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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026091
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ボイラ制御システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
F22B35/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131742
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博道
(72)【発明者】
【氏名】花野 郁也
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021DA08
3L021FA12
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を向上させることができるボイラ制御システムを提供する。
【解決手段】複数台のボイラを含むボイラ群と、複数台のボイラそれぞれの運転負荷をボイラ群の合計負荷ごとに規定する複数の燃焼パターンが記憶され、燃焼パターンに基づいてボイラの運転負荷を制御する制御装置と、を備える。複数の燃焼パターンは、少なくとも一部の合計負荷に規定されるボイラの稼働台数が互いに異なる。制御装置は、予め定められた期間におけるボイラ群の平均負荷を導出し、導出された平均負荷に基づいて、複数の燃焼パターンの中からいずれかを決定し、決定された燃焼パターンと合計負荷とに基づいて、複数台のボイラそれぞれの運転負荷を決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のボイラを含むボイラ群と、
前記複数台のボイラそれぞれの運転負荷を前記ボイラ群の合計負荷ごとに規定する複数の燃焼パターンが記憶され、前記燃焼パターンに基づいて前記ボイラの運転負荷を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の燃焼パターンは、少なくとも一部の前記合計負荷に規定される前記ボイラの稼働台数が互いに異なり、
前記制御装置は、
予め定められた期間における前記ボイラ群の平均負荷を導出し、
導出された前記平均負荷に基づいて、前記複数の燃焼パターンの中からいずれか1つを決定し、
決定された前記燃焼パターンと前記合計負荷とに基づいて、前記複数台のボイラそれぞれの運転負荷を決定する、
ボイラ制御システム。
【請求項2】
前記複数の燃焼パターンには、前記ボイラの給水温度が紐付けられており、
前記制御装置は、
前記平均負荷と前記給水温度とに基づいて前記燃焼パターンを決定する、
請求項1に記載のボイラ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のボイラを含むボイラ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のボイラが設置されるボイラ制御システムにおいては、各ボイラの蒸気管が蒸気ヘッダに接続され、蒸気ヘッダから蒸気利用設備に蒸気が供給される。蒸気ヘッダには圧力センサが設けられており、圧力が低下するとボイラの負荷を高め、圧力が高くなるとボイラの負荷を低下させるように制御がなされる。
【0003】
ボイラ制御システムにおいては、蒸気利用設備で要求される蒸気量を確保しつつ、エネルギー効率を高めるために、各ボイラの燃焼ポジションが決定される。例えば、特許文献1に示されるボイラ制御システムでは、燃焼ポジションを切り替える基準となる圧力制御帯域が、平均負荷に基づいて切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-32469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数台のボイラが設置されるボイラ制御システムにおいて、さらなるエネルギー効率の向上が希求されている。
【0006】
本発明は、エネルギー効率を向上させることができるボイラ制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のボイラ制御システムは、複数台のボイラを含むボイラ群と、複数台のボイラそれぞれの運転負荷をボイラ群の合計負荷ごとに規定する複数の燃焼パターンが記憶され、燃焼パターンに基づいてボイラの運転負荷を制御する制御装置と、を備え、複数の燃焼パターンは、少なくとも一部の合計負荷に規定されるボイラの稼働台数が互いに異なり、制御装置は、予め定められた期間におけるボイラ群の平均負荷を導出し、導出された平均負荷に基づいて、複数の燃焼パターンの中からいずれか1つを決定し、決定された燃焼パターンと合計負荷とに基づいて、複数台のボイラそれぞれの運転負荷を決定する。
【0008】
また、複数の燃焼パターンには、ボイラの給水温度が紐付けられており、制御装置は、平均負荷と給水温度とに基づいて燃焼パターンを決定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ボイラ制御システムを説明する図である。
図2】燃焼ポジションを説明する図である。
図3】通常燃焼パターンの一例を説明する図である。
図4】3台燃焼パターンの一例を説明する図である。
図5】2台燃焼パターンの一例を説明する図である。
図6】1台燃焼パターンの一例を説明する図である。
図7】給水温度が15℃のときの平均負荷と燃焼パターンとの関係を説明する図である。
図8】給水温度が60℃のときの平均負荷と燃焼パターンとの関係を説明する図である。
図9】給水温度、ボイラ負荷率、ボイラ効率の関係を説明する図である。
