(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026111
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】衣料
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A41D13/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131784
(22)【出願日】2021-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】517170052
【氏名又は名称】デサントジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】江口 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】数井 さやか
(72)【発明者】
【氏名】及川 主計
(72)【発明者】
【氏名】神尾 正史
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AB11
3B011AC00
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】留め具を有しており、背中部分等に皺が生じにくく、形状や輪郭が整っていて意匠性の高い衣料を提供する。
【解決手段】前身頃2、後ろ身頃3、先端部4と根元部5を備える一対の袖6を有する上衣であって、第1留め具10を有しており、第1留め具10は、一方の袖6aの先端部4a、一方の袖6aの根元部5a、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖6bの根元部5b、他方の袖6bの先端部4bまで延在している衣料1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、後ろ身頃、先端部と根元部を備える一対の袖を有する上衣であって、
第1留め具を有しており、
前記第1留め具は、一方の前記袖の先端部、一方の前記袖の根元部、背中の上部と下部の間を横断して、他方の前記袖の根元部、他方の前記袖の先端部まで延在している衣料。
【請求項2】
前記第1留め具は、一方側第1線ファスナーおよび他方側第1線ファスナーを有しており、
前記一方側第1線ファスナーの止め部材は、前記背中の中心部および前記一方の袖の先端部に位置しており、前記他方側第1線ファスナーの止め部材は、前記背中の中心部および前記他方の袖の先端部に位置している請求項1に記載の衣料。
【請求項3】
後ろ身頃において、前記第1留め具は、前記一方側第1線ファスナーの端部と前記他方側第1線ファスナーの端部との間に隙間を有しており、
前記隙間を覆う部材を有している請求項2に記載の衣料。
【請求項4】
前記隙間を覆う部材は、フラップであり、
前記フラップは、前記後ろ身頃の表地側に設けられている請求項3に記載の衣料。
【請求項5】
右前身頃と左前身頃を有し、
第2留め具および第3留め具をさらに有しており、
前記第2留め具は、前記一方の袖の先端部から前記右前身頃の胸部まで延在し、
前記第3留め具は、前記他方の袖の先端部から前記左前身頃の胸部まで延在している請求項1~4のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項6】
前記第2留め具は、第2線ファスナーを有し、
前記第3留め具は、第3線ファスナーを有しており、
前記第2線ファスナーの止め部材は、前記一方の袖の先端部および前記右前身頃の胸部に位置しており、
前記第3線ファスナーの止め部材は、前記他方の袖の先端部および前記左前身頃の胸部に位置している請求項5に記載の衣料。
【請求項7】
右前身頃と左前身頃を有し、
第4留め具および第5留め具をさらに有しており、
前記第4留め具は、前記右前身頃の裾部から前記右前身頃の胸部まで延在し、
前記第5留め具は、前記左前身頃の裾部から前記左前身頃の胸部まで延在している請求項1~6のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項8】
前記第4留め具は、第4線ファスナーを有し、
前記第5留め具は、第5線ファスナーを有しており、
前記第4線ファスナーの止め部材は、前記右前身頃の胸部および裾部に位置しており、
