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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026201
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】油脂食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20230216BHJP
   A23D 7/005 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A23D7/00
A23D7/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131962
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】591116036
【氏名又は名称】アヲハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 優
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 恵理
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC03
4B026DG04
4B026DH03
4B026DH05
4B026DL01
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL06
4B026DL08
4B026DP01
4B026DX05
(57)【要約】
【課題】生の緑色野菜を含有し、当該緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能な油脂食品組成物を提供する。
【解決手段】本発明の油脂食品組成物は、油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を含み、前記油脂が80質量%以上、前記生の緑色野菜が1.5質量%以上、4.0質量%以下、前記アミノ酸が0.1質量%以上、2.0質量%以下であり、水分活性が0.50以上、0.70以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を含み、
前記油脂が80質量%以上、
前記生の緑色野菜が1.5質量%以上、4.0質量%以下、
前記アミノ酸が0.1質量%以上、2.0質量%以下であり、
水分活性が0.50以上、0.70以下である、油脂食品組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸がグリシン又はグルタミン酸である、請求項1に記載の油脂食品組成物。
【請求項3】
前記生の緑色野菜が前記油脂食品組成物中に分散している、請求項1又は2に記載の油脂食品組成物。
【請求項4】
スプレッド用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油脂食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、緑色乾燥野菜を含有した風味付け用の油脂組成物が記載されている。特許文献2には、乾燥野菜、生野菜又は冷凍野菜をアミノ酸及び油脂と混合して加熱処理する香味油の製造方法が記載されている。特許文献3には、不溶性食物繊維を含有する組成物が記載されており、当該組成物は加熱によって退色しにくいことが記載されている。なお、非特許文献1には、アミノ酸と糖とによるメイラード反応について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-228948号公報
【特許文献2】特開2021-13310号公報
【特許文献3】国際公開第2019/235150号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】臼井 照幸、“食品におけるメイラード反応”、日本食生活学会誌第26巻、2015年、1号、第7-10頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生の緑色野菜を含有し、当該緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能な油脂食品組成物については改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、生の緑色野菜を含有し、当該緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能な油脂食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、各成分を特定の配合とし、且つ、水分活性値を特定の範囲に調整することで、生の緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能な油脂食品組成物となることを見い出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を含み、前記油脂が80質量%以上、前記生の緑色野菜が1.5質量%以上、4.0質量%以下、前記アミノ酸が0.1質量%以上、2.0質量%以下であり、水分活性が0.50以上、0.70以下である、油脂食品組成物、
(2)前記アミノ酸がグリシン又はグルタミン酸である、(1)に記載の油脂食品組成物、
(3)前記生の緑色野菜が前記油脂食品組成物中に分散している、(1)又は(2)に記載の油脂食品組成物、
