付けられる様々な感受性遺伝子の中で、ApoEは強力な遺伝的決定因子として同定されている(Leduc他、2011)。ヒトAPOE遺伝子は、8.4%、77.9%および13.7%の世界共通の比率を有する3つの多型性対立遺伝子ε2、ε3およびε4として存在する。アポリポタンパク質E(ApoE)は299アミノ酸から構成され、血漿や脳脊髄液中のリポタンパク質と会合する(Leduc他、2011)。3つのApoEイソ型間の相違は、アミノ酸112と158に限定され(配列番号1)、その位置にシステインまたはアルギニンのいずれかが存在する:ApoE2 (cys112, cys158)、ApoE3 (cys112, arg158)およびApoE4 (arg112, arg158)。更に、ADの発症リスクはApoE4対立遺伝子と強い相関性がある。1つのApoE4対立遺伝子をもつ個体は、ADを発症するリスクが5~6倍以上高く、2つのApoE4対立遺伝子をもつ個体は、ADを発症するリスクが20倍以上高い。更に、1コピー(ヘテロ接合)または2コピー(ホモ接合)のApoE4対立遺伝子の存在は、後発性疾患を有する患者において非保有者に比較して約10~20年ほど早い発症年齢と相関する(Verghese他、2011, Weisgraber & Mahley 1996, Leduc他、2011)。ある研究は、中度認識障害(MCI)の臨床上の判定基準を満たすApoE4陽性である個体が、ApoE4陰性である個体よりも少ない年数の期間内にADに進行する可能性が大きいことを示唆している(Aggarwal他、2005)。従って、ApoE遺伝子型の決定を利用して、MCIからADへ進行するリスクが高いMCI患者を同定することができる。ApoE4保有者は、数種類のAD治療法、例えばアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるタクリンに対して応答しにくく、このことは、その患者について自身の遺伝子型を知る重要性を増大させる(Cacabelos他、2012)。
【0003】
さらに、ApoE状態は、他の疾患の予測に利用することができる〔(ApoE4イソ型を保有する個体は、心血管疾患(CVD)を発症するリスクが高く、前立腺癌のリスクも高い(米国特許第5,945,289号明細書)〕。他方、ApoE4遺伝子型は、C型肝炎感染の間の重篤な肝障害に対しては保護的であり、HIV感染個体においてウイルス負荷量を増加させて病気の進行を早め、そして単純ヘルペス感染によるADのリスクを上昇させることが示されている(WO03/060158 A2)。加齢に関係した黄斑変性症の治療も同様にApoE4イソ型から恩恵を受ける(Bakbak他、2015)。
【0004】
アルツハイマー病のリスクマーカーとしてのApoE遺伝子型は、Mayeux他、1998と米国特許第5,508,167号明細書中に最初に記載された。個体のApoEの遺伝子状態を種々の遺伝子型決定法により検出するためには様々な多種多様な可能性がある。
【0005】
ApoE4はapoE3やapoE2よりもタンパク質分解に対し高感受性であることが証明されており、apoE4のC末端切断形がAD患者やapoE4トランスジェニックマウスの脳の中に見つかっている。apoE4断片化はADの発病機序における早期の現象であると提唱されている(Brecht W.J.他、2004. “Neuron-specific apolipoprotein e4 proteolysis is associated with increased tau phosphorylation in brains of transgenic mice”. PNAS 24, 2527-2534)。
【0006】
数種の特定の、神経毒性の可能性がある、カルボキシ末端が切断されたapoE4断片がAD患者の脳内に見つかっている:
19 kDaの分子量を有する断片ApoE4 1-165(Huang Y.他、2001. “Apolipoprotein E fragments present in Alzheimer’s disease brains induce neurofibrillary tangle-like intracellular inclusions in neurons”. 98, 8838-8843)、
【0007】
断片ApoE 1-185(Dafnis I.他、2010. “An apolipoprotein E4 fragment can promote intracellular accumulation of amyloid peptide beta”, 42. 115, 873-884)、
【0008】
断片ApoE4 1-191およびApoE4 1-260 (Tanaka M. 2006. “Effect of carboxyl-terminal truncation on structure and lipid interaction of human apolipoprotein E4. Biochemistry”. 45(13): 4240-7)、
【0009】
断片ApoE4 1-272 (Chang他、2005. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. “Lipid- and receptor-binding regions of apolipoprotein E4 fragments act in concert to cause mitochondrial dysfunction and neurotoxicity”. 102(51): 18694-9)、
【0010】
断片ApoE4 1-259、ApoE4 1-229およびApoE4 1-202 (Dafnis I他、2015. “Influence of Isoforms and Carboxyl-Terminal Truncations on the Capacity of Apolipoprotein E To Associate with and Activate Phospholipid Transfer Protein”. Biochemistry. 54(38): 5856-66; Vezeridis他、2011. “Domains of apoE4 required for the biogenesis of apoE-containing HDL”. Ann Med. 43(4): 302-11)、
【0011】
断片ApoE4 1-231 (Chou C.Y.他、2006. “Structural and functional variations in human apolipoprotein E3 and E4”. J Biol Chem. 281 (19): 13333-44)、
【0012】
断片ApoE4 1-251およびApoE4 1-266 (Dong L.M. 1994. Human apolipoprotein E. “Roleof arginine 61 in mediating the lipoprotein preferences of the E3 and E4 isoforms”. J Biol Chem. 269(35): 22358-65)。
【0013】
更に、N末端切断ApoE4断片が研究されている:
断片ApoE4 72-299(Chou C.Y.他、2006. “Structural and functional variations in hunman apolipoprotein E3 and E4”. J Biol Chem. 281(19):13333-44; Chou C.Y.他、2005. “Structural variation in human apolipoprotein E3 and E4: secondary structure, tertiary structure, and size distribution”. Biophys J. 88(1): 455-66)。
【0014】
標準的遺伝子型決定法は、APOE遺伝子多型を分析するために末梢静脈血または口腔上皮細胞からの単離DNAを使用する。最も汎用される方法は、伝統的にPCR-RFLP(PCR-制限断片長多型)分析であり続けている。しかしながら、それは起こり得る不完全な制限酵素消化のために、時間を要し誤りを生じやすい方法である。PCRにプラスしたシーケンシングまたは質量分析法は効果的方法であるけれども、高価で精巧な機器を必要とする。ARMS-PCR(Amplification Refractory Mutation System-PCR)およびSSP-PCR(Simple Sequence Specific Primer-PCR)方法論は、アガロースゲルによる分析を必要とし、そのため同時に分析できるサンプルの数を制限する。蛍光融解曲線によるリアルタイムPCR検出は単純かつ迅速な方法であるが、プライマー二量体の形成が融解曲線の解釈を妨害しうる。蛍光融解曲線によるリアルタイムPCR検出、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)またはTaqMan(登録商標)の使用は、非常に有効であるが、費用のかかる方法である。ますます迅速なDNAベースのApoE試験法が考案されてきているが(例えばCalero他、2009;Zhong他、2016)、その全てが上述の技術に依存している。
【0015】
表現型をベースにしたアッセイも利用可能である:例えば等電点電気泳動または2D(二次元)ゲル電気泳動、これらはApoEイソ型の翻訳後変異のため非常にエラーを生じやすい方法である。別の方法は免疫化学アッセイであり、これは米国特許第6,027,896号明細書中に記載されており、イソ型E2とE3中に存在するがE4中にはない還元性システイン残基の存在に基づく方法である。体液中のApoEレベルは、市販のイムノアッセイ、通常はサンドイッチ型ELISAを使って測定することもできる。それらのアッセイは体液中の全ApoEを測定するか、ApoEのみを測定するか、両方を測定するかである。
【0016】
脳脊髄液(CSE)からのApoEがポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンおよびガラスチューブに結合することが知られている(Hasse他、2000; Holmquist 1982)。それらの結果を用い、Hesse他は、種々の実験におけるCSF中のApoEレベルの測定値の相違を説明し、それらの物質へのApoEの結合をイムノアッセイの妨害因子として定めた。Holmquist, 1982は、プラスチックチューブやガラスピペットへの抽出・精製した血清ApoCとApoEの結合を記載しており、サンプル調製のためのApoEイムノアッセイにおけるエラー確率を主張している。脱脂ヒト血清アポリポタンパク質がガラスやプラスチック表面に強固に吸着するという事実は、二重抗体イムノアッセイにおける誤差原因である(例えばSandwich ELISA; Holmquist 1982, Hogasen他、1993)。
【0017】
Hogasen他、1993は、クラステリンがポリスチレンマイクロプレートに強力に結合することを示した。このクラステリンの非特異的結合は、Tween-20の添加により増強される。彼らは、それらをポリスチレンマイクロプレート上で、血漿または血清サンプルと共にPBS-T(0.2%Tween-20を含むPBS)中で予備インキュベートする、単一抗体イムノアッセイを創製した。その後、彼らはクラステリン特異抗体を使って固定化されたクラステリンを検出し、定量した。
【0018】
本発明は、ApoE、特にApoE4のポリマー表面やガラス表面に強力に結合する能力を利用し、血液、血漿または血清サンプルを使った単純でかつコスト効率の高い単一抗体イムノアッセイ法を創製した。
【0019】