前記第5線ファスナーの止め部材は、前記左前身頃の胸部および裾部に位置している請求項7に記載の衣料。
【請求項9】
右前身頃と左前身頃を有し、
第6留め具をさらに有しており、
前記第6留め具は、前記右前身頃の胸部から襟ぐりに沿って前記左前身頃の胸部まで延在している請求項1~8のいずれか一項に記載の衣料。
【請求項10】
前記第6留め具は、第6線ファスナーを有しており、
前記第6線ファスナーの止め部材は、前記右前身頃の胸部および前記左前身頃の胸部に位置している請求項9に記載の衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前身頃、後ろ身頃、先端部と根元部を備える一対の袖を有する上衣である衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容易に着替えを行うことや、袖部等の各部位の取り替えを可能とするためにファスナーを用いた衣料が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ねまき本体の左右肩部、左右脇腹、股下部分にファスナーを設けることで、患者の体に付けていなくてはならない計測装置を装着したまま着替えられることを特徴とする医療用ねまきが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ウェディングドレス本体を、用途に応じて縫い目(切りかえ線)で、パターンの状態に分割、分解して、従来縫製されているはずの部位(ライン線等)を、目立ちにくいファスナー等外見上縫い目のように見える接続物により、各パーツを接続しドレス本体を構成するウェディングドレスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3140233号公報
【特許文献2】特開平6-316801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2に記載されている衣料のようなファスナーを用いた衣料において、さらに意匠性を高めることが求められており、改善の余地があると考えられる。具体的には、背中部分等において生地に皺が入りにくく、形状や輪郭が整っている衣料が求められている。
【0007】
そこで本発明は、留め具を有しており、背中部分等に皺が生じにくく、形状や輪郭が整っていて意匠性の高い衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の衣料は、前身頃、後ろ身頃、先端部と根元部を備える一対の袖を有する上衣であって、第1留め具を有しており、第1留め具は、一方の袖の先端部、一方の袖の根元部、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖の根元部、他方の袖の先端部まで延在していることを特徴とするものである。
【0009】
上記の衣料において、第1留め具は、一方側第1線ファスナーおよび他方側第1線ファスナーを有しており、一方側第1線ファスナーの止め部材は、背中の中心部および一方の袖の先端部に位置しており、他方側第1線ファスナーの止め部材は、背中の中心部および他方の袖の先端部に位置していることが好ましい。
【0010】
上記の衣料は、後ろ身頃において、第1留め具は、一方側第1線ファスナーの端部と他方側第1線ファスナーの端部との間に隙間を有しており、隙間を覆う部材を有していることが好ましい。
【0011】
上記の衣料において、隙間を覆う部材は、フラップであり、フラップは、後ろ身頃の表地側に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記の衣料において、右前身頃と左前身頃を有し、第2留め具および第3留め具をさらに有しており、第2留め具は、一方の袖の先端部から右前身頃の胸部まで延在し、第3留め具は、他方の袖の先端部から左前身頃の胸部まで延在していることが好ましい。
【0013】
上記の衣料において、第2留め具は、第2線ファスナーを有し、第3留め具は、第3線ファスナーを有しており、第2線ファスナーの止め部材は、一方の袖の先端部および右前身頃の胸部に位置しており、第3線ファスナーの止め部材は、他方の袖の先端部および左前身頃の胸部に位置していることが好ましい。
【0014】
上記の衣料において、右前身頃と左前身頃を有し、第4留め具および第5留め具をさらに有しており、第4留め具は、右前身頃の裾部から右前身頃の胸部まで延在し、第5留め具は、左前身頃の裾部から左前身頃の胸部まで延在していることが好ましい。
