(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026251
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ポンプディスペンサ、及び、吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20230216BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B65D47/34 110
F04B9/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132077
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】519321683
【氏名又は名称】株式会社3D Printing Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】山路 智生
【テーマコード(参考)】
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084KB01
3E084LD23
3E084LD26
3H075AA09
3H075BB04
3H075CC32
3H075CC40
3H075DA05
3H075DA09
3H075DB13
3H075DB14
(57)【要約】
【課題】リサイクルが容易なポンプディスペンサ、及び吐出容器を提供する。
【解決手段】ポンプディスペンサ2は、容器本体3内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構4を備える。ポンプ機構4は、中心軸41aを有し内部に収容室410を構成する水密性を有する筒部41と、筒部41を筒部41の中心軸41aの方向に圧縮するように初期位置から移動可能な押圧部材42とを備える。筒部41と押圧部材42は、同一の熱可塑性樹脂製である。押圧部材42は、剛体構造を有する。筒部41は、押圧部材42を初期位置に復帰させるばね構造を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構を備え、
前記ポンプ機構は、
中心軸を有し、内部に収容室を構成する水密性を有する筒部と、
前記筒部を前記筒部の中心軸の方向に圧縮するように初期位置から移動可能な押圧部材と、
を備え、
前記押圧部材と前記筒部は、同一の熱可塑性樹脂製であり、
前記押圧部材は、剛体構造を有し、
前記筒部は、前記押圧部材を前記初期位置に復帰させるばね構造を有する、
ポンプディスペンサ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンプラスチック、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びアクリロニトリル・スチレン・アクリレートからなる群から選択される、
請求項1に記載のポンプディスペンサ。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の引張弾性率は0.1GPa以上10GPa以下である、
請求項1又は2に記載のポンプディスペンサ。
【請求項4】
前記ばね構造は、水密性のある力学的メタマテリアル構造を含む、
請求項1~3のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項5】
前記ばね構造では、前記筒部の中心軸の方向に直交する面内において、前記筒部の中心軸の方向の両端部の開口サイズよりも、前記筒部の中心軸の方向の両端部間の部位の開口サイズのほうが大きい、
請求項1~4のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項6】
前記ばね構造では、前記筒部の中心軸の方向に直交する面内における開口サイズが、前記筒部の中心軸の方向において周期的に変化する、
請求項1~5のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項7】
前記ばね構造は、前記筒部の中心軸の両端側の第1及び第2周期構造と、前記第1及び第2周期構造間の第3周期構造とを有し、
前記第3周期構造の開口サイズの変化幅は、前記第1及び第2周期構造の開口サイズの変化幅より大きい、
請求項6に記載のポンプディスペンサ。
【請求項8】
前記ポンプ機構は、前記押圧部材が前記筒部の中心軸の方向に沿って移動するように前記押圧部材を前記筒部に対してガイドするガイド部材を、さらに備え、
前記ガイド部材は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項1~7のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項9】
前記ガイド部材は、前記容器本体に対して前記ポンプ機構を位置決めし、前記押圧部材による前記筒部の圧縮の際にかかる荷重により破損しない剛性を有する、
請求項8に記載のポンプディスペンサ。
【請求項10】
前記ポンプ機構は、第1及び第2逆止弁を、さらに備え、
前記筒部は、前記中心軸の方向の両端に吐出口及び吸入口を有し、
前記第1逆止弁は、前記筒部の吐出口にあって、前記内容物が前記吐出口から前記収容室に入ることを防止する構造であり、
前記第2逆止弁は、前記筒部の吸入口にあり、前記内容物が前記吸入口から出ることを防止する構造であり、
前記第1及び第2逆止弁は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項1~9のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項11】
前記押圧部材における前記筒部とは反対側に取り付けられるヘッドを、さらに備え、
前記押圧部材は、前記筒部の収容室につながる流路を備え、
前記ヘッドは、前記押圧部材の流路につながる吐出路を備え、
前記ヘッドは、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項1~10のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項12】
前記ポンプ機構は、前記筒部における前記押圧部材とは反対側に延びるチューブを、さらに備え、
前記チューブは、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項1~11のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項13】
前記ポンプ機構を前記容器本体に取り付ける取付部材を、さらに備え、
前記取付部材は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項1~12のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項14】
前記ポンプ機構を前記取付部材に固定する固定部材を、さらに備え、
前記固定部材は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項13に記載のポンプディスペンサ。
【請求項15】
前記ポンプ機構を含む複数の部品のみから構成され、
前記複数の部品は、同一の熱可塑性樹脂製である、
請求項1~14のいずれか一つに記載のポンプディスペンサ。
【請求項16】
容器本体内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構を備え、
前記ポンプ機構は、
中心軸を有し、内部に収容室を構成する水密性を有する筒部と、
前記筒部に結合される部品と、
を備え、
前記部品と前記筒部は、同一の合成樹脂材料熱可塑性樹脂製であり、
前記部品は、剛体構造を有し、
前記筒部は、ばね構造を有する、
ポンプディスペンサ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一つに記載のポンプディスペンサと、
前記ポンプディスペンサが取り付けられる前記容器本体と、
を備える、
吐出容器。
【請求項18】
前記容器本体は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する、
請求項17に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポンプディスペンサ、及び、吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプー、リンス、及びコンディショナー等の液体等の販売には吐出容器が利用されている。吐出容器は、液体を収容する容器本体と、容器本体に取り付けられる吐出器とを備える。吐出器は、容器本体内から液体を吸い上げて吐出する機能を有する。このような吐出器は、ポンプディスペンサともいわれる。
【0003】
