(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026078
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】陰性又は半陰性植物の栽培施設
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230216BHJP
A01G 22/00 20180101ALI20230216BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G22/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131706
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】521356998
【氏名又は名称】ライフストリーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】生澤 俊朗
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AB20
2B022DA01
(57)【要約】
【課題】 簡易かつ安価な構成であっても陰性植物または半陰性植物を栽培している培地に太陽光を照射することができ、更に当該太陽光の照射時間や照射量を制御する事のできる陰性又は半陰性植物の栽培施設と栽培方法を提供する。
【解決手段】 陰性又は半陰性植物を栽培するための施設であって、陰性又は半陰性植物を栽培するための培地と、当該培地の上部を覆う屋根部とからなり、当該屋根部には南北方向に延伸または点在する南北開口部が、東西方向に所定の間隔を置いて設けられており、当該南北開口部には透明または半透明な採光パネルが設けられている陰性又は半陰性植物の栽培施設とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰性又は半陰性植物を栽培するための施設であって、
陰性又は半陰性植物を栽培するための培地と、当該培地の上部を覆う屋根部とからなり、
当該屋根部には南北方向に延伸または点在する南北開口部が、東西方向に所定の間隔を置いて設けられており、
当該南北開口部には透明または半透明な採光パネルが設けられていることを特徴とする陰性又は半陰性植物の栽培施設。
【請求項2】
前記南北開口部は、培地に植生した植物に対する日照時間に応じて南北方向の開口幅を調整し、日照時間に応じて東西方向の設置間隔を調整し、前記培地と南北開口物の間の間隔は、日照時間に応じて調整される請求項1に記載の栽培施設。
【請求項3】
前記南北開口部には、
南北方向の開口幅を調整する開口幅調整部、
開口部に設ける採光パネルの光透過率を変更する光透過率調整部、及び
東西方向における開口部の配置間隔を調整する開口部間隔調整部の少なくとも何れかが設けられている、請求項1又は2に記載の栽培施設。
【請求項4】
前記培地は高さ方向に複数設けられており、
前記屋根部には東西方向に延伸または点在する東西開口部が設けられており、
当該東西開口部から侵入する直射日光は、前記培地以外の領域を照射する請求項1~3の何れか一項に記載の栽培施設。
【請求項5】
陰性又は半陰性植物の栽培方法であって、
培地に植生した陰性又は半陰性植物に対して、透明または半透明な採光パネルを透過した太陽光を直接照射し、
当該植生した植物に対する一日当たりの照射量は100lx以上、500lx以下であることを特徴とする陰性又は半陰性植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日陰を好む陰性または半陰性の植物を栽培するための施設に関し、特に当該植物を栽培するための農業用ハウスであって、当該植物の栽培に最適な採光構造を備えた陰性又は半陰性植物の栽培施設に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコギ科トチバニンジン属のオタネニンジン(高麗人参、朝鮮人参とも呼ぶ)は、古来より薬用として用いられており、今日では、医薬品原料、健康食品、食品等として広く用いられている。かかるオタネニンジンは、長時間日光に当たると枯れてしまうため、オタネニンジンの栽培地には、一般に、オタネニンジンに直射日光が当たらないようにするための日除け用の屋根が設けられている。この種の日除けの屋根として、萱または稲わらで作られた日除け用の屋根などが知られている。
【0003】
