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特開2023-26012仮設橋脚の支持構造及び橋梁上部構造の更新方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026012
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】仮設橋脚の支持構造及び橋梁上部構造の更新方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20230216BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D21/00 B
E01D22/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131575
(22)【出願日】2021-08-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 通太郎
(72)【発明者】
【氏名】井隼 俊也
(72)【発明者】
【氏名】崎谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】浦川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 定明
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA13
2D059CC03
2D059DD08
2D059GG05
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】レベル2地震動に対する耐震性能を満たし、大型化せずに鋼材使用量が少なく安価に設置可能な仮設橋脚の支持構造及びそれを用いた橋梁上部構造の更新方法を提供する。
【解決手段】離間して立設された2つの既設橋脚P2,P3の間に構築される複数の鋼材が組み合わされた仮設橋脚1の支持構造において、複数の横梁4と、これらの複数の横梁4上に設置された複数の桁材5と、を備え、前記横梁4を、前記2つの既設橋脚P2,P3の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体3間に架け渡して接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して立設された2つの既設橋脚の間に構築される複数の鋼材が組み合わされた仮設橋脚の支持構造であって、
複数の横梁と、これらの複数の横梁上に設置された複数の桁材と、を備え、
前記横梁は、前記2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体間に架け渡されて接合されていること
を特徴とする仮設橋脚の支持構造。
【請求項2】
前記一対の枠体は、それぞれ前記既設橋脚に沿って立設された複数の仮設支柱で下方から支持されていること
を特徴とする請求項1に記載の仮設橋脚の支持構造。
【請求項3】
前記横梁は、地震動による前記2つの既設橋脚の応答スペクトルが同期するように前記一対の枠体と剛接合されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の仮設橋脚の支持構造。
【請求項4】
離間して立設された既設橋脚が複数あり、それぞれの既設橋脚を取り囲む枠体がそれぞれ別体となってそれらの枠体が横梁で連結されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造。
【請求項5】
既設橋梁の上部構造を取り替えて更新する橋梁上部構造の更新方法であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造を備えた仮設橋脚を、離間して立設された2つの既設橋脚間に構築した後、前記仮設橋脚上に架け替える新設の上部構造を載置すること
を特徴とする橋梁上部構造の更新方法。
【請求項6】
前記新設の上部構造は、プレキャスト製のPCa横梁を備え、上下線のそれぞれのPCa横梁同士を鋼殻を介して連結して前記仮設橋脚の上に載置し、前記2つの既設橋脚間に一時的に車線を設けて共用すること
を特徴とする請求項5に記載の橋梁上部構造の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設橋脚の支持構造及び橋梁上部構造の更新方法に関し、詳しくは、レベル2地震動に対する耐震性能を有する仮設橋脚の支持構造及びそれを用いた橋梁上部構造の更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの橋梁の橋桁や床版などの上部構造(上部工)は、経年劣化に伴い一定期間経過後に架け替えて更新する必要がある。高速道路や鉄道などの橋梁の上部構造を更新する場合、高速道路等として供用しつつ更新するため、片側車線ずつ更新作業を行って、更新工事で使用できない車線の代わりに仮設構造物である仮設橋脚を構築し、その仮設橋脚の上に床版を設置して車両等が通行させて使用したいとの要請がある。このように暫定共用時の仮設橋脚は、しばしば発生する地震動(以下、レベル1地震動という。)だけでなく、橋の設計共用期間中に発生することは極めて稀であるが一旦生じると橋に及ぼす影響が甚大であると考えられる地震動(以下、レベル2地震動という。)に対する耐震性能を要求される場合がある(道路橋示方書(V耐震設計編)・同解説参照)。
【0003】
