(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026015
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20230216BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131582
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勝
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA12
2H087MA18
2H087MA19
2H087NA15
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA41
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB07
2H087SB12
2H087SB14
2H087SB15
2H087SB16
2H087SB22
2H087SB23
2H087SB25
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB34
2H087SB35
2H087SB43
2H087SB47
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】小型、広画角、高変倍比および大口径のズームレンズで倍率色収差を補正する。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から像側へ順に、変倍に際して固定の正の第1レンズ群U1と、変倍に際して移動する少なくとも3つの移動レンズ群U2~U4と、変倍に際して固定の正の最終レンズ群U5とを有する。移動レンズ群のうち最も像側の移動レンズ群は正レンズ群、像側から2番目の移動レンズ群は負レンズ群である。第1レンズ群は、最も物体側に焦点調節に際して固定の部分群U11を有し、焦点調節に際して移動する部分群U12、U14を有する。最終レンズ群において屈折力を有する最も像側のレンズは正レンズU5Lpであり、該正レンズのd線基準のアッベ数νdpおよびd線における屈折率Ndpと、ズームレンズの変倍比Zは、62≦νdp、2.24≦Ndp+0.01νdpおよび4≦Z≦50を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、変倍に際して移動しない正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍に際して隣り合うレンズ群との間隔が変化するように移動する少なくとも3つの移動レンズ群と、最も像側に配置されて変倍に際して移動しない正の屈折力を有する最終レンズ群とを有するズームレンズであって、
前記少なくとも3つの移動レンズ群のうち、最も像側の移動レンズ群は正の屈折力を有し、像側から2番目の移動レンズ群は負の屈折力を有し、
前記第1レンズ群は、最も物体側に配置され、かつ焦点調節に際して移動しない部分群と、焦点調節に際して移動する部分群とを有し、
前記最終レンズ群において屈折力を有する最も像側のレンズは正レンズであり、該正レンズのd線基準のアッベ数およびd線における屈折率をそれぞれνdpおよびNdpとし、前記ズームレンズの変倍比をZとするとき、
62≦νdp
2.24≦Ndp+0.01νdp
4≦Z≦50
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
80≦νdp
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記最終レンズ群は、4つ以上の屈折力を有するレンズにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記最終レンズ群における前記最も像側の正レンズの焦点距離をfp、前記少なくとも3つの移動レンズ群のうち最も強い負の屈折力を有する移動レンズ群の焦点距離をfvとするとき、
0.5≦|fp/fv|≦50.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記最終レンズ群における最も物体側のレンズ面から前記最終レンズ群における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をLe、前記ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとするとき、
2.5≦Le/fw ≦ 25.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記少なくとも3つの移動レンズ群のうち最も強い負の屈折力を有する移動レンズ群は、2つの負レンズと1つの正レンズとを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群は、最も像側に正レンズを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記少なくとも3つの移動レンズ群のうち最も強い負の屈折力を有する移動レンズ群は、広角端から望遠端への変倍に際して像側へ移動することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記少なくとも3つの移動レンズ群として、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群および正の屈折力を有する第4レンズ群を有し、