図10】ボイラ制御システムの機能ブロック図である。
図11】台数制御装置の処理を説明するフローチャートである。
図12】燃焼パターン更新処理を説明するフローチャートである。
図13】ボイラ制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、ボイラ制御システムSを説明する図である。ボイラ制御システムSは、複数台のボイラを含むボイラ群を備える。ここでは、一例として、ボイラ制御システムSが、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4の4台のボイラを含むボイラ群を備えている。ただし、ボイラは複数台設けられていればよく、その台数は特に限定されない。
【0013】
第1ボイラ1は、第1ボイラ制御装置1Aを備える。同様に、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4は、それぞれ第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aを備える。以下では、第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aを総称して、ボイラ制御装置と称する。ボイラ制御装置は、各ボイラの運転を制御する。
【0014】
第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4には、それぞれ給水管1a、2a、3a、4aが接続されている。給水管1a、2a、3a、4aは、給水元管5に接続されている。給水元管5は、不図示の給水源に接続されている。したがって、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4には、それぞれ給水管1a、2a、3a、4aおよび給水元管5を介して、給水源から水が供給される。
【0015】
給水管1a、2a、3a、4aには、それぞれ給水ポンプPが設けられている。ボイラ制御装置は、給水ポンプPを制御することで、給水源から各ボイラに供給される給水量を変化させる。具体的には、第1ボイラ制御装置1Aは、給水管1aに設けられた給水ポンプPを制御し、第1ボイラ1への給水量を調整する。同様に、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aは、それぞれ給水管2a、3a、4aに設けられた給水ポンプPを制御し、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4への給水量を調整する。
【0016】
給水元管5には、温度センサ6が設けられている。温度センサ6は、給水元管5内の水の温度を計測する。以下では、温度センサ6が計測する水の温度を給水温度と呼ぶ。温度センサ6は、台数制御装置100に接続される。台数制御装置100には、温度センサ6によって計測された給水温度を示す信号が入力される。台数制御装置100は、主に各ボイラの燃焼ポジションを決定する。
【0017】
また、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4には、それぞれ燃料供給管1b、2b、3b、4bが接続されている。燃料供給管1b、2b、3b、4bは、燃料元管7に接続されている。燃料元管7は、不図示の燃料源に接続されている。したがって、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4には、それぞれ燃料供給管1b、2b、3b、4bおよび燃料元管7を介して、燃料源から燃料が供給される。
【0018】
燃料供給管1b、2b、3b、4bには、それぞれ流量制御弁Vが設けられている。流量制御弁Vは、電動バルブで構成されており、ボイラ制御装置により制御される。ボイラ制御装置は、流量制御弁Vの開度を制御することで、燃料源から各ボイラへの燃料供給量を変化させる。具体的には、第1ボイラ制御装置1Aは、燃料供給管1bに設けられた流量制御弁Vを制御し、第1ボイラ1への燃料の供給量を調整する。同様に、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aは、それぞれ燃料供給管2b、3b、4bに設けられた流量制御弁Vを制御し、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4への燃料の供給量を調整する。
【0019】
第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3および第4ボイラ4は、不図示の燃焼装置を含む。また、ここでは、燃料の一例として、都市ガスが各ボイラに供給される。ただし、燃料は都市ガスに限らず、各ボイラで燃焼作用を実現するものであればよい。また、燃料は、気体でも液体でもよく、特に燃料が気体の場合には、空気と燃料とが混合された混合気が供給されてもよい。
【0020】
ここでは、各ボイラは、燃焼装置により、燃料源から供給される燃料を燃焼させ、燃焼熱により給水を加熱して蒸気を生成する。ボイラ制御装置は、給水ポンプP、流量制御弁Vを制御することで、各ボイラにおける蒸気の生成量、すなわち、各ボイラの負荷をコントロールする。
【0021】
ただし、各ボイラは、給水を加熱して蒸気を生成することができればよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、各ボイラは、電気式のヒータを備えてもよい。
【0022】
また、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4は、それぞれ蒸気管1c、2c、3c、4cを介して蒸気ヘッダ8に接続されている。また、蒸気ヘッダ8は、蒸気供給管8aを介して、蒸気が利用される蒸気利用設備9に接続されている。したがって、各ボイラで生成された蒸気は、蒸気ヘッダ8を介して蒸気利用設備9に供給される。