このような仮設橋脚は、一般的に、養生期間がなく現地作業を短期間で行えることや汎用性の問題から、鋼製部材で構成されることが多い。しかし、鋼製部材は、塑性変形が見込めないことより、レベル2地震動の応答値を弾性範囲内に収めて設計する必要がある。その結果、仮設橋脚の要求性能として、レベル2地震動に対する耐震性能があった場合、仮設部材の大型化が生じるという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、本願出願人が提案した、橋脚の柱頭部に仮支柱を設置し、PC鋼材で該柱頭部に固定すると共に、仮支柱を左右に張り出す橋体ブロックと前記仮支柱の頂部に渡って山形に配置し、型枠を組む仮斜材の頂部の周りに付着を確保する大きさのコンクリートを打設する橋梁の張出し架設工法及びそれに用いる仮支柱が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項3、明細書の段落[0020]~[0024]、図面の図1図4等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の仮支柱は、仮設橋脚の支持構造ではない上、レベル2地震動に対する耐震性能については、特に考慮されておらず、前記問題点を解決できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-52573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、レベル2地震動に対する耐震性能を満たし、大型化せずに鋼材使用量が少なく安価に設置可能な仮設橋脚の支持構造及びそれを用いた橋梁上部構造の更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る仮設橋脚の支持構造は、離間して立設された2つの既設橋脚の間に構築される複数の鋼材が組み合わされた仮設橋脚の支持構造であって、複数の横梁と、これらの複数の横梁上に設置された複数の桁材と、を備え、前記横梁は、前記2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体間に架け渡されて接合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る仮設橋脚の支持構造は、請求項1に係る仮設橋脚の支持構造において、前記一対の枠体は、それぞれ前記既設橋脚に沿って立設された複数の仮設支柱で下方から支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る仮設橋脚の支持構造は、請求項1又は2に係る仮設橋脚の支持構造において、前記横梁は、地震動による前記2つの既設橋脚の応答スペクトルが同期するように前記一対の枠体と剛接合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る仮設橋脚の支持構造は、請求項1ないし3のいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造において、離間して立設された既設橋脚が複数あり、それぞれの既設橋脚を取り囲む枠体がそれぞれ別体となってそれらの枠体が横梁で連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る橋梁上部構造の更新方法は、既設橋梁の上部構造を取り替えて更新する橋梁上部構造の更新方法であって、請求項1ないし4のいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造を備えた仮設橋脚を、離間して立設された2つの既設橋脚間に構築した後、前記仮設橋脚上に架け替える新設の上部構造を載置することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る橋梁上部構造の更新方法は、請求項5に係る橋梁上部構造の更新方法において、前記新設の上部構造は、プレキャスト製のPCa横梁を備え、上下線のそれぞれのPCa横梁同士を鋼殻を介して連結して前記仮設橋脚の上に載置し、前記2つの既設橋脚間に一時的に車線を設けて共用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1~4に係る発明によれば、横梁が2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体間に架け渡されて接合されているので、既設橋脚を用いてレベル2地震動の水平力に対抗することができるため、レベル2地震動に対する耐震性能を有することができる。その上、請求項1~4に係る発明は、既設橋脚を用いて地震動の水平力に対抗するため、仮設橋脚単独でレベル2地震動の応答値を弾性範囲内に収めて設計する場合と比べてはるかに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【0015】
特に、請求項2に係る発明によれば、既設橋脚にあと施工アンカーを用いて枠体を止め付ける必要がなくなり、既設橋脚を損傷するおそれを低減することができる。また、仮設支柱は既設橋脚に沿って立設されているので、仮設支柱単体で地震動の水平力に対抗する必要がなく、鋼材のサイズを小さくして安価に設置することができる。
【0016】
特に、請求項3に係る発明によれば、さらに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【0017】
特に、請求項4に係る発明によれば、更新工事の進捗に合わせて仮設橋脚を増設することができ、仮設橋脚の設置期間を短縮することにより、仮設材のリース料を低減できるとともに、橋梁の下部の通行等の障害を極力少なくすることができる。
【0018】
請求項5及び請求項6に係る発明によれば、仮設橋脚の横梁が2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体間に架け渡されて接合されているので、仮設橋脚がレベル2地震動に対する耐震性能を有し、安全に上部構造の更新工事を行うことができる。
【0019】
特に、請求項6に係る発明によれば、新設するPCa横梁を用いて、既設橋脚間に一時的に上下線のいずれか一方の車線を設けて共用するので、通行規制を少なくして安全に上部構造の更新工事を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る仮設橋脚の支持構造を有した仮設橋脚を既設橋梁の橋軸方向に沿って見た正面図である。
図2図2は、同上の仮設橋脚を示す図1の平面図である。
図3図3は、同上の仮設橋脚の鉛直断面を橋軸直角方向に見た断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る仮設橋脚の支持構造を有した仮設橋脚を既設橋梁の橋軸方向に沿って見た正面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の上下線連結横梁架設工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図6図6は、同上の橋梁上部構造の更新方法の上下線連結横梁架設工程を示す橋梁を俯瞰して見た斜視図である。
