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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026169
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】凍結乾燥米飯
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230216BHJP
【FI】
A23L7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131908
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尊志
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC07
4B023LE12
4B023LG01
4B023LK04
4B023LL01
4B023LL05
4B023LP05
4B023LP07
4B023LP14
4B023LP15
(57)【要約】
【課題】凍結乾燥米飯の短時間で復元するという利点を損なうことなく、その風味や食感を改善した凍結乾燥米飯およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】乳酸またはその塩を、凍結乾燥米飯100g当たり乳酸値で0.5g以上3g未満の量で含む、凍結乾燥米飯およびその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸またはその塩を、凍結乾燥米飯100g当たり乳酸値で0.5g以上3g未満の量で含む、凍結乾燥米飯。
【請求項2】
乳酸またはその塩が、乳酸カリウムである、請求項1に記載の凍結乾燥米飯。
【請求項3】
さらに酸化防止剤および保存料からなる群より選択される少なくとも1種の食品添加物を含む、請求項1または2に記載の凍結乾燥米飯。
【請求項4】
米飯が白飯であり、かつ塩化ナトリウムを含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥米飯。
【請求項5】
さらに調味料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥米飯。
【請求項6】
乳酸またはその塩を含む凍結乾燥米飯の製造方法であって、
(a)原料米を水に浸漬処理後に加熱し、一次加熱米を得る工程、
(b)一次加熱米に、原料米100g当たり乳酸換算値で0.5g以上4g以下の乳酸またはその塩を添加し、次いで加熱して、二次加熱米を得る工程、および
(c)二次加熱米を凍結乾燥し、凍結乾燥米飯を得る工程
を含む、製造方法。
【請求項7】
乳酸またはその塩が、乳酸カリウムである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(c)が、二次加熱米を緩慢凍結した後、さらに急速凍結して凍結乾燥する工程である、請求項6または7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥米飯に関する。具体的には、復元性と風味や食感に優れた、乳酸またはその塩を含む乾燥凍結米飯およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防災用(備蓄用)の非常食として、または携帯に便利な簡易食として、アルファ米やフリーズドライご飯と言われる乾燥米飯の需要はますます高まっており、それらの製法についても様々な研究開発がなされている。例えば、アルファ米(非凍結乾燥米飯、典型的には、熱風乾燥米飯)は、フリーズドライご飯(凍結乾燥米飯)に比べて風味や食感に優れるが、水やお湯による復元に時間を要するという欠点を有する。このような欠点を克服する乾燥米飯の製造方法として、例えば、原料米を熱湯浸漬することにより得られる高度吸水米を蒸煮し、熱風乾燥することを含む即席米の製造方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。一方、フリーズドライご飯は、アルファ米に比べて水やお湯により短時間で復元するという利点の一方で、風味や食感に劣るという欠点を有する。