【0023】
蒸気ヘッダ8には圧力センサ10が設けられており、圧力センサ10によって検出された蒸気ヘッダ8の圧力が、台数制御装置100に入力される。以下では、蒸気ヘッダ8の圧力を蒸気ヘッダ圧と呼ぶ。台数制御装置100は、各ボイラに供給される水の給水温度、各ボイラの負荷履歴、蒸気ヘッダ8の蒸気ヘッダ圧等に基づいて、各ボイラの燃焼ポジションを制御する。
【0024】
図2は、燃焼ポジションを説明する図である。ここでは、一例として、高燃焼ポジション(High)、中燃焼ポジション(Mid)、低燃焼ポジション(Low)、停止ポジション(Stop)の4つの燃焼ポジションが各ボイラに設けられている。台数制御装置100は、各ボイラを4つの燃焼ポジションのいずれかに決定する。ボイラ制御装置は、台数制御装置100が決定した燃焼ポジションに基づいて、給水ポンプP、流量制御弁Vを制御する。すなわち、台数制御装置100は、各ボイラに設けられたボイラ制御装置の上位の制御装置と言える。
【0025】
高燃焼ポジションは、定格運転の燃焼ポジションであり、ここでは、高燃焼ポジションにおけるボイラの負荷を100%とする。中燃焼ポジションは、高燃焼ポジションよりも蒸気の生成量が少なく、負荷は定格運転時の50%である。つまり、中燃焼ポジションにおける蒸気の生成量は、高燃焼ポジションの大凡50%である。
【0026】
低燃焼ポジションは、中燃焼ポジションよりも蒸気の生成量が少なく、負荷は定格運転時の20%である。つまり、低燃焼ポジションにおける蒸気の生成量は、高燃焼ポジションの大凡20%である。停止ポジションは、蒸気が生成されないボイラの停止状態であり、負荷は0%である。なお、停止ポジションは、燃焼装置における火種が消化された完全停止状態でもよいし、火種を残したパイロット状態であってもよい。
【0027】
上記のように、各ボイラは、燃焼ポジションによって運転負荷が決まることから、燃焼ポジションは運転負荷とも言える。ここで、各ボイラの燃焼ポジションは、燃焼パターンに基づいて設定される。燃焼パターンというのは、複数台のボイラそれぞれの運転負荷を、ボイラ群の合計負荷ごとに規定するものである。すなわち、燃焼パターンは、蒸気利用設備9で要求される蒸気負荷に応じて、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4それぞれの燃焼ポジションを規定するものである。
【0028】
図3は、通常燃焼パターンの一例を説明する図である。図4は、3台燃焼パターンの一例を説明する図である。図5は、2台燃焼パターンの一例を説明する図である。図6は、1台燃焼パターンの一例を説明する図である。ここでは、複数の燃焼パターンが予め用意されている。燃焼パターンは、基本的に4台のボイラを稼働することを前提とした図3に示す通常燃焼パターン、3台のボイラを稼働することを前提とした図4に示す3台標準燃焼パターン、2台のボイラを稼働することを前提とした図5に示す2台標準燃焼パターン、1台のボイラを稼働することを前提とした図6に示す1台標準燃焼パターンのいずれかに分類される。なお、ボイラの稼働とは、高燃焼ポジション、中燃焼ポジション、低燃焼ポジションのいずれかの燃焼ポジションに設定されている状態、すなわち、停止ポジション以外の燃焼ポジションに設定されている状態を言う。
【0029】
また、通常燃焼パターン、3台標準燃焼パターン、2台標準燃焼パターン、1台標準燃焼パターンは、それぞれ給水温度に応じて複数設けられている。図3から図6には、一例として、給水温度が15℃前後のときに採用される燃焼パターンと、給水温度が60℃前後のときに採用される燃焼パターンとが示されている。なお、ここでは、説明の都合上、給水温度が15℃の場合、および、60℃の場合の燃焼パターンについて説明するが、他の温度に対応する燃焼パターンも設けられている。
【0030】
なお、図3から図6において、「H」は、高燃焼ポジションを示し、「M」は中燃焼ポジションを示し、「L」は低燃焼ポジションを示し、「S」は停止ポジションを示している。また、ここでは、各ボイラの最大出力、すなわち、高燃焼ポジションに設定されている場合の各ボイラの負荷は、2t/hとする。したがって、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4の4台のボイラを有するボイラ群の最大合計負荷は8t/hとなる。
【0031】
例えば、図3の上図に示すように、給水温度が15℃前後であり、通常燃焼パターンが採用されたとする。図中太線の囲みで示すように、この通常燃焼パターンによって圧力制御がなされ、4台全てのボイラが低燃焼ポジションに設定された場合、1時間当たりの合計負荷が大凡1.2t以上、かつ、1.6t未満となる。また、第1ボイラ1が中燃焼ポジションに設定され、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4が低燃焼ポジションに設定された場合、1時間当たりの合計負荷が大凡1.6t以上、かつ、2.2t未満となる。
【0032】
また、例えば、図3の下図に示すように、給水温度が60℃前後であり、通常燃焼パターンが採用されたとする。図中太線の囲みで示すように、この通常燃焼パターンによって圧力制御がなされ、4台全てのボイラが中燃焼ポジションに設定された場合、1時間当たりの合計負荷が大凡3.4t以上、かつ、4.0t未満となる。また、第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3が中燃焼ポジションに設定され、第4ボイラ4が低燃焼ポジションに設定された場合、1時間当たりの合計負荷が大凡3.0t以上、かつ、3.4t未満となる。
【0033】
