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特開2023-26194再生ポリエステル繊維及び再生ポリエステル繊維を含有する織編物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026194
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】再生ポリエステル繊維及び再生ポリエステル繊維を含有する織編物
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20230216BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
D01F6/62 302A
C08G63/183
D01F6/62 306F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131955
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】天満 悠太
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AB05
4J029AD01
4J029AD02
4J029AE02
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA05
4J029BA10
4J029BD06A
4J029BF09
4J029BF26
4J029CA02
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB05B
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CH02
4J029DB02
4J029GA02
4J029GA12
4J029JA061
4J029JA091
4J029JA181
4J029JB171
4J029JE162
4J029JF032
4J029JF181
4J029JF321
4J029JF361
4J029JF371
4J029JF47
4J029JF571
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KG01
4J029KG02
4L035AA05
4L035BB31
4L035GG08
4L035JJ05
(57)【要約】
【課題】 リサイクルポリエステル原料を高比率で含有する再生ポリエステル樹脂を少なくとも一部に使用し、さらにセラミック微粒子を含有したポリエステル繊維であって、バージンポリエステル樹脂のみを使用したときと同等の機械的特性値を有し、また生産性よく得ることができる再生ポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】 リサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有する再生ポリエステル樹脂とセラミック微粒子を含有するポリエステル繊維であって、セラミック微粒子はポリエステル繊維中に3~10質量%含有されており、
前記再生ポリエステル樹脂が、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有する再生ポリエステル樹脂とセラミック微粒子を含有するポリエステル繊維であって、セラミック微粒子はポリエステル繊維中に3~10質量%含有されており、
前記再生ポリエステル樹脂が、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
【請求項2】
前記再生ポリエステル繊維を構成する単繊維が芯部と鞘部からなる芯鞘構造を呈しており、芯部の樹脂中にセラミック微粒子を3質量%以上含有してなる請求項1に記載の再生ポリエステル繊維。
【請求項3】
前記セラミック微粒子がチタン化合物である、請求項1または2に記載の再生ポリエステル繊維。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の再生ポリエステル繊維を含有する織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済ポリエステル製品やポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂を含むリサイクルポリエステル原料に由来する成分を含有する再生ポリエステル樹脂を用いた再生ポリエステル繊維であって、盛夏に着用しても太陽光を遮り、優れた清涼感を有する繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストなため、繊維やフィルム、ペットボトル等の成形品等に幅広く用いられている。
これらのポリエステル製品は、製造段階や加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多いが、焼却する場合には高熱が発生するため焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなるという問題がある。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないため半永久的に残ることになる。
近年、ゴミとして捨てられたプラスチック容器などが河川を経由して海洋へ流出し、波や潮流の作用で細かく破砕されたマイクロプラスチックが海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視され、使用量の削減や生分解性プラスチックに切り替える動きが全世界的に起きている。
【0003】
このようなプラスチック製品の使用量を削減する観点や、環境問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。ポリエステル製品に関しても、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法や一度市場に出回り廃棄された製品を回収、原料として再使用する方法が検討されている。
特に近年、繊維製品については、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
【0004】
リサイクルポリエステル原料をリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下「DMT」と表記することがある。)とエチレングリコール(以下「EG」と表記することがある。)に分解する方法(特許文献1)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2)、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法(特許文献3)等が提案されている。
【0005】
また、一旦製品となったPETボトルなどを再生する際に問題になるものとしては、ポリエステル樹脂中に添加した添加剤やボトル本体に付属するものとして、キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、中栓やライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、接着剤、印字用インクなどがある。
