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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026073
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】繊維用機能性成分付与剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/15 20060101AFI20230216BHJP
   D06M 15/03 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
D06M15/15
D06M15/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131696
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】500147805
【氏名又は名称】株式会社 きものブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】岡元 松男
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC15
4L033CA02
4L033CA08
(57)【要約】
【課題】繊維にカチオン性高分子を介してこの繊維に付与されている機能性成分(たとえばセリシン)が、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から少しずつ離脱し肌に接触することで、たとえば肌の保湿効果、防臭効果などの機能を発揮させることができ極めて実用性に優れた画期的な繊維用機能性成分付与剤を提供すること。
【解決手段】機能性成分(たとえばセリシン)と、この機能性成分が静電吸着または静電付着するカチオン性高分子(たとえばカチオン系キトサン誘導体)とが含まれている繊維用機能性成分付与剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分と、この機能性成分が静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とが含まれている構成とされていて、
肌に接触する繊維に水分とともに付与することで、
この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分が付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記機能性成分が離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする繊維用機能性成分付与剤。
【請求項2】
洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与することで、
この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分が付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記機能性成分が離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項3】
肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分であるセリシンと、この機能性成分であるセリシンが静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とが含まれている構成とされていて、
肌に接触する繊維に水分とともに付与することで、
この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記セリシンが付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記セリシンが離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする繊維用機能性成分付与剤。
【請求項4】
洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与することで、
この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分である前記セリシンが付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記セリシンが離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項5】
前記機能性成分は、前記繊維に柔軟性と肌触りの良さを与え、且つ離脱し肌に接触すると前記機能が発揮され肌によい効果を与える加水分解セリシンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項6】
洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与する製品、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与する製品、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与する製品に構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項7】
負に帯電しているあるいは負の極性を有する前記機能性成分が、水分により前記繊維に正に帯電しているもしくは正の極性を有する前記カチオン性高分子を介して、表面が負に帯電しているもしくは負の極性を有する前記繊維に付与されるように構成されていて、
この機能性成分は、前記繊維と肌とが接触することおよび数回の家庭での洗濯により前記繊維から離脱する程度の弱い静電吸着または静電付着で前記カチオン性高分子を介して前記繊維に付与されるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項8】
