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特開2023-26156延焼防止部材、セルユニットおよびバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026156
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】延焼防止部材、セルユニットおよびバッテリー
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/00 20060101AFI20230216BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20230216BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A62C2/00 X
H01M50/293
A62C3/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131873
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】傳刀 賢二
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT02
5H040AY10
5H040CC23
5H040CC34
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】
熱源間の断熱性能に優れると共に熱源の膨張に追従して弾性変形可能な延焼防止部材、当該延焼部材を備えるセルユニットおよび当該延焼防止部材をバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーを提供する。
【解決手段】
本発明は、熱源に備えられ、熱源からの熱の移動を抑制して延焼を防止するための延焼防止部材1であって、ゴムシート2と、ゴムシート2の少なくとも片面側に、筒の側面を固定して並べて固定される2以上のゴム状の筒体3とを備え、筒体3は、その長さ方向に貫通する貫通路4を備える延焼防止部材1、当該延焼防止部材1を備えるセルユニット、および当該延焼防止部材1をバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源に備えられ、前記熱源からの熱の移動を抑制して延焼を防止するための延焼防止部材であって、
ゴムシートと、
前記ゴムシートの少なくとも片面側に、筒の側面を固定して並べて固定される2以上のゴム状の筒体と、
を備え、
前記筒体は、その長さ方向に貫通する貫通路を備えることを特徴とする延焼防止部材。
【請求項2】
前記ゴムシートは、多孔性のスポンジ状のシートであって、
前記筒体は、前記ゴムシートより孔の少ないソリッドのゴム状筒体であることを特徴とする請求項1に記載の延焼防止部材。
【請求項3】
前記ゴムシートおよび前記筒体は、前記ゴムよりも難燃性の難燃材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の延焼防止部材。
【請求項4】
前記ゴムシートの幅方向または長さ方向のいずれかの方向に並べられている3以上の前記筒体の内で、その並べられている範囲の中央に位置する中央配置筒体は、当該範囲の端に位置する端部配置筒体よりも柔軟でつぶれやすいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の延焼防止部材。
【請求項5】
前記中央配置筒体は、前記端部配置筒体より肉厚の小さい筒体であることを特徴とする請求項4に記載の延焼防止部材。
【請求項6】
前記中央配置筒体は、前記端部配置筒体よりゴム硬度の低い筒体であることを特徴とする請求項4または5に記載の延焼防止部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の延焼防止部材を、バッテリーセルの側面に備えることを特徴とするセルユニット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の延焼防止部材を、バッテリーセル同士の間に備えることを特徴とするバッテリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止部材、当該延焼防止部材を備えるセルユニット、および当該延焼防止部材をバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。しかしながら、電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。
【0003】
上記自動車用バッテリー等の各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等が生じる虞がある。近年、自動車用バッテリーとして、筐体内に複数のバッテリーセルを並べて装着したものが知られている。このような複数のバッテリーセルが並べて装着されたバッテリーにおいて、1つのバッテリーセルから発火や発煙等が生じた場合、周囲のバッテリーセルに熱が伝わることにより、さらに大きな発火、発煙、爆発等の不具合が生じる虞がある。このような不具合による被害を最小限に抑えるため、異常高温になったバッテリーセルの熱を周囲のバッテリーセルに伝え難くする方法が検討されている。