上述したように、Hesse他. 2000は、直接適用したCSFからのApoEがポリマーまたはガラスチューブに結合し、溶出後に検出できる(例えばSDS溶出および後続のウエスタンブロット分析により)ことを示した。しかしながら、CSF中の平均総タンパク質濃度は0.15~0.45 mg/mLである。対比して、血漿または血清は、CSFに比較して100~500倍高いタンパク質濃度、60~80 mg/mLを有する。イムノアッセイでは、結合表面を0.5~2 mg/mLの濃度のブロック用タンパク質(例えばウシ血清アルブミン)で飽和させることにより、表面へのサンプルタンパク質の非特異的結合を防止するのが一般的である。血清中のApoE濃度は30~400μg/mL(Bury他、1986)の範囲内である。従って、血漿/血清中の推定ApoE4量は全血漿/血清タンパク質のわずか0.02~0.5%であり、ApoE4に特異的なシグナルを測定することができるとは予想されないだろう。驚くべきことに、本発明者らは、血漿、血清または全血からであっても、ApoE4が、サンプル中の総タンパク質濃度が200~5000倍高い存在下でも、固体表面に特異的にかつ定量できるように結合することを実証することができた。
【0020】
同様に驚くべきことに、ApoE4は、反応緩衝液中ブロック用タンパク質、例えばBSAの存在(例えば0.5~2 mg/mLウシ血清アルブミン(BSA))存在下で固相表面に特異的にかつ定量可能なように結合する。Hesse他は、ApoE4が0.2%Tween-20の存在下でポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびガラスチューブに結合することを示した(Hesse他.2000)。
【0021】
ポリマー表面やガラス表面へのApoE4の特異的結合を強化する因子は、界面活性剤(洗剤)の使用である。界面活性剤は、イムノアッセイにおいて固相へのサンプルタンパク質の非特異的結合を防止するために汎用されている。Hesse他は、ApoEが0.2%Tween-20の存在下でポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびガラスチューブに結合することを示した(Hesse他. 2000)。
【発明の概要】
【0022】
本発明の主題は、(a) ApoE4状態の同定および/または(b) 血液サンプル中のApoE4レベルの定量のための方法である。個体がApoE4陽性であるかApoE4陰性であるかの決定は、(a) 被験体の血液サンプルがある一定の閾値より上のApoE4レベルを有することに依存し、その閾値は内部カットオフコントロールにより限定される。血液サンプル中のApoE4レベルの定量は、該サンプルを内部標準と一緒に試験し、そして検量線を用いてApoE4濃度を算出することにより達成されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A図1Aは、既知ApoE遺伝子型を有する血漿サンプルの測定。血漿ApoE4濃度は遺伝子状態と相関する(ApoE4陰性サンプルでは低い値、ApoE4陽性サンプルでは高い値;統計分析:Mann-Whitney検定)。
図1B図1Bは、遺伝子型によるApoE4アッセイのROC分析(AUC=曲線下面積)。
図2図2は、界面活性剤の添加の有無のもとでの異なる材料のチューブ中でのプレインキュベーション後のApoE4レベルの測定(PS=ポリスチレン、PP=ポリプロピレン、PET=ポリエチレンテレフタレート)。
図3図3は、界面活性剤(Triton X-100)有無でのMTPの前処理後のMTP中のApoE4レベルの測定。アッセイ緩衝液はTriton X-100(0.05%)を含むか、または全く界面活性剤を含まず(0%)、サンプルを一段階法で測定した。カットオフコントロール(A)、2つのApoE4陽性サンプルD1(B)とD2(C)並びにApoE4陰性サンプルD3(D)が図面に示される。
図4図4は、一段階と二段階ApoE4アッセイの比較。破線はカットオフコントロールの値を示す。そのようなカットオフより下の全てのサンプルはApoE4陰性であり、該閾値より上の全てのサンプルはApoE4陽性である。
図5図5は、BSAの存在下(1%)/非存在下(0%)での固相へのApoE4結合の分析。破線は各アッセイ形式でのカットオフコントロールの値(C)を示す。
図6図6は、0.01および21.87 μg/mLの範囲内のApoE4標準の線形回帰。
図7図7A-Bは、タンパク質溶液(ウシ血清アルブミンまたはヒト血清)による固相の前処理後のApoE4レベルの測定。(A)ApoE4陽性およびApoE4陰性EDTA血漿サンプルの測定。(B)組換えApoE4溶液の測定。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の詳細な説明
本発明の主題は、被験体の血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片の(in vitro)検出方法であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、
前記サンプルを同時にまたは連続的に、ApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成させ、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b. 前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化されるか、またはApoE4が前記固相に固定化され前記結合剤がApoE4に結合される
を含む方法に関する。
【0025】
本発明の主題は、被験体の血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片の(in vitro)検出方法であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、
前記試料を同時にまたは連続的に、ApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成させ、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b. 前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体が前記固相に固定化され、ここで前記固相はいずれの結合剤または捕捉分子でも被覆されず、そしてApoE4またはApoE4-結合剤複合体の前記固相への結合が界面活性剤の存在下で起こる
を含む方法に関する。
【0026】
本発明の局面では、ApoE4-結合剤複合体はApoE4を経由して固相に固定化され、特にApoE4が固相に固定化されそして結合剤がApoE4に結合される。
【0027】
本発明の主題は更に、固相への分析対象(ApoE4またはその断片)の結合、特に界面活性剤(洗剤)の存在下での結合と、検出可能標識を有するApoE4特異的結合剤による、この固定化された分析対象の検出に基づいたアッセイである。
【0028】
前記ApoE4特異的結合剤は直接的または間接的のいずれかで標識することができる。
【0029】
本発明の主題はまた、ApoE4またはその断片の検出方法であって、被験体の血液サンプルを固相と接触させ、それにより前記固相にApoE4を固定化する方法である。
【0030】
血液サンプルは全血、血清および血漿の群より選択される。血漿は本明細書中、EDTA血漿、ヘパリン血漿および/またはクエン酸塩血漿として定義される。
【0031】
本発明においては、用語「ApoE4の断片」は、ApoE4の短い切断変異体および切断されたApoE4タンパク質もしくはペプチドまたはApoE4の一部分を包含する(Rohn他、2013;Love他、2015)。
【0032】
それらの断片は、アミノ酸158(アルギニン、R)が前記断片中に含まれることを前提として長さ少なくとも6アミノ酸を含んで成り、ここでアミノ酸158を含む配列が配列番号1を指す。
本発明の特定の実施形態では、前記断片が配列番号1~15の配列を含む群より選択される。
【0033】
本明細書中で用いる場合の用語「被験体」とは、生存しているヒトまたは非ヒト生物体を指し、好ましくはヒト被験体を指し、ここで該被験体は健常、見かけ上健常、認識障害を罹患している、認知症を罹患している、特にアルツハイマー病(AD)を罹患している。
【0034】
本発明に係る方法の一実施形態では、固相へのApoE4またはその断片の結合は、前記固相にApoE4またはその断片を結合/連結させることのできる連結分子の相互作用なしに起こる。
【0035】
本発明に係る方法の別の実施形態では、固相をサンプルと接触させる時、前記接触は前記連結分子の相互作用を伴わずに起こる。
本発明の方法に係る別の実施形態では、固相へのApoE4またはその断片の結合が界面活性剤の存在下で起こる。
【0036】
本明細書中で用いられる界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、カチオン性界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB))、両イオン性界面活性剤(例えばCHAPS)および非イオン性界面活性剤(例えばTween-20、Triton X-100)が挙げられる。
【0037】
非イオン性界面活性剤の例は、エポキシ-脂肪酸エステル、例えばTween-20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween-80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Triton(アルキルポリエーテル-アルコール混合物、例えばTriton X-100、Triton X-114)、Brij 35およびBrij 58(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、Nonidet P-40(ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル)、ルブロールPX(ポリエチレンオキシド-アルキルエーテル付加物)、Berol EMU 043(10オキシエチレン単位を有するC16、C18脂肪アルコール);デオキシ-BIGCHAP、ジギトニン、HECAMEG、N-D-グルコ-N-メチルアルカンアミド(MEGA-8, 9, 10)、n-オクチル-D-グルコピラノシド、rac.-1-オレオイル-グリセロール、Pluronic(登録商標)F-68、モノラウリン酸スクロース、キラヤ皮からのサポニン;等が挙げられる。
【0038】
両イオン性界面活性剤としては、限定されないが、CHAPS、CHAPSO、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、スルホベタインSB 12、およびスルホベタインSB 14が挙げられる。
【0039】
カチオン性界面活性剤の例としては、非限定的に、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB)等が挙げられる。
【0040】
アニオン性界面活性剤の例としては、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、1-デカンスルホン酸ナトリウム塩、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム塩無水物、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム無水物、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム塩無水物、1-ノナンスルホン酸ナトリウム塩、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、1-ペンタンスルホン酸ナトリウム塩無水物等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係る方法の一実施形態では、試薬中の界面活性剤濃度は好ましくは0.0001~10%w/vであり、特に0.01~1%w/vである。当業者は、各々の特定の界面活性剤について特定の濃度範囲を適用する検討をできることを理解している。
【0042】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、Tween-20が0.001~10%、好ましくは0.01~1%、最も好ましくは0.2~0.5%の濃度で用いられる。本発明に係る方法の別の実施形態では、Triton X-100 は0.001~0.5%の濃度、好ましくは0.01~0.2%、最も好ましくは0.05~0.1%の濃度で用いられる。
【0043】
