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特開2023-26234エネルギー貯蔵システム及びエネルギー貯蔵システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026234
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵システム及びエネルギー貯蔵システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20230216BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230216BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230216BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230216BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230216BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230216BHJP
【FI】
H02J15/00 G
H02J3/00 170
H02J3/38 120
H02J3/00 130
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132048
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】渡並 洋介
(72)【発明者】
【氏名】松永 健太郎
【テーマコード(参考)】
5G066
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE09
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB08
5G066JB06
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB23
5H127AB27
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA14
5H127BB02
5H127DB69
5H127DC49
(57)【要約】
【課題】エネルギーの利用効率を向上させる。
【解決手段】実施の形態によるエネルギー貯蔵システムは、電気エネルギー変換貯蔵装置と、原料生成貯蔵装置と、水素生成装置と、水素貯蔵装置と、水素エネルギー供給装置と、加熱冷却装置と、制御装置と、を備える。制御装置は、再生可能エネルギーによる発電量を予測する発電予測部と、需要電力量を予測する需要予測部と、外部状態を予測する外部状態予測部と、評価値のパラメータを設定する設定部と、発電量、需要電力量、外部状態、及び評価値に基づいて、運転計画を作成する計画作成部と、運転計画に基づいて、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、水素エネルギー供給装置、及び加熱冷却装置を運転する運転部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換し貯蔵する電気エネルギー変換貯蔵装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと自然の物質とから原料を生成し貯蔵する原料生成貯蔵装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと前記原料生成貯蔵装置に貯蔵された原料とから水素を生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、
前記水素貯蔵装置に貯蔵された水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換し供給する水素エネルギー供給装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、及び前記水素エネルギー供給装置で熱媒を循環させて各装置の加熱または冷却を行う加熱冷却装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、前記水素エネルギー供給装置、及び前記加熱冷却装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、再生可能エネルギーによる発電量を予測する発電予測部と、需要電力量を予測する需要予測部と、外部状態を予測する外部状態予測部と、評価値のパラメータを設定する設定部と、前記発電量、前記需要電力量、前記外部状態、及び前記評価値に基づいて、運転計画を作成する計画作成部と、前記運転計画に基づいて、前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、前記水素エネルギー供給装置、及び前記加熱冷却装置を運転する運転部と、を有する、エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記原料は水を含み、
前記計画作成部は、前記原料の水の凍結を防止するように、前記運転計画を作成する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記計画作成部は、前記水素生成装置または前記水素エネルギー供給装置と熱交換することにより加熱された前記熱媒の熱エネルギーを用いて、前記原料の水の凍結を防止するように、前記運転計画を作成する、請求項2に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記加熱冷却装置は、複数の前記熱媒を有し、前記外部状態に応じて、加熱または冷却を行う前記熱媒が変更される、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記水素生成装置、及び前記水素エネルギー供給装置のいずれかで生成された熱エネルギーを貯蔵する熱エネルギー貯蔵装置を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記加熱冷却装置は、前記熱エネルギー貯蔵装置に貯蔵された熱エネルギーを用いて、前記原料生成貯蔵装置に貯蔵された前記原料を加熱する、請求項5に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
前記熱エネルギー貯蔵装置は、複数の蓄熱材を有する、請求項5または6に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記蓄熱材は、水素吸蔵合金を含み、前記水素吸蔵合金は、水素を吸蔵する際に熱エネルギーを放出し、水素を放出する際に熱エネルギーを吸収する、請求項7に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