図7図7は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図8図8は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す図7の中央2車線部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図9図9は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図10図10は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻撤去工程を示す図9の中央2車線部分を拡大した部分拡大パース図である。
図11図11は、同上の橋梁上部構造の更新方法の下り線横梁緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図12図12は、同上の橋梁上部構造の更新方法の下り線横梁緊張工程を示す下り線側のPCa横梁の外側端部を拡大した拡大斜視図である。
図13図13は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再設置工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図14図14は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再設置工程を示す図13の中央2車線部分を拡大した部分拡大パース図である。
図15図15は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル再緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図16図16は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル再緊張工程を示す中央2車線部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図17図17は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図18図18は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す中央2車線部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図19図19は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図20図20は、同上の橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル撤去工程を示す中央2車線部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図21図21は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図22図22は、同上の橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再撤去工程を示す図21の中央2車線部分を拡大した部分拡大パース図である。
図23図23は、同上の橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図24図24は、同上の橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル解放工程を示す図23の中央2車線部分を拡大した部分拡大パース図である。
図25図25は、同上の橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図26図26は、同上の橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル撤去工程を示す図25の中央2車線部分を拡大した部分拡大パース図である。
図27図27は、同上の橋梁上部構造の更新方法の上り線横梁緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
図28図28は、同上の橋梁上部構造の更新方法の上り線横梁緊張工程を示す上り線側のPCa横梁PBの外側端部を拡大した拡大斜視図である。
図29図29は、同上の橋梁上部構造の更新方法の完了状態を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る仮設橋脚の支持構造及び橋梁上部構造の更新方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
<仮設橋脚の支持構造>
[第1実施形態]
図1図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る仮設橋脚の支持構造について説明する。既設橋梁B1の上部構造B2を更新する際に、中央分離帯付近の上下1車線ずつを撤去して2つの既設橋脚P2,P3の間に構築される仮設橋脚1を例示して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る仮設橋脚の支持構造を有した仮設橋脚1を既設橋梁の橋軸方向に沿って見た正面図である。また、図2は、本実施形態に係る仮設橋脚1を示す平面図であり、図3は、本実施形態に係る仮設橋脚1の鉛直断面を橋軸直角方向に見た断面図である。
【0023】
先ず、簡単に既設橋梁B1について説明する。図1に示すように、既設橋梁B1は、上下各3車線ずつのRC中空床版桁の橋梁である。この既設橋梁B1は、鉛直断面において、左右一対の既設の基礎F1,F2と、これらの基礎F1,F2上に立設された4つの既設橋脚P1~P4と、RC中空床版桁からなる上部構造B2など、から構成されている。また、上部構造B2には、壁高欄K1が設けられているとともに、上部構造B2の撤去した撤去部分B2#に沿って置くだけで壁高欄として機能する載置型の仮設壁高欄K2が設置されている。
【0024】
図1図3に示すように、第1実施形態に係る仮設橋脚1は、複数の鋼材が組み合わされた仮設構造物である。この仮設橋脚1は、複数の仮設支柱2と、これらの複数の仮設支柱2の上に載置された左右一対の矩形の枠体3と、これら枠体3,3間に架け渡された複数の横梁4と、これらの複数の横梁4上に設置された複数の桁材5など、から構成されている。
