(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002614
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】中空ロータを有した単軸スクリュー押出機
(51)【国際特許分類】
B29C 48/54 20190101AFI20221227BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20221227BHJP
B29C 48/62 20190101ALI20221227BHJP
B29C 48/625 20190101ALI20221227BHJP
B29C 48/685 20190101ALI20221227BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20221227BHJP
B29C 48/265 20190101ALI20221227BHJP
【FI】
B29C48/54
B29C48/395
B29C48/62
B29C48/625
B29C48/685
B29C48/285
B29C48/265
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162478
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2019510876の分割
【原出願日】2017-08-25
(31)【優先権主張番号】20165640
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンキネン、ハンヌ
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンティ
(72)【発明者】
【氏名】インモネン、キルシ
(57)【要約】
【課題】不均質材料を加工するのに卓越した加工性能を実行する単軸スクリュー押出機を提供すること。
【解決手段】
単軸スクリュー押出機(100)及び方法である。押出機(100)は、
‐直径(D)及び長さ(L)を有し且つ供給領域(14)を備えた円筒形ロータ部材(1)を備え、ロータ部材(1)がバレル(2)内に配置され、ロータ部材(1)の円筒面が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)を含み、ロータ部材(1)における1つ又は複数のらせん延在列が、ロータ部材の供給領域(14)内にピッチ(P)及び深さ(d)を有し、更に、押出機(100)は、バレル(2)内でロータ部材(1)を回転させるための駆動システム(4)を備える。深さ(d)のロータ部材の直径(D)に対する関係、すなわちd:Dは1:20以下であり、ロータ部材のピッチ(P)のロータ部材の直径(D)に対する関係、すなわちP:Dは1:4以下である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐直径(D)及び長さ(L)を有し且つ供給領域(14)を備えた円筒形ロータ部材(1)を備え、
‐前記ロータ部材(1)がバレル(2)内に配置され、
‐前記ロータ部材(1)の円筒面が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)を含み、
‐前記ロータ部材(1)における前記らせん延在列が、前記ロータ部材の前記供給領域(14)内にピッチ(P)及び深さ(d)を有する、単軸スクリュー押出機(100)であって、
‐更に、前記バレル(2)内で前記ロータ部材(1)を回転させるための駆動システム(4)を備える単軸スクリュー押出機(100)において、
前記深さ(d)の、前記ロータ部材の前記直径(D)に対する関係、すなわちd:Dが1:20以下であり、
前記ロータ部材の前記ピッチ(P)の前記ロータ部材の前記直径(D)に対する関係、すなわちP:Dが1:4以下であることを特徴とする単軸スクリュー押出機(100)。
【請求項2】
前記ロータ部材の前記1つ又は複数の凸部(5)が、少なくとも1つのスクリューフライト(6)と、
前記少なくとも1つのスクリューフライト(6)の間にある少なくとも1つのスクリュー溝(7)とを備えるスクリュースレッドを実現し、前記スクリューフライト(6)が前記ピッチ(P)を有し、前記スクリュー溝(7)が前記深さ(d)を有することを特徴とする、請求項1に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項3】
前記ロータ部材(1)内に配置される前記1つ又は複数の凹部(5)が、複数の個別の凹部(5)のらせん延在列を実現することを特徴とする、請求項1に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項4】
前記ロータ部材(1)内に配置される凸部(5)が、複数の個別の凸部(5)のらせん延在列を実現することを特徴とする、請求項1に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項5】
前記ロータ部材(1)が中空であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項6】
前記ロータ部材(1)が、前記ロータ部材(1)の前記直径(D)の少なくとも75%、好適には80%~85%の直径を有する円筒形流路(8)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項7】