前記最終レンズ群として、正の屈折力を有する第5レンズ群を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記少なくとも3つの移動レンズ群として、物体側から像側へ順に、正または負の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、負の屈折力を有する第4レンズ群および正の屈折力を有する第5レンズ群を有し、
前記最終レンズ群として、正の屈折力を有する第6レンズ群を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のズームレンズと、
前記ズームレンズにより形成された像を撮る撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズには、画角の中心部から周辺部にかけて解像力が均一に高く、色収差が少ないことが求められている。特許文献1には、物体側から像側へ順に配置された、変倍に際して移動しない正レンズ群、変倍に際して移動する負レンズ群、変倍に際して移動する正レンズ群を含むポジティブリード型ズームレンズが開示されている。
【0003】
また、ズームレンズには、広角、高倍率(高変倍比)、大口径比かつ小型であることも求められている。ポジティブリード型ズームレンズは、第1レンズ群が負の屈折率を有するネガティブリード型ズームレンズに比べて高倍率化に有利である。ただし、ポジティブリード型ズームレンズにおいて高い光学性能を得るには、軸上色収差および倍率色収差をバランスよく補正することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ズームレンズの小型化のためにレンズ数を少なくしつつ各レンズ群や各単レンズの屈折力を強めると、色収差その他の諸収差が大きくなりうる。さらなる広角および高変倍比を求めると、諸収差の補正、特に広角端での倍率色収差の補正が困難となりうる。
【0006】
本発明は、例えば、小型、広画角、高変倍比、大口径比、高い光学性能の点で有利なズームレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に、変倍に際して移動しない正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍に際して隣り合うレンズ群との間隔が変化するように移動する少なくとも3つの移動レンズ群と、最も像側に配置されて変倍に際して移動しない正の屈折力を有する最終レンズ群とを有する。少なくとも3つの移動レンズ群のうち、最も像側の移動レンズ群は正の屈折力を有し、像側から2番目の移動レンズ群は負の屈折力を有する。第1レンズ群は、最も物体側に配置され、かつ焦点調節に際して移動しない部分群と、焦点調節に際して移動する部分群とを有する。最終レンズ群において屈折力を有する最も像側のレンズは正レンズであり、該正レンズのd線基準のアッベ数およびd線における屈折率をそれぞれνdpおよびNdpとし、前記ズームレンズの変倍比をZとするとき、
62≦νdp
2.24≦Ndp+0.01νdp
4≦Z≦50
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記ズームレンズを備えた撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、小型、広画角、高変倍比、大口径比、高い光学性能の点で有利なズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1(数値例1)のズームレンズの断面図。
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図3】実施例2(数値例2)のズームレンズの断面図。
【
図4】実施例2のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図5】実施例3(数値例3)のズームレンズの断面図。
【
図6】実施例3のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図7】実施例4(数値例4)のズームレンズの断面図。
【
図8】実施例4のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図9】実施例5(数値例5)のズームレンズの断面図。
【
図10】実施例5のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図11】実施例6(数値例6)のズームレンズの断面図。
【
図12】実施例6のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図13】実施例7(数値例7)のズームレンズの断面図。
【
図14】実施例7のズームレンズの広角端および望遠端での収差図。
【