【0025】
(仮設支柱)
本実施形態に係る仮設支柱2は、H形鋼からなる支柱であり、下端が基礎F1,F2にあと施工アンカーで止め付けられた上、根巻コンクリート2aが打設されて基礎F1,F2に固定されている。また、仮設支柱2と枠体3との間には、枠体3の高さ調整が可能なようにキリンジャッキ2bが介装されている。
【0026】
この仮設支柱2は、その側面が既設橋脚P2,P3に沿って取り付けられ、枠体3を下方から支持する機能を有している。このように、仮設支柱2が、既設橋脚P2,P3に沿って取り付けられているので、あと施工アンカーを用いて枠体を既設橋脚P2,P3に止め付ける必要がなくなり、既設橋脚を損傷するおそれを低減することができる。また、仮設支柱2は、既設橋脚P2,P3に沿って立設されているので、仮設支柱2単体で地震動の水平力に対抗する必要がなく、鋼材のサイズを小さくして安価に設置することができる。
【0027】
(枠体)
本実施形態に係る枠体3は、H形鋼が既設橋脚P2,P3の周囲をそれぞれ取り囲むように溶接等で接合されて組み合わされた矩形状の枠体であり、既設橋脚P2,P3の水平断面の外周形状に、枠体3の内周面が当接するように構成されている。勿論、枠体3は、H形鋼に限られず、溝形鋼や角形鋼管など他の鋼材から構成されていても構わない。また、枠体3は、溶接で接合されているものに限られず、ボルト接合やリベット接合など、機械的に接合されていても構わない。
【0028】
(横梁)
本実施形態に係る横梁4は、H形鋼からなる鋼材であり、前述の一対の枠体3,3間に架け渡されて接合されている。この横梁4は、地震動による2つの既設橋脚P2,P3の応答スペクトルが同期するように一対の枠体3,3と溶接等で剛接合されている。但し、横梁4は、枠体3,3と剛接合されているものに限られず、ピン接合されていても構わない。枠体3,3間に横梁4で軸力を伝達するように構成するだけで、既設橋脚P2,P3を利用して地震動に対抗することができるからである。
【0029】
しかし、仮設橋脚1は、枠体3,3と剛接合されていることにより、地震動に対して既設橋脚と協働させ、仮設橋脚1全体を小型の鋼材で構成してもレベル2地震動に対する耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【0030】
(桁材)
桁材5は、H形鋼からなる鋼材であり、前述の横梁4,4上に載置されて溶接等で接合されている。本実施形態に係る桁材5は、スペーサーブロック5aを介して横梁4,4上に載置されて接合されている。勿論、桁材5及びスペーサーブロック5aと横梁4溶接で接合されているものに限られず、ボルト接合やリベット接合など、機械的に接合されていても構わない。また、スペーサーブロック5aは、桁材5と同様にH形鋼から構成しても構わない。
【0031】
以上説明した第1実施形態に係る仮設橋脚1によれば、横梁4が2つの既設橋脚P2,P3の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体3間に架け渡されて接合されて既設橋脚P2,P3に支持されているので、既設橋脚P2,P3を利用してレベル2地震動の水平力に対抗することができる。このため、仮設橋脚1は、レベル2地震動に対する耐震性能を有することができる。
【0032】
その上、仮設橋脚1は、既設橋脚P2,P3を用いて地震動の水平力に対抗するため、仮設橋脚1単独でレベル2地震動の応答値を弾性範囲内に収めて設計する場合と比べてはるかに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚1を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【0033】
[第2実施形態]
図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る仮設橋脚1’の支持構造について説明する。本発明の第2実施形態に係る仮設橋脚の支持構造を有した仮設橋脚1’が、前述の第1実施形態に係る仮設橋脚1と相違する点は、必須である仮設橋脚1の構成に、前述の既設橋梁B1の外側の既設橋脚P1,P4にさらに他の構成が増設されている点である。よって、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係る仮設橋脚の支持構造を有した仮設橋脚1’を既設橋梁の橋軸方向に沿って見た正面図である。
【0034】
(ブラケット枠体)
仮設橋脚1’は、前述の既設橋脚P2,P3の外側の既設橋脚P1,P4の周囲をそれぞれ取り囲むようにブラケット枠体6を備えている。このブラケット枠体6は、H形鋼が既設橋脚P1,P4の周囲をそれぞれ取り囲むように溶接等で接合されて組み合わされた矩形状の枠体であり、枠体を構成するH形鋼の一部が既設橋梁B1の橋軸直角方向外側へブラケット部6aとして突設されている。
【0035】
(ブラケット支柱)
このブラケット枠体6は、内側が前述の仮設支柱2で下方から支持されているとともに、外側が、ブラケット支柱7で下方から支持されている。このブラケット支柱7も、仮設支柱2と同様に、H形鋼などの鋼材から構成され、既設橋脚P1,P4に沿って立設されている。また、このブラケット支柱7の下端も、基礎F1,F2にあと施工アンカーで止め付けられた上、根巻コンクリート7aが打設されて基礎F1,F2に固定されている。なお、ブラケット支柱7は、キリンジャッキなしでブラケット枠体6に対して溶接等で剛接合されている。
【0036】
なお、ブラケット支柱7には、既設橋脚P1,P4の外周に沿って内側に向け、肘木部7bが突設されている。この肘木部7bは、既設橋脚P1,P4の外周に当接することにより、既設橋脚P1,P4を利用してブラケット部6aに作用する橋軸方向に沿った応力に対抗する機能を有している。
【0037】
(斜材)
また、ブラケット枠体6のブラケット部6aは、鋼材からなる複数の斜材7cでブラケット支柱7及び仮設支柱2に接合されて支持されている。
【0038】
(第2横梁)
ブラケット枠体6と枠体3との間には、第2横梁8が架け渡されている。この第2横梁8は、H形鋼からなる鋼材であり、地震動による2つの既設橋脚P1,P2(P3,P4)の応答スペクトルが同期するようにブラケット枠体6と枠体3との間に溶接等で剛接合されている。但し、第2横梁8は、横梁4と同様に、ブラケット枠体6及び枠体3と剛接合されているものに限られず、ピン接合されていても構わない。
