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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026200
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】油脂食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230216BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20230216BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131961
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】591116036
【氏名又は名称】アヲハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 優
(72)【発明者】
【氏名】谷口 恵理
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄治
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG04
4B026DH01
4B026DH03
4B026DH05
4B026DH10
4B026DL03
4B026DP01
4B036LC01
4B036LE02
4B036LF03
4B036LH10
4B036LH13
(57)【要約】
【課題】風味及び取り扱い性が良好な、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂食品組成物を提供する。
【解決手段】本発明の油脂食品組成物は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計(DSC)による測定において、
-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、
10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、
30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である、油脂食品組成物。
【請求項2】
融点が20℃未満である低融点油脂、融点が20℃以上45℃未満である中融点油脂及び融点が45℃以上70℃未満である高融点油脂を含み、
前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が80質量%以上であり、
前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が10質量部以上、25質量部以下であり、
前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の含有比が80~90:5~10:5~10(質量比)である、
請求項1に記載の油脂食品組成物。
【請求項3】
前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が13質量部以上、20質量部以下である請求項2に記載の油脂食品組成物。
【請求項4】
スプレッド用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油脂食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはチューブ容器等の可撓性容器に充填した含気油脂組成物が記載されている。当該含気油脂組成物は上昇融点50℃以上の高融点油脂、上昇融点20℃以下の低融点油脂を含んでいる。特許文献2には、甘味料と、増量剤と、界面活性剤とを含む非晶質多孔性粒子を含む柔らかい食品組成物が記載されている。特許文献3には、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等に用いることを目的とした、融点が30~40℃である中融点油脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-3918号公報
【特許文献2】特表2020-523007号公報
【特許文献3】特開2010-11799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばスプレッド等に用いるための油脂組成物であって、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂組成物については、風味及び取り扱い性について改善の余地がある。例えば、硬すぎると他の食品に塗布したときに拡げ難く、柔らかすぎると食品に塗布する際に容器から垂れやすくなったり、塗布した食品から垂れ落ちてしまうため、スプレッドとして用いにくい。
【0005】
本発明の一態様は、風味及び取り扱い性の良い、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を特定の配合とすることで、風味が良く、且つ、取り扱い性の良い油脂食品組成物となることを見い出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)示差走査熱量計(DSC)による測定において、-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である、油脂食品組成物、
(2)融点が20℃未満である低融点油脂、融点が20℃以上45℃未満である中融点油脂及び融点が45℃以上70℃未満である高融点油脂を含み、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が80質量%以上であり、前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が10質量部以上、25質量部以下であり、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の含有比が80~90:5~10:5~10(質量比)である、(1)に記載の油脂食品組成物、
