(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002619
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】二ケイ酸リチウムガラスセラミック組成物およびその方法
(51)【国際特許分類】
C03C 10/12 20060101AFI20221227BHJP
A61L 27/10 20060101ALI20221227BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C03C10/12
A61L27/10
A61L27/38
A61L27/38 111
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163061
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2018561573の分割
【原出願日】2017-05-25
(31)【優先権主張番号】62/342,381
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ファユン デン
(72)【発明者】
【氏名】チャン フゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー マウロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラスセラミック組成物と、前記ガラスセラミック組成物から作製された生体活性ガラスセラミック組成物および生体活性ガラスセラミック物品と、それらを作製し、使用する方法を提供する。
【解決手段】二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、アパタイト、珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、を含むガラスセラミック組成物であって、前記ガラスセラミック組成物が、200MPaから500MPaの高い強度と、1.4から2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性との組み合わせを有する、ガラスセラミック組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、
アパタイト、珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック組成物であって、
前記ガラスセラミック組成物が、200MPaから500MPaの高い強度と、1.4から2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性との組み合わせを有する、ガラスセラミック組成物。
【請求項2】
前記ガラスセラミック組成物の全体100重量%に対して、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含む、請求項1記載のガラスセラミック組成物。
【請求項3】
前記第1結晶相が二ケイ酸リチウムを含み、前記第2結晶相がアパタイト、珪灰石またはそれらの混合物を含む、請求項1または2記載のガラスセラミック組成物。
【請求項4】
二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、
珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック、および
少なくとも1つの生きた骨芽細胞、
を含む生体活性組成物。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、米国特許法(35U.S.C.)119条に基づき、2016年5月27日に出願された米国仮特許出願第62/342,381の優先権の利益を主張するものであり、その内容は引用されその全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書と同時に出願された、本願の権利者が所有し譲渡された “BIOACTIVE ALUMINOBORATE GLASSES” という名称の米国仮特許出願第62/342,384号、“MAGNETIZABLE GLASS CERAMIC COMPOSITION AND METHODS THEREOF”という名称の米国仮特許出願第62/342,377号、“BIODEGRADABLE MICROBEADS” という名称の米国仮特許出願第62/342,391号、“BIOACTIVE GLASS MICROSPHERES” という名称の米国仮特許出願第62/342,411号、“BIOACTIVE BOROPHOSPHATE GLASSES” という名称の米国仮特許出願第62/342,426号に関するものであるが、それらに対する優先権を主張するものではない。
【0003】
本出願は、銅イオンを遊離させる分解性相と非分解性相とを有する銅含有積層物について記載した“ANTIMICROBIAL PHASE-SEPARATING GLASS AND GLASS CERAMIC ARTICLES AND LAMINATES” という名称の、2015年7月7日に出願された、本願の権利者が所有し譲渡された米国特許出願第62/189,880号と、“High strength glass-ceramics having lithium disilicate and beta-spodumene structures”という名称の、2013年9月6日に出願された、本願の権利者が所有し譲渡された米国特許出願第61/874870号とにも関するが、それらに対する優先権を主張するものではない。
【0004】
本明細書に記載される各々の刊行物または特許文献の開示全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0005】