このように、各燃焼パターンでは、複数台のボイラそれぞれの燃焼ポジションにより、ボイラ群の合計負荷が規定される。換言すれば、各燃焼パターンは、ボイラ群の合計負荷ごとに、各ボイラの燃焼ポジションを規定する。台数制御装置100は、燃焼パターンを予め決定し、その後、所定期間に亘り、決定された燃焼パターンに基づいて、各ボイラの燃焼ポジションが制御される。
【0034】
具体的には、台数制御装置100には、蒸気利用設備9における負荷を示す負荷情報が入力される。台数制御装置100は、入力される負荷情報を記憶し、所定期間ごとの平均負荷を導出する。平均負荷は、1時間当たりの蒸気負荷である。ここでは、一例として、一週間が所定期間として定められており、台数制御装置100は、例えば、月曜日の午前0時に、前週月曜日の午前0時から次の月曜日の午前0時までの負荷を平均した平均負荷を導出する。そして、台数制御装置100は、導出した平均負荷と、給水温度とに基づいて、次の一週間で採用する燃焼パターンを複数の燃焼パターンの中から1つ選択する。
【0035】
なお、台数制御装置100は、燃焼パターンの選択時に、温度センサ6から給水温度を取得してもよいし、平均負荷と同様に、直近一週間の給水温度の平均値を取得してもよい。あるいは、台数制御装置100は、気象情報等に基づいて、以後の一週間の給水温度を予測し、予測値としての給水温度を取得してもよい。
【0036】
また、ここでは、給水温度を15℃または60℃とした場合の燃焼パターンを例示しているが、燃焼パターンが設けられる給水温度の間隔は特に限定されない。燃焼パターンは、例えば、5度間隔や10度間隔で用意されてもよい。台数制御装置100は、用意された燃焼パターンのうち、取得した給水温度に対して、最も近い給水温度に対応する燃焼パターンを選択する。
【0037】
図7は、給水温度が15℃のときの平均負荷と燃焼パターンとの関係を説明する図である。図8は、給水温度が60℃のときの平均負荷と燃焼パターンとの関係を説明する図である。ここでは、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷と、温度センサ6から入力される給水温度とに基づいて、次の一週間で採用する燃焼パターンを決定する。
【0038】
図7に示すように、例えば、給水温度が15℃前後であり、直近一週間の平均負荷が0.8t/h未満である場合、台数制御装置100は、以後の一週間の燃焼パターンとして、15℃用の1台標準燃焼パターンを選択する。同様に、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が0.8t/h以上、かつ、1.2t/h未満である場合には、15℃用の2台標準燃焼パターンを選択する。また、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が1.2t/h以上、かつ、1.6t/h未満である場合には、15℃用の3台標準燃焼パターンを選択する。また、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が1.6t/h以上である場合には、15℃用の通常燃焼パターンを選択する。
【0039】
また、図8に示すように、例えば、給水温度が60℃前後であり、直近一週間の平均負荷が1.4t/h未満である場合、台数制御装置100は、以後の一週間の燃焼パターンとして、60℃用の1台標準燃焼パターンを選択する。同様に、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が1.4t/h以上、かつ、2.4t/h未満である場合には、60℃用の2台標準燃焼パターンを選択する。また、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が2.4t/h以上、かつ、3.4t/h未満である場合には、60℃用の3台標準燃焼パターンを選択する。また、台数制御装置100は、直近一週間の平均負荷が3.4t/h以上である場合には、60℃用の通常燃焼パターンを選択する。
【0040】
上記したように、ここでは、燃焼パターンが、通常燃焼パターン、3台標準燃焼パターン、2台標準燃焼パターン、1台標準燃焼パターンに分類される。これら4つに分類される各燃焼パターンにおいては、基本的なボイラの稼働台数が異なっている。そして、直近一週間の平均負荷が小さいほど、基本的なボイラの稼働台数の少ない燃焼パターンが選択され、直近一週間の平均負荷が大きいほど、基本的なボイラの稼働台数の多い燃焼パターンが選択される。これにより、前週と今週とで、一週間当たりの平均負荷に大きな変動がなければ、ボイラ効率が最も高くなるように燃焼ポジションが設定される。
【0041】
例えば、図7に示すように、直近一週間の平均負荷が1.6t/h以上であり、給水温度が15℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、15℃用の通常燃焼パターンが選択される。また、図8に示すように、直近一週間の平均負荷が3.4t/h以上であり、給水温度が60℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、60℃用の通常燃焼パターンが選択される。
【0042】
図3の上図に示すように、15℃用の通常燃焼パターンでは、合計負荷が1.6t/h以上である場合に、4台のボイラが稼働するように、合計負荷ごとに各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。一方で、図3の下図に示すように、60℃用の通常燃焼パターンでは、合計負荷が3.4t/h以上である場合に、4台のボイラが稼働するように、合計負荷ごとに各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0043】