本発明では、界面活性剤がApoE4またはその断片を固相に結合させるのに必要であるが、それらは連結または結合分子としては作用しない。界面活性剤を含まないサンプル緩衝液中では固相へのApoE4の結合が起こらないので、反応緩衝液中に界面活性剤が必ず存在しなければならない。
【0044】
本発明の方法に係る好ましい実施形態では、結合剤はApoE4またはその断片と特異的に結合する。
本発明に係る方法の更なる実施形態では、結合剤が、少なくとも107 M-1、好ましくは108 M-1の結合親和定数を有する抗体または機能性抗体断片または非IgG足場であり、好ましい親和定数は109 M-1より大きく、最も好ましくは1010 M-1より大きい。
【0045】
本発明において、「結合剤分子」は、サンプルからの標的分子または着目の分子、即ち分析対象(本発明ではApoE4およびその断片)を結合するために用いることができる分子である。結合剤分子は、空間的におよび表面特徴の面の両方において、例えば表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存否に関して、標的分子または着目の分子を特異的に結合するのに適切なように成形されなければならない。ここで、前記結合は例えば、捕捉分子と標的分子または着目の分子との間のイオン結合、ファンデルワールス力結合、パイ-パイ(π-π)結合、シグマ-パイ(σ-π)結合、疎水性結合または水素結合相互作用あるいは前記相互作用の2以上の組み合わせにより媒介されてよい。本発明の下では、結合剤分子は核酸分子、炭水化物分子、RNA分子、タンパク質、抗体、ペプチドまたは糖タンパク質を含む群より選択することができる。好ましくは、結合剤分子は抗体であり、該抗体は、標的または着目の分子に対して十分な親和性を有する抗体断片を含み、そして組換え抗体または組換え抗体断片、並びに少なくとも12アミノ酸の長さを有する変異体鎖より誘導された前記抗体もしくは断片の化学的および/または生化学的に改変された誘導体を含む。
【0046】
ApoE4抗体は従来より既知の形態を有してよい。その例はヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体である。本発明の好ましい実施形態では、本発明に係る抗体は、組換え生産された抗体、例えば典型的な全長免疫グロブリンであるIgG、または重鎖および/または軽鎖のF可変ドメインを少なくとも含む抗体断片、例えば化学的に連結された抗体(抗原結合性断片)、例えば非限定的にFab断片、例えばFab minibody、一本鎖Fab抗体、エピトープタグを有する一価Fab抗体、例えばFab-V5Sx2;CH3ドメインで二量化された二価Fab(mini抗体);二価Fabまたは多価Fab、例えば異種ドメインの補助による多量化によって形成されたもの、例えばdHLXドメインの二量化によって形成されたもの、例えばFab-dHLX-FSx2;F(ab’)2断片、scFv断片、多量化された多価および/または多特異性scFv断片、二価および/または二特異性ダイアボディ、BiTE(登録商標)(bi-specific T-cell engager)、三機能性抗体、多価抗体、例えばG以外のクラスからのもの;単一ドメイン抗体、例えばラクダ科もしくは魚類免疫グロブリンより誘導されたナノボディ、および多数の他のものである。
【0047】
抗ApoE4抗体に加えて、別のバイオポリマー足場(骨格)が標的分子と複合体形成することが当業界で周知であり、高度に標的特異的なバイオポリマーの作製に利用されている。その例はアプタマー、スピーゲルマー、アンチカリンおよびコノトキシンである。
【0048】
非Ig足場は、タンパク質足場であってよく、それらはリガンドまたは抗原を結合できるので抗体模倣物(ミミック)として使用することができる。非Ig足場は、テトラネクチンベースの非Ig足場(例えばUS 2010/0028995に記載)、フィブロネクチン足場(例えばEP 1266 025に記載)、リポカリンベースの足場(例えばWO 2011/154420に記載)、ユビキチン足場(例えばWO 2011/073214に記載)、トランスフェリン足場(例えばUS 2004/0023334に記載)、プロテインA足場(例えばEP 2231860に記載)、アンキリン反復配列ベースの足場(例えばWO 2010/060748に記載)、Fyn SH3ドメインベースの足場(例えばWO 2011/023685に記載)、マイクロタンパク質(好ましくはシステインノットを形成するマイクロタンパク質)足場(例えばEP 2231860EGFRに記載)、EGFR-Aドメインベースの足場(例えばWO 2005/040229に記載)およびKunitzドメインベースの足場(例えばEP 1941867に記載)を含んで成る群より選択することができる。非Ig足場は、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドアプタマーであってよい。アプタマーは一般的に、それらを大規模なランダム配列プールから選別することにより作成することができ、オリゴヌクレオチドの短鎖(DNA、RNAまたはXNA;Xu他、2010;Deng他、2014)またはタンパク質足場に付着された短鎖可変ペプチドドメイン(Li他、2011)のいずれかである。
【0049】
ApoE4またはその断片のレベルを決定するのに用いることができる結合剤は、少なくとも107 M-1、好ましくは108 M-1のApoE4に対する親和定数を示し、好ましい親和定数は109 M-1超、最も好ましくは1010 M-1超である。当業者は、高用量の化合物を適用することによってより低い親和性を補うと考えられることを知っており、この尺度は本発明の範囲外につながるものではない。
【0050】
本発明の方法のより好ましい実施形態では、結合剤は、ApoE4に結合させた後に検出するために検出可能な標識で標識される。
本発明の好ましい実施形態では、結合剤の標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群より選択される。次いで分析対象に結合した標識抗体の量が適当な方法により測定される。
【0051】
本発明に係る方法の別の実施形態では、結合剤の標識は、蛍光色素または化学発光色素、特にシアニン型色素と組み合わせた、希土類クリプテートまたは希土類キレートを含む群より選択される。
【0052】
ApoE4またはその断片のレベルを決定する好ましい検出方法は、様々な形式のイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、エンザイムリンクドイムノアッセイ(ELISA)、Luminexベースのビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、高速試験形式、例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験を含む。
【0053】
本発明によれば、蛍光ベースのアッセイは色素の使用を含み、色素としては、例えばFAM(5-もしくは6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、シアニン色素、例えばCY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7、キサンテン、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4',5’-ジクロロ-2',7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY色素、例えばBODIPY TMR、オレゴングリーン、クマリン、例えばウンベリフェロン、ベンズイミド、例えばHoechst 33258;フェナントリジン、例えばテキサスレッド、ヤキマイエロー、アレキサFluor、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素等がある。
【0054】
本発明の局面では、化学発光ベースアッセイは、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology中に化学発光材料について記載された物理学理論に基づいた、色素の使用を含む。好ましい化学発光色素はアクリジニウムエステルである。
【0055】
化学発光標識は、アクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識を含むステロイド標識等であることができる。
【0056】
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ等であることができる。
【0057】
本発明に係る方法の別の実施形態では、固相は、ポリマー表面(例えばポリスチレン)、ガラス表面、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン、ナイロン)の群より選択される。本発明に係る方法の別の特定の実施形態では、固相はガラスまたはポリマー表面の群より選択され、ここでポリマー表面は非限定的に、ポリスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(スチレン-オキシエチレン)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリグルタルアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリジメチルシロキサン、熱分解物質、ブロックコポリマー、並びに前記のもののコポリマー、シリコーンまたはシリカ、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン、ナイロン)を含む。
【0058】
本発明の目的を達成するのに役立つ限り、そのような表面/固相に任意の材料を使用できる。好ましい表面の例としては、ポリマー表面とガラス製表面が挙げられる。ポリマー表面の群は、非限定的に、ポリスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(スチレン-オキシエチレン)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリグルタルアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリジメチルシロキサン、熱分解物質、ブロックコポリマー、並びに前記のもののコポリマー、シリコーンまたはシリカを含む。好ましい表面材料はポリスチレンである。
【0059】
ポリスチレンは、製造業者により容易に誘導体化できる疎水性ポリマーである。EIA用のマイクロタイタープレートは一般に、1) 未改質ポリスチレン(例えばpureGrade BRANDplate(登録商標))、2) イオン化された疎水性表面を有する改質ポリスチレン(例えばlipoGrade BRANDplate(登録商標)、Thermo Scientific Microlite 1+プレート)、3) IgG結合用に最適化されたポリスチレン(親水性と疎水性;例えばGreiner High Bindingプレート、immuneGrade BRANDplate(登録商標))、または3) 親水性または低結合性表面を有するポリスチレン(例えばThermo Scientific MultiSorpプレート、hydroGrade BRANDplate(登録商標))製である。ポリスチレン製マイクロタイタープレートを含むポリマー表面は、エネルギー粒子(イオン、電子、高速中性子および/またはラジカル)によりおよび/または紫外光子によるか、または該表面の所もしくはその付近での化学反応による(例えば酸での処理またはオルガノシランでの処理)かいずれかにより、改質される(Hegemann他、2003;WO 9203732;DE 2018523 A1)。本発明に好ましい固相は、高結合性ポリスチレンマイクロプレートである。
【0060】
本発明の別の実施形態では、固相は未改質(純粋)であるか、または親水性、疎水性であるように改質されるか、またはエネルギー粒子(イオン、電子、高速中性子および/またはラジカル)によるおよび紫外光子による物理衝撃により、および/または該表面の所もしくはその付近での化学反応(例えば酸処理またはオルガノシラン処理)により、IgGの結合(高速結合、親水性および疎水性結合)のために最適化される。
【0061】
