(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025997
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】溶存水素濃度測定装置、溶存水素濃度測定装置用の電極及び溶存水素濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20230216BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G01N27/416 311H
G01N27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131538
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】509095293
【氏名又は名称】株式会社ドクターズ・マン
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】栄長 泰明
(72)【発明者】
【氏名】風間 一穂
(72)【発明者】
【氏名】イルハム
(72)【発明者】
【氏名】橋本 総
(72)【発明者】
【氏名】西 善一
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 勝春
(72)【発明者】
【氏名】青山 靖世
(57)【要約】
【課題】溶存水素濃度の測定が可能であり、しかも、測定時の電極の前処理が容易である溶存水素濃度測定装置、溶存水素濃度測定装置用の電極及び溶存水素濃度測定方法を提供する。
【解決手段】溶存水素濃度測定装置は、被測定液中に浸漬された作用電極と、作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定することにより、被測定液中の溶存水素濃度を取得する測定回路とを備えている。作用電極は、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾させた電極である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液中に浸漬された作用電極と、該作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定することにより、前記被測定液中の溶存水素濃度を取得する測定回路とを備えており、
前記作用電極が導電性ダイヤモンドに白金を修飾させた電極であることを特徴とする溶存水素濃度測定装置。
【請求項2】
前記導電性ダイヤモンドがホウ素をドープしたダイヤモンド多結晶薄膜であり、前記白金が前記ダイヤモンド多結晶薄膜の表面に電着した白金であることを特徴とする請求項1に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項3】
電子の授受を行う前記作用電極と、該作用電極の電位基準となる参照電極と、前記作用電極との間で電流回路を形成する対電極とを備え、前記測定回路は、前記作用電極及び前記参照電極間の電位差を直線的に掃引して前記作用電極及び前記対電極間を流れる応答電流を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項4】
前記測定回路は、前記作用電極及び前記対電極間を流れる応答電流にピーク値が現れる電位差と想定される電位差又は該電位差を含む所定範囲の電位差を前記作用電極及び前記参照電極間に印加して前記応答電流を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項5】
前記測定回路は、前記測定した応答電流のピーク値から前記被測定液中の溶存水素濃度を取得するように構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項6】
前記測定回路は、前記測定した応答電流のピーク値を検出するピーク値検出手段と、該ピーク値検出手段が検出したピーク値と溶存水素濃度とのあらかじめ設定された関係を用いて溶存水素濃度を取得する溶存水素濃度抽出手段とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項7】
前記測定回路は、前記被測定液の電気伝導度に応じて前記被測定液中の前記取得した溶存水素濃度を補正するように構成されていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項8】
前記測定回路は、前記取得した溶存水素濃度に水素濃度差を加算するか又は水素濃度比を乗算することによって前記取得した溶存水素濃度を補正するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の溶存水素濃度測定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の溶存水素濃度測定装置の作用電極として用いられ、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾してなることを特徴とする溶存水素濃度測定装置用の電極。
【請求項10】
被測定液中に、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾した電極である作用電極を浸漬し、該作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定することにより、前記被測定液中の溶存水素濃度を取得することを特徴とする溶存水素濃度測定方法。
【請求項11】
前記作用電極として、ホウ素をドープしたダイヤモンド多結晶薄膜の表面に白金を電着した電極を用いることを特徴とする請求項10に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項12】
電子の授受を行う前記作用電極と該作用電極の電位基準となる参照電極との間の電位差を直線的に掃引して前記作用電極及び対電極間を流れる応答電流を測定することにより前記被測定液中の溶存水素濃度を取得することを特徴とする請求項9又は10に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項13】
前記作用電極及び前記対電極間を流れる応答電流にピーク値が現れる電位差と想定される電位差又は該電位差を含む所定範囲の電位差を前記作用電極及び前記参照電極間に印加して前記応答電流を測定することを特徴とする請求項9又は10に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項14】
前記測定した応答電流のピーク値から前記被測定液中の溶存水素濃度を取得することを特徴とする請求項12又は13に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項15】
前記測定した応答電流のピーク値を検出し、検出したピーク値と溶存水素濃度とのあらかじめ設定された関係を用いて溶存水素濃度を求めることを特徴とする請求項14に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項16】
前記被測定液の電気伝導度に応じて前記被測定液中の前記取得した溶存水素濃度を補正することを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の溶存水素濃度測定方法。
【請求項17】