つまり、通常燃焼パターンにおいては、当該通常燃焼パターンが選択される平均負荷の閾値(1.6t/hあるいは3.4t/h)以上の合計負荷である場合に、必ず、ボイラの稼働台数が4台となるように、各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0044】
また、図7に示すように、直近一週間の平均負荷が1.2t/h以上、かつ、1.6t/h未満であり、給水温度が15℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、15℃用の3台標準燃焼パターンが選択される。また、図8に示すように、直近一週間の平均負荷が2.4t/h以上、かつ、3.4t/h未満であり、給水温度が60℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、60℃用の3台標準燃焼パターンが選択される。
【0045】
図4の上図に太線の囲みで示すように、15℃用の3台標準燃焼パターンでは、合計負荷が0.8t/h以上であって、1.8t/h未満である場合に、3台のボイラが稼働するように燃焼ポジションが設定されている。また、図4の下図に太線の囲みで示すように、60℃用の3台標準燃焼パターンでは、合計負荷が2.0t/h以上であって、3.0t/h未満である場合に、3台のボイラが稼働するように燃焼ポジションが設定されている。
【0046】
上記のとおり、15℃用の3台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が1.2t/h以上、かつ、1.6t/h未満の場合である。また、60℃用の3台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が2.4t/h以上、かつ、3.4t/h未満の場合である。したがって、3台標準燃焼パターンにおいては、合計負荷が、直近一週間の平均負荷と同程度の範囲にある場合に、ボイラの稼働台数が3台となるように、各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0047】
また、図7に示すように、直近一週間の平均負荷が0.8t/h以上、かつ、1.2t/h未満であり、給水温度が15℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、15℃用の2台標準燃焼パターンが選択される。また、図8に示すように、直近一週間の平均負荷が1.4t/h以上、かつ、2.4t/h未満であり、給水温度が60℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、60℃用の2台標準燃焼パターンが選択される。
【0048】
図5の上図に太線の囲みで示すように、15℃用の2台標準燃焼パターンでは、合計負荷が0.4t/h以上であって、1.4t/h未満である場合に、2台のボイラが稼働するように燃焼ポジションが設定されている。また、図5の下図に太線の囲みで示すように、60℃用の2台標準燃焼パターンでは、合計負荷が1.0t/h以上であって、2.0t/h未満である場合に、2台のボイラが稼働するように燃焼ポジションが設定されている。
【0049】
上記のとおり、15℃用の2台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が0.8t/h以上、かつ、1.2t/h未満の場合である。また、60℃用の2台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が1.4t/h以上、かつ、2.4t/h未満の場合である。したがって、2台標準燃焼パターンにおいては、合計負荷が、直近一週間の平均負荷と同程度の範囲にある場合に、ボイラの稼働台数が2台となるように、各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0050】
また、図7に示すように、直近一週間の平均負荷が0.8t/h未満であり、給水温度が15℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、15℃用の1台標準燃焼パターンが選択される。また、図8に示すように、直近一週間の平均負荷が1.4t/h未満であり、給水温度が60℃であったとする。この場合、次の一週間の燃焼パターンとして、60℃用の1台標準燃焼パターンが選択される。
【0051】
図6の上図に太線の囲みで示すように、15℃用の1台標準燃焼パターンでは、合計負荷が1.0t/h未満である場合に、1台のボイラが稼働するように、合計負荷ごとに各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。また、図6の下図に太線の囲みで示すように、60℃用の1台標準燃焼パターンでは、合計負荷が1.0t/h未満である場合に、1台のボイラが稼働するように、合計負荷ごとに各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0052】
上記のとおり、15℃用の1台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が0.8t/h未満の場合である。また、60℃用の1台標準燃焼パターンが選択される場合というのは、直近一週間の平均負荷が1.4t/h未満の場合である。したがって、1台標準燃焼パターンにおいては、合計負荷が、直近一週間の平均負荷と同程度の範囲にある場合に、ボイラの稼働台数が1台となるように、各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。
【0053】
ここで、最も効率の高い運転負荷、すなわち、最も効率の高いボイラ負荷率は、給水温度によって異なる。
【0054】
