(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026270
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ズーム画像撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/69 20230101AFI20230216BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20230216BHJP
H04N 23/695 20230101ALI20230216BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20230216BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230216BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20230216BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230216BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20230216BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20230216BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20230216BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20230216BHJP
【FI】
H04N5/232 960
H04N5/225 800
H04N5/232 990
H04N5/232 933
H04N5/232 290
G03B5/00 D
G03B15/00 P
G03B17/00 B
G03B19/07
G03B11/00
G03B17/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021150629
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】515333271
【氏名又は名称】株式会社三井光機製作所
(72)【発明者】
【氏名】河野 景三
【テーマコード(参考)】
2H054
2H083
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H054BB05
2H054BB07
2H083AA02
2H083AA04
2H083AA26
2H083AA32
2H105AA12
5C122EA37
5C122FA18
5C122FB15
5C122FB16
5C122FC04
5C122FE02
5C122FE03
5C122FE06
5C122FH07
5C122FH11
5C122FK41
5C122FK42
5C122FL03
5C122GD04
5C122GD06
5C122HA86
5C122HB05
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】 小型、軽量で、色収差を軽減する高倍率ズーム画像を取得しうる撮像装置を提供する。
【解決手段】 本発明の撮像装置は、異なる焦点距離を有する複数の単焦点レンズと、前記単焦点レンズより取得した光束を分離するプリズム手段と、前記プリズム手段を介して取得した光束を映像信号に変換し、出力する撮像素子と、前記撮像素子のそれぞれの映像信号を出力する出力手段と、前記それぞれの映像信号を電子的に画像拡大する電子ズーム手段を備え、該電子ズーム手段により拡大されたズーム映像を連続的に切り替える切替手段と、前記切替手段により切り替えられた前記ズーム映像信号を出力する出力手段とを具備し、前記それぞれの異なる焦点距離の映像信号と前記ズーム映像信号とが前記それぞれの出力手段より同時に出力される様に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる焦点距離を有する複数の単焦点レンズと、
前記単焦点レンズより取得した光束を分離するプリズム手段と
前記プリズム手段を介して取得した光束を映像信号に変換し、出力する撮像素子と、