【0015】
上記の衣料において、第4留め具は、第4線ファスナーを有し、第5留め具は、第5線ファスナーを有しており、第4線ファスナーの止め部材は、右前身頃の胸部および裾部に位置しており、第5線ファスナーの止め部材は、左前身頃の胸部および裾部に位置していることが好ましい。
【0016】
上記の衣料において、右前身頃と左前身頃を有し、第6留め具をさらに有しており、第6留め具は、右前身頃の胸部から襟ぐりに沿って左前身頃の胸部まで延在していることが好ましい。
【0017】
上記の衣料において、第6留め具は、第6線ファスナーを有しており、第6線ファスナーの止め部材は、右前身頃の胸部および左前身頃の胸部に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の衣料によれば、第1留め具を有しており、第1留め具が、一方の袖の先端部、一方の袖の根元部、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖の根元部、他方の袖の先端部まで延在していることによって、留め具が配置されている位置が従来の衣料とは異なるものとなり、留め具によって背中部分に横方向の皺が生じにくく、衣料の形状や輪郭が整ったものとなって、従来の衣料よりも意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る衣料の後ろ身頃の模式図を表す。
【
図2】本発明の実施の形態に係る衣料の前身頃の模式図を表す。
【
図3】
図1に示した衣料の背中の部分拡大図を表す。
【
図5】
図2に示した衣料の右側の胸部の部分拡大図を表す。
【
図6】
図2に示した衣料の左側の胸部の部分拡大図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る衣料に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係る衣料1の後ろ身頃3の模式図であり、
図2は前身頃2の模式図である。
図1および
図2に示すように、本発明の衣料1は、前身頃2、後ろ身頃3、先端部4と根元部5を備える一対の袖6を有する上衣である。なお、衣料1の袖筒において、衣料1の着用者の身長方向での下側の端部が先端部4であり、衣料1の着用者の身長方向での上側の端部が根元部5である。
【0022】
本発明において、衣料1とは身に着けるものであり、パーカー、トレーナー、コート、ジャケット、ジャンパー等の上衣である。他にも、本発明における衣料には、水着、下着等も含まれる。また、本発明の上衣の袖は、例えば長袖や七分袖のように肘よりも手首側に袖口があるものであってもよく、例えば半袖のように肘よりも肩側に袖口があるものであってもよく、五分袖のように肘の位置に袖口があるものでもよい。本発明の衣料1は、防寒用、防暑用、スポーツ用、アウトドア用等とすることができる。
【0023】
衣料1は、1枚の生地から構成されていてもよいが、表地および裏地を有していることが好ましい。表地は、衣料1の表側に配置されている生地であり、裏地は、表地よりも着用者の肌側に配置されている生地である。表地と裏地は、それぞれ1枚の生地から構成されていてもよく、複数の生地を積層することにより構成されていてもよい。
【0024】
表地や裏地等、衣料1を構成する生地の材料は、例えば、織布や編布、不織布等の布地、樹脂が積層されている布地、樹脂フィルム、これらを組み合わせた材料等を用いることができる。布地を構成する繊維としては、例えば、綿や絹等の天然繊維、ポリエステルやポリエチレン、ナイロン等の合成繊維等が挙げられる。生地同士は、縫合、接着剤による接着、熱融着、超音波融着等により接合することができる。
【0025】
図1に示すように、衣料1は、第1留め具10を有しており、第1留め具10は、一方の袖6aの先端部4a、一方の袖6aの根元部5a、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖6bの根元部5b、他方の袖6bの先端部4bまで延在している。なお、背中の上部は、衣料1を着用した状態での、着用者の背中に位置する部分における身長方向での上側の部分を指し、背中の下部は、衣料1を着用した状態での、着用者の背中に位置する部分における身長方向での下側の部分を指す。
【0026】
