IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 竜麻(上海)医薬研発有限責任公司の特許一覧

特開2023-26291カンナビノイド組成物、及びパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患を治療する薬物の製造におけるその応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026291
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】カンナビノイド組成物、及びパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患を治療する薬物の製造におけるその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20230216BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/352
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 107
A61P43/00 105
A61K9/08
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/72
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015041
(22)【出願日】2022-02-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】202110916566.9
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522046209
【氏名又は名称】竜麻(上海)医薬研発有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124659
【弁理士】
【氏名又は名称】白洲 一新
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ツンドン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ペイ
(72)【発明者】
【氏名】ショー,ワン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,スイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB22
4C076CC01
4C076CC29
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB21
4C086ZB22
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA77
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZB21
4C206ZB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カンナビノイド組成物、及び神経変性疾患を治療する薬物の製造におけるその応用を提供する。神経変性疾患の治療のための従来の薬物が有する、副作用が大きく、長期間使用後の効果が劣化するなどの問題を解決するためのものである。
【解決手段】カンナビノイド組成物は、カンナビジオールとカンナビゲロールとを含み、質量比が、1:1~1:10、又は1:0.3~1:0.5、又は1:0.5~1:0.7、又は1:0.7~1:1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオールとカンナビゲロールとを含み、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:10、又は1:0.3~1:0.5、又は1:0.5~1:0.7、又は1:0.7~1:1であることを特徴とする、カンナビノイド組成物。
【請求項2】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3、又は1:3~1:5、又は1:5~1:7であることを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項3】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:3であることを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項4】
カンナビノールを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項5】
前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.05~1)であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項6】
前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.1~0.5)であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項7】
前記カンナビジオール、カンナビゲロール及びカンナビノールの質量比が、1:3:0.3であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイド組成物の神経変性疾患を治療する薬物の製造における応用。
【請求項9】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項10】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞の発育、成熟を促進し、ドーパミン神経細胞の脱落を防止し、ドーパミン神経細胞の生存能力を向上させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項11】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞がドーパミンを分泌する能力を向上させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイド組成物と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療のための医薬用組成物。
【請求項13】