図9は、給水温度、ボイラ負荷率、ボイラ効率の関係を説明する図である。図9では、横軸にボイラ負荷率を示し、縦軸にボイラ効率を示している。また、図9の上図は、給水温度が15℃の場合におけるボイラ負荷率とボイラ効率との関係を示し、図9の下図は、給水温度が60℃の場合におけるボイラ負荷率とボイラ効率との関係を示している。
【0055】
図9の上図に示すように、給水温度が15℃の場合、各ボイラは、負荷を20%、すなわち、低燃焼ポジションで稼働すると最も効率が高くなる。なお、給水温度が15℃の場合、中燃焼ポジションでの稼働が、低燃焼ポジションでの稼働に次いで効率が高く、高燃焼ポジションでの稼働は、全ての燃焼ポジションの中で最も効率が低くなる。
【0056】
これに対して、給水温度が60℃の場合、各ボイラは、負荷を50%程度、すなわち、中燃焼ポジションで稼働すると最も効率が高くなる。なお、給水温度が60℃の場合、低燃焼ポジションでの稼働が、中燃焼ポジションでの稼働に次いで効率が高く、高燃焼ポジションでの稼働は、全ての燃焼ポジションの中で最も効率が低くなる。
【0057】
上記のように、給水温度によって、各燃焼ポジションの効率が異なることから、各燃焼パターンでは、最も効率が高くなるように、各ボイラの燃焼ポジションが設定されている。上記したように、図3から図6において、太線で囲まれた範囲は、直近一週間の平均負荷と同程度の範囲である。したがって、各ボイラは、選択された燃焼パターンのうち、太線で囲まれた燃焼ポジションに設定されている時間の占める割合が高くなる。
【0058】
図3から図6に示すように、15℃用の燃焼パターンでは、太線で囲まれた範囲において、低燃焼ポジションが多く設定されており、60℃用の燃焼パターンでは、太線で囲まれた範囲において、中燃焼ポジションが多く設定されている。このように、各燃焼パターンにおいては、特に、合計負荷が、直近一週間の平均負荷と同程度の範囲である場合に、給水温度に対して効率の高い燃焼ポジションが可能な範囲内で設定されている。
【0059】
次に、ボイラ制御システムSの機能的構成ならびに制御処理について説明する。
【0060】
図10は、ボイラ制御システムSの機能ブロック図である。図10に示すように、ボイラ制御システムSは、台数制御装置100を備える。台数制御装置100は、プロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103とを備える。プロセッサ101は、コンピュータに搭載される演算処理装置である。プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されるが、その他のマイクロプロセッサで構成されてもよい。また、プロセッサ101は、1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。プロセッサ101は、メモリ102または他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行することにより、各種の処理を遂行する。
【0061】
プログラムは、コンピュータにより実行される命令を含むコンピュータプログラムである。なお、プログラムは、例えば、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、台数制御装置100に提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(non transitory computer readable medium)を介して、台数制御装置100に提供されてもよい。台数制御装置100にプログラムがインストールされることで、当該プログラムにより定められた各種の機能が実現可能となる。
【0062】
メモリ102は、プログラムおよびその他の各種データを記憶する記憶媒体である。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを有する。ROMは、プロセッサ101が使用するプログラム、およびプログラムを動作させるためのデータ等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサ101により実行される処理に用いられる変数、演算パラメータ、演算結果等のデータを一時記憶する揮発性メモリである。ROMに記憶されたプログラムは、RAMに読み出され、CPUなどのプロセッサ101により実行される。なお、ここでは、メモリ102に、図3から図6に示す燃焼パターンが記憶されている。
【0063】
ストレージ103は、各種の情報、データを保存するための記憶装置である。ストレージ103は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、光ディスクなどの記録媒体と、当該記録媒体からデータを読み出す、または当該記録媒体に書き込むドライブとを有する。ストレージ103は、メモリ102と比べて大容量のデータを保存することができる。ストレージ103は、台数制御装置100に内蔵される内部ストレージであってもよいし、台数制御装置100の外部入出力用端子を介して接続される外部ストレージであってもよい。また、ストレージ103は、通信ネットワークを介して接続されるオンラインストレージであってもよい。
【0064】
なお、詳しい説明は省略するが、第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aも、台数制御装置100と同様に、それぞれプロセッサ、メモリ、ストレージ103を備えている。
【0065】
ここで、台数制御装置100のプロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して各種の処理を実行することで、負荷情報取得部101a、平均負荷導出部101b、燃焼パターン決定部101c、ボイラ制御部101dとして機能する。また、ストレージ103は、負荷履歴記憶部103a、平均負荷記憶部103b、燃焼パターン記憶部103c、燃焼ポジション記憶部103dとして機能する。