(3)前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が13質量部以上、20質量部以下である(2)に記載の油脂食品組成物、
(4)スプレッド用である、(1)~(3)のいずれかに記載の油脂食品組成物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、風味及び取り扱い性の良い、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂食品組成物を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
<本発明の特徴>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、示差走査熱量計(以下、「DSC」という。)による測定において、-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である。この構成によれば、低融点域、中融点域、高融点域のバランスが良く、風味及び取り扱い性の良い油脂食品組成物となる。また、本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、融点が20℃未満である低融点油脂、融点が20℃以上45℃未満である中融点油脂及び融点が45℃以上70℃未満である高融点油脂を含み、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が80質量%以上であり、前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が10質量部以上、25質量部以下であり、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の含有比が80~90:5~10:5~10(質量比)である。この構成によれば、低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂のバランスが良く、風味及び取り扱い性の良い油脂食品組成物となる。
【0011】
<本発明の油脂食品組成物の用途>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は様々な用途に使用され得る。例えば、本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、パン等の他の食品に塗布するスプレッドとして、また、パスタ及び炒め物等の他の食品に混ぜ合わせるための調味料として好適に用いることができる。
【0012】
<DSCを用いた測定による融解熱量>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物をDSCによる測定において、-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である。DSCによる測定は、従来公知の方法に従って行えばよい。本発明におけるDSCによる測定条件は、後述する実施例に記載の通りである。
【0013】
<低融点域>
低融点域の融解熱量が、47.00J/g以上であることで、油脂が融けやすくなり過ぎることを防ぎ、取り扱い性がより容易となる。低融点域の融解熱量が、75.00J/g以下であることで油脂が程よく融けやすくなるため、取り扱いがより容易となる。例えば、他の食品に塗布し易くなり、スプレッドとしてより好適に用いることができる。同様の観点から、低融点域の融解熱量は、70.00J/g以下であることがより好ましい。
【0014】
<低融点域の融解熱量に影響する油脂の種類>
低融点域の融解熱量に影響する油脂の種類としては、例えば、菜種油、パーム油、コーン油、紅花油、綿実油、大豆油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ゴマ油、米油、魚油等の天然油脂、これら天然油脂を微水添したもの、これらの油脂から高融点部分を除いたもの、これらの油脂の低融点部分を集めたもの等を挙げることができる。これらは、単独で又は複数種を合わせて使用することができる。
【0015】
<中融点域>
中融点域の融解熱量が、0.15J/g以上であり、且つ、8.00J/g以下であることによって、粘性が低くなり過ぎることを防ぎ、且つ、油脂が程よく融けやすくなるため、取り扱いがより容易となる。例えば、他の食品に塗布し易くなり、スプレッドとしてより好適に用いることができる。同様の観点から、中融点域の融解熱量は、0.25J/g以上であることがより好ましく、また、2.50J/g以下であることがより好ましい。
【0016】
<中融点域の融解熱量に影響する油脂の種類>
中融点域の融解熱量に影響する油脂の種類としては、例えば、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、ラード、菜種油及びパーム油のエステル交換油等を挙げることができる。これらは、単独で又は複数種を合わせて使用することができる。
【0017】
<高融点域>
高融点域の融解熱量が、8.00J/g以上であることで、油脂が融けやすくなるため取り扱いがより容易となる。例えば、他の食品に塗布し易くなり、スプレッドとしてより好適に用いることができる。高融点域の融解熱量が、29.00J/g以下であることで、油脂が融けやすくなり過ぎることを防ぎ、取り扱い性がより容易となる。同様の観点から、高融点域の融解熱量は、20.00J/g以下であることがより好ましい。
【0018】
<高融点域の融解熱量に影響する油脂の種類>
高融点域の融解熱量に影響する油脂の種類としては、例えば、キャンデリラワックス等の油脂、パーム油、菜種油、大豆油などの植物油を水添して得られる硬化油、パーム油の高融点部分を集めたパームステアリンなどの分別油等を挙げることができる。これらは、単独で又は複数種を合わせて使用することができる。
【0019】
<油脂の組み合わせ>