衣料1が、一方の袖6aの先端部4a、一方の袖6aの根元部5a、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖6bの根元部5b、他方の袖6bの先端部4bまで延在している第1留め具10を有していることにより、一方の袖6a、背中、他方の袖6bに第1留め具10が存在していることとなる。第1留め具10が存在している部分は、第1留め具10が存在していない部分よりも剛性が高くなる。そのため、第1留め具10が芯となって形状が崩れやすい衣料1の後ろ身頃3の形状を整えることができる。また、衣料1の背中部分において、第1留め具10の重みによって下方向に荷重が加わり、背中部分を構成する生地に横方向へ入る皺を伸ばすことができ、衣料1の輪郭を整ったものとすることができる。さらに、第1留め具10を解除することによって衣料1を構成する布地部品を分離することができる。この各布地部品を取り替えることによって、部分的に色や素材等が異なる衣料1を構成することが可能となる。これらのことより、衣料1の意匠性を高めることができる。
【0027】
第1留め具10は、線ファスナー、面ファスナー、点ファスナー、ボタン、フック(ホック)、バックル等が挙げられる。中でも、第1留め具10は、線ファスナーであることが好ましい。第1留め具10が線ファスナーであることにより、第1留め具10が設けられている部分の剛性が他の部分よりも高まりやすく、後ろ身頃3における衣料1の形状が整いやすくなる。また、第1留め具10が線ファスナーであることにより、第1留め具10の係止および解除を連続的に行うことができ、衣料1を構成する各布地部品の付け外しが容易となる。
【0028】
図1に示すように、第1留め具10は、一方側第1線ファスナー11aおよび他方側第1線ファスナー11bを有しており、一方側第1線ファスナー11aの止め部材は、背中の中心部および一方の袖6aの先端部4aに位置しており、他方側第1線ファスナー11bの止め部材は、背中の中心部および他方の袖6bの先端部4bに位置していることが好ましい。なお、線ファスナーの止め部材は、線ファスナーのスライダーの移動を止めるための部材である。
【0029】
第1留め具10が一方側第1線ファスナー11aと他方側第1線ファスナー11bを有しており、一方側第1線ファスナー11aの止め部材が背中の中心部および一方の袖6aの先端部4aに位置しており、他方側第1線ファスナー11bの止め部材が背中の中心部および他方の袖6bの先端部4bに位置していることにより、一方側第1線ファスナー11aおよび他方側第1線ファスナー11bが衣料1の後ろ身頃3における芯となり、背中部分の横皺を伸ばすことができ、衣料1の形状を整えることができる。
【0030】
図示していないが、一方側第1線ファスナー11aおよび他方側第1線ファスナー11bは、それぞれスライダーを有しており、第1留め具10が閉じた状態において、一方側第1線ファスナー11aのスライダーは、一方の袖6aの先端部4aに位置しており、他方側第1線ファスナー11bのスライダーは、他方の袖6bの先端部4bに位置していることが好ましい。一方側第1線ファスナー11aのスライダーと他方側第1線ファスナー11bのスライダーとが、一方の袖6aの先端部4aと他方の袖6bの先端部4bにそれぞれ位置していることにより、スライダーによって袖6の先端部4に荷重が加わる。そのため、衣料1の着用者が腕を下方へ伸ばした際に袖6が弛みにくく、着用時の衣料1の輪郭を整えることができる。
【0031】
一方側第1線ファスナー11aは、両開きのスライダーを有していてもよい。一方側第1線ファスナー11aが両開きのスライダーを有している場合には、スライダーは、背中の中心部の止め部材と一方の袖6aの先端部4aの止め部材との間に位置していることが好ましい。一方側第1線ファスナー11aが両開きのスライダーを有していることにより、一方側第1線ファスナー11aの開閉が行いやすくなる。なお、同様に、他方側第1線ファスナー11bは、両開きのスライダーを有していてもよい。
【0032】
図3は衣料1の背中の部分拡大図である。詳細には、
図3は、後ろ身頃3における背中部分の、一方側第1線ファスナー11aの端部と他方側第1線ファスナー11bの端部とが存在している部分の拡大図である。