図15】実施例1~7のいずれかのズームレンズを備えた撮像装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0011】
まず具体的な実施例1~7の説明に先立って、各実施例に共通する事項について説明する。各実施例のズームレンズは、スチルカメラ、ビデオカメラ、テレビカメラ、シネマカメラおよび監視カメラ等の撮像装置の撮像光学系として好適なものである。また、各実施例のズームレンズにおいて、レンズ群または部分群は、広角端と望遠端との間での変倍(ズーミング)や無限遠側や至近側への焦点調節(フォーカシング)に際して一体で移動する1または複数のレンズのまとまりである。すなわち、ズーミングやフォーカシングに際して隣り合うレンズ群または部分群間の間隔が変化する。レンズ群は、開口絞りを含んでもよい。また、広角端と望遠端はそれぞれ、ズーミングに際して移動するレンズ群が光軸上を機構上または制御上、移動可能な範囲の両端に位置したときの最大画角(最短焦点距離)と最小画角(最大焦点距離)のズーム状態を示す。
【0012】
以下では、
図1に示す実施例1のズームレンズを例として(符号を括弧書きで付して)説明する。
【0013】
各実施例のズームレンズは、物体側から像側へ順に、変倍に際して移動しない(固定の)正の屈折力の第1レンズ群(U1)と、変倍に際して隣り合うレンズ群との間隔が変化するように移動する少なくとも3つの移動レンズ群(U2~U4)と、最も像側に配置されて変倍に際して移動しない結像用の正の屈折力の最終レンズ群(U5)とを有する。上記少なくとも3つの移動レンズ群(U2~U4)のうち、最も像側の移動レンズ群(U4)は正の屈折力を有し、像側から2番目の移動レンズ群(U3)は負の屈折力を有する。第1レンズ群(U1)は、最も物体側に焦点調節に際して移動しない固定部分群(U11)と、焦点調節に際して移動する移動部分群(U12、U14)とを有する。
【0014】
このように各実施例のズームレンズでは、少なくとも3つの移動レンズ群(U2~U4)が移動することで変倍を行い、像側から2番目の負の移動レンズ群(U3)で変倍比を大きくし、最も像側の正の移動レンズ群(U4)で変倍中の収差変動を効果的に補正する。これにより、小型でありながらも高倍率(高変倍比)で高い光学性能を有するズームレンズを実現できる。
【0015】
また、焦点調節に際して第1レンズ群(U1)の一部を移動させ、固定部分群(U11)を第1レンズ群(U1)における最も物体側に配置することで、焦点調節に伴う収差変動を抑制することが可能となる。さらに焦点調節に際して移動する移動部分群(U12、U14)およびその駆動機構の小型化が可能となり、高倍率化と小型化を実現することができる。
【0016】
そして各実施例のズームレンズにおいて、上述した移動レンズ群と第1レンズ群の構成に加えて、次に示す式(1)~(3)の条件を満足することにより、撮像装置の高精細化や高機能化に適したズームレンズを実現することができる。
【0017】
最終レンズ群(U5)において、屈折力を有するレンズとして最も像側のレンズは正レンズ(U5Lp)である。該正レンズU5Lpのd線基準のアッベ数およびd線における屈折率をそれぞれνdpおよびNdpとし、ズームレンズの変倍比をZとする。このとき、各実施例のズームレンズは、以下の式(1)~(3)の条件を満足する。
【0018】
62≦νdp (1)
2.24≦Ndp+0.01νdp (2)
4≦Z≦50 (3)
式(1)、(2)の条件は、最終レンズ群U5内の最も像側の正レンズ(U5Lp)の光学硝子の特性に関する条件を示す。通常、光学硝子は複数種類の金属酸化物、例えばSiO2、TiO2、La2O3、Al2O3、Nb2O5、ZrO2、Gd2O3を含有している。その中でTiO2は、屈折率を高めてアッベ数を小さくする効果があり、TiO2を多く含有する光学硝子は比較的、高屈折率かつ高分散となる。また、Gd2O3は屈折率を高めてアッベ数を大きくする効果があり、Gd2O3を多く含有する光学硝子は比較的、高屈折率かつ低分散となる。これは、TiO2やGd2O3がそれぞれ元々、高屈折かつ高分散、高屈折率かつ低分散であり、それらを含む光学硝子の特性が金属酸化物の元々の特性に近づくためである。
【0019】
このように、光学硝子は含有する物質(成分)の量によって特性が変わる性質があり、その物質の量を適切に設定することで所望の光学特性(屈折率およびアッベ数)が得られる。これは、光学セラミックスにおいても同様であり、例えば高屈折率で低分散な物質を多く含む光学セラミックスは比較的、高屈折率かつ低分散となる。そして、該物質とSiO2、TiO2、La2O3等の金属酸化物の分量を適切に設定して溶解または焼結させることで、所望の光学特性を持つ光学硝子や光学セラミックス等の光学材料を得ることができる。
【0020】
また上記構成を有するズームレンズでは、広角化に伴って第1レンズ群U1内の最も物体側の負レンズ(U1Ln)の屈折力が強くなる。また、広角端において、第1レンズ群U1内の最も物体側の負レンズ(U1Ln)の軸外主光線の入射高が大きくなり、この結果、倍率色収差の発生量が大きくなる。これにより、広角化に伴い、特に広角端での倍率色収差の補正が困難となる。
【0021】