前記外部状態に応じて、熱エネルギーを貯蔵する前記蓄熱材が変更される、請求項7または8に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
前記計画作成部は、前記外部状態に応じて、前記水素エネルギー供給装置により生成される電気エネルギーと熱エネルギーの比率を変更するように、前記運転計画を作成する、請求項1から9のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項11】
前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、及び前記水素エネルギー供給装置のうちの少なくとも2つが、1つの装置により構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵システム。
【請求項12】
エネルギー貯蔵システムの制御方法であって、
前記エネルギー貯蔵システムは、
再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換し貯蔵する電気エネルギー変換貯蔵装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと自然の物質とから原料を生成し貯蔵する原料生成貯蔵装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと前記原料生成貯蔵装置に貯蔵された原料とから水素を生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、
前記水素貯蔵装置に貯蔵された水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換し供給する水素エネルギー供給装置と、
前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、及び前記水素エネルギー供給装置で熱媒を循環させて各装置の加熱または冷却を行う加熱冷却装置と、を備え、
前記制御方法は、
再生可能エネルギーによる発電量を予測する発電予測工程と、
需要電力量を予測する需要予測工程と、
外部状態を予測する外部状態予測工程と、
評価値のパラメータを設定する設定工程と、
前記発電量、前記需要電力量、前記外部状態、及び前記評価値に基づいて、運転計画を作成する計画作成工程と、
前記運転計画に基づいて、前記電気エネルギー変換貯蔵装置、前記原料生成貯蔵装置、前記水素生成装置、前記水素貯蔵装置、前記水素エネルギー供給装置、及び前記加熱冷却装置を運転する運転工程と、を備える、エネルギー貯蔵システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、エネルギー貯蔵システム及びエネルギー貯蔵システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇及び大気中への二酸化炭素の放出による地球温暖化への対策が様々な産業分野で推進されている。化石燃料によらないエネルギー源として、太陽光や風力、地熱等に代表される再生可能エネルギーが利用されている。再生可能エネルギーには時間変動がある。このため、再生可能エネルギーを利用時間や利用場所に適合させるために、再生可能エネルギーにより生成されたエネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵システムが用いられる。
【0003】
エネルギー貯蔵システムにおいて、短期間のエネルギー貯蔵は電気エネルギーとして貯蔵し、長期間のエネルギー貯蔵は水素として貯蔵する方式が知られている。このエネルギー貯蔵システムは、例えば電解装置を用いて、電気エネルギーと水とから水素を生成し、生成された水素を水素貯蔵装置に貯蔵し、貯蔵された水素を、例えば燃料電池を用いて電気エネルギーに変換し供給する。
【0004】
再生可能エネルギーとして、例えば太陽光発電を用いる場合、電解装置は、太陽光がある昼間は運転するが、太陽光がない夜間は停止する。電解装置の停止時、電解装置に用いる水の温度が低下し、水の温度が氷点下になると、水が凍結し得る。また、電解装置において、水の温度が低下した場合、エネルギーの利用効率が低下し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6005503号公報
【特許文献2】特開2003-282122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、エネルギーの利用効率を向上させることができるエネルギー貯蔵システム及びエネルギー貯蔵システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態によるエネルギー貯蔵システムは、再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換し貯蔵する電気エネルギー変換貯蔵装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと自然の物質とから原料を生成し貯蔵する原料生成貯蔵装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと原料生成貯蔵装置に貯蔵された原料とから水素を生成する水素生成装置と、水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、水素貯蔵装置に貯蔵された水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換し供給する水素エネルギー供給装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、及び水素エネルギー供給装置で熱媒を循環させて各装置の加熱または冷却を行う加熱冷却装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、水素エネルギー供給装置、及び加熱冷却装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、再生可能エネルギーによる発電量を予測する発電予測部と、需要電力量を予測する需要予測部と、外部状態を予測する外部状態予測部と、評価値のパラメータを設定する設定部と、発電量、需要電力量、外部状態、及び評価値に基づいて、運転計画を作成する計画作成部と、運転計画に基づいて、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、水素エネルギー供給装置、及び加熱冷却装置を運転する運転部と、を有する。
【0008】