図3に示すように、後ろ身頃3において、第1留め具10は、一方側第1線ファスナー11aの端部と他方側第1線ファスナー11bの端部との間に隙間7を有しており、隙間7を覆う部材8を有していることが好ましい。一方側第1線ファスナー11aの端部と他方側第1線ファスナー11bの端部との間に隙間7があることにより、一方側第1線ファスナー11aおよび他方側第1線ファスナー11bの開閉や着脱を行いやすくすることができる。また、衣料1が隙間7を覆う部材8を有していることにより、隙間7から衣料1の内部へ雨水等の液体や外気が入り込むことを防止して着心地を向上させ、また、隙間7を隠して見えないようにすることによって衣料1の意匠性を高めることができる。
【0033】
隙間7を覆う部材8は、一方側第1線ファスナー11aの端部と他方側第1線ファスナー11bの端部との間にある隙間7を埋めることができるものであればよく、例えば、布地や樹脂フィルム等の生地によって構成されたフラップ、弾性部材等によって構成された隙間7に挿入する部材、隙間7に挿入するシート状部材等が挙げられる。
【0034】
隙間7を覆う部材8がフラップである場合、フラップは、後ろ身頃3の表地側に設けられていてもよく、裏地側に設けられていてもよい。また、フラップは、縫製や溶着、接着等によって直接後ろ身頃3に固定されていてもよく、ボタンやファスナー等によって着脱可能な状態で後ろ身頃3に固定されていてもよい。
【0035】
中でも、
図1および
図3に示すように、隙間7を覆う部材8はフラップであり、フラップは後ろ身頃3の表地側に設けられていることが好ましい。隙間7を覆う部材8が、後ろ身頃3の表地側に設けられているフラップであることにより、隙間7を覆う部材8を紛失しにくく、また、容易に方側第1線ファスナー11aの端部と他方側第1線ファスナー11bの端部との間にある隙間7を埋めることが可能となる。
【0036】
隙間7を覆う部材8がフラップである場合、
図3に示すように、フラップと後ろ身頃3の生地にフラップ閉状態維持部品が設けられていることが好ましい。衣料1にフラップ閉状態維持部品が設けられていることにより、衣料1の着用時等において意図せずフラップが開いて隙間7が露出することを防ぐことができる。フラップ閉状態維持部品としては、例えば、点ファスナー、面ファスナー、ボタン、磁石、バックル等が挙げられる。
【0037】
図1に示すように、背中部分における第1留め具10は、一方の袖6aの根元部5aおよび他方の袖6bの根元部5bよりも身長方向の下側に位置している部分を有していることが好ましい。なお、身長方向は、衣料1の着用者の身長の方向であり、着用者が起立した状態での上下方向である。具体例を挙げて説明すると、背中部分における第1留め具10が、V字状、ひ字状のようになっていることが好ましい。背中部分における第1留め具10が一方の袖6aの根元部5aおよび他方の袖6bの根元部5bよりも身長方向の下側に位置している部分を有していることにより、衣料1の背中部分において、第1留め具10の重みによって身長方向の下側に荷重が加わりやすくなる。その結果、衣料1の背中部分に横方向の皺が生じにくくなり、形状が整っている衣料1とすることができる。
【0038】
図2に示すように、衣料1は、右前身頃2Rと左前身頃2Lを有し、第2留め具20および第3留め具30をさらに有しており、第2留め具20は、一方の袖6aの先端部4aから右前身頃2Rの胸部まで延在し、第3留め具30は、他方の袖6bの先端部4bから左前身頃2Lの胸部まで延在していることが好ましい。なお、右前身頃2Rの胸部は、衣料1を着用した状態において、右前身頃2Rでの着用者の胸に位置する部分を指し、左前身頃2Lの胸部は、衣料1を着用した状態において、左前身頃2Lでの着用者の胸に位置する部分を指す。衣料1が、一方の袖6aの先端部4aから右前身頃2Rの胸部まで延在している第2留め具20と、他方の袖6bの先端部4bから左前身頃2Lの胸部まで延在している第3留め具30とを有していることにより、後ろ身頃3だけでなく前身頃2においても、第2留め具20および第3留め具30が芯となって袖6の形状を整えることができ、袖6に弛みが生じにくく、意匠性の高い衣料1となる。
【0039】
また、一方の袖6aが第1留め具10および第2留め具20を有し、他方の袖6bが第1留め具10および第3留め具30を有していることにより、衣料1の袖6部分を第1留め具10および第2留め具20、第1留め具10および第3留め具30によって係止される複数の布地部品によって構成することが可能となる。そのため、袖6の色や素材等を部分的に異なるようにすることができ、衣料1の意匠性を高めることが可能となる。
【0040】