例えば、複数のバッテリーセル同士の間に耐火材や断熱層等の延焼防止部材を設ける方法が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-206604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリーセル間の隙間が狭くなってくると、異常過熱したバッテリーセルから隣のバッテリーセルへの伝熱を低減して、延焼を防止する必要性が高まる。また、過熱したバッテリーセルの膨張に追従して弾性的に変形容易にすることで断熱効果を長期間持続可能な延焼防止部材が必要となる。このような必要性は、バッテリーセルのみならず、熱源同士が隣接する環境にも存在する。なお、過熱したバッテリーセル等からの延焼防止は、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源間の断熱性能に優れると共に熱源の膨張に追従して弾性変形可能な延焼防止部材、当該延焼防止部材を備えるセルユニット、および当該延焼防止部材をバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止部材は、熱源に備えられ、前記熱源からの熱の移動を抑制して延焼を防止するための延焼防止部材であって、
ゴムシートと、
前記ゴムシートの少なくとも片面側に、筒の側面を固定して並べて固定される2以上のゴム状の筒体と、
を備え、
前記筒体は、その長さ方向に貫通する貫通路を備える。
(2)別の実施形態に係る延焼防止部材において、好ましくは、前記ゴムシートは、多孔性のスポンジ状のシートであって、前記筒体は、前記ゴムシートより孔の少ないソリッドのゴム状筒体であっても良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止部材において、好ましくは、前記ゴムシートおよび前記筒体は、前記ゴムよりも難燃性の難燃材を含んでも良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止部材において、好ましくは、前記ゴムシートの幅方向または長さ方向のいずれかの方向に並べられている3以上の前記筒体の内で、その並べられている範囲の中央に位置する中央配置筒体は、当該範囲の端に位置する端部配置筒体よりも柔軟でつぶれやすくしても良い。
(5)別の実施形態に係る延焼防止部材において、好ましくは、前記中央配置筒体は、前記端部配置筒体より肉厚の小さい筒体であっても良い。
(6)別の実施形態に係る延焼防止部材において、好ましくは、前記中央配置筒体は、前記端部配置筒体よりゴム硬度の低い筒体であっても良い。
(7)上記目的を達成するための一実施形態に係るセルユニットは、上述のいずれかの延焼防止部材をバッテリーセルの側面に備える。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、上述のいずれかの延焼防止部材をバッテリーセル同士の間に備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱源間の断熱性能に優れると共に熱源の膨張に追従して弾性変形可能な延焼防止部材、当該延焼防止部材を備えるセルユニット、および当該延焼防止部材をバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る延焼防止部材の斜視図を示す。
図2図2は、図1の延焼防止部材の平面図、正面図および右側面図を示す。
図3図3は、第2実施形態に係る延焼防止部材の正面図およびその一部の筒体の拡大図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセルに貼付してセルユニットを構築する状況の斜視図を示す。
図5図5は、第1実施形態と異なる向きにて、第1実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセルに貼付してセルユニットを構築する状況の斜視図を示す。
図6図6は、第1実施形態に係るバッテリーの一部透過斜視図を示す。
図7図7は、図6のバッテリーの平面図および当該平面図の一部Pの形成前後の拡大図を示す。
図8図8は、図7の拡大図と同視によるバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
図9図9は、第2実施形態に係るバッテリーにおいて、図8と同視によるバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
図10図10は、第3実施形態に係るバッテリーにおいて、第2実施形態に係るセルユニットと同様の向きに、第2実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセル間に配置した場合のバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
1.延焼防止部材
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係る延焼防止部材について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る延焼防止部材の斜視図を示す。図2は、図1の延焼防止部材の平面図、正面図および右側面図を示す。
【0013】