特許文献1は、吐出器を開示する。特許文献1に開示された吐出器は、容器本体の口部に装着されるシリンダと、上方付勢状態で下方移動可能に設けられた可動部材と、シリンダ内に収容され、可動部材を上方に付勢するコイルスプリングと、下降端位置に位置する可動部材が着脱可能に装着され、可動部材の上方移動を規制する規制筒と、を備え、シリンダは、内側にコイルスプリングが挿入され、コイルスプリングの下端部を支持した支持面を有する挿入筒部と、挿入筒部から下方に延び、内径が挿入筒部の内径より小さい導入筒部と、を備える。可動部材は、下降端位置に位置したときに、シリンダ内に形成されたシール面に当接し、導入筒部内と挿入筒部内との連通を遮断するシール部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2015年に国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択された。SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」では、廃棄物の排出量削減に加え、リサイクルなど再生利用の推進といった施策を通じて、持続可能な生産消費サイクルの実現をめざすことを掲げている。目標12の実現に向けては、プラスチックの排出抑制(リデュース)、再利用(リユース)、リサイクルの3Rの推進が求められる。
【0006】
吐出容器においては、容器本体はリサイクルの対象とされているが、吐出器(ポンプディスペンサ)はリサイクルの対象とされていないのが現状である。
【0007】
特許文献1に開示された吐出器(ポンプディスペンサ)のような従来から利用されているディスペンサでは、シリンダの内側にコイルスプリングが挿入されている。シリンダは樹脂部品であるのに対してコイルスプリングは金属部品である。そのため、ポンプディスペンサのシリンダ等のプラスチック樹脂部品を破砕してリサイクルしようとした場合には、事前に金属部品であるコイルスプリングを除去する作業が必要になる。コイルスプリングを除去する作業にかかる手間とコストが、リサイクル作業により得られる樹脂材料の量と見合わないため、ポンプディスペンサはリサイクルの対象とされていないのである。
【0008】
本開示は、リサイクルが容易なポンプディスペンサ、及び吐出容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様にかかるポンプディスペンサは、容器本体内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構を備える。ポンプ機構は、中心軸を有し内部に収容室を構成する水密性を有する筒部と、筒部を筒部の中心軸の方向に圧縮するように初期位置から移動可能な押圧部材とを備える。押圧部材と筒部は、同一の熱可塑性樹脂製である。押圧部材は、剛体構造を有する。筒部は、押圧部材を初期位置に復帰させるばね構造を有する。
【0010】
本開示の一態様にかかるポンプディスペンサは、容器本体内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構を備える。ポンプ機構は、中心軸を有し、内部に収容室を構成する水密性を有する筒部と、筒部に結合される部品とを備える。部品と筒部は、同一の熱可塑性樹脂製である。部品は、剛体構造を有する。筒部は、ばね構造を有する。
【0011】
本開示の一態様にかかる吐出容器は、上記のポンプディスペンサと、ポンプディスペンサが取り付けられる容器本体とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様は、リサイクルが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1のポンプディスペンサを備える吐出容器の構成例の斜視図
【
図4】
図1のポンプディスペンサの構成例の上方斜視図
【
図6】
図1のポンプディスペンサのポンプ機構の上方斜視図
【
図7】
図1のポンプディスペンサのポンプ機構の下方斜視図
【
図8】
図1のポンプディスペンサのポンプ機構の動作の一例の概略説明図
【
図9】
図1のポンプディスペンサのポンプ機構の動作の一例の概略説明図
【
図10】
図1のポンプディスペンサのポンプ機構の動作の一例の概略説明図
【
図11】実施の形態2のポンプディスペンサのポンプ機構の構成例の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0015】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0016】
[1.1 実施の形態1]
[1.1.1 構成]
図1は、本実施の形態にかかる吐出容器1の斜視図である。吐出容器1は、例えば、液体又はジェル等の内容物の保管、販売に利用される。内容物の具体例としては、液体洗剤、美容液、調味料、消毒液、消臭剤、殺虫剤等の種々の液体又はジェルが挙げられる。液体洗剤は、例えば、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプー、リンス、コンディショナー、洗濯洗剤、柔軟剤、食器洗剤を含み得る。美容液は、化粧水及び乳液を含み得る。
【0017】
図2は、吐出容器1の一部を省略した分解斜視図である。
図3は、吐出容器1の一部を省略した断面図である。
図1~
図3に示すように、吐出容器1は、ポンプディスペンサ2と、容器本体3とを備える。なお、
図2及び
図3では、容器本体3の上部のみが図示されている。
【0018】
容器本体3は、内容物を収容する。容器本体3は、ボトル状である。
図2に示すように、容器本体3は、上面3aを有する。上面3aの中央には開口31が形成される。開口31は、内容物の出入り口である。容器本体3は、上面3aの開口31を囲う円筒状の口部32を有する。口部32は、口部32の外周面にネジ溝33を有する。口部32は、ポンプディスペンサ2を容器本体3に取り付けるために利用される。容器本体3は、ポンプディスペンサ2と同じ熱可塑性樹脂で形成されてよい。
【0019】
ポンプディスペンサ2は、容器本体3内の内容物を吸入して吐出するために、容器本体3に取り付けられる。
【0020】
図4は、ポンプディスペンサ2の上方斜視図である。
図5は、ポンプディスペンサ2の下方斜視図である。
図4及び
図5に示すように、ポンプディスペンサ2は、ポンプ機構4と、取付部材5と、固定部材6と、ヘッド7とを備える。
【0021】
図6は、ポンプ機構4の上方斜視図である。
図7は、ポンプ機構4の下方斜視図である。
図6及び
図7に示すように、ポンプ機構4は、筒部41と、押圧部材42と、ガイド部材43と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45と、チューブ46とを備える。
【0022】
筒部41は、ポンプ機構4において、容器本体3から吸引した内容物の収容と、押圧部材42の初期位置への復帰とを実現する。
図6及び
図7に示すように、筒部41は、中心軸C1を有する。筒部41は、円筒状である。筒部41は、内部に収容室410を構成する。収容室410は、容器本体3内の内容物を吸引して貯留する空間である。筒部41は、筒部41の中心軸C1の方向の両端である第1端411及び第2端412を有する。
図6に示すように、第1端411には、収容室410から外部に内容物を吐出するための吐出口411aがある。
図7に示すように、第2端412には、容器本体3から収容室410外に内容物を吸入するための吸入口412aがある。筒部41は、第1端411と第2端412との間にばね構造413を有する。
【0023】
筒部41は、熱可塑性樹脂製である。筒部41において、第1端411と第2端412とばね構造413とは連続一体である。本実施の形態において、ばね構造413は、収容室410の外壁を構成する。ばね構造413には水密性が求められる。ばね構造413は、水密性を有する力学的メタマテリアル構造を有する。力学的メタマテリアル構造は、一例としては、所定の材料で形成された稠密でない単位素子が周期的に配列された構造を有することによって、所定の材料の本来の力学的な特性とは異なる力学的な特性を発現する構造である。筒部41は、本来的にばね性がなく通常ばねに用いられない熱可塑性樹脂により形成されるが、ばね構造413は、力学的メタマテリアル構造を有するため、ばねとして機能するのに十分なばね性を有する。
【0024】
次に、力学的メタマテリアル構造の一例であるばね構造413についてより詳細に説明する。ばね構造413では、筒部41の中心軸C1の方向に直交する面内における開口サイズが、筒部41の中心軸C1の方向において周期的に変化する。本実施の形態において、開口サイズは、内径で表す。
図3に示すように、ばね構造413の内径は、筒部41の中心軸C1の方向において最小値D1と最大値D2との間で周期的に変化する。
図3では、ばね構造413の厚み(内径と外径との差)は、実質的に均一である。
図3では、ばね構造413は、6つの単位素子413aを含む。
【0025】
図3のばね構造413のばね性を決めるばね定数は、熱可塑性樹脂の特性(引張弾性率、ポアソン比等)、単位素子413aの形状(開口サイズの変化幅、内径と外径の差(厚み))、及び、単位素子413aの数に依存すると考えられる。熱可塑性樹脂の引張弾性率及びポアソン比の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。単位素子413aの最小値D1と最大値D2との差の増加に対してはばね定数が小さくなると考えられる。単位素子413aの内径と外径の差の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。単位素子413aの数の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。
【0026】
以上述べたばね構造413は、押圧部材42を初期位置に復帰させる復帰ばねとして機能する。ばね構造413は、筒部41の内部に収容室410を構成するために、水密性を有する。ばね構造413は、筒部41の吐出口411a及び吸入口412a以外から収容室410に内容物が出入りしないように構成されている。
【0027】
