(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026259
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】粉末積層造形法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/10 20210101AFI20230216BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230216BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230216BHJP
B22F 10/68 20210101ALI20230216BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B22F10/10
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F10/68
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021148967
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】520098730
【氏名又は名称】八賀 祥司
(72)【発明者】
【氏名】八賀 祥司
【テーマコード(参考)】
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018BB05
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】焼結を前提とする粉末利用付加製造の課題である粉体流動を無視できるバインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形の方法を提供する。
【解決手段】本発明は、粉末流動の影響を受けない方法である。先にバインダーを一層分噴射し、直後に粉末の塊をバインダー印刷面に加圧接触させ、バインダーと粉末の濡れを伴う毛細管現象により浸漬させ一体化させる。次に遊離している余分な粉末を分離させ、バインダーと一体化した粉末だけを残した後に、残留しているバインダーを硬化させる。この工程を繰り返して三次元積層造形を行う。得られた積層造形物(Green)を、脱脂および焼結することで焼結体が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状のバインダーをプラットフォームのステージ面に印刷した直後、バインダー硬化前に、粉末の塊を印刷されたステージ面全体に加圧接触させ、粉末をバインダーに浸漬し一体化させ、それ以外の遊離粉末を完全除去したのち、粉末と一体化したバインダーを硬化させ造形物を造る。
【請求項2】
バインダー印刷工程、粉末加圧接触工程、遊離粉末除去工程、バインダー硬化工程を有し、この4工程で一層を形成させた後、2層目以降この4工程を繰り返すことで三次元積層造形物を造る付加製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形方法
【背景技術】
【0002】
粉末焼結を前提とする付加製造技術において、バインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形法には次の5種類がある。材料押出法(Material Extrusion)、液槽光重合法(Vat Photo Polymerisation)、スクリーン印刷光重合法(Screen Pring)、バインダーコートされた粉末を使った融解積層法(Cold Metal Fusion/Powder Bed Fusion)、バインダー噴射法(Binder Jetting)。これらすべての積層造形物(Green)は、脱脂および焼結を行い焼結体が造られる。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら5種類の造形法は、すべて粉末を利用しているため粉体流動の影響を受ける。融解積層法やバインダー噴射法は粉末床に一層分の粉末を敷き詰めるが微細粉末になるほど比表面積が大きくなるため粒子間摩擦が増加し粉体流動性が著しく低下する。そのため必要にして十分な嵩密度を確保することができない。実用的には粉末径は数十マイクロメート以上の粗い粉末が必要で微細造形に限界があるという課題がある。その課題を解決すために流動性の高いバインダーと粉末を混合し流動性を向上させた材料を使用したものが材料押出法、液槽光重合法、スクリーン印刷光重合法である。しかし、材料押出法はノズル径に寸法が支配され数百マイクロメートルと大きく微細造形に限界がある。また、液槽光重合法の材料は粘度が低い泥状材のため粉末の沈殿分離が課題である。さらに、スクリーン印刷光重合法はスクリーン厚さに寸法が支配されるため一層の積層厚さは数百マイクロメートルと大きい課題がある。
【0004】
本発明は、上記5種類すべての課題を解決するバインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、先にバインダーを一層分噴射し、直後に粉末の塊をバインダー印刷面に加圧接触させ、バインダーと粉末の濡れを伴う毛細管現象により浸漬させ一体化させる。次に遊離している余分な粉末を分離させ、バインダーと一体化した粉末だけを残した後に、残留しているバインダーを硬化させる。この工程を繰り返して三次元積層造形を行う。得られた積層造形物(Green)を、脱脂および焼結することで焼結体が得られる。粉末は、金属粉末やセラミック粉末あるいはその混合粉末を対象とする。
【発明の効果】
【0006】
1回の積層で利用する粉末は、一回分の粉末を塊として扱うので粉末流動を全く考慮する必要がない、したがって粉末流動が著しく悪い微細な粉末、例えばナノ粉末も使用できる。また、泥状材を使用しないので粉末とバインダーの分離という概念が無い。さらに、一層の厚さはバインダージェットから噴射される一滴量だけに依存するため、微細寸法を自由に形成させることができる。また、一度使用した粉末は回収し何度も再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】 インクジェット印刷工程と粉末をインクジェット部位に浸漬させる工程と遊離粉末を除去する工程と最後の光照射による硬化工程の全工程が順次進み初層が形成された段階の三次元積層付加製造装置の模式図(
図1)である。
【実施例0008】
4ステージを有する90度回転割出駆動の回転式プラットフォーム1は、一工程ごとに90度回転する。その際、回転物が干渉しないように開閉シャッター3が回転と同期して開閉する。第一工程において、プラットフォームのステージ上に、XYZ軸をCNC制御駆動するプリントヘッド2により、一層分の形状を光硬化バインダーでジェット印刷する。第二工程において微細粉末の塊7-1を落下させ加圧や振動を印加させて粉末を印刷されたバインダーに浸漬させる。第三工程で遊離粉末7-2を落下させるとともに粉末吸引回収ノズル4にて吸引回収し、粉末と一体化した印刷されたバインダー6-3だけを残す。第四工程において光を照射し粉末と一体化した印刷されたバインダーを光重合により固化させた後、バインダー周辺に残留した微少遊離粉末をエアーブロー8で除去する。この工程を繰り返すことで三次元積層造形物を造る。
【0009】
使用するバインダーは光硬化バインダーだけでなく熱溶融バインダーや熱硬化バインダーでもよく、4工程の光照射の代わりに熱溶融バインダーの硬化には冷却伝熱、熱硬化バインダーの硬化には加熱伝熱を利用する。