前記撮像素子のそれぞれの映像信号を出力する出力手段と、
前記それぞれの映像信号を電子的に画像拡大する電子ズーム手段を備え、該電子ズーム手段により拡大されたズーム映像を連続的に切り替える切替手段と、
前記切替手段により切り替えられた前記ズーム映像信号を出力する出力手段とを具備し、
前記それぞれの異なる焦点距離の映像信号と前記ズーム映像信号とが前記それぞれの出力手段より同時に出力されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数の単焦点レンズはn個(nは2以上)の単焦点レンズにより構成され、
n番目の単焦点レンズの焦点距離は、n-1番目の単焦点レンズの焦点距離とn-1番目の電子ズーム倍率との積であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子のいずれかは、他の撮像素子と画素ずらし用に半画素ピッチだけずらして前記プリズム手段に固着されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記プリズム手段は、可視光帯域を2個の単板撮像素子用に分離するプリズム構成であることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記プリズム手段は、可視光帯域を青色光帯域、赤色光帯域および緑色帯域の3個の撮像素子用に分離するプリズム構成であることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項6】
前記プリズム手段は、可視光帯域を青色光帯域、赤色光帯域、第一の緑色光帯域および第二の緑色光帯域の4個の撮像素子用に分離するプリズム構成であることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子のそれぞれの映像信号は、出力画像フォーマット変換用のアップコンバータまたはダウンコンバータを介して出力されることを特徴とする請求項1ないし請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の単焦点レンズは、上下左右方向に回動可能なパン・チルト雲台に配置されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項9】
前記それぞれの異なる焦点距離の映像信号を表示する表示装置備え、
前記表示手段はタッチパネルにより構成され、
前記タッチパネルの画面上を指示することで前記ズーム映像信号が指示された部分を拡大表示されることを特徴とする請求項8記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型、軽量で、色収差を軽減する高倍率ズーム画像を取得しうる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラや静止画カメラなどに使用される固体撮像素子(センサー)や光学系部品の進歩により高解像度で、多種類の小型化された撮像装置が可能となり、高解像度による広角画像から超望遠画像に至る撮影のバリエーションが拡大すると共に撮像装置も一般撮影から車載用、医療用、生産設備、軍事用、業務用、放送用など画像分析、物体検知、計測・測量、監視・見守りなど多種多様な用途に利用されている。
【0003】
半導体の高集積化や部品材料の小型化、高性能化により高解像度の撮像装置本体は、軽量、小型化が図られてきたが、高性能光学レンズは物理的制約により軽量小型化には限界がある。特に、動きの早い動物、スポーツ中継、高速で移動する物体の撮影においては、ズームレンズが多用されているが、広角画像から望遠画像に至るズーム範囲を拡大しようとすると極めて大型で重たいズームレンズを使用することとなる。これにより、撮像装置本体の小型軽量化にも拘らず望遠レンズを取り付けた場合の撮像装置全体としては、小型軽量化が達成できない状況となっている。
【0004】
また、これらの撮像装置を使用して動きの早い被写体を補足する際、ズーミングで望遠(拡大)画像となるにつれ被写体が拡大画像の範囲外へはずれてしまい、的確な補足が困難となり、再度ズームアウトして被写体を探すこととなる。特に、球技スポーツ、動物動画、飛行物体などの動画撮影、放送中継、監視カメラでの業務用、軍事用撮影では、移動体のズーミングとフォーカシングを瞬時に操作し、被写体の拡大画像とフォーカシングを行う専門性と熟練度が要求されている。