第2留め具20および第3留め具30としては、前述の第1留め具10の例として挙げたものを用いることができる。第2留め具20の種類は、第1留め具10および第3留め具30の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、第3留め具30の種類は、第1留め具10および第2留め具20の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
図2に示すように、第2留め具20は第2線ファスナー21を有し、第3留め具30は第3線ファスナー31を有しており、第2線ファスナー21の止め部材は、一方の袖6aの先端部4aおよび右前身頃2Rの胸部に位置しており、第3線ファスナー31の止め部材は、他方の袖6bの先端部4bおよび左前身頃2Lの胸部に位置していることが好ましい。
【0042】
図示していないが、第2線ファスナー21および第3線ファスナー31は、それぞれスライダーを有しており、第2留め具20が閉じた状態において、第2線ファスナー21のスライダーは、一方の袖6aの先端部4aに位置しており、第3留め具30が閉じた状態において、第3線ファスナー31のスライダーは、他方の袖6bの先端部4bに位置していることが好ましい。第2線ファスナー21のスライダーおよび第3線ファスナー31のスライダーがそれぞれ一方の袖6aの先端部4aと他方の袖6bの先端部4bに位置していることにより、袖6の先端部4にスライダーの重みによる荷重が加わる。その結果、袖6に弛みが生じにくくなり、袖6の形状を整えることが可能となる。
【0043】
一方の袖6aの先端部4aに一方側第1線ファスナー11aのスライダーおよび第2線ファスナー21のスライダーが位置しており、他方の袖6bの先端部4bに他方側第1線ファスナー11bのスライダーおよび第3線ファスナー31のスライダーが位置していることが好ましい。一方の袖6aの先端部4aに一方側第1線ファスナー11aと第2線ファスナー21のぞれぞれのスライダーが位置し、他方の袖6bの先端部4bに他方側第1線ファスナー11bと第3線ファスナー31のそれぞれのスライダーが位置していることにより、一方の袖6aおよび他方の袖6bに荷重が加わりやすくなり、袖6が弛みにくくなる効果を高めることができる。
【0044】
第2線ファスナー21は両開きのスライダーを有していてもよい。第2線ファスナー21が両開きのスライダーを有している場合、スライダーは、一方の袖6aの先端部4aの止め部材と右前身頃2Rの胸部の止め部材との間に位置していることが好ましい。第2線ファスナー21が両開きのスライダーを有していることにより、第2線ファスナー21の開閉を容易に行うことができる。なお、同様に、第3線ファスナー31は両開きのスライダーを有していてもよい。
【0045】
図2に示すように、衣料1は、右前身頃2Rと左前身頃2Lを有し、第4留め具40および第5留め具50をさらに有しており、第4留め具40は、右前身頃2Rの裾部から右前身頃2Rの胸部まで延在し、第5留め具50は、左前身頃2Lの裾部から左前身頃2Lの胸部まで延在していることが好ましい。衣料1が、右前身頃2Rの裾部から右前身頃2Rの胸部まで延在している第4留め具40と、左前身頃2Lの裾部から左前身頃2Lの胸部まで延在している第5留め具50とを有していることにより、前身頃2の下部が第4留め具40および第5留め具50によって支えられ、衣料1の身頃部分の形状を整えることができる。
【0046】
また、衣料1が第1留め具10、第4留め具40、および第5留め具50を有していることにより、衣料1の身頃部分を、第1留め具10、第4留め具40、および第5留め具50によって係止される複数の布地部品によって構成することができる。その結果、衣料1の身頃部分において、例えば、背中の上部と下部や脇部分で布地の色や素材等を異なるものとすることが可能となり、意匠性の高い衣料1とすることができる。
【0047】
第4留め具40および第5留め具50としては、前述の第1留め具10の例として挙げたものを用いることができる。第4留め具40の種類は、第1留め具10および第5留め具50の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、第5留め具50の種類は、第1留め具10および第4留め具40の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、衣料1が第2留め具20および第3留め具30も有している場合、第4留め具40の種類は、第2留め具20および第3留め具30の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよく、第5留め具50の種類は、第2留め具20および第3留め具30の少なくとも一方と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