第1実施形態に係る延焼防止部材1は、熱源に備えられ、当該熱源からの熱の移動を抑制して延焼を防止するための部材である。延焼防止部材1は、ゴムシート2と、当該ゴムシート2の少なくとも片面側に、筒の側面を固定して並べて固定される2以上のゴム状の筒体3と、を備える。筒体3は、この実施形態では、円筒であるが、端面形状を楕円形とする楕円筒、あるいは端面形状を多角形とする角筒でも良い。筒体3は、その長さ方向に貫通する貫通路4を備える。貫通路4は、筒体3をゴムシート2の厚さ方向に収縮容易にする。また、貫通路4内の空間には空気があるため、筒体3の集合体の断熱効果を高めることができる。この実施形態では、筒体3の数は、12本であるが、2本以上であれば制約はない。また、ゴムシート2は、この実施形態では、平面視にて四角形のシートであるが、平面視にて円形、楕円形または四角以上の多角形のシートでも良い。熱源は、好ましくは、後述のバッテリーセル(単に「セル」ともいう。)であるが、特にバッテリーセルに限定されるものではなく、回路基板、回路基板上の電子部品なども含むように広義に解釈される。
【0014】
ゴムシート2と筒体3との固定方法には、特に制約はなく、未硬化状のゴムシートに硬化済みの筒体3を接触せしめてゴムシートの硬化を行う方法、硬化後のゴムシート3に未硬化状の筒体を接触せしめて筒体3の硬化を行う方法、ともに未硬化状態のゴムシートと筒体とを接触せしめて硬化を行う方法を例示できる。また、ゴムシート3と筒体3とを接着剤を用いて、または嵌合して固定するようにしても良い。
【0015】
ゴムシート2を構成するゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴムの中では比較的耐熱性の高いシリコーンゴムをより好適に用いることができる。
【0016】
また、ゴムシート2は、好ましくは、多孔性のスポンジ状のシートである。ゴムシート2中の孔に含まれる空気は、ゴムシート2の断熱効果を高める機能を有するからである。ゴムシート2は、より好ましくは、耐熱性に優れるシリコーンゴム中に多くの気泡を有する発泡性のシリコーンゴムシートである。
【0017】
ゴムシート2は、ゴムシート2を構成するゴム中に、当該ゴムよりも難燃性の難燃材を含んでも良い。この実施形態では、難燃材として、カーボン(好ましくはアモルファスカーボン)を用いている。しかし、難燃材は、カーボンに限定されず、例えば、ハロゲン化物、リン化合物、白金、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機化合物でも良い。
【0018】
筒体3は、その長さ方向に貫通する貫通路4を有する。この実施形態では、12本の筒体3の肉厚は全て等しい。筒体3は、好ましくは、ゴムシート2の片面に並べられ固定されている。しかし、筒体3は、ゴムシート2の両面に備えられていても良い。
【0019】
筒体3は、この実施形態では、ゴムシート2の片面に、筒体3の長さ方向に直角の方向に間をあけて並べられている。筒体3同士の隙間は、好ましくは、筒体3がゴムシート2の厚さ方向に最もつぶれた場合でも互いに接触しない程度に広く形成されている。例えば、筒体3同士の隙間は、1本の筒体3を挿入可能な程度に広く形成されている。この実施形態では、筒体3は、その長さ方向両端をゴムシート2の対向2辺に揃えて、ゴムシート2に固定されている。しかし、筒体3の長さは、ゴムシート2の対向2辺より長くまたは短くても良い。
【0020】
ただし、複数本の筒体3の配置形態は、筒体3の長さ方向に直角の方向に間をあけて並べられている形態に限定されず、如何なる配置形態でも良い。例えば、筒体3を4本使って枠状にし、1または2以上の枠をゴムシート2の面上に固定しても良い。また、筒体3は、完全に閉じた筒に限定されない。例えば、筒体3は、その長さ方向に沿って切り込み(スリットともいう。)を入れた断面C形状の筒体でも良い。
【0021】
筒体3は、ゴムシート2と同様の上記ゴム材料の選択肢の1または2以上のゴムから主に構成される。筒体3の好ましいゴム材料は、耐熱性に優れたシリコーンゴムである。筒体3は、好ましくは、ゴムシート2と異なり、ゴムシート2より孔の少ないソリッドのゴム状筒体である。筒体3をソリッドのゴム状筒体とすると、押出成形により精度良く成形しやすいこと、バッテリーセル間で押しつぶされている間に応力の急上昇を生じることがなく、さらに弾性変形を繰り返し受ける筒体3が破損しにくいこと、といった利点がある。
【0022】
筒体3は、筒体3を構成するゴム中に、当該ゴムよりも難燃性の難燃材を含んでも良い。この実施形態では、難燃材として、カーボン(好ましくはアモルファスカーボン)を用いている。しかし、難燃材は、カーボンに限定されず、例えば、ハロゲン化物、リン化合物、白金、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機化合物でも良い。
【0023】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る延焼防止部材について図面を参照しながら説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略する。
【0024】
図3は、第2実施形態に係る延焼防止部材の正面図およびその一部の筒体の拡大図を示す。
【0025】
第2実施形態に係る延焼防止部材1aは、ゴムシート2の片面に、12本の筒体3を並べて固定している点では第1実施形態と共通するが、ゴムシート2上の場所によって筒体3の肉厚を変えている点で第1実施形態と異なる。具体的には、以下のとおりである。
【0026】
ゴムシート2における筒体3の並んでいる方向の中央(CR)に近い2本の筒体3aは、最小肉厚t1を有している。筒体3aの両外側に配置されている各3本で合計6本の筒体3bは、t1より大きな肉厚t2を有している。さらに、筒体3bのさらに両外側に配置されている各2本で合計4本の筒体3cは、t2より大きな肉厚t3を有している。このように、延焼防止部材1aは、筒体3の並ぶ方向の中央の領域に、最も薄い肉厚の筒体3aを配置し、当該並ぶ方向の端に向かって肉厚を段階的に厚い筒体3b、筒体3cを順に配置するようにしている。この実施形態では、筒体3の肉厚を3種類にしているが、2種類または4種類以上にしても良い。