また、実施の形態によるエネルギー貯蔵システムの制御方法において、エネルギー貯蔵システムは、再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換し貯蔵する電気エネルギー変換貯蔵装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと自然の物質とから原料を生成し貯蔵する原料生成貯蔵装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置に貯蔵された電気エネルギーと原料生成貯蔵装置に貯蔵された原料とから水素を生成する水素生成装置と、水素生成装置により生成された水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、水素貯蔵装置に貯蔵された水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換し供給する水素エネルギー供給装置と、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、及び水素エネルギー供給装置で熱媒を循環させて各装置の加熱または冷却を行う加熱冷却装置と、を備える。実施の形態によるエネルギー貯蔵システムの制御方法は、再生可能エネルギーによる発電量を予測する発電予測工程と、需要電力量を予測する需要予測工程と、外部状態を予測する外部状態予測工程と、評価値のパラメータを設定する設定工程と、発電量、需要電力量、外部状態、及び評価値に基づいて、運転計画を作成する計画作成工程と、運転計画に基づいて、電気エネルギー変換貯蔵装置、原料生成貯蔵装置、水素生成装置、水素貯蔵装置、水素エネルギー供給装置、及び加熱冷却装置を運転する運転工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態によるエネルギー貯蔵システムの構成図である。
図2図2は、図1の制御装置の構成図である。
図3図3は、図2の発電予測部により予測される再生可能エネルギーによる発電量の例を示す図である。
図4図4は、図2の需要予測部により予測される需要電力量の例を示す図である。
図5図5は、図2の外部状態予測部により予測される気温の例を示す図である。
図6図6は、図2の計画作成部により予測される再生可能エネルギーの余剰電力量の例を示す図である。
図7図7は、図2の計画作成部により予測される原料生成貯蔵装置に貯蔵された原料の水の温度の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態によるエネルギー貯蔵システムについて説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
まず、図1図7を参照して、第1の実施の形態によるエネルギー貯蔵システムについて説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態によるエネルギー貯蔵システム1は、電気エネルギー変換貯蔵装置10と、原料生成貯蔵装置20と、水素生成装置30と、水素貯蔵装置40と、水素エネルギー供給装置50と、加熱冷却装置60と、制御装置70と、を含んでいる。
【0014】
電気エネルギー変換貯蔵装置10は、再生可能エネルギーE1を電気エネルギーE2に変換し貯蔵するように構成されている。再生可能エネルギーE1は、例えば、太陽光、風力、地熱である。再生可能エネルギーE1が太陽光である場合、太陽光である再生可能エネルギーE1は、太陽光発電(PV)により電気エネルギーE2に変換される。再生可能エネルギーE1が風力である場合、風力である再生可能エネルギーE1は、ウインドファーム(WF)により電気エネルギーE2に変換される。再生可能エネルギーE1が地熱である場合、地熱である再生可能エネルギーE1は、バイナリ発電により電気エネルギーE2に変換される。変換された電気エネルギーE2は、例えば、二次電池に貯蔵される。電気エネルギー変換貯蔵装置10に貯蔵された電気エネルギーE2は、原料生成貯蔵装置20及び水素生成装置30に供給することができる。
【0015】
原料生成貯蔵装置20は、電気エネルギー変換貯蔵装置10に貯蔵された電気エネルギーE1と自然の物質M1とから原料M2を生成し貯蔵するように構成されている。自然の物質M1は、例えば、大地や大気中に存在する物質である。原料M2は、例えば、水、窒素、酸素である。原料M2が水である場合、自然の物質M1は、例えば、地表水、地下水である。この場合、原料生成貯蔵装置20は、地表水や地下水から膜分離や蒸留により水を分離することで原料M2を生成する。原料M2が窒素や酸素である場合、自然の物質M1は、例えば大気である。この場合、原料生成貯蔵装置20は、大気から深冷分離や膜分離により窒素や酸素を分離することで原料M2を生成する。原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2は、水素生成装置30に供給することができる。
【0016】
水素生成装置30は、電気エネルギー変換貯蔵装置10に貯蔵された電気エネルギーE2と原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2とから水素H2を生成するように構成されている。水素生成装置30は、例えば、電解装置とその補機とから構成され、電気エネルギーE2と原料M2とから水素H2及び酸素O2を生成する。電解装置は、例えば、陽極及び陰極を含む電極と、固体高分子膜や固体酸化膜等を含む電解質と、を有している。補機は、例えば、熱交換装置、加圧装置、分離精製装置、貯蔵前処理装置等を含んでいる。熱交換装置は、電解装置を熱媒との熱交換により冷却するとともに、水素H2を熱媒との熱交換により冷却する。加圧装置は、原料M2や電解装置を加圧する。分離精製装置は、水素H2から不純物や水分等を分離して水素H2を精製する。この分離には、膜分離式、吸着再生式、深冷式等が含まれ、エネルギーを使用する。貯蔵前処理装置は、貯蔵に適した条件(三態、圧力、温度)になるように水素H2を処理する。この処理には、貯蔵容積が小さくなるように、水素H2を圧縮化して高圧化することや、水素H2を冷却して液化することが含まれ、エネルギーを使用する。圧縮には、圧縮機等で機械的に圧縮する方法と、加圧した電解装置等により化学的に圧縮する方法とがある。液化には、気体を臨界点以下に冷却して液体にすることが含まれる。水素生成装置30により生成された酸素O2は、外部に放出されてもよい。水素生成装置30により生成された水素H2は、水素貯蔵装置40に供給することができる。
【0017】
水素貯蔵装置40は、水素生成装置30により生成された水素H2を貯蔵するように構成されている。水素貯蔵装置40は、水素H2の貯蔵に適した条件(三態、圧力、温度)で水素H2を貯蔵する。水素貯蔵装置40は、例えば、水素H2を液体水素にして貯蔵したり、水素H2を高圧で圧縮して貯蔵したり、水素H2を水素吸蔵合金に吸蔵させて貯蔵したりすることができる。また、水素H2を生成場所から利用場所へ移動させる場合も、水素H2を水素貯蔵装置40に貯蔵して運搬することができる。水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2は、水素エネルギー供給装置50に供給することができる。
【0018】