本開示は、ガラスセラミック組成物と、前記ガラスセラミック組成物から作製された生体活性ガラスセラミック組成物および生体活性ガラスセラミック物品と、前記生体活性ガラスセラミック組成物および生体活性ガラスセラミック物品を作製し、使用する方法と、に関する。
【発明の概要】
【0006】
実施形態において、本開示は、第1の主要な結晶相として二ケイ酸リチウムと、第2の少量の相として珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェート(lithiophosphate)またはそれらの混合物の内の少なくとも1種とを各々が有するガラスセラミック組成物の群を提供する。
【0007】
実施形態において、開示された前記組成物は、前記組成物の全体100重量%に対して、例えば、50~75重量%のSiO2、1~5重量%のAl2O3、1~8重量%のP2O5、2~10重量%のCaO、5~20重量%のLi2O、0.5~5重量%のNa2O、0.5~8重量%のZrO2および0.1~1.0重量%のF-(すなわち、フッ化物イオン)の原料を含むことができる。
【0008】
実施形態において、開示された前記組成物は、前記組成物の全体100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含むことができる。
【0009】
実施形態において、本開示は、高い強度と高い靭性との組み合わせを有するガラスセラミック組成物または前記組成物から作製されるガラスセラミック物品を提供する。
【0010】
実施形態において、本開示は、優れた生体適合性を有するガラスセラミック組成物を提供する。
【0011】
実施形態において、本開示は、開示された前記組成物を作製し、使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】例示の組成物7~10のX線回折スペクトルを示す。700℃で2時間、次いで800℃で4時間のサイクルを用いて、全ての試料のセラミック化を行った。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、開示された生体活性ガラスセラミックディスク上におけるMC3T3細胞のDay1における付着および増殖:絶対レベル(絶対細胞数;4A)およびインビトロにおける対照(Tissue Culture Treated(登録商標)(TCT)ウェル)に対する相対レベル(相対細胞数;4B)を示す。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、開示された組成物7~10についての細胞増殖の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
もし存在するならば図面を参照して、本開示の各種実施形態を詳細に記載する。各種実施形態の参照は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、本明細書に添付された請求項の範囲によってのみ限定される。その上、本明細書に示されるいかなる実施例も限定的なものではなく、請求される本発明の多くの可能な実施形態の内の一部を単に示すだけである。
【0014】
実施形態において、開示された製造および使用の方法は、例えば以下で考察されるようなものを含む1つまたは複数の有利な特徴または態様を提供する。請求項の内のいずれかに列挙される特徴または態様は、概して本発明の全ての局面に適用可能である。いずれか一項の請求項における、いずれかの列挙された単一または複数の特徴または態様は、他のいずれかの一項または複数の請求項における他のいずれかの列挙された特徴または態様と組み合わせることができるか、または置換することができる。
【0015】
定義
「ガラス(glass)」、「ガラス(glasses)」または同種の用語は、ガラスまたはガラスセラミックを指すことができる。
【0016】
「ガラス物品」または同種の用語は、開示されるガラスまたはガラスセラミック組成物の内のいずれかで全体的にまたは部分的に作製される物体を指すことができる。
【0017】
「生体活性指標」、「生体活性の指標」、「IB」または同種の用語もしくは記号は、例えば、骨、組織および同種の材料などの生物学的材料が特定の生体活性材料の界面の50%超に接合する時間を指す。数学的には、生体活性指標(Henchによる(Cao,W.,et al.,Bioactive Materials,Ceramics International,22(1996)493-507参照))は、IB=100/t0.5bb(式中、t0.5bbは、骨、組織、ならびに骨産生性(osteoproductive)(細胞内応答および細胞外応答の両方を有するクラスA、例えば、45S5 Bioglass(登録商標))材料および骨伝導性(界面のみにおけるクラスB細胞外応答、例えば、合成ヒドロキシアパタイト)材料を含む同種の材料などの生物学的材料がインプラントなどの生体活性材料の界面の50%超に接合する時間である)である。
【0018】
「含む(include)」、「含む(includes)」または同種の用語は、包含するものであるが限定されないことを意味し、すなわち、包括的であり、排他的でないことを意味する。
【0019】
例えば、本開示の実施形態を記載する際に用いられる、組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度および同種の値ならびにそれらの範囲、または、成分の寸法および同種の値ならびにそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合物、濃縮物、部品、製造物品または使用配合物を作製するために用いられる典型的な測定手法および取り扱い手法や、これらの手法における不注意による誤りや、前記方法を実施するために用いる出発材料または出発成分の製造、原料または純度のばらつきや、同種の考慮点によって生じる可能性がある数量の変化量を指す。また、「約」という用語は、特定の初期濃度を有する組成物もしくは配合物または混合物の経時変化によって異なる量や、特定の初期濃度を有する組成物もしくは配合物または混合物を混合または加工することによって異なる量も包含する。
