(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026254
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】鋼管移動機構及びトンネル補強工法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20230216BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20230216BHJP
E21B 19/20 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/06 301K
E21B19/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132095
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 和則
(72)【発明者】
【氏名】小野 航
(72)【発明者】
【氏名】瀧 穂高
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正
【テーマコード(参考)】
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D054FA02
2D054FA07
2D054GA10
2D129AB05
2D129BA07
(57)【要約】
【課題】鋼管を継いで長尺鋼管を地山に打ち込む際に、重量の大きい鋼管をガイドセル上に容易に移動して搭載することができる。
【解決手段】上端部211から下端部212に向かって斜め下方に傾斜して形成され、載置収容された鋼管10の移動を規制するストッパーが下端部212に設けられている傾斜載置部21と、傾斜載置部221よりも上側に配設されると共に、一方の端部221が傾斜載置部21の上端部211よりも側方に突出して配置され、他方の端部222から一方の端部221まで水平若しくは傾斜載置部21の傾斜方向と逆方向の傾斜に形成されている待機載置部22と、昇降する昇降載置部31を有し、傾斜載置部21の傾斜方向の下端部側に配置されるリフター3を備える鋼管移動機構1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部から下端部に向かって斜め下方に傾斜して形成され、載置収容された鋼管の移動を規制するストッパーが前記下端部に設けられている傾斜載置部と、
前記傾斜載置部よりも上側に配設されると共に、一方の端部が前記傾斜載置部の上端部よりも側方に突出して配置され、他方の端部から前記一方の端部まで水平若しくは前記傾斜載置部の傾斜方向と逆方向の傾斜に形成されている待機載置部と、
昇降する昇降載置部を有し、前記傾斜載置部の傾斜方向の下端部側に配置されるリフターとを備え、
前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記ストッパーの規制から離脱して前記昇降載置部の上に移動させ、
前記昇降載置部を上昇させて前記昇降載置部から前記待機載置部の他方の端部に前記鋼管を移動して載置し、
前記待機載置部の一方の端部まで前記待機載置部の上で前記鋼管を移動してガイドセルの上に前記鋼管を落下させることを特徴とする鋼管移動機構。
【請求項2】
前記ストッパーの規制を解除することにより前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記ストッパーの規制から離脱し、前記昇降載置部の上に転動させて移動させることを特徴とする請求項1記載の鋼管移動機構。
【請求項3】
前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記昇降載置部を構成するアームで下から持ち上げて前記昇降載置部を前記傾斜載置部から離れるように後退することにより、前記鋼管を前記ストッパーの規制から離脱すると共に昇降載置部の上に移動させることを特徴とする請求項1記載の鋼管移動機構。
【請求項4】
前記昇降載置部を前進後退させる前後駆動部を設け、前記昇降載置部と前記前後駆動部とを一体して昇降させることを特徴とする請求項3記載の鋼管移動機構。
【請求項5】
前記傾斜載置部の傾斜に沿って複数の鋼管を横並びで載置収容可能であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の鋼管移動機構。
【請求項6】
前記傾斜載置部が上下に間隔を開けて複数段設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の鋼管移動機構。
【請求項7】
地山補強の長尺鋼管を構成する先頭鋼管と中間鋼管と端末鋼管がそれぞれ異なる段の前記傾斜載置部に種別毎に載置収容されていることを特徴とする請求項6記載の鋼管移動機構。
【請求項8】
前記昇降載置部の前記傾斜載置部側への突出幅を近接配置で横並びにした2本の鋼管の幅よりも小さくすることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の鋼管移動機構。
【請求項9】
前記待機載置部を支持する支柱のそれぞれに、前記待機載置部の支持高さを調整自在な高さ調整部が設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の鋼管移動機構。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の鋼管移動機構を用いるトンネル補強工法であって、