前記カチオン性高分子は、カチオン系キトサン誘導体であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項9】
前記機能性成分はセリシンであり、且つこのセリシンが、1~30%含まれていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項10】
前記繊維の柔軟効果増強のためのカチオン性油性成分が含まれていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項11】
保湿成分が含まれていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項12】
抗菌成分が含まれていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【請求項13】
前記機能性成分は肌を修復する前記機能が発揮されるフィブロインであること、または前記機能性成分としてのセリシンと前記機能性成分としてのフィブロインの双方が含まれている構成とされていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分、たとえば、シルク(繭、絹糸)から精製した加水分解セリシンやセリシンパウダーによるセリシンやフィブロインなどの成分を、弱い力で繊維(肌に接触する繊維製品の繊維)に付与でき、そのためたとえばこのセリシンをこの繊維に触れる肌に徐々に離脱させ接触させることができ、たとえば繊維の肌触りの向上のみならず、その繊維に触れる肌に対して保湿作用や防臭作用などの機能を発揮させることができる新機能洗濯後付与剤(繊維用柔軟剤)や新機能繊維用浸漬付与剤や新機能噴霧付与剤(スプレー式繊維用改善剤)などの繊維用機能性成分付与剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シルクは、美しさ、肌触りの良さだけでなく、通気性や透湿性などに優れているため、古くから高級素材として衣料分野に利用されてきているが、近年シルクの主成分であるセリシンやフィブロインが数種類のアミノ酸で構成されているタンパク質であることから、機能性成分としてたとえばその機能や特性を活かすべく繊維に付与したり、化粧品、食品、その他非衣料分野での利活用も増えてきている。
【0003】
たとえば、セリシンには、保湿作用、抗酸化作用による防臭作用などの機能が知られているが、このような機能が期待できるセリシンを繊維に付与するために、カチオン系表面処理を繊維に施し、さらにセリシンによるタンパク質層を表面に形成した機能性繊維製品の研究開発なども進められてきている。(特許文献1)
【0004】
しかしながら、繊維製品にこのような表面処理を行いさらにセリシンタンパク質層を形成することは容易ではなく、そのためコスト高となって価格が高くなってしまう問題や商品バリエーションが少なくならざるを得なく客層を拡大することができないなどの問題があった。
【0005】
また一方、前述のようにして工場で繊維製品にセリシンを付与させる場合、強固な結合力(強固な吸着力や強固な結合力)で繊維に付与してしまうことになるため、数回の洗濯にも耐え容易にこのセリシンが離脱することはないが、逆にそのためにセリシンにより繊維自体の機能が改善できることにはなるが、繊維をまとう肌への直接的な機能効果は期待できない。
【0006】
また逆に弱い結合力で繊維に付与するとなれば、洗濯で容易にセリシンは落ちてしまい単発的な機能性繊維製品となってしまい、費用対効果はさらに劣り商品価値をさらに落としてしまうこととなるから、実用性に乏しくなかなか普及し得ないのが現状であった。そのため、そもそも機能性成分を肌へ徐々に離脱接触させて肌や身体に対して直接的な機能を発揮させようとする発想が生まれることもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-26054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するもので、洗濯後に繊維に柔軟性などの特性とともに付与するための柔軟剤(仕上げ剤)や希釈して浸漬させ繊維に付与するための浸漬付与剤や噴霧付与剤などに着眼し、工場で繊維製品に強固にセリシンを付与するのでなく、たとえば単に洗濯後のすすぎ時に入れたり噴霧することで、容易にセリシンやフィブロインなどの機能性成分を付与することができ、しかもカチオン系キトサン誘導体などのカチオン性高分子と溶液中の機能性成分(たとえばセリシン)とが静電吸着または静電付着し(いわば軽いイオン結合で結び付き)これが繊維に静電吸着または静電付着する(いわば軽いイオン結合により付着する)ことで、繊維に軽い結合力で機能性成分を付与することができる構成のため、この機能性成分と繊維との結合(吸着)は弱く数回の洗濯に耐える程度の耐久性(機能維持性)を有しつつも適度に肌へ機能性成分が離脱しこれを肌に接触させることができ、そのため肌や身体に対してたとえば保湿作用、防臭作用などの機能を発揮させることができ、たとえば数回の洗濯ごとに適量注ぐまたは適量を噴霧するなど適度に繰り返し付与するだけで機能性成分の機能を繊維を介して肌や身体に発揮させることができ、費用対効果も優れるなど極めて実用性に優れた画期的な繊維用機能性成分付与剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分と、この機能性成分が静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とが含まれている構成とされていて、肌に接触する繊維に水分とともに付与することで、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分が付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記機能性成分が離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0011】
また洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与することで、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分が付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記機能性成分が離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0012】
肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分であるセリシンと、この機能性成分であるセリシンが静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とが含まれている構成とされていて、肌に接触する繊維に水分とともに付与することで、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記セリシンが付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記セリシンが離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0013】
洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与することで、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分である前記セリシンが付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記セリシンが離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0014】
前記機能性成分は、前記繊維に柔軟性と肌触りの良さを与え、且つ離脱し肌に接触すると前記機能が発揮され肌によい効果を与える加水分解セリシンであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0015】
洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与する製品、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与する製品、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与する製品に構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0016】
負に帯電しているあるいは負の極性を有する前記機能性成分が、水分により前記繊維に正に帯電しているもしくは正の極性を有する前記カチオン性高分子を介して、表面が負に帯電しているもしくは負の極性を有する前記繊維に付与されるように構成されていて、この機能性成分は、前記繊維と肌とが接触することおよび数回の家庭での洗濯により前記繊維から離脱する程度の弱い静電吸着または静電付着で前記カチオン性高分子を介して前記繊維に付与されるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0017】
前記カチオン性高分子は、カチオン系キトサン誘導体であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0018】
前記機能性成分はセリシンであり、且つこのセリシンが、1~30%含まれていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0019】
前記繊維の柔軟効果増強のためのカチオン性油性成分が含まれていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0020】
保湿成分が含まれていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0021】
抗菌成分が含まれていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【0022】
前記機能性成分は肌を修復する前記機能が発揮されるフィブロインであること、または前記機能性成分としてのセリシンと前記機能性成分としてのフィブロインの双方が含まれている構成とされていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の繊維用機能性成分付与剤に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上述のように構成したから、たとえば単に洗濯後のすすぎ時に入れたり噴霧することで、容易にセリシンやフィブロインなどの機能性成分を付与することができ、しかもカチオン系キトサン誘導体などのカチオン性高分子と溶液中の機能性成分(たとえばセリシン)とが静電吸着または静電付着し(いわば軽いイオン結合で結び付き)これが繊維に静電吸着または静電付着する(いわば軽いイオン結合により付着する)ことで、繊維に軽い結合力で機能性成分を付与することができる構成のため、この機能性成分と繊維との結合(吸着)は弱く数回の洗濯に耐える程度の耐久性(機能維持性)を有しつつも適度に肌へ機能性成分が離脱しこれを肌に接触させることができ、そのため肌や身体に対してたとえば保湿作用、防臭作用などの機能を発揮させることができ、たとえば数回の洗濯ごとに適量注ぐまたは適量を噴霧するなど適度に繰り返し付与するだけで機能性成分の機能を繊維を介して肌や身体に発揮させることができ、費用対効果も優れるなど極めて実用性に優れた画期的な繊維用機能性成分付与剤となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の最適な実施形態を本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0025】
肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分、たとえばシルク(繭、絹糸)から精製した加水分解セリシンと、このセリシンが静電吸着または静電付着する(いわば弱いイオン結合により付着する)カチオン性高分子(たとえばこの弱い力で加水分解セリシンと結合することになるカチオン系キトサン誘導体)とが含む構成とし、たとえば水分を含む洗濯後の前記繊維に付与する洗濯後付与剤(柔軟剤や仕上げ剤)、水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与する浸漬付与剤、または噴霧して前記繊維に付与する噴霧付与剤に構成する。