【0066】
また、上記したように、台数制御装置100には、温度センサ6から給水温度が入力され、蒸気利用設備9から負荷情報が入力され、圧力センサ10から蒸気ヘッダ圧が入力される。さらに、台数制御装置100には、計時装置11が接続されており、計時装置11から台数制御装置100に日時情報が入力される。
【0067】
負荷情報取得部101aは、蒸気利用設備9から負荷情報を取得し、負荷履歴記憶部103aに記憶する。
【0068】
平均負荷導出部101bは、計時装置11より、月曜日の午前0時を示す日時情報が入力されると、直近一週間の平均負荷を導出し、平均負荷記憶部103bに記憶する。
【0069】
燃焼パターン決定部101cは、平均負荷記憶部103bに記憶された平均負荷と、温度センサ6から入力される給水温度とに基づいて、燃焼パターンを決定し、燃焼パターン記憶部103cに記憶する。
【0070】
ボイラ制御部101dは、燃焼パターン記憶部103cに記憶された燃焼パターンと、負荷履歴記憶部103aに記憶される負荷情報の推移、蒸気ヘッダ圧等に基づいて、第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aに制御信号を出力する。具体的には、ボイラ制御部101dは、燃焼ポジション記憶部103dに記憶されている各ボイラの燃焼ポジションを変更する。また、ボイラ制御部101dは、燃焼ポジションを変更したボイラのボイラ制御装置に対して、変更後の燃焼ポジションを指示する制御信号を出力する。ボイラ制御装置は、受信した制御信号に基づいて、給水ポンプPおよび流量制御弁Vを制御する。以下に、台数制御装置100の制御処理について説明する。
【0071】
図11は、台数制御装置100の処理を説明するフローチャートである。台数制御装置100のプロセッサ101は、図11に示す処理を所定時間おきに繰り返し実行する。なお、図11に示す処理が実行される間隔は特に限定されず、例えば、数ミリ秒から数分の範囲内で設定されるとよい。プロセッサ101は、計時装置11から日時情報を取得し、所定日時であるかを判定する(S1)。
【0072】
ここでは、所定日時として、月曜日の午前0時が予め設定されており、取得した日時情報が、月曜日の午前0時であるかが判定される。月曜日の午前0時であると判定された場合(S1のYES)、プロセッサ101は、燃焼パターン更新処理を実行する(S100)。また、プロセッサ101は、所定日時であるか否かに拘わらず、ボイラ制御処理を実行する(S200)。
【0073】
図12は、燃焼パターン更新処理(S100)を説明するフローチャートである。燃焼パターン更新処理において、プロセッサ101は、まず、負荷履歴記憶部103aに記憶されている直近一週間の負荷情報を取得する(S101)。また、プロセッサ101は、取得した直近一週間の負荷情報から平均負荷を導出する(S102)。
【0074】
なお、負荷履歴記憶部103aには、数秒から数分間隔で、その時点における蒸気利用設備9の1時間当たりの負荷が記憶される。プロセッサ101は、負荷履歴記憶部103aに直近一週間で記憶された負荷を合計した値を、負荷の記憶数で除算して平均負荷を導出する。そして、プロセッサ101は、導出した平均負荷を平均負荷記憶部103bに記憶する。上記のように、プロセッサ101は、平均負荷導出部101bとして、S101およびS102の処理を実行する。
【0075】
次に、プロセッサ101は、温度センサ6から現在の給水温度を取得する(S103)。そして、プロセッサ101は、S102で導出した平均負荷と、S103で取得した給水温度とに基づいて、燃焼パターンを決定する(S104)。また、ここでは、プロセッサ101は、決定した燃焼パターンを燃焼パターン記憶部103cに記憶する。さらに、プロセッサ101は、決定した燃焼パターンに基づき、現在の蒸気利用設備9の負荷、すなわち、合計負荷に対応する燃焼ポジションを、燃焼ポジション記憶部103dに記憶する。上記のように、プロセッサ101は、燃焼パターン決定部101cとして、S103およびS104の処理を実行する。
【0076】
図13は、ボイラ制御処理(S200)を説明するフローチャートである。ボイラ制御処理において、プロセッサ101は、まず、蒸気利用設備9から負荷情報を取得し、負荷履歴記憶部103aに記憶する(S201)。なお、取得した負荷情報は、ボイラ制御処理が実行されるたびに記憶されてもよいし、ボイラ制御処理が所定回数実行されるたびに記憶されてもよい。また、負荷履歴記憶部103aには、日時情報が負荷情報に紐付けられて記憶されてもよい。さらには、負荷履歴記憶部103aには、直近一週間分の負荷情報のみが記憶されてもよいし、例えば、過去数年分の負荷情報が蓄積されてもよい。上記のように、プロセッサ101は、負荷情報取得部101aとして、S201の処理を実行する。
【0077】
次に、プロセッサ101は、圧力センサ10から蒸気ヘッダ圧を取得する(S202)。そして、プロセッサ101は、負荷履歴記憶部103aに記憶された負荷情報と、取得した蒸気ヘッダ圧と、燃焼パターン記憶部103cに記憶されている燃焼パターンとに基づいて、燃焼ポジションを決定する(S203)。
【0078】
ここでは、例えば、蒸気利用設備9の負荷が上昇傾向であり、負荷が閾値を超えると、燃焼パターンに基づいて、ボイラの燃焼ポジションが高負荷側に変更される。また、例えば、蒸気利用設備9の負荷が下降傾向であり、負荷が閾値を下回ると、燃焼パターンに基づいて、ボイラの燃焼ポジションが低負荷側に変更される。燃焼ポジションの変更が決定されると、プロセッサ101は、燃焼ポジション記憶部103dにおいて、燃焼ポジションを更新する。
【0079】