前記医薬用組成物の剤形は、油剤、顆粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、経口液、ゾル剤、スプレー剤、霧化剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載の医薬用組成物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイド組成物を含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、具体的には、カンナビノイド組成物、及びパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患を治療する薬物の製造におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者集団においては、パーキンソン病(Parkinson disease,PD)、アルツハイマー病(Alzheimer disease,AD)、レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies,DLB)などに関連する神経変性が、日増しに健康負担になっている。なかには、80歳以上の高齢者のうち、2人に1人がアルツハイマー病に罹患し、その死亡率は心臓病、腫瘍及び脳卒中に次ぐものである。65歳以上の母集団ではパーキンソン病の罹患率は1%~2%であり、85歳以上の母集団では約4%である。
【0003】
これらの神経変性疾患は、長期の研究により、ドーパミン代謝障害およびドーパミン分泌神経細胞の脱落による減少などに関与すことが認識されつつある。ADによって特徴付けられる病変は、ニューロンの外側の神経炎症性プラークおよびニューロン内の線維交絡である。現在慣用されている治療薬物はコリンエステル阻害剤を主成分とするものであるが、神経伝達物ドーパミンもアルツハイマー病の発症過程に関与し、アルツハイマー患者の死体病検により、線条体、杏仁核、黒質等の部位でドーパミンの含有量及びL-DOPA並びに代謝物がいずれも低下していることが判明された。
【0004】
PDの特徴的な病変は、中脳黒質中のドーパミン作動性(dopaminergic,DA)ニューロンの大量変死、及び残留するニューロン細胞質ゾルにおけるレビー小体の形成である。現在、PDの治療方法は、主に伝統的な薬物治療と外科的治療とがある。薬物治療としては、ドーパミン補充療法、抗コリン阻害剤、ドーパミン受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト等が挙げられ、中ではレボドパは、パーキンソン病に対する一般的な薬物であるが、パーキンソン病の治療に最も有効な薬物だと思われている。しかし、レボドパを含む多くの薬物は、長期間使用すると、治療効果の低下を引き起こすだけでなく、オン-オフ(on-off)現象、ウェアリング・オフ(wearing-off)現象及び運動障害などの様々な合併症も引き起こす。
【0005】
従って、治療効果が高く、薬効が持続的で、かつ副作用の小さい薬物が強く望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、パーキンソン病のような神経変性疾患の治療に用いられる薬物の副作用が大きく、長期間使用後の効果が低下するなどの従来の問題点に鑑み、カンナビノイド組成物、及び神経変性疾患を治療する薬物の製造におけるその応用を提供する。
【0007】
カンナビジオール(cannabidiol,CBD)は、カンナビノイドの葉から抽出され、医薬品、化粧品、健康食品に利用可能な無毒で高付加価値のフェノール性物質である。現在、米国、英国等の先進国ではそれを原料として、様々な特効薬が開発されている。CBDは、大麻中の非依存性成分で、人体神経系に対するTHCの影響を阻害することができるとともに、抗痙攣、抗関節リウマチ、抗不安等の薬理活性を有し、パーキンソン病治療の報告もされているが、CBD単独での治療効果は好ましくない。カンナビノイド組成物の組み合わせを包含する研究もあるが、ほとんどの組み合わせのいずれには嗜癖性物質THCを含有する。THCは各国によってそれぞれの規制があると考えられ、長期的に見れば、THCを使用しない場合、治療効果が良好かつ副作用が小さい新たな治療薬物の開発が非常に重要であると考えられる。
【0008】
カンナビノール(Cannabinol,CBN)は、THCの酸化及び分解によって誘導されるカンナビノイドであり、その精神活性を大幅に低減させる。
【0009】
カンナビゲロール(cannabigerol、CBG)は、他のカンナビノイド(例えば、CBDおよびTHC)の前駆体であり、高効率で、精神毒性および他の副作用を有しないものである。神経変性疾患の治療におけるCBD、THCの使用に関する現在の応用研究はかなり多く、CBGに関する治療効果および研究は、まだ報告されていない。
【0010】
以上により、本発明の第1の目的は、カンナビジオールとカンナビゲロールとを含み、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:10、又は1:0.3~1:0.5、又は1:0.5~1:0.7、又は1:0.7~1:1である、カンナビノイド組成物を提供することである。
【0011】
好ましくは、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3、又は1:3~1:5、又は1:5~1:7である。
【0012】
好ましくは、前記カンナビノイド組成物は、カンナビノールを更に含む。
【0013】
好ましくは、前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.05~1)である。
【0014】
好ましくは、前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.1~0.5)である。
【0015】
好ましくは、前記カンナビジオール、カンナビゲロール及びカンナビノールの質量比が、1:3:0.3である。
【0016】
本発明のもうひとつの目的は、神経変性疾患を治療する薬物の製造における、前記カンナビノイド組成物の応用を提供することである。
【0017】
好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症を含む。
【0018】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞の発育、成熟を促進し、ドーパミン神経細胞の脱落を防止し、ドーパミン神経細胞の生存能力を向上させるためのものである。
【0019】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞がドーパミンを分泌する能力を向上させるためのものである。
【0020】
本発明の別の目的は、前記カンナビノイド組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、神経変性疾患の治療のための医薬用組成物を提供することである。
【0021】
前記医薬用組成物の剤形は、油剤、顆粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、経口液、ゾル剤、スプレー剤、霧化剤を含む。
【0022】
本発明の別の目的は、前記カンナビノイド組成物を含む、神経変性疾患の治療のためのキットを提供することである。