第1逆止弁44及び第2逆止弁45は、ポンプ機構4において内容物の逆流を防止るために設けられる。つまり、第1逆止弁44及び第2逆止弁45は、ポンプ機構4により容器本体3内から吸引した内容物が容器本体3に戻らないように、内容物の流れる方向を制限する。
【0028】
図3に示すように、第1逆止弁44は、筒部41の吐出口411aにある。第1逆止弁44は、内容物が吐出口411aから収容室410に戻ることを防止する構造である。
図6及び
図7に示すように、第1逆止弁44は、本体441と、弁体442とを有する。
【0029】
本体441は、筒状である。
図6及び
図7において、本体441は、円筒状である。本体441は、押圧部材42側の第1開口441aと筒部41側の第2開口441bとを有する。第1開口441aは弁体442を通すことができる大きさである。第2開口441bは弁体442を通すことができない大きさである。
図3に示すように、本体441は、筒部41の吐出口411aから筒部41内に挿入され、筒部41の第1端411に固定される。
【0030】
弁体442は、本体441内にある。本実施の形態では、弁体442は、ボール弁である。
【0031】
第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より高い場合には、弁体442が第2開口441bを塞ぐ位置にある。第1逆止弁44は、弁体442が第2開口441bを塞いでいる間は、内容物の移動を制限し、内容物が吐出口411aから収容室410に戻ることを防止する。第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より低い場合には、弁体442が第2開口441bを塞がない位置にある。第1逆止弁44は、弁体442が第2開口441bを塞いでいない間は、内容物の移動を制限しない。
【0032】
第1逆止弁44は、筒部41と同じ熱可塑性樹脂製である。第1逆止弁44において、本体441と弁体442とは、別部品であるが、筒部41と同じ熱可塑性樹脂製である。本体441と弁体442とは、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。つまり、第1逆止弁44とは、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。第1逆止弁44において、本体441と弁体442とは、内容物で押されて変形することがないような剛性を有する。
【0033】
図3に示すように、第2逆止弁45は、筒部41の吸入口412aにある。第2逆止弁45は、内容物が吸入口412aから容器本体3に戻ることを防止する構造である。
図6及び
図7に示すように、第2逆止弁45は、本体451と、弁体452と、蓋453とを有する。
【0034】
本体451は、筒状である。
図6及び
図7において、本体451は、円筒状である。本体451は、筒部41側の第1開口451aと筒部41とは反対側の第2開口451bとを有する。第1開口451aは弁体452を通すことができる大きさである。第2開口451bはチューブ46を挿入可能な大きさである。
図3に示すように、本体451は、受け部451cを有する。受け部451cは、本体451の内周面から突出し、弁体452により閉塞される開口を規定する。
図3に示すように、本体451は、筒部41の吸入口412aから筒部41内に挿入され、筒部41の第2端412に固定される。
【0035】
図3に示すように、弁体452は、本体451内において受け部451cと第1開口451aとの間にある。
図3の弁体452は、ボール弁である。
【0036】
蓋453は、本体451の第1開口451aを覆う大きさである。
図6及び
図7では、蓋453は、円盤状である。蓋453は、弁体452が本体451内から出ないように弁体452の移動を制限する。蓋453は、複数の貫通孔453aを有している。貫通孔453aは、弁体452は通さないが、内容物の移動は制限しない大きさである。
【0037】
第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より高い場合には、弁体452が受け部451cに当たって、受け部451cの開口が閉じられる。第2逆止弁45は、弁体452が受け部451cの開口を塞いでいる間は、内容物の移動を制限し、内容物が吸入口412aから容器本体3に戻ることを防止する。第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より低い場合には、弁体452が受け部451cから離れて、受け部451cの開口が開かれる。第2逆止弁45は、弁体452が受け部451cの開口を塞いでいない間は、内容物の移動を制限しない。
【0038】
第2逆止弁45は、筒部41と同じ熱可塑性樹脂製である。第2逆止弁45において、本体451と弁体452と蓋453は、別部品であるが、筒部41と同じ熱可塑性樹脂製である。本体451と弁体452と蓋453は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。つまり、第2逆止弁45は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。第2逆止弁45において、本体451と弁体452と蓋453とは、内容物で押されて変形することがないような剛性を有する。
【0039】
押圧部材42は、ポンプ機構4を動作させるために用いられる。押圧部材42は、外力を受けて筒部41を筒部41の中心軸C1の方向に圧縮するように初期位置から移動可能である。
図6及び
図7に示すように、押圧部材42は、ステム421と、ロッド422とを有する。
【0040】
ステム421は、押圧部材42において筒部41を押圧するための部位である。本実施の形態において、
図3に示すように、ステム421は、第1逆止弁44の本体441に当たる。押圧部材42は、直接的に筒部41を押圧するというよりは、第1逆止弁44の本体441を介して筒部41を押圧する。ステム421は、第1逆止弁44の本体441の第1開口441aを覆う大きさである。
図6及び
図7において、ステム421は、円盤状である。
【0041】
ロッド422は、ステム421から筒部41とは反対側に延びる。ロッド422は、円筒状である。ロッド422の外径は、ステム421の外径より小さい。
【0042】
図3に示すように、押圧部材42は、ステム421とロッド422とを貫通する流路423を内部に有する。流路423は、筒部41の収容室410につながる。
図7に示すように、ステム421における筒部41側の面には、複数の突起424がある。複数の突起424は、第1逆止弁44の弁体442が流路423を塞がないようにするために設けられる。
【0043】
押圧部材42は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。押圧部材42において、ステム421とロッド422とは連続一体である。押圧部材42は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。押圧部材42は、外力を受けた際に座屈しないように十分に高い剛性を有する。特に、押圧部材42は、外力を受けた際にロッド422が座屈しないように十分に高い剛性を有する。
【0044】
ガイド部材43は、押圧部材42が筒部41の中心軸C1の方向に沿って移動するように押圧部材42を筒部41に対してガイドする。ガイド部材43は、容器本体3に対してポンプ機構6を位置決めする。
図6及び
図7に示すように、ガイド部材43は、筒状である。本実施の形態において、ガイド部材43は、円筒状である。
図6に示すように、ガイド部材43は、ガイド部材43の軸方向の第1端に開口431を有する。
図7に示すように、ガイド部材43は、ガイド部材43の軸方向の第2端に底432を有する。底432には、貫通孔432aが設けられる。
図6に示すように、ガイド部材43の第1端側の外周面には、フランジ433があり、フランジ433とガイド部材43の第1端との間には、ネジ溝434がある。ガイド部材43の側面には、ガイド部材43の軸方向に延びる複数のスリット435がある。
【0045】
図3に示すように、ガイド部材43は、筒部41と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45とを収容する。第2逆止弁45は、ガイド部材43の軸方向の第2端側にあり、底432に当たる。第2逆止弁45の本体451の第2開口451bは、ガイド部材43の底432の貫通孔432aから露出する。第1逆止弁44は、ガイド部材43の軸方向の第1端側にあり、第1逆止弁44の第1開口441aがガイド部材43の開口431から露出する。筒部41は、第1逆止弁44と第2逆止弁45との間にある。このように、ガイド部材43は、ポンプ機構4のハウジングを構成する。ポンプディスペンサ2を容器本体3に取り付けた場合には、ガイド部材43は容器本体3に対して変位しないように固定される。これによって、ガイド部材43は、容器本体3に対してポンプ機構6を位置決めする。
【0046】
図3に示すように、ガイド部材43は、第1逆止弁44を、筒部41の中心軸C1の方向に沿って移動可能に収容する。
図3では、第1逆止弁44が、筒部41の第1端411を介してガイド部材43の内面に当たり、筒部41の中心軸C1の方向にガイド部材43の内面を摺動可能である。これによって、第1逆止弁44が筒部41の中心軸C1の方向に沿って移動するようにガイド部材43によりガイドされることになる。押圧部材42は、第1逆止弁44に対して固定されている。そのため、押圧部材42は、筒部41の中心軸C1の方向に沿って移動するように筒部41に対してガイドされる。
【0047】