トンネル空間の切羽周辺に前記トンネル空間の下面よりも上面の高さが高い台座を掘り残し、前記台座に鋼管が収容された前記鋼管移動機構を載置する第1工程と、
ドリルジャンボのガイドセルの上に前記鋼管移動機構によって前記鋼管を落下させて前記ガイドセルに前記鋼管を搭載し、前記鋼管の搭載と前記鋼管の接続を繰り返して長尺鋼管を地山に打設する第2工程と、
前記長尺鋼管を地山に打設した後に前記台座を掘り除いてトンネル掘削を進行する第3工程を備えることを特徴とするトンネル補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削時に切羽の前方地山を補強する補強工事で用いられる鋼管移動機構及びトンネル補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削工事において、切羽前方を掘削する作業の前に、地山の前方又は外周から斜め上方に向けて鋼管を複数本継いで長尺にした長尺鋼管を打ち込み、打ち込んだ長尺鋼管から地盤改良材を注入して地山の地盤改良を行う長尺先受け工や、鋼管を複数本継いで長尺にした長尺鋼管を切羽から地山の前方に打ち込み、打ち込んだ長尺鋼管から地盤改良材を注入して地山の地盤改良を行う長尺鏡補強工のような補助工法が用いられている。
【0003】
長尺先受け工や長尺鏡補強工を行う場合、1本が3m程度の長さの鋼管が用いられ、この鋼管内に削孔ロッドを挿入し、鋼管と削孔ロッドをネジ結合によってそれぞれ直列に複数本接続していくことによって、地山への削孔と長尺鋼管の打設が同時に行われる。この鋼管の接続では、予め鋼管が切羽近傍に搬入され(特許文献1の
図1参照)、切羽近傍に配置された鋼管をドリルジャンボのガイドセル上に搭載する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なAGF工法と言われる長尺先受け工用の鋼管1本の仕様は、長さ:3m、口径:114.3mm、肉厚:6mmであり、鋼管1本あたりの重量は約50kgにもなる。そのため、重量の大きい鋼管を人力で移動してガイドセル上に搭載するのは非常に労力の大きい作業となり、この作業を省力化することが求められていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、鋼管を継いで長尺鋼管を地山に打ち込む際に、重量の大きい鋼管をガイドセル上に容易に移動して搭載することができる鋼管移動機構及び鋼管移動機構を用いるトンネル補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼管移動機構は、上端部から下端部に向かって斜め下方に傾斜して形成され、載置収容された鋼管の移動を規制するストッパーが前記下端部に設けられている傾斜載置部と、前記傾斜載置部よりも上側に配設されると共に、一方の端部が前記傾斜載置部の上端部よりも側方に突出して配置され、他方の端部から前記一方の端部まで水平若しくは前記傾斜載置部の傾斜方向と逆方向の傾斜に形成されている待機載置部と、昇降する昇降載置部を有し、前記傾斜載置部の傾斜方向の下端部側に配置されるリフターとを備え、前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記ストッパーの規制から離脱して前記昇降載置部の上に移動させ、前記昇降載置部を上昇させて前記昇降載置部から前記待機載置部の他方の端部に前記鋼管を移動して載置し、前記待機載置部の一方の端部まで前記待機載置部の上で前記鋼管を移動してガイドセルの上に前記鋼管を落下させることを特徴とする。
これによれば、地山に打ち込む鋼管を傾斜載置部に収容した状態で現場に搬入することができ、鋼管の現場への搬入や鋼管を使用し易い位置に配置する作業に要する労力を低減することができる。また、傾斜載置部に収容された鋼管を待機載置部に移動し、待機載置部からガイドセル上に移動してガイドセルに搭載することができる。即ち、鋼管を人力で持ち上げてガイドセルに搭載する作業が不要となり、鋼管を継いで長尺鋼管を地山に打ち込む際に、重量の大きい鋼管をガイドセル上に容易に移動して搭載することができる。また、待機載置部を傾斜載置部よりも上側に配置することにより、ドリルジャンボの構造上ある程度の高さより下げられないガイドセルよりも待機載置部の高さを上にすることができ、待機載置部からガイドセルの上に鋼管を移動して搭載する作業の確実性を高めることができる。
【0008】
本発明の鋼管移動機構は、前記ストッパーの規制を解除することにより前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記ストッパーの規制から離脱し、前記昇降載置部の上に転動させて移動させることを特徴とする。
これによれば、ストッパーの規制を解除して鋼管をストッパーの規制から離脱することにより、傾斜載置部に載置収容された鋼管を重力落下を利用して昇降載置部の上に移動することができ、鋼管の移動に要する外部エネルギーを省力化することができる。
【0009】
本発明の鋼管移動機構は、前記傾斜載置部に載置収容された鋼管を前記昇降載置部を構成するアームで下から持ち上げて前記昇降載置部を前記傾斜載置部から離れるように後退することにより、前記鋼管を前記ストッパーの規制から離脱すると共に昇降載置部の上に移動させることを特徴とする。