図2に示すように、第4留め具40は第4線ファスナー41を有し、第5留め具50は第5線ファスナー51を有しており、第4線ファスナー41の止め部材は、右前身頃2Rの胸部および裾部に位置しており、第5線ファスナー51の止め部材は、左前身頃2Lの胸部および裾部に位置していることが好ましい。
【0049】
図示していないが、第4線ファスナー41および第5線ファスナー51は、それぞれスライダーを有しており、第4留め具40が閉じた状態において、第4線ファスナー41のスライダーは、右前身頃2Rの裾部に位置しており、第5留め具50が閉じた状態において、第5線ファスナー51のスライダーは、左前身頃2Lの裾部に位置していることが好ましい。第4線ファスナー41のスライダーが右前身頃2Rの裾部に位置し、第5線ファスナー51のスライダーが左前身頃2Lの裾部に位置していることにより、各スライダーの荷重が前身頃2の左右の裾部に加わることとなる。そのため、右前身頃2Rと左前身頃2Lにおいて均等に荷重がかかりやすくなり、前身頃2の左右のいずれかに偏って生地が弛むことを防止し、衣料1の身頃の形状を整えて意匠性を高められる。
【0050】
第4線ファスナー41は両開きのスライダーを有していることが好ましい。第4線ファスナー41が両開きのスライダーを有している場合、スライダーは、右前身頃2Rの胸部と裾部との間に位置していることが好ましい。第4線ファスナー41が両開きのスライダーを有していることにより、第4線ファスナー41を開閉することが行いやすくなる。なお、同様に、第5線ファスナー51は両開きのスライダーを有していてもよい。
【0051】
図4は衣料1の襟部分の側面図である。
図4に示す衣料1は、フードを有しており、着用者がフードをかぶった状態の衣料1の襟部分を図示している。
図2および
図4に示すように、衣料1は、右前身頃2Rと左前身頃2Lを有し、第6留め具60をさらに有しており、第6留め具60は、右前身頃2Rの胸部から襟ぐりに沿って左前身頃2Lの胸部まで延在していることが好ましい。つまり、第6留め具60は、右前身頃2Rの胸部から襟ぐりに沿い、後ろ身頃3を通過し、左前身頃2Lの胸部まで延在していることが好ましい。衣料1が、右前身頃2Rの胸部から襟ぐりに沿って左前身頃2Lの胸部まで延在している第6留め具60を有していることにより、第6留め具60が芯となって衣料1の襟部分を支持して形状を整えることができる。
【0052】
また、衣料1が第6留め具60を有していることにより、襟部分を構成する布地部品を取り替えることができる。具体例を挙げて説明すると、例えば、襟を有する布地部品とフードを有する布地部品とを準備し、衣料1の身頃に第6留め具60によって襟を有する布地部品を取り付けることによって襟を有する衣料1とすることができ、また、第6留め具60によってフードを有する布地部品を取り付けることによってフードを有する衣料1とすることができる。つまり、襟部分の形状を容易に変化させることができ、意匠性の高い衣料1とすることが可能となる。
【0053】
第6留め具60としては、前述の第1留め具10の例として挙げたものを用いることができる。第6留め具60の種類は、第1留め具10と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、衣料1が第2留め具20、第3留め具30、第4留め具40、および第5留め具50を有している場合、第6留め具60の種類は、第2留め具20、第3留め具30、第4留め具40、および第5留め具50の少なくとも1つと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
図2に示すように、第6留め具60は第6線ファスナー61を有しており、第6線ファスナー61の止め部材は、右前身頃2Rの胸部および左前身頃2Lの胸部に位置していることが好ましい。
【0055】