ガイド部材43は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。ガイド部材43は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。ガイド部材43は、押圧部材42のガイドが可能な剛性を有する。ガイド部材43は、押圧部材42による筒部41の圧縮の際にかかる荷重により破損しない剛性を有する。
【0048】
チューブ46は、容器本体3内の内容物のポンプ機構4の収容室410への吸入を促進するために設けられる。特に、チューブ46は、容器本体3内の内容物の残量が少なくなった場合でも、ポンプ機構4により内容物を吸入できるようにするために設けられる。
図6及び
図7に示すように、チューブ46は、筒状である。本実施の形態において、チューブ46は、円筒状である。
図5に示すように、チューブ46は、ガイド部材43の貫通孔432aを通ることができる大きさである。
図3に示すように、チューブ46は、チューブ46の第1端(
図3での上端)が第2逆止弁45の本体451の第2開口451bから本体451内に挿入され、本体451に固定される。チューブ46の第2端(
図3での下端)は、ガイド部材43の貫通孔432aを通って外部に延びる。
【0049】
チューブ46は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。チューブ46は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。チューブ46は、内容物の吸入が可能な剛性を有する。
【0050】
以上述べたポンプ機構4は、筒部41と、筒部41に結合される部品とを備える。部品は、押圧部材42と、ガイド部材43と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45と、チューブ46とを含む。筒部41と部品とは、同一の熱可塑性樹脂製である。部品は剛体構造を有し、筒部41はばね構造413を有する。このように、ポンプ機構4の部品(筒部41と、押圧部材42と、ガイド部材43と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45と、チューブ46)は、同じ熱可塑性樹脂製である。ポンプ機構4は、単一の熱可塑性樹脂で形成されているため、いわゆるモノマテリアルである。そのため、ポンプ機構4をリサイクルする際には、ポンプ機構4の分解作業自体が不要になり、ポンプ機構4をそのまま破砕することができる。そのため、ポンプ機構4のリサイクルが容易になる。
【0051】
取付部材5は、ポンプ機構4を容器本体3に取り付けるために用いられる。
図2及び
図4に示すように、取付部材5は、キャップ状である。取付部材5は、開口51aを有する円環状の枠部51と、枠部51の外周から枠部51の厚み方向に延びる円筒状の側部52とを備える。開口51aは、ガイド部材43の軸方向の第1端とフランジ433と間の部位(ネジ溝434)を通すが、フランジ433を通さない大きさである。側部52は、側部52の内周面にネジ溝53を備える。ネジ溝53は、容器本体3のネジ溝33に対応する。取付部材5は、容器本体3のネジ溝33にネジ溝53を結合することで、容器本体3の口部32に取り付けられる。そのため、ポンプ機構4を取付部材5に固定することによって、ポンプ機構4を容器本体3に取り付けることが可能となる。
【0052】
取付部材5は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。取付部材5において、枠部51と側部52とは連続一体である。取付部材5は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。取付部材5は、ポンプ機構4を容器本体3に取り付けることができるような剛性を有する。
【0053】
固定部材6は、ポンプ機構4を取付部材5に固定するために用いられる。
図2及び
図4に示すように、固定部材6は、キャップ状である。固定部材6は、取付部材5の開口51aを通らない大きさである。固定部材6は、開口61aを有する円環状の枠部61と、枠部61の外周から枠部61の厚み方向に延びる円筒状の側部62とを備える。開口61aは、押圧部材42のロッド422を通すが、ガイド部材43を通さない大きさである。側部62は、側部62の内周面にネジ溝63を備える(
図3参照)。ネジ溝63は、ガイド部材43のネジ溝434に対応する。固定部材6は、取付部材5の開口51aから突出するガイド部材43のネジ溝434にネジ溝63を結合することで、ガイド部材43の軸方向の第1端に取り付けられる。これによって、固定部材6の側部62とガイド部材43のフランジ433との間に、取付部材5の枠部51が挟まれる。その結果、ポンプ機構4のガイド部材43が取付部材5に固定される。このようにして、ポンプ機構4が固定部材6により取付部材5に固定される。
【0054】
固定部材6は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。固定部材6において、枠部61と側部62とは連続一体である。固定部材6は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。固定部材6は、ポンプ機構4を取付部材5に固定することができるような剛性を有する。
【0055】
ヘッド7は、押圧部材42を用いたポンプ機構4の操作を行いやすくするために設けられる。ヘッド7は、押圧部材42における筒部41と反対側に取り付けられる。
図5及び
図6に示すように、ヘッド7は、本体71と、ノズル72とを備える。本体71は、円盤状である。本体71の底面には、押圧部材42のロッド422の先端が挿入される挿入口73がある。挿入口73にロッド422が挿入されることで、挿入口73が押圧部材42の流路423に接続される。ノズル72は、本体71の側面から延びる。ノズル72の先端には、吐出口74がある。
図3に示すように、ヘッド7は、本体71の挿入口73とノズル72の吐出口74とをつなぐ吐出路75がある。吐出路75は、挿入口73を介して、押圧部材42の流路423につながる。したがって、ポンプ機構4から吐出される内容物は、第1逆止弁44の内部、押圧部材42の流路423及びヘッド7の吐出路75を通って、吐出容器1の外部に吐出される。
【0056】
ヘッド7は、筒部41と同一の熱可塑性樹脂製である。ヘッド7において、本体71とノズル72とは連続一体である。ヘッド7は、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。ヘッド7は、ポンプ機構4を動作させるための外力を押圧部材42に伝達できるような剛性を有する。
【0057】
[1.1.2 動作]
以下、吐出容器1のポンプ機構4の動作の一例について
図8~
図10を参照して説明する。
図8~
図10は、ポンプ機構4の動作の一例の概略説明図である。
図8~
図10では、図示の簡略化のため、筒部41の一部を省略してばね構造413のみを図示している。
【0058】
図8は、押圧部材42が押圧されていない状態を示す。
図8の状態では、ポンプ機構4の収容室410内に内容物8が充填されている。ユーザが、吐出容器1から内容物を吐出させたい場合には、ポンプディスペンサ2のヘッド7を押し込めばよい。これによって、押圧部材42には、
図8に矢印A1で示すように、筒部41の中心軸C1に沿った外力がかかり、初期位置から押し下げられる。
【0059】
図9は、押圧部材42が押し込まれた状態を示す。押圧部材42が押し下げられることによって、第1逆止弁44が押圧部材42のステム421により押され、ガイド部材43でガイドされながら、第2逆止弁45に向かって移動する。これによって、筒部41は、筒部41の中心軸C1の方向に圧縮される。より詳細には、筒部41のばね構造413が筒部41の中心軸C1の方向に圧縮されるように変形し、これによって、筒部41の収容室410の容積が減少する。その結果、筒部41の収容室410内の圧力が高くなる。第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より低くなる。そのため、第1逆止弁44では、弁体442が第1開口441a側に移動し、押圧部材42の突起424に当たる。このように、第1逆止弁44では、弁体442が、第2開口441bを塞がない位置に位置する。突起424により、弁体442は、押圧部材42の流路423を塞がない。そのため、ポンプ機構4の収容室410内の内容物8は、第1逆止弁44の内部及び押圧部材42の流路423を通り、ヘッド7の吐出路75を経て吐出口74から外部に吐出される。第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より高くなる。そのため、第2逆止弁45では、弁体452が受け部451cに当たり、受け部451cの開口が閉じられる。第2逆止弁45は、弁体452が受け部451cの開口を塞いでいる間は、内容物の移動を制限し、内容物8が収容室410から容器本体3に戻ることを防止する。
【0060】
図9の状態では、筒部41のばね構造413が圧縮されている。そのため、押圧部材42には、
図9の矢印A2で示すように、筒部41のばね構造413の復元力がかかる。ユーザが、ポンプディスペンサ2のヘッド7から手を離した場合、押圧部材42から外力が除去されるため、押圧部材42は、筒部41により初期位置に移動させられる。
【0061】
図10は、押圧部材42が初期位置に復帰した状態を示す。