d:Dが1:300~1:20の範囲内であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項8】
P:Dが1:60~1:4の範囲内であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項9】
CL=前記ロータ部材(1)の前記長さ(L)の方向に計測した流路の長さ
d=前記ロータ部材(1)の径方向に計測した溝の深さ
RD=前記ロータ部材(1)の断面積としたとき、
CL・d≦RD・0.01
であることを特徴とする、請求項2に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項10】
前記バレル(2)が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項11】
前記1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)が、少なくとも1つのバレルフライト(10)と、
前記少なくとも1つのフライト(10)の間にある少なくとも1つのバレル溝(11)とを備えるスクリュースレッドを実現し、前記バレルフライト(10)がバレルピッチ(BP)を有し、前記バレル溝(11)がバレル深さ(BD)を有することを特徴とする、請求項10に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項12】
前記バレル(2)内に配置された前記凹部(5)が、複数の個別の凹部(5)のらせん延在列状を実現することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項13】
L:Dが2:1~4:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項14】
前記ロータの表面に配置された前記1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)の前記深さ(d)が、前記供給領域(10)の後から減少するように設けられることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項15】
前記1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)が連続しておらず、複数の凹部又は溝が隣り合うようになっていることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項16】
供給口(3)の突出面積が、1キロワット(kW)のロータ原動力につき15cm2~150cm2であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項17】
前記バレル(2)が、前記バレル(2)の外側に配置される支持構造(15)を備え、前記支持構造が、
前記押出機の前記供給口(3)と押出機排出端部(16)との間において前記バレル(2)に取り付けられる第1支持部(17)と、
前記押出機の駆動システム側(19)に取り付けられる第2支持部(18)と、
前記第1支持部(17)を前記第2支持部(18)に接続する負荷伝達構造(20)とを備えることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項18】
前記バレルの前記供給領域(14)と前記押出機のベアリング収容部(22)との間に、前記供給領域から逆向きに流れてくる材料を受け止めるための軸方向スロット(21)が配置されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
【請求項19】
単軸スクリュー押出機のロータ部材を製造する方法において、
‐中空棒(13)を設けることと、
‐前記中空棒(13)の外面に、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を、
‐製造される前記ロータ部材の供給領域(14)における、列の深さ(d)の前記中空棒(13)の直径(D)に対する関係、すなわちd:Dが1:20以下となり、
前記中空棒(13)のピッチ(P)の、前記中空棒(13)の前記直径(D)に対する関係、すなわちP:Dが1:4以下となるように製造することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)の製造が、前記中空棒(13)から材料を除去することを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)の製造が、前記中空棒(13)上に材料を追加することを含むことを特徴とする、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記中空棒(13)の外面に、少なくとも1つのスクリューフライト(6)を備えるスクリュースレッドを、前記スクリューフライト(6)が前記ピッチ(P)を有し、スクリュー溝(7)が前記深さ(d)を有するように製造することを含むことを特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記中空棒(13)の外面に、複数の個別の凹部(5)の列を製造することを含むことを特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記中空棒(13)が、前記中空棒の前記直径(D)の少なくとも75%、好適には80%~85%の直径を有する円筒形流路(8)を備えることを特徴とする、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径及び長さを有し且つ供給領域を備えた円筒形ロータ部材を備え、そのロータ部材が、バレル内に配置され、ロータ部材の円筒面が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を含み、ロータ部材のそのらせん延在列が、ロータ部材の供給領域内にピッチ及び深さを有する、単軸スクリュー押出機であって、更に、バレル内でロータ部材を回転させるための駆動システムを備える単軸スクリュー押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、更に、単軸スクリュー押出機のロータ部材を製造する方法に関する。