これによれば、傾斜載置部側でストッパーの規制を解除する動作を要せずに、リフター側だけの操作で鋼管を昇降載置部に載置することができ、鋼管移動機構の操作性、鋼管移動の作業性を高めることができる。また、傾斜載置部の下端部のストッパーを単なる突起など単純化することができ、ストッパーの構造の単純化により製造コストの低減を図ることができる。
【0010】
本発明の鋼管移動機構は、前記昇降載置部を前進後退させる前後駆動部を設け、前記昇降載置部と前記前後駆動部とを一体して昇降させることを特徴とする。
これによれば、リフター自体を前後に移動させることなく、傾斜載置部から昇降載置部への鋼管の移動、昇降載置部から待機載置部への鋼管の移動を行うことができ、鋼管移動の作業性をより高めることができる。
【0011】
本発明の鋼管移動機構は、前記傾斜載置部の傾斜に沿って複数の鋼管を横並びで載置収容可能であることを特徴とする。
これによれば、地山に打ち込む長尺鋼管の構成に必要な数の鋼管を揃えて傾斜載置部に収容することができ、長尺鋼管を打ち込む際に必要数の鋼管を順次スムーズにガイドセル上に移動して供給することができる。また、必要数の鋼管を傾斜載置部に収容した状態でトラックに載せて現場に搬入することができ、鋼管の現場への搬入や鋼管を使用し易い位置に配置する作業に要する労力をより一層低減することができる。
【0012】
本発明の鋼管移動機構は、前記傾斜載置部が上下に間隔を開けて複数段設けられていることを特徴とする。
これによれば、地山への打ち込みに必要な数の鋼管を揃えて複数段の傾斜載置部に収容することができ、切羽近傍の限られた鋼管置きスペースにおいても必要数の鋼管を順次スムーズにガイドセル上に移動して供給することができる。また、必要数の鋼管を複数段の傾斜載置部に収容した状態で現場に搬入することができ、鋼管の現場への搬入や鋼管を使用し易い位置に配置する作業に要する労力をより一層低減することができる。
【0013】
本発明の鋼管移動機構は、地山補強の長尺鋼管を構成する先頭鋼管と中間鋼管と端末鋼管がそれぞれ異なる段の前記傾斜載置部に種別毎に載置収容されていることを特徴とする。
これによれば、先頭鋼管と中間鋼管と端末鋼管をそれぞれ異なる段の傾斜載置部に種別毎に収容することにより、ガイドセルの上に搭載して打設する鋼管の種別に誤りが発生することを防止でき、先頭鋼管と中間鋼管と端末鋼管を順に打設する施工管理をより正確に行うことができる。
【0014】
本発明の鋼管移動機構は、前記昇降載置部の前記傾斜載置部側への突出幅を近接配置で横並びにした2本の鋼管の幅よりも小さくすることを特徴とする。
これによれば、昇降載置部の傾斜載置部側への突出幅を近接配置で横並びにした2本の鋼管の幅よりも小さくすることにより、リフターや鋼管移動機構の設置幅や設置スペースを小さくすることができ、例えばトンネル空間の横幅をより小さくすることが可能となる。
【0015】
本発明の鋼管移動機構は、前記待機載置部を支持する支柱のそれぞれに、前記待機載置部の支持高さを調整自在な高さ調整部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、掘進中のトンネル切羽近傍は鋼管移動機構を据置する箇所がきれいな面に整えられているわけではないが、高さ調整部を介してそれぞれの支柱が支持する待機載置部の支持高さを調整することによって、待機載置部を安定的に水平又は傾斜載置部の傾斜方向と逆方向の傾斜に保持し、鋼管移動機構を安定的に据置することが出来る。また、例えば待機載置部からガイドセルの上に鋼管を移動して搭載するのに待機載置部の高さが不足する場合や、待機載置部の高さが高すぎてガイドセル上の所定位置に鋼管を正確に落下させることが難しくなる場合等に、高さ調整部で待機載置部の高さを自在に調整してガイドセルの高さに合わせることができる。
【0016】
本発明のトンネル補強工法は、本発明の鋼管移動機構を用いるトンネル補強工法であって、トンネル空間の切羽周辺に前記トンネル空間の下面よりも上面の高さが高い台座を掘り残し、前記台座に鋼管が収容された前記鋼管移動機構を載置する第1工程と、ドリルジャンボのガイドセルの上に前記鋼管移動機構によって前記鋼管を落下させて前記ガイドセルに前記鋼管を搭載し、前記鋼管の搭載と前記鋼管の接続を繰り返して長尺鋼管を地山に打設する第2工程と、前記長尺鋼管を地山に打設した後に前記台座を掘り除いてトンネル掘削を進行する第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、掘り残した台座に鋼管が収容された鋼管移動機構を載置することにより、台座より低い位置にドリルジャンボが配置することになり、鋼管移動機構の待機載置部に対するガイドセルの高さを確実に下にすることができ、待機載置部からガイドセルの上に鋼管を移動して搭載する作業をより確実に行うことができる。また、台座を地山の堀残しで構成し、長尺鋼管の打設後に掘り除くことにより、地山を掘削する労力を増加させずに鋼管移動機構の待機載置部の高さ調整を行うことができ、更に、地山を台座として有効利用し、別部材の台座が不要であることから、施工コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鋼管を継いで長尺鋼管を地山に打ち込む際に、重量の大きい鋼管をガイドセル上に容易に移動して搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による第1実施形態の鋼管移動機構と鋼管移動機構で鋼管が搭載されるガイドセルの斜視図。
【
図2】(a)~(c)は第1実施形態の鋼管移動機構による鋼管の移動とガイドセルへの搭載を説明する説明図。
【