そして従前においては、オタネニンジンの栽培システムも提案されている。例えば特許文献1(再表2013-108620号公報)では、同じ栽培地で栽培される陰性植物または半陰性植物の成長のばらつきを抑制する植物栽培システムとして、ソーラーパネルと、前記ソーラーパネルを支持する支持部材とを備え、前記ソーラーパネルの下側に、陰性植物または半陰性植物の栽培領域を形成した植物栽培システムが提案されている。
【0004】
また従前においては、オタネニンジンの栽培用途に限定されるものではないが、農業用ハウスの採光構造に関する技術も提案されている。例えば特許文献2(特開2020-174558号公報)には、南北方向で対向する側面と、東西方向で対面する妻面と、屋根面とが、それぞれ透光性を有する部材で覆われたハウス本体を有し、該ハウス本体の内部に東西方向に沿う栽培ベッドが南北方向に複数並んだ状態で設けられている農業用ハウスの採光構造であって、前記ハウス本体の外側には側面と屋根面に沿って南北方向で往復移動自在な採光カーテンが設けられ、該採光カーテンは基本的に遮光性を有し且つ屋根面に対応する部分だけ東西方向に沿うスリット状の透光部が栽培ベッドに相応する数だけ南北方向に並んで形成されており、ハウス本体の内部には透光部に対応する位置に東西方向に沿う長尺状のミラーが東西方向に沿う回転軸を中心に回転自在に設けられ、透光部から入射した太陽光がミラーにより反射されて栽培ベッドへ向かうように、採光カーテンの屋根面における透光部の位置と、ミラーの角度が制御される農業用ハウスの採光構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2013-108620号公報
【特許文献2】特開2020-174558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の植物栽培システムは、ソーラーパネルの下側に、陰性植物または半陰性植物の栽培領域を形成することで植物の成長のばらつきを抑制しているが、太陽光が直接照射しない事から、カビなどの細菌が繁殖することも否定できず、その結果、植物が健全に生育できない事も考えられる。
【0007】
そこで本発明では、カビ等の発生を抑制するために、陰性植物または半陰性植物を栽培している培地に太陽光を照射させることができ、更に当該太陽光の照射時間や照射量を制御する事のできる陰性又は半陰性植物の栽培施設と栽培方法を提供することを課題の1つとする。
【0008】
また前記特許文献2に記載の農業用ハウスの採光構造は、ハウス本体の外側に、側面と屋根面に沿って南北方向で往復移動自在な採光カーテンを設け、屋根面に対応する部分だけ東西方向に沿うスリット状の透光部を栽培ベッドに相応する数だけ南北方向に並んで形成している。しかしながら、ハウス本体の内部には透光部に対応する位置に東西方向に沿う長尺状のミラーを東西方向に沿う回転軸を中心に回転自在に設け、透光部から入射した太陽光をミラーにより反射させて栽培ベッドへ向かうように構成しており、太陽光の照射に葉長尺なミラーが必要不可欠となっていた。
【0009】
そこで本発明は、簡易かつ安価に構築できる構成であって、陰性植物または半陰性植物を栽培している培地に太陽光を照射することができ、更に当該太陽光の照射時間や照射量を制御する事のできる陰性又は半陰性植物の栽培施設と栽培方法を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の少なくとも何れかを解決する為、本発明では太陽の動きに応じて、太陽光の照射領域を制御し、照射領域の広さによって照射時間を制御するようにした陰性又は半陰性植物の栽培施設を提供する。
【0011】
即ち本発明に係る陰性又は半陰性植物を栽培するための施設は、陰性又は半陰性植物を栽培するための培地と、当該培地の上部を覆う屋根部とからなり、当該屋根部には南北方向に延伸または点在する南北開口部が東西方向に所定の間隔を置いて設けられており、当該南北開口部には透明または半透明な採光パネルを設けて構成する。
【0012】
かかる栽培施設において、前記陰性又は半陰性植物を栽培する培地は、前記開口部から取り込まれる太陽光の照射領域の長さ(即ち南北開口部の長さ)の幅であって、太陽の移動方向である南北方向に延伸するように形成することが望ましい。
【0013】
当該栽培施設において、前記採光パネルは太陽光の透過度を任意に調整することも望ましく、所望の透過度の採光パネルを交換自在に形成するか、複数の採光パネルを積層自在に形成することができる。
【0014】
当該栽培施設において、前記南北開口部は、培地に植生した植物に対する日照時間に応じて南北方向の開口幅を調整し、日照時間に応じて東西方向の設置間隔を調整し、前記培地と南北開口物の間の間隔は、日照時間に応じて調整することが望ましい。また太陽の照射角度は季節によって変化することから、当該南北開口部の長さや位置を調整自在に形成したり、或いは屋根部と培地との相互の位置関係(高さ方向及び/又は水平方向)を任意に調整する位置調整部を設けりすることも望ましい