再生工程の前処理としては、まず、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂や金属などを除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベルなどを取り除く。さらにキャップなどに由来するアルミ片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質やかびなどの成分を除き、比重によりポリプロピレンやポリエチレンなどの異種成分を分離することを行う。
【0006】
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特に、前記したようなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂を完全に分離することは困難であった。このため、上記したような特許文献1~3に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂を得たとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものではなく、バージンポリエステル樹脂同等の品質を有する製品を得ることはできなかった。しかも、特許文献1~3のような方法では、回収装置の設置、運転、維持等に多額のコストもかかり、実用性という点でも改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献4記載の発明には、ポリエステル屑をエチレングリコールで解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターでろ過した後、再重合反応を行う方法が記載されている。そして、得られた再生ポリエステル樹脂は、異物の混入量が少なく、加工時の操業性に優れるものであることが示されている。しかしながら、この方法においても、上記のような非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えておらず、異物の混入量が十分に低減できたものではなかった。
このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えており、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の製品を得ることが可能で、かつ品質の高い製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂は未だに得られていない。
【0008】
中でもポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を得る際には、異物の混入量や熱安定性が生産性に大きく影響を及ぼす。繊維の形状を複雑にしたり、細繊度化するほど、これらの影響を大きく受けることとなり、生産が困難となったり、得られる繊維の機械的特性値が劣るものになるという問題点がある。
【0009】
さらに、環境問題への意識の高まりから、リサイクル原料の使用率を高くした再生ポリエステル樹脂への需要が高まっている。リサイクル原料の使用率を80%以上、さらにはリサイクル原料の使用率を100%とした再生ポリエステル樹脂においては、前記したような異物混入の問題が顕著になり、また、熱安定性にも劣るものとなり、当然のことながら、溶融紡糸を行い、セラミック微粒子を含有する繊維を得ることはより困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭42-8855号公報
【特許文献2】特開昭48-62732号公報
【特許文献3】特開昭60-248646号公報
【特許文献4】特開2005-171138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂を少なくとも一部に使用し、さらにセラミック微粒子を含有したポリエステル繊維であって、バージンポリエステル樹脂のみを使用したときと同等の機械的特性値を有するとともに、生産性よく得ることができる再生ポリエステル繊維を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(1)~(4)を要旨とするものである。
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有する再生ポリエステル樹脂とセラミック微粒子を含有するポリエステル繊維であって、セラミック微粒子はポリエステル繊維中に3~10質量%含有されており、
前記再生ポリエステル樹脂が、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることを特徴とする再生ポリエステル繊維。
(2)前記再生ポリエステル繊維を構成する単繊維が芯部と鞘部からなる芯鞘構造を呈しており、芯部の樹脂がセラミック微粒子を3質量%以上含有してなる(1)の再生ポリエステル繊維。
(3)前記セラミック微粒子がチタン化合物である、(1)または(2)の再生ポリエステル繊維。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の再生ポリエステル繊維を含有する織編物
【発明の効果】
【0013】
本発明の再生ポリエステル繊維は、少なくとも一部に用いる再生ポリエステル樹脂が、異物の混入量が少なく、かつa)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有しながらも、カルボキシル末端基濃度およびジエチレングリコールの含有量が特定の範囲を満足するものであるため、溶融紡糸により繊維を得る工程において、長期の連続運転が可能となり、生産性よく製品を得ることができる。さらに、本発明の再生ポリエステル繊維は、バージンポリエステル樹脂を用いたものと同等の機械的特性値を有し、かつ涼感性を有するものであるため、本発明の再生ポリエステル繊維を用いた織編物は、様々な衣料用途に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】単成分型の本発明の再生ポリエステル繊維(単繊維)の横断面の一実施態様を示す模式図である。
図2】芯鞘型構造の芯部及び鞘部の両方にセラミック微粒子を含有する本発明の再生ポリエステル繊維(単繊維)の横断面の一実施態様を示す模式図である。
図3】芯鞘型構造の芯部のみにセラミック微粒子を含有する本発明の再生ポリエステル繊維(単繊維)の横断面の一実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の再生ポリエステル繊維は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂とセラミック微粒子を含有するものである。
【0016】
本発明の再生ポリエステル繊維を構成する再生ポリエステル樹脂(以下、「本発明樹脂」と表記することがある)は、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む。
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていても良いし、あるいは溶融してペレット化されていても良い。