図3】第1実施形態の鋼管移動機構でガイドセル上に搭載された鋼管の地山への打ち込みを説明する斜視説明図。
【
図4】(a)は第1実施形態の鋼管移動機構とドリルジャンボが配置されたトンネル空間の平面図、(b)は実施形態の鋼管移動機構が設置されるトンネル空間の台座を説明する斜視説明図。
【
図5】(a)、(b)は第1実施形態の鋼管移動機構を用いて鋼管が打ち込まれる長尺先受け工と鏡補強工を説明する説明図。
【
図6】本発明による第2実施形態の鋼管移動機構を説明する説明図。
【
図7】(a)~(f)は第2実施形態の鋼管移動機構における昇降載置部の動作を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態の鋼管移動機構〕
本発明による第1実施形態の鋼管移動機構1は、例えばトンネル掘削工事における補助工法の長尺先受け工や鏡補強工等を行う際に用いられるものであり、
図1及び
図2に示すように、傾斜載置部21と傾斜載置部21よりも上側に配設される待機載置部22を有する鋼管ラック2と、昇降する昇降載置部31を有するリフター3とから構成される。尚、図示例の鋼管ラック2はフレーム構造になっている。
【0020】
鋼管ラック2の傾斜載置部21は、上端部211から下端部212に向かって斜め下方に傾斜して形成されており、本例では複数の棒材が鋼管10の管軸方向に間隔を開けて並設されて傾斜載置部21が構成されている。また、本実施形態における傾斜載置部21は、上下に間隔を開けて複数段設けられており、図示例では3段の傾斜載置部21、21、21が設けられている。
図2において、傾斜載置部21、21、21の上端部211、211、211は横方向の位置が略同一位置で揃うように配設され、傾斜載置部21、21、21の下端部212、212、212も横方向の位置が略同一位置で揃うように配設されている。
【0021】
各傾斜載置部21は、その傾斜に沿って複数の鋼管10を横並びで載置収容可能になっている。各傾斜載置部21には、載置収容された鋼管10の移動を規制するストッパーが下端部212に設けられており、第1実施形態では、下端部212に解除可能な第1ストッパー213が設けられ、傾斜載置部21に載置収容された鋼管10が下端部212から落下するように移動することが防止されている。第1ストッパー213は、操作杆214の操作により、鋼管10の移動規制状態と、下端部212から外側への鋼管10の移動を可能にする解除状態を切替可能になっている。
【0022】
鋼管ラック2の待機載置部22は、第1実施形態の
図1及び
図2の例においては、傾斜載置部21の上端部211側に配置されている一方の端部221から下端部212側に配置されている他方の端部222に向かって水平に形成されており、複数段の傾斜載置部21のいずれよりも上側に配置され、鋼管ラック2の最上段に配置されている。尚、待機載置部22は傾斜載置部21の傾斜方向と逆方向の傾斜するように設けても好適である。待機載置部22の一方の端部221は傾斜載置部21の上端部211よりも側方に突出するように配置され、他方の端部222は傾斜載置部21の下端部212のほぼ真上に配置されている。本例では、複数の棒材が鋼管10の管軸方向に間隔を開けて並設されて待機載置部22が構成されている。
【0023】
待機載置部22は、略水平な上面に載置される鋼管10を転動するようにして移動可能になっている。待機載置部22の一方の端部221には鋼管10の移動を規制する解除可能な第2ストッパー223が設けられており、待機載置部22に載置されて一方の端部221側に移動された鋼管10が一方の端部221から落下するように移動することが防止されている。第2ストッパー223は、操作杆224の操作により、鋼管10の移動規制状態と、一方の端部221から外側への鋼管10の移動を可能にする解除状態を切替可能になっている。
【0024】
傾斜載置部21と待機載置部22は支柱23で支持されている。本例では、支柱23・23相互間に架設された梁24が複数設けられ、複数の梁24上に傾斜載置部21、待機載置部22を構成する各棒材を載置して架設し、各棒材を梁24に接合して構成され、複数の棒材で構成される傾斜載置部21と待機載置部22とが梁24を介して支柱23で支持されている。
【0025】
それぞれの支柱23には、待機載置部22の支持高さを調整自在な高さ調整部231が設けられており、本実施形態における高さ調整部231は、待機載置部22の高さと傾き並びに複数段の傾斜載置部21の高さと傾きの双方を併せて調整可能になっている。図示例の高さ調整部231はそれぞれの支柱23の根元付近に設けられた高さ調整ねじで構成されている。
【0026】
リフター3は、傾斜載置部21の傾斜方向の下端部212側に配置されていると共に、待機載置部22の他方の端部222側に配置されており、昇降載置部31を鋼管ラック2に向けて設けられる。リフター3の昇降載置部31は、一対のアーム状部材により構成され、昇降操作部32の操作により、例えば手動或いは電動で動作するピニオンとラックの昇降動作機構等の昇降部33で昇降するようになっている。
【0027】
第1実施形態における昇降載置部31の傾斜載置部21側への突出幅W或いは待機載置部22側への突出幅Wは、近接配置で横並びにした複数の鋼管10の幅よりも大きく設定されており、図示例の突出幅Wは、近接配置で横並びにした4本の鋼管10の全体の幅と略同一に設定されている。
【0028】
第1実施形態の鋼管移動機構1で傾斜載置部21に載置収容された鋼管10を移動し、ドリルジャンボ5のガイドセル51に搭載する際には、