【0020】
「任意の」または「任意に」は、続いて記載される事象または状況が起きる可能性があるか、または起きる可能性がないことを意味するものであって、前記記載が、前記事象または前記状況が起きる場合と、それが起きない場合とを含むことを意味するものである。
【0021】
本明細書に用いられる通りの不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」およびその対応する定冠詞「前記(the)」は、特に明記しない限り、少なくとも1つまたは1つもしくは複数を意味する。
【0022】
当業者によく知られている略語を用いてもよい(例えば、時間(hour)または時間(hours)についての「時間(h)」または「時間(hrs)」、(1または複数の)グラムについての「g」または「gm」、ミリリットルについての「mL」、室温についての「rt」、ナノメートルについての「nm」、および同種の略語)。
【0023】
構成要素、成分、添加剤、寸法、条件、時間および同種の態様ならびにそれらの範囲について開示される特定の、かつ、好ましい値は、ただ例示のためだけのものであり、それらは、他の定義された値、または定義された範囲内の他の値を除外するものではない。本開示の組成物および方法は、明確な、または、潜在的な中間値および中間範囲を含む、任意の値、または、本明細書に記載される値、特定の値、より特定の値および好ましい値の任意の組み合わせを含むことができる。
【0024】
高い強度および靭性を有する生体活性材料は、例えば骨および歯の再生において著しい需要がある。二ケイ酸リチウムに基づいたガラスセラミックは、それらのランダムに配向した連鎖結晶(interlocking crystals)のマイクロ構造のため、高い本体強度および破壊靱性を含む非常に望ましい機械的特性を提供する。二ケイ酸リチウム組成物に基づいたガラスセラミックの系において、2~3MPa・m1/2の破壊靱性値を有するガラスセラミックが達成可能である(本願の権利者が所有し譲渡された米国特許出願第61/874870号明細書参照)。単一および複数の歯科修復物の製作において、二ケイ酸リチウムガラスセラミックが広く用いられてきた。しかし、これらのガラスセラミックは、それらの比較的低い生体活性のため、骨修復において用いられてこなかった。対照的に、アパタイトおよび珪灰石に基づいたバイオセラミックは、高い生体活性を示してきたが、例えば皮質骨と比較して充分な機械的強度を有さない(Hench,L.L.,Bioceramics,J Am Ceram Soc,1998,81:1705-1728)。
【0025】
実施形態において、本開示は、二ケイ酸リチウムの主要な相と、例えばアパタイトまたは珪灰石の少量の1つの相または複数の相とを含む相集合を有するガラスセラミック組成物の群を提供する。これらの優れた組成物は、高い機械的強度と高い生体活性との優れた組み合わせを示し、それらは、前記組み合わせによって硬組織再生のために優れたものになる。
【0026】
“Process for producing a sintered lithium disilicate glass ceramic dental restoration and kit of parts”という名称の国際公開第2015/200017号(‘017)には、多孔質3次元(3-dim)物品から焼結二ケイ酸リチウムガラスセラミック歯科修復物を製造するためのプロセスが記載されている。対照的に、本開示の組成物は異なる相集合を有し、例えば、開示される前記組成物は二ケイ酸リチウムおよびアパタイトを有するが、一方で‘017は二ケイ酸リチウムだけを有し、本開示の前記組成物は生体活性であるが、‘017組成物は生体活性ではない。追加的に、本開示の前記組成物は、CaOおよびF-を有してアパタイト相を生成する。
【0027】
米国特許出願公開第2015/0087493号明細書には、高い化学的安定性を特徴とし、かつ、歯科における修復物材料として用いることができる二ケイ酸リチウムアパタイトガラスセラミックが記載されている。しかし、これらの材料は、全て、本開示の前記組成物に含まれないK2Oを含む。
【0028】
米国特許第7166548号明細書には、少なくとも1つのガラス相と少なくとも1つのアパタイト相と含み、かつ、前記アパタイト相の内の少なくとも1つが、ホスフェートを含まずかつフッ素を含まない珪質オキシアパタイト相であることを特徴とするアパタイトガラスセラミックが記載されている。しかし、これらの材料は、本開示の前記組成物中に存在するホスフェートおよびフッ素を含まない。
【0029】
実施形態において、本開示は、
二ケイ酸リチウムからなる第1結晶相と、
珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック組成物を提供する。
【0030】
実施形態において、本開示は、前記第1結晶相および前記第2結晶相が、組み合わせて、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、すなわち、フッ化物イオン
の原料を含む、ガラスセラミック組成物を提供する。
【0031】
実施形態において、前記ガラスセラミック組成物は、前記組成物の全体100重量%に対して、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含むことができる。
【0032】
実施形態において、前記第1結晶相および前記第2結晶相は、組み合わせて、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~60重量%のSiO2、
1~3重量%のAl2O3、