図10の状態では、筒部41が圧縮された状態から、元の状態に戻る。そのため、筒部41の収容室410内の圧力が低くなる。第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より高くなる。そのため、第1逆止弁44では、弁体442が第2開口441b側に移動し、第2開口441bが閉じられる。このように、第1逆止弁44では、弁体442が、第2開口441bを塞ぐ位置に位置する。第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より低くなる。そのため、第2逆止弁45では、弁体452が受け部451cから離れて蓋453に当たり、受け部451cの開口が開かれる。蓋453には、複数の貫通孔453aがあるから、第2逆止弁45は、弁体452が受け部451cの開口を塞いでいない間は、内容物の移動を制限しない。収容室410内の圧力は低下した状態であるから、第2逆止弁45が開かれると、容器本体3から内容物8がチューブ46及び第2逆止弁45の内部を通って、吸入口412aから収容室410内に入る。収容室410内に内容物8がある程度充填されると、筒部41の収容室410内の圧力と容器本体3内の圧力とに差がなくなり、内容物8が収容室410内に吸引されなくなる。これによって、ポンプ機構4は、
図8に示す状態に戻る。
【0062】
このように、ポンプディスペンサ2において、筒部41は、水密性を有しており、内部に、収容室410を構成する。筒部41は、押圧部材42への外力が除去された場合に押圧部材42を初期位置に復帰させるばね構造を有する。
【0063】
以上述べたポンプディスペンサ2では、ポンプ機構4の部品(筒部41と、押圧部材42と、ガイド部材43と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45と、チューブ46)と、取付部材5と、固定部材6と、ヘッド7とは、同じ熱可塑性樹脂製である。ポンプディスペンサ2は、単一の熱可塑性樹脂で形成されているため、いわゆるモノマテリアルである。そのため、ポンプディスペンサ2をリサイクルする際には、ポンプディスペンサ2の分解作業自体が不要になり、ポンプディスペンサ2をそのまま破砕することができる。そのため、ポンプディスペンサ2のリサイクルが容易になる。
【0064】
以上述べたポンプディスペンサ2の部品(ポンプ機構4の筒部41、押圧部材42、ガイド部材43、第1逆止弁44、第2逆止弁45及びチューブ46と、取付部材5と、固定部材6と、ヘッド7)は、熱可塑性樹脂製である。ポンプディスペンサ2の部品は、例えば、アディティブマニュファクチャリング技術及びフォーマティブ(フォーミング)マニュファクチャリング技術(射出成形、ブロー成形等)等の従来周知の製造技術を利用して形成することができる。
【0065】
[1.1.3 熱可塑性樹脂]
以上述べたように、吐出容器1のポンプ機構4を含む複数の部品は、同一の熱可塑性樹脂製である。吐出容器1の材料に利用する熱可塑性樹脂は、通常は剛性を有し、メタマテリアル構造によりばね性を発現できることが好ましい。一例として、熱可塑性樹脂は、0.1GPa以上10GPa以下の引張弾性率を有するとよい。より好ましくは、熱可塑性樹脂は、0.1GPa以上5GPa以下の引張弾性率を有するとよい。このような熱可塑性樹脂を用いることにより、剛体構造において10kg以上の荷重に対して座屈しない硬さを有し、ばね構造において10g/mm~200g/mmのばね性を実現できる。
【0066】
下記の表1は、吐出容器1に利用可能な熱可塑性樹脂の一例を示す。
【0067】
【0068】
なお、表1に挙げた熱可塑性樹脂であっても、種類によっては、引張弾性率が1GPa以上10GPa以下の範囲にないものがあるが、吐出容器1の材料に利用する熱可塑性樹脂は、表1の熱可塑性樹脂において引張弾性率が1GPa以上10GPa以下のものを利用すればよい。
【0069】
[1.1.4 評価]
筒部41にばね構造413により付与されるばね性を、ばね定数により評価した。ばね定数は、計算により求めた。一例として、筒部41の熱可塑性樹脂を、弾性率が3.2GPaのポリエチレンテレフタレートとし、ポアソン比を0.4、ばね構造413の厚みを0.014mm、単位素子413aの数を6、各単位素子413aのD1を5mm、D2を20mmとした。この場合、ばね構造413のばね定数は、約106g/mmとなった。一般的なポンプディスペンサに利用される金属製のコイルスプリングのばね定数は約100g/mm程度である。この設計では、ばね構造413のばね定数は、金属製のコイルスプリングのばね定数と同等である。
【0070】
[1.1.5 効果等]
以上述べたように、ポンプディスペンサ2は、容器本体3内の内容物8を吸入して吐出するポンプ機構4を備える。ポンプ機構4は、中心軸C1を有し、内部に収容室410を構成する水密性を有する筒部41と、筒部41を筒部41の中心軸C1の方向に圧縮するように初期位置から移動可能な押圧部材42とを備える。押圧部材42と筒部41は、同一の熱可塑性樹脂製である。押圧部材42は、剛体構造を有する。筒部41は、押圧部材42を初期位置に復帰させるばね構造413を有する。この構成は、リサイクルが容易になる。
【0071】
ポンプディスペンサ2において、熱可塑性樹脂は、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンプラスチック、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びアクリロニトリル・スチレン・アクリレートからなる群から選択される。この構成は、リサイクルが容易になる。
【0072】
ポンプディスペンサ2において、熱可塑性樹脂の引張弾性率は0.1GPa以上10GPa以下である。この構成は、押圧部材の剛性と筒部のばね性との両立を可能にする。
【0073】
ポンプディスペンサ2において、ばね構造413は、水密性のある力学的メタマテリアル構造を含む。この構成は、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0074】
ポンプディスペンサ2において、ばね構造413では、筒部41の中心軸C1の方向に直交する面内における開口サイズが、筒部41の中心軸C1の方向において周期的に変化する。この構成は、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0075】
ポンプディスペンサ2において、ポンプ機構4は、押圧部材42が筒部41の中心軸C1の方向に沿って移動するように押圧部材42を筒部41に対してガイドするガイド部材43を、さらに備える。ガイド部材43は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、ガイド部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0076】
ポンプディスペンサ2において、ガイド部材43は、容器本体3に対してポンプ機構4を位置決めし、押圧部材42による筒部41の圧縮の際にかかる荷重により破損しない剛性を有する。この構成は、耐久性の向上を可能にする。
【0077】
ポンプディスペンサ2において、ポンプ機構4は、第1及び第2逆止弁44,45を、さらに備える。筒部41は、中心軸C1の方向の両端に吐出口411a及び吸入口412aを有する。第1逆止弁44は、筒部41の吐出口411aにあって、内容物が吐出口411aから収容室410に入ることを防止する構造である。第2逆止弁45は、筒部41の吸入口412aにあり、内容物が吸入口412aから出ることを防止する構造である。第1及び第2逆止弁44,45は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、第1及び第2逆止弁を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0078】
ポンプディスペンサ2は、押圧部材42における筒部41とは反対側に取り付けられるヘッド7を、さらに備える。押圧部材42は、筒部41の収容室410につながる流路423を備える。ヘッド7は、押圧部材42の流路423につながる吐出路75を備える。ヘッド7は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、ヘッドを取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0079】
ポンプディスペンサ2において、ポンプ機構4は、筒部41における押圧部材42とは反対側に延びるチューブ46を、さらに備える。チューブ46は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、チューブを取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0080】
ポンプディスペンサ2は、ポンプ機構4を容器本体3に取り付ける取付部材5を、さらに備える。取付部材5は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、取付部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0081】
ポンプディスペンサ2は、ポンプ機構4;4Aを取付部材5に固定する固定部材6を、さらに備える。固定部材6は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、固定部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0082】