油脂は、前述した各融点域の融解熱量に影響する油脂を適宜組み合わせればよい。各油脂の中でも、幅広い温度帯で、融け易さ、塗布し易さ等の取り扱い性をより良好にするために、熱量が低い油脂を組み合わせることがより好ましく、例えば、菜種油、菜種油及びパーム油のエステル交換油及び菜種硬化油の組み合わせがより好ましい。
【0020】
<その他の成分>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物であって、DSCによる測定において前述の各融点域において各融解熱量を有する油脂食品組成物は、当該各融点域において各融解熱量を有する限り、他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、例えば、水、増粘安定剤、乳製品、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等が挙げられる。また、このような他の成分としては、具材であってもよい。具材としては、例えば、野菜類、果実類、肉類、穀物類、魚類等が挙げられる。
【0021】
<各融点域の融解熱量を有する油脂食品組成物の製造方法>
前述した各融点域において各融解熱量を有する油脂食品組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各融点域の融解熱量に影響する油脂、及び、必要に応じて前述のその他の成分を適宜混合した上で、DSCによる測定を行ない、測定結果に応じて成分の配合量を調整すればよい。
【0022】
<低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂の配合>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、融点が20℃未満である低融点油脂、融点が20℃以上45℃未満である中融点油脂及び融点が45℃以上70℃未満である高融点油脂を含み、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の総量が80質量%以上であり、低融点油脂100質量部に対する、中融点油脂及び高融点油脂の総量が10質量部以上、25質量部以下であり、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の含有比が80~90:5~10:5~10(質量比)であることがより好ましい。低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂をここに記載の配合で含有する油脂食品組成物は、前述のDSCによる測定において前述の各融点域において各融解熱量を有する油脂食品組成物となる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る油脂食品組成物において、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の総量は80質量%以上である。これにより、後述する低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の配合による、風味及び取り扱い性が良好であるという効果を十分に得ることができる。
【0024】
低融点油脂100質量部に対する、中融点油脂及び高融点油脂の総量は10質量部以上である。これにより、油脂が融けやすくなり過ぎることを防ぎ、取り扱い性がより容易となる。また、低融点油脂100質量部に対する、中融点油脂及び高融点油脂の総量は、25質量部以下である。これにより、油脂が程よく融けやすくなるため、取り扱いがより容易となる。同様の観点から、低融点油脂100質量部に対する、中融点油脂及び高融点油脂の総量は13質量部以上であることがより好ましく、また、20質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の含有比は80~90:5~10:5~10(質量比)である。この範囲であることにより、風味及び取り扱い性が良好となる。同じ観点から、当該含有比は84~88:6~8:6~8(質量比)であることがより好ましい。
【0026】
<低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂>
低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂の具体例は、特に制限されず、それぞれ前述の、低融点域の融解熱量に影響する油脂、中融点域の融解熱量に影響する油脂、高融点域の融解熱量に影響する油脂の具体例として挙げた油脂を挙げることができる。
【0027】
<その他の成分>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物であって、低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂を前述の範囲で含む油脂食品組成物は、当該範囲を満たす限り、他の成分を含有してもよい。このような他の成分の具体例としては、前述の、DSCによる測定において前述の各融点域において各融解熱量を有する油脂食品組成物において、含んでよいものとして説明した他の成分の具体例を挙げることができる。
【0028】
<低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂の配合による油脂食品組成物の製造方法>
低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を配合することによる油脂食品組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、低融点油脂、中融点油脂、高融点油脂を混ぜ合わせ、撹拌等をすることで当該油脂食品組成物を製造することができる。
【0029】