【0039】
また、第2横梁8の上には、前述の桁材5がスペーサーブロック5aを介して第2横梁8上に載置されて溶接等で接合されている。
【0040】
(ブラケット桁材)
そして、ブラケット枠体6のブラケット部6aの上には、H形鋼からなる複数のブラケット桁材9が載置されて溶接等で接合されている。
【0041】
以上説明した第2実施形態に係る仮設橋脚1’によれば、第2横梁8が2つの既設橋脚P1,P2(P3,P4)の周囲をそれぞれ取り囲むブラケット枠体6と枠体3との間に架け渡されて接合されて既設橋脚P1,P2(P3,P4)に支持されているので、仮設橋脚1から増設する部分も、既設橋脚P2,P3を用いてレベル2地震動の水平力に対抗することができる。
【0042】
また、仮設橋脚1’は、既設橋脚P1,P2を用いて地震動の水平力に対抗するため、仮設橋脚1’単独でレベル2地震動の応答値を弾性範囲内に収めて設計する場合と比べてはるかに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚1’を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【0043】
それに加え、仮設橋脚1’によれば、既設橋脚P1~P4を取り囲む枠体3,ブラケット枠体6がそれぞれ別体となってそれらが横梁4,第2横梁8で連結されているので、更新工事の進捗に合わせて仮設橋脚1から既設橋脚P4側、既設橋脚P1側と順次、仮設橋脚1’を増設することができる。このため、仮設橋脚1’によれば、仮設橋脚1’の設置期間を短縮することにより、仮設材のリース料を低減できるとともに、既設橋梁B1の下部の通行等の障害を極力少なくすることができる。なお、本発明に係る仮設橋脚は、ブラケット枠体と横梁を増設していくことで既設橋脚が4つ以上ある橋梁にも好適に適用することができる。
【0044】
<橋梁上部構造の更新方法>
次に、図1図4図5図29を用いて、本発明の実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法について説明する。前述の第2実施形態に係る仮設橋脚1’を用いて、前述の4つの既設橋脚P1~P4を有する上下3車線ずつの既設橋梁B1のRC中空床版桁からなる上部構造B2をプレキャスト製のT桁T1に取り替えて更新する場合を例示して説明する。なお、本実施形態では、複数のT桁T1は、支承数を低減するためプレキャスト製のPCa横梁PBを介して設置される。
【0045】
(上部構造中央部撤去工程)
先ず、図1図4に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、上部構造B2の中央分離帯付近の上下1車線ずつの領域である撤去部分B2#を撤去する上部構造中央部撤去工程を行う。また、このとき、図4に示すように、通行車両が落下しないように撤去部分B2#に沿って前述の載置型の仮設壁高欄K2を設置する。
【0046】
(仮設橋脚設置工程)
その後、図4に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前述の仮設橋脚1’を組み立てて設置する仮設橋脚設置工程を行う。
【0047】
但し、このとき、図1に示すように、前述の仮設橋脚1を組み立てて設置して、更新工事の進捗に合わせて仮設橋脚1’の残りの構成を順次増設してもよい。前述のように、仮設橋脚1’の設置期間を短縮することにより、仮設材のリース料を低減できるとともに、既設橋梁B1の下部の通行等の障害を極力少なくすることができるからである。
【0048】
(上下線連結横梁架設工程)
次に、図5図6に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、上下線連結横梁架設工程を行う。図5は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の上下線連結横梁架設工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図6は、同上下線連結横梁架設工程を示す橋梁を俯瞰して見た斜視図である。
【0049】
本工程では、予めPCブラケット及び定着具を設置して新設する上り線のPCa横梁PBと下り線のPCa横梁PB’を、鋼材からなるブロック体である鋼殻IBを介して橋軸直角方向にPC鋼材である外ケーブルで緊張して連結しておく。そして、仮設橋脚1’の桁材5の上に連結したPCa横梁PB及びPCa横梁PB’を載置する。
【0050】
(T桁載置工程)
次に、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程で載置したPCa横梁PB及びPCa横梁PB’間に複数のT桁T1を載置するT桁載置工程を行う。そして、PCブラケット及び緊張ケーブルを用いて橋軸方向にPC鋼材でPCa横梁PB及びPCa横梁PB’間を緊張し、プレストレスを導入して複数のT桁T1とPCa横梁PB及びPCa横梁PB’を一体化し、既設橋梁B1の撤去部分B2#に相当する中央部に2車線分の新規な仮設路線を開通させ、更新工事を行いながら仮設の車両用通路として共用する。
【0051】
このとき、仮設橋脚1’の横梁4が2つの既設橋脚P2,P3の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体3間に架け渡されて接合されて既設橋脚P2,P3に支持されている。このため、仮設橋脚1’で支持された中央部の2車線分の新規な仮設路線は、既設橋脚P2,P3を用いて地震動の水平力に対抗することができ、レベル2地震動にも対抗することができる。このため、仮設橋脚1で支持された中央部の2車線分の新設の仮設路線は、レベル2地震動に対する耐震性能を有することができ、上部構造更新作業時の安全な車両通路として使用するこができる。
【0052】
(下り線上部構造撤去工程)
次に、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程で設置した中央部の2車線分の新設路線を下り線として利用し、図5図6で示した外側2車線分の下り線の既設の上部構造B2を撤去する下り線上部構造撤去工程を行う。
【0053】