水素エネルギー供給装置50は、水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2の化学エネルギーを電気エネルギーE3に変換し供給するように構成されている。水素エネルギー供給装置50は、例えば、燃料電池やガス燃料発電機である。燃料電池は、例えば、陽極及び陰極を含む電極と、固体高分子膜や固体酸化膜等を含む電解質と、を有している。燃料電池は、水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2と大気からの酸素O2とを電気化学的に反応させることにより、水素H2の化学エネルギーを電気エネルギーE3に変換する。水素エネルギー供給装置50により生成された電気エネルギーE3は、外部に供給することができる。
【0019】
加熱冷却装置60は、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、及び水素エネルギー供給装置50で熱媒HMを循環させて各装置の加熱または冷却を行うように構成されている。
【0020】
電気エネルギー変換貯蔵装置10では、生成された電気エネルギーE2の一部が熱エネルギーに変換される。このため、電気エネルギー変換貯蔵装置10は昇温する。加熱冷却装置60は、電気エネルギー変換貯蔵装置10と熱媒HMとを熱交換することで、電気エネルギー変換貯蔵装置10を冷却する。一般に、装置の温度が高くなると、装置の寿命は短くなる。このため、電気エネルギー変換貯蔵装置10の温度が所定温度よりも大きくならないような温度の熱媒HMで熱交換させる。この熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0021】
原料生成貯蔵装置20では、原料M2が水である場合、水が貯蔵されている。気温が低い場合、水の温度が低下し、水の温度が氷点下になると、水が凍結し得る。加熱冷却装置60は、原料生成貯蔵装置20に貯蔵されている原料M2の水と熱媒HMとを熱交換することで、原料M2の水を加熱する。これにより、原料M2の水の凍結を防止することができる。この熱交換により、熱媒HMは冷却される。
【0022】
水素生成装置30では、電気エネルギーE2による水素H2の生成時に熱エネルギーが生成される。このため、水素生成装置30は昇温する。加熱冷却装置60は、水素生成装置30と熱媒HMとを熱交換することで、水素生成装置30を冷却する。一般に、電解装置の温度が高くなると、電解効率は高くなる一方、電解装置の寿命は短くなる。このため、電解装置の温度が所定温度よりも大きくならないような温度の熱媒HMで熱交換させる。また、水素H2の精製の吸着再生時に、水素生成装置30と熱媒HMとを熱交換させることで、分離精製装置の吸着筒を冷却する。また、水素H2の圧縮時に、水素生成装置30と熱媒HMとを熱交換させることで、圧縮機等の温度が所定温度よりも大きくならないようにする。これらの熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0023】
水素貯蔵装置40では、水素H2が貯蔵されている。エネルギーの利用効率を向上させるため、水素H2は、水素エネルギー供給装置50への水素H2の供給時に加熱される。加熱冷却装置60は、水素貯蔵装置40と熱媒HMとを熱交換することで、水素貯蔵装置40を加熱または冷却する。この熱交換により、熱媒HMは冷却または加熱される。
【0024】
水素エネルギー供給装置50では、水素H2の化学エネルギーの一部が熱エネルギーに変換される。このため、水素エネルギー供給装置50は昇温する。加熱冷却装置60は、水素エネルギー供給装置50と熱媒HMとを熱交換することで、水素エネルギー供給装置50を冷却する。この熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0025】
加熱冷却装置60は、熱媒HMの流量を調整することにより、熱媒HMの温度を調整してもよい。熱媒HMの流量は、例えば、加熱冷却装置60に用いられるポンプの運転条件を変更することにより、調整することができる。
【0026】
加熱冷却装置60は、熱媒HMを用いるものであれば、どのような方式であってもよい。加熱冷却装置60は、例えば、ヒートポンプ式熱交換器、ペルチェ式熱交換器、ボルテックスチューブ式熱交換器等であってもよい。また、熱媒HMの温度を調整するために、複数の熱交換器を直列あるいは並列に接続してもよい。
【0027】
加熱冷却装置60は、複数の熱媒HMを有していてもよい。例えば、複数の熱媒HMは、温度の異なる複数の熱媒を含んでいてもよい。そして、気温等の外部状態に応じて、各装置の加熱または冷却を行う熱媒が変更されてもよい。例えば、気温が低い場合、各装置を加熱するように温度の高い熱媒に変更され、気温が高い場合、各装置を冷却するように温度の低い熱媒に変更されてもよい。また例えば、複数の熱媒HMは、液体の熱媒と、気体の熱媒と、を含んでいてもよい。この場合、例えば、(閉じられた)狭い空間の加熱または冷却を行う際は液体の熱媒に変更され、(開かれた)広い空間の加熱または冷却を行う際は気体の熱媒に変更されてもよい。
【0028】
制御装置70は、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、水素エネルギー供給装置50、及び加熱冷却装置60を制御するように構成されている。制御装置70は、各装置のセンシングデータを定期的に取得する。制御装置70は、再生可能エネルギーによる発電量、需要電力量及び外部状態を予測して、評価値に基づいて、エネルギーの利用効率が高くなるような運転計画を作成し各装置を制御する。運転計画の期間(計画期間)は、例えば、年単位、季節単位、月単位、週単位、あるいは日単位であってもよい。
【0029】
図2に示すように、制御装置70は、記憶部71と、発電予測部72と、需要予測部73と、外部状態予測部74と、設定部75と、計画作成部76と、運転部77と、を有している。
【0030】
記憶部71は、発電予測部72による予測に用いられるデータ、需要予測部73による予測に用いられるデータ、及び外部状態予測部74による予測に用いられるデータを記憶している。例えば、記憶部71は、発電予測部72による予測に用いられるデータとして、過去の日時における気象条件(晴/曇/雨)と、過去の日時における気象条件下で実際に電気エネルギー変換貯蔵装置10が変換(発電)した実績発電量とを記憶している。また、記憶部71は、需要予測部73による予測に用いられるデータとして、実績需要電力量を日時や気象条件と共に記憶している。また、記憶部71は、外部状態予測部74での予測に用いられるデータとして、外部状態(例えば、気温)を日時や気象条件と共に記憶している。
【0031】
発電予測部72は、再生可能エネルギーによる発電量を予測する。発電予測部72は、記憶部71にアクセスし、記憶部71に記憶された過去の日時における気象条件(晴/曇/雨)と、その過去の日時における気象条件下で実際に電気エネルギー変換貯蔵装置10が変換(発電)した実績発電量とを取得する。発電予測部72は、取得した情報を、気象条件毎、例えば晴、曇、雨の3つに分類する。発電予測部72は、各気象条件において電気エネルギー変換貯蔵装置10が変換(発電)した実績発電量の確率分布を計算する。発電予測部72は、この実績発電量の確率分布から、計画期間内における発電量を予測する。そして、発電予測部72は、計算結果を記憶部71に記憶する。発電予測部72は、日時に基づく季節毎に実績発電量の確率分布を計算してもよい。これにより、発電予測部72は、予測したい日時により適した各気象条件下で電気エネルギー変換貯蔵装置10が変換(発電)した実績発電量の確率分布を計算することができ、予測したい日時における発電量をより正確に予測することができる。