特にフリーズドライご飯では、通常、復元性を担保するために塩(塩化ナトリウム)の添加が行われているが、これにより塩味が付加され白飯そのものの風味を損なうという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、凍結乾燥米飯の短時間で復元するという利点を損なうことなく、その風味や食感を改善した凍結乾燥米飯およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来、凍結乾燥米飯の製造時に添加されていた塩化ナトリウムを乳酸またはその塩に置き換え、二段階加熱の所定の段階で添加することにより、得られる凍結乾燥米飯が短時間で復元するという利点を損なうことなく、その風味や食感が改善されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のとおりである:
【0006】
[1] 乳酸またはその塩を、凍結乾燥米飯100g当たり乳酸値で0.5g以上3g未満の量で含む、凍結乾燥米飯。
[2] 乳酸またはその塩が、乳酸カリウムである、[1]に記載の凍結乾燥米飯。
[3] さらに酸化防止剤および保存料からなる群より選択される少なくとも1種の食品添加物を含む、[1]または[2]に記載の凍結乾燥米飯。
[4] 米飯が白飯であり、かつ塩化ナトリウムを含まない、[1]~[3]のいずれか1つに記載の凍結乾燥米飯。
[5] さらに調味料を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の凍結乾燥米飯。
[6] 乳酸またはその塩を含む凍結乾燥米飯の製造方法であって、
(a)原料米を水に浸漬処理後に加熱し、一次加熱米を得る工程、
(b)一次加熱米に、原料米100g当たり乳酸換算値で0.5g以上4g以下の乳酸またはその塩を添加し、次いで加熱して、二次加熱米を得る工程、および
(c)二次加熱米を凍結乾燥し、凍結乾燥米飯を得る工程
を含む、製造方法。
[7] 乳酸またはその塩が、乳酸カリウムである、[6]に記載の製造方法。
[8] 工程(c)が、二次加熱米を緩慢凍結した後、さらに急速凍結して凍結乾燥する工程である、[6]または[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の凍結乾燥米飯は、復元性と風味や食感に優れる。本発明の凍結乾燥米は、従来、製造時に添加されていた塩化ナトリウムを乳酸またはその塩に置き換え、二段階加熱の所定の段階で添加するという簡便な方法により得られる。得られた凍結乾燥米飯は、5分以内、好ましくは3分以内という短時間で復元することができ、また復元後の食味に優れる。また、得られた凍結乾燥米飯は、乳酸またはその塩を含むが、実質的に塩化ナトリウムを含まないため、白飯として提供されてもその風味を塩味に邪魔されることなく味わうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(凍結乾燥米飯)
本発明は、乳酸またはその塩を含む凍結乾燥米飯に関する。本発明において「凍結乾燥米飯」とは、米飯から凍結乾燥(フリーズドライ)により水分を除去したものを意味する。本発明の凍結乾燥米飯が含む乳酸またはその塩の量は、凍結乾燥米飯100g当たり乳酸値で、0.5g以上であり、好ましくは0.6g以上であり、より好ましくは0.8g以上であり、さらに好ましくは1g以上であり、特に好ましくは1.2g以上であり、また好ましくは3g未満であり、より好ましくは2.8g以下であり、さらに好ましくは2.5g以下であり、特に好ましくは2.3g以下である。凍結乾燥米飯が含む乳酸またはその塩の量は、公知の方法、例えば後述の実施例に記載した、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定することができ、その全量が乳酸として検出されるか、乳酸に換算され、これらに基づいて凍結乾燥米飯100g当たりの乳酸値が算出される。
【0009】
本発明の凍結乾燥米飯が含む乳酸またはその塩は、好ましくは乳酸の塩であり、より好ましくは乳酸のアルカリ金属塩であり、さらに好ましくは乳酸ナトリウムまたはカリウムであり、特に好ましくは乳酸カリウムである。これらは食品添加物として市販されており、固体または水溶液として供給業者より入手可能である。
【0010】