【0023】
従来技術に対して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0024】
(1)本発明は、線維芽細胞をドーパミン作動性ニューロン細胞に分化誘導するモードの実験方法により、線維芽細胞の分化誘導培養後の細胞形態、細胞量及びDA関連因子の相対的な発現レベルを検出し、一般的な異なるカンナビノイド及びその組み合わせをスクリーニングし、それらの線維芽細胞をドーパミン作動性ニューロンに分化誘導することに及ぼす影響を比較した結果、CBD+CBGの組み合わせがドーパミン作動性ニューロン細胞の生存能力及びドーパミン分泌能力を向上させる効果が最も優れ、神経変性疾患、例えばパーキンソン病を治療する薬物の製造に使用することができる。さらに、CBDとCBGの比率を変えた組み合わせについての実験を設計し、CBDとCBGの質量比が1:1~1:5である場合に、実験効果がより優れ、安全であり、その中でも、最適な質量比が1:3であることを見出した。
【0025】
(2)CBDとCBGは効果が最も優れている組み合わせとして、嗜癖性物質THCを含有しないので、薬物使用後の副作用を大きく低減し、薬物乱用の懸念がなく、応用レベルでの大きな障害を取り除ける。
【0026】
(3)本発明によって提供されるCBD+CBGの組み合わせは、Pitx3およびTH-2の相対発現レベルを顕著に増加させることができる。すなわち、ドーパミン作動性ニューロン細胞の生存能力およびドーパミン分泌能力を向上させることができる。このような作用メカニズムは、従来の一般的なパーキンソン治療プロトコル(例えば、経口レボドパ)より優れ、長期的に見れば、レボドパのような長期使用欠陥を生じることがなく、効果を劣化させることがない。また、作用メカニズムの違いから、レボドパ等の薬物との併用が理論上可能であり、より良好な治療効果が得られたり、レボドパの長期使用による欠点の発生が極端に遅延されたりするようになる。
【0027】
(4)本発明は、CBD+CBGの組み合わせに基づいてCBD、CBG、CBNの比率を変えた組み合わせについての実験を設計し、その結果、CBNを添加することにより、カンナビノイド組成物がドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果をさらに向上させ、CBD:CBG:CBN(質量比)が1:3:0.3である場合に、ドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果が最も優れていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は、本発明の実施例1におけるHDF38線維芽細胞の分化誘導培養13日目の顕微鏡観察による細胞形態図である。
図2は、本発明の実施例1における各細胞セットのDA関連因子の相対的な発現量である。ここで、
Aは、Nurr1の発現検出結果であり、
Bは、TH-2の発現検出結果であり、
Cは、Pitx3の発現検出結果である。
【0029】
図1図2中、Contは未分化誘導群、6CDは分化誘導対照群、6CD+dは分化誘導+CBD群、6CD+gは分化誘導+CBG群、6CD+tは分化誘導+THC群、6CD+dgは分化誘導+CBD+CBG群、6CD+dtは分化誘導+CBD+THC群を示す。
【0030】
図3は、本発明の実施例2におけるHDF38線維芽細胞の分化誘導培養の顕微鏡観察による細胞形態図である。ここで、
Aは、4日目誘導培養の細胞形態図であり、
Bは、7日目誘導培養の細胞形態図であり、
Cは、13日目誘導培養の細胞形態図である。
【0031】
図4は、本発明の実施例2における各細胞セットのDA関連因子の相対的な発現量である。ここで、
Aは、Nurr1の発現検出結果であり、
Bは、TH-2の発現検出結果であり、
Cは、Pitx3の発現検出結果である。
【0032】
図3図4中、Contは、未誘導分化群を示し、6CDは、誘導分化対照群を示し、6CD+dg0.1は、質量比が1:0.1のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg0.3は、質量比が1:0.3のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg0.5は、質量比が1:0.5のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg0.7は、質量比が1~0.7のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg1は、質量比が1:1のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg3は、質量比が1:3のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg5は、質量比が1:5のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg7は、質量比が1:7のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg10は、質量比が1:10のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dtは、誘導分化+CBD+THC群を示す。
【0033】
図5は、本発明の実施例3における各細胞セットのDA関連因子の相対的な発現量である。ここで、
Aは、Nurr1の発現検出結果であり、
Bは、TH-2の発現検出結果であり、
Cは、Pitx3の発現検出結果である。
【0034】
図5中、Contは、未誘導分化群を示し、6CDは、誘導分化対照群を示し、6CD+dg1は、質量比が1:1のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg1+n0.1は、質量比が1:1:0.1のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示し、6CD+dg1+n0.3は、質量比が1:1:0.3のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示し、6CD+dg1+n0.5は、質量比が1:1:0.5のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示し、6CD+dg3は、質量比が1:3のCBDおよびCBGを添加することを示し、6CD+dg3+n0.1は、質量比が1:3:0.1のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示し、6CD+dg3+n0.3は、質量比が1:3:0.3のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示し、6CD+dg3+n0.5は、質量比が1:3:0.5のCBD、CBGおよびCBNを添加することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明の技術案をさらに説明する。