【0032】
発電量の確率分布は、確定項と確率項とに分けられてもよい。確定項は、例えば、太陽の仰角や電気エネルギー変換貯蔵装置10の変換効率(発電効率)の関数により表される。確率項は、例えば、日射量の確率分布の関数により表される。太陽の仰角は、例えば、日時から計算することができる。変換効率(発電効率)は、例えば、温度の関数を用いて、気温から計算することができる。温度の関数は、例えば、天候が快晴のときの実績発電量と実績気温に基づく推定発電量との関係から計算することができる。日射量は、例えば、発電量の予測関数を用いて、実績発電量と太陽の仰角と変換効率(発電効率)とから推定することができる。日射量の確率分布は、例えば、気象条件(晴/曇/雨)が同一のときの推定日射量から計算することができる。
【0033】
需要予測部73は、需要電力量を予測する。需要予測部73は、記憶部71にアクセスし、現在の日時と気象条件に近い条件における過去の実績需要電力量を記憶部71から取得する。需要予測部73は、需要電力量の確率分布を計算し、この需要電力量の確率分布から、計画期間内における需要電力量を予測する。需要電力量の確率分布は、例えば、曜日(平日/休日)が同一で、かつ気象条件(晴/曇/雨)が同一のときの実績需要電力量から計算することができる。需要電力量は、例えば、曜日と気象条件の関数として計算することができる。曜日の需要電力量への影響は、例えば、気象条件が同一のときの需要電力量から計算することができる。気象条件の需要電力量への影響は、例えば、曜日が同一のときの需要電力量から計算することができる。
【0034】
外部状態予測部74は、外部状態を予測する。外部状態予測部74は、記憶部71にアクセスし、現在の日時と気象条件に近い条件における過去の実績外部状態を記憶部71から取得する。外部状態は、例えば、大気の温度、すなわち気温である。外部状態予測部74は、気温の確率分布を計算し、この気温の確率分布から、計画期間内における気温を予測する。気温の確率分布は、例えば、気象条件(晴/曇/雨)が同一のときの実績気温から計算することができる。
【0035】
設定部75は、評価値のパラメータを設定する。評価値は、例えば、以下の式により表すことができる。
評価値=Σ(使う価値+BCP価値-運転費用-保守費用)
【0036】
ここで、使う価値は、例えば、発電量(kWh)にパラメータの単価(円/kWh)を乗じて得た値(価格)である。BCP価値は、例えば、発電量(kWh)に異常気象時等に付加されるパラメータの単価(円/kWh)を乗じて得た値(価格)である。運転費用は、例えば、各装置の消費電力量(kWh)にパラメータの単価(円/kWh)を乗じて得た値(費用)である。保守費用は、例えば、水の凍結等により装置が故障した際のパラメータの修理費用等である。Σは、総和計算を意味し、計画期間内における各値の総和を計算する。
【0037】
計画作成部76は、発電予測部72により予測された発電量、需要予測部73により予測された需要電力量、外部状態予測部74により予測された外部状態、及び設定部75により設定されたパラメータでの評価値に基づいて、運転計画を作成する。計画作成部76は、発電予測部72により予測された発電量、需要予測部73により予測された需要電力量、及び外部状態予測部74により予測された外部状態を用いて、各装置の内部状態を予測する。そして、計画作成部76は、設定部75により設定されたパラメータでの評価値が最適となるように、運転計画を作成する。
【0038】
各装置の内部状態は、例えば、各装置の発熱量や温度、各装置に含まれる原料の状態である。装置の発熱量は、例えば、定格運転時の発熱量と、装置の定格電力比とから計算することができる。装置の温度は、例えば、装置の熱容量と、装置の発熱量と、外部への放熱量とから計算することができる。原料の状態は、例えば、三態(気体/液体/固体)である。例えば、原料の水の温度は、熱容量と、装置の発熱量と、外部への放熱量とから計算することができ、水の三態変化、とりわけ水の凍結は、水の温度が氷点下になることから予測することができる。
【0039】
運転計画には、水素生成装置30による水素H2の生成量、水素エネルギー供給装置50による電気エネルギーE3の生成量、加熱冷却装置60による各装置の加熱量及び冷却量、加熱冷却装置60による加熱または冷却を行う熱媒HMの変更等が含まれる。計画作成部76は、計画期間内において、各装置の初期設定における運転パターンから各装置の内部状態を予測し、評価値を計算する。また、各装置の運転パターンを変更して、その運転パターンから各装置の内部状態を予測し、評価値を計算する。これらを繰り返すことにより、評価値が最適となる運転パターンを決定する。運転パターンは、各装置の制限内(生成量や加熱量、冷却量等の制限範囲内)で変更される。
【0040】
例えば、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2の水が凍結した場合、保守費用が高くなるように評価値のパラメータを設定する。この場合、原料生成貯蔵装置20の運転時間を長くしたり、加熱冷却装置60による原料生成貯蔵装置20の加熱量を増やしたりして、原料M2の水の凍結を防止するように、運転計画を作成する。
【0041】
運転部77は、運転計画に基づいて、各装置、すなわち、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、水素エネルギー供給装置50、及び加熱冷却装置60を運転する。例えば、運転部77は、上記運転計画に基づき、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2の水と加熱冷却装置60の熱媒HMとを熱交換して、原料M2の水を加熱し、原料M2の水の凍結を防止するように、加熱冷却装置60を運転する。
【0042】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0043】
エネルギー貯蔵システム1が稼働すると、電気エネルギー変換貯蔵装置10により、太陽光等の再生可能エネルギーE1が電気エネルギーE2に変換され貯蔵される。
【0044】
電気エネルギー変換貯蔵装置10に貯蔵された電気エネルギーE2は、原料生成貯蔵装置20に供給され、原料生成貯蔵装置20により、電気エネルギーE2と自然の物質M1である地表水や地下水から原料M2の水が生成される。
【0045】
また、電気エネルギーE2及び原料M2は、水素生成装置30に供給され、水素生成装置30により、電気エネルギーE2と原料M2とから水素H2及び酸素O2が生成される。
【0046】
水素生成装置30により生成された酸素O2は、外部に放出される。また、水素生成装置30により生成された水素H2は、水素貯蔵装置40に供給され貯蔵される。
【0047】