【0005】
このような撮像装置の小型軽量化を図るズーム撮像装置として、ズームレンズを使用せずに単焦点レンズ(または固定焦点レンズ)を用いて電子ズーム(またはデジタルズーム)技術により拡大画像を得る技術は種々開示されている。電子ズームによる倍率を上げるために複数の焦点距離の異なる単焦点レンズを用いてズーム倍率を上昇させる技術も開示されている(特許文献1および特許文献2など)。
【0006】
しかし、このような電子ズームは、画像画面の一部を切り取って拡大するため、画像拡大により解像度が低下する。つまり単焦点レンズに電子ズーム機能をもたせて高倍率を得て撮影することはできても解像度を犠牲にしたものであり、解像度を確保するのに課題が生じていた。また、ズーム画像として切り取られた部分以外の欠落画像は表示、記録する事ができないために監視用には適していなかったり、これらの技術を用いて高速の物体移動を捕捉したり、球技スポーツ中継などへ応用するには利便性が悪いものであった。そのため、小型軽量化された撮像装置で高速移動体を的確に捕捉し、物体の監視、分析、解析する利便性が高く、高感度で解像度を確保しうる撮像装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-106289号公報
【特許文献2】特開2005-31466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の状況に鑑みて提供されるものであって、主として以下のような撮像装置の提供を目的とする。
(1)小型、軽量でズーム範囲を拡大した高倍率、高感度画質画像を取得しうる撮像装置。
(2)電子ズームによる拡大機能を用いても解像度劣化に対応できる高画質画像を取得しうる撮像装置。
(3)簡易な操作により高速移動体を的確に捕捉する機能を有し、電子ズームにより切り取られた画像以外の欠落画像も同時表示、記録が可能となる撮像装置。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決し上記目的を達成するために、本発明における撮像装置は、異なる焦点距離を有する複数の単焦点レンズと、前記単焦点レンズより取得した光束を分離するプリズム手段と、前記プリズム手段を介して取得した光束を映像信号に変換し、出力する撮像素子と、前記撮像素子のそれぞれの映像信号を出力する出力手段と、前記それぞれの映像信号を電子的に画像拡大する電子ズーム手段を備え、該電子ズーム手段により拡大されたズーム映像を連続的に切り替える切替手段と、前記切替手段により切り替えられた前記ズーム映像信号を出力する出力手段と、を具備し、前記それぞれの異なる焦点距離の映像信号と前記ズーム映像信号とが前記それぞれの出力手段より同時に出力されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明における撮像装置は、前記複数の単焦点レンズがn個(nは2以上)の単焦点レンズにより構成され、n番目の単焦点レンズの焦点距離は、n-1番目の単焦点レンズの焦点距離とn-1番目の電子ズーム倍率との積であるように構成することもできる。
【0011】
また、本発明における撮像装置は、前記撮像素子のいずれかが、他の撮像素子と画素ずらし用に半画素ピッチだけずらして前記プリズム手段に固着されているように構成することもできる。
【0012】
また、本発明における撮像装置は、前記プリズム手段が、可視光帯域を2個の単板撮像素子用に分離するプリズム構成であることを特徴とするように構成することもできる。
【0013】
また、本発明における撮像装置は、前記プリズム手段が、可視光帯域を青色光帯域、赤色光帯域および緑色光帯域の3個の撮像素子用に分離するプリズム構成であるように構成することもできる。
【0014】
また、本発明における撮像装置は、前記プリズム手段が、可視光帯域を青色光帯域、赤色光帯域、第一の緑色光帯域および第二の緑色光帯域の4個の撮像素子用に分離するプリズム構成であるように構成することもできる。
【0015】
また、本発明における撮像装置は、前記撮像素子のそれぞれの映像信号が、出力画像フォーマット変換用のアップコンバータまたはダウンコンバータを介して出力されるように構成することもできる。
【0016】