【0036】
本発明は、カンナビジオールとカンナビゲロールとを含み、カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:10であり、好ましくは、前記カンナビジオールと前記カンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3、又は1:3~1:5、又は1:5~1:7であり、より好ましくは、前記カンナビジオールと前記カンナビゲロールとの質量比が、1:3であるカンナビノイド組成物を開示する。
【0037】
前記カンナビノイド組成物は、カンナビノールを更に含み、ここで、前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.05~1)であり、好ましくは、前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.1~0.5)であり、より好ましくは、前記カンナビジオール、前記カンナビゲロール及び前記カンナビノールの質量比が、1:3:0.3である。
【0038】
実験では、本発明は、ドーパミン神経細胞の発育、成熟を促進し、ドーパミン神経細胞の脱落を防止し、ドーパミン神経細胞の生存能力を向上させる一方、ドーパミン神経細胞がドーパミンを分泌する能力を向上させ得るカンナビノイド組成物を提供する。したがって、このカンナビノイド組成物は、神経変性疾患を治療する薬物の製造に使用することができ、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症を含む。
【0039】
本発明は、更に、本発明に記載のカンナビノイド組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、神経変性疾患の治療のための医薬用組成物を提供する。
【0040】
適切な薬学的に許容される担体は、当業者によく知られているものである。薬学的に許容される担体に関する十分な説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesから見出すことができる。組成物中の薬学的に許容される担体は、液体、例えば、水、リン酸塩緩衝液、リンガー溶液、生理食塩水、平衡塩溶液、グリセロールまたはソルビトールなどを含んでもよい。さらに、これらの担体には、潤滑剤、流動促進剤、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、およびアルブミンなどの安定剤などの補助物質が存在してもよい。使用に際して、本発明に記載のカンナビノイド組成物を安全且つ有効な量で、ヒトなどの哺乳動物に投与すること。当然、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康状態などの因子を考慮すべきで、これらはいずれも熟練した医師の技能の範囲内にある。ある対象に対する精確な有効投与量は、この対象の体型および健康的状態、病気の性質および程度、ならびに選択投与される治療薬および/または治療薬の組み合わせに依存する。ある所定の状況は、慣用実験を用いてこの有効投与量を決定することができ、臨床医師にとって判断できることである。
【0041】
前記医薬用組成物の剤形は、油剤、顆粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、経口液、ゾル剤、スプレー剤、霧化剤を含む。
【0042】
本発明は、更に、本発明に記載のカンナビノイド組成物または前記医薬用組成物を含む、神経変性疾患の治療のためのキットを提供する。
【0043】
本発明の医薬用組成物は、臨床適用を容易にするために、注射用注射針などの注射用投与器に含まれてもよく、前記注射用投与器には、前記医薬用組成物が1回の投与量で含まれてもよい。前記注射用投与器は、保存、使用の便宜のためにキットに含まれてもよい。本発明に係るキットには、当業者が正しい方式で使用するのに好都合なように、使用説明書も含めることができる。
【0044】
以下、図面及び実施例を参照して、本発明の実験過程及び実験結果を詳細に説明し、本発明のカンナビノイド医薬組成物の、ドーパミン作動性ニューロン細胞に対する活性化作用、ならびにパーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症を含む神経変性疾患を治療する薬物の製造に使用できることを詳細に説明する。
【0045】
実施例に係る検出タンパク質についての紹介:
Nurr1:細胞内転写因子核内受容体スーパーファミリーのメンバーであり、大脳ドーパミン作動性系の維持において重要な役割を果たす核内受容体関連タンパク質1であって、この遺伝子の変異は、パーキンソン病、統合失調症及び躁うつ病を含むドーパミン機能不全に関連する疾患に関連する。このタンパク質は、中脳におけるドーパミン作動性表現型の発育に重要であると考えられている。
Pitx3:PITX3遺伝子から転写されるタンパク質である炎症性因子3であって、Pitx3は、大脳ドーパミン作動性ニューロンに特異的に発現し、脳ドーパミン作動性ニューロンの分化と成熟に重要な役割を果たしており、中脳ドーパミン作動性ニューロン特異的な発育に必要な転写因子と考えられている。
TH:ドーパミン生合成経路の重要な酵素であるTyrosine hydroxylaseであって、PDは、黒質線条体ドーパミンの過不足による神経変性疾患であり、THの発現調節は、PDの発症と治療に重要な役割を有する。
ドーパミン神経細胞の分化過程において、まずNurr1の発現が一定のレベルに維持された後、THおよびPitx3が発現し、Nurr1が発現してはじめて細胞分化成熟をさらに促進するマーカー遺伝子THおよびPitx3の発現が誘導されるので、ある程度、THおよびPitx3の発現がより重要であり、これらの発現レベルはドーパミン神経細胞のバイアビリティをよりよく表すことができる。
実施例1
【0046】
(一)実験過程
1.培地の配置
基本培地1:DMEM培地、10%のFBS、1%のPenicillin Streptomycin。
基本培地2:Neurobasal培地、1%のN-2添加剤、1%のPenicillin Streptomycin Glutamine。
誘導培地1:Neurobasal培地、1%のN-2添加剤、1%のPenicillin Streptomycin Glutamine、5%のグルタミン、1%のB27、10ng/mlのbFGF、20ng/mlのEFG、50ng/mlのGDNF、2μM RA;10μMSB431542;200ng/mlのNoggin。
誘導培地2:Neurobasal培地、1%のN-2添加剤、1%のPenicillin Streptomycin Glutamine、1%のB27、10ng/mlのbFGF、20ng/mlのEFG、50ng/mlのGDNF、2μM RA、100 ng/mlのSHH、100ng/mlのFGF8B。
上記の処方に従って各培地をそれぞれ調製し、調製後、ろ過フィルムで除菌し、使用に供する。