水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2は、水素エネルギー供給装置50に供給され、水素エネルギー供給装置50により、水素H2と大気からの酸素O2とが電気化学的に反応し、水素H2の化学エネルギーが電気エネルギーE3に変換される。
【0048】
水素エネルギー供給装置50により生成された電気エネルギーE3は、外部に供給される。
【0049】
また、加熱冷却装置60の熱媒HMが、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、及び水素エネルギー供給装置50で循環し、各装置の加熱または冷却を行う。
【0050】
より具体的には、加熱冷却装置60の熱媒HMは、電気エネルギー変換貯蔵装置10と熱交換し、電気エネルギー変換貯蔵装置10を冷却する。この熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0051】
また、加熱冷却装置60の熱媒HMは、原料生成貯蔵装置20に貯蔵されている原料M2の水と熱交換し、原料M2の水を加熱する。この熱交換により、熱媒HMは冷却される。
【0052】
また、加熱冷却装置60の熱媒HMは、水素生成装置30と熱交換し、水素生成装置30を冷却する。この熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0053】
また、加熱冷却装置60の熱媒HMは、水素貯蔵装置40と熱交換し、水素貯蔵装置40を加熱または冷却する。この熱交換により、熱媒HMは冷却または加熱される。
【0054】
また、加熱冷却装置60の熱媒HMは、水素エネルギー供給装置50と熱交換し、水素エネルギー供給装置50を冷却する。この熱交換により、熱媒HMは加熱される。
【0055】
ここで、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、水素エネルギー供給装置50、及び加熱冷却装置60は、制御装置70により制御される。以下、本実施の形態によるエネルギー貯蔵システム1の制御方法について説明する。
【0056】
まず、発電予測部72により、再生可能エネルギーE1による発電量が予測される(発電予測工程)。例えば、記憶部71に記憶された過去の日時における気象条件(晴/曇/雨)と、その過去の日時における気象条件下で実際に電気エネルギー変換貯蔵装置10が変換(発電)した実績発電量とに基づいて、実績発電量の確率分布が計算され、この実績発電量の確率分布から、計画期間内における発電量が予測される。
【0057】
図3に、発電予測部72により予測される再生可能エネルギーによる発電量の例を示す。ここで、計画期間は1日である。図3において、縦軸は発電量S(kWh:例えば発電電力の1時間平均)を示し、横軸は時刻tを示している。図3の(a)のグラフは、快晴時の太陽光発電による発電量を示し、図3の(b)のグラフは、曇り時の太陽光発電による発電量を示している。図3の(a)のグラフは、図3の(b)のグラフよりも全体的に発電量が多くなっている。図3に示す例においては、いずれの発電量も昼12時頃にピークになっている。
【0058】
次に、需要予測部73により、需要電力量が予測される(需要予測工程)。例えば、現在の日時と気象条件に近い条件における過去の実績需要電力量に基づいて、需要電力量の確率分布が計算され、この需要電力量の確率分布から、計画期間内における需要電力量が予測される。
【0059】
図4に、需要予測部73により予測される需要電力量の例を示す。図4において、縦軸は需要電力量D(kWh:例えば需要電力の1時間平均)を示し、横軸は時刻tを示している。図4に示す例においては、需要電力は夕刻18時頃にピークになっている。
【0060】
続いて、外部状態予測部74により、外部状態が予測される(外部状態予測工程)。例えば、現在の日時と気象条件に近い条件における過去の実績外部状態に基づいて、気温の確率分布が計算され、この気温の確率分布から、計画期間内における気温が予測される。
【0061】
図5に、外部状態予測部74により予測される気温の例を示す。図5において、縦軸は温度T(℃)を示し、横軸は時刻tを示している。図5に示す例においては、気温は午後14時頃にピークになっている。
【0062】
また、設定部75により、評価値のパラメータが設定される(設定工程)。例えば、評価値は、使う価値とBCP価値の計画期間内における総和から運転費用と保守費用の計画期間内における総和を減算した値として計算される。保守費用には、原料M2の水の凍結等により装置が故障した際の修理費用が含まれる。すなわち、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2の水が凍結した場合、保守費用が高くなり、評価値は低くなる。
【0063】
次に、計画作成部76により、発電予測部72により予測された発電量、需要予測部73により予測された需要電力量、外部状態予測部74により予測された外部状態、及び設定部75により設定されたパラメータでの評価値に基づいて、運転計画が作成される(計画作成工程)。まず、計画作成部76により、発電予測部72により予測された発電量、需要予測部73により予測された需要電力量、及び外部状態予測部74により予測された外部状態に基づいて、各装置の発熱量や温度、各装置に含まれる原料の状態等の内部状態が予測される。そして、設定部75により設定されたパラメータでの評価値が最適となるように、運転計画が作成される。以下、図6及び図7を用いて運転計画の作成の例を説明する。
【0064】
図6に、計画作成部76により予測される再生可能エネルギーの余剰発電量の例を示す。再生可能エネルギーの余剰発電量は、発電予測部72により予測された発電量Sと、需要予測部73により予測された需要電力量Dとの差分から予測することができる。図6の(a)のグラフは、図4の(a)のグラフと図5のグラフとの差分を示し、図6の(b)のグラフは、図4の(b)のグラフと図5のグラフとの差分を示している。
【0065】
図6の(a)のグラフの場合、朝6時頃から夕刻18時頃までの時間帯において発電量Sが需要電力量Dを上回っており、特に昼12時頃において発電量Sが需要電力量Dを大幅に上回っている。このため、この時間帯において、水素生成装置30により水素H2を生成するように、運転計画を作成する。また、この場合、水素生成装置30が発熱し、水素生成装置30の温度が上昇する。このため、この時間帯において、加熱冷却装置60の熱媒HMと水素生成装置30とを熱交換し、水素生成装置30を冷却するように、運転計画を作成する。
【0066】
また、図6の(b)のグラフの場合、すべての時間帯において需要電力量Dが発電量Sを上回っており、特に夕刻18時頃において需要電力量Dが発電量Sを大幅に上回っている。このため、外部に適切に電力を供給するために、この時間帯において、水素エネルギー供給装置50により電気エネルギーE3を生成するように、運転計画を作成する。また、この場合、水素エネルギー供給装置50が発熱する。このため、この時間帯において、加熱冷却装置60の熱媒HMと水素エネルギー供給装置50とを熱交換し、水素エネルギー供給装置50を冷却するように、運転計画を作成する。