また、本発明における撮像装置は、前記複数の単焦点レンズが、上下左右方向に回動可能なパン・チルト雲台に配置されているように構成することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異なる焦点距離を有する複数の単焦点レンズを利用して電子ズームにより取得した画像を切り替えることで高倍率のズーム機能を達成し、それぞれの単焦点レンズにより取得した画像とズーム機能により取得した画像とを映像信号として出力することにより、高倍率のズームレンズを使用すること無く、小型、軽量化された撮像装置を得ることができる。単焦点レンズのみで構成しているため、ズームレンズで取得した画像に比べ色収差が軽減され、周辺光量や周辺解像度の劣化が改善される。更に、画素ずらしを行うことで、より画素サイズの大きい撮像素子が使用可能となり、高感度化が可能となると共に、解像度を増加させて、電子ズーム拡大に伴う解像度劣化に耐えうる画質を維持する。
【0018】
また、複数の単焦点レンズを広角から望遠レンズに適用し、それぞれに電子ズーム機能を適用することで、複数の単焦点レンズの広角から望遠画像のそれぞれとズーム画像とを同時取得しディスプレイ上に同時動画像として表示することが可能となり、これによりズーム画像により切り取られた周囲画像も常時表示され、ズーム画像だけでなく連続する事象の全画像を表示、記録することができる。更に、このようなマルチ同時同画像表示を利用して高速移動体の的確な被写体の捕捉および迅速なズーム撮影が熟練技能者でなくても簡易操作により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による撮像装置の構成例を示すブロック説明図である。
【
図2】本発明による画像処理ブロックの構成例を示す説明図である。
【
図3】本発明による画素ずらし光束分離プリズム例を示す説明図である。
【
図4】電子ズームの倍率と解像度との関係を示す説明図である。
【
図5】本発明によるシステムに用いるパン・チルト雲台の構成例である。
【
図6】本発明による高速移動体の捕捉撮影方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関連する光学系、画像処理装置および撮像装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されているいずれの説明図や図面も本発明の説明用に概略的または模式図として描かれており、実際の寸法や形状は特に限定するものではない。また、実施例で用いているシステム構成、ブロック図、寸法、材質、形状、その相対配置および使用例は特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
図1は、本発明による撮像装置の実施例の全体を示すブロック説明図であり、
図2は、
図1における一連の信号処理のブロック説明図である。
図1において、撮像装置は、複数の単焦点レンズからなるレンズブロック10を有している。
図1では、広角レンズブロック11、中角レンズブロック12,望遠レンズブロック13の3個の単焦点レンズからなるレンズブロック10を例示している。それぞれのレンズブロックは、単板センサでも構成しうるが、プリズムなどで構成する光束分離光学系を用いて2板センサ、3板センサ、または4板センサなどに対応し、画素ずらしによる高解像度化を達成する構成となっている。
【0022】
レンズブロック10(広角レンズブロック11,中角レンズブロック12,望遠レンズブロック13)では、各レンズにより集光された画像を電子信号に変換する撮像素子センサにより電子信号として出力し、それぞれの映像信号を信号処理ブロック20へ送出される。信号処理ブロック20では、それぞれのレンズブロックに対応した広角レンズ用信号処理手段21,中角レンズ用信号処理手段22,望遠レンズ用信号処理手段23を有している。信号処理ブロック20のそれぞれは、画素ずらし処理手段24、ISP(イメージシグナルプロセッサ)25で画像処理を行い、次段の電子ズーム処理手段30へ処理された画像信号を送出する。広角、中角、望遠、それぞれの画像信号は、広角画像出力、中角画像出力、望遠画像出力として表示装置(モニター)へ出力されると共に後段の電子ズームブロック30へ送出される。
【0023】
それぞれの信号処理ブロック20は、
図2で示すように画素ずらし処理手段24により画素ずらし処理を行い、ISP25による画像処理を行っている。