2~6重量%のP2O5、
4~8重量%のCaO、
7.5~12.5重量%のLi2O、
0.5~2重量%のNa2O、
1~4重量%のZrO2、および
0.2~0.8重量%のF-、
の原料を含むことができる。
【0033】
実施形態において、上述の組成物は、好ましい、または最も好ましい組成物であり得、上述の組成物成分を含むか、上述の組成物成分を含むか、上述の組成物成分からなるか、または、上述の組成物成分から実質的になり得る可能性がある。
【0034】
実施形態において、開示された前記生体活性組成物および前記生体活性物品は、好ましい、または最も好ましい組成物または物品であり得、開示された前記生体活性組成物または前記生体活性物品を含むか、前記生体活性組成物または前記生体活性物品を含むか、それらからなるか、またはそれらから実質的になり得る。
【0035】
実施形態において、開示された前記作製方法および前記使用方法は、好ましい、または最も好ましい方法であり得、開示された前記方法を含むか、前記方法からなるか、または前記方法から実質的になり得る。
【0036】
実施形態において、前記組成物は、200MPaから500MPa、例えば、中間値および中間範囲を含む少なくとも200MPa、少なくとも300MPaまたは少なくとも400MPaからの高い強度を有することができる。
【0037】
実施形態において、前記組成物は、1.4から2.0MPa・m1/2、例えば、中間値および中間範囲を含む少なくとも1.4、1.6、1.8から、または2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性を有することができる。
【0038】
実施形態において、前記組成物は、200MPaから500MPaの高い強度と、1.4から2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性との組み合わせを有することができる。
【0039】
前駆体ガラス
実施形態において、前記組成物は、例えば、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含む前駆体ガラス組成物から作製することができる。
【0040】
実施形態において、上述の前駆体ガラス組成物は、セラミック化を行った際に著しく変化しない。
【0041】
実施形態において、本開示は、例えば、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含む前駆体ガラスのセラミック化を、
前記ガラスを650~750℃で0.5~10時間加熱し、次いで750~850℃で0.5~20時間加熱することによって行うこと
を含む、上述のガラスセラミック組成物を作製する方法を提供する。
【0042】
実施形態において、前記作製方法は、例えば、得られた前記ガラスセラミック組成物のイオン交換を行って、前記物品の少なくとも一方の表面上に少なくとも1つの圧縮応力層を作製し、前記物品の機械的強度を増加させることをさらに含むことができる。
【0043】
生体活性組成物
実施形態において、前記開示は、
二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、
珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック、および
1つまたは複数の生きた骨芽細胞、すなわち、、開示された前記組成物を含む生体活性ガラスセラミックおよび骨を合成することが可能な細胞、
を含む生体活性組成物を提供する。
【0044】
実施形態において、上述の生体活性組成物において、前記ガラスセラミック組成物は、例えば、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含むことができる。
【0045】
実施形態において、前記ガラスセラミック組成物は、例えば、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~60重量%のSiO2、
1~3重量%のAl2O3、
2~6重量%のP2O5、
4~8重量%のCaO、
7.5~12.5重量%のLi2O、
0.5~2重量%のNa2O、
1~4重量%のZrO2、および
0.2~0.8重量%のF-、
の原料を含むことができる。
【0046】
実施形態において、上述の生体活性組成物は、例えば、前記組成物の全体100重量%に対して、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含むことができる。
【0047】
実施形態において、本開示は、例えば、
上述の生体活性組成物を適切な液体培地に接触させること、
を含む、骨芽細胞を培養する方法、すなわち、開示された前記生体活性組成物を使用する方法を提供する。
【0048】
実施形態において、前記生体活性組成物の前記ガラスセラミック組成物は、前記(1つ以上の)生きている骨芽細胞と接触させる前に、前記適切な液体培地と組み合わせるか、または接触させることができる。
【0049】
実施形態において、前記接触によって前記生体活性組成物の表面上で前記骨芽細胞の増殖が生じる。
【0050】
実施形態において、前記接触によって、MC3T3細胞の培地、すなわち、10%ウシ胎児血清と1mMピルビン酸ナトリウムとが補充されたα-MEMなどの前記適切な液体培地中において前記骨芽細胞の増殖が生じる。
【0051】