本発明の方法の別の特定の実施形態では、固相表面は適当な形状、例えばプレート、マルチウェルプレート、チューブまたはビーズ、シート、フィルム、微粒子、磁性もしくは非磁性粒子の形状において使用される。本発明の好ましい実施形態では、固相表面の形状はマイクロタイタープレートである。
【0062】
本発明の方法の更に特定の実施形態では、被験体の血液サンプルが未飽和の固相と接触される。これは、サンプルと接触される時点での固相が、ブロック剤および/または結合剤分子および/または安定化タンパク質および/または連結用分子で飽和/被覆されていないことを意味する。
【0063】
しかしながら、ブロック剤または安定化タンパク質は、サンプルが既に固相と接触された時に固相へのApoE4またはその断片の現存の結合および結合剤への結合をサポートすることができ、このことは、安定化/ブロック用の分子/タンパク質が、固定化されたApoE4-結合剤複合体の検出期間の間(請求項記載の工程b)の間)には存在することができることを意味する。
【0064】
本発明の局面では、用語「ブロック剤(blocking agent)」は、限定されないが、タンパク質溶液(例えばウシ血清アルブミン、ヒト血清由来のアルブミン、乳タンパク質、カゼイン、フィッシュゼラチンの溶液)または全血清(例えば仔牛血清)を含む。
【0065】
本発明の状況では、「捕捉分子」は、サンプルから標的分子または着目の分子、すなわち分析対象(すなわち本発明ではペプチド(1または複数))を結合させるのに用いることができる分子である。従って、捕捉分子は、空間的にも表面特徴の面でも、例えば表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存否の面でも、標的分子または着目の分子を特異的に結合するのに適切なように、形作られなければならない。ここで、前記結合は例えば、捕捉分子と標的分子または着目の分子との間のイオン結合、ファンデルワールス力結合、パイ-パイ(π-π)結合、シグマ-パイ(σ-π)結合、疎水性結合または水素結合相互作用あるいは前記相互作用の2以上の組み合わせにより媒介されてよい。本発明の状況下では、結合剤分子は核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチドまたは糖タンパク質を含む群より選択することができる。好ましくは、捕捉分子は抗体であり、該抗体は、標的または着目の分子に対して十分な親和性を有する抗体断片を含み、そして組換え抗体または組換え抗体断片、並びに少なくとも12アミノ酸の長さを有する変異体鎖より誘導された前記抗体もしくは断片の化学的および/または生化学的に改変された誘導体を含む。
【0066】
本発明に係る方法の別の実施形態では、安定化タンパク質は、血液サンプル中のApoE4またはその断片の固相への既存結合を補助し、ここで前記タンパク質は場合により反応緩衝液中に添加することができる。
【0067】
イムノアッセイの反応緩衝液は一般に、安定化/ブロック用タンパク質(例えばウシ血清アルブミン、ヒト血清由来のアルブミン、乳タンパク質、カゼイン、ゼラチン、免疫グロブリン)を含有する。それらの追加のタンパク質は、固相への非特異的結合を防止し、かつ結合相手(結合剤と抗原)を安定化し、更には結合剤-抗原相互作用を安定化する。驚くべきことに、そのような安定化/ブロック用タンパク質の反応液への添加は、固相へのApoE4またはその断片の結合を強化する(実施例6参照)。
【0068】
本発明の方法の別の一実施形態では、安定化タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清由来のアルブミン、カゼイン、乳タンパク質、免疫グロブリン、安定化アミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、グリシン、イソロイシン、リジン、プロリン、セリン)等から成る群より選択される。好ましい安定化タンパク質はウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0069】
本発明の方法の別の実施形態では、BSAの濃度が0~10%、好ましくは0.2~5%、最も好ましくは0.5~2.5%の範囲内である。
【0070】
本発明の方法の別の実施形態では、血液サンプル中のApoE4以外の別のタンパク質の存在は、ApoE4またはそれの断片の検出に何ら影響を及ぼさない。
【0071】
本発明に係る方法の別の実施形態では、被験体の血液サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4にまたはその断片に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と接触させることは、一段階または二段階法で行われる(実施例5参照)。
【0072】
本発明においては、用語「一段階法」とは、固相へのApoE4またはその断片の固定化と、標識結合剤(例えば抗体)とApoE4またはその断片との結合とが、同一容器中で同時に実施されることを意味する。この種の手順の間に、単独のApoE4がまたはその後特異的結合剤および/またはApoE4-結合剤複合体が固相に固定化される。
【0073】
本明細書中で用いる時、「二段階法」とは、固相へのApoE4またはその断片の結合と、特異的結合剤によるApoE4またはその断片との結合が、段階的な時点で起こり、任意にインキュベーション段階の間に洗浄段階を含む。例えば、まずApoE4が固相に固定化され、その後に、ApoE4特異的標識結合剤が、固定化されたApoE4に結合するだろう。別の可能性は、第一段階においてApoE4とApoE4特異的標識結合剤とをインキュベートしてApoE4-結合剤複合体の形成を可能にし、そして第二段階においてApoE4-結合剤複合体が固相に固定化される。
【0074】
本発明の方法の別の特定の実施形態では、ApoE4-結合剤複合体が定性的にまたは定量的に検出され、ここでApoE4-結合剤複合体の定性的検出は、前記サンプル中のApoE4またはその断片の存在を示し、ApoE4-結合剤の定量的検出は、前記サンプル中のApoE4またはその断片の濃度を示す。
【0075】
本発明の方法の別の実施形態では、ApoE4またはその断片の濃度の定量的検出は、被験体がApoE4対立遺伝子についてホモ接合であるかヘテロ接合であるかを示す。
本発明に係る方法の別の特定の実施形態では、ApoE4-結合剤複合体の存在がADの発症/発生のリスクと相関する。
【0076】
本発明に係る方法の1つの特定実施形態では、ApoE4の検出がアルツハイマー病(AD)を発症するリスクの決定に用いられる。
【0077】
本発明の主題は、アルツハイマー病を発症するリスクを予測する方法、並びに前記疾患および感染症における医学的意味を推測する方法にも関する。
【0078】
本発明に係る方法の一実施形態では、ApoE4-結合剤複合体中の固定化ApoE4の検出が、ApoE4-結合剤複合体中の検出されたApoE4のレベルが一定の閾値より上である場合、ApoE4陽性またはApoE4陰性であるとの被験体の分類に用いられる。ここで前記閾値は特定の内部陽性コントロールにより決定される。
【0079】
本発明の方法によれば、被験体のApoE4陽性血液サンプルは、特定の内部カットオフコントロールのレベル(=閾値)よりも高くなる。より好ましい実施形態では、閾値はApoE4陽性サンプルのレベルよりも約1.5~100倍低く、好ましくは1.5~20倍低く、最も好ましくは1.5~10倍低い。ApoE4陰性サンプルは、内部カットオフコントロールよりも低い値となる。より好ましい実施形態では、閾値はApoE4陰性サンプルのレベルよりも約10~10000倍高く、好ましくは50~5000倍高く、最も好ましくは100~1000倍高い。
【0080】
本発明の局面では、前記閾値よりも上のApoE4レベルは、患者におけるApoE4の存在を示し、よってADの発症/発生のリスクが高いことを示す。前記閾値よりも下のApoE4レベルは、患者におけるApoEの不在を示し、よってADの発症/発生のリスクが低いことを示す。
【0081】
ApoE4-結合剤複合体の定性的検出についての本発明の特定の実施形態では、ApoE4またはその断片のレベルは、抗体または抗体の断片を使ったイムノアッセイを用いて測定される。ApoE4陽性サンプルとApoE4陰性サンプルとは、特定の内部カットオフコントロールにより限定された閾値によって分けられる。ここで全てのApoE4陰性サンプルは、バックグラウンドシグナルのみを示し、そして全てのApoE4陽性サンプルはカットオフコントロールよりも少なくとも1.5倍高い値を示す(実施例5,6および7参照)。
【0082】
本発明の別の実施形態は、測定単位(すなわち蛍光、発光、酵素反応等)の評価であり、これは検出されたApoE4レベルに相当し、標準濃度を有するApoE4キャリブレーターを使って定量的に分析することができる(実施例7)。定量分析により、本発明に係るApoE4陽性群は、特定の閾値レベルを用いて、ApoE4対立遺伝子についてホモ接合またはヘテロ接合である被験体に相当する2つの群に更に分割することができる。そのような特定の閾値レベルは、おそらく遺伝子型決定されたホモ接合またはヘテロ接合サンプルを測定することにより決定されるだろう。
【0083】
本発明の一実施形態は、ApoE4/ApoE4-結合剤複合体の存在と、ADの発症/発生のリスクとの相関性である。結果の評価は、ApoE4陰性被験体についてはADの発症/発生リスクが低いことを示し、そしてApoE4陽性被験体についてはADの発症/発生リスクが高いことを示す。
【0084】
本発明の一実施形態では、当該方法は、上昇したApoE4レベルと関係づけられる疾患もしくは状態のリスク層化にまたは治療的評価基準の適用のための層別化に用いられる。
【0085】
本発明の別の実施形態では、該疾患または状態が認知症および/またはアルツハイマー病をはじめとする認識障害と神経変性疾患の群から選択される。
【0086】
本発明の主題は、ApoE4またはその断片の検出方法の実施を可能にするアッセイでもある。
【0087】
本発明の局面では、アッセイは、本発明の方法を実施するのに必要である全ての試験成分を含有する。しかしながら、本明細書に言及する通り、「アッセイ」は、前記試験成分を含むボックスまたはユニットだけではなく、むしろ本発明の請求項に係る方法の実施を可能にする全ての相互作用要素の機能的組み合わせである。
【0088】
本発明の前記アッセイは、完全に自動化されたアッセイシステムとして、例えば市場に出ているプラットフォーム〔Roche cobas(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、Biomerieux Vidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)〕上で本発明の方法を実施することを可能にする。
【0089】
本発明の特定の実施形態では、該アッセイが被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片の検出方法の実施を可能にし、該方法が次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化されるかまたはApoE4が前記固相に固定化されそして結合剤がApoE4に結合される
を含む。
【0090】
本発明の特定の実施形態では、該アッセイが被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片の検出方法の実施を可能にし、該方法が次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化されるかまたはApoE4が前記固相に固定化され、ここで前記固相はいずれの結合剤または捕捉分子でも被覆されず、そしてApoE4またはApoE4-結合剤複合体の前記固相への結合が界面活性剤の存在下で起こる
を含む。
【0091】
本発明の局面では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化され、特にApoE4が前記固相に固定化されそして結合剤がApoE4に結合される。
【0092】
本発明の一実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記固相へのApoE4の結合が連結分子の相互作用なしに起こる(ApoE4またはその断片を前記固相に結合/連結させることができる)。