軽材料、すなわち繊維や廃/リサイクルプラスチックを含んだ材料である不均質材料を密度を保持したまま加工することへの需要が、継続的に増加している。
【0003】
こうした種類の材料には、一般に知られている押出機及び混合機への供給が極めて困難という問題がある。
【0004】
これは、従来の押出機及び混合機が、例えばプラスチック粒等の均質且つ比較的密度の高い材料を加工するために設計されているという事実に起因する。
【0005】
既存の押出機及び混合機では、上記の材料を効率的に供給するには供給口が小さ過ぎるため、装置への材料供給が主な課題となる。この課題は供給口を大きくすることで解決できる。しかし、これによって、スクリュー又はロータの直径等、装置の全体的な寸法も増加する可能性がある。それにより、装置の価格が多くの用途では実現不可能な価格になるほか、装置の最適な稼働のためにより多くの材料の供給が必要になることが考えられる。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様の視点では、直径及び長さを有し且つ供給領域を備えた円筒形ロータ部材を備え、そのロータ部材が、バレル内に配置され、ロータ部材の円筒面が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を含み、ロータ部材のその1つ又は複数のらせん延在列がロータ部材の供給領域内にピッチ及び深さを有する単軸スクリュー押出機であって、更に、バレル内でロータ部材を回転させるための駆動システムを備え、深さのロータ部材の直径に対する関係、すなわちd:Dが1:20以下であり、ロータ部材のピッチのロータ部材の直径に対する関係、すなわちP:Dが1:4以下である単軸スクリュー押出機を提供できる。
【0007】
これによって、不均質材料を加工するのに卓越した加工性能を実行する単軸スクリュー押出機を実現できる。
【0008】
更なる態様の視点では、単軸スクリュー押出機のロータ部材を製造する方法であって、中空棒を設けることと、中空棒の外面に、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を、製造されるロータ部材の供給領域における、列の深さの中空棒の直径に対する関係、すなわちd:Dが1:20以下となり、中空棒のピッチの中空棒の直径に対する関係、すなわちP:Dが1:4以下となるように製造することとを含む方法を提供できる。これによって、経済的に有利な単軸スクリュー押出機のロータ部材を製造する方法を実現できる。
【0009】
押出機及び方法は、独立請求項の特徴部分に記載の内容によって特徴付けられる。幾つかの他の実施例は、他の請求項に記載のないようによって特徴付けられる。本特許出願の明細書及び図面には、創造的な実施例も開示される。本特許出願の創造的な内容は、以下の請求項の記載とは異なる形で定義されてもよい。特に、本発明が明白な若しくは暗黙の副次的役割の観点、又は得られる利益若しくは複数の利益の観点から検討される場合、創造的な内容が複数の個別の発明の形態を有してもよい。以下の請求項に記載の内容の幾つかは、個別の創造的な発想の観点では不要となる場合もある。本発明の様々な実施例の特徴は、基本的な創造的な発想の範囲内で他の実施例に適用されてもよい。
【0010】
本開示を説明する幾つかの実施例を、添付の図面においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1B】
図1Aに示す押出機の部分断面の詳細の概略図である。
【
図3】押出機又は混合機のロータ部材を製造する方法の概略図である。
【0012】
これらの図面は、幾つかの実施例を明確性のために簡略的に示す。図面では、同様の部分に同じ参照番号が付される。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
図1Aはスクリュー押出機の部分断面の概略側面図であり、
図1Bは
図1Aに示す押出機の部分断面の詳細の概略図である。本明細書における「スクリュー押出機」又は「押出機」という用語は、プラスチック押出用の押出機だけでなく、複合押出機や、食品、動物飼料、燃料、原料及びリサイクル可能材料等の、流動性の形態をもつか流動性の形態をもたせることができる他の材料用の押出機も含む。一態様によれば、押出機の実施例では、ロータ及びバレルの回転と固定配置との組み合わせによって押出機内を移動させることができる種類の材料であれば、いずれも加工することができる。材料の形態は、押出機内を通過する際、すなわち材料又は混合材料の圧搾、圧縮、統合、粉砕、破砕、溶解、反応、分解及び/又は変質等が行われる際に変化する。
【0014】
一態様によれば、押出機はプラスチックフィルムの圧縮及び/又は粉砕に使用される。
【0015】
一態様によれば、押出機はバイオベース繊維、特にバイオベース長繊維の圧縮及び/又は混合に使用される。