前記取得した溶存水素濃度に水素濃度差を加算するか又は水素濃度比を乗算することによって前記取得した溶存水素濃度を補正することを特徴とする請求項16に記載の溶存水素濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素水等の被測定液中における溶存水素濃度を電気化学測定法を用いて測定する溶存水素濃度測定装置、溶存水素濃度測定装置用の電極及び溶存水素濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素分子(水素ガス)を水に溶解させた水素水が、さまざまな分野で注目されている。例えば、健康産業分野では、水素水中の水素分子が体内の活性酸素を還元して除去する効果が着目され、健康維持のための飲料水等として水素水が使用されている。電子産業分野においては、洗浄効果に着目して電子部品洗浄用水として水素水が使用されている。また、医学分野においては、パーキンソン病やアルツハイマー病等の神経変性疾患抑制、糖尿病の改善、酸化ストレス抑制、抗疲労、抗ガン、動脈硬化抑制、薬剤副作用抑制、腎機能/腎移植障害抑制、小腸移植障害抑制、アレルギー性疾患抑制等について水素水の効能が注目されている。
【0003】
このような健康産業分野及び電子産業分野、特に医学分野においては、水素水について、正確な溶存水素濃度測定を行うことが必要とされている。一般に、水素水は、水中から水素分子が抜け出しやすく、時間の経過と共に、溶存水素濃度が低下する傾向にあるため、使用時点における水素水中の溶存水素濃度を測定して把握することが重要となる。
【0004】
溶存水素濃度の測定装置として、主に用いられるのは、ガスクロマトグラフィ(GC)であるが、このGCは、高価であり操作が煩雑で手軽さに欠けるという問題点を有している。これに対して、分子の酸化還元反応の際に流れる電流や電極界面の電位を測定する電気化学測定法による溶存水素濃度測定装置は、大掛かりな装置が不要であるのみならず、安価でありしかも手軽な操作で正確な測定が可能である。さらに、電気化学測定法は、電極を被測定液中に浸けるだけで測定できるため、リアルタイムで連続測定も可能である。
【0005】
電気化学測定法による溶存水素濃度測定用の電極としては、白金(Pt)等の金属電極が従来から用いられているが、金属電極で正確な測定を行うためには、毎回、研磨による前処理を行う必要があるため、測定が非常に煩雑であった。
【0006】
測定用電極として、特許文献1に記載されているような導電性ダイヤモンド電極を用いれば、このような研磨による前処理を行うことなく測定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている導電性ダイヤモンド電極であるボロンドープドダイヤモンド電極(BDD電極)を作用電極として、水素水の電気化学測定(サイクリックボルタモグラム(CV)測定)を実際に行ったところ、作用電極及び対電極間を流れる応答電流に水素に関するピーク値を検出することができず、その結果、BDD電極を作用電極としたCV測定では、溶存水素濃度を測定することができなかった。
【0009】
本発明は従来技術の上述したような問題点を解消するものであり、本発明の目的は、溶存水素濃度の測定が可能であり、しかも、測定時の電極の前処理が容易である溶存水素濃度測定装置、溶存水素濃度測定装置用の電極及び溶存水素濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、溶存水素濃度測定装置は、被測定液中に浸漬された作用電極と、作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定することにより、被測定液中の溶存水素濃度を取得する測定回路とを備えている。作用電極は、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾させた電極である。
【0011】
作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定し、被測定液中の溶存水素濃度を取得する装置において、作用電極が、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾させた電極であるため、再現性良く溶存水素濃度の測定が可能となり、また、測定前に電極の研磨処理を行わない場合にも、安定した良好な再現性で溶存水素濃度の測定を行うことができる。
【0012】
導電性ダイヤモンドがホウ素をドープしたダイヤモンド多結晶薄膜であり、白金がダイヤモンド多結晶薄膜の表面に電着した白金であることが好ましい。
【0013】
電子の授受を行う作用電極と、作用電極の電位基準となる参照電極と、作用電極との間で電流回路を形成する対電極とを備え、測定回路は、作用電極及び参照電極間の電位差を直線的に掃引して作用電極及び対電極間を流れる応答電流を測定するように構成されていることも好ましい。
【0014】
測定回路は、作用電極及び対電極間を流れる応答電流にピーク値が現れる電位差と想定される電位差又はこの電位差を含む所定範囲の電位差を作用電極及び参照電極間に印加して応答電流を測定するように構成されていることも好ましい。
【0015】
測定回路は、測定した応答電流のピーク値から被測定液中の溶存水素濃度を取得するように構成されていることがより好ましい。
【0016】
さらに、測定回路は、測定した応答電流のピーク値を検出するピーク値検出手段と、ピーク値検出手段が検出したピーク値と溶存水素濃度とのあらかじめ設定された関係を用いて溶存水素濃度を求める溶存水素濃度抽出手段とを備えていることも好ましい。
【0017】
測定回路は、被測定液の電気伝導度に応じて被測定液中の取得した溶存水素濃度を補正するように構成されていることも好ましい。
【0018】
この場合、測定回路は、取得した溶存水素濃度に水素濃度差を加算するか又は水素濃度比を乗算することによってこの取得した溶存水素濃度を補正するように構成されていることがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、上述した溶存水素濃度測定装置の作用電極として用いられ、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾してなる溶存水素濃度測定装置用の電極が提供される。
【0020】
本発明によれば、さらに、また、溶存水素濃度測定方法は、被測定液中に、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾した電極である作用電極を浸漬し、作用電極に所定電位を印加して応答電流を測定することにより、被測定液中の溶存水素濃度を取得する。
【0021】
作用電極として、ホウ素をドープしたダイヤモンド多結晶薄膜の表面に白金を電着した電極を用いることが好ましい。
【0022】
電子の授受を行う作用電極と作用電極の電位基準となる参照電極との間の電位差を直線的に掃引して作用電極及び対電極間を流れる応答電流を測定することにより被測定液中の溶存水素濃度を取得することも好ましい。
【0023】
作用電極及び対電極間を流れる応答電流にピーク値が現れる電位差と想定される電位差又はこの電位差を含む所定範囲の電位差を作用電極及び参照電極間に印加して応答電流を測定することも好ましい。
【0024】
この場合、測定した応答電流のピーク値から被測定液中の溶存水素濃度を取得することがより好ましい。
【0025】
より具体的には、測定した応答電流のピーク値を検出し、検出したピーク値と溶存水素濃度とのあらかじめ設定された関係を用いて溶存水素濃度を求めることも好ましい。
【0026】
被測定液の電気伝導度に応じて被測定液中の取得した溶存水素濃度を補正することも好ましい。
【0027】
この場合、取得した溶存水素濃度に水素濃度差を加算するか又は水素濃度比を乗算することによって取得した溶存水素濃度を補正することがより好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、作用電極が、導電性ダイヤモンドの表面に白金を修飾させた電極であるため、再現性良く溶存水素濃度の測定が可能となり、また、測定前に電極の研磨処理を行わない場合にも、安定した良好な再現性で溶存水素濃度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の溶存水素濃度測定装置の第1の実施形態における全体の装置構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の溶存水素濃度測定装置における作用電極の構成例を概略的に示す斜視図である。