【0026】
たとえばこの柔軟剤として構成した本発明製品を、洗濯後の水を含んでいる繊維(洗濯する繊維製品)に付与する。具体的には洗濯後のすすぎ時にこの洗濯槽に適量注ぎ入れると、前記加水分解セリシンと結合している前記カチオン性高分子(たとえばカチオン系キトサン誘導体)が繊維に静電吸着または静電付着する(いわば弱いイオン結合により付着する)ことにより、このカチオン性高分子を介してこの繊維に前記セリシンが弱い結合力で付与されることとなる。
【0027】
この機能性成分(たとえばセリシン)は、このように弱い力で前記カチオン性高分子と結びつき、このカチオン性高分子も弱い力で繊維と結びついているため、この機能性成分が付与された繊維が肌と接触することで、この繊維から機能性成分は徐々に離脱して肌に接触することとなる。
【0028】
すなわち、負に帯電あるいは負の極性を有する前記機能性成分が、正に帯電しているあるいは正の極性を有する前記カチオン性高分子を介して、表面が負に帯電しているあるいは負の極性を有する前記繊維に弱い結合で付与できることとなる。
【0029】
しかもこの機能性成分は、前述のように前記繊維および前記カチオン性高分子との結びつきが弱いため(弱い力、いわば弱いイオン結合で結びついて付着しているため)、数回の洗濯で落ちてしまうがこの間繊維と肌とが接触することで、この繊維から徐々にこの機能性成分が離脱することとなり、この繊維から離脱した機能性成分を肌に直接徐々に接触させることができることとなる。
【0030】
そのため、たとえば保湿作用、防臭作用などの機能を、繊維と接触する肌に発揮させその効能を肌に付与できることとなる。
【0031】
したがって、たとえば数回の洗濯ごとに適量注ぐなど適度に繰り返し繊維に付与するだけで、たとえば柔軟性や肌触りを向上できるだけでなく、繊維を介して肌に所定の機能を発揮させることができ、費用対効果も極めて優れるなど画期的な新機能洗濯後付与剤(繊維用柔軟剤)や新機能繊維用浸漬付与剤や新機能噴霧付与剤(スプレー式繊維用改善剤)などの繊維用機能性成分付与剤を実現できることとなる。
【実施例0032】
本発明の具体的な実施例1について説明する。
【0033】
本実施例は、肌に接触することで肌または身体に対して機能を発揮する機能性成分と、この機能性成分が静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とを含む構成としている。
【0034】
具体的には、シルク(繭、絹糸)から精製した加水分解セリシンやセリシンパウダーによるセリシンやフィブロインなどの機能性成分を、弱い力で繊維(肌に接触する繊維製品の繊維)に付与できる構成として、たとえばこの機能性成分であるセリシンをこの繊維に触れる肌に徐々に離脱させ接触させることができ、たとえば繊維の肌触りの向上のみならず、その繊維に触れる肌に対して保湿作用や防臭作用などの機能(セリシン機能)を発揮させることができることとなる新機能洗濯後付与剤(繊維用柔軟剤)、新機能繊維用浸漬付与剤、または新機能噴霧付与剤(スプレー式繊維用改善剤)になどに構成できる繊維用機能性成分付与剤としている。
【0035】
すなわち、本実施例では、洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与する製品、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与する製品、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与する製品に構成し、たとえばこの洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与することで、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分が付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記機能性成分が徐々に離脱し、この離脱した機能性成分が肌に徐々に直接接触して前記機能が発揮されるように構成している。
【0036】
具体的には、本実施例の前記機能性成分は、前記繊維に柔軟性と肌触りの良さを与え、且つ離脱し肌に接触すると保湿作用や防臭作用などの前記機能(セリシン機能)が発揮され肌によい効果を与える(保湿効果や防臭効果などを与える)加水分解セリシンとしている。
【0037】
すなわち、本実施例では、この機能性成分としての加水分解セリシンと、このセリシンが静電吸着または静電付着するカチオン性高分子とを含む構成としている。
【0038】
したがって、本実施例では、洗濯後付与剤として水分を含む洗濯後の前記繊維に付与することで(またたとえば、浸漬付与剤として水で希釈し浸漬させて前記繊維に付与、または噴霧付与剤として噴霧して前記繊維に付与することで)、この繊維に前記カチオン性高分子が静電吸着または静電付着することによりこのカチオン性高分子を介してこの繊維に前記機能性成分である前記セリシンが付与され、この繊維と肌とが接触することからこの繊維から前記セリシンが徐々に離脱し肌に接触して前記機能が発揮されるように構成している。
【0039】
具体的には、負に帯電しているあるいは負の極性を有する前記機能性成分であるセリシンが、水分により前記繊維に正に帯電しているもしくは正の極性を有する前記カチオン性高分子を介して、表面が負に帯電しているもしくは負の極性を有する前記繊維に付与されるように構成している。
【0040】
また本実施例の機能性成分は、前記繊維と肌とが接触することおよび数回の家庭での洗濯により前記繊維から離脱する程度の弱い静電吸着または静電付着で前記カチオン性高分子を介して前記繊維に付与されるように構成している。
【0041】
具体的には、たとえば柔軟剤として構成した場合は、下着や靴下、タオルなどの肌に触れるあるいは肌に直接まとう繊維製品に、水1000に対して本発明品の柔軟剤1程度の割合で水に希釈させて繊維に付与して加水分解セリシンを付与させるもので、たとえばこのような繊維製品を家庭の洗濯時や洗濯業者による洗濯時の洗濯後(たとえば洗濯後のすすぎ時の洗濯槽内)に本実施例製品(柔軟剤)を適量注ぎ入れると、負に帯電しているあるいは負の極性を有する前記加水分解セリシンが、正に帯電しているもしくは正の極性を有する前記カチオン性高分子を介して、表面が負に帯電しているもしくは負の極性を有する前記繊維に付与される構成としている。