【0093】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記固相をサンプルと接触させる時、前記接触が前記連結分子の相互作用なしに起こる。
【0094】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記固相へのApoE4の結合が界面活性剤の存在下で起こる。
【0095】
本発明の一実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記試薬中の界面活性剤濃度が好ましくは0.0001~10%w/v、特に好ましくは0.01~1%w/vである。当業者は、各々の特定の界面活性剤について特定の濃度範囲を適用することが考えられうることを知っている。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここでTween-20が0.001~10%、好ましくは0.01~1%、最も好ましくは0.2~0.5%の濃度で用いられる。本発明の別の実施形態では、Triton X-100が0.001~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、最も好ましくは0.05~0.1%の濃度で用いられる。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記結合剤がApoE4またはその断片に特異的に結合する。
【0098】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の実施を可能にし、ここで前記結合剤が、少なくとも107 M-1の結合親和定数、好ましくは108 M-1の結合親和定数を有する抗体もしくは機能性抗体断片または非IgG足場であり、好ましい親和定数は109 M-1超であり、最も好ましいのは1010 M-1超である。
【0099】
本発明のより好ましい実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記結合剤が、ApoE4に結合した後に検出するために検出可能標識で標識される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記結合剤の標識が、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群より選択される。次いで分析対象に結合した標識抗体の量が適当な方法により測定される。
【0101】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記結合剤の標識が、蛍光色素または化学発光色素、特にシアニン型の色素と組み合わせた希土類クリプテートまたは希土類キレートを含む群より選択される。
【0102】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記固相がポリマー表面(例えばポリスチレン)、ガラス表面、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン、ナイロン)の群より選択される。
【0103】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、前記固相がガラスまたはポリマー表面の群より選択され、ここで前記ポリマー表面が非限定的に、ポリスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(スチレン-オキシエチレン)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリグルタルアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリジメチルシロキサン、熱分解物質、ブロックコポリマー、前記のもののコポリマー、シリコーンまたはシリカを含んで成る。
【0104】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、前記固相が未改質(純粋)であるかまたは親水性、疎水性であるように改質され、あるいはエネルギー粒子(イオン、電子、高速中性子および/またはラジカル)によるおよび紫外光子による物理衝撃によりおよび/または表面の所もしくは付近での化学反応(例えば酸処理またはオルガノシラン処理)により、IgGの結合のために最適化される(高結合性:親水性および疎水性)。
【0105】
本発明の別の特定の実施形態では、前記アッセイが本発明の実施を可能にし、ここで前記固相の表面が適切な形状、例えばプレート、マルチウェル、チューブまたはビーズ、シート、フィルム、粒状物質、磁性または非磁性粒子の形で使用される。
【0106】
本発明のより特定の実施形態では、被験体の血液サンプルが未飽和の固相と接触される。これは、固相がサンプルと接触される時点で、該固相がブロック剤および/または結合分子および/または安定化タンパク質および/または連結分子で飽和/被覆されていないことを意味する。
【0107】
しかしながら、サンプルを固相と既に接触させた時に、ブロック剤または安定化剤が固相および結合剤へのApoE4の既存結合を支持することができ、これは、固定化されたApoE4-結合剤複合体の検出の期間の間(工程bの間)は、安定化/ブロック分子/タンパク質が任意に存在することができることを意味する。
【0108】
本発明の一実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記固相がいずれの結合剤でも捕捉分子でも被覆されない。本明細書中で用いる用語「結合剤」の定義は上記に与えられている。
【0109】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここで安定化タンパク質が固相への血液サンプル中のApoE4の既存結合を支持する。ここで前記タンパク質は反応緩衝液中に任意に添加することができる。
【0110】
本発明の別の一実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記安定化タンパク質が、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清由来のアルブミン、カゼイン、乳タンパク質、免疫グロブリン、安定化アミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、グリシン、イソロイシン、リジン、プロリン、セリン)等を含む群より選択される。好ましい安定化タンパク質はウシ血清アルブミンである。
【0111】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここでBSAの濃度が0~10%、好ましくは0.2~5%、最も好ましくは0.5~2.5%の範囲内である。
【0112】
本発明の別の特定の実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここで被験体の血液サンプルを固相と接触させることと、前記サンプルをApoE4またはその断片に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と接触させることとが、一段階でまたは二段階法で行われる(実施例5参照)。
【0113】
本発明の別の特定の実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここでApoE4またはその断片の検出方法において、ApoE4-結合剤複合体が定性的にまたは定量的に検出され、ここで前記ApoE4-結合剤複合体の定性的検出が前記サンプル中のApoE4の存在を示し、前記ApoE4-結合剤複合体の定量的検出が前記サンプル中のApoE4の濃度を示す。
【0114】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイは本発明の方法の実施を可能にし、ここでApoE4の濃度の定量的検出が、前記被験体がApoE4対立遺伝子についてホモ接合であるかヘテロ接合であるかを示す。
【0115】
本発明の別の特定の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記ApoE4-結合剤複合体の存在がADの発症/発生のリスクと相関する。
【0116】
本発明の特定の一実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここでApoE4またはその断片の検出がアルツハイマー病(AD)を発症するリスクの決定に用いられる。
【0117】
本発明の別の特定の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここでApoE4またはその断片の検出が、アルツハイマー病の発症リスクを予測するため、並びに上述した疾患および感染症の全てにおける医学的意味を予測するために用いられる。
【0118】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで前記ApoE4-結合剤複合体中の固定化ApoE4の検出が、ApoE4-結合剤複合体中のApoE4の検出レベルが一定の閾値より上であるときにApoE4陽性であるかApoE4陰性であるかの被験体の分類に用いられ、ここで前記閾値は内部カットオフコントロールにより限定される。
【0119】
本発明の別の実施形態では、前記アッセイが本発明の方法の実施を可能にし、ここで一定の閾値より上のApoE4-結合剤複合体のレベルが、AD発症の高リスクの予測となり、前記閾値が内部カットオフコントロールにより限定される。
【0120】
本発明の方法によれば、被験体のApoE4陽性血液サンプルがカットオフのレベルより高い値になり、ここで前記カットオフはApoE4陰性サンプルとApoE4陽性サンプルを測定しその比率を算出することにより決定される。
【0121】
一実施形態では、前記比率は次のように算出される:
〔シグナル〕negCO + 係数X × 〔シグナル〕posCO
ここで係数は>0でありかつ<1である(0より大きく1未満である)。
【0122】
本発明の方法の一実施形態によれば、被験体のApoE4陽性血液サンプルはカットオフ(閾値)のレベルより高くなり、ここで前記閾値はApoE4陰性コントロールのシグナルを測定し、そして該シグナルの1.5~100,000倍、より好ましくは該シグナルの10~50,000倍、更により好ましくは該シグナルの20~20,000倍、最も好ましくは該シグナルの50~10,000倍、最も好ましくは該シグナルの100~1000倍を計算することにより決定される。本発明の方法によれば、被験体のApoE4陽性血液サンプルは、カットオフ(閾値)レベルより高くなり、ここで前記閾値はApoE4陽性コントロールのシグナルを測定しそして該シグナル値に>0でかつ<1である係数、より好ましくは>0.01でかつ<0.8である係数、更により好ましくは>0.05でかつ<0.5である係数、最も好ましくは>0.1でかつ<0.25である係数を乗じることにより決定される。
【0123】
本発明の特定の実施形態では、アッセイが少なくとも6アミノ酸を有するApoE4およびその断片のレベルを測定するために用いられ、ここで前記アッセイのアッセイ感度が、被験体の血液サンプル中のApoE4およびその断片を検出/定量することができ、そして<1 ng/mL、好ましくは<5 ng/mL、より好ましくは<10 ng/mL、更により好ましくは<25 ng/mLである。
【0124】
本発明の主題はまた、本発明の方法の実施を可能にするアッセイであって、ここでApoE4またはその断片のレベルが、ApoE4またはその断片の1以上のエピトープに対して向けられた1以上の捕捉プローブを含むイムノアッセイを使って測定されるアッセイである。
【0125】
本発明の一実施形態では、前記イムノアッセイがラジオイムノアッセイ(放射免疫測定法;RIA)、均一系酵素増幅イムノアッセイ(エミット;EMIT)、エンザイムリンクドイムノソルベントアッセイ(酵素結合免疫測定法;ELISA)、アポ酵素再活性化イムノアッセイ(ARIS)、ディップスティックイムノアッセイおよびイムノクロマトグラフィーアッセイを含む群より選択される。
【0126】