図2(a)に示すように、複数段の傾斜載置部21の内で鋼管10が載置収容されている何れかの傾斜載置部21の下端部212の近傍に、リフター3の昇降載置部31の先端を配置し、この傾斜載置部21に対応する操作杆214を操作して第1ストッパー213を解除し、この傾斜載置部21から昇降載置部31の上に鋼管10を転動させ、昇降載置部31に鋼管10を載置する。図示例では、複数本である8本の鋼管10が載置収容された最下段の傾斜載置部21から複数本である4本の鋼管10を昇降載置部31に移動させ、載置している。尚、昇降載置部31に所要数の鋼管10が移動された傾斜載置部21に鋼管10が残って載置収容されている場合には、昇降載置部31への所要数の鋼管10の移動後に第1ストッパー213を解除状態から切り替えて移動規制状態にする。
【0029】
そして、
図2(b)に示すように、リフター3の昇降操作部32を操作して鋼管10が載置された昇降載置部31を上昇させ、待機載置部22の他方の端部222の近傍に昇降載置部31の先端を配置し、鋼管10を転動するようにして昇降載置部31から待機載置部22の他方の端部222に鋼管10を移動して載置する。更に、
図2(c)に示すように、待機載置部22の上で鋼管10を転動するようにして待機載置部22の一方の端部221まで鋼管10を移動し、操作杆224を操作して第2ストッパー223を解除し、待機載置部22の一方の端部221に位置を併せて配置されたガイドセル51の上に鋼管10を落下させ、鋼管支持部52で支持されるようにしてガイドセル51に鋼管10が搭載される。
【0030】
ガイドセル51には、前進後退自在に削岩機53が設けられ、削岩機53の先端に図示省略する削孔ロッドの連結部54が設けられている。ガイドセル51に搭載された鋼管10には削孔ロッドが内挿され、内挿された削孔ロッドの基端部は連結部54に連結されると共に、削孔ロッドの前端部は鋼管10の前端部と嵌合される。ガイドセル51に搭載された鋼管10は、削孔ロッド先端の削孔ビットでの削孔、削孔ロッドの進行に応じて、例えば切羽101から地山100内に引き込まれて打設されていく(
図3参照)。
【0031】
先行する鋼管10を後端部が露出する状態で地山100に打設した後、上記同様に鋼管移動機構1の移動動作でガイドセル51に次の鋼管10aが搭載され、既に地山100に打ち込まれた鋼管10の後端部に鋼管10aの前端部を接続すると共に、既に地山100に打ち込まれた削孔ロッド(図示省略)の後端部に削孔ロッドを継いで接続し、鋼管10、10aの地山100への打設を行う。この工程を繰り返して地山100に例えば先頭鋼管と中間鋼管と端末鋼管から構成される長尺鋼管10Lを打設する(
図5(a)参照)。
【0032】
また、第1実施形態の鋼管移動機構1を用いるトンネル補強工法では、
図4及び
図5に示すように、台座4を用いると好適である。台座4を用いる補強工法では、トンネル空間Tの切羽100の周辺にトンネル空間Tの下面よりも上面の高さが高い台座4を地山100を掘り残すようにして形成し、台座4に鋼管10が収容された鋼管ラック2とリフター3で構成される鋼管移動機構1を載置する。
図4の例では、台座4の上面より低いトンネル空間Tの下面に配置されたドリルジャンボ5が左右一対の2本のブーム55・55を有し、それぞれのブーム55の先端部にガイドセル51が設けられており、それぞれのガイドセル51・51に対応するトンネル空間Tの左右の位置に台座4・4が形成されている。
【0033】
尚、
図4(a)の符号6は、鋼管移動機構1を構成する鋼管10が予め載置収容された鋼管ラック2を現場に搬送するトラックであり、トラック6で現場に搬送されてくる鋼管ラック2には鋼管10を予め満載しておくことが好ましい。また、鋼管10が満載された鋼管ラック2を単位として、工場からの出荷、工場から現場への移動、現場での移動や設置を行うと、鋼管10の供給から施工するまでの流れをよりスムーズにできて好適である。
【0034】
台座4に鋼管移動機構1を載置した後には、鋼管ラック2に載置収容された鋼管10を鋼管移動機構1で移動させ、ガイドセル51の上に鋼管移動機構1によって鋼管10を落下させ、ガイドセル51に鋼管10を搭載する。ガイドセル51に搭載された鋼管10は上述のように地山100に打ち込まれ、この鋼管10の搭載と鋼管10の接続を繰り返して長尺鋼管10Lを地山100に打設する。既に形成されているトンネル空間Tにおいて長尺鋼管10Lの地山100への打設を完了した後には、台座4を掘り除くようにしてトンネル掘削を進行する。
【0035】
台座4を用いるトンネル補強工法等の鋼管移動機構1を用いるトンネル補強工法は、例えば
図5に示す長尺先受け工201や鏡補強工202をトンネル空間Tで施工する際に用いられる。
図5における符号203は、長尺先受け工201における固結材注入で形成された固結領域である。
【0036】
台座4を用いる長尺先受け工201や鏡補強工202を行う場合、トンネル掘進10m毎程度で行うので、予定の鋼管10を打設して固結材の注入を施した後、次の施工位置までトンネル空間Tを掘り進む際に台座4を掘り除き、新たな台座4を掘り残す工程を行い、この工程を繰り返し行う。
【0037】
第1実施形態の鋼管移動機構1によれば、地山100に打ち込む鋼管10を傾斜載置部21に収容した状態で現場に搬入することができ、鋼管10の現場への搬入や鋼管10を使用し易い位置に配置する作業に要する労力を低減することができる。また、傾斜載置部21に収容された鋼管10を待機載置部22に移動し、待機載置部22からガイドセル51上に移動してガイドセル51に搭載することができる。即ち、鋼管10を人力で持ち上げてガイドセル51に搭載する作業が不要となり、鋼管10を継いで長尺鋼管10Lを地山に打ち込む際に、重量の大きい鋼管10をガイドセル51上に容易に移動して搭載することができる。