本発明の一実施態様では、本発明の凍結乾燥米飯は、好ましくは、乳酸ナトリウムまたはカリウム由来のナトリウムまたはカリウムを含む。なお日本食品標準成分表(八訂)に拠れば、「水稲めし」における可食部100g当たりのカリウムの含有量は100mg未満であり、ナトリウムの含有量は1mg以下である。具体的に、水稲めし(精白米/うるち米)における可食部100g当たりのカリウムの含有量は29mgであり、ナトリウムの含有量は1mgである。また、可食部100g当たりの水分量は60.0gであるので、乾燥100g当たりに換算すると、カリウムの含有量は72.5mgであり、ナトリウムの含有量は2.5mgである。したがって、本発明の凍結乾燥米飯は、ナトリウムを(原料由来のナトリウムと合わせて)、好ましくは100mg以上、より好ましくは200mg以上、さらに好ましくは300mg以上、また好ましくは1000mg以下、より好ましくは800mg以下、さらに好ましくは600mg以下の量で含むか、あるいはカリウムを(原料由来のカリウムと合わせて)、好ましくは200mg以上、より好ましくは250mg以上、さらに好ましくは300mg以上、また好ましくは1300mg以下、より好ましくは1200mg以下、さらに好ましくは1100mg以下の量で含む。凍結乾燥米飯が含むナトリウムまたはカリウムの量は、公知の方法、例えば後述の実施例に記載した、原子吸光光度法により測定することができ、その結果に基づいて凍結乾燥米飯100g当たりの含有量が算出される。
【0011】
本発明の凍結乾燥米飯はまた、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて食品添加物を含んでいてもよい。そのような食品添加物は、典型的には、酸化防止剤および/または保存料である。酸化防止剤は、食品添加物として使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミンE、ビタミンC、エリソルビン酸、茶抽出物などが挙げられ、好ましくはビタミンEである。保存料は、食品添加物として使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ポリリジン、ソルビン酸またはその塩、トレハロースなどが挙げられ、好ましくはトレハロースである。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。添加量は、目的に応じて、適宜設定すればよい。
【0012】
本発明の一実施態様では、実質的に塩化ナトリウムを含まない凍結乾燥米飯を提供できる。そのような態様は、米飯に塩味が不要の場合、特に米飯が白飯である場合に好適である。
【0013】
本発明の別の実施態様では、凍結乾燥米飯は、目的に応じて具材および/または調味料を含んでいてもよい。調味料は、食品および食品添加物として使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩などが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。添加量は、目的に応じて、適宜設定すればよい。
【0014】
(凍結乾燥米飯の製造方法)
本発明の乳酸またはその塩を含む凍結乾燥米飯の製造方法は、
(a)原料米を水に浸漬処理後に加熱し、一次加熱米を得る工程、
(b)一次加熱米に、原料米100g当たり乳酸換算値で0.5g以上4g以下の乳酸またはその塩を添加し、次いで加熱して、二次加熱米を得る工程、および
(c)二次加熱米を凍結乾燥し、凍結乾燥米飯を得る工程
を含む。
【0015】
工程(a)では、まず原料米を水に浸漬処理し、吸水米を調製する。浸漬処理は、典型的には、原料米を30℃以下の水に浸漬後、水切りすることにより実施される。ここで、原料として使用する米の種類や銘柄に特に限定はない。無洗米や精白米だけでなく、玄米や胚芽米であってもよい。また米の種類もジャポニカ種(短粒米)に限らない。好ましくは、原料米として精白米または無洗米を使用する。
【0016】
原料米が精白米または無洗米である場合(精白米の場合は予め洗浄したものを使用する)、これを30℃以下、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは常温(約20±5℃)の水に浸漬し、原料米に水分を均一に吸収させる。浸漬時間は、通常、約0.5時間~約16時間であるが、好ましくは約1時間~約4時間である。浸漬後、水切りすることにより吸水米が得られる。吸水米の重量は、原料米の重量(洗浄した場合は、洗浄後の重量)に対して約120%~約140%の範囲であるのが好ましい。このようにして得られた吸水米を工程(a)で使用できる。