【0016】
一態様によれば、押出機は動物飼料製品の加工に使用される。
【0017】
一態様によれば、押出機は様々なプラスチック含有軽量梱包材の圧縮及び/又は粉砕に使用される。
【0018】
押出機100は、円筒形ロータ部材1と、バレル2と、供給口3と、バレル2内でロータ部材1を回転させるための駆動システム4とを備える単軸スクリュー押出機である。
【0019】
ロータ部材1は直径D及び長さLを有する。一実施例では、長さの直径に対する関係、すなわちL:Dは2:1~4:1の範囲内である。
【0020】
ロータ部材1の円筒外面は、少なくとも1つのスクリューフライト6と、少なくとも1つのスクリューフライト6の間にある少なくとも1つのスクリュー溝7とを備えるスクリュースレッドを実現する複数の凸部5を備える。
【0021】
スクリュースレッドは、バレル2内でロータ部材1を回転させながら、加工する材料をバレル内で供給口3から排出口9に向かって移動させる構造を構成する。一実施例では、スクリュースレッドの形状は不変である。他の実施例では、スクリュースレッドの形状は可変であり、スクリュー溝の体積は押出機の排出口16に近付くほど減少する。一実施例では、ロータ表面に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部5の深さdは、供給領域(10)の後から減少するように設けられる。
【0022】
スクリュー溝の体積が減少することで、圧縮率が典型的には1:2~1:4となる。形状は徐々に変化してもよいし、一形状から他形状に突然形状が変化する箇所を少なくとも1つ備えてもよい。
【0023】
ロータ部材1の供給領域14において、スクリューフライト6はピッチPを有し、スクリュー溝7は深さdを有する。「供給領域」は、ロータ部材1における供給口3の真下の部分及び供給口から続く1周~5周のスクリューフライト6を意味する。
【0024】
一態様によれば、深さdの直径Dに対する関係、すなわちd:Dは1:20以下であり、ピッチPの直径Dに対する関係、すなわちP:Dは1:4以下である。
【0025】
スクリュー溝7の体積がスクリューの直径Dに対して極めて小さいという利点がある。これにより、スクリュー溝7の体積に対して極めて大きな供給口3を押出機100に設けることが可能となる。また、スクリュー溝7に対して最適に充填するのに十分な量の、繊維や廃/リサイクルプラスチックを含んだ材料である低密度及び/又は不均質な材料を押出機100に供給できる。
【0026】
体積がスクリューの直径Dに対して小さいことで、押出機が必要とする電力が軽減されるという他の利点もある。
【0027】
一実施例では、d:Dは(ロータ部材1の供給領域14内において)1:300~1:20の範囲内である。
【0028】
材料の体積に対してスクリュー溝の表面積が大きいことで、スクリュー溝7における加工する材料の温度を極めて厳密に制御できるため、例えば温度について極めて敏感な材料又はプロセスをこの押出機で加工できるという利点がある。
【0029】
一実施例では、P:Dは1:60~1:4の範囲内である。
【0030】
加工する材料を低い使用電力で排出口7に向けて移動できるという利点がある。
【0031】
一実施例では、ロータ部材1は以下の式を実現する。
CL=ロータ部材1の長さ(L)の方向に計測した流路の長さ
d=ロータ部材1の径方向に計測した溝の深さ
RD=流路8の断面積も含んだロータ部材の断面積としたとき、
CL・d≦RD・0.01である。
【0032】
スクリュー溝7の体積がスクリューの直径Dに対して極めて小さいことから、供給口3が大きいことで、加工する材料を容易に充填できるという利点がある。
【0033】
例えば、ロータ部材1の直径が350mmである一方で、供給口の長さが400mmであってもよい。
【0034】
一実施例では、供給口3又は供給領域14は、押出機100に供給される材料の粒径を小さくするためのせん断手段又は切断手段を備える。この手段は、例えば、ロータ部材1に配置された切歯と、バレル2に配置された1つ又は複数の対応部分とを備えてもよい。
【0035】
一態様によれば、ロータ部材1は中空である。一実施例では、ロータ部材は、円形の円筒形状で、ロータ部材の直径Dの少なくとも75%、好適には80%~85%の直径を有する円筒形流路8を備える。これは、既知のロータ部材と比べて、ロータ部材の重量及び費用を増加させることなくロータ部材の直径Dを大きくできることを意味する。
【0036】
一実施例では、ロータ部材は1つのスクリューフライトを備える。他の実施例では、ロータ部材は2つ又はそれ以上のスクリューフライトを備える。
【0037】
ロータ部材1の直径が大きいおかげで、駆動システム4を、ロータ部材1に高トルクを送り込むものとして解釈できる。また、ロータ部材1の構造によって、損傷の虞なしに高トルクに耐えることができる。
【0038】
押出機100は多くの代替方法によって実現できる。例えば、一実施例では、ロータ部材1は、スクリュースレッドの代わりに複数の個別の凹部のらせん延在列を備える。これらの凹部は、加工する材料をバレル内で供給口3から排出口9に向かって移動させる構造を構成する。
【0039】
凹部の形状は、例えばドーム状、半球状、涙滴の一部若しくはカロット状、楕円形状又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
一態様によれば、ロータ部材1の供給領域14における深さdの直径Dに対する関係、すなわちd:Dは1:20以下であり、ピッチPの直径Dに対する関係、すなわちP:Dは1:4以下である。