【
図3】BDD膜及びPt-BDD膜のSEM像を示す図である。
【
図4】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において複数回のCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図5】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において溶存水素濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図6】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において溶存水素濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図7】同一の放置時間の被測定液について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の応答電流のピーク電流密度と、GC測定による溶存水素濃度とをプロットした特性図である。
【
図8】作用電極にPt電極を用いた場合のCV測定結果を示す特性図である。
【
図9】作用電極にPt-BDD電極を用いた場合のCV測定結果を示す特性図である。
【
図10】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において多数回のCV測定結果を示す特性図である。
【
図11】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において多数回のCV測定を行った際の応答電流のピーク電流密度と測定回数とをプロットした特性図である。
【
図12】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてCV測定前及びCV測定後のPt-BDD膜のSEM像を示す図である。
【
図13】本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の結果を示す特性図である。
【
図14】硫酸溶液のCV測定結果を示す特性図である。
【
図15】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水をベースに作製した実サンプルについてのCV測定結果を示す特性図である。
【
図16】本発明の溶存水素濃度測定装置の第2の実施形態における全体の装置構成を概略的に示すブロック図である。
【
図17】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図18】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図19】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図20】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図21】本実施形態の溶存水素濃度測定装置においてKCl水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図22】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図23】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図24】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図25】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図26】本実施形態の溶存水素濃度測定装置において水道水由来の水溶液のKCl濃度を変えてCV測定を行った場合の測定結果を示す特性図である。
【
図27】KCl水溶液による各KCl濃度の試料及び水道水由来の水溶液による各KCl濃度の試料について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定を行って得た応答電流のピーク値の平均値と、電気伝導度の測定値とをプロットした特性図である。
【
図28】KCl水溶液と水道水由来の水溶液とのKCl濃度及び電気伝導度の関係を示す特性図である。
【
図29】KCl水溶液における応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係を表す対応式に相当する特性図である。
【
図30】KCl水溶液における電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性図である。
【
図31】KCl水溶液における電気伝導度と水素濃度差との関係を示す特性図である。
【
図32】KCl水溶液における電気伝導度と水素濃度比との関係を示す特性図である。
【
図33】水道水由来の水溶液における電気伝導度と飽和水素濃度との関係を示す特性図である。
【
図34】水道水由来の水溶液における電気伝導度と水素濃度差との関係を示す特性図である。
【
図35】水道水由来の水溶液における電気伝導度と水素濃度比との関係を示す特性図である。
【0030】
図1は本発明の溶存水素濃度測定装置の第1の実施形態における全体の装置構成を概略的に示しており、
図2は
図1の溶存水素濃度測定装置における作用電極の構成例を概略的に示している。この実施形態は、電気伝導度を考慮する必要のない被測定液の溶存水素濃度を測定する装置の例である。
【0031】
図1において、10は水素水等の溶存水素濃度を測定すべき被測定液11が存在するセル、12は被測定液11中に浸漬された作用電極(WE)、13は被測定液11中に浸漬され作用電極12の電位を決定する際の基準となる参照電極(RE)、14は被測定液11中に浸漬され作用電極12との間の電流回路を形成する対電極(CE)、15はこれら作用電極12、参照電極13及び対電極14に電気的に接続された測定回路をそれぞれ示している。
【0032】
測定回路15は、CV測定を行うための、ポテンショスタット(定電位電解装置)15aと、このポテンショスタット15aに接続されており本実施形態ではコンピュータから構成される情報処理装置15bとを備えている。ポテンショスタット15aによって作用電極12と参照電極13との間の電位差を直線的に掃引し、情報処理装置15bによって作用電極12と対電極14との間を流れる応答電流のピーク値を検出することによって被測定液11中の溶存水素濃度を取得する。
【0033】
情報処理装置15bは、検出した応答電流のピーク値から、被測定液11中の溶存水素濃度を取得する。即ち、情報処理装置15bには、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式又は対応データがあらかじめ設定されて記憶されており、ピーク値が検出されるとこの対応式又は対応データから溶存水素濃度を得ることができる。単なる一例であるが、対応式は、Hcon=a×Apeak+bで表される。ここで、Hconは溶存水素濃度、Apeakは応答電流のピーク値、a及びbは定数である。
【0034】
本実施形態においては、作用電極12には白金(Pt)が修飾された導電性ダイヤモンド電極を用いており、参照電極13にはAg/AgClを用いており、対電極14には白金(Pt)を用いている。
【0035】
図2に示すように、この作用電極12は、シリコン基板12a上に導電性ダイヤモンド膜であるボロンドープドダイヤモンド(BDD)膜12bを成膜し、そのBDD膜12bの表面に白金(Pt)12cが電着によって修飾して形成されている。
【0036】