【0015】
また、当該栽培施設において、前記南北開口部には、南北方向の開口幅を調整する開口幅調整部、開口部に設ける採光パネルの光透過率を変更する光透過率調整部、及び東西方向における開口部の配置間隔を調整する開口部間隔調整部の少なくとも何れかを設けることが望ましい。
【0016】
また、当該栽培施設において、培地に対する太陽光の照射量および/または照射範囲を制御するために、前記屋根部には南北方向に延伸または点在する南北開口部を東西方向に複数設け、当該開口部を任意に選択して遮蔽するように構成することもできる。当該開口部の遮蔽は開口部の外側又は内側に板やシートを被せる他、カーテンやブラインドなどを設けることもできる。
【0017】
また、当該栽培施設において、前記培地は高さ方向に複数段設けられており、前記屋根部には東西方向に延伸または点在する東西開口部が設けられており、当該東西開口部から侵入する直射日光は、前記培地以外の領域を照射するように東西開口部を設ける事も望ましい。
【0018】
また、培地を高さ方向に複数設けた多段栽培施設においては、最上段以外の培地にも光を照射する為に、前記東西開口部から照射される太陽光の照射領域には、光反射率の高い材料を設けることができる。例えば、東西開口部から侵入する太陽光が通路を照射する場合には、当該通路に白色などの光反射率の高いシートを設置する事ができる。更に、当該多段栽培施設において、最上段以外の培地にも光を照射する為に光源を設けることもできる。かかる光源は電球、蛍光灯又はLED等の灯具を用いることができる。
【0019】
また、前記培地および屋根部の少なくとも何れかは、高さ調整自在に形成することができる。培地または屋根部の高さを調整することにより、両者間における相対的な距離を調整することができ、これによって前記南北開口部や東西開口部から照射される太陽光の照射領域を調整することができる。
【0020】
また前記屋根部は雨漏れなどのリスクを回避する為に傾斜させて設けることが望ましい。当該屋根傾斜は必要とされる培地の面積や積雪の有無などによって適宜調整することができる。
【0021】
また当該栽培施設において培地の周囲は、雨水の侵入を阻止する為に外壁又は防水シートを設けることが望ましい。特に当該外壁又は防水シートとして遮光性を有する材料を用いることにより、陰性又は半陰性植物の栽培環境における光量を制御しやすくなる。
【0022】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するために、陰性又は半陰性植物の栽培方法であって、培地に植生した陰性又は半陰性植物に対して、透明または半透明な採光パネルを透過した太陽光を直接照射し、当該植生した植物に対する一日当たりの照射量を100lx以上、500lx以下とした陰性又は半陰性植物の栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の陰性又は半陰性植物の栽培施設は、屋根部には南北方向に延伸または点在する南北開口部が、東西方向に所定の間隔を置いて設けている。よって当該南北開口部から取り込んだ太陽光を培地に照射させることができる。そして当該南北開口部から取り込まれた太陽光の照射領域は帯状又は散点状であって、これは太陽の動きに従って南北方向に移動する。従って、前記陰性又は半陰性植物を栽培する培地を、前記開口部から取り込まれる太陽光の照射領域の長さ(即ち南北開口部の長さ)と同じ幅であって、太陽の移動方向である南北方向に延伸するように形成することにより、太陽光の照射領域を培地の長さ方向に移動させることができる。そして当該南北開口部の開口幅を調整することによって、培地に植生した植物に対する照射時間を調整することができる。
【0024】
よって本発明により、ミラーなどの設備を必要とすることなく、陰性植物または半陰性植物を栽培している培地に対して、太陽光の照射時間や照射量を制御する事のできる陰性又は半陰性植物の栽培施設と栽培方法を提供することができる。
【0025】
そして前記南北開口部には透明または半透明な採光パネルを設けていることから、当該開口部を透過する光の量を採光パネルの透過率によって制御できる他、当該採光パネルによって雨水の侵入を阻止することもできる。
【0026】
特に、前記南北開口部は、培地に植生した植物に対する日照時間に応じて南北方向の開口幅を調整し、日照時間に応じて東西方向の設置間隔を調整し、前記培地と南北開口物の間の間隔は、日照時間に応じて調整することにより、植生した植物に対する太陽光の照射量を、その季節に応じて最適化することもできる。
【0027】