(下り線新設工程)
次に、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程で撤去した外側2車線分の下り線部分に、新設の下り線のPCa横梁PB’を設置した上、複数のT桁T1を載置する下り線新設工程を行う。
【0054】
(外ケーブル解放工程)
次に、図7図8に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、PCa横梁PB及びPCa横梁PB’を一体化していたPC鋼材である外ケーブルを解放する外ケーブル解放工程を行う。図7は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図8は、中央2車線部分を拡大して同外ケーブル解放工程を示す部分拡大斜視図である。
【0055】
(鋼殻撤去工程)
次に、図9図10に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、PCa横梁PBとPCa横梁PB’との間に介装していた鋼殻IBを一時的に撤去する鋼殻撤去工程を行う。図9は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の鋼殻撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図10は、図9の中央2車線部分を拡大して同鋼殻撤去工程を示す部分拡大パース図である。
【0056】
(下り線横梁緊張工程)
次に、図11図12に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程で鋼殻IBを撤去したスペースを利用してPC鋼材を挿入して両端部に定着具を設置し、下り線側のPCa横梁PB’を緊張して一体化する下り線横梁緊張工程を行う。図11は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の下り線横梁緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図12は、同下り線横梁緊張工程を示す下り線側のPCa横梁PB’の外側端部を拡大した拡大斜視図である。
【0057】
(鋼殻再設置工程)
次に、図13図14に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前鋼殻撤去工程で撤去した鋼殻IBを再設置する鋼殻再設置工程を行う。図13は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再設置工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図14は、図13の中央2車線部分を拡大して同鋼殻再設置工程を示す部分拡大パース図である。
【0058】
(外ケーブル再緊張工程)
次に、図15図16に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、外ケーブルを再緊張してPCa横梁PB及びPCa横梁PB’を一体化する外ケーブル再緊張工程を行う。図15は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル再緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図16は、中央2車線部分を拡大して同外ケーブル再緊張工程を示す部分拡大斜視図である。
【0059】
(上り線上部構造撤去工程)
次に、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程終了後、更新工事の施工帯を下り線の外側2車線分から上り線の外側2車線分に変更し、図15図16で示した外側2車線分の上り線の既設の上部構造B2を撤去する上り線上部構造撤去工程を行う。
【0060】
(上り線新設工程)
次に、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、前工程で撤去した外側2車線分の上り線部分に、新設の上り線のPCa横梁PBを設置した上、複数のT桁T1を載置する上り線新設工程を行う。
【0061】
(外ケーブル解放工程)
次に、図17図18に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、PCa横梁PB及びPCa横梁PB’を一体化していた外ケーブルを解放する外ケーブル解放工程を行う。図17は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図18は、中央2車線部分を拡大して同外ケーブル解放工程を示す部分拡大斜視図である。
【0062】
(外ケーブル撤去工程)
次に、図19図20に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、PCa横梁PB及びPCa横梁PB’を一体化していた外ケーブルを撤去する外ケーブル撤去工程を行う。図19は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の外ケーブル撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図20は、中央2車線部分を拡大して同外ケーブル撤去工程を示す部分拡大斜視図である。
【0063】
(鋼殻再撤去工程)
次に、図21図22に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、PCa横梁PBとPCa横梁PB’との間に介装していた鋼殻IBを再度撤去する鋼殻再撤去工程を行う。図21は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の鋼殻再撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図22は、図21の中央2車線部分を拡大して同鋼殻再撤去工程を示す部分拡大パース図である。
【0064】
(緊張ケーブル解放工程)