【0067】
また、図7に、計画作成部76により予測される原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2の水の温度の例を示す。図7において、縦軸は温度T(℃)を示し、横軸は時刻tを示している。図7の(a)のグラフ(破線)は、図5のグラフと同様の気温を示し、図7の(b)のグラフ(実線)は、原料M2の水の温度を示している。原料M2の水の温度は、外部状態予測部74により予測された気温から予測することができる。図7に示すように、原料M2の水の温度は、気温に対して少し遅れて変化している。
【0068】
図7に示すように、原料M2の水の温度は、深夜24時以降において氷点下になっている。このため、この時間帯において原料M2の水は凍結し得る。原料M2の水が凍結した場合、保守費用が増大し、評価値は低くなる。このため、図7の(b’)のグラフ(一点鎖線)に示すように、原料M2の水が凍結する前の時間帯、例えば昼頃において、加熱冷却装置60により原料生成貯蔵装置20を加熱して原料M2の水の温度を上昇させ、深夜における原料M2の水の凍結を防止するように、運転計画を作成する。この原料生成貯蔵装置20の加熱には、水素生成装置30の熱エネルギーが用いられてもよい。すなわち、図6の(a)のグラフのような場合において、水素生成装置30と熱交換することにより加熱された加熱冷却装置60の熱媒HMの熱エネルギーを用いて、原料M2の水を加熱してもよい。また、原料生成貯蔵装置20の加熱に、水素エネルギー供給装置50の熱エネルギーが用いられてもよい。すなわち、図6の(b)のグラフのような場合において、水素エネルギー供給装置50と熱交換することにより加熱された加熱冷却装置60の熱媒HMの熱エネルギーを用いて、原料M2の水を加熱してもよい。これにより、原料M2の水の凍結を防止することができ、評価値が高くなるような、運転計画を作成することができる。
【0069】
そして、運転部77により、上記のような運転計画に基づいて、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、水素エネルギー供給装置50、及び加熱冷却装置60が運転される(運転工程)。
【0070】
このようにして、制御装置70により、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、水素エネルギー供給装置50、及び加熱冷却装置60が制御される。
【0071】
このように本実施の形態によれば、発電予測部72により予測された発電量、需要予測部73により予測された需要電力量、外部状態予測部74により予測された外部状態、及び設定部75により設定されたパラメータでの評価値に基づいて、運転計画が作成される。このことにより、再生可能エネルギーによる発電量、需要電力量、及び外部状態を考慮して、エネルギー貯蔵システム1の各装置を運転することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2の水の凍結を防止するように、運転計画が作成される。このことにより、計画期間内において、水素生成装置30に用いる原料M2の水が凍結しないように、各装置を運転することができる。このため、装置の保守費用を抑制することができるとともに、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、水素生成装置30または水素エネルギー供給装置50と熱交換することにより加熱された熱媒HMの熱エネルギーを用いて、原料M2の水の凍結を防止するように、運転計画が作成される。このことにより、水素生成装置30または水素エネルギー供給装置50により生成された熱エネルギーを、原料M2の水の凍結を防止するためのエネルギーとして、有効に活用することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、加熱冷却装置60は、複数の熱媒HMを有し、外部状態に応じて、加熱または冷却を行う熱媒HMが変更される。このことにより、気温等の外部状態に応じて、効率的に各装置の加熱または冷却を行うことができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0075】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態によるエネルギー貯蔵システムについて説明する。
【0076】
第2の実施の形態においては、電気エネルギー変換貯蔵装置、水素生成装置、及び水素エネルギー供給装置のいずれかで生成された熱エネルギーを貯蔵する熱エネルギー貯蔵装置が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1図7に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0077】
本実施の形態によるエネルギー貯蔵システム1は、熱エネルギー貯蔵装置80を更に含んでいる。熱エネルギー貯蔵装置80は任意の位置に配置されていてもよい。
【0078】
熱エネルギー貯蔵装置80は、電気エネルギー変換貯蔵装置10、水素生成装置30、及び水素エネルギー供給装置50のいずれかで生成された熱エネルギーを貯蔵するように構成されている。例えば、熱エネルギー貯蔵装置80は、水素エネルギー供給装置50で生成された熱エネルギーを貯蔵してもよい。この場合、熱エネルギー貯蔵装置80は、例えば、水素エネルギー供給装置50の燃料電池により生成された高温の水(お湯)を貯蔵する貯湯槽であってもよい。この場合、熱エネルギー貯蔵装置80は、水素エネルギー供給装置50と加熱冷却装置60との間に配置されてもよい。
【0079】
加熱冷却装置60は、熱エネルギー貯蔵装置80に貯蔵された熱エネルギーを用いて、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M1及び水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2を加熱する。すなわち、加熱冷却装置60は、熱エネルギー貯蔵装置80と熱交換することにより加熱された熱媒HMの熱エネルギーを用いて、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M2や水素貯蔵装置40に貯蔵された水素H2を加熱する。
【0080】
熱エネルギー貯蔵装置80は、例えば、気温が高い昼間に熱エネルギーを貯蔵し、気温が低い夜間に熱エネルギーを放出するようにしてもよい。ただし、熱エネルギーの貯蔵の際にエネルギーロスが生じるため、そのエネルギーロスも考慮して、計画期間内において全体としてのエネルギーの利用効率が向上するように、運転計画を作成する。
【0081】