【0042】
すなわち、前記加水分解セリシンとコンプレックスを作り結合している前記カチオン性高分子が繊維に静電吸着または静電付着する(いわば弱いイオン結合により付着する)ことにより、このカチオン性高分子を介してこの繊維に前記セリシンが弱い結合力で付与される構成としている。
【0043】
したがって、このセリシンは、このように弱い力で前記カチオン性高分子と結びつき、このカチオン性高分子も弱い力で繊維と結びついているため、このセリシンが付与された繊維が肌と接触することでこの繊維からセリシンが徐々に離脱して肌に少しずつ刷り込まれていくこととなる構成としている。
【0044】
また、本実施例では、繊維表面にこのように加水分解セリシンとカチオン性高分子が付与されることで表面の摩擦抵抗が少なくなり柔軟性を帯び柔軟効果が発揮されるが、この繊維の柔軟効果を増強するため、さらにカチオン性油性分を加えている。また一般の柔軟剤のようにカチオン系界面活性剤を加えてもよい。
【0045】
また本実施例では、前述のように前記繊維と肌が接触することでセリシンが徐々に離脱してセリシンが少しずつ肌へ刷り込まれていく程度の弱い結合力で、あるいはたとえば数回の洗濯により前記繊維からセリシンがほぼ完全に離脱してしまう程度の弱い結合力で(静電吸着または静電付着で)前記カチオン性高分子を介して前記繊維に付与される構成としている。
【0046】
具体的には毎回の洗濯時ではなく3回に1回くらいの割合で洗濯時に通常の柔軟剤と同じようにして、自動洗濯機の柔軟剤を自動注入させるための柔軟剤収容ボックスに適量収納してすすぎ時の洗濯槽に自動投入させる柔軟剤であり、前記弱い結合力による付着のため数回の洗濯で落ちてしまうがそれまでの間この繊維製品を着ていることで(この繊維と肌とが接触することで)、この繊維から徐々にセリシンが離脱し肌にセリシンが徐々に接触していくように構成し、たとえば肌のうるおいを保つ保湿効果、抗酸化作用により黄色ブドウ球菌の繁殖を抑え汗の匂いを出さず汗疹を抑え肌を清潔に保つ防臭効果などを与えるセリシン機能を、繊維と接触する肌に付与することができる新機能を発揮する柔軟剤に構成している。
【0047】
したがって、たとえば数回の洗濯ごとに適量注ぐだけで、繊維の柔軟性を繰り返し高めることができる(肌触りを向上させることができる)だけでなく、繰り返しこのセリシン機能(新機能)を、繊維を介して肌に付与することができる柔軟剤となる。
【0048】
また本実施例では、このような画期的な作用効果、すなわち簡易な手法で(たとえば各家庭で洗濯時に用いるだけで)繊維に付与でき、且つあえて適度に弱い結合力で繊維に付与させることで適度に(少しずつ徐々に)離脱させて肌にセリシンを持続的に機能を発揮させて、このセリシンによる保湿効果や抗酸化作用による防臭効果などの機能による効能を肌に与えることができる画期的な新機能柔軟剤を実現できる(弱い結合でのセリシン付与を実現できる)ものである。
【0049】
本実施例は、このような柔軟剤を実現できる前記カチオン性高分子を見出したものであるが、さらに実験を繰り返すことで、この作用効果を果たすものとしてカチオン性高分子のなかで、被覆系製で保湿効果、柔軟効果などに優れ、加水分解セリシンとコンプレックスを作り前述した弱い結合力で繊維にセリシンを付着させることに優れたカチオン系キトサン誘導体を見出し、これと加水分解セリシンとをダブル配合する構成としている。
【0050】
すなわち、天然保湿素材である加水分解セリシンとカチオン系キトサン誘導体とのダブル配合により実現したもので、衣類をしっとり柔らかくシルクタッチの風合いに近づける(肌への摩擦を軽減し滑らかな肌触りに仕上げる)ととともに、着ながらにして徐々にセリシンを肌に刷り込ませて肌の保湿効果や防臭効果などのセリシン機能による効果を付与できるように構成したものである。単にセリシンを付与したのでは1回の洗濯程度ですぐに落ちてしまうが、カチオン系キトサン誘導体とのダブル配合で適度に繊維からセリシンが落ちて着ているだけでセリシンが肌へ少しずつ刷り込まれて、保湿効果、抗菌防臭効果を肌に継続的に与えることができる新機能性柔軟剤を実現したものである。(たとえばこの本実施例品の柔軟剤を使用後、この柔軟剤なしで数回洗濯しても前記作用効果が持続し、再度柔軟剤を使用すればまたこの作用効果を繰り返し継続させることができるものである。)
【0051】
さらに具体的に説明すると、本実施例では、繭を水に入れて圧力釜で高温高圧加熱して抽出した液体状の加水分解セリシン(これを乾燥させたセリシンパウダーを溶かしたものでもよい)を、1~30%、カチオン系キトサン誘導体(たとえばキトサンイソステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロイド)を0.1~5.0%含んだ構成とし、さらに柔軟性を高める前記カチオン性油性分やカチオン系界面活性剤、さらに抗菌性を高める茶カテキン、さらに保湿性を高めるグリセリンやグリコール、さらにセリシンと同様に繭や絹糸から精製され肌に徐々に刷り込まれて肌に肌修復効果を付与する機能性成分としてのフィブロイン(加水分解フィブロイン)を含んだ構成としている。
【0052】
また、前述のように、柔軟剤として構成せず、水に希釈してたとえば10倍に薄めてこれに繊維製品を所定時間漬け絞り乾燥させて、同様にして機能性成分を繊維に弱い結合で付与させてもよいし、さらに成分や水分量を改良設定してたとえばアルコールで10倍に薄めて、スプレー器でミスト状にして噴霧し乾燥するだけで、機能性成分を繊維に弱い結合で付与させることができる製品に構成してよい。これにより、たとえばシルク製品の場合、高価であるだけでなく洗濯などの取り扱いが厄介となるが、たとえば、このようにすすぎ時に投入したり、スプレー器で噴霧するだけで、たとえ化繊の繊維製品であってもシルクの肌触りや風合い、そしてシルク機能を肌に与えることが簡単にできることとなる。
【0053】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。