ポンプディスペンサ2は、ポンプ機構4;4Aを含む複数の部品のみから構成される。複数の部品は、同一の熱可塑性樹脂製である。この構成は、ポンプディスペンサが単一の熱可塑性樹脂で形成されているため、ポンプディスペンサの分解作業自体が不要になり、ポンプディスペンサをそのまま破砕することができ、リサイクルが容易になる。
【0083】
以上述べたポンプディスペンサ2は、容器本体3内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構4を備える。ポンプ機構4は、中心軸C1を有し、内部に収容室410を構成する水密性を有する筒部41と、筒部41に結合される部品(押圧部材42と、ガイド部材43と、第1逆止弁44と、第2逆止弁45と、チューブ46)とを備える。部品と筒部41は、同一の熱可塑性樹脂製であり、部品は、剛体構造を有し、筒部41は、ばね構造413を有する。この構成は、リサイクルが容易になる。
【0084】
以上述べた吐出容器1は、ポンプディスペンサ2と、ポンプディスペンサ2が取り付けられる容器本体3とを備える。この構成は、リサイクルが容易になる。
【0085】
吐出容器1において、容器本体3は、熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この構成は、吐出容器の分解作業自体が不要になり、吐出容器をそのまま破砕することができ、リサイクルが容易になる。
【0086】
[1.2 実施の形態2]
[1.2.1 構成]
図11は、実施の形態2のポンプディスペンサのポンプ機構4Aの構成例の概略断面図である。
図11のポンプ機構4Aは、実施の形態1のポンプ機構4とは、実施の形態1のポンプ機構4の筒部41及びガイド部材43の代わりに、筒部41A及びガイド部材43Aを備える点で、異なる。
【0087】
図12は、筒部41Aの構成例の概略断面図である。筒部41Aは、実施の形態1の筒部41のばね構造413とは異なるばね構造413Aを有する。なお、筒部41Aは、筒部41と同様の第1端411及び第2端412を有するが、図示を簡略化するためだけに省略されている。
【0088】
ばね構造413Aは、ばね構造413と同様に水密性を有する力学的メタマテリアル構造を有する。ばね構造413Aは、第1、第2及び第3周期構造414,415,416を有する。第1及び第2周期構造414,415は、筒部41Aの中心軸C1の両端側(第1端411及び第2端412)側にある。第3周期構造416は、第1及び第2周期構造414,415間にある。第1、第2及び第3周期構造414,415,416では、筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する面内における開口サイズが、筒部41Aの中心軸C1の方向において周期的に変化する。本実施の形態において、開口サイズは、内径で表す。
【0089】
図12に示すように、第1周期構造414の内径は、筒部41Aの中心軸C1の方向において最小値D11と最大値D12との間で周期的に変化する。第1周期構造414の開口サイズの変化幅は、第1周期構造414の内径の最小値D11と最大値D12との差で表される。第1周期構造414の厚み(内径と外径との差)が実質的に均一である。第1周期構造414は、2つの単位素子414a,414bを含む。第2周期構造415の内径は、筒部41Aの中心軸C1の方向において最小値D21と最大値D22との間で周期的に変化する。第2周期構造415の開口サイズの変化幅は、第2周期構造415の内径の最小値D21と最大値D22との差で表される。第2周期構造415の厚み(内径と外径との差)が実質的に均一である。第2周期構造415は、2つの単位素子415a,415bを含む。第3周期構造416の内径は、筒部41Aの中心軸C1の方向において最小値D31と最大値D32との間で周期的に変化する。第1周期構造414の開口サイズの変化幅は、第3周期構造416の内径の最小値D31と最大値D32との差で表される。第3周期構造416の厚み(内径と外径との差)が実質的に均一である。第3周期構造416は、2つの単位素子416a,416bを含む。
【0090】
図12において、第3周期構造416の開口サイズの変化幅は、第1及び第2周期構造414,415の開口サイズの変化幅より大きい。
図12では、第1周期構造414の内径の最小値D11と、第2周期構造415の内径の最小値D21と、第3周期構造415の内径の最小値D31とは等しいが、第3周期構造416の内径の最大値D32は、第1周期構造414の内径の最大値D12及び第2周期構造415の内径の最大値D22のいずれよりも大きい。第1周期構造414の内径の最大値D12と、第2周期構造415の内径の最大値D22とは等しい。第1周期構造414の厚みと、第2周期構造415の厚みと、第3周期構造415の厚みとは等しい。
【0091】
ばね構造413Aのばね性を決めるばね定数は、熱可塑性樹脂の特性(引張弾性率、ポアソン比等)、各単位素子の形状(開口サイズの変化幅、内径と外径の差(厚み))、及び、各単位素子の数に依存すると考えられる。熱可塑性樹脂の引張弾性率及びポアソン比の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。単位素子の内径の最小値と最大値との差の増加に対してはばね定数が小さくなると考えられる。単位素子の内径と外径の差の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。単位素子の数の増加に対してはばね定数が大きくなると考えられる。
【0092】
ばね構造413Aでは、第3周期構造416の開口サイズの変化幅は、第1及び第2周期構造414,415の開口サイズの変化幅より大きい。第1~第3周期構造416は、熱可塑性樹脂の特性(引張弾性率、ポアソン比等)及び厚みが等しいから、第3周期構造416のばね定数が、第1及び第2周期構造414,415のばね定数より小さくなる。そのため、筒部41Aが押圧部材42で圧縮された場合に、第3周期構造416が、第1周期構造414及び第2周期構造415よりも大きく変形しやすくなる。筒部41Aが押圧部材42で圧縮された場合に、第1周期構造414及び第2周期構造415は、筒部41Aの中心軸C1の方向に変形し、筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する方向にはほとんど変形しない。第3周期構造416は、筒部41Aの中心軸C1の方向及び筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する方向それぞれにおいて大きく変形する。一例として、通常想定される力で押圧部材42が押された場合に、ばね構造413Aは、ばね構造413Aの容積が、第3周期構造416の単位素子416bの容積程度減少するように、変形する。
【0093】
第1周期構造414の開口サイズが第3周期構造416の開口サイズより小さいことによって、第1周期構造414の開口サイズが第3周期構造416の開口サイズと等しい場合と比較して、筒部41Aの吐出口411aから収容室410外に内容物8を吐出するのに必要な力を低減できて、ポンプ機構4Aのポンプ機能の向上を可能とする。第2周期構造415の開口サイズが第3周期構造416の開口サイズより小さいことによって、第2周期構造415の開口サイズが第3周期構造416の開口サイズと等しい場合と比較して、筒部41Aの吸入口412aから収容室410内に内容物8を吸い上げるのに必要な力を低減できて、ポンプ機構4Aのポンプ機能の向上を可能とする。このように、
【0094】
このように、ばね構造413Aでは、筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する面内において、筒部41Aの中心軸C1の方向の両端部(第1周期構造414及び第2周期構造415)の開口サイズよりも、筒部41Aの中心軸C1の方向の両端部(第1周期構造414及び第2周期構造415)間の部位(第3周期構造416)の開口サイズのほうが大きい。そのため、ポンプ機構のポンプ機能の向上を可能としながら、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0095】
[1.2.2 評価]
筒部41Aにばね構造413Aにより付与されるばね性を、ばね定数により評価した。ばね定数は、計算により求めた。一例として、筒部41Aの熱可塑性樹脂を、弾性率が3.2GPaのポリエチレンテレフタレートとし、ポアソン比を0.4、ばね構造413の厚みを0.014mm、第1~第3周期構造414~416それぞれの単位要素の数を2(合計で6)、D11、D21、D31を5mm、D12、D22を10mm、D32を30mmとした。この場合、ばね構造413Aのばね定数は、約106g/mmとなった。一般的なポンプディスペンサに利用される金属製のコイルスプリングのばね定数は約100g/mm程度である。ばね構造413Aのばね定数は、金属製のコイルスプリングのばね定数と同等である。
【0096】
図11のばね構造413Aは、ばね構造413と同様に、押圧部材42を初期位置に復帰させる復帰ばねとして機能する。ばね構造413Aは、筒部41Aの内部に収容室410を構成するために、水密性を有する。ばね構造413Aは、筒部41Aの吐出口411a及び吸入口412a以外から収容室410に内容物が出入りしないように構成されている。
【0097】
図11のガイド部材43Aは、実施の形態1のガイド部材43と同様に、押圧部材42が筒部41Aの中心軸C1の方向に沿って移動するように押圧部材42を筒部41Aに対してガイドする。ガイド部材43Aは、実施の形態1のガイド部材43とは異なり、ガイド部材43Aの軸方向の第1端と第2端との間に、膨出部436を備える。膨出部436は、筒部41Aのばね構造413A、特に、ばね構造413Aの第3周期構造416とガイド部材43との干渉を防止するためにある。