更に、前記培地を高さ方向に複数設けた多段栽培施設では、前記屋根部に、東西方向に延伸または点在する東西開口部を設け、当該東西開口部から侵入する直射日光が、前記培地以外の領域を照射するように構成することができる。このように構成した多段栽培施設では、最上段よりも下方に存在する培地に対して、当該東西開口部から差し込んだ太陽光の反射光を供給することができる。よって、多段栽培施設であっても、各段に存在する培地に植生した植物を最適な環境で育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施の形態に係る栽培施設を示す斜視図
【
図3】培地に対する太陽光の照射状況を示す東西方向縦断面図
【
図4】培地に対する太陽光の照射状況を示す南北方向縦断面図
【
図5】太陽光の照射角度に基づいた南北開口部からの照射状況を示す南北方向要部縦断面図
【
図7】更に他の実施の形態に係る栽培施設を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる陰性又は半陰性植物の栽培施設10とこれを用いた栽培方法を具体的に説明する。特に本実施の形態に係る栽培施設10は、陰性又は半陰性植物としてオタネニンジンを栽培するのに適した栽培施設10としている。
【0030】
図1は第1の実施の形態に係る栽培施設10を示す斜視図であり、
図2は当該栽培施設10の平面図である。本実施の形態に示す栽培施設10は、オタネニンジンを植生する培地30を、高さ方向に2段に設けた多段栽培施設10であって、当該2段の培地30は南北方向に延伸させて複数列設け、各列の間には栽培管理のための通路を設けている。
【0031】
培地30の周りには支柱40を設けており、この支柱40によって屋根部20を支持している。当該支柱40は屋根部20や培地30を支持できれば良く、金属パイプの他、木材を用いて形成することもできる。そして当該支柱40によって支持される屋根部20は、雨水が培地30に滴下することの無い様に傾斜させている。但し当該屋根部20は、屋根材の材質や防水加工の有無、更には積雪の有無によって屋根部20の傾斜は任意に調整することができる。なお、屋根材は建築材料として提供されている部材の他、一般的な建築では屋根材としては用いられていない材料、例えば合板などを使用することもできる。当該屋根部20は、後述する開口部以外においては太陽光を遮蔽し、且つ雨除けとして機能すれば良いためである。
【0032】
この屋根部20には南北方向に延伸する南北開口部21を、東西方向に複数設けている。当該南北開口部21は、南北方向に長尺な長方形に形成しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、湾曲した帯状または楕円形状に形成しても良い。更に当該南北開口部21は、任意の位置を幅広く、又は幅狭く形成することもできる。例えば、長さ方向の中央近傍の開口幅を広く又は狭く形成した南北開口部21とすることもできる。
【0033】
かかる南北開口部21は、前記屋根部20に開口する孔として存在すれば良く、屋根部に開口を形成する他、屋根部20を構成する板材同士の隙間の間隙として形成することもできる。特に屋根部20を構成する板材同士の間隙として南北開口部21を形成する場合には、前記屋根部20を構成する屋根材を、当該南北開口部21の分だけ離して固定すれば良い。また当該南北開口部21は、南北方向に延伸する開口として形成する他、南北方向に配列された小径の開口によって形成しても良く、更に開口を点在させて形成しても良い。即ち、当該開口部は所定の領域に太陽光を照射できればよく、栽培する植物に応じて適宜形状に形成することができる。
【0034】
そして前記屋根部20には、東西方向に延伸する東西開口部22を設けている。この東西開口部22は、ここを通過した太陽光が培地30の間に存在する通路などに照射するように形成する。かかる東西開口部22も太陽光を透過させる限りにおいて、帯状に形成する他、開口部を点在させるなど各種の形状に形成することができる。特に当該東西開口部22から差し込んだ太陽光は、通路などに反射して最上段よりも下の培地30(1段目の培地30)に太陽光を照射させることができる。
【0035】