図2における画素ずらし処理手段24では、レンズブロック10において後述する通り、いずれかの撮像素子が他の撮像素子に対し半画素ピッチ(1/2位相)斜めにずらして固着されており、それぞれの撮像素子のY信号サンプル点を取り出して画素ずらし処理を行うことでY信号の解像度アップ処理を行っている。ISP25は、それぞれの撮像素子により得られた画像信号を、低雑音化、ゲイン補正、リニアマトリクス、ディテール、ガンマなどの一連の画像処理を施して出力する画像信号処理プロセッサである。電子ズームブロック30におけるそれぞれの広角用電子ズーム手段31、中角用電子ズーム手段32,望遠用電子ズーム手段33のそれぞれは、電子ズーム制御手段41の制御信号に従ってそれぞれの入力画像の電子ズーミングを行う。
【0024】
ズームレンズで望遠側も明るいF値を確保するには、レンズの前玉口径が大きくなるので、現実的には暗いF値に止まる。従って感度を上げる方法としては、センサー側の素子面積を大きくしなければならないが、限られたイメージサイズ内で素子数を増やせないので、大きな画素赤色画素(R),青色画素(B)に対して緑色画素(G)を斜めに画素ずらしする事で解像度を上げながら高感度化を実現させる方式により、大きな画素のセンサーが使用でき高感度化と高解像度化が可能となる。
【0025】
電子ズームは、単焦点レンズの基本画像に対して拡大率4倍程度が限度とされている。我慢限界としては、もっと大きくすることも可能であるが、後述の通り拡大率4倍での実施例で検討している。また、設計にあたっては、複数の単焦点レンズ(焦点距離)と電子ズームの繋ぎ合せでの、オーバラップ範囲を設けることも可能である。このオーバーラップによりレンズ切り替えに伴う変化を前後のレンズ出力でアルファーブレンドを行うなどの画質調整を行うことができる。このオーバーラップ範囲は、特に特定されるものでなく設計事項である。
【0026】
電子ズームの拡大限界は、ズームにより画像切り取り拡大するため主として解像度が低減するためである。電子ズームによる拡大率を仮に4倍とした場合、広角レンズの単焦点距離fwを10mm、中角レンズの単焦点距離fmを40mm、望遠レンズの単焦点距離ftを160mmで構成したとすれば、広角レンズにより10から40mm、中角レンズにより40から160mm、望遠レンズにより160から640mmを連続してカバーするズームレンズが構成できることとなる。つまり、このように電子ズーム機能により拡大(または縮小)された画像を連続して切り替えることで10から640mm(倍率64倍)に相当するズームレンズ画像を取得することができる。
【0027】
つまり、単焦点レンズによる電子ズーム範囲を連続させて複数の単焦点レンズで構成することで、ズーム範囲が拡大されたズームレンズが形成される。複数(n個、nは2以上)の単焦点レンズにおいて、n番目の単焦点レンズの焦点距離(fn)は、n-1番目の単焦点レンズの焦点距離とn-1番目の電子ズーム倍率(m)との積であるように構成することで連続したズーム効果を得ることができる。
【0028】
ズーム倍率(画角)が最大広角画像(最大ワイドエリア)からズームイン(画像拡大化)して最大望遠画像(最大拡大エリア)へ連続して変化させる場合、ズーム制御手段41は、広角用電子ズーム手段31へ10から40mm相当画像へ変化させる倍率変化信号を与え、次に中角用電子ズーム手段32へ40から160mm相当画像へ変化させる倍率変化信号を与え、次に望遠用電子ズーム手段33へ160から640mm相当画像へ変化させる倍率変化信号を与え、セレクタ手段40を順次広角画像から中角画像、さらに望遠画像へと切替えることで、連続してズームイン(画像拡大化)画像信号を取得する。また、逆に最大望遠画像(最大拡大エリア)から最大広角画像(最大ワイドエリア)へズームアウト(画像縮小化)する場合は、上記の逆の操作を行うことで連続したズームアウト画像を取得する。
【0029】
セレクタ手段40の後段には、画像出力信号を画像表示装置モニターに適合させるための画像調整手段42などを設けることもできる。この画像調整手段42は、アップダウンコンバータなどで構成されズーム出力信号をモニターフォーマットや記録装置の圧縮フォーマットなどに適合させるものである。また、セレクタ手段40により切り替えられたズーム画像信号は直接出力画像として送出してもよいが、利用目的によりこの段階で輪郭補償、レンズ切り替えに伴う変化を前後のレンズ出力でアルファーブレンドを行うなどの画質調整手段を設けてもよい。
【0030】