【0027】
延焼防止部材1aにおいて、筒体3の肉厚を2種類以上としたときに、ゴムシート2における筒体3の並ぶ方向の中央の位置に配置されている筒体(中央配置筒体ともいう。)3aは、当該並ぶ方向の端に配置されている筒体(端部配置筒体ともいう。)3cより肉厚の小さい筒体であれば良い。したがって、筒体3bはあっても、なくても良い。また、この実施形態における筒体3a、筒体3bおよび筒体3cのいずれの本数も、制約はなく、1本以上であれば良い。筒体3aの数を1本または3本といった奇数にするとき、筒体3の並ぶ方向の中央(CR)に1本の筒体3aが位置するのが好ましい。
【0028】
このように、延焼防止部材1aにおいて、ゴムシート2の幅方向または長さ方向のいずれかの方向に並べられている3以上の筒体3の内で、その並べられている範囲の中央に位置する中央配置筒体3aは、当該範囲の端に位置する端部配置筒体3cよりも柔軟でつぶれやすくなっている。このような肉厚の異なる筒体3を上述のような配置とすることによって、熱源、特にバッテリーセルが過熱して膨張した際に、延焼防止部材1aの各筒体3がバッテリーセルの外表面に沿うようにつぶれて、延焼防止部材1aとバッテリーセルとの接触を維持しやすい。
【0029】
なお、筒体3aの肉厚を変えず、または肉厚を変えると共に、中央配置筒体3aを、端部配置筒体3cよりゴム硬度の低い筒体としても良い。上述の3種類の筒体3a,3b,3cを例にとるならば、筒体3aを最も低硬度のゴムで構成し、筒体3b、筒体3cにしたがって硬度の高いゴムで構成するようにしても良い。このように、肉厚の調整以外のゴム硬度の調整によっても、筒体3の並ぶ方向の中央から端にむかって筒体3がつぶれにくい状況を創生できる。
【0030】
2.セルユニット
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係るセルユニットについて図面を参照しながら説明する。
【0031】
図4は、第1実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセルに貼付してセルユニットを構築する状況の斜視図を示す。
【0032】
セルユニット15は、第1実施形態に係る延焼防止部材1をバッテリーセル10の側面に備える。この実施形態では、筒体3の長さ方向がバッテリーセル10の高さ方向(ここでは、バッテリーセル10の電極から底部に向かう方向)になるように、延焼防止部材1がバッテリーセル10に備えられている。延焼防止部材1をバッテリーセル10に固定する方法は、接着、粘着などの如何なる方法でも良い。ただし、粘着の方が、延焼防止部材1をバッテリーセル10に繰り返し着脱できる点で、より好ましい。なお、第1実施形態および第2実施形態では、バッテリーセル10における最長辺の方向を高さ方向、最短辺の方向を厚さ方向、最長辺に次いで長い辺の方向を幅方向と称している。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るセルユニットについて図面を参照しながら説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略する。
【0034】
図5は、第1実施形態と異なる向きにて、第1実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセルに貼付してセルユニットを構築する状況の斜視図を示す。
【0035】
セルユニット16は、第1実施形態に係る延焼防止部材1をバッテリーセル10の側面に備える。この実施形態では、筒体3の長さ方向がバッテリーセル10の幅方向(ここでは、バッテリーセル10の2つの電極の並ぶ方向)になるように、延焼防止部材1がバッテリーセル10に備えられている。延焼防止部材1をバッテリーセル10に固定する方法は、接着、粘着などの如何なる方法でも良く、粘着の方がより好ましい点については第1実施形態と同様である。
【0036】
3.バッテリー
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係るバッテリーについて図面を参照しながら説明する。
【0037】
図6は、第1実施形態に係るバッテリーの一部透過斜視図を示す。
【0038】
この実施形態において、バッテリー20は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル10を備える。バッテリー20は、一方に開口する有底型の筐体21を備える。筐体21は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル10は、筐体21の内部22に配置される。バッテリーセル10の上方には、電極が突出して設けられている。複数のバッテリーセル10は、好ましくは、筐体21内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体21の底部には、冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプが備えられている(不図示)。バッテリーセル10は、隣接するバッテリーセル10との間に、延焼防止部材1を挟むようにして筐体21内に配置されている。延焼防止部材1は、バッテリーセル10に接着または粘着されていなくとも良いが、延焼防止部材1をバッテリーセル10に接着または粘着させた前述のセルユニット15の1または2以上(好ましくは全部)を、筐体21の内部22に入れる方が好ましい。
【0039】