上記南北開口部21と東西開口部22には、それぞれ太陽光を透過可能な採光パネル23を設けている。かかる採光パネル23は透明または半透明の板又はシートであって良く、更に光透過率が任意の値に調整されていても良い。更に当該採光パネル23は、前記各開口部21,22に対して着脱自在に設けることもでき、季節によって光透過率の異なる採光パネル23を設置する事もできる。特に本実施の形態における栽培施設10はオタネニンジンの栽培施設10であることから、光透過率が50%~70%程度の樹脂板を使用することが望ましい。更に当該採光パネル23は、前記南北開口部21に設けるものと、東西開口部22に設けるものとで、その光透過率を変えることもできる。例えば、東西開口部22に設ける採光パネル23は光透過率が高いもの又は低いものを使用することができる。更に、前記南北開口部21に設ける採光パネル23は、その設置領域ごとに光透過率を変えることもできる。例えば一定の領域に設けられる採光パネル23は光透過率の高いものを使用し、当該採光パネル23を通過した太陽光が照射される領域には、生育が遅いか又は生育し過ぎたオタネニンジンを植栽することもできる。
【0036】
また陰性又は半陰性植物としてオタネニンジンを栽培する培地30は、前記南北開口部21から差し込んだ帯状の太陽光が当たる幅で、東西方向に延伸するように形成されている。当該培地30には、培土を敷き詰めてオタネニンジンを直接植栽する他、プランターなどの栽培容器31に植栽したものを設置するようにしても良い。特に栽培容器を利用する事により、害虫による育成障害や病菌や有害センチュウによる連作障害等の問題を未然に回避することができる。
【0037】
図2は第1の実施の形態に係る栽培施設10の平面図である。特にこの図に示す栽培施設10では、南北開口部21を閉塞する採光パネル23の透過度を、北側と南側で異ならせている。即ち、北側に存在する培地30に太陽光を案内する開口部に設ける採光パネル23は、南側に存在する培地30に太陽光を案内する開口部に設ける採光パネル23よりも光透過率の低いものを設けている。このように光透過率の異なる採光パネル23を組み合わせて使用する事で、領域ごとに育成環境を異ならせることができ、その結果、植物の育成状況をコントロールすることもできる。なお、開口部に設ける採光パネル23には、ブラインドやレースカーテン、或いは着色フィルムなど、光透過率を調整するための光透過率調整部材50を設け、任意に光透過率を調整することも望まし。
【0038】
図3は培地30に対する太陽光の照射状況を示す東西方向縦断面図である。この図に示す通り、それぞれの南北開口部21から差し込んだ太陽光は、当該屋根部20の下に存在する培地30を照射する。この時、太陽光が当たる領域は、前記南北開口部21の水平投影形状であり、本実施の形態では南北方向に延伸する長方形の帯状となっている。そしてこの帯状の太陽光照射領域は、太陽が東から西に移動することにより、西側から東側に移動する。従ってこの南北開口部21の設置間隔や屋根部20と培地30との距離を調整することにより、培地全体に対して太陽光を照射させることもできる。
【0039】
また培地30には、帯状の太陽光照射領域に存在する間だけ太陽光が照射されることから、当該南北開口部21の幅(東西方向の幅)によって、当該培地30の特定領域に対する太陽光の照射時間を制御することができる。即ち、当該南北開口部21の幅を広くすれば、太陽光の照射時間を長くすることができ、一方で南北開口部21の幅を狭くすれば、太陽光の照射時間を短くすることができる。よって、当該南北開口部21には、南北方向の開口幅を調整する開口幅調整部や東西方向における開口部の配置間隔を調整する開口部間隔調整部を設けることが望ましい。開口幅調整部は、板や遮蔽シートなどの遮蔽部材60によって開口部の開口幅を変更するように構成することができ、開口部間隔調整部は複数設けた南北開口部21を選択的に閉塞するか、または屋根部における南北開口部間に存在する領域を伸縮自在に形成することができる。
【0040】
図4は培地30に対する太陽光の照射状況を示す南北方向縦断面図である。前記南北開口部21は、培地30の南北方向の幅に合わせて長さを調整しており、当該南北開口部21に合わせた長方形の帯状として培地30に太陽光を照射させるように形成している。特に、
図4に示す様に多段栽培施設10として構成した場合には、当該南北開口部21から差し込んだ太陽光は上段の培地30を照射することはできるが、その下段の培地30には太陽光が届かない。そこで東西方向に延伸する東西開口部22を設け、そこから照射した光を通路などで反射させて、下段の培地30にも太陽光を届けるように構成することができる。従って当該東西開口部22を通って侵入した太陽光を効果的に反射させるために、当該照射面には白色シート等の反射率の高い反射部材、または照射した光を散乱反射させる散乱反射部材を設けることも望ましい。
【0041】
但し太陽の高さは季節によって変化することから、季節によって南北開口部21からの照射角度も異なってくる。そこで南北開口部21の開口長さ(南北方向長さ)を変更できるようにし、また培地30と南北開口部21との相対的な位置関係を任意に調整できるようにすることが望ましい。
【0042】
図5は太陽光の照射角度に基づいた南北開口部21からの照射状況を示す南北方向要部縦断面図である。この