実施形態において、前記適切な液体培地は、例えば、模擬体液(SBF)組成物を含むことができる。SBFは、生体活性ガラス/ガラスセラミックのアパタイト形成活性を試験するために用いる。開示された前記生体活性ガラスセラミックは、骨および歯に接合することが可能であり、軟組織にさえ接合することが可能である生物学的活性アパタイト層(例えば、骨および歯のミネラル相)を生体内原位置で形成する。開示された前記生体活性ガラスセラミックの可能な用途としては、例えば、荷重支持骨の修復、歯の再生、歯の過敏症の処置、人工椎骨、棘状スペーサ(spinous spacers)、椎間スペーサ、腸骨スペーサ、粒状充填剤、足場、中耳インプラント、他の型の小骨置換、創傷治癒および同種の用途に用いるためのモノリシック物品、モノリシック複合物、モノリシック膜、モノリシックコーティングまたは同種の形態を挙げることができる。開示された前記生体活性ガラスセラミックは、例えば、骨芽細胞、ケラチン生成細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)などと生体適合性がある(例えば、T.Kokubo et al.,“How useful is SBF in predicting in vivo bone bioactivity?”,Biomaterials,27[15]2907-15(2006)参照)。
【0052】
実施形態において、開示された前記組成物および開示された前記生体活性組成物は、例えば、血管形成(HUVEC細胞)、創傷治癒(ケラチン生成細胞)、骨組織工学(MC3T3細胞)および同種の用途における用途を有することもできる。
【0053】
実施形態において、開示された前記組成物は、各種用途において各種細胞型と生体適合性があり、生物学的に活性(すなわち、生体活性)である。
【0054】
実施形態において、開示された前記組成物およびその方法は、例えば、
高い強度と高い靭性との組み合わせを有するガラスセラミック組成物、
優れた生体適合性を有するガラスセラミック組成物、および
骨芽細胞の成長および機能付与を支持する能力を有するガラスセラミック組成物、
を含むいくつかの態様において有利である。
【0055】
実施形態において、開示された前記生体活性ガラスセラミック組成物は、例えば、中空微小球、固体微小球またはそれらの組み合わせから選択される形態因子、すなわち、ガラス組成物が、球、伸長した球もしくは卵形、棒または同種の形状などの粒子形を有するものをさらに含むことができる。表1において、開示された前記組成物の代表例が示される。すべての例1~15についてのセラミック化サイクルは、700℃で2時間、および800℃で4時間であった。
【0056】
【0057】
【0058】
実施形態において、開示された前記組成物は、例えば、K2O、K2CO3、Ca3(PO4)2、MgO、TiO2、As2O3、Sb2O3またはそれらの組み合わせ、もしくは混合物の内の少なくとも1種を非含有(例えば、0ppmまたは0ppb)、または実質的に非含有(例えば、数ppm未満または数ppb未満の極微量)とすることができる。
【0059】
実施形態において、本開示は、優れた機械的特性と生体適合性とを有するガラスセラミックを製造するためにセラミック化を行うことができる前駆体ガラス組成物を提供する。実施形態において、本開示は、湾曲経路に沿って亀裂を伝播させる連鎖構造を、セラミック化を行った物品内に形成することによって、高い機械的強度を有するガラスセラミックを提供する。追加的には、開示された前記組成物中にフルオロアパタイトや珪灰石などの少量のクリスタライト相が存在することは、骨芽細胞系の成長、増殖および機能にとって有益である。
【0060】
実施形態において、前駆体ガラスまたは原料ガラスは、例えば、前記組成物の全体100重量%に対して、50~75重量%のSiO2、1~5重量%のAl2O3、5~20重量%のLi2O、0.5~5重量%のNa2O、0.5~8重量%のZrO2、および0.1~1.0重量%のF-(すなわち、フッ化物イオン)を含むことができる。実施形態において、より好ましい前駆体ガラス組成物は、例えば、100重量パーセント全体に対して、50~60重量%のSiO2、1.0~3.0重量%のAl2O3、0.1~4.0重量%のB2O3、7.5~12.5重量%のLi2O、0.5~2.0重量%のNa2O、1.0~4.0重量%のZrO2、および0.2~0.8重量%のF-イオンであることができる(表1参照)。
【0061】
実施形態において、前駆体ガラスのセラミック化を行って、例えば80%以上、例えば80~95%の高い結晶性を有するガラスセラミック物品とすることができる。主要なクリスタライト相は、二ケイ酸リチウムを含む。少量のクリスタライト相は、標的とする組成物に応じて、例えば、フルオロアパタイト、珪灰石、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの混合物を含むことができる。
【0062】
図を参照すると、
図1は、例示の組成物7~10のX線回折スペクトルを示すが、ここで参照符号7、8、9および10は、それぞれ表1における例示の組成物7~10に対応する。二ケイ酸リチウム(アスタリスク)、メタケイ酸リチウム(三角形)、フルオロアパタイト(ドット)、β-石英(正方形)およびクリストバライト(菱形)として、著しいピークが(マーカー形状により)識別される。700℃で2時間、次いで800℃で4時間のサイクルを用いて、全ての試料のセラミック化を行った。
【0063】
実施形態において、700~900℃の温度で一定時間、前駆体ガラスのセラミック化を行うことによって、連鎖二ケイ酸リチウムから構成される開示された前記ガラスセラミック物品を容易に得ることができる。二ケイ酸リチウム相の粒度は、典型的にはガラスセラミック内に形成される高アスペクト比を有する1マイクロメートルよりも大きくてもよい。
図2A~
図2Dは、それぞれ
図2A、
図2B、
図2Cおよび
図2Dに対応する例示の組成物7~10における研磨表面のSEM画像を示す。700℃で2時間、次いで800℃で4時間のサイクルを用いて、全ての試料のセラミック化を行った。観察前に、1分間、1%のHF中で試料のエッチングを行った。
【0064】
理論によって束縛されるものではないが、連鎖結晶の存在は、例えば亀裂たわみや湾曲亀裂経路を含む強靭化機構を開発する場合における重要な因子である可能性があり、その機構は、観察される高い破壊靱性および高い曲げ強度に寄与する可能性があると考えられる(表1)。選択されたガラスセラミック組成物において、例えば、1.5MPa・m1/2超の破壊靱性と300MPa超の曲げ強度とを達成することができる。