【0038】
また、待機載置部22を傾斜載置部21よりも上側に配置することにより、ドリルジャンボの構造上ある程度の高さより下げられないドリルジャンボ5のブーム55に取り付けられたガイドセル51よりも、待機載置部22の高さを上にすることができ、待機載置部22からガイドセル51の上に鋼管10を移動して搭載する作業の確実性を高めることができる。特に、本実施形態の鋼管移動機構1では、最上段に待機載置部22を設けることにより、この作業の確実性をより高めることができる。また、傾斜載置部21に載置収容された鋼管10を昇降載置部31の上に移動する際には、傾斜載置部21の下端部212に設けられたストッパーである第1ストッパー213の規制を解除して第1ストッパー213の規制から離脱することにより、傾斜載置部21に載置収容された鋼管10を重力落下を利用して昇降載置部31の上に移動することができ、鋼管10の移動に要する外部エネルギーを省力化することができる。また、待機載置部22から鋼管10をガイドセル51の上に移動する際には、第2ストッパー223の規制を解除して移動させることができ、鋼管10の移動、ガイドセル51の上への搭載を容易に行うことができる。
【0039】
また、傾斜載置部21の傾斜に沿って複数の鋼管10を横並びで載置収容可能とすることにより、地山100に打ち込む長尺鋼管10Lの構成に必要な数の鋼管10を揃えて傾斜載置部21に収容することができ、長尺鋼管10Lを打ち込む際に必要数の鋼管10を順次スムーズにガイドセル51上に移動して供給することができる。また、必要数の鋼管10を傾斜載置部21に収容した状態で鋼管移動機構1或いは鋼管ラック2をトラックに載せて現場に搬入することができ、鋼管10の現場への搬入や鋼管10を使用し易い位置に配置する作業に要する労力をより一層低減することができる。
【0040】
また、傾斜載置部21を上下に間隔を開けて複数段設けることにより、切羽近傍において台座4を限られた鋼管置きスペースとしてしか確保できなくても、地山100への打ち込みに必要な数の鋼管10を揃えて複数段の傾斜載置部21に収容することができ、必要数の鋼管10を順次スムーズにガイドセル51上に移動して供給することができる。また、必要数の鋼管10を複数段の傾斜載置部21に収容した状態で鋼管移動機構1或いは鋼管ラック2を現場に搬入することができ、鋼管10の現場への搬入や鋼管10を使用し易い位置に配置する作業に要する労力をより一層低減することができる。
【0041】
また、リフター3の昇降載置部31の傾斜載置部21側への突出幅Wを近接配置で横並びにした複数の鋼管10の幅よりも大きく設定することにより、昇降載置部31を上昇させて昇降載置部31から待機載置部22に鋼管10を移動する作業回数を少なくし、作業労力を低減することができる。例えば、AGF工法と言われる長尺先受け工では標準的には先頭鋼管、中間鋼管、中間鋼管、端末鋼管からなる4本の鋼管10を接続して打設する為、その4本をセットにして待機載置部22に持ち上げ、順次ガイドセル51上に移動して連結しながら打設していく、と言う作業を効率的に行うことが出来る。
【0042】
また、待機載置部22を支持する支柱23のそれぞれに待機載置部22の支持高さを調整自在な高さ調整部231を設けることにより、掘進中のトンネル切羽近傍で形成される台座4の据置面がきれいな面に整えられていなくても、高さ調整部231を介してそれぞれの支柱23が支持する待機設置部22の支持高さを調整することによって、待機載置部22を安定的に水平又は傾斜載置部21の傾斜方向と逆方向の傾斜に保持し、鋼管移動機構1の鋼管ラック2を安定的に据置することが出来る。また、例えば待機載置部22からガイドセル51の上に鋼管10を移動して搭載するのに待機載置部22の高さが不足する場合や、待機載置部22の高さが高すぎてガイドセル51上の所定位置に鋼管10を正確に落下させることが難しくなる場合等に、高さ調整部231で待機載置部22の高さを自在に調整してガイドセル51の高さに合わせることができる。
【0043】
また、台座4を用いるトンネル補強工法によれば、掘り残した台座4に鋼管10が収容された鋼管移動機構1を載置することにより、台座4より低い位置にドリルジャンボ5が配置することになり、鋼管移動機構1の待機載置部22に対するガイドセル51の高さを確実に下にすることができ、待機載置部22からガイドセル51の上に鋼管10を移動して搭載する作業をより確実に行うことができる。また、台座4を地山100の堀残しで構成し、長尺鋼管10Lの打設後に掘り除くことにより、地山100を掘削する労力を増加させずに鋼管移動機構1の待機載置部22の高さ調整を行うことができ、更に、地山100を台座4として有効利用し、別部材の台座が不要であることから、施工コストを低減することができる。
【0044】
〔第2実施形態の鋼管移動機構〕
本発明による第2実施形態の鋼管移動機構1vは、第1実施形態の変形例であり、
図6及び
図7に示すように、傾斜載置部21vと傾斜載置部21vよりも上側に配設される待機載置部22vを有する鋼管ラック2vと、昇降する昇降載置部31vを有するリフター3vとから構成される。図示例の鋼管ラック2vもフレーム構造であり、載置収容される鋼管10の管軸方向における傾斜載置部21vの両端、待機載置部22vの両端には、図示一点鎖線で示す鋼管落下防止用の側板が設けられている。