本発明の別の実施形態では、そのようなアッセイはいわゆるPOC試験(ポイント・オブ・ケア検査)であり、これは完全に自動化されたアッセイシステムを要求することなしに患者の近くで1時間未満の内に試験を実施できるようにする試験技術である。この技術の一例は免疫クロマトグラフィー試験法である。本発明の別の実施形態では、そのようなアッセイは、任意の種類の検出技術、例えば非限定的に酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識を含む検出技術を使った単一抗体イムノアッセイであり、好ましくは完全に自動化されたアッセイである。自動化または完全に自動化されたアッセイの例は、次のシステムの1つに用いることができるアッセイを含む:Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、Biomerieux Vidas(登録商標)、Alere Triage(登録商標)。
【0127】
本発明の更なる主題は、本発明の方法の実施を可能にするアッセイであって、次の試験要素を含む:
a. ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識されている結合剤;
b. 固相(例えばプレート、チューブ、ビーズ、シート);
c. 界面活性剤を含む反応緩衝液。
【0128】
本発明の別の実施形態は、本発明の実施を可能にするアッセイであって、
a. ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識されている結合剤;
b. ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
c. 界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬
を含むアッセイである。
【0129】
該アッセイは、付加的にコントロールを含む:
・次のコントロールの少なくとも1つが必要である:陰性コントロール、カットオフコントロールおよび陽性コントロール;
・コントロールは既知のApoE4濃度を有するサンプルであることができる(生来の、精製されたまたは組換え体のApoE4)。
【0130】
本発明の別の実施形態は、被験体のサンプル中のApoE4またはその断片の定量のための本発明の方法の実施を可能にするアッセイであり、
・ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤;
・ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
・界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬
を含んで成るアッセイである。
【0131】
該アッセイは、次の1以上のキャリブレーターを付加的に含んでもよい:
・キャリブレーターは、既知ApoE4濃度(生来の、精製されたまたは組換え体のApoE4)を有するサンプルであってもよい。
【0132】
本発明の別の実施形態は、ApoE4またはその断片の検出方法を可能にするアッセイであって、
・少なくとも6アミノ酸を有するApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
・ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
・界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬、
・コントロールおよび/またはキャリブレーター、
・洗浄用緩衝液、
・測定用試薬。
【0133】
本発明の別の主題は、被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片を検出するためのキットである。
本明細書中で言及される通り、「キット」は、本発明の方法、特に被験体の血液サンプル中のApoE4およびその断片の検出方法を実施するのに必要である材料の組み合わせを含んで成るボックスである。
【0134】
本発明の更なる主題は、被験体の血液サンプル中のApoE4およびその断片を検出するためのキットであって、
a. ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
b. 固相(例えばプレート、チューブ、ビーズ、シート)、
c. 界面活性剤を含有する反応緩衝液
を含むキットである。
【0135】
本発明の別の実施形態は、被験体の血液サンプル中のApoE4およびその断片を検出するためのキットであって、
・ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
・ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
・界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬
を含むキットである。
【0136】
該キットは付加的に次のコントロールを含んでもよい:
・次のコントロールの少なくとも1つが必要である:陰性コントロール、カットオフコントロールおよび陽性コントロール;
・コントロールは既知のApoE4濃度を有するサンプルであることができる(生来の、精製されたまたは組換え体のApoE4)。
【0137】
本発明の別の実施形態は、被験体のサンプル中のApoE4またはその断片の定量用のキットであって、
・ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識されている結合剤;
・ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
・界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬
を含むキットである。
【0138】
該キットは、付加的に1以上のキャリブレーターを含む:
・キャリブレーターは既知のApoE4濃度を有するサンプルであることができる(生来の、精製されたまたは組換え体のApoE4)。
【0139】
本発明の別の実施形態は、被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片を検出するためのキットであって、
・少なくとも6アミノ酸を有するApoE4またはその断片中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
・ポリマーまたはガラスの固相、好ましくは高結合性ポリスチレンマイクロプレート、
・界面活性剤、好ましくは0.2%Tween-20を含有する試薬、
・コントロールおよび/またはキャリブレーター、
・洗浄用緩衝液、
・測定用試薬
から成るキットである。
【0140】
本発明の別の実施形態は、被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片を検出するための結合剤の使用であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここでApoE4が前記固相に固定化され、そして結合剤がApoE4に結合される
を含む使用である。
【0141】
本発明の別の実施形態は、被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片を検出するための結合剤の使用であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化されるかまたはApoE4が前記固相に固定化され、ここで前記固相はいずれの結合剤または捕捉分子でも被覆されず、そしてApoE4またはApoE4-結合剤複合体の前記固相への結合が界面活性剤の存在下で起こる
を含む使用である。
【0142】
本発明では、本発明の方法における結合剤の使用をクレームすることは、上述した実施形態の全てを包含する本発明の方法をクレームすることと同意義である。
【0143】
以下の態様も本発明の主題である:
1.被験体の血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片の(in vitro)検出方法であって、次の工程:
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体がApoE4を介して前記固相に固定化される
を含む方法。
【0144】
2.被験体の血液サンプル中のアポリポタンパク質Eイソタイプ4(ApoE4)またはその断片の(In vitro)検出方法であって、
a. 前記サンプルを固相と接触させ、前記サンプルをApoE4に特異的に結合する少なくとも1つの結合剤と同時にまたは連続的に接触させ、それによりApoE4-結合剤複合体を形成し、ここで前記結合剤は抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、そして
b.前記ApoE4-結合剤複合体を検出し、ここで前記ApoE4-結合剤複合体が前記固相に固定化され、ここで前記固相はいずれの結合剤または捕捉分子でも被覆されず、そしてApoE4またはApoE4-結合剤複合体の前記固相への結合が界面活性剤の存在下で起こる
を含む方法。
【0145】
3.ApoE4またはその断片が前記固相に固定化されそして前記結合剤がApoE4に結合される、態様1または2に記載の方法。
【0146】
4.ApoE4の断片が長さ少なくとも6アミノ酸を含み、ただしアミノ酸158(アルギニン)が前記断片中に含まれ、ここでアミノ酸158の配列を配列番号1と称する、態様1~3に記載の方法。
【0147】
5.前記固相へのApoE4またはApoE4-結合剤複合体の結合が連結分子の相互作用なしに起こり、ApoE4またはその断片を前記固相に結合することができる、態様1~4に記載の方法。
【0148】
6.固相を前記サンプルと接触させる時に、前記接触が前記連結分子の相互作用なしに起こる、態様1~5に記載の方法。
【0149】
7.前記固相へのApoE4またはApoE4-結合剤複合体の結合が界面活性剤の存在下で起こる、態様1~6に記載の方法。
【0150】
8.前記ApoE4-結合剤複合体が定性的にまたは定量的に検出される、態様1~7に記載の方法。
【0151】
9.ApoE4-結合剤複合体の定量的検出が前記サンプル中のApoE4の濃度を示し、ここで該濃度が前記被験体がApoE4対立遺伝子についてホモ接合であるかヘテロ接合であるかの指標を提供する、態様1~8に記載の方法。
【0152】
10.前記結合剤が、少なくとも107 M-1、好ましくは108 M-1の結合親和定数を有する抗体もしくは機能性抗体断片または非IgGタンパク質足場であり、好ましい親和定数が109 M-1より大きく、最も好ましくは1010 M-1より大きい、態様1~9に記載の方法。
【0153】
11.前記結合剤が検出されるために標識で標識され、ここで前記標識が化学発光標識、酵素標識、蛍光標識または放射性ヨウ素標識を含む群より選択される、態様1~10に記載の方法。
【0154】
12.ApoE4の検出が、ApoE4の検出レベルが一定の閾値より上であるときに、被験体がApoE4陽性であるかApoE4陰性であるかの分類に用いられ、ここで前記閾値が特定の内部陽性コントロールにより決定される、態様1~11に記載の方法。
【0155】
13.前記固相がポリマー表面(例えばポリスチレン)、ガラス表面、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース、フッ化ポリビニリデン、ナイロン)の群より選択される、態様1~12に記載の方法。
【0156】
14.前記固相がガラスまたはポリマー表面の群より選択され、ここでポリマー表面が非限定的にポリスチレン、ポリ(ジビニルベンゼン)、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(スチレン-オキシエチレン)、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリグルタルアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリジメチルシロキサン、熱分解物質、ブロックコポリマー、並びに前記のもののコポリマー、シリコーンまたはシリカを含む、態様1~13に記載の方法。
【0157】