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであっても良い。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0017】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでも良いし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体の形態であっても良い。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
【0018】
本発明における再生ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエステル原料の使用率が高い再生ポリエステル樹脂である。本発明における再生ポリエステル樹脂は、上記a)及びb)の少なくとも1種であるリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有するものであり、中でも85質量%以上含有することが好ましい。そして、本発明における再生ポリエステル樹脂は、後述する本発明の製造方法により得ることができるが、リサイクルポリエステル原料に由来する成分が100%、すなわち、リサイクル原料のみからなる再生ポリエステル樹脂も容易に得ることが可能である。
【0019】
本発明樹脂は、下記に示す(a)、(b)の特性値を有し、(c)の特性値を有することが好ましいものである。
(a)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下
(b)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下
(c)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下
これらの特性値を有する再生ポリエステル樹脂は、後述する再生ポリエステル樹脂の製造方法により得ることができる。
【0020】
まず、本発明樹脂は(a)の特性値として、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、中でも3.5モル%以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法により得られる再生ポリエステル樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。再生ポリエステル樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量を4モル%以下とすることにより、非結晶部が少なくなり、熱安定性にすぐれた性能を有している。このため、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を得ることが可能となる。
なお、ジエチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0021】
本発明における再生ポリエステル樹脂は、ポリエステルを構成する全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールは、全グリコール成分の80モル%以上であることが好ましく、中でも85モル%以上であることが好ましい。エチレングリコールの含有量が80モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなりやすい。
また、本発明樹脂は、ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、80モル%以上がテレフタル酸であることが好ましい。つまり、酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものである。酸成分中のテレフタル酸の割合は80モル%以上であり、中でもテレフタル酸の割合は90モル%であることが好ましい。テレフタル酸の割合が80モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し非晶性のものとなりやすいため好ましくない。
【0022】
また、再生ポリエステル樹脂における、全グリコール成分中のエチレングリコール、ジエチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体等を用いることができる。
【0023】
再生ポリエステル樹脂における、テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0024】
本発明樹脂は、特に種類は限定されないが、その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とするものであることが好ましい。
特に、後記の再生ポリエステル樹脂の製造方法においては、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、これらの成分が共重合されたポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、再生ポリエステル樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分又はグリコール成分として、上記に示す成分が共重合されていても良い。これらの成分は2種以上含まれていても良い。
【0025】
本発明樹脂は、(b)の特性値として、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、中でも30当量/t以下であることが好ましく、さらには25当量/t以下であることが好ましい。
本発明樹脂は、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることにより、耐熱性に優れた性能を有しており、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を得ることが可能となる。なお、カルボキシル末端基濃度の下限値は、例えば5当量/t程度とすることができるが、これに限定されない。
【0026】
本発明樹脂の極限粘度は、特に限定されないが、通常は0.44~0.80程度であることが好ましい。なお、極限粘度(IV)は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0027】
本発明樹脂は(c)の特性値として、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることが好ましく、0.5MPa/h以下であることが好ましく、中でも0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示すものである。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
【0028】
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出するものである。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
【0029】
本発明樹脂は、後述する製造方法を採用することにより、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量を低減することができるため、(c)の特性値である、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度を0.6MPa/h以下にすることが可能である。そのため、溶融紡糸時の糸切れ回数を低減することができ、バージンポリエステル樹脂を用いたときと同様に溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度等の機械的特性値に優れた繊維を製造することも可能となる。