次に、図23図24に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、中央線付近の上り線側PCa横梁PB同士及び下り線側PCa横梁PB’同士を緊張していた緊張ケーブルを解放する緊張ケーブル解放工程を行う。図23は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル解放工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図24は、図23の中央2車線部分を拡大して同緊張ケーブル解放工程を示す部分拡大パース図である。
【0065】
(緊張ケーブル撤去工程)
次に、図25図26に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、中央線付近の上り線側PCa横梁PB同士及び下り線側PCa横梁PB’同士を緊張していた緊張ケーブル及びPCブラケットを撤去する緊張ケーブル撤去工程を行う。図25は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の緊張ケーブル撤去工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図26は、図25の中央2車線部分を拡大して同緊張ケーブル撤去工程を示す部分拡大パース図である。
【0066】
(上り線横梁緊張工程)
次に、図27図28に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、鋼殻再撤去工程で鋼殻IBを撤去したスペースを利用してPC鋼材を挿入して両端部に定着具を設置し、上り線側のPCa横梁PBを緊張して一体化する上り線横梁緊張工程を行う。図27は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の上り線横梁緊張工程を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図であり、図28は、同上り線横梁緊張工程を示す上り線側のPCa横梁PBの外側端部を拡大した拡大斜視図である。
【0067】
次に、図29に示すように、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法では、新設した上り線の外側端部に沿って壁高欄K1を設置することにより、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の更新工事が完了する。図29は、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法の完了状態を示す橋梁を橋軸方向に見たパース図である。
【0068】
以上説明した本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法によれば、前述のように、仮設橋脚1’の横梁4が2つの既設橋脚P2,P3の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体3間に架け渡されて接合されているので、仮設橋脚1’がレベル2地震動に対する耐震性能を有する。このため、仮設橋脚1’(仮設橋脚1)で支持された中央部の2車線分の仮設路線は、レベル2地震動に対する耐震性能を有することができ、上部構造更新作業時の安全な車両通路として使用するこができる。よって、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法によれば、安全に効率よく上部構造の更新工事を行うことができる。
【0069】
また、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法によれば、新設するPCa横梁PB(PB’)を用いて、既設橋脚P2,P3間に一時的に上下線のいずれか一方の車線を設けて共用するので、通行規制を少なくして安全に上部構造の更新工事を行うことができる。
【0070】
その上、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法に用いる仮設橋脚1’は、既設橋脚P1~P4を取り囲む枠体3,ブラケット枠体6がそれぞれ別体となってそれらが横梁4,第2横梁8で連結されている。このため、仮設橋脚1’は、更新工事の進捗に合わせて仮設橋脚1から既設橋脚P4側、既設橋脚P1側と順次、仮設橋脚1’を増設することが可能となっている。よって、本実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法によれば、仮設橋脚1’の設置期間を短縮することにより、仮設材のリース料を低減できるとともに、既設橋梁B1の下部の通行等の障害を極力少なくすることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態に係る仮設橋脚の支持構造及び橋梁上部構造の更新方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0072】
また、本発明の実施形態に係る橋梁上部構造の更新方法として、下り線の上部構造を先に解体して更新する場合を例示したが、上り線の上部構造を先に解体して更新してもよいことは云うまでない。要するに、本発明に係る橋梁上部構造の更新方法では、仮設橋脚を用いて中央部に仮設通路を設置して共用し、上下線のいずれか一方を先に解体撤去して更新すればよい。
【0073】
特に、4つの既設橋脚P1~P4を有する上下3車線ずつの既設橋梁B1のRC中空床版桁からなる上部構造B2をプレキャスト製のT桁T1に取り替えて更新する場合を例示して説明したが、橋脚の数や上部構造は、既設新設を問わず、どのような形式の橋梁にも適用することができる。例えば、既設のRC中空床版桁を、本願出願人が提案しているSCBR工法のように、プレキャスト横梁を介してプレキャスト製の中空ホロー桁に更新する場合にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1’:仮設橋脚
2:仮設支柱
2a:根巻コンクリート
2b:キリンジャッキ
3:枠体
4:横梁
5:桁材
5a:スペーサーブロック
6:ブラケット枠体(枠体)
6a:ブラケット部
7:ブラケット支柱(仮設支柱)
7a:根巻コンクリート
7b:肘木部
7c:斜材
8:第2横梁(横梁)
9:ブラケット桁材
B1:既設橋梁(橋梁)
B2:既設上部構造
B2#:撤去部分
K1:壁高欄
K2:仮設壁高欄
P1~P4:既設橋脚
F1,F2:基礎
PB,PB’:PCa横梁
IB:鋼殻