【0065】
実施形態において、機械的強度をさらに向上させるために細工物の表面内に圧縮応力層を作製できるよう、開示されたガラスセラミック生成物または残りのガラスのイオン交換を行うことができる。
【0066】
実施形態において、開示された前記ガラスセラミック組成物では、優れた生体適合性が示された。組成物7~9の表面上の共焦点画像によって細胞付着が明確に観察された。共焦点撮像の前に、MC3T3細胞を1日間培養し、4%ホルムアルデヒドで固定し、次いでAlexa Fluor568ファロイジンおよびDAPIで染色した。
図3A~
図3Dは、それぞれ
図3A、
図3B、
図3Cおよび
図3Dに対応する開示された前記組成物7~10におけるMC3T3細胞成長の共焦点SEM画像を示す。700℃で2時間、次いで800℃で4時間のサイクルを用いて、全ての試料のセラミック化を行った。共焦点撮像の前に、細胞を1日間培養し、4%ホルムアルデヒドで固定し、次いでAlexa Fluor568ファロイジンおよびDAPIで染色した。
【0067】
細胞増殖を支持する例示の組成物7~10の開示されたガラスセラミックの能力は、絶対レベル(
図5A)について、およびTCT対照に対する相対レベル(
図5B)について、培養細胞からのDNAの発現によって示した。ガラスセラミックディスク上でMCT3細胞を培養した。Day4およびDay7において、65℃で一晩、消化緩衝液(125μg/mLのパパイン、2mMのL-システイン、2mMMのEDTA)で細胞を消化させ、Quant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA Kit(Thermo Fisher)を用いてdsDNA量を測定した。培養時間が増加すると共にDNA濃度が増加したことによって、開示された前記組成物の優れた生体適合性の追加的な証拠が提供された。
【0068】
実施形態において、薄い圧延、フロート、鋳造プロセスおよび同種の方法を用いて、開示されたガラスセラミックを製造することが可能であり、例えば、急速プロトタイピング、ポリマー発泡体複製、粒子焼結および同種の方法を用いて、足場を製造することが可能である。細胞成長および硬組織再生を支持するために、所望の形態のガラスセラミックを用いることができる。
【0069】
実施形態において、開示された前記組成物の実現された機械的強度、生体適合性および生体内分解は、ガラス組成物の影響を受けても良い。実施形態において、開示された前記ガラス組成物は、例えば、前駆体ガラスのための主要なガラス形成酸化物としての役割を果たし、かつ、ガラスおよびガラスセラミックのネットワーキング構造を安定化させるように機能することが可能なSiO2をさらに含むことができる。実施形態において、SiO2の濃度は、前駆体ガラスを熱処理してガラスセラミックに転化する(すなわち、セラミック化を行う)場合に二ケイ酸リチウム結晶相を形成するために充分に高くあるべきである。しかし、前記ガラスは、純粋SiO2ガラスまたは高SiO2ガラスの溶融温度(200ポアズ温度)が望ましくなく高いので、あまりに多くのSiO2を含むことはできない。実施形態において、ガラスまたはガラスセラミック組成物は、例えば、100重量%の総重量に対して68~82重量%のSiO2を含むことができる。
【0070】
実施形態において、Al2O3は、ネットワーキング構造に対する安定化を提供することもできる。Al2O3は、機械的特性および化学的耐久性の向上に好都合である。しかし、あまりに多くのAl2O3は、概して、連鎖構造を形成することができない程度に溶融物の粘度を増加させ、二ケイ酸リチウム結晶の分率を低下させる。Al2O3濃度は、好ましくは、例えば1~5重量%の合理的範囲内に維持される。
【0071】
実施形態において、B2O3の添加は、歯科用途に役立つガラスセラミックの向上した耐亀裂性に有益であり得る。さらに、ホウ素濃度がより高くなることによって生体活性組成物の分解率を増加させることができるが、その特性は、骨再生などの用途において所望される可能性がある。
【0072】
Li2Oは、開示された前駆体ガラス組成物中の他の重要な成分である。Li2Oは、二ケイ酸リチウム結晶相を形成するために有利である。Li2Oは、主要な相として二ケイ酸リチウムを有するガラスセラミックを得るために少なくとも8重量%のLi2Oを有することを必要とする。しかし、Li2O含有率があまりに高くなる場合、例えば15重量%を超える場合、前駆体ガラスは、抵抗性が低い非常に流動的なものになり、それによって溶融することまたは形をなすことが困難になる。
【0073】
実施形態において、開示されたガラス組成物およびガラスセラミック組成物は、例えばバルク核形成を生じるための成核剤として、例えば2~6重量%のP2O5を含むことができる。P2O5濃度があまりに低い場合、例えば2重量%未満である場合、前駆体ガラスは結晶化しない。P2O5濃度があまりに高い場合、例えば6重量%を超える場合、前駆体ガラスの形成の間の冷却の際の失透を制御することが困難である可能性がある。
【0074】
実施形態において、ガラスの溶融挙動および生体活性を向上させるために、アルカリ土類酸化物などの二価のカチオン酸化物を用いることもできる。例えば、CaOは、P2O5と化合してアパタイトを形成するか、またはSiO2と化合して珪灰石を形成することが分かった。アパタイトおよび珪灰石の両方は、知られた生体活性セラミックである(前掲のHench,L.L.参照)。
【0075】
実施形態において、0.1~5重量%の量で前駆体ガラス中にNa2Oを含むことによって、前駆体ガラスの溶融温度を低下させることができ、セラミック化サイクルを短くすることができる。さらに、ガラスセラミック物品において、より高い熱膨張(すなわち、CTE)が所望される場合、前駆体ガラス中にNa2Oを含むことによって、セラミック化後の熱膨張を増大させることもできる。