【0030】
前記の測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
【0031】
本発明では、必要に応じて、測定結果に実質的に影響を与えない範囲内において、フィルターに補強材を付加しても良い。上記の測定方法では、フィルターに極めて高い圧力が加わるため、フィルター単体ではフィルターが変形又は破損するおそれがある。そのような場合は、フィルターを補強材で支持することが好ましい。補強材としては、網目状の金属部材等を用いることができる。より具体的には、フィルターの変形を防止できる強度を有し、かつ、測定結果に実質的に影響を及ぼさない粗い網目を有する金属製フィルターを補強材として好適に用いることができる。そして、このような補強材を上記フィルターの下流側に積層することにより用いることができる。
【0032】
本発明樹脂中には、重縮合触媒や用途に応じて添加される各種添加剤が含まれていてもよい。
まず、重縮合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。
【0033】
重縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して5×10-5モル/unit以上とすることが好ましく、その中でも6×10-5モル/unit以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10-3モル/unit程度とすることができるが、これに限定されない。
【0034】
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重縮合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
【0035】
用途に応じて添加される各種添加剤としては、溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物、樹脂の外観を改良することができる色調調整剤、樹脂の結晶性を向上させる結晶核剤等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0037】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0038】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0039】
色調調整剤としては、酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、染料(青系、紫系、赤系)、銅フタロシアニン系化合物等の色調調整剤が挙げられる。中でも、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、酢酸コバルトや染料が好ましい。
【0040】
また、青系染料および/または赤系染料、紫系染料を含有すると、色調が良好となり好ましい。
【0041】
染料としては、COLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 122、SOLVENT BLUE 45等の青系の染料、SOLVENT RED 111、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、PIGMENT RED 263、VAT RED 41 等の赤系の染料、DESPERSE VIOLET 26、SOLVENT VIOLET 13、SOLVENT VIOLET 37、SOLVENT VIOLET 49等の紫系染料が挙げられる。中でも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 45、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、SOLVENT VIOLET 49が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0042】
結晶核剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、合成ケイ酸及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等;カルボキシル基の金属塩を有する低分子有機化合物、カルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物、高分子有機化合物等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク、高分子量有機化合物が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0043】
本発明の再生ポリエステル繊維は、本発明樹脂とセラミック微粒子を含有するものである。
また、本発明の再生ポリエステル繊維は、繊維を構成する樹脂として、本発明樹脂のみを用いたもの、本発明樹脂とそれ以外の樹脂を用いたもののいずれであってもよいが、本発明樹脂を40質量%以上含有するものであることが好ましく、中でも50質量%以上含有することが好ましい。再生ポリエステル樹脂の含有量が40質量%未満であると、環境問題に配慮するという目的を果たすことができないものとなる。
再生ポリエステル樹脂とそれ以外の樹脂を用いる際には、両樹脂を混合して用いたり、再生ポリエステル樹脂とそれ以外の樹脂をそれぞれ用いた複合形態を呈する繊維とすることができる。
【0044】
上記した本発明樹脂以外の樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂(バージンの樹脂)を用いることができるが、中でもポリエステル樹脂が好ましい。
【0045】
そして、本発明の再生ポリエステル繊維において、セラミック微粒子は、本発明樹脂、それ以外の樹脂のいずれに含有されていてもよい。
本発明の再生ポリエステル繊維にセラミック微粒子を含有させる方法としては、本発明の再生ポリエステル繊維を溶融紡糸する際にこれらの樹脂に直接添加して溶融混練する方法や、予めこれらの樹脂にセラミック微粒子を高濃度に添加したマスターチップをベース樹脂となるこれらの樹脂に溶融混練して溶融紡糸に用いる方法、もしくはこれらの樹脂の重合時に添加したものを溶融紡糸に用いる方法等が挙げられる。中でも本発明では、後述する本発明樹脂の製造方法の工程(3)において、重合触媒と併せて添加剤として添加したものを溶融紡糸に用いることが好ましい。
【0046】
本発明の再生ポリエステル繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであってもよいが、中でも単繊維繊度が2~7dtex、単繊維数が10~60本、総繊度が30~300dtexのマルチフィラメントであることが好ましい。そして、構成する単繊維の好ましい形態について図面を用いて説明する。
図1は、単繊維の形態が単成分型の再生ポリエステル繊維の一実施態様を示す模式図である。つまり、各単繊維が、本発明樹脂中にセラミック微粒子2を含有させた樹脂組成物1からなるものである。もしくは、本発明樹脂とそれ以外の樹脂をブレンドした樹脂中にセラミック微粒子を含有させた樹脂組成物1からなるものである。