2.HDF38線維芽細胞の培養
購入したHDF38線維芽細胞を起こし、培養した後、基礎培地1を含む7枚の6cm培養皿に細胞継代を行い、各培養皿にHDF38線維芽細胞を80000個含み、37℃、5%CO2のインキュベーターに置いて培養した。3日間培養後、細胞の分化誘導を行った。
3.HDF38線維芽細胞の分化誘導
実験方法:上記細胞を基本培地1から取り出し、PBSで3回洗浄し、残りの培地を洗い流した。次に、分化誘導培養として、まず、各試験薬を含む誘導培地1に交換し、2.5日毎に液全交換し、この段階で7日間培養し、7日後に、培地を各試験薬を含む誘導培地2に交換し、3日毎に液全交換し、この段階で6日間培養した。
分化誘導過程で、細胞形態の変化を毎日顕微鏡(ZEISS AXIO observer)で観察し、写真で記録する。7組の実験の番号及び培地の組成を、以下の表1に示す。
【表1】
備考:CBG溶液、CBD溶液はSIGMA-ALDRICHから、Δ9-THCはFUJIFILMから購入した。
4.DA関連因子の相対的な発現レベルの検出
13日間の分化培養誘導後、細胞を収集し、TRIzol汎用試薬(Tiangen Biotech、中国北京)を用いて細胞から総RNAを抽出し、相補的なDNA(cDNA)を合成した。細胞におけるDA関連因子Nurr1、TH-2、Pitx3の相対的な発現レベルを検出するために、SYBR Green蛍光色素を用いてリアルタイム蛍光定量PCRを行った。
ここで、以下のプライマーを使用して断片を増幅した:
Nurr1遺伝子のプライマー配列:
F:5’-ACTGCCGATTTCAGAAGTGC-3’(SEQ ID NO:1),
R:5’-CCGGCCTTTTAAACTGTCTGTG-3’(SEQ ID NO:2);
TH遺伝子のプライマー配列:
F:5’-GAGTACACCGCCGAGGAGATTG-3’(SEQ ID NO:3),
R:5’-GCGGATATACTGGGTGCACTGG-3’(SEQ ID NO:4);
Pitx3遺伝子のプライマー配列:
F:5’-AGCACAGCGACTCAGAAAAG-3’(SEQ ID NO:5),
R:5’-TTTTTCAGCGAACCGTCCTC-3’(SEQ ID NO:6)。
qRT-PCRの反応条件は、95℃、10分間;95℃、15秒、30℃、1分間、40サイクルとした。反応終了後、目的遺伝子と内部標準遺伝子のmRNAを分析した。
【0047】
(二)実験結果
1.細胞誘導分化に対するカンナビノイド組成物の影響
各培養群細胞の形態を顕微鏡により観察した結果、図1に示すように、HDF38線維芽細胞はドーパミン作動性ニューロン細胞への分化に成功し、カンナビノイド系薬物を加えて培養した細胞を誘導し、その分化したドーパミン神経細胞の数がより多く、カンナビノイド系薬物がHDF38線維芽細胞のドーパミン作動性神経細胞への分化を促進できることが示され、そのうち、CBD+CBG群のドーパミン作動性ニューロン細胞の数が最も多く、CBD+CBG組成物が線維芽細胞のドーパミン作動性ニューロン細胞への分化促進作用が最も強いことが示された。
2.カンナビノイド組成物のDA関連因子の発現への影響
図2に示すように、分化誘導培養した6群の細胞はすべてドーパミン神経細胞マーカー遺伝子Nurr1、TH-2およびPitx3を成功裏に発現し、そのうち6個の誘導群に係る細胞のNurr1発現レベルはいずれもCont群よりも顕著に高く、本実験においてHDF38線維芽細胞がドーパミン作動性ニューロン細胞(図2のA)への分化誘導に成功したことを示している。
Nurr1の発現に成功すると、TH-2およびPitx3マーカー遺伝子が続いて発現し、これら2種類の遺伝子の発現レベルはドーパミン神経細胞の生存能力およびバイアビリティをよりよく示し、その結果、CBD+CBG、CBD+THCを加えた2群の細胞は、他の群よりもTH-2およびPitx3を発現するレベルが明らかに優れ、これらの2種類の組み合わせ中の成分は、単一の組合せ薬物と比較して、互いに相乗効果を有し、ドーパミン作動性ニューロン細胞の発育、熟および分泌能力をより良く促進することが分かる。そのうち、CBD+CBG群がTH-2を発現するレベルはCBD+THCの約3倍であり、Pitx3を発現するレベルはCBD+THCの約2倍であることから、CBD+CBGはCBD+THCと比較してドーパミン神経細胞のバイアビリティをより良好に向上することができ(図2のB、C)、かつ、CBGは精神活性を有さず、依存性を有しないため、薬物副作用が大きく低減することが示された。
【0048】
実施例2 比率を変えたCBD+CBG組成物の細胞誘導分化に対する影響
実施例2では、CBD+CBGの組み合わせは、ドーパミン作動性ニューロンの生存および分泌能を促進する効果が最も良好であることが見出されたが、実施例1においてCBDとCBGとの質量比が1:1である効果のみであったので、ドーパミン作動性ニューロンを活性化する効果に最も好適な比率の組み合わせを求めるために、CBDとCBGとの比率を変えた組み合わせについての実験を継続に設計する。
(一)実験過程
1.培地の配置
実施例1の処方に従って基礎培地1、基礎培地2、誘導培地1及び誘導培地2をそれぞれ調製し、調製後、ろ過フィルムで除菌し、使用に供する。
2.HDF38線維芽細胞の培養
購入したHDF38線維芽細胞を起こし、培養した後、基礎培地1を含む12枚の6cm培養皿に細胞継代を行い、各培養皿にHDF38線維芽細胞を80000個含み、37℃、5%CO2のインキュベーターに置いて培養した。3日間培養後、細胞の分化誘導を行った。
3.HDF38線維芽細胞の分化誘導
上記細胞を12群に分けて分化誘導を行い、実験方法は実施例1における関連操作と同様であり、CBDとCBGの比率を変えた設計は、下記表2に示す通りであり、CBDの添加量がいずれも1μg/10mlの培地である。
【表2】
分化誘導過程で、細胞形態の変化を毎日顕微鏡(ZEISS AXIO observer)で観察し、写真で記録する。
4.DA関連因子の相対的な発現レベルの検出
13日間の分化培養誘導後、細胞を収集し、TRIzol汎用試薬(Tiangen Biotech、中国北京)を用いて細胞から総RNAを抽出し、相補的なDNA(cDNA)を合成した。細胞におけるDA関連因子Nurr1、TH-2、Pitx3の相対的な発現レベルを検出するために、SYBR Green蛍光色素を用いてリアルタイム蛍光定量PCRを行った。
【0049】
(二)実験結果
図3において、A~Cはそれぞれ、4日目、7日目及び13日目誘導培養した細胞形態を示し、その結果、4日目の誘導培養時点で各培養群細胞にニューロン細胞の産生が観察され、かつ添加された薬物におけるCBGの増加に伴ってニューロン数が増加しており、高濃度のCBGが線維芽細胞からニューロン細胞への分化速度を高められることを示している(図3のA)。しかし、1週間培養誘導後、高濃度のCBGを含む2群(質量比1:7及び1:10)の細胞は、様々な程度の死亡を示し、他の誘導分化群は細胞死亡現象を示さず、高濃度のCBGは薬物毒性を引き起こし、更に細胞死亡をもたらすことが示され、したがって、本実験のCBD濃度において、カンナビノイド組成物中のCBDとCBGの質量比が1:5以下である場合は安全があるとみなされる(図3のB、C)。