BDD膜12bの成膜は、例えば、シリコンウエハの鏡面側をダイヤモンドパウダ付きの研磨パッドで研磨し、メタノールで超音波洗浄して乾燥させた後、マイクロ波プラズマ化学気相成長法(マイクロ波プラズマCVD法)を用いて、水素ガス、炭素源及びホウ素源を供給することで行った。単なる一例であるが、プラズマ出力は5000W、成膜時間は6時間とした。
【0037】
白金(Pt)の修飾は、クロノアンペロメトリーにより、ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)を還元処理し、BDD膜12bの表面に白金12cを電着した。ここで、作用電極にBDD膜、対電極に白金(Pt)、参照電極にAg/AgClを用いた。溶液は、0.5M 硫酸(H2SO4)を用いて1mM H2PtCl6を調製した。印加電圧は-0.3V、印加時間は150秒であった。
【0038】
図3は成膜したBDD膜及びその上に白金(Pt)を修飾したPt-BDD膜のSEM像を示している。同図(A)はBDD膜、同図(B)はPt-BDD膜であり、倍率は10000倍である。同図(B)に示すように、BDD膜上に、白い粒のように見えるPtが修飾されている。
【0039】
本実施形態の溶存水素濃度測定装置について、以下に述べるように、種々の検討を行った。
【0040】
まず、CV測定の再現性及び溶存水素濃度の測定可能性について検討した。
【0041】
図2に示すPt-BDD膜12bを有する作用電極12を作成し、
図1に示す装置によりCV測定を行った。参照電極13はAg/AgCl、対電極14はPtとした。前処理としては、0.1M KCl(塩化カリウム)を用い、印加電圧が0.6V、印加時間が30秒のクロノアンペロメトリーを行った。作用電極12の研磨処理は行っていない。被測定液としては、0.1M KCl溶液を入れた容器に高圧で水素ガスを充填して作製した水素水を用いた。水素ガスは株式会社ドクターズマン製の水素充填マシンDAYS(登録商標)によって取得した。CV測定における印加電圧の掃引は-6V~+0.2V、掃引速度は100mV/sであった。
【0042】
再現性については、CV測定を3回(1st~3rd)行って調べた。
図4はCV測定結果であるボルタモグラムを示している。横軸は作用電極12の参照電極13に対する電位(V)、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流の電流密度(μA/cm
2)である。同図から分かるように、3回のCV測定において良好な再現性が得られている。その結果、本実施形態の構成によれば(Pt-BDD膜12bを有する作用電極12を用いれば)、水素水のCV測定が可能であることが分かる。
【0043】
溶存水素濃度の測定可能性については、CV測定の溶存水素濃度依存性を調べた。溶存水素濃度は、水素ガスを充填した被測定液の容器の蓋を開け、空気中に放置した時間(0分、30分、60分、90分、120分)によって変化させた。
図5はその測定結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。同図から分かるように、時間の経過と共に溶存水素濃度が低下すると、応答電流のピーク電流密度も低下している。従って、本実施形態の構成によれば(Pt-BDD膜12bを有する作用電極12を用いれば)、溶存水素濃度の測定が可能であることが分かる。
【0044】
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置についてCV測定による応答電流のピーク電流密度と、ガスクロマトグラフィ(GC)の測定による溶存水素濃度との対応関係を検討した。
【0045】
前述の場合と同様に、水素ガスを充填した被測定液を作製してから容器の蓋を開け、空気中に放置した時間(5分、30分、60分、90分、120分)毎に本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定とGCによる溶存水素濃度測定とを行った。
図6は本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。
【0046】
GC測定に使用した機器は、株式会社タイヨウ製のTRIlyzer mBA-3000であり、検出器としては半導体ガスセンサ、カラムはパックドカラム、キャリアガスは合成空気、インジェクション量は1mL(25℃)であった。このGCによる溶存水素濃度測定結果を表1に示す。
【表1】
【0047】
図7は、同一の放置時間(同一の溶存水素濃度)の被測定液について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によるCV測定の応答電流のピーク電流密度と、GC測定による溶存水素濃度とをプロットした特性図である。横軸は溶存水素濃度(ppm)、縦軸は応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)である。同図から、CV測定の応答電流のピーク電流密度とGC測定の溶存水素濃度との検量線が直線に乗り、CV測定による溶存水素濃度の測定が可能であることが分かる。なお、この検量線の近似式は、応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)=130×溶存水素濃度(ppm)-136となり、変換すると、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)+1.05となる。さらに、この計測における電極のピーク電流密度(μA/cm
2)=1.5×ピーク値(μA)と変換することが可能であり、ピーク値(μA)に変換すると、溶存水素濃度(ppm)=0.01155×応答電流のピーク値(μA)+1.05となる。これは、前述した対応式H
con=a×A
peak+bにおいて、a=0.01155、b=1.05とした場合に相当する。この式から、応答電流のピーク値A
peakが得られれば、溶存水素濃度H
conが求められることとなる。
【0048】
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置の作用電極12に関してCV測定の研磨前処理が不要であることを検討した。
【0049】
図8は作用電極として従来技術のようにPt電極を用いた場合の4回(1st~4th)のCV測定結果を示し、
図9は本実施形態のようにPt-BDD電極を用いた場合の3回(1st~3rd)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。Pt電極の場合も、Pt-BDD電極の場合も、前処理としての研磨は行われていない。
【0050】
作用電極としてPt電極を用いた場合、
図8に示すように測定回数を重ねるごとに応答電流のピーク電流密度が低減するのに対して、作用電極としてPt-BDD電極を用いた場合、
図9に示すように測定回数を重ねても応答電流のピーク電流密度はさほど変化せず、安定して再現性のあることが確認された。これは、Pt電極が研磨による前処理を必要とするのに対し、Pt-BDD電極が研磨による前処理を必要としないことを意味している。
【0051】
次に、本実施形態の溶存水素濃度測定装置における作用電極12の繰り返し再現性及び耐久性について検討した。
【0052】
図10は本実施形態の溶存水素濃度測定装置において、同一の作用電極12を用いた場合の28回(1~28)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。また、
図11は28回のCV測定における応答電流のピーク電流密度と測定回数とをプロットした図である。同図において、横軸は測定回数、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流の電流密度(μA/cm
2)である。なお、被測定液は測定ごとに作製した。
【0053】
図10に示すように、28回のCV測定において良好な再現性が得られている。また、
図11に示すように、同一の作用電極でCV測定を重ねていっても、応答電流のピーク電流密度は、多少のばらつきはあるものの、全体としては減少していないことが分かる。