【0045】
傾斜載置部21vも、上端部211vから下端部212vに向かって斜め下方に傾斜して形成され、本例でも複数の棒材が鋼管10の管軸方向に間隔を開けて並設されて傾斜載置部21vが構成されている。また、傾斜載置部21vは、上下に間隔を開けて複数段設けられており、図示例では4段の傾斜載置部21v、21v、21v、21vが設けられている。また、図示例では、最上段等の1段の傾斜載置部21vに先頭鋼管10t、2段の傾斜載置部21v・21vに中間鋼管10m・10m、最下段等の1段の傾斜載置部21vに先頭鋼管10eが、それぞれ複数本ずつ(図示例では8本ずつ)載置収容され、各段の傾斜載置部21vに種別の同じ鋼管10が種別毎に載置収容されている。
図6において、それぞれの傾斜載置部21vの上端部211vは横方向の位置が略同一位置で揃うように配設され、それぞれの傾斜載置部21vの下端部212vも横方向の位置が略同一位置で揃うように配設されている。
【0046】
各傾斜載置部21vは、その傾斜に沿って複数の鋼管10を横並びで載置収容可能になっており、その下端部212vには、載置収容された鋼管10の移動を規制するストッパーとして第1ストッパー213vが設けられている。図示例の第1ストッパー213vは上方に突出するように傾斜載置部21vに形成された突起になっており、この突起により、傾斜載置部21vに載置収容された鋼管10が下端部212vから落下するように移動することが防止されている。
【0047】
鋼管ラック2vの待機載置部22vは、傾斜載置部21vの下端部212v側に配置されている他方の端部222vから傾斜載置部21vの上端部211v側に配置されている一方の端部221vに向かって下方に傾斜し、換言すればガイドセル11に向かって下方に傾斜し、傾斜載置部21vの傾斜方向と逆方向に傾斜して形成されている。また、待機載置部22vは、複数段の傾斜載置部21vのいずれよりも上側に配置され、鋼管ラック2vの最上段に配置されている。待機載置部22vの一方の端部221vは傾斜載置部21vの上端部211vよりも側方に突出するように配置され、他方の端部222vは傾斜載置部21vの下端部212vのほぼ真上に配置されている。本例でも、複数の棒材が鋼管10の管軸方向に間隔を開けて並設されて待機載置部22vが構成されている。
【0048】
待機載置部22vは、傾斜載置部21vの傾斜方向と逆方向に傾斜する載置面に載置される鋼管10を転動するようにして移動可能になっている。この待機載置部22vの傾斜載置部21vと逆方向に傾斜する載置面の傾斜角度は0度超10度以下とすると好適である。待機載置部22vの一方の端部221vには、鋼管10の移動を規制する解除可能な第2ストッパー223vが設けられている。第2ストッパー223vは第1実施形態における第2ストッパー223と同一構成であり、第2ストッパー223vにより、待機載置部22vに載置されて一方の端部221v側に移動された鋼管10が一方の端部221vから意図しない落下で移動することが防止されている。
【0049】
傾斜載置部21vと待機載置部22vは支柱23vで支持されている。支柱23v・23v相互間にも第1実施形態の梁24と同様の梁が複数架設され、複数の梁上に傾斜載置部21v、待機載置部22vを構成する各棒材を載置して架設し、各棒材を梁に接合して傾斜載置部21vと待機載置部22vが構成され、傾斜載置部21vと待機載置部22vとが梁を介して支柱23vで支持されている。
【0050】
それぞれの支柱23vには、待機載置部22vの支持高さを調整自在な高さ調整部231vが設けられており、第2実施形態における高さ調整部231vも、待機載置部22vの高さと傾き並びに複数段の傾斜載置部21vの高さと傾きの双方を併せて調整可能になっている。図示例の高さ調整部231vもそれぞれの支柱23vの根元付近に設けられた高さ調整ねじで構成されている。
【0051】
リフター3vは、傾斜載置部21vの傾斜方向の下端部212v側に配置されていると共に、待機載置部22vの他方の端部222v側に配置されており、昇降載置部31vを鋼管ラック2vに向けて設けられる。リフター3vの昇降載置部31vは、鋼管10の外周に沿ったRの弧状で形成され、1本の鋼管10を外周に倣うように保持可能な一対のアームで構成される。昇降載置部31vは、例えば油圧ピストン機構等の前進後退させる前後駆動部34vにより、傾斜載置部21vに対して近づくように前進し、又、傾斜載置部21vから離れるように後退する動作を行うようになっている。
【0052】
昇降載置部31vと昇降載置部31vを前進後退させる前後駆動部34vは、ジップチェーン或いはピニオンとラック等の昇降動作機構による昇降部33vで昇降するようになっており、昇降載置部31vと前後駆動部34vは一体として昇降部33vを昇降するようになっている。前後駆動部34vと昇降部33vは、図示省略する昇降操作部の操作により、手動或いは電動で動作するようになっている。また、鋼管ラック2vとリフター3vには、双方の配置を現場で固定するために、相互を着脱自在に固定する係合機構等の取付部7vが設けられている。
【0053】
第2実施形態の鋼管移動機構1vで傾斜載置部21vに載置収容された鋼管10を移動し、ドリルジャンボ5のガイドセル51に搭載する際には、複数段の傾斜載置部21vの内で鋼管10が載置収容されている何れかの傾斜載置部21vの下端部212vの近傍に、リフター3vの一対のアームで構成される昇降載置部31vを配置する(