図4は、各細胞群のDA関連因子の発現量の比較図である。図4に示すように、CBD及びCBGの質量比がそれぞれ1:1、1:3及び1:5である場合、TH-2及びPitx3の発現レベルは対照群及び他の実験群に比べて顕著に高く、1:3である場合、TH-2及びPitx3の発現量が最も高いことを示した。
実施例3 比率を変えたCBD+CBG+CBN組成物の細胞誘導分化に対する影響
実施例2では、CBD+CBGの質量比が1:1と1:3である場合、ドーパミン作動性ニューロンを活性化する効果が良好であるので、現在の2つの比率を基に、ドーパミン作動性ニューロンを活性化する効果が最も好適な組み合わせと比率を求めるために、CBD+CBG+CBNの比率を変えた組み合わせについての実験を継続に設計する。
【0050】
(一)実験過程
1.培地の配置
実施例1の処方に従って基礎培地1、基礎培地2、誘導培地1及び誘導培地2をそれぞれ調製し、調製後、ろ過フィルムで除菌し、使用に供する。
2.HDF38線維芽細胞の培養
購入したHDF38線維芽細胞を蘇生し、培養した後、基礎培地1を含む10枚の6cm培養皿に細胞継代を行い、各培養皿にHDF38線維芽細胞を80000個含み、37℃、5%CO2のインキュベーターに置いて培養した。3日間培養後、細胞の分化誘導を行った。
3.HDF38線維芽細胞の分化誘導
上記細胞を10群に分けて分化誘導を行い、実験方法は実施例1における関連操作と同様であり、CBDとCBGの比率を変えた設計は、下記表3に示す通りであり、CBDの添加量がいずれも1μg/10mlの培地である。
【表3】
分化誘導過程で、細胞形態の変化を毎日顕微鏡(ZEISS AXIO observer)で観察し、写真で記録する。
4.DA関連因子の相対的な発現レベルの検出
13日間の分化培養誘導後、細胞を収集し、TRIzol汎用試薬(Tiangen Biotech、中国北京)を用いて細胞から総RNAを抽出し、相補的なDNA(cDNA)を合成した。細胞におけるDA関連因子Nurr1、TH-2、Pitx3の相対的な発現レベルを検出するために、SYBR Green蛍光色素を用いてリアルタイム蛍光定量PCRを行った。
【0051】
(二)実験結果
図5は、各細胞群のDA関連因子の発現量の比較図である。その結果、CBD及びCBGにCBNを添加することにより、カンナビノイド組成物がドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果をさらに向上させた。ここで、CBD+CBG+CBN組成物中のCBDとCBGの質量比が1:3である場合、TH-2とPitx3の発現レベルは、CBDとCBGの質量比が1:1である場合のCBD+CBG+CBN群よりも高かったことから、実施例2の結論がさらに裏付けられる。さらに、CBD:CBG:CBN(質量比)が1:3:0.3の場合に、TH-2とPitx3の発現量が最も高く、ドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果が最も優れている。
【0052】
本発明の実施例2の番号8の組成物について臨床試験を行い、臨床観察を行った(詳細は以下の通り)。
1.臨床データ
最低年齢55歳、最高年齢93歳の合計14名の患者を対象とした。このうち男性5名、女性9名については、病変の段階が最も短いのが1年、最も長いのが約15年である。そのうち、パーキンソン病患者は10名、アルツハイマー病患者は4名である。臨床検査:全ての症例を国、業界協会関連判定基準により診断した。
2.治療方法
本発明の実施例2におけるNo.8のカンナビノイド組成物から調製した薬物(舌下滴剤、1バイアルあたり2ml、1バイアルあたり有効成分として10mgのCBD+30mgのCBGを含有する)を、1日1~2回、就寝前0.5~1時間に1回、または午前および就寝前に1回ずつとした。本製品を舌下服用で、舌下に約60秒かけて含ませ飲み込んだ。4週間は1治療コースであり、症状によって治療コースの使用量が異なる。
3.治療効果の評価基準
改善:患者自身または傍観者、医学的検査から、患者の症状がやや軽減することを示したり、自律的行動、意識がやや増強したりすること。
顕著な改善:患者自身または傍観者、医学的検査から、患者の症状が明らかに軽減することを示したり、自律的行動、意識が明らかに増強したりすること(例えば、パーキンソン病の第4期症状から第3期症状への改善)。
顕著ではない:患者の使用後、患者自身または傍観者、医学的検査に関わらず、患者の症状が軽減したり、自律的行動、意識が増強したりするとは考えられない。
5.治療結果
約29%の患者(4名の患者)は、薬品服用後1週目に初期に症状が初歩的に改善し、64%の患者(9名の患者)は2週間以内に症状が改善し、79%の患者(11名の患者)は、第1の治療コースで症状が明らかに改善した。これまで、約14%の患者(2名の患者)は改善効果があまり目立たなく、1名は2週間、他の1名は5週間使用していた。改善率は約86%であった。
すべての患者に顕著な副作用は見られず、約43%の患者(6名の患者)が部分的な眠気症状を報告した。
本発明の症例は、いずれも、現在の段階で本願の効果を初歩的に実証するために行われたものであり、一部のボランティアが薬を服用するにすぎず、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患の特性のため、病歴及びその効果に関する記述は、いずれも患者又は患者の家族によるものであり、主観的又は不十分な厳しさを有する可能性があるが、症例及び効果は、いずれも本当のものである。症例効果は医学分野の専門家の説明ではないため、症例の各方面の技術的効果は、権威のある医学診断結果を表しない。
【0053】
症例1
高氏、男性、85歳、所在地が山東日照、退休医師、2017年にパーキンソン病と診断された。
病歴:2012年から動きが鈍く、顔が表情なく、後ほど重くなり、細かい動作がにくくなり、四肢が硬直し曲がり、小さな歩調で歩いており、便秘、頭と面部に油が出るなど、2017年入院検査:仮面様顔貌をしていて、歩きが慌てて、両手が静止的に振戦し、四肢の筋張力が強すぎ、四肢の筋力が5級、パーキンソン病と診断された。医師の指示通りに服薬して4年以来、振戦は緩和しているが、顔表情に改善がなくひどくなり、よだれがひどく、歩くことが遅く困難となり、杖から離れて歩くことができず、歩く力がないと主述した。
処理:2021年7月から本発明の実施例2の番号8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回に1バイアル服用した。5週間連続服用した。
効果:患者は1週間服用した後、目のよどみが改善し、表情が豊かになり、室内を歩けるようになり、場合によっては杖から離れて歩けるようになり、四肢の硬直曲がりが改善し、細かい動作が著しく改善し、約2年間中断した、自分で指の爪を切ることや、錠剤を剥がすことなどの自分の面倒能力が回復する。患者は薬の服用後に嗜眠し、飲茶で嗜眠を緩和した。