図5(A)は太陽光の照射角度が大きい時、即ち夏至における照射角度Θ1が78.4°の時の照射状態を示しており、
図5(B)は太陽光の照射角度が小さい時、即ち冬至における照射角度Θ2が31.6°の時の照射状態を示している。この
図5に示す様に、南北開口部21から差し込む太陽光は、太陽の照射角によってその照射範囲が異なることから、当該南北開口部21にはブラインドなどの進退自在な遮蔽部材60を設けている。かかる遮蔽部材60は太陽光の照射角度が小さい時に、照射領域を制限するために前記南北開口部21を閉塞する向きに進出するように構成することができる。なお、当該遮蔽部材60を設ける代わりに、当該屋根部20の傾斜角度を調整するように構成することもできる。即ち、太陽光の照射角度が小さい時には、当該屋根材の傾斜を小さくし、平坦に近い勾配に変更できるように構成することができる。
【0043】
そして当該太陽光の照射角度の違いによって照射領域が移動することから、培地30と南北開口部21との相対的な位置関係を任意に調整できるように構成することも望ましい。本実施の形態では、培地30をスライド移動できるようにキャスターを設けているが、その他にもオタネニンジンを植栽しているプランター31を移動させることによって行うこともできる。更に当該培地30と南北開口部21との相対的な位置関係の調整は、屋根部20を南北方向にスライド移動させるか、又は屋根部20に設けた開口部を移動できるように構成しても良い。
【0044】
この
図5に示す様に南北開口部21の開口長さ(南北方向長さ)を変更自在に形成し、及び/又は培地30と南北開口部21との相対的な位置関係を任意に調整自在に形成することにより、季節や設置地域によって太陽光の照射角度が変化したとしても、当該照射角度に応じた最適な太陽光の照射時間や照射領域などを確保することができる。
【0045】
図6は他の実施の形態に係る栽培施設10を示す平面図である。この実施の形態に係る栽培施設10では屋根材に形成する南北開口部21を東西方向に延伸する培地毎とせずに、栽培施設10全体の長さとして形成しており、また東西開口部22を、当該南北開口部21と交差させて形成している。そして南北開口部21については、必要とする領域だけを太陽光が透過するように開放し、任意の南北開口部21に対しては光透過率が低いか又は遮光性の光量を調整する光透過率調整部材50を積層させて設けることができる。特に、栽培する植物がオタネニンジンの場合には、雨水の侵入を阻止する為に各南北開口部21には採光パネル23を設けていることから、当該光透過率調整部材50は採光パネル23の外側又は内側に積層上に設けることが望ましい。当該光透過率調整部材50を設けることにより、任意の南北開口部21を閉塞することもでき、これにより南北開口部21同士の間隔を調整することもできる。よって、季節によって太陽光の照射時間が変わった場合であっても、これに応じて太陽光の照射領域を調整することもできる。
【0046】
図7は更に他の実施の形態に係る栽培施設10を示す分解斜視図である。この実施の形態に係る栽培施設10では、屋根部20を屋根材70と前記採光パネル23で構成しており、前記南北開口部は当該屋根材70同士の間に確保されている。当該屋根材70は、少なくとも太陽光を遮蔽すると共に、雨水の侵入を阻止する事のできる材料を用いることができる。また採光パネル23は、前述の通り透明または半透明の樹脂板や樹脂シートを用いて構成することができる。但しオタネニンジンの生育には3年以上の栽培期間を要することから耐候性を有する材料を用いることが望ましいい。また当該遮蔽部材60と採光パネル23は、本実施の形態では両者を交互に配置しているが、必ずしも交互に配置する必要はなく、太陽光の照射角度や照射時間に応じて屋根材70同士を隣り合わせて配置したり、採光パネル23同士を隣り合わせて配置したりすることもできる。またこのように屋根材70と前記採光パネル23を設けた栽培施設10においては、太陽光の照射時間や照射角度に応じて、屋根材70と前記採光パネル23を任意の幅又は光透過率のものに変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の陰性又は半陰性植物の栽培施設は、オタネニンジンなどの陰性植物や半陰性植物の生育施設として利用することができる。その他の植物であっても、太陽光の照射時間や照射領域をコントロールするための栽培施設として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 栽培施設
20 屋根部
21 南北開口部
22 東西開口部
23 採光パネル
30 培地
31 栽培容器
40 支柱
50 光透過率調整部材
60 遮蔽部材
70 屋根材