図7(a)参照)。そして、傾斜載置部21vの棒材と干渉しない位置において、前後駆動部34vの動作によって昇降載置部31vを傾斜載置部21vに近づけるように前進し、傾斜載置部21vに載置収容された鋼管10を昇降載置部31vのアームで下から持ち上げる(
図7(b)、(c)参照)。これにより、鋼管10は突起等の第1ストッパー213vの規制から離脱して昇降載置部31vの上に移動する。
【0054】
次いで、前後駆動部34vの動作によって昇降載置部31vを傾斜載置部21vから離れるように後退し(
図7(c)、(d)参照)、リフター3の昇降部33vで鋼管10が載置された昇降載置部31vを上昇させ(
図7(e)参照)、待機載置部22vの他方の端部222vの近傍に昇降載置部31vの先端を配置し、待機載置部22vの棒材と干渉しない位置において、前後駆動部34vの動作によって昇降載置部31vを待機載置部22vに近づけるように前進し、鋼管10を転動するようにして昇降載置部31vから待機載置部22vの他方の端部222vに鋼管10を降ろすように移動して載置する(
図7(f)参照)。
【0055】
ガイドセル11に向かって下方に傾斜する待機載置部22vの他方の端部222vに載置された鋼管10は、待機載置部22vの一方の端部221vに向かって自然に転動するか或いは人力の補助によって転動し、一方の端部221vまで移動する。そして、第1実施形態と同様に、第2ストッパー223vを解除し、ガイドセル51の上に鋼管10を落下させ、搭載する(
図2参照)。尚、鋼管10を打設するにはある程度時間がかかるため、通常、先の鋼管10を打設している間に次の鋼管10を1本ずつ上昇、移動しても、先の鋼管10の打設完了前に次の鋼管10を待機載置部22vの一方の端部221vまで移動することが可能である。
【0056】
その後のガイドセル51に搭載された鋼管10の打設は第1実施形態と同様である。また、第2実施形態の鋼管移動機構1vを用いるトンネル補強工法でも、第1実施形態における台座4を用いるトンネル補強工法を行うと好適であり、台座4を用いて長尺先受け工201や鏡補強工202を行うとよい。
【0057】
第2実施形態の鋼管移動機構1vによれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。また、傾斜載置部21v側で第1ストッパー213vの規制を解除する動作を要せずに、リフター3v側だけの操作で鋼管10を昇降載置部31vに載置することができ、鋼管移動機構1vの操作性、鋼管移動の作業性を高めることができる。また、傾斜載置部21vの下端部212vの第1ストッパー213vを単なる突起など単純化することができ、第1ストッパー213vの構造の単純化により製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
また、昇降載置部31vを前進後退させる前後駆動部34vを設け、昇降載置部31vと前後駆動部34vとを一体して昇降させることにより、リフター3v自体を前後に移動させることなく、傾斜載置部21vから昇降載置部31vへの鋼管10の移動、昇降載置部31vから待機載置部22vへの鋼管10の移動を行うことができ、鋼管移動の作業性をより高めることができる。また、先頭鋼管10tと中間鋼管10mと端末鋼管10eをそれぞれ異なる段の傾斜載置部21vに種別毎に収容することにより、ガイドセル51の上に搭載して打設する鋼管10の種別に誤りが発生することを防止でき、先頭鋼管10tと中間鋼管10mと端末鋼管10eを順に打設する施工管理をより正確に行うことができる。
【0059】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0060】
例えば第1実施形態における鋼管移動機構1におけるリフター3の昇降載置部31の傾斜載置部21側への突出幅Wは、近接配置で横並びにした2本の鋼管10・10の幅よりも小さく設定して鋼管10を1本づつ持ち上げる構成としても好適であり、これにより、リフター3や鋼管移動機構1の設置幅や設置スペースを小さくすることができ、例えばより横幅の狭いトンネル空間Tでも適用することが可能となる。
【0061】
また、上記実施形態では、鋼管移動機構1を用いるトンネル補強工法として長尺先受け工201と鏡補強工202を例に説明したが、本発明の鋼管移動機構を用いるトンネル補強工法は適用可能な範囲で適宜であり、例えばトンネルのフットパイルやサイドパイル等を打設する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、トンネル掘削工事において長尺鋼管を地山に打設して補強する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1v…鋼管移動機構 2、2v…鋼管ラック 21、21v…傾斜載置部 211、211v…上端部 212、212v…下端部 213、213v…第1ストッパー 214…操作杆 22、22v…待機載置部 221、221v…一方の端部 222、222v…他方の端部 223、223v…第2ストッパー 224…操作杆 23、23v…支柱 231、231v…高さ調整部 24…梁 3、3v…リフター 31、31v…昇降載置部 32…昇降操作部 33、33v…昇降部 34v…前後駆動部 4…台座 5…ドリルジャンボ 51…ガイドセル 52…鋼管支持部 53…削岩機 54…連結部 55…ブーム 6…トラック 7v…取付部 10、10a、10t、10m、10e…鋼管 10L…長尺鋼管 100…地山 101…切羽 201…長尺先受け工 202…鏡補強工 203…固結領域 W…昇降載置部の突出幅 T…トンネル空間