【0047】
図2は、単繊維の形態が芯鞘構造を呈する再生ポリエステル繊維の一実施態様を示す模式図であり、各単繊維がセラミック微粒子2を含有させた樹脂組成物1を芯部及び鞘部の両方に用いたものである。このとき、芯部、鞘部の樹脂ともに、本発明樹脂のみであってもよいし、本発明樹脂とそれ以外の樹脂をブレンドしたものであってもよい。また、芯部と鞘部のそれぞれにおいて、本発明樹脂とそれ以外の樹脂を用いたものであってもよい。中でも、芯部、鞘部の樹脂ともに、本発明樹脂のみを用いることが好ましい。また、芯部及び鞘部の両方にセラミック微粒子を含有する態様においては、鞘部に対し、芯部に高濃度でセラミック微粒子を含有することが好ましい。
【0048】
図3は、図2と同様に単繊維の形態が芯鞘構造を呈する再生ポリエステル繊維の一実施態様を示す模式図であるが、各単繊維がセラミック微粒子2を含有させた樹脂組成物1を芯部、セラミック微粒子を含有しない樹脂組成物3を鞘部とするものである。このとき、芯部、鞘部の樹脂ともに、本発明樹脂のみであってもよいし、本発明樹脂とそれ以外の樹脂をブレンドしたものであってもよい。また、芯部と鞘部のそれぞれにおいて、本発明樹脂とそれ以外の樹脂を用いたものであってもよい。中でも、芯部、鞘部の樹脂ともに、本発明樹脂のみを用いることが好ましい。
【0049】
前記の単繊維の形態が芯鞘構造を呈する再生ポリエステル繊維においては、前記芯部と前記鞘部との質量比が芯/鞘=10/90~90/10であることが好ましく、中でも20/80~80/20であることが好ましく、さらには25/75~75/25であることがより好ましい。
【0050】
本発明の再生ポリエステル繊維に含有するセラミック微粒子としては、チタン化合物を用いることが好ましい。チタン化合物としては、TiO、TiO、TiC、TiN、TiCl、TiCl等が挙げられるが、中でも、汎用に用いられ、遮熱性の観点から、TiOを用いることが好ましい。
【0051】
本発明の再生ポリエステル繊維中のセラミック微粒子の含有量は、繊維質量に対して3~10質量%であり、中でも4~8質量%であることが好ましい。セラミック微粒子の含有量が3質量%より少ない場合には、目的とする涼感性が得られず、一方、10質量%を超える場合には、涼感性の効果が飽和に達するばかりか、繊維の生産性が悪くなり、しかも十分な強伸度が得られない。
また、芯鞘構造を呈する本発明の再生ポリエステル繊維においては、芯部にセラミック微粒子を3質量%以上含有していることが好ましく、中でも4質量%以上含有していることが好ましく、特に5質量%以上含有していることが好ましい。
【0052】
本発明再生ポリエステル繊維は高配向未延伸糸(POY)、延伸糸(FDY)のいずれであってもよい。
本発明の再生ポリエステル繊維は、上記したような特性値を満足する本発明樹脂を用いているため、バージンポリエステル樹脂を用いた場合と同様に溶融紡糸及び延伸工程を糸切れなく操業性よく行うことができる。そして、バージンポリエステル樹脂を用い、セラミック微粒子を含有するポリエステル繊維と同等の性能を有するものとすることができる。このため、本発明の再生ポリエステル繊維の強度はPOYの場合、1.5cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは1.7cN/dtex以上である。FDYの場合、1.8cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは2.0cN/dtex以上である。上記の強度を満足することによって、糸切れを起こすことなく製織又は製編することができる。
なお、本発明の再生ポリエステル繊維は、必要に応じて延伸工程や仮撚工程などの加工を施した加工糸としてもよい。
【0053】
次に、本発明の織編物は、本発明の再生ポリエステル繊維を少なくとも一部に含有する織物又は編物である。本発明の織編物中に含まれる本発明の再生ポリエステル繊維の含有量は、25質量%以上であることが好ましく、中でも35質量%以上であることが好ましい。
本発明の織編物は、特に組織など限定されない。織物としては、織、綾織(ツイル)、朱子織、ドビー織、二重織などが挙げられる。本発明の編物においても、編物の組織も特に限定されず、天竺、スムース、フライス、ピケ等の丸編、シングルトリコット、ハーフトリコット等の経編等が挙げられる。
【0054】
次に、本発明における再生ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、(1)~(4)に示す工程を順に行うことが重要である。
(1)前記原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る工程、
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【0055】
まず、(1)の解重合工程では、リサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
なお、本発明における再生ポリエステル樹脂の製造方法において、解重合体の溶融粘度は、解重合時の熱処理温度で測定した値であり、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用いて測定するものである。
【0056】
また、リサイクルポリエステル原料に添加するエチレングリコールは、公知の方法で得られたものや市販のものを使用することができる。
【0057】
エチレングリコールの添加量は、リサイクルポリエステル原料100質量%中の1~20質量%とすることが好ましく、2~10質量%とすることがより好ましい。
エチレングリコールの添加量が上記より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。
【0058】
(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入する際には、撹拌しながら全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるようにして、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行い、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
本発明の製造方法においては、この工程が重要である。つまり、本発明においては、エチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行うが、このとき、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が、1.08~1.40となるようにしてエチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行うものである。
【0059】
なお、本発明の製造方法により得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクルポリエステル原料に由来する成分の含有量が100質量%未満であって、80質量%以上である場合は、(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料に加えて、エチレンテレフタレートオリゴマーを添加して解重合を行ってもよい。エチレンテレフタレートオリゴマーを添加する際にも、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるようにすることが必要である。