また、高倍率化に伴って、第1レンズ群(U1)における軸上光線の高さが焦点距離に比例して高くなり、この結果、第1レンズ群(U1)で発生する軸上色収差がより増加する。第1レンズ群(U1)で発生する軸上色収差を抑制するために、変倍に際して移動する強い負の屈折力の移動レンズ群に異常分散性の高い光学硝子を用いる必要がある。該移動レンズ群は広角端での軸外主光線の入射高が大きいため、この移動レンズ群内の異常分散性が高い光学硝子によって大きな倍率色収差が発生する。このように、高倍率化によっても広角端での倍率色収差の補正が困難となる。
【0022】
一般に、倍率色収差には、軸外光線の高い位置に配置されたレンズの寄与が大きい。広角化や高倍率化に伴って発生する広角端での倍率色収差を良好に補正するためには、絞りからの距離が最も遠い正レンズ(U5Lp)に低分散かつ異常分散性の高い光学材料を使用することが有効である。この正レンズ(U5Lp)において、倍率色収差に対して影響が大きい瞳近軸光線が光軸からの高さが高い位置を通る。したがって、該正レンズ(U5Lp)に上述した光学材料を使用することで、倍率色収差への影響が大きくなり、これにより倍率色収差を良好に補正することができる。
【0023】
式(1)の条件は、最終レンズ群(U5)における最も像側の正レンズ(U5Lp)のアッベ数に関する条件を示している。νdpが式(1)の下限を下回ると、第1レンズ群(U1)において発生したアンダーの倍率色収差を補正することが困難となるため、好ましくない。また、光学硝材の選択の関係上、正レンズ(U5Lp)の部分分散比θgfが小さくなり、変倍に際して移動する強い負の屈折力の移動レンズ群にて発生した倍率色収差の二次スペクトルを補正することが困難となる。
【0024】
なお、式(1)の数値範囲を、以下の式(4)のように設定するとより好ましい。
80≦νdp (4)
また、式(4)の数値範囲を以下のように設定するとさらに好ましい。
80≦νdp≦97 (4a)
νdpが式(4a)の上限を上回ると、低分散の光学硝材を製造することが困難となるため、好ましくない。
【0025】
式(2)の条件は、正レンズ(U5Lp)のアッベ数と屈折率との関係に関する条件である。Ndp+0.01νdpが式(2)の下限を下回ると、光学硝材の選択の関係上、正レンズ(U5Lp)の部分分散比θgfが小さくなり、変倍に際して移動する強い負の屈折力の移動レンズ群にて発生した倍率色収差の二次スペクトルを補正することが困難となるため、好ましくない。
【0026】
なお、式(2)の数値範囲を以下のように設定するとより好ましい。
2.24≦Ndp+0.01νdp≦2.50 (2a)
Ndp+0.01νdpが式(2a)の上限を上回ると、低分散かつ高屈折率の光学硝材を製造することが困難となるため、好ましくない。
【0027】
また、式(2)の数値範囲を以下のように設定するとさらに好ましい。
2.24≦Ndp+0.01νdp≦2.40 (2b)
式(3)の条件は、小型でありながらも変倍比が大きいズームレンズを実現するための条件を示す。Zが式(3)の下限を下回ると、ズームレンズの高倍率化が困難となるため、好ましくない。また、Zが式(3)の上限を越えると、ズームレンズの小型化が困難となるため、好ましくない。
【0028】
なお、式(3)の数値範囲を以下のように設定するとより好ましい。
4.3≦Z≦47.0 (3a)
また、式(3)の数値範囲を以下のように設定するとさらに好ましい。
4.4≦Z≦43.0 (3b)
以上の条件を満足することで、広角、大口径および高変倍比で良好な光学性能を有する小型軽量なズームレンズが実現される。
【0029】
各実施例のズームレンズは、以下の条件のうち少なくとも1つを満足することが望ましい。各実施例のズームレンズにおいて、最終レンズ群(U5)は4つ以上の屈折力を有するレンズにより構成されることが好ましい。最終レンズ群(U5)を構成するレンズ数を適切に設定することにより、広角端での諸収差を良好に補正することができる。なお、最終レンズ群を少なくとも6つ以上の屈折力を有するレンズにより構成するとより好ましい。
【0030】
各実施例のズームレンズにおいて、最終レンズ群(U5)における最も像側の正レンズ(U5Lp)の焦点距離をfp、少なくとも3つの移動レンズ群(U2~U4)のうち最も負の屈折力が強いレンズ群(U2)の焦点距離をfvとする。このとき、以下の式(5)の条件を満足することが望ましい。
【0031】
0.5≦|fp/fv|≦50.0 (5)
|fp/fv|が式(5)の上限を上回ると、正レンズ(U5Lp)の屈折力が弱くなり過ぎ、広角端の倍率色収差の補正が困難となるため、好ましくない。|fp/fv|が式(5)の下限を下回ると、正レンズ(U5Lp)の屈折力が強くなり過ぎて、広角端での倍率色収差の補正が過剰となる。また、該正レンズ(U5Lp)の屈折力が強いことで、最終レンズ群(U5)で発生する諸収差が増大し、広角端での諸収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0032】
なお、式(5)の数値範囲を以下のように設定するとより好ましい。
0.7≦|fp/fv|≦40.0 (5a)
また、式(5)の数値範囲を以下のように設定するとさらに好ましい。
0.85≦|fp/fv|≦35.00 (5b)