図示していないが、第6線ファスナー61はスライダーを有しており、第6留め具60が閉じた状態において、第6線ファスナー61のスライダーは、右前身頃2Rの胸部に位置していることが好ましい。第6線ファスナー61のスライダーが右前身頃2Rの胸部に位置していることにより、着用者の心臓が位置している左胸部にスライダーがないこととなる。そのため、衣料1の着用時に、スライダーによる物理的な刺激やゴルフのプレー中に落雷があった場合に心臓に電気が流れる可能性を低減することができる。
【0056】
第6線ファスナー61は両開きのスライダーを有していてもよい。第6線ファスナー61が両開きのスライダーを有している場合、スライダーは、右前身頃2Rの胸部と左前身頃2Lの胸部との間に位置していることが好ましい。第6線ファスナー61が両開きのスライダーを有していることにより、第6線ファスナー61の開閉が行いやすくなる。
【0057】
図5は衣料1の右側の胸部の部分拡大図であり、
図6は左側の胸部の部分拡大図である。詳細には、
図5は右前身頃2Rにおける第2線ファスナー21の端部、第4線ファスナー41の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分の拡大図であり、
図6は左前身頃2Lにおける第3線ファスナー31の端部、第5線ファスナー51の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分の拡大図である。
図5および
図6に示すように、衣料1が第2留め具20、第3留め具30、第4留め具40、第5留め具50、および第6留め具60を有している場合、第2線ファスナー21の端部、第4線ファスナー41の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分と、第3線ファスナー31の端部、第5線ファスナー51の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分にそれぞれ隙間7を有しており、これらの隙間7を覆う部材8を有していることが好ましい。第2線ファスナー21の端部、第4線ファスナー41の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分と、第3線ファスナー31の端部、第5線ファスナー51の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分にそれぞれ隙間7があることにより、それぞれの線ファスナーの開閉が行いやすくなる。また、衣料1が隙間7を覆う部材8を有していることにより、隙間7から雨水や外気等が入り込むことを防ぎ、衣料1の着心地を向上させながら隙間7を隠して衣料1の意匠性を高めることができる。
【0058】
衣料1が、第2線ファスナー21の端部、第4線ファスナー41の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分と、第3線ファスナー31の端部、第5線ファスナー51の端部、および第6線ファスナー61の端部が集合している部分にそれぞれ隙間7を有している場合、隙間7を覆う部材8はフラップであり、フラップは右前身頃2Rの表地側と左前身頃2Lの表地側にそれぞれ設けられていることが好ましい。隙間7を覆う部材8が右前身頃2Rと左前身頃2Lのそれぞれの表地側にそれぞれ設けられているフラップであることにより、隙間7を容易に覆って埋めることができる。
【0059】
以上のように、本発明の衣料は、前身頃、後ろ身頃、先端部と根元部を備える一対の袖を有する上衣であって、第1留め具を有しており、第1留め具は、一方の袖の先端部、一方の袖の根元部、背中の上部と下部の間を横断して、他方の袖の根元部、他方の袖の先端部まで延在していることを特徴とするものである。このような構成であることにより、留め具によって背中部分に横方向の皺が生じにくく、衣料の形状や輪郭が整ったものとなって、従来の衣料よりも意匠性を高めることができる。
【符号の説明】
【0060】
1:衣料
2:前身頃
2R:右前身頃
2L:左前身頃
3:後ろ身頃
4:袖の先端部
4a:一方の袖の先端部
4b:他方の袖の先端部
5:袖の根元部
5a:一方の袖の根元部
5b:他方の袖の根元部
6:袖
6a:一方の袖
6b:他方の袖
7:隙間
8:隙間を覆う部材
10:第1留め具
11a:一方側第1線ファスナー
11b:他方側第1線ファスナー
20:第2留め具
21:第2線ファスナー
30:第3留め具
31:第3線ファスナー
40:第4留め具
41:第4線ファスナー
50:第5留め具
51:第5線ファスナー
60:第6留め具
61:第6線ファスナー