熱エネルギー貯蔵装置80は、複数の蓄熱材を有していてもよい。例えば、複数の蓄熱材は、上述した貯湯槽と、水素吸蔵合金と、を含んでいてもよい。水素吸蔵合金は、水素H2を吸蔵する際に発熱し、水素H2を放出する際に吸熱する。すなわち、水素吸蔵合金は、水素H2を吸蔵する際に熱エネルギーを放出し、水素H2を放出する際に熱エネルギーを吸収する。貯湯槽は、外部へ熱エネルギーをロスしやすいのに対して、水素吸蔵合金は、外部へ熱エネルギーをロスしにくく、長期間の貯蔵に適している。このため、貯蔵期間に応じて、熱エネルギーを貯蔵する蓄熱材が変更されてもよい。例えば、貯蔵期間が長い場合、貯湯槽に貯蔵されたお湯の温度が低下し、熱エネルギーのロスが生じてしまうため、熱エネルギーを水素吸蔵合金に貯蔵するようにしてもよい。また、外部状態に応じて、熱エネルギーを貯蔵する蓄熱材が変更されてもよい。例えば、気温が低い場合、熱エネルギーを放出して各装置を加熱する蓄熱材に熱エネルギーを貯蔵し、気温が高い場合、熱エネルギーを吸収して各装置を冷却する蓄熱材に熱エネルギーを貯蔵するようにしてもよい。
【0082】
熱エネルギー貯蔵装置80の蓄熱材が水素吸蔵合金である場合、水素吸蔵合金は水素H2の吸蔵及び放出を行うため、図1に示すように、水素貯蔵装置40が熱エネルギー貯蔵装置80を兼ねていてもよい。
【0083】
熱エネルギー貯蔵装置80は、複数の水素吸蔵合金を有していてもよい。この場合、水素吸蔵合金の間で水素H2を循環させて、加熱冷却装置60の熱媒HMを加熱または冷却してもよい。例えば、各水素吸蔵合金が水素H2を吸蔵する際に生じる熱エネルギーにより、加熱冷却装置60の熱媒HMを加熱してもよい。また例えば、各水素吸蔵合金が水素H2を放出する際に、加熱冷却装置60の熱媒HMを冷却してもよい。
【0084】
また、水素貯蔵装置40が水素H2を液体水素にして貯蔵する場合、液体水素は気化時に吸熱するため、この場合も、水素貯蔵装置40を熱エネルギー貯蔵装置80として用いることができる。
【0085】
熱エネルギー貯蔵装置80は、制御装置70により制御される。このため、上述した熱エネルギー貯蔵装置80の運転は、計画作成部76が作成した運転計画に基づいて、行われる。
【0086】
このように本実施の形態によれば、熱エネルギー貯蔵装置80は、電気エネルギー変換貯蔵装置10、水素生成装置30、及び水素エネルギー供給装置50のいずれかで生成された熱エネルギーを貯蔵する熱エネルギー貯蔵装置80が設けられている。このことにより、各装置で生成された熱エネルギーを貯蔵することができ、熱エネルギーを有効に活用することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、加熱冷却装置60は、熱エネルギー貯蔵装置80に貯蔵された熱エネルギーを用いて、原料生成貯蔵装置20に貯蔵された原料M1を加熱する。このことにより、熱エネルギー貯蔵装置80により貯蔵された熱エネルギーを、原料M2を加熱するためのエネルギーとして、有効に活用することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、熱エネルギー貯蔵装置80の蓄熱材は、水素吸蔵合金を含み、水素吸蔵合金は、水素H2を吸蔵する際に熱エネルギーを放出し、水素H2を放出する際に熱エネルギーを吸収する。このように熱エネルギーの貯蔵に水素吸蔵合金を用いることにより、熱エネルギーを長期間貯蔵することができ、貯蔵期間が長い場合に生じ得る、外部への熱エネルギーのロスを抑制することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。また、水素吸蔵合金は水素H2の吸蔵及び放出を行うことができるため、水素貯蔵装置40を熱エネルギー貯蔵装置80として用いることができる。このため、システムの大型化を抑制することができるとともに、設備コストの増大を抑制することができる。
【0089】
また、本実施の形態によれば、外部状態に応じて、熱エネルギーを貯蔵する蓄熱材が変更される。このことにより、気温等の外部状態に応じて、熱エネルギーを適切な蓄熱材に選択的に貯蔵することができる。このため、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0090】
(その他の実施の形態)
次に、その他の実施の形態によるエネルギー貯蔵システムについて説明する。
【0091】
計画作成部76は、外部状態に応じて、水素エネルギー供給装置50により生成される電気エネルギーと熱エネルギーの比率を変更するように、運転計画を作成してもよい。
【0092】
電気エネルギーと熱エネルギーの比率は、例えば、水素エネルギー供給装置50の燃料電池の運転温度を変更することにより、変更することができる。電気エネルギーと熱エネルギーの比率は、設定部75により設定されたパラメータでの評価値が最適となるように変更される。
【0093】
例えば、計画期間内において、気温が低く、原料生成貯蔵装置20に貯蔵されている原料M2の水が凍結する可能性がある場合、原料M2の水の凍結を防止するように、原料M2の水を加熱するため、多くの熱エネルギーを要する。このような場合、水素エネルギー供給装置50により生成される電気エネルギーと熱エネルギーの比率を、熱エネルギーが多くなるように変更する。また例えば、計画期間内において、気温が高く、原料生成貯蔵装置20に貯蔵されている原料M2の水が凍結する可能性がない場合は、多くの熱エネルギーを要さない。このような場合、水素エネルギー供給装置50により生成される電気エネルギーと熱エネルギーの比率を、電気エネルギーが多くなるように変更する。
【0094】
このように、気温等の外部状態に応じて、水素エネルギー供給装置50により生成される電気エネルギーと熱エネルギーの比率を変更することにより、全体としてのエネルギーを有効に活用することができ、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0095】
また、上述した実施の形態においては、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、及び水素エネルギー供給装置50がそれぞれ別の装置として構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、電気エネルギー変換貯蔵装置10、原料生成貯蔵装置20、水素生成装置30、水素貯蔵装置40、及び水素エネルギー供給装置50のうちの少なくとも2つが、1つの装置により構成されていてもよい。これにより、システムの大型化を抑制することができるとともに、設備コストの増大を抑制することができる。
【0096】
以上述べた実施の形態によれば、エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1:エネルギー貯蔵システム、10:電気エネルギー変換貯蔵装置、20:原料生成貯蔵装置、30:水素生成装置、40:水素貯蔵装置、50:水素エネルギー供給装置、60:加熱冷却装置、70:制御装置、72:発電予測部、73:需要予測部、74:外部状態予測部、75:設定部、76:計画作成部、77:運転部、80:熱エネルギー貯蔵装置、A:大気、E1:再生可能エネルギー、E2:電気エネルギー、E3:電気エネルギー、H2:水素、HM:熱媒、M1:自然の物質、M2:原料、O2:酸素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7