【0054】
症例2
徐氏、女、83歳、所在地が河南鄭州、2019年にパーキンソン病と診断された。
病歴:2014年から、患者の動作が徐々に鈍くなり、四肢の硬直で、睡眠時間が短くなり、睡眠障害などが発生した。2018年から、状況が著しくなり、歩きにくくなり、発音が困難になり、舌のコントロールが難しくなり始めた。2019年の病院検査でパーキンソン病と診断された。
処理:2021年7月から本発明の実施例2の番号8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回1バイアル服用した。3週間連続服用した。
効果:患者の服用2週間目に自己制御能力が増強し始めた。よだれ、舌のコントロール不能症状は明らかに好転し、自立歩行の時間長さは著しく長くなり、1回の自立歩行時間は元の10分未満から20分を超えるまでに長くなった。睡眠時間が著しく長くなり、情動が安定した。
【0055】
症例3
計氏、女、93歳、所在地が黒龍江、2021年の始めにパーキンソン病にかかると診断された。
病歴:2015年から、四肢硬直で非随意性振戦が始まった。2020年、状況が著しく重くなり、自律走行ができず、長時間ベッドに寝て、四肢に痙攣が頻発し、食事、薬飲みなどの細かい動作がほとんどできず、情動が不安定で怒りやすい。2021年の初め、病院でパーキンソン病にかかると診断された。
処理:2021年5月から本発明の実施例2のNo.8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回に1バイアル服用した。11週間連続服用した。
効果:患者の2週目服用時に四肢硬直が明らかに緩和し、非随意性振戦の周波数、振幅が低減し、四肢の痙攣が低減した。11週間服用後、患者は自立により壁を約5分間立たせることができる。話すことがはっきりで、発音は正しく、会話は正常に向かう。睡眠時間が長くなり、情動が安定した。
【0056】
症例4
戴氏、女性、81歳、所在地がマレーシア、2017年にアルツハイマー病にかかると診断された。
病歴:2014年以降、患者は記憶力の衰えなどが激しく、鍵でドアを開けることができず、物を隠すことが多く、懐疑的である。2017年からは、病状が著しく重くなり、認知障害が発生し、親族や友人を知らなかったり、自分が行ったばかりのことを覚えていなかったりなどである。患者の治療は、食事改善、生活習慣改善などの非薬物治療を主とし、Donepezil(Aricept、ドネペジル)を相補した。1年持続しても改善が見られず、薬草や食療を改用しても効果は不十分である。
処理:2021年5月から本発明の実施例2のNo.8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回に1バイアル服用した。11週間連続服用した。
効果:患者が1週間服用した後、短期記憶が増強し、介護者との正常な会話が可能となる。約3~4週間の使用後、記憶は回復し始め、家族や以前よく見られる友人などを認識するようになる。現時点で11週間服用し、回復状況は良好で、1年前の記憶を思い出すことができた。不良反応は報告されなかった。
【0057】
症例5
申氏、女、68歳、所在地が広東、2021年にアルツハイマー病と診断された。
病歴:患者は「記憶力が3年余りの衰え、1年半の重くなり」で2021年の始めに入院した。入院検査での日常的な尿・血検査、腫瘍七項目、心筋障害四連などには、有意な異常は見られなかった。頭蓋脳CT:両側性基底核領域、放線冠ラクナ梗塞、脳白質変性、脳萎縮。頭蓋脳MRI:ラクナ梗塞巣、脳白質変性、脳萎縮。残りの検査は明らかに異常がなかった。アルツハイマー病にかかると診断され、カバパチンカプセル、メマンチンなどの薬物治療を約4ヶ月間持続したが、顕著な改善は見られなかった。
処理:2021年5月から本発明の実施例2のNo.8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回に1バイアル服用した。
効果:患者の服用後3週目に、瞬間記憶が明らかに増強し、過去3日以内に起きたこと及び過去1週間以内に起きた主要な事件を記憶し始め、11週間服用して日常の会話、思い出等の記憶力の改善が明らかになり、障害が明らかに小さくなる。日中の睡眠が始まり、軽度の眠気症状があった。
【0058】
症例6
王氏、男、87歳、所在地がマレーシア、2013年にアルツハイマー病にかかると診断された。
病歴:2007年以降、患者には記憶力の衰えなどの症状があった。2013年に、患者は、病院で検査を受けてアルツハイマー病と診断され、治療を始めた。治療を開始してから2年以内に、記憶力の衰えなどの認知機能の低下現象は緩和したが、作用が急速に消え、病状は悪化し続ける。十年以上の間、治療は患者の症状の悪化に対する一定の遅延効果をもたらしたが、患者の状況は決して好転されたことにはならなかった。
患者が初めて我々に会ったとき、呼びかけをした人には反応がなく、そして「舌の下に置く」などの服薬指示を理解できないなど、ほとんどの言語の意味を理解することができない。普段は寝たり車椅子を走ったりして立っているが、自律的な行動能力は低く、生活の自己面倒能力はほとんどない。認識能力が低く、家族を認識することができない。
処理:2021年6月から本発明の実施例2のNo.8の組成物から調製した薬物を、毎日の就寝前に1回、1回に1バイアル服用した。
効果:患者は1週間服用した後、意識がはっきりようになり、服用指示などの言葉が分かるようになる。9週間服用後には、回復具合が良く、階下近隣とチャットが自由にでき、自分の服装、買い物を紹介することができる。孫の携帯番号を覚え始め、正常な交流の多くは、すでに正常だった。
【0059】
以上のように、本発明は、線維芽細胞がドーパミン神経細胞に分化誘導するモードの実験方法により、線維芽細胞がドーパミン作動性ニューロンに分化誘導することに対するCBD、CBG、THCおよびその組み合わせの影響を検出し、CBD+CBGがドーパミン作動性神経細胞の分化誘導に及ぼす促進効果が最も優れ、ドーパミン神経細胞の生存能力およびドーパミン分泌能力を顕著に向上させることができ、神経変性疾患を治療する薬物の製造に有用で、かつ嗜癖性物質THCを含有せず、副作用が大きく低減されることを見出した。さらに、CBDとCBGの比率を変えた組み合わせについての実験を更に設計した結果、CBDとCBGの質量比が1:1~1:5の場合、カンナビノイド組成物がドーパミン神経細胞のバイアビリティを顕著に高めることができ、その比率が1:3の場合に最も効果が優れていることがわかった。更に、CBD、CBG、CBNの比率を変えた組み合わせについての実験を更に設計した結果、CBNを添加することにより、カンナビノイド組成物がドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果を更に向上させ、CBD:CBG:CBN(質量比)が1:3:0.3の場合はドーパミン神経細胞のバイアビリティを活性化する効果が最も優れていることがわかった。
【0060】