<容器>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物を格納する容器は特に限定されない。本発明の一態様に係る油脂食品組成物は取り扱いが容易であるため、様々な容器を適用できる。容器の材質は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン等が挙げられる。容器の材質は、単層でもよく、複層でもよい。容器の形態としては、例えば、パウチ、カップ等が挙げられる。また、容器は可撓性であることがより好ましい。本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、程よい硬さのため可撓性の容器から絞り出しやすい。
【0030】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0031】
本発明の一実施例について、以下に説明する。本実施例において、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を配合して、油脂食品組成物を製造し、得られた油脂食品組成物の官能評価を行った。
【0032】
<原料>
(低融点油脂)
・菜種油(融点-8℃)
・紅花油(融点-5℃)
・オリーブ油(融点6℃)
・パーム油(融点17℃)
(中融点油脂)
・菜種油及びパーム油のエステル交換油(融点42℃)
・ラード(融点40℃)
(高融点油脂)
・菜種硬化油(融点63℃)
・パーム硬化油(融点62℃)
(その他の成分)
・砂糖
【0033】
[実施例1~17、比較例1~4]
表1及び表2に示す通りに、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を混合し、各実施例及び比較例の油脂食品組成物を製造した。なお、油脂食品組成物が砂糖を含む場合には、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を各表に示す質量比にて混合し、混合油脂を得た後に、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂の総量100質量に対する砂糖の割合が各表に示す値となるように、混合油脂及び砂糖を混合し、油脂食品組成物を製造した。
【0034】
<融解熱量の測定>
DSCを用いて、各実施例及び比較例の油脂食品組成物の、各融点域の融解熱量を測定した。DSCによる測定において、サンプル質量は20mgであり、以下に示すステップ(1)~(6)を順に行う温度プログラムを用いた。なお、低融点域を-35℃以上、10℃未満、中融点域を10℃以上、30℃未満、高融点域を30℃以上、65℃未満とした。
【0035】
(1)25℃で5分間保持、
(2)25℃から85℃まで、5℃/分の速度にて昇温、
(3)85℃で5分間保持、
(4)85℃から-40℃まで、5℃/分の速度にて降温、
(5)-40℃で5分間保持、
(6)-40℃から85℃まで、5℃/分の速度にて昇温。
【0036】
各融点域の融解熱量は、各実施例及び比較例の油脂食品組成物の融解挙動のデータから算出した。具体的には、上記のステップ(6)における各ピークのうち、-35℃以上、10℃未満である低融点域、10℃以上、30℃未満である中融点域、30℃以上、65℃未満である高融点域それぞれの温度範囲内の部分面積を融解熱量に換算した。なお、各融点域の温度範囲内の部分面積を算出するために用いるベースラインは、各融点域の下限温度のデータ点及び上限温度のデータ点を結ぶ直線とした。各実施例及び比較例の油脂食品組成物の、各融点域の融解熱量の測定結果を各表に示す。
【0037】
<官能評価>
各実施例及び比較例について、訓練された3人のパネルが下記の評価基準に基づいて、取り扱い性(塗布し易さ及び融けやすさ)並びに風味の評価を行なった。評価結果を各表に示す。
【0038】
(塗布し易さの評価基準)
・3:常温で、容器に入った油脂食品組成物を取り出してパンに塗布した際に、塗りやすい。
・2:上記と同様の条件にて、油脂食品組成物がパンから垂れるがわずかである、又は、わずかな力を要するが、塗りやすい。
・1:上記と同様の条件にて、油脂食品組成物がパンから垂れ落ちる、又は油脂食品組成物が硬すぎて塗ることができない。
【0039】
(融けやすさの評価基準)
・3:茹でた直後のパスタに油脂食品組成物を塗布した際に、油脂食品組成物が程よく融け、パスタと良く馴染む。
・2:上記と同様の条件にて、油脂食品組成物の融け残りがわずかであり、ほとんどの油脂食品組成物がパスタと程よく馴染む。
・1:上記と同様の条件にて、油脂食品組成物が融けないため、パスタと馴染まない。
【0040】
(風味の評価基準)
・3:茹でた直後のパスタに油脂食品組成物を塗布し喫食した際に、油脂のべたつきを感じず、良好な風味を感じる。
・2:上記と同様の条件にて、油脂のべたつきをわずかに感じるが、風味及び味を感じる。
・1:上記と同様の条件にて、油脂のべたつきが感じられたり、味を感じにくい等、風味が悪い。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1~2から、示差走査熱量計(DSC)による測定において、-35℃以上、10℃未満である低融点域の融解熱量が47.00J/g以上、75.00J/g以下であり、10℃以上、30℃未満である中融点域の融解熱量が0.15J/g以上、8.00J/g以下であり、30℃以上、65℃未満である高融点域の融解熱量が8.00J/g以上、29.00J/g以下である、油脂食品組成物は、風味及び取り扱い性の良い、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂食品組成物であることが示された。
【0044】
また、表1~2から、融点が20℃未満である低融点油脂、融点が20℃以上45℃未満である中融点油脂及び融点が45℃以上70℃未満である高融点油脂を含み、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が80質量%以上であり、前記低融点油脂100質量部に対する、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の総量が10質量部以上、25質量部以下であり、前記低融点油脂、前記中融点油脂及び前記高融点油脂の含有比が80~90:5~10:5~10(質量比)である、油脂食品組成物は、風味及び取り扱い性の良い、低融点油脂、中融点油脂及び高融点油脂を含む油脂食品組成物であることが示された。