【0017】
工程(a)では、吸水米を一次加熱する。一次加熱により、米表面の少なくとも一部がアルファ化された一次加熱米が得られる。加熱の具体的な方法は特に制限されないが、常圧スチーム加熱が好ましく、例えば、約90℃~約100℃の温度で、当該温度に品温達温後約0分~約60分、好ましくは約0分~約20分の加熱保持時間で常圧スチーム加熱することで、一次加熱米が得られる。
【0018】
工程(b)では、工程(a)で得られた一次加熱米を、乳酸またはその塩の存在下で二次加熱する。二次加熱により、米の中心部までアルファ化された二次加熱米が得られる。乳酸またはその塩の好ましい態様は、上述のとおりである。このような二段階加熱を経ることにより復元性と食味に優れた乾燥米飯を得ることができる。
【0019】
一次加熱米への乳酸またはその塩の添加は、乳酸またはその塩と水の混合液を添加することにより実施される。乳酸またはその塩の添加量は、原料米100g当たり乳酸換算値で、好ましくは0.5g以上であり、より好ましくは1g以上であり、また好ましくは4g以下であり、より好ましくは3.5g以下である。乳酸またはその塩を、一次加熱米100g当たり約140g~約380gの水と混合し、得られた混合液を一次加熱米に任意の方法で添加し、任意の方法で混合した後、二次加熱する。なお、乳酸またはその塩と水の混合液には、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、食品添加物を添加してもよい。そのような食品添加物は、典型的には、酸化防止剤および/または保存料であり、食品添加物の具体例や好ましい態様は、上述のとおりである。また本発明の凍結乾燥米飯が具材および/または調味料を含む場合、乳酸またはその塩と水の混合液と共に具材および/または調味料を一次加熱米に添加し、二次加熱してもよい。
【0020】
工程(b)の二次加熱の具体的な方法は特に制限されないが、常圧スチーム加熱が好ましく、例えば、約90℃~約100℃の温度で、当該温度に品温達温後約0分~約60分、好ましくは約10分~約40分の加熱保持時間で常圧スチーム加熱することで、二次加熱米が得られる。得られた二次加熱米は、好ましくは、米飯表面のヌメリを除去するため、40℃以下の水で洗浄される。
【0021】
工程(c)では、工程(b)で得られた二次加熱米を凍結乾燥する。凍結乾燥は、公知の方法で行うことができる。好ましくは、二次加熱米を緩慢凍結した後、さらに急速凍結して凍結乾燥する。緩慢凍結は、通常、約-5±5℃で30分以上かけて行われる凍結を意味し、本発明の製造方法の緩慢凍結時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは8時間以上で、また好ましくは48時間以下、より好ましくは36時間以下、さらに好ましくは24時間以下である。その後、二次加熱米を約-20℃以下、好ましくは約-30℃以下で急速凍結させた後、減圧下、好ましくは約0.8Torr以下、より好ましくは0.3Torr以下で凍結乾燥する。
【0022】
本発明の凍結乾燥米飯が具材および/または調味料を含む場合、具材および/または調味料を凍結乾燥前の二次加熱米に添加し、凍結乾燥してもよいし、凍結乾燥後に乾燥具材および/または乾燥調味料を添加してもよい。
【0023】
このようにして得られた凍結乾燥米飯は、必要に応じて、粗砕(解砕)/単粒化/整粒化処理に付され、適切に包装されて、防災用(備蓄用)の非常食として、または携帯に便利な簡易食として提供することができる。
【実施例0024】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これら実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0025】
(比較例1)