【0076】
実施形態において、前駆体ガラス材料を融合させるために、1300℃超などの高温度で溶融が達成された。実施形態において、セラミック化は、ガラスを結晶化させてガラスセラミック材料とするために用いた溶融ガラスの熱処理であった。
【実施例0077】
以下の実施例は、開示された前記組成物の製造、使用および分析、ならびに上記の概略の手法にかかる方法を示すものである。
【0078】
実施例1
対照例C-1~C-6および実際の例示のガラスセラミック組成物7~15の調製
表1に示した対照および実際の例示のガラスセラミック組成物1~15、ならびに、例えば、シリカ、ホウ酸、アルミナ、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、石灰石、リチア輝石、メタリン酸アルミニウムを含む、示された量におけるそれらのそれぞれのガラス原料材料を、電気炉内で個別に組み合わせて、溶融させた。溶融前に、Turbula(登録商標)ミキサを用いてプラスチックのジャー内で前駆体ガラス原料材料を激しく混合した。次いで、混合物を約650ccの内容積の白金坩堝に移し、700℃で2時間、次いで800℃で4時間加熱し、次いでガラス溶融物を鋼板の上に注ぎ、500℃で焼鈍した。
【0079】
実施例2
ガラスセラミックディスクの作製
セラミック化部からガラスセラミックディスクを作製した。核形成のために700℃で2時間、次いで結晶成長のために800℃で4時間のサイクルを用いて、電子炉内で前駆体ガラスパティのセラミック化を行った。セラミック化後、ダイヤモンドドリルを用いてディスク(直径12.5mm×厚さ2.0mm)に円筒形の穴を開け、次いで、CeO2スラリーを用いて粉砕し、研磨して、1.0マイクロメートルの仕上げとした。仕上げられた全てのディスクを10分間超音波処理器内で超音波処理によって洗浄した。
【0080】
実施例3
実施例1の生体活性組成物による骨細胞の付着および成長の方法
24ウェル組織培養処理マイクロプレートのウェル内に(上記実施例1の組成物から作製された)実施例2のガラスセラミックディスクを配置した。各組成物は二重ディスクを有する。次いで、前記ウェル内、およびいずれのディスクも有さないいくつかのウェル(Tissue Culture Treated(TCT)対照)内にMC3T3細胞を播種した(20K/2mL)。マイクロプレートを、1日間、4日間または7日間培養した。共焦点撮像の前に、1日間の培養のマイクロプレート内の細胞を4%ホルムアルデヒドで固定し、次いでAlexa Fluor568ファロイジンおよびDAPIで染色した。
【0081】
図4Aおよび
図4Bは、基準となる生体活性ガラス対照組成物1(C-l)およびインビトロにおける対照(「Tissue Culture Treated」(TCT)ウェル)に対する、例示の組成物7、8、9および19(表1参照)の開示された生体活性ガラスセラミックディスク上におけるMC3T3細胞のDay1における付着および増殖、すなわち、絶対レベル(絶対細胞数;4A)および相対レベル(相対細胞数;4B)を示す。
【0082】
図5Aおよび
図5Bは、開示された組成物7~10についての細胞増殖の結果を示す。Day4(D4)およびDay7(D7)の培養プレート内の細胞を、65℃で16時間、消化緩衝液(125μg/mLのパパイン、2mMのL-システイン、2mMのEDTA)で消化させ、「Quant-iT」「PicoGreen」dsDNA Kit(Thermo Fisher)を用いてdsDNA量を測定した。培養時間が増加すると共にDNA濃度が増加することによって、それらの優れた生体適合性の追加的な証拠が提供される。
【0083】
MC3T3細胞をパパインで消化させ、PicoGreenアッセイを用いてDNAの量を測定した。D4またはD7は、Day4またはDay7(「細胞培養の4日目または7日目」など)を指す。TCTは、Corning社から入手可能な組織培養処理マイクロプレート基板を指す。24ウェル組織培養処理マイクロプレートのウェル内にガラスセラミックディスクを配置した。各組成物は二重ディスクを有する。次いで、前記ウェル内、およびいずれのディスクも有さないいくつかのウェル(TCT対照)内にMC3T3細胞を播種した(20K/2mL)。マイクロプレートを、4日間または7日間培養した。Day4およびDay7において、16時間、振盪(60rpm)によって、湿潤環境内において、65℃で、消化緩衝液(125μg/mLのパパイン、2mMのL-システイン、2mMMのEDTAを含むD-PBS)で細胞を消化させた。ディスク上で消化溶液をピペットで吸入、および吐出することによって、ガラスセラミックディスクから溶解DNAを除去する試みを行った。回収した消化溶液の遠心分離を短時間行って、残りのあらゆる粒子を除去した。製造業者の使用説明書に従って、「Quant-iT」「PicoGreen」dsDNA Kit(Thermo Fisher)を用いて、上清中のdsDNA量を測定した。
【0084】
材料:
MC3T3E1 Subclone14(ATCC(登録商標)CRL2594(商標))(atcc.org/products/all/CRL-2594.aspx参照)。
【0085】
「Quant-iT」「PicoGreen」dsDNA Kit(Invitrogen、#P11496)。このキットは、「Quant-iT」「PicoGreen」dsDNA Reagent(10バイアル、各々100μLアリコートを含む)、25mLの20×TE緩衝液、1mLの100μg/mLのラムダDNA(dsDNA標準)、パパイン(Sigma-Aldrich、#P4762-25MG)、L-システイン(Sigma-Aldrich、#C1276-10G)、EDTA(Sigma-Aldrich、#E6511)、D-PBS(Thermo Fisher、#14190)、65℃に設定された振盪機、およびプレートリーダを含む。
【0086】