【0054】
図12はCV測定前及び28回のCV測定後のPt-BDD膜のSEM像を示している。同図(A)はCV測定前、同図(B)は28回のCV測定後であり、倍率は4000倍である。同図(B)に示すように、Pt-BDD膜上に修飾されたPtが多少は減少しているが、電極自体に劣化がなく安定性が確認された。
【0055】
次に、上述した耐久性試験において生じた応答電流のピーク電流密度のばらつきについて検討した。
【0056】
まず、同じ条件で作製した複数の水素水について、CV測定とGC測定とを行い溶存水素濃度を測定した。
図13は本実施形態の溶存水素濃度測定装置による5回(1st~5th)のCV測定の結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。
【0057】
GC測定に使用した機器は、株式会社タイヨウ製のTRIlyzer mBA-3000であり、検出器としては半導体ガスセンサ、カラムはパックドカラム、キャリアガスは合成空気、インジェクション量は1mL(25℃)であった。このGCによる溶存水素濃度測定結果を表2に示す。
【表2】
【0058】
一方、被測定液として、硫酸溶液(0.1MのKClに1mMのH
2SO
4)を用い、繰り返しCV測定を行った。硫酸をCV測定した場合、水素水と同様に水素のピークを見ることが可能である。また、硫酸の濃度は1mMと一定に維持される。
図14はこの硫酸溶液の30回(1~30)のCV測定結果を示している。横軸及び縦軸は
図4の場合と同じである。同図から、30回の連続測定においてCV測定結果は全て一致していることが分かる。
【0059】
図13及び表2と、
図14とから、応答電流のピーク電流密度のばらつきは、作用電極の精度に基づくものではなく、作製した水素水の溶存水素のばらつきに基づくものであることが推察された。その結果、Pt-BDDによる作用電極12の耐久性が証明された。
【0060】
以上述べた検討においては、水素水に導電性を持たせるために電解質としてKClを添加している。しかしながら、市販されている水素水の多くは水道水に水素を充填して作製されているため、実サンプルとして、水道水をベースに作製した水素水についてCV測定の検討を行った。
【0061】
図15は水道水をベースに作製した実サンプルについてのCV測定結果を示しており、KClを0.1M添加した場合、KClを添加しない場合のCV測定の応答電流のピーク電流密度を表している。同図において、横軸は測定回、縦軸は応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)である。同図から分かるように、KClを添加せず電解質が少ない場合、応答電流のピーク電流密度は下がるが、5回の測定で再現性が得られた。その結果、被測定液を調製しないでも、水道水をベースに作製した実サンプルでCV測定が可能であり、溶存水素濃度を計測できることが分かった。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によれば、Pt-BDD電極である作用電極を用いてCV測定により応答電流のピーク電流密度を検出し、被測定液中の溶存水素濃度を取得しているため、電気化学測定法によって、再現性良く溶存水素濃度を測定することが可能である。また、Pt-BDD電極を用いているため、測定前に電極の研磨処理が不要となり、安定して高感度に溶存水素濃度の測定を行うことができる。また、Pt-BDD電極は、繰り返し測定した場合の良好な安定性及び耐久性が確認されている。
【0063】
本実施形態の溶存水素濃度測定装置は、電気伝導度を考慮する必要のない被測定液の溶存水素濃度を測定する場合に用いて好適である。即ち、日本の水道水で作製した水素水を測定する場合など、平均的水道水(例えば、電気伝導度10mS/m程度なる水道水)を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、電気伝導度の考慮は不要である。これは、例えば、水道水、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合である。
【0064】
図16は本発明の溶存水素濃度測定装置の第2の実施形態における全体の装置構成を概略的に示している。この実施形態は、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液の溶存水素濃度を測定する装置の例である。
【0065】
図16において、110は水素水等の溶存水素濃度を測定すべき被測定液111が存在するセル、112は被測定液111中に浸漬された作用電極(WE)、113は被測定液111中に浸漬され作用電極112の電位を決定する際の基準となる参照電極(RE)、114は被測定液111中に浸漬され作用電極112との間の電流回路を形成する対電極(CE)、115はこれら作用電極112、参照電極113及び対電極114に電気的に接続された測定回路をそれぞれ示している。また、116は測定回路115に接続されており、被測定液111の想定される電気伝導度値を選択する選択スイッチを示している。選択スイッチ116は、電気伝導度値の選択をアナログ式又はデジタル式に行う接点切替スイッチ、ボリューム又はデジタルスイッチである。
【0066】
測定回路115は、CV測定を行うための、ポテンショスタット(定電位電解装置)115aと、このポテンショスタット115aに接続されており本実施形態ではコンピュータから構成される情報処理装置115bとを備えている。選択スイッチ116はこの情報処理装置115bに接続されている。ポテンショスタット115aによって作用電極112と参照電極113との間の電位差を直線的に掃引し、情報処理装置115bによって作用電極112と対電極114との間を流れる応答電流のピーク値を検出し、出したピーク値から測定液111中の溶存水素濃度を取得する。この場合、選択スイッチ116で指定された電気伝導度値に応じて溶存水素濃度を補正する。
【0067】
情報処理装置115bは、検出した応答電流のピーク値と選択スイッチ116によって指定された電気伝導度とから、被測定液111中の溶存水素濃度を取得する。即ち、情報処理装置115bには、あらかじめ計測して得た被測定液の複数の電気伝導度値が設定されており、選択スイッチ116からの入力によって1つの電気伝導度値が指定される。応答電流のピーク値から溶存水素濃度を算出する際に、この指定された電気伝導度値によって、溶存水素濃度の補正が行われる。即ち、電気伝導度と応答電流のピーク値とは直線の対応関係にあり、応答電流のピーク値は被測定液の電気伝導度に影響を受ける。このため、本実施形態では、この影響を排除するように、応答電流のピーク値から算出される溶存水素濃度を電気伝導度に応じて補正している。
【0068】
情報処理装置115bには、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式又は対応データがあらかじめ設定されて記憶されており、ピーク値が検出されると、この対応式又は対応データから溶存水素濃度を得ることができる。得られた溶存水素濃度に、電気伝導度に基づく補正が行われ、最終的な溶存水素濃度が得られる。単なる一例であるが、応答電流のピーク値と溶存水素濃度との対応式は、Hcon=a×Apeak+bで表され、これに電気伝導度の補正を行う場合は、Hcon=a×Apeak+b+c、又はHcon=(a×Apeak+b)×dで表される。ここで、Hconは溶存水素濃度、Apeakは応答電流のピーク値、a及びbは定数、cは加算で補正を行う場合の水素濃度差、dは乗算で補正を行う場合の水素濃度比である。
【0069】
本実施形態においては、作用電極112には白金(Pt)が修飾された導電性ダイヤモンド電極を用いており、参照電極113にはAg/AgClを用いており、対電極114には白金(Pt)を用いている。
【0070】
作用電極112の構成及び作製方法は、第1の実施形態における