(4)スプレッド用である、(1)~(3)のいずれかに記載の油脂食品組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、生の緑色野菜を含有し、当該緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能な油脂食品組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を含み、前記油脂が80質量%以上、前記生の緑色野菜が1.5質量%以上、4.0質量%以下、前記アミノ酸が0.1質量%以上、2.0質量%以下であり、水分活性が0.50以上、0.70以下である。この構成によれば、生の緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、雑菌の繁殖等が抑制されており、常温保存可能である。
【0012】
<本発明の油脂食品組成物の用途>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は様々な用途に使用され得る。例えば、本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、他の食品に塗布するスプレッド、パスタ等の他の食品に混ぜ合わせる用途、ポテトサラダ等のサラダ等の他の食品にかける用途等に好適に用いることができる。
【0013】
<油脂>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物に含まれる油脂は、生の緑色野菜等の他の材料、油脂食品組成物の用途に応じて適宜選択すればよい。油脂としては、例えば、菜種油、パーム油、コーン油、サフラワー油、綿実油、大豆油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、ゴマ油、米油、魚油等の天然油脂、これら天然油脂を微水添したもの、これらの油脂から高融点部分を除いたもの、これらの油脂の低融点部分を集めたもの、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、ラード、キャンデリラワックス、パーム油、菜種油、大豆油等の植物油を水添して得られる硬化油、パーム油の高融点部分を集めたパームステアリンなどの分別油等をあげることができる。これらは、単独で又は複数種を合わせて使用することができる。
【0014】
<油脂の含有量>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物における油脂の含有量は80質量%以上である。これにより、他の食品に塗布し易くなり、例えば、スプレッドとしてより好適に使用することができる。また同様の観点から、油脂の含有量は85質量以上であることがより好ましい。また、緑色野菜の風味をより活かす観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0015】
<生の緑色野菜>
本明細書において「生の緑色野菜」とは、加熱処理されていない未加熱の緑色野菜が意図される。当該加熱処理は、熱を加えることを目的とした処理を意図する。また、本発明の一態様においては、緑色野菜の生の風味を喫食者が味わうことが目的であるので、生の風味を損なわない範囲の加熱処理はされていてもよい。例えば、本明細書における「生の緑色野菜」には、衛生管理のために殺菌の目的で加熱処理されながらも、当該加熱処理前に比べて含水量がほぼ維持されている(例えば90質量%以上維持されている)緑色野菜も含まれる。また、例えば、生の緑色野菜は、冷凍保存されていたものも含まれる。
【0016】
緑色野菜の具体例としては、例えば、葉菜類、ハーブ類等が挙げられ、例えば、バジル、パセリ、大葉、ほうれん草、小松菜等が挙げられる。
【0017】
<生の緑色野菜の含有量>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物における生の緑色野菜の含有量は1.5質量%以上、4.0質量%以下である。当該含有量が1.5質量%以上であることにより、緑色野菜の風味がより良好になる。同様の観点から、当該含有量は3.0質量%以上であることがより好ましい。また、当該含有量が4.0質量%以下であることにより、緑色野菜の鮮度を常温で保ち易くなり、常温保存可能であり、且つ、緑色野菜の風味がより良好になる。
【0018】
<生の緑色野菜の形態>
生の緑色野菜は、様々な形態であり得る。例えば、生の緑色野菜は、細かく裁断されていてもよく、すりおろさせていてもよい。裁断されている場合は、一片が10mm以下の矩形であってもよい。生の緑色野菜が矩形である態様において、一片の長さの下限値は特に制限されず、いくら細かくともよい。また、生の緑色野菜は、本発明の一態様に係る油脂食品組成物中に分散していることが好ましく、分散の程度はより均一であることがより好ましい。
【0019】
<アミノ酸>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物に含まれるアミノ酸は、生の緑色野菜等の他の材料、油脂食品組成物の用途に応じて適宜選択すればよい。アミノ酸の具体例としては、グリシン、グルタミン酸、イノシン酸、コハク酸等が挙げられる。また、本発明の一態様において、「油脂食品組成物がアミノ酸を含む」という場合、アミノ酸が塩の形態で含有されている場合も含み、後述の含有量は当該塩の質量を意図する。当該塩としては、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等が挙げられる。グリシンは、アミノ酸の中でもメイラード反応を誘起し易いものであるが、本発明の一態様によれば、グリシンによるメイラード反応も抑えるため、常温で保存した際に色合いがより良好に保持され、且つ、緑色野菜の風味をより良好に保つことができる。