各種の具体的な実施形態および手法を参照して本開示を記載した。しかし、本開示の範囲内に留まりつつ多くの変更および修正が可能であることを理解すべきである。
【0087】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0088】
実施形態1
二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、
珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック組成物。
【0089】
実施形態2
前記第1結晶相および前記第2結晶相が、組み合わせて、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含む、実施形態1記載のガラスセラミック組成物。
【0090】
実施形態3
前記組成物の全体100重量%に対して、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含む、実施形態1から2のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0091】
実施形態4
前記第1結晶相および前記第2結晶相が、組み合わせて、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~60重量%のSiO2、
1~3重量%のAl2O3、
2~6重量%のP2O5、
4~8重量%のCaO、
7.5~12.5重量%のLi2O、
0.5~2重量%のNa2O、
1~4重量%のZrO2、および
0.2~0.8重量%のF-、
の原料を含む、実施形態1から3のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0092】
実施形態5
前記組成物が200MPaから500MPaの高い強度を有する、実施形態1から4のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0093】
実施形態6
前記組成物が1.4から2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性を有する、実施形態1から5のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0094】
実施形態7
前記組成物が、200MPaから500MPaの高い強度と、1.4から2.0MPa・m1/2の高い破壊靱性との組み合わせを有する、実施形態1から6のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0095】
実施形態8
前記第1結晶相が二ケイ酸リチウムを含み、前記第2結晶相がアパタイト、珪灰石またはそれらの混合物を含む、実施形態1から7のいずれかに記載のガラスセラミック組成物。
【0096】
実施形態9
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含むガラスセラミック前駆体ガラス組成物。
【0097】
実施形態10
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含む前駆体ガラス混合物のセラミック化を、
前記混合物を650~750℃で0.5~10時間加熱し、次いで750~850℃で0.5~20時間加熱することによって行う工程
を含む、実施形態1から8のいずれかに記載のガラスセラミック組成物を作製する方法。
【0098】
実施形態11
得られた前記ガラスセラミック組成物のイオン交換を行って、前記物品の少なくとも一方の表面上に少なくとも1つの圧縮応力層を作製し、機械的強度を増加させる工程をさらに含む、実施形態10記載の方法。
【0099】
実施形態12
二ケイ酸リチウムを含む第1結晶相と、
珪灰石、フルオロアパタイト、クリストバライト、β-石英、リチオホスフェートまたはそれらの組み合わせの内の少なくとも1種からなる群から選択される第2結晶相と、
を含むガラスセラミック、および
少なくとも1つの生きた骨芽細胞、
を含む生体活性組成物。
【0100】
実施形態13
前記ガラスセラミック組成物が、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~75重量%のSiO2、
1~5重量%のAl2O3、
1~8重量%のP2O5、
2~10重量%のCaO、
5~20重量%のLi2O、
0.5~5重量%のNa2O、
0.5~8重量%のZrO2、および
0.1~1.0重量%のF-、
の原料を含む、実施形態12記載の生体活性組成物。
【0101】
実施形態14
前記ガラスセラミック組成物が、
前記組成物の全体100重量%に対して、
50~60重量%のSiO2、
1~3重量%のAl2O3、
2~6重量%のP2O5、
4~8重量%のCaO、
7.5~12.5重量%のLi2O、
0.5~2重量%のNa2O、
1~4重量%のZrO2、および
0.2~0.8重量%のF-、
の原料を含む、実施形態12から13のいずれかに記載の生体活性組成物。
【0102】
実施形態15
前記組成物の全体100重量%に対して、0.1~10重量%のB2O3の原料をさらに含む、実施形態14記載の生体活性組成物。
【0103】
実施形態16
実施形態12から14のいずれかに記載の生体活性組成物を適切な液体培地に接触させる工程、
を含む、骨芽細胞を培養する方法。
【0104】
実施形態17
前記接触によって前記生体活性組成物の表面上で前記骨芽細胞の増殖が生じる、実施形態16記載の方法。
【0105】
実施形態18
前記接触によって、前記適切な液体培地中において前記骨芽細胞の増殖が生じる、実施形態16記載の方法。
【0106】
実施形態19
前記適切な液体培地が模擬体液組成物を含む、実施形態18記載の方法。
【0107】
実施形態20
実施形態1記載のガラスセラミック組成物を含む物品。