【0041】
凹部の体積がスクリューの直径Dに対して極めて小さいことで、ロータ部材1とバレル2との間の体積に対して最適に充填するのに十分な量の、繊維や廃/リサイクルプラスチックを含んだ材料である低密度及び/又は不均質な材料を、押出機100に供給できるという利点がある。
【0042】
一実施例では、d:Dは1:300~1:20の範囲内である。
【0043】
一実施例では、P:Dは1:60~1:4の範囲内である。
【0044】
他の実施例では、ロータ部材1は複数の個別の凸部のらせん延在列を実現する凸部を備え、この列はピッチPを有する。
【0045】
一態様によれば、深さd又は凸部の高さの直径Dに対する関係、すなわちd:Dは1:20以下であり、ピッチPの直径Dに対する関係、すなわちP:Dは1:4以下である。
【0046】
一実施例では、d:Dは1:300~1:20の範囲内である。
【0047】
一実施例では、P:Dは1:60~1:4の範囲内である。
【0048】
一態様によれば、バレル2の円筒内面が1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部を備えてもよい。一実施例では、上記の1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部はらせん延在列状に配置される。他の実施例では、1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部は、ロータ部材1の縦軸線に対して平行に配置される。更に他の実施例では、1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部は、ロータ部材1の縦軸線に対して垂直に配置される。
【0049】
一実施例では、バレル2は、少なくとも1つのバレルフライト10と、少なくとも1つのフライトの間にある少なくとも1つのバレル溝11とを備えるバレルスクリュースレッドを備え、バレルフライトはバレルピッチ(BP)を有し、バレル溝はバレル深さ(BD)を有する。
【0050】
加工する材料の、排出口9に向かう移動が向上するという利点がある。
【0051】
他の実施例では、バレル2に配置された凹部は、複数の個別の凹部のらせん延在列を実現する。
【0052】
押出機の混合及び撹拌性能が向上するという利点がある。
【0053】
バレル2に配置された凹部の形状及び大きさは、凹部が存在するバレルの全長において不変であってもよい。他の実施例では、バレル2は、大きさ及び/又は形状が可変な凹部を備えてもよい。
【0054】
一実施例では、1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)は連続しておらず、複数の凹部又は溝が隣り合うようになっている。
【0055】
図2は押出機バレルの概略図である。一態様によれば、バレル2は、個別に製造されてから連続するように接続される2つ以上のバレルモジュール12から解釈される。
【0056】
少なくとも1つのバレルフライト10と少なくとも1つのバレル溝11とを備えるバレルスクリュースレッドといった、1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部を、均等な長さをもった単一且つ一体のバレル内に製造するよりも容易に、短く直径が大きなバレルモジュール12となる短いバレル部品内に製造できるという利点がある。なお、しかしながら、バレル2は単一に製造されてもよい。押出機のD:Lの比率が大きいことから、後者の場合でも1つ又は複数のバレル凹部及び/又は凸部を極めて簡単に製造できる。
【0057】
図3は押出機のロータ部材を製造する方法の概略図である。
【0058】
方法は、第1の工程として中空棒13を設けること30を含む。中空棒は、中空棒13の外径の少なくとも75%、好適には80%~85%の直径を有する円筒形流路8を備える。
【0059】
一実施例では、中空棒13は鋼管又はステンレス鋼管といった金属管である。
【0060】
方法は、中空棒13の外面に、らせん延在列状に配置された1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を製造する工程32を更に含む。
【0061】
一実施例では、1つ又は複数の凹部及び/又は凸部の製造は、中空棒13から材料を除去することを含む。この実施例を代替例「A」として
図3に示す。材料は、本来、例えばフライス加工、旋盤加工、ピーリング加工、切断加工、放電加工等として知られる方法及び手段によって除去されてもよい。
【0062】
他の実施例では、1つ又は複数の凹部及び/又は凸部の製造は、中空棒13上に材料を追加することを含む。この実施例を代替例「B」として
図3に示す。材料は、本来、例えば溶接等として知られる方法及び手段によって追加されてもよい。
【0063】
一実施例では、ピッチ(P)を有した少なくとも1つのスクリューフライトと、深さ(d)を有したスクリュー溝とを備えるスクリュースレッドが製造される。
【0064】
他の実施例では、複数の個別の凹部の列が中空棒の外面に製造される。この列はピッチ(P)を有し、凹部は深さ(d)を有する。
【0065】
1つ又は複数の凹部及び/又は凸部を製造するのに用いられる方法に関わらず、列の深さ(d)のロータ部材の直径(D)に対する関係、すなわちd:Dは1:20以下であり、ロータ部材のピッチ(P)のロータ部材の直径(D)に対する関係、すなわちP:Dは1:4以下である。
【0066】
一実施例では、d:Dは1:300~1:20、典型的には1:100~1:20の範囲内である。