【0020】
<アミノ酸の含有量>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物におけるアミノ酸の含有量は、0.1質量%以上、2.0質量%以下である。当該含有量が0.1質量%以上であることにより、水分活性を下げることができるため、雑菌の繁殖が抑えられ、常温での保存効果が十分に得られる。また、調味料としてのアミノ酸の効果を十分に得ることができる。同様の観点から、当該含有量は1.0質量%以上であることがより好ましい。当該含有量が2.0質量%以下であることにより、生の緑色野菜の色合いをより良好に維持することができる。
【0021】
<水分活性>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物の水分活性は0.50以上、0.70以下である。これにより、雑菌の繁殖が抑えられ常温での保存性が良好となり、且つ、常温で保存した際に生の緑色野菜の色合いを良好に保持できる。油脂食品組成物の水分活性は、従来公知の水分活性測定装置を用いて、定法に従って測定することができる。なお、水分活性は、油脂、アミノ酸及び生の緑色野菜の量を調整することによって調整可能である。
【0022】
<その他の成分>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物は、既述の各成分の含有量及び水分活性を満たす限り、他の成分を含有してもよい。このような他の成分としては、例えば、水、増粘安定剤、乳製品、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等が挙げられる。また、このような他の成分としては、具材であってもよい。具材としては、例えば、野菜類、果実類、肉類、穀物類、魚類等が挙げられる。
【0023】
<油脂食品組成物の製造方法>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を適宜混合した上で、水分活性を測定し、測定結果に応じて成分の配合量を調整すればよい。
【0024】
<容器>
本発明の一態様に係る油脂食品組成物を格納する容器は特に限定されない。本発明の一態様に係る油脂食品組成物は取り扱いが容易であるため、様々な容器を適用できる。容器の材質は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン等が挙げられる。容器の材質は、単層でもよく、複層でもよい。容器の形態としては、例えば、パウチ、カップ等が挙げられる。また、容器は可撓性であることがより好ましい。
【0025】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0026】
本発明の一実施例について、以下に説明する。本実施例において、油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を配合して、油脂食品組成物を製造し、得られた油脂食品組成物の官能評価を行った。
【0027】
<原料>
(油脂)
・油脂:菜種油と菜種硬化油とを90:10(質量比)にて混合した混合油
(緑色野菜)
・生のバジル(一辺3mm程度に裁断されたもの)
・生の大葉(一辺3mm程度に裁断されたもの)
(アミノ酸)
・グルタミン酸ナトリウム
・グリシン
(その他の成分)
・乳糖
・食塩
・チーズ
【0028】
[実施例1~10、比較例1~18]
表1及び表2に示す通りに、油脂、生の緑色野菜、アミノ酸、を混合し、各実施例及び比較例の油脂食品組成物を製造した。各実施例及び比較例の油脂食品組成物について、水分活性の測定及び官能評価を行った。結果を各表に示す。
【0029】
<水分活性の測定>
LabMaster-aw NEO(novasina社製)を用いて、各実施例及び比較例の油脂食品組成物の水分活性を測定した。測定温度は、25℃であった。測定結果を表1に示す。
【0030】
<官能評価>
各実施例及び比較例について、訓練された3人のパネルが下記の評価基準に基づいて、加熱耐性、風味及び外観の評価を行った。なお、加熱耐性は、常温保存したときに色合いが保持されているか否かの指標となる評価である。
【0031】
(加熱耐性の評価基準)
・2:パウチに密閉した油脂食品組成物を90℃の熱水中で1~2時間加熱した後、緑色野菜の色合いが保持されている。
・1:上記と同様の条件にて、野菜が退色し、茶色っぽくなった。
(風味の評価基準)
・2:喫食した際に、緑色野菜の風味が良い。
・1:上記と同様の条件にて、緑色野菜の風味が良くない。
(外観の評価基準)
・2:緑色野菜が多く含まれているように視覚的に感じられ、生の緑色野菜の色合いを示す。
・1:緑色野菜が多く含まれているように視覚的に感じられない、又は生の緑色野菜の色合いが薄い。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1~2から、油脂、生の緑色野菜及びアミノ酸を含み、前記油脂が80質量%以上、前記生の緑色野菜が1.5質量%以上、4.0質量%以下、前記アミノ酸が0.1質量%以上、2.0質量%以下であり、水分活性が0.50以上、0.70以下である、油脂食品組成物は、生の緑色野菜の色合いを良好に保持したまま、常温保存可能であることが示された。なお、比較例4~8、13~17は、色合いは良好に保持したが、水分活性が0.70より高くなったため、常温保存性に劣る結果であった。