図2に示す作用電極12と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施形態において、CV測定の応答電流のピーク値を被測定液の電気伝導度に応じてどのように補正すべきかを検討するために、まず、種々のKCl濃度のKCl水溶液である試料を用意すると共に水道水をKClで調製して得られた水溶液(以下、水道水由来の水溶液)である試料を用意し、それら試料の電気伝導度を測定した。
【0072】
試料の電気伝導度の測定は、株式会社堀場製作所製のコンパクト電気伝導率計LAQUAtwinを用いた。この電気伝導率計は、被測定液中に1対の通電用電極を有する電気伝導率セルを浸漬し、これに電流を流して抵抗を測定して電気伝導率を求めるものである。
【0073】
KCl水溶液による種々のKCl濃度の試料について測定した電気伝導率を表3に示し、水道水由来の水溶液による種々のKCl濃度の試料について測定した電気伝導率を表4に示す。なお、表4において、KCl濃度が0のデータは、KClが添加されておらず、水道水のみの場合である。
【表3】
【表4】
【0074】
これら種々のKCl濃度の試料の各々について、本実施形態の溶存水素濃度測定装置により繰り返しCV測定を行った。
図17はKCl水溶液によるKCl濃度1mMの試料の4回(1st~4th)の測定結果であり、
図18はKCl水溶液によるKCl濃度2.5mMの試料の3回(1st~3rd)の測定結果であり、
図19はKCl水溶液によるKCl濃度5mMの試料の5回(1st~5th)の測定結果であり、
図20はKCl水溶液によるKCl濃度7.5mMの試料の9回(1st~9th)の測定結果であり、
図21はKCl水溶液によるKCl濃度10mMの試料の9回(1st~9th)の測定結果である。また、
図22は水道水由来の水溶液によるKCl濃度1mMの試料の10回(1st~10th)の測定結果であり、
図23は水道水由来の水溶液によるKCl濃度2.5mMの試料の12回(1st~12th)の測定結果であり、
図24は水道水由来の水溶液によるKCl濃度5mMの試料の16回(1st~16th)の測定結果であり、
図25は水道水由来の水溶液によるKCl濃度7.5mMの試料の14回(1st~14th)の測定結果であり、
図26は水道水由来の水溶液によるKCl濃度10mMの試料の11回(1st~11th)の測定結果である。これらの図において、横軸は作用電極12の参照電極13に対する電位(V)、縦軸は作用電極12及び対電極14間の電流(μA)である。
【0075】
図27は、KCl水溶液による各KCl濃度の試料及び水道水由来の水溶液による各KCl濃度の試料について、CV測定を行って得た応答電流のピーク値の平均値とその電気伝導度の測定値とをプロットした特性図である。横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は応答電流のピーク値(ピーク電流値)(μA)であり、AがKCl水溶液による試料、Bが水道水由来の水溶液による試料である。同図から、CV測定の応答電流のピーク値と電気伝導度との検量線が直線に乗った。この検量線の近似式は、KCl水溶液については、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851となり、応答電流のピーク値を電流密度に換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)=0.414×電気伝導度(mS/m)+47.777となる。水道水由来の水溶液については、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932となり、応答電流のピーク値を電流密度に換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)=0.375×電気伝導度(mS/m)+52.398となる。
【0076】
図28は、表3及び表4に基づいて、KCl水溶液と水道水由来の水溶液とのKCl濃度及び電気伝導度の関係を示している。横軸はKCl(mM)、縦軸は電気伝導度(mS/m)である。KCl水溶液の電気伝導度は、一般に、「近似0」がゼロ濃度の直線性を示すが、
図28に示す特性もKCl水溶液の電気伝導度は「近似0」となっている。また、水道水由来の水溶液では、KCl濃度が1mM程度では電気伝導度が水道水の影響を受けているが、KCl濃度が2.5mM以上(電気伝導度が50mS/m以上)では、電気伝導度がほとんどKClに基づく値となっている。
【0077】
次に、CV測定の応答電流のピーク値を被測定液の電気伝導度に応じてどのように補正すべきかを実際に検討する。
【0078】
KCl水溶液による検討
KCl水溶液について、
図27から応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851なる対応式Aが得られ、電流密度(μA/cm
2)=1.5×電流(μA)の関係から換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)=0.414×電気伝導度(mS/m)+47.777が得られる。本来は、KCl濃度により最大に溶解する溶存水素量が同一となることはないが、水道水の大気中での最大溶解濃度を1.6ppmとして演算すると仮定している。
【0079】
また、第1の実施形態で説明した応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係から、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)+1.05なる対応式が得られる。
図29はこの対応式に相当する応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係を示している。横軸は応答電流のピーク値(μA)、縦軸は溶存水素濃度(ppm)である。
【0080】
前述したように、水道水のみの場合の電気伝導度は16.7mS/mであり、水道水の大気中の最大溶存水素濃度は1.6ppmとなり、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=(1.6-1.05)/(0.0077×1.5)=47.62μAとなる。計測値は応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851=0.2759×16.7+31.851=36.46μAとなる。
【0081】
演算値と計測値との間に約11μAの差が生じている。この11μAは溶存水素濃度に換算すると、溶存水素濃度差(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)=0.0077×1.5×11=0.13ppmとなる。この差が許容範囲か否かは用途に応じると思われ、その被測定水溶液の用途によっては電気伝導度補正が必要になる。
【0082】
日本における水道水の電気伝導度は、ほぼ5~20(mS/m)であり、応答電流のピーク値、ピーク値の電流密度(ピーク電流密度)、及び溶存水素濃度を求めると、表5に示すようになる。
【表5】
この表5より、求められた溶存水素濃度には、0.05ppm程度の差があるのみであり、これは誤差範囲である。従って、日本の水道水からの水素水を計測するならば、電気伝導度10mS/m程度なる標準水を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、測定結果への電気伝導度の影響は無視できることが分かる。水道水の他に、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合も、それらの中心的被測定液での標準検量線が得られれば電気伝導度は無視することができる。
【0083】
また、
図28に示したKCl濃度と電気伝導度との関係から、電気伝導度範囲を0~150mS/mの広範囲で計測を行う場合には、補正を行うことが望ましい状況となる。ここで、電気伝導度が16.4mS/mにおける飽和水素濃度は1.6ppmであり、応答電流のピーク値の電流密度150μA/cm