このようにして得られたズーム画像は、モニター上のズーム表示画面に表示される。また、広角画像、中角画像、望遠画像のそれぞれの画像出力は、広角画像モニター、中角画像モニター、望遠画像モニターに表示される用に出力する。この画像表示手段は、
図6(A)に示すようにモニター画面100上のマルチ分割画面として同時に動画表示したり、
図6(B)に示すようにピクチャーインピクチャーの形式で表示したりすることができる。また、利用目的によっては個別のモニターにぞれぞれの画像を別々に表示したりさせても良い。また、すべての単焦点レンズに電子ズーム機能を設けて連続してすべてのレンズにズームレンズ機能を持たせなくても、特定のレンズ(例えば、望遠レンズ)のみに電子ズーム機能をもたせて特定画像部分のみを拡大または縮小して適切な画像を取得するように構成することもできる。
【0031】
このように複数の単焦点レンズと電子ズームとの組合せでズーム撮影を行う撮像装置においては、
図4に示すような電子ズーム変化に伴う解像度の変化が生じる。前述の実施例の広角レンズ焦点距離(10mm)、中角レンズ焦点距離(40mm)、望遠レンズ焦点距離(160mm)において、電子ズーム倍率が4倍の場合、電子ズーム倍率を1倍から4倍へズーミングするにつれ水平方向解像度は1/4となる。
図4(A)では、撮像素子の解像度4K仕様を使用して、焦点距離10mmから640mmのズームレンズを構成した場合の水平解像度の変化を示している。
【0032】
また、電子ズーム倍率が2倍の場合、
図4(B)に示す通り、水平方向解像度は1/2へと変化する。この場合、単焦点レンズの組合せにより焦点距離10mmから640mmのズームレンズを構成するには、焦点距離がそれぞれにL1(10mm)、L2(20mm)、L3(40mm)、L4(80mm)、L5(160mm),L6(320)の6枚の複数単焦点レンズの組合せで構成することとなる。
【0033】
このため、本発明においては、解像度の変化に適応しうるように画素ずらしによる、高解像度化を施すと共に高感度化を得るように構成している。画素ずらしの方法としては、2個の撮像素子の一方を距離的に水平・垂直方向に画素半ピッチ分ずらして画像信号を取得し、画素ずらししていない他方の撮像素子の画像信号と合成することで、Yサンプル信号の解像度を上げる方法、レンズと撮像素子との間に並行平面板の光学透過ガラスの厚さや傾きを変化させて光軸を種々の方法で画素がずれた位置に投影させて画素ずらしを行う方法などがあるが、いずれの方法であっても構わない。本発明においては、
図3に示すようなプリズム構成を用いて一方の撮像素子を他方の撮像素子より半画素分ずらして画像を取得する方法を用いる。このような画素ずらしを利用してより画素サイズを大きくしたセンサーが使用でき高感度化と高解像度化が可能となる。
【0034】
図3(A)では、2板式での画素ずらしの構成例を示す。単焦点レンズ60により集光された画像は光束分離プリズム61により2つの光束に分離され2個の単板用撮像素子62および63により画像信号を取得する。一方の撮像素子は他方の撮像素子とは半画素分ピッチをずらして固着されている。画素ずらしの方向は、斜めの方向へずらして固着されている。画素ずらし方法により取得された信号は、それぞれの信号処理手段64によりそれぞれの撮像素子の出力を読み出し映像信号として出力される。信号処理手段64では、それぞれの撮像素子の映像信号として合成して出力する。出力信号は、画素ずらしによりY信号サンプル点の解像度が増加した高解像度の出力として取得することができる。
【0035】
図3(B)では、3板式での画素ずらしによる画像取得のプリズム構成例を示す。単焦点レンズ70により集光された画像は光束分離プリズム71により3つの光束に分離され3個の撮像素子72(B)、73(R)および74(G)により画像信号を取得する。撮像素子72、73、74は、白黒センサーであり、プリズム71で波長分離された光帯域成分を電気信号に変換する。この時、緑色用撮像素子は他の撮像素子とは画素分ピッチをずらして固着することで、取り出したY信号サンプル点の解像度が増加した出力を取得することができる。
【0036】