次に、プロセッサ101は、S203で決定した各ボイラの燃焼ポジションを示す制御信号を、ボイラ制御装置に出力する(S204)。ボイラ制御装置は、受信した制御信号に基づいて、給水ポンプPの回転数および流量制御弁Vの開度を制御する。上記のように、プロセッサ101は、ボイラ制御部101dとして、ボイラ制御処理を実行する。
【0080】
以上のように、ボイラ制御システムSは、複数台のボイラ(第1ボイラ1、第2ボイラ2、第3ボイラ3、第4ボイラ4)を含むボイラ群と、複数台のボイラそれぞれの運転負荷をボイラ群の合計負荷ごとに規定する複数の燃焼パターンが記憶され、燃焼パターンに基づいてボイラの運転負荷を制御する制御装置(台数制御装置100、第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4A)とを備える。そして、制御装置は、予め定められた期間におけるボイラ群の平均負荷を導出し、導出された平均負荷に基づいて、複数の燃焼パターンの中からいずれか1つを決定し、決定された燃焼パターンと合計負荷とに基づいて、複数台のボイラそれぞれの運転負荷を決定する。
【0081】
ここで、複数の燃焼パターンは、少なくとも一部の合計負荷に規定されるボイラの稼働台数が互いに異なる。一例として、図3から図6の上図に示すように、1.2t/h前後の合計負荷に規定されるボイラの稼働台数は、通常燃焼パターンでは4台、3台標準燃焼パターンでは3台、2台標準燃焼パターンでは2台、1台標準燃焼パターンでは1台である。このように、ボイラ群の合計負荷が同じであったとしても、選択された燃焼パターンによってボイラの稼働台数が異なることから、ボイラ効率を高めることができる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0083】
例えば、上記した燃焼パターンは一例に過ぎない。燃焼パターンに規定される合計負荷と、各ボイラの燃焼ポジションとの関係は適宜設定可能である。また、上記では、基本的なボイラの稼働台数を1台とする1台標準燃焼パターンから、全てのボイラの稼働を前提とする通常燃焼パターンまで、燃焼パターンが4種類に分類されることとした。ただし、例えば、燃焼パターンは、通常燃焼パターン、3台標準燃焼パターン、2台標準燃焼パターンの3種類のいずれかに分類されてもよい。
【0084】
また、上記では、複数の燃焼パターンにボイラの給水温度が紐付けられており、台数制御装置100は、平均負荷と給水温度とに基づいて燃焼パターンを決定することとした。ただし、給水温度に拘わらず、平均負荷のみに基づいて燃焼パターンが決定されてもよい。
【0085】
また、上記では、制御装置として、第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4Aおよび台数制御装置100が設けられる場合について説明した。ただし、制御装置の構成や制御の役割分担は一例に過ぎない。例えば、上記では、上位の制御装置である台数制御装置100が燃焼パターンおよび燃焼ポジションを決定し、下位の制御装置であるボイラ制御装置(第1ボイラ制御装置1A、第2ボイラ制御装置2A、第3ボイラ制御装置3A、第4ボイラ制御装置4A)が、ボイラの運転制御として給水ポンプPおよび流量制御弁Vの制御を行うこととした。
【0086】
これに対して、例えば、制御装置として台数制御装置100が設けられ、台数制御装置100が、燃焼パターンの決定、燃焼ポジションの決定、および、各ボイラの運転制御を全て担ってもよい。
【0087】
また、例えば、台数制御装置100が燃焼パターンを決定し、ボイラ制御装置が燃焼ポジションの決定、および、ボイラの運転制御を行ってもよい。この場合、圧力センサ10
によって検出された蒸気ヘッダ圧が、ボイラ制御装置に入力される。そして、ボイラ制御装置は、台数制御装置100から受信した燃焼パターンと、蒸気ヘッダ圧とに基づいて、各ボイラの燃焼ポジションを制御するとよい。
【0088】
また、平均負荷を算出する期間は特に限定されない。例えば、一日ごとの平均負荷を算出し、算出した平均負荷に基づいて翌日の燃焼パターンが決定されてもよい。あるいは、曜日ごとの平均負荷を算出し、前週の同一曜日の平均負荷に基づいて、当日の燃焼パターンが決定されてもよい。
【0089】
また、台数制御装置100は、一日ごとの平均負荷を導出し、曜日ごとに平均負荷を記憶してもよい。そして、曜日ごとの平均負荷を比較し、特異な曜日が特定された場合には、当該曜日のみ、燃焼パターンを異ならせてもよい。例えば、毎週水曜日の平均負荷が、他の曜日と大きく異なっている場合には、水曜日の燃焼パターンを、他の曜日の燃焼パターンと異ならせてもよい。この場合、水曜日以外の曜日の燃焼パターンを決定する際に導出する平均負荷から、水曜日の平均負荷が除外されてもよいし含まれてもよい。
【0090】
また、上記の特異な曜日に代えて、もしくは、加えて、特異な時間帯が設けられてもよい。つまり、負荷履歴に基づいて、単位時間当たりの負荷が、他の時間帯と大きく異なる時間帯を、特異な時間帯として特定する。そして、特異な時間帯では、他の時間帯と異なる燃焼パターンが決定されてもよい。なお、この場合において、例えば、負荷変動が大きかったとしても、その時間が極めて短い場合には、特異な時間帯ではなく、異常値と判定してもよい。異常値と判定した場合には、該当時間が特異な時間帯、日時として特定されない。
【符号の説明】
【0091】
1 第1ボイラ
1A 第1ボイラ制御装置
2 第2ボイラ
2A 第2ボイラ制御装置
3 第3ボイラ
3A 第3ボイラ制御装置
4 第4ボイラ
4A 第4ボイラ制御装置
100 台数制御装置
101 プロセッサ
101b 平均負荷導出部
101c 燃焼パターン決定部
101d ボイラ制御部
102 メモリ
S ボイラ制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13