各実施例のズームレンズにおいて、最終レンズ群(U5)における最も物体側のレンズ面から該最終レンズ群(U5)における最も像側のレンズ面までの光軸上での距離をLe、ズームレンズの広角端での焦点距離をfwとする。このとき、以下の式(6)の条件を満足することが望ましい。
【0033】
2.5≦Le/fw ≦25.0 (6)
Le/fwが式(6)の上限を上回ると、正レンズ(U5Lp)における軸外光線の高さが高くなりすぎて、該正レンズ(U5Lp)の小型化が困難となるため、好ましくない。Le/fwが式(6)の下限を下回ると、正レンズ(U5Lp)における軸外光線の高さが低くなりすぎて、広角端での倍率色収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0034】
なお、式(6)の数値範囲を以下のように設定するとより好ましい。
3.0≦Le/fw≦20.0 (6a)
また、式(6)の数値範囲を以下のように設定するとさらに好ましい。
3.5≦Le/fw≦17.0 (6b)
各実施例のズームレンズにおいて、変倍に際して移動する少なくとも3つの移動レンズ群のうち最も負の屈折力が強い移動レンズ群(U2)は、2つの負レンズと1つの正レンズを少なくとも有することが望ましい。これにより、小型でありながらも高変倍比で高い光学性能を有し、撮像装置の高精細化や高機能化に適したズームレンズを実現することができる。
【0035】
各実施例のズームレンズにおいて、第1レンズ群(U1)は、最も像側に正レンズ(U1Lp)を有することが望ましい。これにより、小型でありながらも広角なズームレンズを実現することができる。
【0036】
各実施例のズームレンズにおいて、変倍に際して移動する少なくとも3つの移動レンズ群のうち最も負の屈折力が強いレンズ群(U2)は、広角端から望遠端への変倍に際して像側へ移動することが望ましい。これにより、小型でありながらも高変倍比で高い光学性能を有するズームレンズを実現することができる。
【0037】
以下、実施例1~7について具体的に説明する。なお、実施例7の説明の後に、実施例1~7のそれぞれ対応する数値例1~7を示す。
【実施例0038】
図1に示す実施例1(数値例1)のズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群U1、負の屈折力の第2レンズ群U2、負の屈折力の第3レンズ群U3、正の屈折力の第4レンズ群U4および正の屈折力の第5レンズ群U5により構成されている。
図1は、広角端かつ無限遠合焦状態でのレンズ構成を示している。数値例1のズームレンズは、変倍比が9.8であり、式(3)の条件を満足する。
【0039】
第1レンズ群U1は、変倍に際して固定のレンズ群である。第2から第4レンズ群U2~U4は変倍に際して移動する移動レンズ群である。図中の第2~第4レンズ群U2~U4の下に矢印で示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、第2レンズ群U2は像側へ移動し、第3レンズ群U3および第4レンズ群U4は物体側へ移動した後に像側に移動する。第4レンズ群U4は、その物体側に開口絞りSPを有する。第5レンズ群U5は、変倍に際して固定の最終レンズ群である。IPは像面である。像面IPには、撮像素子(光電変換素子)の撮像面や銀塩フィルムの感光面が配置される。
【0040】
第1レンズ群U1において、最も物体側および物体側から3番目の部分群U11、U13は焦点調節に際して固定の固定部分群であり、物体側から2番目および最も像側の部分群U12、U14は焦点調節に際して移動する移動部分群である。図中の移動部分群U12、U14の下に矢印で示すように、無限遠側から至近側への焦点調節において、移動部分群U12は像側へ移動し、移動部分群U14は物体側へ移動する。
【0041】
数値例1において、第5レンズ群U5における最も像側の正レンズU5Lpは、式(1)~(2)、式(4)および式(6)の条件を満足する。また、移動レンズ群のうち最も強い負の屈折力の移動レンズ群は、第2レンズ群U2である。第2レンズ群U2は、式(5)の条件を満足する。
【0042】
第1レンズ群U1は、最も物体側に負レンズU1Lnを、最も像側に正レンズU1Lpを有する。
第1レンズ群U1は、変倍に際して固定のレンズ群である。第2から第4レンズ群U2~U4は変倍に際して移動する移動レンズ群である。図中の第2から第4レンズ群U2~U4の下に矢印で示すように、広角端から望遠端への変倍に際して、第2レンズ群U2は像側へ移動し、第3レンズ群U3および第4レンズ群U4は物体側へ移動した後に像側に移動する。第4レンズ群U4は、その物体側に開口絞りSPを有する。第5レンズ群U5は、変倍に際して固定の最終レンズ群である。
第1レンズ群U1において、最も物体側の部分群U11は焦点調節に際して固定の固定部分群であり、物体側から2番目(最も像側)の部分群U12は焦点調節に際して移動する移動部分群である。図中の移動部分群U12の下に矢印で示すように、無限遠側から至近側への焦点調節において、移動部分群U12は物体側へ移動する。
数値例2において、第5レンズ群U5における最も像側の正レンズU5Lpは、式(1)~(2)、式(4)および式(6)の条件を満足する。また、移動レンズ群のうち最も強い負の屈折力の移動レンズ群は、第2レンズ群U2である。第2レンズ群U2は、式(5)の条件を満足する。