2(電流値100μA)におけるピーク電流密度値と溶存水素濃度との関係から飽和濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×電流密度(μA/cm
2)+1.05=0.0077×150+1.05=2.20(ppm)となる。この100μAのピーク値となる電気伝導度は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851を変換して、電気伝導度(mS/m)=(ピーク値(μA)‐31.851)/0.2759=(100-31.851)/0.2759=247(mS/m)となる。
図30は、電気伝導度が16.4mS/mのときの飽和水素濃度を1.6ppmとし、電気伝導度が247mS/mのときの飽和水素濃度を2.2ppmとして表した、電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性である。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は飽和水素濃度(ppm)である。
【0084】
同図より、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573が成り立つことが分かる。この結果と計測値結果とをまとめると、表6に示すようになる。表6において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との差が水素濃度差(ppm)であり、水素濃度差(ppm)=-0.0006×電気伝導度(mS/m)+0.1394で与えられる。
【表6】
【0085】
図31は表6における電気伝導度(mS/m)と水素濃度差(ppm)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度差(ppm)である。応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水素濃度差を加算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
【0086】
即ち、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05-(0.0006×電気伝導度(mS/m))+0.1394=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)-0.0006×電気伝導度(mS/m)+1.1894で求めることができる。
【0087】
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表7のようになる。
【表7】
【0088】
表7より、以上の補正方法によれば、誤差が1%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
【0089】
因みに、上述したような加算補正では無く、乗算補正で補正後演算水素濃度を求めると、表8に示すようになる。表8において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0026×電気伝導度(mS/m)+1.5573で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2759×電気伝導度(mS/m)+31.851で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との比が水素濃度比であり、水素濃度比=演算飽和水素濃度(ppm)/計測演算飽和水素濃度(ppm)で与えられる。
【表8】
【0090】
図32は表8における電気伝導度(mS/m)と水素濃度比(飽和/計測)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度比(飽和/計測)である。水素濃度比(飽和/計測)は補正係数であり、応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水水素濃度比(飽和/計測)、即ち補正係数を乗算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
【0091】
図32から、補正係数=-0.0005×電気伝導度(mS/m)+1.0946の関係が成り立つため、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=(0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05)×(-0.0005×電気伝導度(mS/m)+1.0946)で求めることができる。
【0092】
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表9のようになる。
【表9】
【0093】
表9より、この補正方法によれば、誤差が1%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
【0094】
水道水由来の水溶液による検討
水道水由来の水溶液について、
図27から応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932なる対応式Bが得られ、電流密度(μA/cm
2)=1.5×電流(μA)の関係から換算すると、応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)=0.3749×電気伝導度(mS/m)+52.398が得られる。本来は、KCl濃度により最大に溶解する溶存水素量が同一となることはないが、水道水の大気中での最大溶解濃度を1.6ppmとして演算すると仮定している。
【0095】
また、第1の実施形態で説明した応答電流のピーク値と溶存水素濃度との関係から、
図29に示す、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×応答電流のピーク電流密度(μA/cm
2)+1.05なる対応式が得られる。
【0096】
前述したように、水道水のみの場合の電気伝導度は16.7mS/mであり、水道水の大気中の最大溶存水素濃度は1.6ppmとなり、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=(1.6-1.05)/(0.0077×1.5)=47.62μAとなる。計測値は応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932=0.2759×16.7+34.932=39.12μAとなる。
【0097】
演算値と計測値との間に約8.5μAの差が生じている。この8.5μAは溶存水素濃度に換算すると、溶存水素濃度差(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)=0.0077×1.5×8.5=0.098ppmとなる。この差が許容範囲か否かは用途に応じると思われ、その被測定水溶液の用途によっては電気伝導度補正が必要になる。
【0098】
表5に関連して説明したように、日本の水道水で水素水を作製する際に、電気伝導度10mS/m程度なる標準水を基準に水素濃度と応答電流のピーク値(又はピーク電流密度)にて検量線を得ておけば、日本の水道水で水素水を作製する際に、測定結果への電気伝導度の影響は無視できる。水道水の他に、ミネラル水、血液、輸液、透析水等を被測定液とする場合も電気伝導度は無視することができる。
【0099】
また、
図28に示したKCl濃度と電気伝導度との関係から、電気伝導度範囲を0~150mS/mの広範囲で計測を行う場合には、補正を行うことが望ましい状況となる。ここで、電気伝導度が16.4mS/mにおける飽和水素濃度は1.6ppmであり、応答電流のピーク値の電流密度150μA/cm