【0060】
エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
【0061】
(1)の工程においては、上記解重合を行って得られる解重合体の溶融粘度を10~1500mPa・sとすることが重要である。
全グリコール成分/全酸成分のモル比を調整して解重合を行うこと、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料に含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができる。
【0062】
そして、重縮合触媒や用途に応じて添加される各種添加剤を加えて混練する(3)の工程において、重縮合触媒や各種添加剤を凝集させることなく、均一に混練することが可能となる。
その結果、(4)の工程である重縮合反応において、本発明の特性値として、ジエチレングリコールの含有量(共重合量)やカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ異物の混入量が少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
【0063】
本発明の(1)の工程においては、上記した解重合反応により、リサイクルポリエステル原料はモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。
【0064】
解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外であると、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定する、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また、平均昇圧速度が高いものとなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、リサイクルポリエステル原料中の各種の無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われないため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができず、(4)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、その結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
【0065】
また、(1)の解融合反応工程において、得られる解重合体の溶融粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低くなりすぎて、異物のろ過時に配管とフィルター接合部分から液漏れが生じやすく、ろ過効率が悪く、異物を十分に濾過できず、生産性も悪化する。一方、解重合体の溶融粘度が1500mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎるため、解重合反応時の攪拌翼への負荷が大きくなり、さらに、異物のろ過時の昇圧も大きくなるため生産性が悪化する。
【0066】
本発明の製造方法において、(1)の工程で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
【0067】
また、エステル反応器を使用して解重合反応を行う際には、リサイクルポリエステル原料とエチレングリコールを添加して行う解重合反応を複数回に分けて行う方法や、エチレングリコール中にリサイクルポリエステル原料を少量ずつ添加する方法を採用することが好ましい。
【0068】
解重合反応を行う際には、エステル反応器に代えて、溶融押出機を使用してもよい。溶融押出機を用いる方法では、押出機内でポリマーがシールされて押し出されるため、空気(特に酸素)と接触することがないためにポリマーの酸化分解が生じることなく、色調劣化、カルボキシル末端基の増加に伴う溶融ポリマーの粘度低下といった問題も発生しない。しかも、溶融押出機を用いると、常圧、加圧、減圧などのあらゆる圧力条件で反応させることができる。
溶融押出機としては、一軸の押出機、二軸の押出機のいずれであってもよいが、二軸押出機を利用する方が上記メリットが得られやすいため好ましい。
【0069】
さらに、(1)の工程で溶融押出機を使用する際には、押出機内部にエチレングリコールを供給することで、押出機内部で解重合反応が進行する。リサイクルポリエステル原料を供給するとき、エチレングリコールを添加しつつ溶融押出機に通すことで低粘度化させやすく、先端ノズルからの吐出がスムーズとなる。また、圧力条件を変化させて低粘度化させることで溶融押出機の溶融温度(解重合反応の温度)を下げることもできる。
【0070】
解重合体の溶融粘度を本発明の範囲内のものにするには、解重合時の熱処理温度、熱処理時間、圧力等を適宜調整することにより可能となる。
【0071】
(1)の工程で行う解重合時の反応温度は、反応器や溶融押出機の内温を220~285℃の範囲に設定して行うことが好ましく、中でも内温を245~280℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が220℃未満の場合には、解重合体の溶融粘度を1500mPa・s以下にするには、長時間の熱処理が必要となり、操業性が悪くなるとともに得られる再生ポリエステル樹脂の色調が悪化したり、ジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
一方、反応温度が285℃を超える場合は、解重合体の溶融粘度が低くなりすぎたり、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
なお、解重合時の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ジエチレングリコールの副生量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
【0072】
(2)の工程においては、(1)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(1)の工程の条件で解重合反応を行い、特定範囲の溶融粘度の解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料の使用量が多い場合であっても、これらの原料中に多く含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われる。このため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、これらの析出した異物をもれなくフィルターで捕捉し、異物の混入量の少ない濾液を得ることができる。
濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、解重合体中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧や切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となり、また、操業性も悪化する。