図11では、ガイド部材43Aの内径が筒部41Aの第3周期構造416での外径より小さいが、ばね構造413Aで筒部41Aを伸長させることで、筒部41Aをガイド部材43Aの内部に配置できる。
【0098】
ガイド部材43Aは、筒部41Aと同一の熱可塑性樹脂製である。ガイド部材43Aは、ばね構造ではなく、剛体構造を有する。ガイド部材43Aは、押圧部材42Aのガイドが可能なように十分に高い剛性を有する。
【0099】
[1.2.3 動作]
以下、ポンプ機構4Aの動作の一例について
図13~
図15を参照して説明する。
図13~
図15は、ポンプ機構4Aの動作の一例の概略説明図である。
【0100】
図13は、押圧部材42が押圧されていない状態を示す。
図13の状態では、ポンプ機構4Aの収容室410内に内容物8が充填されている。ユーザが、吐出容器から内容物を吐出させたい場合には、ポンプディスペンサのヘッドを押し込めばよい。これによって、押圧部材42には、
図13に矢印A1で示すように、筒部41Aの中心軸C1に沿った外力がかかり、初期位置から押し下げられる。
【0101】
図14は、押圧部材42が押し込まれた状態を示す。押圧部材42が押し下げられることによって、第1逆止弁44が押圧部材42のステム421により押され、ガイド部材43Aでガイドされながら、第2逆止弁45に向かって移動する。これによって、筒部41Aは、筒部41Aの中心軸C1の方向に圧縮される。より詳細には、筒部41Aのばね構造413Aが筒部41Aの中心軸C1の方向に圧縮されるように変形し、これによって、筒部41Aの収容室410の容積が減少する。その結果、筒部41Aの収容室410内の圧力が高くなる。第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より低くなる。そのため、第1逆止弁44では、弁体442が、第2開口441bを塞がない位置に位置する。ポンプ機構4Aの収容室410内の内容物8は、第1逆止弁44の内部及び押圧部材42の流路423を通り、ヘッドの吐出路を経て吐出口から外部に吐出される。第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より高くなる。そのため、第2逆止弁45では、弁体452が受け部451cに当たり、受け部451cの開口が閉じられる。
【0102】
図14の状態では、筒部41Aのばね構造413Aが圧縮されている。そのため、押圧部材42には、
図14の矢印A2で示すように、筒部41Aのばね構造413Aの復元力がかかる。ユーザが、ポンプディスペンサのヘッドから手を離した場合、押圧部材42から外力が除去されるため、押圧部材42は、筒部41Aにより初期位置に移動させられる。
【0103】
図15は、押圧部材42が初期位置に復帰した状態を示す。
図15の状態では、筒部41Aが圧縮された状態から、元の状態に戻る。そのため、筒部41Aの収容室410内の圧力が低くなる。第1逆止弁44では、第1開口441a側の圧力が第2開口441b側の圧力より高くなる。そのため、第1逆止弁44では、弁体442が、第2開口441bを塞ぐ位置に位置する。第2逆止弁45では、第1開口451a側の圧力が第2開口451b側の圧力より低くなる。そのため、第2逆止弁45では、受け部451cの開口が開かれる。第2逆止弁45は、弁体452が受け部451cの開口を塞いでいない間は、内容物の移動を制限しない。収容室410内の圧力は低下した状態であるから、第2逆止弁45が開かれると、容器本体3から内容物8がチューブ46及び第2逆止弁45の内部を通って、吸入口412aから収容室410内に入る。収容室410内に内容物8がある程度充填されると、筒部41Aの収容室410内の圧力と容器本体3内の圧力とに差がなくなり、内容物8が収容室410内に吸引されなくなる。これによって、ポンプ機構4Aは、
図13に示す状態に戻る。
【0104】
[1.2.4 効果等]
以上述べたように、ポンプディスペンサにおいて、ばね構造413Aでは、筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する面内において、筒部41Aの中心軸C1の方向の両端部414,415の開口サイズよりも、筒部41Aの中心軸C1の方向の両端部414,415間の部位416の開口サイズのほうが大きい。この構成は、ポンプ機構のポンプ機能の向上を可能としながら、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0105】
また、ポンプディスペンサにおいて、ばね構造413Aでは、筒部41Aの中心軸C1の方向に直交する面内における開口サイズが、筒部41Aの中心軸C1の方向において周期的に変化する。この構成は、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0106】
また、ポンプディスペンサにおいて、ばね構造413Aは、筒部41Aの中心軸C1の両端側の第1及び第2周期構造414,415と、第1及び第2周期構造414,415間の第3周期構造416とを有する。第3周期構造416の開口サイズの最大値は、第1及び第2周期構造414,415の開口サイズの最大値より大きい。この構成は、ポンプ機構のポンプ機能の向上を可能としながら、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0107】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0108】
上記の実施の形態において、ポンプディスペンサは、ポンプ機構を含む複数の部品のみから構成され、複数の部品は、同一の熱可塑性樹脂製であるとよい。この場合、ポンプディスペンサは、いわゆるモノマテリアルであり、リサイクルが容易になる。しかしながら、ポンプディスペンサ2は、ポンプ機構の熱可塑性樹脂とは異なる材料の部品を含んでよい。このような部品は、容易に取り外しできることが好ましい。
【0109】
ポンプ機構4,4Aの筒部41,41Aのばね構造413,413Aにおいて、単位素子の形状(開口サイズの変化幅、内径と外径の差(厚み))、及び、単位素子の数は、特に限定されない。単位素子の形状(開口サイズの変化幅、内径と外径の差(厚み))、及び、単位素子の数は、ばね構造の目標のばね定数を考慮して適宜設定される。例えば、単位素子の数は、必ずしも2以上である必要はなく、所望のばね定数が得られるのであれば、1であってもよい。ばね構造は、単位素子の開口サイズの変化幅が異なる複数の周期構造を有してよい。ポンプ機構のばね構造は、実施の形態1,2のばね構造413,413Aに限定されない。ばね構造は、収容室410を構成できる水密性を有し、押圧部材42を初期位置に復帰させることが可能なばね性を有する構造であればよい。
【0110】
押圧部材42、ガイド部材43,43A、第1逆止弁44、第2逆止弁45、チューブ46の構成(形状等)は、上記の実施の形態の構成に限定されない。押圧部材42、ガイド部材43、第1逆止弁44、第2逆止弁45、チューブ46の構成は、従来周知の構成であってよい。第1逆止弁44及び第2逆止弁45は、実施の形態1,2のようなボール式ではなく、スイング式、リフト式、又はウエハ式であってもよい。チューブ46は、実施の形態1,2のような直管状ではなく、曲がった形状であってよい。ガイド部材43,43A、第1逆止弁44、第2逆止弁45、及びチューブ46は、状況に応じて省略可能である。
【0111】
取付部材5、固定部材6、及びヘッド7の構成(形状等)は、上記の実施の形態の構成に限定されない。取付部材5、固定部材6、及びヘッド7の構成は、従来周知の構成であってよい。ヘッド7は、内容物をミスト状又はフォーム状にして吐出する部材を備えてもよい。
【0112】
容器本体3の構成(形状等)は、上記の実施の形態の構成に限定されない。容器本体3の構成は、従来周知の構成であってよい。
【0113】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。なお、文章の見やすさを考慮して2回目以降の括弧付きの符号の記載を省略する場合がある。
【0114】
第1の態様は、ポンプディスペンサ(2)であって、容器本体(3)内の内容物(8)を吸入して吐出するポンプ機構(4;4A)を備える。前記ポンプ機構(4;4A)は、中心軸(C1)を有し、内部に収容室(410)を構成する水密性を有する筒部(41;41A)と、前記筒部(41;41A)を前記筒部(41;41A)の中心軸(C1)の方向に圧縮するように初期位置から移動可能な押圧部材(42)とを備える。前記押圧部材(42)と前記筒部(41;41A)は、同一の熱可塑性樹脂製である。前記押圧部材(42)は、剛体構造を有する。前記筒部(41;41A)は、前記押圧部材(42)を前記初期位置に復帰させるばね構造(413;413A)を有する。この態様は、リサイクルが容易になる。
【0115】
第2の態様は、第1の態様に基づくポンプディスペンサ(2)である。第2の態様において、前記熱可塑性樹脂は、硬質塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンプラスチック、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びアクリロニトリル・スチレン・アクリレートからなる群から選択される。この態様は、リサイクルが容易になる。