15.前記血液サンプルが未飽和の固相と接触される、態様1~14に記載の方法。
【0158】
16.前記固相面がいずれの結合剤または捕捉分子によっても被覆されない、態様1~15に記載の方法。
【0159】
17.前記反応液中の任意の安定化タンパク質が、非特異的結合部位をブロックしそしてApoE4のコンホメーションと相互作用することにより、血液サンプル中のApoE4およびその断片の固相への結合を安定化し、ここで前記安定化タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清由来のアルブミン、カゼイン、乳タンパク質、免疫グロブリンおよび安定化アミノ酸(例えばアラニン、アルギニン、グリシン、イソロイシン、リジン、プロリン、セリン)を含む群より選択され、好ましくは安定化タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)である、態様1~16に記載の方法。
【0160】
18.安定化タンパク質としてのBSAの濃度が0~10%、好ましくは0.2~5%、最も好ましくは0.5~2.5%の範囲内である、態様1~17に記載の方法。
【0161】
19.前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、カチオン性界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB))、両イオン性界面活性剤(例えばCHAPS)および/または非イオン性界面活性剤(例えばTween-20、Triton X-100)の群より選択される、態様1~18に記載の方法。
【0162】
20.前記Tween-20濃度が0.001~10%、好ましくは0.01~1%、最も好ましくは0.2~0.5%の範囲から選択される、態様1~19に記載の方法。
【0163】
21.前記Triton X-100濃度が0.001~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、最も好ましくは0.05~0.1%の範囲から選択される、態様1~20に記載の方法。
【0164】
22.前記血液サンプルが全血、血清およびクエン酸塩血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿の群より選択される、態様1~21のいずれかに記載の方法。
【0165】
23.前記被験体が生存しているヒトまたはヒト生物体、好ましくはヒト被験体であり、ここで前記被験体は健常、見かけ上健常、認識障害、認知症、特にADを罹患している、態様1~22のいずれかに記載の方法。
【0166】
24.キットであって、
a. ApoE4またはその断片の配列中に含まれるエピトープに対して向けられた1つの結合剤であって、検出可能な標識で標識された結合剤、
b. 固相、
c. 界面活性剤を含有する反応緩衝液
を含んで成るキット。
【0167】
25. 被験体の血液サンプル中のApoE4またはその断片のインビトロ検出および/または定量のための、態様24に記載のキットの使用。
【0168】
26. 上昇したApoE4レベルに関連した疾患もしくは状態のリスク層化のためのまたは治療的尺度の適用の層別化のための、態様1~23のいずれかに記載の方法の使用。
【0169】
27.前記疾患または状態が、認知症および/またはアルツハイマー病(AD)を含む認識障害および神経変性疾患の群より選択される、態様1~23のいずれかに記載の方法の使用。
【0170】
28. ある一定の閾値より上のApoE4の上昇レベルがADを発症する高リスクの予測となる、ADを発症するリスクを検出するための態様1~23のいずれかに記載の方法。
【0171】
29.前記ApoE4またはApoE4-結合剤複合体の存在が、ADを発症/発生するリスクと相関する、態様1~23のいずれかに記載の方法。
【実施例0172】
1. 実施例1
抗体の作製およびそれらの親和定数の決定
・免疫処置用のペプチド/接合体:
免疫処置用の特別なApoE4ペプチドおよびApoE2/3特異的コントロールペプチドを合成した。表1参照(JPT Technologies、ベルリン、ドイツ)。ApoE4ペプチドは、該ペプチドをウシ血清アルブミン(BSA)へ結合のための追加のN末端システイン残基を有するように合成した。該ペプチドをSufolinkカップリングゲル(Perbio-science、ボン、ドイツ)を使ってBSAに共有結合的に連結した。カップリング操作はPerbioのマニュアルに従って実施した。
【0173】
【表1】
【0174】
・マウスの免疫処置、免疫細胞融合およびスクリーニング:
Balb/cマウスを、100μgのペプチド-BSA接合体(100μLの完全フロイントアジュバント中に乳化させたもの)により第0日と第14日に免疫処置し、そして50μgの同接合体(100μLの不完全フロイントアジュバント中)により第21日と第28日に免疫処置した。融合実験を実施する3日前に、動物に100μLの生理食塩水中に溶解した同接合体50μgを、腹腔内注射で1回そして静脈内注射で1回投与した。
【0175】
免疫処置マウスからの脾細胞と、ミエローマ細胞系SP2/0の細胞とを、1mLの50%ポリエチレングリコール中で37℃にて30秒間融合した。洗浄後、細胞を96ウェルの細胞培養プレートに播種した。HAT培地〔20%ウシ胎仔血清とHATサプリメントが補足されたRPMI 1640培地〕中で増殖させることにより、ハイブリッドクローンを選択した。2週間後、三継代用にHAT培地をHT培地に置換し、次いで普通の細胞培養培地に戻した。
【0176】
融合の3週間後に、細胞培養上清を抗原特異的IgG抗体について一次スクリーニングした。陽性の微量試験培養物を増殖のため24ウェルプレートに移した。再試験後、選択された培養物を、限界希釈技術を使ってクローニングと再クローニングを行い、イソタイプを決定した(Lane他、1985;Ziegler他、1996)。
【0177】
・モノクローナル抗体の生産
標準的な抗体産生法(Marx他、1997)により抗体を生産し、プロテインAを用いて精製した。抗体純度はSDSゲル電気泳動分析に基づくと>95%であった。
【0178】
・親和定数
ApoE4に対する抗体の親和性を決定するために、固定化抗体への組換えApoE4の結合の反応速度論(カイネティクス)を、Biacore 2000システム(GE Healthcare Europe GmbH、フライブルグ、ドイツ)を用いた無標識表面プラズモン共鳴によって測定した。製造業者の教示に従って、CM5センサー表面に高密度で共有結合された抗マウスFc抗体を使って、抗体の可逆的固定化を行った(マウス抗体捕捉キット;GE Healthcare)。
【0179】
・ラベル化手順(トレーサー)
100μg(100μL)の抗体(PBS中1 mg/mL, pH 7.4)を、10μLのアクリジニウムNHS-エステル(アセトニトリル中1 mg/mL、InVent GmbH、ドイツ;EP 0 353 971)と混合し、そして室温で20分間インキュベートした。標識抗体をBio-Sil(登録商標)SEC 400-5(Bio-Rad Laboratories, Inc., USA)上でのゲルろ過HPLCにより精製した。精製した標識抗体を(300ミリモル/Lのリン酸カリウム、100ミリモル/LのNaCl、10ミリモル/LのNa-EDTA、5 g/Lのウシ血清アルブミン、pH 7.0)中に希釈した。最終濃度は、200μLあたり標識化合物(約20 ngの標識抗体)約800.000相対発光量(RLU)であった。AutoLumat LB 953(Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を使うことによりアクリジニウムエステル化学発光を測定した。
【0180】
2. 実施例2
既知遺伝子型を有する血漿試料の測定。
血漿と全血マッチングを使って、遺伝子型決定によりApoE状態を遺伝学的に分析することができ、そしてマッチした血漿中のApoE4レベルを本発明のApoE4アッセイを用いて測定することができる。
【0181】
2.1 方法
・遺伝子型決定
180本の全血サンプルから遺伝分析をMedigenomix(エーバースベルグ, ドイツ)により実施した。該サンプルからDNAを単離し、サンガー配列決定法(Sanger & Coulson, 1975)を使ってApoE4遺伝子を配列決定した。
【0182】
・ApoE4アッセイ手順
ApoE4単一抗体アッセイは一段階法で実施した。血漿サンプルを、96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner, Lumitrac600高結合性ポリスチレン;20μLサンプル/ウェル)のウェル中に正副二通りに直接ピペッティングした。低ApoE4カットオフコントロールを各マイクロプレートに添加した(ApoE4陰性ヒト血漿中の組換えApoE4 [4μg/mL], 20μL/ウェル、正副二通り)。各ウェルに、アクリジニウムエステルで標識された抗ApoE4抗体(トレーサー)を含有する200μLの反応緩衝液(0.2%Tween-20、1%BSA、0.1%ウシIgGs、0.1%ヒツジIgGsおよび0.02%マウスIgGsを含むPBS、pH 7.4)を満たした。マイクロプレートを室温で1時間インキュベートした。洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1 %Triton X-100)で4回洗浄することにより、未結合のトレーサーを除去した。発光(相対発光量(RLU)で)をMTP照度計(Centro LB960、Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って測定した。
【0183】
2.2 結果
図1aは、遺伝子型決定により差次化したApoE4アッセイの結果を示す。カットオフコントロールの助けを借りて、RLU値からApoE4陽性サンプルとApoE4陰性サンプル間を容易に区別することができる。全てのApoE4陰性サンプルは、3000 RLUより低いRLU値を有し、そして全てのApoE4陽性サンプルは3000 RLUより上のRLU値を有する。陰性サンプルは、基本的に当該イムノアッセイのバックグラウンドシグナルを示すだけであり、ApoE4のシグナルは全く示さない。図1bは、対応するROC曲線を示す。1の曲線下面積(AUC)を使って、該アッセイはApoE4陽性サンプルと陰性サンプル間を正確に識別する。
【0184】
3. 実施例3
界面活性剤あり/なしでの種々のポリマー表面やガラス表面へのApoE4結合の分析
3.1 方法
・ポリマー表面またはガラス表面上での血漿サンプルのプレインキュベーション
各ApoE4陽性血漿サンプルを120μLのアリコートに分割し、各々を異なる材料(ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびガラス)のチューブの中で、1材料あたり2本のチューブを用いてインキュベートした。アリコートの半分に、インキュベーション前に0.1%Triton X-100を添加し、残りの半分は同容量のPBSで処理した。全てのチューブは室温で一晩インキュベートした。
【0185】
・ApoE4単一抗体アッセイ
20μLの各調製物、並びにプレインキュベート無しのコントロールを、Greiner高結合性マイクロタイタープレート上の各ウェルにピペッティングした。次いで実施例2に記載の通りにApoE4アッセイを実施した。測定されたApoE4濃度を、各々のコントロールサンプルの濃度(100%と定義される)に相対して算出した。
【0186】
3.2 結果
界面活性剤で処理したサンプルは、ポリマー製またはガラス製チューブ中でのプレインキュベーション後にApoE4レベルの強力な減少、すなわち約50%低下を示す(図2参照)。サンプルをプレインキュベートする表面のタイプによって全く差異がみられなかった。界面活性剤で処理しないサンプルのプレインキュベーション後のApoE4シグナルにはわずかな減少が見られたが、界面活性剤で処理した時ほど有意ではなかった。界面活性剤は、ポリマー表面またはガラス表面へのApoE4の結合を増加させる。
【0187】
4. 実施例4
界面活性剤がApoE4と固相の間の連結分子として働くかどうかの分析。
4.1 方法
・マイクロタイタープレート(MIP)のコーティング