図3(C)では、4板式での画素ずらしによる画像取得のプリズム構成例を示す。単焦点レンズ80により集光された画像は光束分離プリズム81により4つの光束に分離され4個の撮像素子82、83、84および85により画像信号を取得する。撮像素子82は、青色用撮像素子で青色成分(B)を取り出し、撮像素子83は、赤色用撮像素子で赤色成分(R)を取り出し、信号処理回路87により赤色映像信号(R)を出力する。撮像素子84および85は、いずれも緑色成分(G)をビームスプリッタなどにより取得した2つの緑色成分(G1およびG2)をそれぞれに取り出す。この2個の緑色用撮像素子の一方の撮像素子は他方の撮像素子とは画素分ピッチをずらして固着されており、いわゆるデュアルグリーン画素ずらしを構成している。この構成により、解像度が増加したY信号出力を取得することができる。
【0037】
このような画素ずらし画像取得に適した光束分離プリズムおよび信号処理手段は、利用目的および必要性に応じて、2板式、3板式、4板式などのマルチスペクトルカメラ用光束分離プリズムが選択され、それぞれの単焦点レンズ(広角、中角、望遠レンズ)毎に取得した画像の解像度を増加させるよう構成する。
【0038】
ズームレンズは、高感度のものが高額で取得し難く、その上焦点距離に応じた収差があるため、それぞれの位置で変化するが、単焦点レンズでは、収差が少ないだけでなく、固定されているので、電子ズームにより収差が変化することはない。そのため、画素ずらしを構成してもズームレンズで取得した画像に比べ色収差が軽減され、周辺光量、周辺解像度が改善される。
【0039】
近年の撮像素子開発の進展により、大画素数で微細ピッチの高感度仕様特性を有する撮像素子が利用可能となってきたが、画素数は少なくとも画素サイズを大きくして感度を改善した撮像素子を使用してプリズム利用の画素ずらしにより高解像度化を得ることが可能となる。例えば、高感度の2K(HD)用撮像素子を用いて2K相当の画像を画素ずらしすることにより4K相当のY信号解像度の画像が高感度で取得出来るため、電子ズーミングによる解像度低下も許容しうる構成が可能となる。つまり、単焦点レンズの組合せにより本発明を用いることで、ズームレンズの大型で重量が大きいと言う課題だけでなく、大画素撮像素子を用いて感度をアップさせ、失った解像度を改善し、ズームレンズによる色収差や周辺解像度悪化という課題を軽減した高感度の画像を取得することができる。
【0040】
次に、上述のような構成の撮像装置を利用して高速で移動している被写体を的確に捕捉し、ズームアップ(望遠化)したり、ズームダウン(広角化)したりする利用法について述べる。飛行物体の撮影や野球中継、ゴルフ中継などでの撮影においては、高速で移動するボールやロケットなどの追跡、捕捉撮影を行うのにズームアップ(望遠化)中に高速移動物体を見失い、一旦ズームダウン(広角化)して移動物体を確認して、再度ズームアップ(望遠化)して捕捉しなければならない状況が生じる。このようなズーム操作は、望遠拡大率が大きいほど的確に被写体を捕捉することができず熟練や技能が必要であった。
【0041】
図5は、本発明に基づく撮像装置を搭載する電動パン・チルト雲台の構成例を示す。パン・チルト雲台90は、固定支持台91上に水平(左右)方向に回動可能な水平回転台92と、その水平回転台上に設置された支持体93に垂直(上下)方向回転軸94に連結され、垂直(上下)方向に回動可能なカメラハウジング95とから構成されている。カメラハウジング95には、近接して、単焦点広角レンズ96、単焦点中角レンズ97,単焦点望遠レンズ98とが同一方向に向けて格納されている。パン・チルト雲台90は固定支持台91に対し、上下左右方向に電動で回動可能であり、被写体を追跡するように有線または無線により方向制御される。また、このカメラハウジング95には、サーマルカメラ(または赤外線カメラ)99が備えられており、可視光画像に加えて赤外光画像などを取得し、暗視撮影や温度感知などの多用途撮影を可能としている。
【0042】
このようなパン・チルト雲台90には、上述した本発明による撮像装置が搭載されており、この撮像装置の出力信号は、
図6(A)に示すようにモニター画面100上でマルチ分割スクリーンとしてワイド(広角)画像101,中角画像102、望遠画像103およびズーム画像104を同時に表示したり、
図6(B)で示すように、広角画像101内にズーム画像104をピクチャーインピクチャーの形式で表示したりするように構成することもできる。また、それぞれの画像を単独で複数のモニターにより表示したりすることも出来る。
図6(A)のモニター画面100のマルチスクリーンでは、広角画像91、中角画像92,望遠画像93のそれぞれは、設定された単焦点レンズの基準画像で表示されている。この基準画面は、それぞれの単焦点距離の無限大焦点で、電子ズームを使用していない画像である。パン・チルト雲台90の操作は、このモニター画面100を監視しながら被写体を追跡制御する。