【0067】
方法には、中空棒13を適当な長さに切断することや、駆動システム4の特性を製造すること、仕上げ及びトリミングをする工程といった追加の工程も含まれてもよい。
【0068】
図4は、他の押出機の部分断面の概略側面図である。供給口3は、押出機の原動力及び能力やロータ凹部の深さに対して十分に大きい。供給口の突出面積は、同じロータ原動力を有する従来のプラスチック単軸スクリュー押出機の供給口の大きさの20倍~200倍であってもよい。
【0069】
一態様によれば、供給口の突出面積は、1キロワット(kW)のロータ原動力につき約15cm2~150cm2であり、好適には約30cm2~100cm2である。一実施例によれば、供給口の突出面積は約50cm2/kWである。一実施例では、供給口3はバレル2の直径の半分、すなわちD/2前後まで切り込まれる。このため、供給口3によって、バレル2が押出プロセス中に生じる負荷に耐えられないほどに、バレル2の構造を弱めてしまう可能性がある。特に、バレルの直径が大きくバレルが短い場合、供給領域14において、バレルが軸力によって折れやすくなってしまう。
【0070】
一実施例では、バレル2は、バレル2の外側に存在する支持構造15によって支持される。支持構造15は、バレル2内のバレルの供給口3と排出端部16との間の部分に取り付けられる第1支持部17と、押出機の駆動システム側19に取り付けられる第2支持部18と、第1支持部17を第2支持部18に接続する負荷伝達構造20とを備える。
図4に示す実施例では、第2支持部18は、駆動システム4を覆うベアリング収容部22に固定されている。負荷伝達構造20は、例えば1つ以上の梁、プレート構造又はトラス構造によって構成されてもよい。
【0071】
支持構造15は、押出プロセス中に生じる負荷及び応力の一部を担い、押出機構造が折れてしまうのを防ぐ。
【0072】
一実施例では、バレルの供給領域14と押出機のベアリング収容部22との間に、供給領域から逆向きに流れてくる材料を(それがある場合は)受け止めるための軸方向スロット21が配置される。つまり、軸方向スロット21は、材料がベアリング収容部22に侵入するのを防ぐためのものである。代わりに、材料は、スロットを通して、押出機又は押出プロセスに対する問題を起こさない場所にある部屋に落とされる。
【0073】
一実施例では、バレル2はベアリング収容部22から完全に分離され、すなわち、軸方向スロット21が押出機の縦軸周り360°に延在する。
【0074】
他の実施例では、材料を短く区切ることで分けられた複数の軸方向スロット21が存在する。本発明は上記の実施例のみに限定されるものではなく、以下の請求項によって定義される創造的な概念の範囲内で様々な変更が可能である。創造的な概念の範囲内において、様々な実施例及び応用例の特徴を他の実施例又は応用例と関連させたり置き換えたりして利用することができる。
【0075】
図面及び関連の記載は、本発明の発想を説明するためだけのものである。本発明は、以下の請求項によって定義される創造的な発想の範囲内で細かく変更されてもよい。
前記ロータ部材(1)内に配置される前記1つ又は複数の凹部(5)が、複数の個別の凹部(5)のらせん延在列を実現することを特徴とする、請求項1に記載の単軸スクリュー押出機。
前記ロータ部材(1)が、前記ロータ部材(1)の前記直径(D)の少なくとも75%の直径を有する円筒形流路(8)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の単軸スクリュー押出機。
前記バレル(2)が、らせん延在列状に配置された1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)を備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
前記バレル(2)内に配置された前記凹部(5)が、複数の個別の凹部(5)のらせん延在列状を実現することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
前記ロータの表面に配置された前記1つ又は複数の凹部及び/又は凸部(5)の前記深さ(d)が、前記供給領域(10)の後から減少するように設けられることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
前記1つ又は複数のバレル凹部及び/又はバレル凸部(5)が連続しておらず、複数の凹部又は溝が隣り合うようになっていることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
前記バレルの前記供給領域(14)と前記押出機のベアリング収容部(22)との間に、前記供給領域から逆向きに流れてくる材料を受け止めるための軸方向スロット(21)が配置されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の単軸スクリュー押出機。
前記中空棒(13)の外面に、少なくとも1つのスクリューフライト(6)を備えるスクリュースレッドを、前記スクリューフライト(6)が前記ピッチ(P)を有し、スクリュー溝(7)が前記深さ(d)を有するように製造することを含むことを特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
前記中空棒(13)が、前記中空棒の前記直径(D)の少なくとも75%の直径を有する円筒形流路(8)を備えることを特徴とする、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。