T1:T桁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して立設された2つの既設橋脚の橋軸直角方向の間に構築される複数の鋼材が組み合わされて前記既設橋脚の上部構造の更新工事の際に新設の上部構造を仮設的に支持する仮設橋脚の支持構造であって、
前記既設橋脚に沿って立設された複数の仮設支柱と、これらの仮設支柱で下方から支持された一対の枠体と、これらの一対の枠体間に橋軸直角方向に架け渡された複数の横梁と、これらの複数の横梁上に前記横梁と直交するように設置されて更新の際に前記新設の上部構造を載置する複数の桁材と、を備え、
前記横梁は、前記2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む前記一対の枠体間に架け渡されて接合されていること
を特徴とする仮設橋脚の支持構造。
【請求項2】
前記横梁は、前記一対の枠体と剛接合されていること
を特徴とする請求項1に記載の仮設橋脚の支持構造。
【請求項3】
離間して立設された既設橋脚が複数あり、それぞれの既設橋脚を取り囲む枠体がそれぞれ別体となってそれらの枠体が横梁で連結されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の仮設橋脚の支持構造。
【請求項4】
既設橋梁の上部構造を取り替えて更新する橋梁上部構造の更新方法であって、
請求項1ないしのいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造を備えた仮設橋脚を、離間して立設された2つの既設橋脚の橋軸直角方向の間に構築した後、前記仮設橋脚上に架け替える新設の上部構造を載置すること
を特徴とする橋梁上部構造の更新方法。
【請求項5】
前記新設の上部構造は、橋軸直角方向に沿って設置された上下線に対応するプレキャスト製の一対のPCa横梁を備え、上下線のそれぞれのPCa横梁同士を、鋼材からなるブロック体である鋼殻を介して橋軸直角方向にPC鋼材である外ケーブルで連結して前記仮設橋脚の前記桁材の上に載置し、前記2つの既設橋脚の橋軸直角方向間に一時的に車線を設けて共用すること
を特徴とする請求項に記載の橋梁上部構造の更新方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項1に係る仮設橋脚の支持構造は、離間して立設された2つの既設橋脚の橋軸直角方向の間に構築される複数の鋼材が組み合わされて前記既設橋脚の上部構造の更新工事の際に新設の上部構造を仮設的に支持する仮設橋脚の支持構造であって、前記既設橋脚に沿って立設された複数の仮設支柱と、これらの仮設支柱で下方から支持された一対の枠体と、これらの一対の枠体間に橋軸直角方向に架け渡された複数の横梁と、これらの複数の横梁上に前記横梁と直交するように設置されて更新の際に前記新設の上部構造を載置する複数の桁材と、を備え、前記横梁は、前記2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む前記一対の枠体間に架け渡されて接合されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項に係る仮設橋脚の支持構造は、請求項1に係る仮設橋脚の支持構造において、前記横梁は、前記一対の枠体と剛接合されていることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項に係る仮設橋脚の支持構造は、請求項1又は2に記載の仮設橋脚の支持構造において、離間して立設された既設橋脚が複数あり、それぞれの既設橋脚を取り囲む枠体がそれぞれ別体となってそれらの枠体が横梁で連結されていることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項に係る橋梁上部構造の更新方法は、既設橋梁の上部構造を取り替えて更新する橋梁上部構造の更新方法であって、請求項1ないしのいずれかに記載の仮設橋脚の支持構造を備えた仮設橋脚を、離間して立設された2つの既設橋脚の橋軸直角方向の間に構築した後、前記仮設橋脚上に架け替える新設の上部構造を載置することを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項に係る橋梁上部構造の更新方法は、請求項に係る橋梁上部構造の更新方法において、前記新設の上部構造は、橋軸直角方向に沿って設置された上下線に対応するプレキャスト製の一対のPCa横梁を備え、上下線のそれぞれのPCa横梁同士を、鋼材からなるブロック体である鋼殻を介して橋軸直角方向にPC鋼材である外ケーブルで連結して前記仮設橋脚の前記桁材の上に載置し、前記2つの既設橋脚の橋軸直角方向間に一時的に車線を設けて共用することを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項1~に係る発明によれば、横梁が2つの既設橋脚の周囲をそれぞれ取り囲む一対の枠体間に架け渡されて接合されているので、既設橋脚を用いてレベル2地震動の水平力に対抗することができるため、レベル2地震動に対する耐震性能を有することができる。その上、請求項1~に係る発明は、既設橋脚を用いて地震動の水平力に対抗するため、仮設橋脚単独でレベル2地震動の応答値を弾性範囲内に収めて設計する場合と比べてはるかに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。また、請求項1~3に係る発明によれば、既設橋脚にあと施工アンカーを用いて枠体を止め付ける必要がなくなり、既設橋脚を損傷するおそれを低減することができる。また、仮設支柱は既設橋脚に沿って立設されているので、仮設支柱単体で地震動の水平力に対抗する必要がなく、鋼材のサイズを小さくして安価に設置することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
特に、請求項に係る発明によれば、さらに小型の鋼材で構成しても同様の耐震性能を有することが可能となり、仮設橋脚を鋼材使用量が少なく安価に設置することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
特に、請求項に係る発明によれば、更新工事の進捗に合わせて仮設橋脚を増設することができ、仮設橋脚の設置期間を短縮することにより、仮設材のリース料を低減できるとともに、橋梁の下部の通行等の障害を極力少なくすることができる。