3枚のGreiner高結合性マイクロタイタープレートを、ウェルあたり300μLのddH2O、ddH2Oの0.05%Triton X-100溶液またはddH2O中の0.4%Triton X-100溶液のいずれか(各1プレート)で満たした。それらのプレートを室温で一晩インキュベートした。その後、MTPを1×PBSで3回洗浄し、ApoE4一段階単一抗体アッセイに直接用いた。
【0188】
・ApoE4単一抗体アッセイ
20μLのApoE4陽性および陰性血漿サンプル、並びにカットオフコントロール(ヒト血漿中4μg/mLの組換えApoE4)を、前処理したGreiner高結合性マイクロタイタープレート上の各ウェルにピペットで添加した。それらのウェルの半数を、0.05%Triton X-100を含有する200μLのトレーサー緩衝液(1%BSA、0.1%ウシIgGs、0.1%ヒツジIgGsおよび0.02%マウスIgGsを有するPBS, pH 7.4+アクリジニウムエステル標識抗ApoE4抗体)で満たし、残りの半数を界面活性剤を含まない同トレーサー緩衝液(0%Triton X-100)で満たした。それらのマイクロプレートを室温で1時間インキュベートした。未結合のトレーサーを、洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1%Triton X-100)で4回洗浄することにより除去した。MTP照度計(Centro LB960, Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って発光(発光量(RLU)として)を測定した。
【0189】
4.2 結果
界面活性剤がApoE4と固相の間の連結分子として作用すると仮定したなら、該アッセイ緩衝液中に界面活性剤を含まずにApoE4アッセイを界面活性剤処理プレート上で実施すると、おそらく一定の濃度依存性で、強いシグナルが発生するだろう。この実験はそれが当てはまらない。全てのサンプル、並びにカットオフコントロールが、いずれの界面活性剤も含まないアッセイ緩衝液中でアッセイを実施した時には、どの前処理プレートにおいても全くシグナルを示さない(図3参照)。ApoE4陽性とApoE4陰性サンプルの両方のシグナルが、同じレベル上のベースラインの所にあり、よって互いに識別することができない。このシグナルは、MTPに連結したTriton X-100の量とも無関係である。
【0190】
界面活性剤は、ApoE4アッセイに用いられる緩衝液の必須成分である。MTP上への界面活性剤のコーティングと、サンプルと界面活性剤不含有の緩衝液の添加は、有意なシグナルをもたらさなかった。このことは、界面活性剤が遊離形態で必要とされ、そしておそらく連結分子として固定化されないことを示す。
【0191】
5. 実施例5
一段階と二段階アッセイ法の比較
5.1 方法
・一段階アッセイ法
ApoE4単一抗体アッセイを実施例2に記載の通り実施した。一段階法では、サンプルとトレーサー抗体とを一緒に室温で1時間インキュベートした。MTP照度計(Centro LB960, Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って発光(発光量(RLU)として)を測定した。各マイクロプレートへ添加する際、低ApoE4-カットオフコントロール(ApoE4陰性ヒト血漿中の組換えApoE4 [4μg/mL];20μL/ウェル、正副二通り)を使用した。
【0192】
・二段階アッセイ法
二段階法では、血漿サンプルを96ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner, Lumitrac600高結合、ポリスチレン;20μLサンプル/ウェル)の各ウェルに正副二通りにおいて直接ピペットで添加した。各マイクロプレートに添加するとき、低ApoE4-カットオフコントロール(ApoE4陰性ヒト血漿中の組換えApoE4 [4μg/mL];20μL/ウェル、正副二通り)を使用した。それらのウェルを、200μLの反応緩衝液(0.2%Tween-20、1%BSA、0.1%ウシIgGs、0.1%ヒツジIgGsおよび0.02%マウスIgGsを有するPBS, pH 7.4)で満たした。それらのマイクロプレートを室温で一晩インキュベートした(=段階1)。その後、マイクロプレートを洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1%Triton X-100)で4回洗浄し、そしてアクリジニウムエステル標識抗ApoE4抗体を含む200μLの反応緩衝液を各ウェルに充填した。それらのマイクロプレートを室温で2時間インキュベートし(=段階2)、再び洗浄溶液で4回洗浄した。MTP照度計(Centro LB960, Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って発光(発光量(RLU)として)を測定した。
【0193】
2つの変形のアッセイ法をより直接的に比較するために、RLU値を相対単位「対カットオフコントロールの倍数」に変換した。
【0194】
5.2 結果
ここで、短時間(1時間)一段階法を、長時間(一晩/2時間)二段階法と比較した。一段階アッセイの相対発光量(RLU)は二段階アッセイのRLUより約10倍低い(表2参照)。しかしこの比は、どのApoE4陽性サンプルおよびカットオフコントロールについても当てはまる。ApoE4陰性サンプルの値は、どちらのアッセイ形式でも等しく低いままである。内部カットオフコントロールに比較したサンプル値は、全てのアッセイにおいてほぼ同じであり(図4参照)、各アッセイがApoE4陰性サンプルからApoE4陽性サンプルを識別することができる。
【0195】
【表2】
【0196】
6. 実施例6
固相へのApoE4結合に対するブロック/安定化剤(BSA)の効果
6.1 方法
ApoE4アッセイは二段階法で実施し、ここで第一段階(固相へのApoE4結合)はBSAの存在下または非存在下で実施する。第二段階(固定化ApoE4への抗ApoE4抗体の結合)は1%BSAを含有するアッセイ緩衝液中で実施する。
【0197】
血漿サンプルと低ApoE4カットオフコントロール(ApoE4陰性ヒト血漿中の組換えApoE4 [4μg/mL])を96ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner, Lumitrac600高結合、ポリスチレン;20μLサンプル/ウェル)のウェルに直接ピペットで添加した。各ウェルを1%BSAを含むかまたはBSAを含まない(0%BSA)200 μLの反応緩衝液(0.2%Tween-20、0.1%ウシIgGs、0.1%ヒツジIgGsおよび0.02%マウスIgGsを有するPBS, pH 7.4)で満たした。それらのマイクロプレートを室温で1時間インキュベートした(=段階1)。その後、マイクロプレートを洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1%Triton X-100)で4回洗浄し、そしてアクリジニウムエステル標識抗ApoE4抗体を含む200μLの1%BSA含有反応緩衝液を各ウェルに充填した。それらのマイクロプレートを室温で1時間インキュベートし(=段階2)、再び洗浄溶液で4回洗浄した。MTP照度計(Centro LB960, Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って発光(発光量(RLU)として)を測定した。
【0198】
2つの変形のアッセイ法をより直接的に比較するために、RLU値を相対単位「対カットオフコントロールの倍数」に変換した。
【0199】
6.2 結果
BSAを含まない緩衝液中でインキュベートしたサンプルのシグナルは、反応混合物中にBSAを有するものよりも有意に低い(表3、図5参照)。両アッセイ変形とも、カットオフコントロールを用いてApoE4陽性サンプルとApoE4陰性サンプルとを区別することができる。従って、BSAはApoE4結合に必須ではないけれども、驚くべきことにそれは固相へのApoE4結合を強力に増強し、そのためシグナルを増大させるために反応緩衝液に任意に添加することができる。通常は非特異的シグナルをブロックするためにBSAが用いられ、BSAの添加後にシグナルの低下を伴うことがあるから、この結果は予想外のことである。
【0200】
【表3】
【0201】
7. 実施例7
血漿サンプル中のApoE4の定量
7.1 方法
ApoE4アッセイは実施例2に記載の通り実施した。血漿中のApoE4レベルを定量するために、キャリブレーターを使用した。組換えApoE4を段階希釈法によりApoE4陰性ヒト血漿中に希釈し、0.01~21.87μg/mLの範囲内で較正曲線(検量線)を作成した。その検量線の線形回帰を使ってサンプルのApoE4濃度を算出した。最大標準値より上のRLU値を示すサンプルを、ApoE4陰性ヒト血漿中に希釈し、再測定した。4μg/mLの限定濃度を有するカットオフコントロールも、検量線のコントロールとして同様に測定した。
【0202】
7.2 結果
0.01~21.87μg/mLの範囲内で、ApoE4は直線状に希釈される(図6参照)。表4は、測定RLU値と計算ApoE4濃度を示す。ApoE4陽性サンプルは9.7~30.4μg/mLの範囲の濃度を有する。全てのApoE4陰性サンプルの濃度は常に<0.1μg/mLである(アッセイバックグラウンド)。カットオフコントロールの濃度は4μg/mLを有し、これは測定前に希釈したキャリブレーターを用いて測定されたのと正確に同じ値である。
【0203】
【表4】
【0204】
8. 実施例8
固相へのApoE4結合に対するタンパク質でのプレコーティングの効果
8.1 方法
96ウェルマイクロタイタープレート(Greiner, Lumitrac600高結合性、ポリスチレン)を300μL/ウェルのヒト血清(ApoE4陰性)または6.5 mM KH2PO4、3.5 mM Na2HPO4・2H2O、3%カリオン(糖)および0.5%BSAを含有する飽和溶液で室温にて18時間プレコーティングした。インキュベーション後、マイクロプレートを洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1%Triton X-100)で4回洗浄した。
【0205】
次いで一段階法でApoE4アッセイを実施した(実施例2に記載の通り)。血漿サンプル(ApoE4陽性とApoE4陰性)および組換えApoE4サンプル(ApoE4陰性ヒト血漿中の組換えApoE4)を直接96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルにピペットで添加した(20μL/サンプル)。各ウェルを、アクリジニウムエステル標識抗ApoE4抗体を含有する200μLの反応緩衝液(0.2%Tween-20、1%BSA、0.1%ウシIgGs、0.1%ヒツジIgGsおよび0.02%マウスIgGsを有するPBS, pH 7.4)で満たした。その後、マイクロプレートを洗浄溶液(20 mM PBS, pH 7.4, 0.1%Triton X-100)で4回洗浄した。MTP照度計(Centro LB960, Berthold Technologies GmbH, Bad Wildbad)を使って発光(発光量(RLU)として)を測定した。
【0206】
8.2 結果
図7(A)に示すように、ApoE4陽性EDTA血漿サンプルは、未処理の固相上で有意なシグナルを与えた。対照的に、タンパク質含有溶液(BSAかヒト血清のいずれか含有)で前処理したウェルは全くシグナルを与えなかった。
【0207】
同様に、図7(B)に示すように、異なる濃度の組換えApoE4を含むApoE4陰性EDTA血漿サンプルは、未処理のウェル上では有意なシグナルを与えたが、それらをタンパク質で前処理したウェル上でインキュベートした時には全くシグナルを与えなかった。
【0208】
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〔配列〕
【0209】
【表5】
【0210】
【表6】
【0211】
【表7】
【0212】
【表8】
【0213】
【表9】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023002599000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載された発明。
【外国語明細書】