2(電流値100μA)におけるピーク電流密度値と溶存水素濃度との関係から飽和濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×電流密度(μA/cm
2)+1.05=0.0077×150+1.05=2.20(ppm)となる。この100μAのピーク値となる電気伝導度は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932を変換して、電気伝導度(mS/m)=(ピーク値(μA)‐34.932)/0.2499=(100-34.932)/0.2499=260(mS/m)となる。
図33は、電気伝導度が16.4mS/mのときの飽和水素濃度を1.6ppmとし、電気伝導度が260mS/mのときの飽和水素濃度を2.2ppmとして表した、電気伝導度に対する飽和水素濃度の特性である。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は飽和水素濃度(ppm)である。
【0100】
同図より、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596が成り立つことが分かる。この結果と計測値結果とをまとめると、表10に示すようになる。表10において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との差が水素濃度差(ppm)であり、水素濃度差(ppm)=-0.0004×電気伝導度(mS/m)+0.1061で与えられる。
【表10】
【0101】
図34は表10における電気伝導度(mS/m)と水素濃度差(ppm)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度差(ppm)である。応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水素濃度差を加算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
【0102】
即ち、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05-(0.0004×電気伝導度(mS/m))+0.1061=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)-0.0004×電気伝導度(mS/m)+1.156で求めることができる。
【0103】
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表11のようになる。
【表11】
【0104】
表11より、以上の補正方法によれば、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
【0105】
因みに、上述したような加算補正では無く、乗算補正で補正後演算水素濃度を求めると、表12に示すようになる。表12において、演算飽和水素濃度は、演算飽和水素濃度(ppm)=0.0025×電気伝導度(mS/m)+1.5596で算出され、応答電流のピーク値は、応答電流のピーク値(μA)=0.2499×電気伝導度(mS/m)+34.932で算出され、溶存水素濃度は、溶存水素濃度(ppm)=0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05で算出される。また、演算飽和水素濃度(ppm)と、計測演算飽和水素濃度(ppm)との比が水素濃度比であり、水素濃度比=演算飽和水素濃度(ppm)/計測演算飽和水素濃度(ppm)で与えられる。
【表12】
【0106】
図35は表12における電気伝導度(mS/m)と水素濃度比(飽和/計測)との関係を示している。同図において、横軸は電気伝導度(mS/m)、縦軸は水素濃度比(飽和/計測)である。水素濃度比(飽和/計測)は補正係数であり、応答電流のピーク値から演算された溶存水素濃度から同図に示す水水素濃度比(飽和/計測)、即ち補正係数を乗算して補正すれば、電気伝導度に基づく補正を行うことができる。
【0107】
図35から、補正係数=-0.0003×電気伝導度(mS/m)+1.0708の関係が成り立つため、補正後の演算水素濃度は、補正後演算水素濃度(ppm)=(0.0077×1.5×電流ピーク値(μA)+1.05)×(-0.0003×電気伝導度(mS/m)+1.0708)で求めることができる。
【0108】
この式を用いて補正後演算水素濃度を求めると、表13のようになる。
【表13】
【0109】
表13より、この補正方法によれば、誤差が2%程度生じるが、ほぼ同じ値の溶存水素濃度となる。
【0110】
なお、本実施形態における、CV測定の再現性及び溶存水素濃度の測定可能性についての検討結果、CV測定による応答電流のピーク値とGCの測定による溶存水素濃度との対応関係の検討結果、作用電極に関してCV測定の研磨前処理が不要であることの検討結果、作用電極の繰り返し再現性及び耐久性についての検討結果、耐久性試験において生じた応答電流のピーク値のばらつきについての検討結果、並びに実サンプルとして、水道水をベースに作製した水素水についてCV測定の検討結果は、第1の実施形態の場合と同様であった。
【0111】
以上説明したように、本実施形態の溶存水素濃度測定装置によれば、Pt-BDD電極である作用電極を用いてCV測定により応答電流のピーク値を検出し、被測定液中の溶存水素濃度を取得しているため、電気化学測定法によって、再現性良く溶存水素濃度を測定することが可能である。また、Pt-BDD電極を用いているため、測定前に電極の研磨処理が不要となり、安定して高感度に溶存水素濃度の測定を行うことができる。また、Pt-BDD電極は、繰り返し測定した場合の良好な安定性及び耐久性が確認されている。さらに、検出した応答電流のピーク値を、被測定液の電気伝導度に応じて補正しているため、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液であっても溶存水素濃度を正しくかつ正確に測定することができる。
【0112】
上述した第2の実施形態においては、選択スイッチ116から入力される電気伝導度値に応じて応答電流のピーク値を補正しているが、被測定液111の電気伝導度を測定するセンサを設け、このセンサによって測定された電気伝導度値に応じて応答電流のピーク値を補正しても良い。
【0113】
本実施形態の溶存水素濃度測定装置は、電気伝導度を考慮する必要のある被測定液の溶存水素濃度を測定する場合に用いて好適である。即ち、被測定液の電気伝導度範囲が100mS/mを超える様な大きな範囲の被測定液になる場合には、場合によっては、電気伝導度を考慮する必要がある。これは、例えば、純水、飲料水、炭酸水、醤油、ドレッシング、ジュース等の被測定液を同一計測器で測定する場合である。
【0114】
以上説明した実施形態においては、CV測定回路により、作用電極と参照電極との間の電位差を直線的に掃引してこれら作用電極と対電極との間を流れる応答電流のピーク値を検出しているが、ピーク値が現れる電位差が予見できる場合には、その電位差又はその電位差を含む所定範囲の電位差を作用電極と参照電極との間に印加してピーク応答電流を測定し、溶存水素濃度を算出するように構成しても良い。これにより、回路構成が簡単となり、小型かつ安価な溶存水素濃度測定装置を提供することができる。
【0115】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0116】
10、110 セル
11、111 被測定液
12、112 作用電極(WE)
12a、112a シリコン基板
12b、112b BDD膜
12c、112c Pt
13、113 参照電極(RE)
14、114 対電極(CE)
15、115 測定回路
15a、115a ポテンショスタット
15b、115b 情報処理装置
116 選択スイッチ