【0116】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づくポンプディスペンサ(2)である。第3の態様において、前記熱可塑性樹脂の弾性率は0.1GPa以上10GPa以下である。この態様は、押圧部材の剛性と筒部のばね性との両立を可能にする。
【0117】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第4の態様において、前記ばね構造(413;413A)は、水密性のある力学的メタマテリアル構造を含む。この態様は、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0118】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第5の態様において、前記ばね構造(413A)では、前記筒部(41A)の中心軸(C1)の方向に直交する面内において、前記筒部(41A)の中心軸(C1)の方向の両端部(414,415)の開口サイズよりも、前記筒部(41A)の中心軸(C1)の方向の両端部(414,415)間の部位(416)の開口サイズのほうが大きい。この態様は、ポンプ機構のポンプ機能の向上を可能としながら、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0119】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第6の態様において、前記ばね構造(413;413A)では、前記筒部(41;41A)の中心軸(C1)の方向に直交する面内における開口サイズが、前記筒部(41;41A)の中心軸(C1)の方向において周期的に変化する。この態様は、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0120】
第7の態様は、第6の態様に基づくポンプディスペンサ(2)である。第7の態様において、前記ばね構造(413A)は、前記筒部(41A)の中心軸(C1)の両端側の第1及び第2周期構造(414,415)と、前記第1及び第2周期構造(414,415)間の第3周期構造(416)とを有する。前記第3周期構造(416)の開口サイズの変化幅は、前記第1及び第2周期構造(414,415)の開口サイズの変化幅より大きい。この態様は、ポンプ機構のポンプ機能の向上を可能としながら、ばね構造のばね性の向上を可能とする。
【0121】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第8の態様において、前記ポンプ機構(4;4A)は、前記押圧部材(42)が前記筒部(41;41A)の中心軸(C1)の方向に沿って移動するように前記押圧部材(42)を前記筒部(41;41A)に対してガイドするガイド部材(43)を、さらに備える。前記ガイド部材(43)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、ガイド部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0122】
第9の態様は、第8の態様に基づくポンプディスペンサ(2)である。第9の態様において、前記ガイド部材(43;43A)は、前記容器本体(3)に対して前記ポンプ機構(4;4A)を位置決めし、前記押圧部材(42)による前記筒部(41)の圧縮の際にかかる荷重により破損しない剛性を有する。この態様は、耐久性の向上を可能にする。
【0123】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第10の態様において、前記ポンプ機構(4;4A)は、第1及び第2逆止弁(44,45)を、さらに備える。前記筒部(41;41A)は、前記中心軸(C1)の方向の両端に吐出口(411a)及び吸入口(412a)を有する。前記第1逆止弁(45)は、前記筒部(41;41A)の吐出口(411a)にあって、前記内容物が前記吐出口(411a)から前記収容室(410)に入ることを防止する構造である。前記第2逆止弁(45)は、前記筒部(41;41A)の吸入口(412a)にあり、前記内容物が前記吸入口(412a)から出ることを防止する構造である。前記第1及び第2逆止弁(44,45)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、第1及び第2逆止弁を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0124】
第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第11の態様において、前記ポンプディスペンサ(2)は、前記押圧部材(42)における前記筒部(41;41A)とは反対側に取り付けられるヘッド(7)を、さらに備える。前記押圧部材(42)は、前記筒部(41;41A)の収容室(410)につながる流路(423)を備える。前記ヘッド(7)は、前記押圧部材(42)の流路(423)につながる吐出路(75)を備える。前記ヘッド(7)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、ヘッドを取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0125】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第12の態様において、前記ポンプ機構(4;4A)は、前記筒部(41;41A)における前記押圧部材(42)とは反対側に延びるチューブ(46)を、さらに備える。前記チューブ(46)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、チューブを取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0126】
第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第13の態様において、前記ポンプディスペンサ(2)は、前記ポンプ機構(4;4A)を前記容器本体(3)に取り付ける取付部材(5)を、さらに備える。前記取付部材(5)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、取付部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0127】
第14の態様は、第13の態様に基づくポンプディスペンサ(2)である。第14の態様において、前記ポンプディスペンサ(2)は、前記ポンプ機構(4;4A)を前記取付部材(5)に固定する固定部材(6)を、さらに備える。前記固定部材(6)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、固定部材を取り外す必要がなくなるから、リサイクルがさらに容易になる。
【0128】
第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)である。第15の態様において、前記ポンプディスペンサ(2)は、前記ポンプ機構(4;4A)を含む複数の部品のみから構成される。前記複数の部品は、同一の熱可塑性樹脂製である。この態様は、ポンプディスペンサが単一の熱可塑性樹脂で形成されているため、ポンプディスペンサの分解作業自体が不要になり、ポンプディスペンサをそのまま破砕することができ、リサイクルが容易になる。
【0129】
第16の態様は、ポンプディスペンサ(2)であって、容器本体(3)内の内容物(8)を吸入して吐出するポンプ機構(4;4A)を備える。前記ポンプ機構(4;4A)は、中心軸(C1)を有し、内部に収容室(410)を構成する水密性を有する筒部(41;41A)と、前記筒部(41;41A)に結合される部品(42,43,44,45,46;42,43A,44,45,46)とを備える。前記部品と前記筒部は、同一の熱可塑性樹脂製であり、前記部品は、剛体構造を有し、前記筒部は、ばね構造(413;413A)を有する。この態様は、リサイクルが容易になる。
【0130】
第17の態様は、吐出容器(1)であって、第1~第16の態様のいずれか一つに基づくポンプディスペンサ(2)と、前記ポンプディスペンサ(2)が取り付けられる前記容器本体(3)とを備える。この態様は、リサイクルが容易になる。
【0131】
第18の態様は、第17の態様に基づく吐出容器(1)である。第18の態様において、前記容器本体(3)は、前記熱可塑性樹脂製であり、剛体構造を有する。この態様は、吐出容器の分解作業自体が不要になり、吐出容器をそのまま破砕することができ、リサイクルが容易になる。
【0132】
上記の第2~第14及び第16の態様は必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示は、ポンプディスペンサ、及び、吐出容器に適用可能である。具体的には、容器本体内の内容物を吸入して吐出するポンプ機構を備えるポンプディスペンサ、及び、吐出容器に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 吐出容器
2 ポンプディスペンサ
3 容器本体
4,4A ポンプ機構
41,41A 筒部
411a 吐出口
412a 吸入口
413,413A ばね構造
414 第1周期構造(第1端部)
415 第2周期構造(第2端部)
416 第3周期構造(第1端部と第2端部との間の部位)
C1 中心軸
42 押圧部材
423 流路
43,43A ガイド部材
44 第1逆止弁
45 第2逆止弁
46 チューブ
5 取付部材
6 固定部材
7 ヘッド
75 吐出路
8 内容物