精白米25.8gを約20℃の常温水で洗浄後、同常温水に1.5時間浸漬した後、水切りして吸水米33.9gを得た。吸水米33.9gをポリ袋に入れてトレーに盛り、常圧スチーム加熱により品温95℃に到達後、15分間加熱し、一次加熱米33.9gを得た。得られた一次加熱米に、乳酸カリウム(濃度50%溶液;(株)武蔵野化学研究所製、スラック(登録商標)K)3.27g、トレハロース((株)林原製、トレハ)0.56g、ビタミンE乳剤(30%溶液;小川香料(株)製、イーミックスE-30)0.08g、および水63.7gの混合液を添加、混合し、常圧スチーム加熱により、品温95℃に到達後、30分間加熱した。得られた二次加熱米を約20℃の常温水で洗浄し、ヌメリを除去した後、トレーに盛り、-7℃で12時間緩慢凍結後、-40℃で急速凍結して凍結乾燥した。乾燥品を粗砕、単粒化し、凍結乾燥米飯を得た。凍結乾燥米飯に含まれる乳酸の量をHPLC分析により、カリウムの量を原子吸光光度分析により測定した。また凍結乾燥米飯の復元性と、復元後の米飯の風味を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
(実施例1~5、比較例2)
乳酸カリウム(濃度50%溶液)の投入量を表1に記載の量に代えた以外は、比較例1と同様の方法で凍結乾燥米飯を得た。分析および評価の結果を表1に示す。
【0027】
(比較例3)
乳酸カリウム(濃度50%溶液)を添加しなかった以外は、比較例1と同様の方法で凍結乾燥米飯を得た。分析および評価の結果を表1に示す。
【0028】
(実施例6~8)
乳酸カリウムを乳酸ナトリウム(濃度50%溶液;(株)武蔵野化学研究所製、スラック(登録商標))に代え、その投入量を表2に記載の量とした以外は、比較例1と同様の方法で凍結乾燥米飯を得た。分析および評価の結果を表2に示す。
【0029】
(実施例9)
トレハロースおよびビタミンE乳剤(30%溶液)を使用しなかった以外は、実施例3と同様の方法で凍結乾燥米飯を得た。凍結乾燥米飯の復元性と、復元後の米飯の風味の評価の結果は、実施例3と同じ(復元性:◎、風味:〇)であった。
【0030】
<HPLC条件>
凍結乾燥米飯1.2gから2.0gまでの間から適量を採取し、0.5%過塩素酸20mLを添加、振盪10分間することにより抽出を行った。抽出後の溶液をろ過、希釈し一部をHPLCに供した。HPLCに用いた機器はいずれも(株)島津製作所社製で、機種はLC-20AD、検出器は電気伝導度計CDD-10AVP、およびカラムはShim-pack SCR-102H×2、φ8.0mm×300mmを使用した。カラム温度は45℃、移動相は5mmol/L p-トルエンスルホン酸、反応液は0.1mmol/L EDTA及び20mmol/L Bis-Tris含有5mmol/L p-トルエンスルホン酸、流量は移動相・反応液共に0.8mL/minであった。
【0031】
<原子吸光光度分析条件>
カリウム測定の場合は、凍結乾燥米飯0.5gから1.5gまでの間から適量を採取し、1%塩酸200mLを添加、振盪30分間後に1晩以上放置することにより抽出を行った。抽出後の溶液をろ過、1%塩酸で1から10倍に希釈し一部を測定に供した。原子吸光光度分析に用いた機器はアジレント・テクノロジー(株)製で、機種はAA240FS、光源は中空陰極ランプを使用した。フレームはアセチレン1.60L/min、空気14.00L/min、測定波長は766.5nmであった。ナトリウム測定の場合は、凍結乾燥米飯1.0gから2.5gまでの間から適量を採取することと、測定波長が589.0nmであったこと以外の操作はカリウム測定の場合と同様であった。
【0032】
<復元性>
凍結乾燥米飯50gに90℃から100℃のお湯100mLを加えてよくかき混ぜたのち、フタをして3分または5分待ってから復元性を評価した。表中の記号は以下の意味を示す;
◎:3分で復元、〇:5分で復元、△:僅かに芯が残る、×:復元せず
【0033】
<風味>
凍結乾燥米飯50gに90℃から100℃のお湯100mLを加えてよくかき混ぜたのち、フタをして5分待ってから米飯の風味を評価した。表中の記号は以下の意味を示す;
〇:問題無し、△:僅かに違和感、×:大きな違和感
(風味の違和感は乳酸カリウム由来の金属味が出ることによる)
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の凍結乾燥米飯は、5分以内、好ましくは3分以内という短時間で復元することができ、また復元後の食味に優れる。また、得られた凍結乾燥米飯は、乳酸またはその塩を含むが、実質的に塩化ナトリウムを含まないため、白飯として提供されてもその風味を塩味に邪魔されることなく味わうことができる。本発明の凍結乾燥米飯は、防災用(備蓄用)の非常食として、または携帯に便利な簡易食として提供できる。