図7は、図6のバッテリーの平面図および当該平面図の一部Pの形成前後の拡大図を示す。
【0040】
バッテリーセル10の外側面に、筒体3が外側になるように延焼防止部材1を貼付すると、延焼防止部材1は、それを貼付したバッテリーセル10と、隣のバッテリーセル10との間に挟まれる。この結果、筒体3は、円筒形状から楕円筒形状に圧縮される。バッテリーセル10が過熱すると、熱は、筒体3の肉厚を経由する。このため、延焼防止部材1は、筒体3のないゴムシートのみの部材に比べて、熱抵抗が大きくなる。加えて、筒体3内部の空気、筒体3同士の隙間の空気は、断熱効果を高める。
【0041】
図8は、図7の拡大図と同視によるバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
【0042】
この図に示すように、バッテリーセル10は、幅方向中央が凸となるように、さらには高さ方向においても中央が凸となるように膨張する傾向がある。このため、延焼防止部材1の幅方向中央に近い筒体3が最も圧縮され、当該幅方向端部に移動するほど筒体3の圧縮度は低くなる。筒体3は、貫通路4を有しているので、バッテリーセル10の膨張に合わせて圧縮変形可能である。加えて、筒体3同士の隙間は筒体4一本分以上であるため、筒体3の圧縮を阻害する要因はなく、筒体3は比較的自由に圧縮変形可能である。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るバッテリーについて図面を参照しながら説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略する。
【0044】
図9は、第2実施形態に係るバッテリーにおいて、図8と同視によるバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
【0045】
第2実施形態に係るバッテリー20は、延焼防止部材1aをバッテリーセル10間に備える点において延焼防止部材1を備える第1実施形態と異なり、その他の構成を第1実施形態と共通とする。
【0046】
延焼防止部材1aは、筒体3の並ぶ方向の中央の位置に中央配置筒体3aを当該方向の端部に端部配置筒体3cを、中央配置筒体3aと端部配置筒体3cとの間に筒体3bを固定している。このため、バッテリーセル10がその幅方向中央部分を突出するように膨張したときに、中央配置筒体3aは最も圧縮するように変形可能となる。この結果、延焼防止部材1aは、バッテリーセル10の膨張面に沿って変形しやすくなる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るバッテリーについて図面を参照しながら説明する。第3実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略する。
【0048】
図10は、第3実施形態に係るバッテリーにおいて、第2実施形態に係るセルユニットと同様の向きに、第2実施形態に係る延焼防止部材をバッテリーセル間に配置した場合のバッテリーセル過熱前後の変化を示す。
【0049】
第3実施形態に係るバッテリー20は、第2実施形態に係るバッテリー20と異なり、筒体3の長さ方向をバッテリーセル10の幅方向に沿うように延焼防止部材1aの向きを変更している点を除き、その他の構成要素については第2実施形態に係るバッテリー20と共通させている。
【0050】
筒体3a,3b,3cの長さ方向は、バッテリーセルの幅方向(図10の紙面表裏方向)である。バッテリーセル10は、高さ方向の中央部分を突出させて膨張する場合もある。延焼防止部材1aは、当該高さ方向中央部分に中央配置筒体3aを、当該高さ方向端部に端部配置筒体3cを、中央配置筒体3aと端部配置筒体3cとの間に筒体3bを、それぞれ配置している。このため、バッテリーセル10がその高さ方向中央部分を突出するように膨張したときに、中央配置筒体3aは最も圧縮するように変形可能となる。この結果、延焼防止部材1aは、バッテリーセル10の膨張面に沿って変形しやすくなる。
【0051】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0052】
例えば、筒体3同士の隙間は、1本の筒体3が入らない程度の狭い隙間でも良い。その場合、筒体3は、圧縮変形の際に、隣の筒体3に接触してそれ以上変形できない可能性もある。このような圧縮変形の抑制は、筒体3を必要以上に圧縮させず、長期間の使用に通じる場合もある。
【0053】
上述の各実施形態では、ゴムシート2上の複数の筒体3は、全て同じ外径を有する。しかし、複数の筒体3は、異なる外径を有していても良い。例えば、筒体3a、筒体3b、筒体3cの順に、外径を大きくしても良い。また、難燃材は、筒体3c、筒体3b、筒体3aの順に含有率を増やし、ゴムシート2の幅方向若しくは長さ方向の中央位置ほど、高温に耐えやすい筒体3としても良い。
【0054】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、熱源からの延焼防止を要する分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,1a・・・延焼防止部材、2・・・ゴムシート(一例としてスポンジ状のシート)、3・・・筒体(一例としてソリッドのゴム状筒体)、3a・・・筒体(中央配置筒体)、3b・・・筒体、3c・・・筒体(端部配置筒体)、4・・・貫通路、10・・・バッテリーセル(熱源の一例)、15,16・・・セルユニット、20・・・バッテリー。
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