【0043】
図6(C)においてモニター画面100は、広角画面101を表示している。この広角画面101と操作者とはタッチパネルなどの方式によりインターラクティブに制御指示が可能であり、操作者が画面上で高速飛行物体をズーム拡大したい場合、カメラの操作者は、広角画面上でズーム拡大指示を行う。このズーム拡大指示の方法は、以下のいずれの方法でも可能である。
(1)画面上のマーカー(または手のタッチ)によりズーム拡大対象被写体に移動し、シングルクリックにより望遠レンズの電子ズームによりクリックされた被写体に向かってズームイン(画面拡大)が開始される。所望の画面迄拡大された時点でダブルクリックによりズーミングを終了させる。
(2)画面上のマーカーをクリックした場所から所望する拡大画像まで移動させ再度クリックした場所までに囲まれる四方形に向かって望遠レンズの電子ズームをズームイン(拡大化)させる。
(3)画面上上のマーカーで所望する拡大画像の範囲をまる囲みすることで、囲まれた範囲の四方形に向かって望遠レンズの電子ズームをズームイン(拡大化)させる。
【0044】
モニター画面100上でのズームイン(拡大化)指示が与えられると、望遠レンズが、拡大画像の中心を捉えるようにパン・チルト雲台90は、制御される。また、拡大画像が確定されると高速移動物体(移動被写体)を自動追尾するように設計することもできる。このような高速移動物体の自動追尾およびオートフォーカスは既知の技術により達成することが可能である。
【0045】
本発明によるズーム撮影方式では、ズームできる画面を使いながら、望遠画像、中角画像、広角画像の画面を同時に表示・確認できたり、モニター画面上で広角画像による全体画像を確認しながら、被写体である高速移動体をタッチしたりクリックしたりすることで瞬時にズームイン可能となり、またより確実にズーミングができるため、従来のように広角画面に戻したり、ズーム範囲を前後させたりして撮影対象を探し直す必要がなくなる。このような機能により、ゴルフや野球中継などにおけるボール追跡および監視カメラとしての高速移動体の高速追跡、捕捉に有効に利用することができる。また、ズーム画像だけでなく、複数の単焦点レンズ画像(広角画像、中角画像、望遠画像)が常時同時出力されているため、特に監視カメラや画像分析カメラなどで移動物体の捕捉、確認だけでなく、周囲の状況や動向を把握、記録するのに必要となる画像情報も同時に取得することが可能となり極めて利便性に優れた撮像装置を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による撮像装置および撮像方法によれば、高倍率のズームレンズを使用すること無く、単焦点レンズによる小型軽量化された撮像装置を得ることができ、ズームレンズで取得した画像に比べ色収差が軽減され、周辺光量が改善された撮像装置を構成することが出来る。また、本発明の撮像装置を用いて撮像システムを構成することで、望遠画像、中角画像、広角画像およびズーム画像が同時に表示し、確認することが可能となり、高速移動体の的確な被写体の捕捉および迅速なズーム撮影が熟練技能者でなくても簡易操作により行うことができる。そのため監視カメラ、車載カメラ、気象カメラ、航空機カメラ、内視鏡カメラなど利用範囲が多伎にわたって可能となり、業務用、民生用、工業用、軍事用など多岐にわたる産業上の利用可能性が広がる。
【符号の説明】
【0047】
10 レンズブロック
11 広角レンズブロック
12 中角レンズブロック
13 望遠レンズブロック
20 信号処理ブロック
21 広角用信号処理
22 中角用信号処理
23 望遠用信号処理
24 画素ずらし処理手段
25 ISP(画像信号処理プロセッサ)
30 電子ズームブロック
31 広角用電子ズーム手段
32 中角用電子ズーム手段
33 望遠用電子ズーム手段
40 セレクタ手段
41 ズーム制御手段
42 コンバータ、画質調整手段
60、70、80 単焦点レンズ
61 2板光束分離プリズム
71 3板光束分離プリズム
81 4板光束分離プリズム
90 パン・チルト雲台
92 水平(左右)方向回転台
94 垂直(上下)方向回転軸
95 カメラハウジング
96 単焦点広角レンズ
97 単焦点中角レンズ
98 単焦点望遠レンズ
99 サーマルカメラ
100 モニター画面