【0073】
また、本発明の製造方法の(2)の工程で使用できるフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
【0074】
そして、本発明の製造方法の(3)の工程においては、上記の工程(2)を経て得られた濾液に、前記したような重縮合触媒を添加し、混練し、反応生成物を得る。(3)の工程では、各種用途に応じて添加する添加剤も、重縮合触媒とともに添加し、混練することが好ましい。なお、各種用途に応じて添加する添加剤は、前記したものを用いることができる。そして、前述したように、本発明の再生ポリエステル繊維に含有させるセラミック微粒子も(3)の工程で添加剤として添加することができる。
(3)の工程での混練を行う際の温度は、(4)の工程で重縮合反応を行う温度のプラスマイナス10℃の範囲内とすることが好ましい。
【0075】
次に(4)の工程として、重縮合反応槽において、(3)の工程で得られた反応生成物に、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
重縮合反応温度が260℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなったり、重縮合反応が進まず、再生ポリエステル樹脂を得ることができない。
重縮合反応温度は、中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化したり、熱分解により末端基量(COOH)が高くなるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、285℃以下とすることが好ましい。ここで得られる再生ポリエステル樹脂の極限粘度は0.44~0.80であることが好ましい。
【0076】
本発明における再生ポリエステル樹脂は、前記したように異物の含有量が比較的少なく、バージンポリエステル樹脂と同等の特性を有しているため、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいても糸切れのトラブルが生じにくく、生産性良く芯鞘複合マルチフィラメント糸を得ることができる。
【0077】
次に、本発明の再生ポリエステル繊維及び織編物の製造方法を説明する。
以下は、図2に示すように単繊維の形態が芯鞘構造を呈し、芯部と鞘部の両方にセラミック微粒子を含有する様態である本発明の再生ポリエステル繊維の製造方法の一実施態様である。
該再生ポリエステル繊維は、通常の複合紡糸装置を用いて行うことができる。溶融複合紡糸に際しては、芯鞘型の紡糸口金を用い、一般的には200℃~300℃の紡糸温度で複合紡糸を行えばよい。具体的には、本発明樹脂にセラミック微粒子を含有させた樹脂組成物を準備し、芯部と鞘部の質量比が前記したように芯/鞘=10/90~90/10となるよう供給する。そして、紡糸温度280~295℃、紡糸速度2900~3100m/分の条件で紡糸することで、芯鞘構造を呈した本発明の再生ポリエステル繊維が得られる。なお、紡糸後は、延伸温度70~90℃、延伸倍率1~2倍、熱処理温度140~180℃にて延伸や熱処理を施してもよい。
本発明の織物及び編物は、得られた本発明の再生ポリエステル繊維に必要に応じて延伸工程や仮撚工程などの加工を施した後、該再生ポリエステル繊維を一部に用いて製織あるいは、製編することで得られる。
【実施例0078】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)解重合体の溶融粘度
製造工程(1)で得られた解重合体を、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用い、粘度計内部のトルクセンサーが検出しているトルクが20±5%、そして、解重合時の処理温度と同じ温度で測定した。
(b)極限粘度
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
(c)ポリエステル樹脂の組成
得られた再生ポリエステル樹脂を、重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が1/11の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製JNM-ECZ400R/S1型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
【0079】
(d)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(e)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
得られた再生ポリエステル樹脂を、エクストルーダーにて300℃で溶融し、エクストルーダーの先端にフィルターとして、ステンレス鋼製綾畳織フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm、粘性抵抗係数(m-1):2.60×10、慣性抵抗係数:5.14×10、上條精機社製)をセットし、さらにその背面(下流側)に補強材(ステンレス製平織金網(呼び寸法メッシュ:40メッシュ、織り方:平織、線径:0.21mm(株)上條精機製)を積層した後、ポリマー吐出量を29.0g/分として、フィルター圧力を昇圧試験機;アサヒゲージ社製「MES-Y44D型」検出器を用いて測定する。前記の昇圧試験機を用いた昇圧試験を12時間連続して行い、昇圧試験を始める際の初期圧力値(MPa)(ポリエステル樹脂がフィルターを通り始めてから5~10分の間の圧力の最小値を初期圧力とする。)と、12時間経過時点の最終圧力値(MPa)の値から、下記計算式により平均昇圧速度を算出した。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
【0080】
(e)紡糸性
部分配向未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1錘あたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○・・糸切れ回数が0回であった。
△・・糸切れ回数が1~2回であった。
×・・糸切れ回数が3回以上であった。
(f)強伸度
部分配向未延伸糸の強伸度をテンシロンRTC-1210(オリエンテック社製)を用いてJIS L 1013に基づいて測定した。
【0081】
〔再生ポリエステル樹脂の製造〕
再生ポリエステル樹脂A
リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)23.1質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを2.6質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、34.6質量部のリサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)を約30分かけて定量投入したのち、エチレングリコール3.9質量部を追加で投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.35となるように投入した。
その後、230℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行い、230℃での溶融粘度が80mPa・sの解重合体を得た。
そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターを通過させることにより濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンが5.0質量%となるよう二酸化チタンのEGスラリーを加え、温度270℃で混練し、反応生成物を得た。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度270℃で2.5時間、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂A(極限粘度:0.73)を得た。
【0082】
再生ポリエステル樹脂B
二酸化チタンが0.3質量%になるようにEGスラリーの添加量を変更したこと以外は再生ポリエステル樹脂Aと同様にして再生ポリエステルB(極限粘度0.69)を得た。
【0083】
再生ポリエステル樹脂C~H
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料、エチレンテレフタレートオリゴマーの添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、解重合反応を行った。
また、濾液を回収する工程におけるフィルターの濾過粒度、重縮合反応工程における酸化チタンの添加量、熱処理温度を表1に示すものに変更した以外は、再生ポリエステル樹脂Aと同様にして再生ポリエステル樹脂を製造した。
【0084】
バージンポリエステル樹脂I
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー100.0質量部をPC缶に仕込み、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンが4.5質量%となるよう二酸化チタンのEGスラリーを加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で3時間、溶融重合反応を行い、バージンポリエステル樹脂I(極限粘度0.73)を得た。
【0085】
バージンポリエステル樹脂J
二酸化チタンが0.3質量%になるようにEGスラリーの添加量を変更したこと以外はバージンポリエステルIと同様にしてバージンポリエステルJ(極限粘度0.69)を得た。
【0086】
再生ポリエステル樹脂A~H及びバージンポリエステル樹脂I、Jの特性値を表1に示す
【0087】
【表1】
【0088】
表1から明らかなように、前述して工程(1)~(4)を順に行なって得られた再生ポリエステル樹脂A~Dは、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲内のものであった。
一方、再生ポリエステル樹脂E、Fでは、前述した工程(1)の解重合反応時のG/Aが低いため、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
再生ポリエステル樹脂G、Hでは、前述した工程(1)の解重合反応時のG/Aが高いため、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
【0089】
実施例1
再生ポリエステル樹脂Aを芯部とし、再生ポリエステル樹脂Bを鞘部として、芯/鞘質量比が75/25の同心円型芯鞘複合繊維を溶融紡糸した。この際、紡糸温度を284℃とし、3000m/分の速度で引き取り、再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280dtex/48フィラメントを得た。
【0090】
実施例2
芯部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂C、鞘部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Dを用いた以外は実施例1と同様にして再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280detx/48フィラメントを得た。
【0091】
実施例3
芯部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Aを、鞘部のポリエステル樹脂にバージンポリエステルJを用い、芯/鞘質量比が60/40の同心円型芯鞘複合繊維を溶融紡糸した以外は実施例1と同様にして再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280dtex/48フィラメントを得た。
【0092】
実施例4
芯部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Cを鞘部のポリエステル樹脂にバージンポリエステルJを用いた以外は実施例1と同様にして再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280detx/48フィラメントを得た。
【0093】
比較例1
芯部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Eを、鞘部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Fを用いた以外は実施例1と同様にして再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280dtex/48フィラメントを得た。
【0094】
比較例2
芯部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Gを、鞘部のポリエステル樹脂に再生ポリエステル樹脂Hを用いた以外は実施例1と同様にして再生ポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280dtex/48フィラメントを得た。
【0095】
参考例1
芯部のポリエステル樹脂にバージンポリエステル樹脂Iを、鞘部のポリエステル樹脂にバージンポリエステル樹脂Jを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル繊維(部分配向未延伸糸)280dtex/48フィラメントを得た。
【0096】
実施例1~4、比較例1および2、参考例1で得られた再生ポリエステル繊維及びポリエステル繊維の特性値、物性などの結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2から明らかなように、実施例1~4で得られた再生ポリエステル繊維は、紡糸性よく得ることができ、また糸質物性もバージンポリエステル樹脂を用いたものと遜色がなく、実用上問題のない繊維であった。
一方、比較例1で得られた再生ポリエステル繊維は、用いた再生ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度が高かったため、紡糸性が悪く、また低強度のものとなった。
比較例2で得られた再生ポリエステル繊維は、用いた再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量が高かったため、紡糸性が悪い結果となった。
【符号の説明】
【0099】
1 セラミック微粒子を含有する樹脂組成物
2 セラミック微粒子
3 セラミック微粒子を含有しない樹脂組成物
図1
図2
図3