以上、本発明の内容を上記の好ましい実施例により詳細に紹介したが、上述の説明は、本発明を限定するものと解釈してはならない。上記の内容を読めば、本発明に対する様々な修正及び代替が当業者には明らかであろう。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきである。
図1
図2A-2C】
図3A-3B】
図3C
図4A-4C】
図5A-5C】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオールとカンナビゲロールのみで構成され、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:10、または1:0.3~1:0.5、または1:0.5~1:0.7、または1:0.7~1:1であることを特徴とする、カンナビノイド組成物。
【請求項2】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3、又は1:3~1:5、又は1:5~1:7であることを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項3】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:3であることを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項4】
カンナビジオールと、カンナビゲロールと、カンナビノールのみで構成されることを特徴とする、カンナビノイド組成物。
【請求項5】
前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.05~1)であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項6】
前記カンナビジオールと前記カンナビノールとの質量比が、1:(0.1~0.5)であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項7】
前記カンナビジオール、カンナビゲロール及びカンナビノールの質量比が、1:3:0.3であることを特徴とする、請求項4に記載のカンナビノイド組成物。
【請求項8】
カンナビジオールとカンナビゲロールのみを含み、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:10、または1:0.3~1:0.5、または1:0.5~1:0.7、または1:0.7~1:1であるカンナビノイド組成物の神経変性疾患を治療する薬物の製造における使用
【請求項9】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項10】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞の発育、成熟を促進し、ドーパミン神経細胞の脱落を防止し、ドーパミン神経細胞の生存能力を向上させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の使用
【請求項11】
前記カンナビノイド組成物は、ドーパミン神経細胞がドーパミンを分泌する能力を向上させるためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の使用
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイド組成物と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療のための医薬用組成物。
【請求項13】
前記医薬用組成物の剤形は、油剤、顆粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、経口液、ゾル剤、スプレー剤、霧化剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載の医薬用組成物。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイド組成物を含むことを特徴とする、神経変性疾患の治療のためのキット。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を治療するための有効成分組成物であって、
当該組成物は、カンナビジオールとカンナビゲロールのみから構成され、
カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が1:0.5~1:7である、
有効成分組成物
【請求項2】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3、又は1:3~1:5、又は1:5~1:7である、請求項1に記載の有効成分組成物
【請求項3】
前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:3である、請求項1に記載の有効成分組成物
【請求項4】
神経変性疾患を治療するための有効成分組成物であって、
当該組成物は、カンナビジオールと、カンナビゲロールと、カンナビノールのみから構成され、
カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:1~1:3であり、かつ、
カンナビジオールとカンナビノールとの質量比が、1:0.1~1:0.5である、
有効成分組成物。
【請求項5】
前記カンナビジオール、カンナビゲロール及びカンナビノールとの質量比が、1:3:0.3である、請求項4に記載の有効成分組成物
【請求項6】
カンナビジオールとカンナビゲロールのみを含み、前記カンナビジオールとカンナビゲロールとの質量比が、1:0.5~1:7である有効成分組成物の、神経変性疾患を治療する薬物の製造における使用。
【請求項7】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の使用
【請求項8】
前記有効成分組成物は、ドーパミン神経細胞の発育、成熟を促進し、ドーパミン神経細胞の脱落を防止し、ドーパミン神経細胞の生存能力を向上させるためのものである、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記有効成分組成物は、ドーパミン神経細胞がドーパミンを分泌する能力を向上させるためのものである、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の有効成分組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、神経変性疾患の治療のための医薬用組成物。
【請求項11】
前記医薬用組成物の剤形は、油剤、顆粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、粉剤、経口液、ゾル剤、スプレー剤、霧化剤を含む、請求項10に記載の医薬用組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の有効成分組成物を含む、神経変性疾患の治療のためのキット。