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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026315
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】導波素子
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20230216BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20230216BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20230216BHJP
   H01P 5/107 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H01P3/12 100
H01P3/00 101
H01P3/08 100
H01P5/107 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085564
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021131757
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】谷 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 順悟
【テーマコード(参考)】
5J014
【Fターム(参考)】
5J014CA42
5J014CA55
5J014CA56
5J014DA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】周波数が30GHz以上である高周波数の電磁波を導波する場合であっても、伝搬損失を十分に低減できる導波素子を提供する。
【解決手段】導波素子101は、無機材料基板1と、無機材料基板1の上部に設けられる導体層2と、無機材料基板1に対して導体層2と反対側に位置している支持基板7と、無機材料基板1と支持基板7との間に位置している第1金属層3と、支持基板7に対して無機材料基板1と反対側に位置している第2金属層4と、第1金属層3と第2金属層4とを電気的に接続する複数の基板貫通ビア5と、を備えている。導体層2は、電磁波を伝搬可能な伝送線路を構成する信号電極21を備える。第1金属層3と第2金属層4と複数の基板貫通ビア5とは、電磁波を伝搬可能な基板集積導波管を構成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が30GHz以上20THz以下である電磁波を導波可能な導波素子であって、
無機材料基板と、
前記無機材料基板の上部に設けられる導体層と、
前記無機材料基板に対して前記導体層と反対側に位置している支持基板と、
前記無機材料基板と前記支持基板との間に位置している第1金属層と、
前記支持基板に対して前記無機材料基板と反対側に位置している第2金属層と、
前記第1金属層と前記第2金属層とを電気的に接続する複数の基板貫通ビアと、を備え、
前記導体層は、所定方向に延びて、かつ、前記電磁波を伝搬可能な伝送線路を構成する信号電極を備え、
前記第1金属層と前記第2金属層と前記複数の基板貫通ビアとは、電磁波を伝搬可能な基板集積導波管を構成し、
前記無機材料基板の厚みtは、下記式(1)を満たしている、導波素子;
【数1】
(式中、tは無機材料基板の厚みを表し;λは導波素子に導波される電磁波の波長を表し;εは無機材料基板の比誘電率を表し;aは3以上の数値を表す)。
【請求項2】
前記無機材料基板の厚みは、100μm以下である、請求項1に記載の導波素子。
【請求項3】
前記無機材料基板の厚みは、31μm以上である、請求項1に記載の導波素子。
【請求項4】
前記導体層は、前記信号配線と間隔を空けて配置されている接地電極をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波素子。
【請求項5】
前記接地電極と前記第1金属層とを電気的に接続するビアをさらに備える、請求項4に記載の導波素子。
【請求項6】
前記伝送線路と前記基板集積導波管とを、前記電磁波が伝搬可能となるように結合する導体ピンを、さらに備え、
前記導体ピンは、前記信号電極から、前記無機材料基板を貫通して、前記支持基板における前記基板集積導波管に到達している、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波素子。
【請求項7】
前記第1金属層は、前記導体ピンが挿通される開口部であって、前記導体ピンの周囲に空気層を形成する開口部を有している、請求項6に記載の導波素子。
【請求項8】
前記支持基板は、前記無機材料基板の厚み方向において互いに間隔を空けて複数配置され、複数の支持基板のそれぞれに基板集積導波管が設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波素子。
【請求項9】
複数の前記支持基板のうち互いに隣り合う支持基板の間には、スペーサー基板が設けられている、請求項8に記載の導波素子。
【請求項10】
前記無機材料基板と前記支持基板との間には有機系接着剤が存在せず、前記無機材料基板と前記支持基板とは、前記第1金属層を介して直接接合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波~テラヘルツ波を導波する素子の1つとして、導波素子の開発が進められている。導波素子は、光導波路、次世代高速通信、センサ、レーザー加工、太陽光発電等の幅広い分野への応用および展開が期待されている。このような導波素子の一例として、厚み2mmの透明基板と、透明基板上に設けられるアンテナ導体と、透明基板におけるアンテナ導体と反対側の面に設けられる透明導電膜とを備えるマイクロストリップアンテナを用いた技術が提案されている(特許文献1)。
このような技術による導波素子を各種産業製品に採用する場合、導波素子を、IC基板やプリント基板などの支持基板に実装することが検討される。しかし、導波素子を支持基板に実装して、ミリ波~テラヘルツ波(とりわけ300GHz以上の電磁波)を導波すると、伝搬損失が顕著に増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/107514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる目的は、周波数が30GHz以上である高周波数の電磁波を導波する場合であっても伝搬損失を十分に低減できる導波素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による導波素子は、周波数が30GHz以上20THz以下である電磁波を導波可能である。該導波素子は、無機材料基板と;該無機材料基板の上部に設けられる導体層と;該無機材料基板に対して該導体層と反対側に位置している支持基板と;該無機材料基板と該支持基板との間に位置している第1金属層と;該支持基板に対して該無機材料基板と反対側に位置している第2金属層と;該第1金属層と該第2金属層とを電気的に接続する複数の基板貫通ビアと;を備えている。該導体層は、所定方向に延びて、かつ、上記電磁波を伝搬可能な伝送線路を構成する信号電極を備えている。上記第1金属層と上記第2金属層と上記複数の基板貫通ビアとは、電磁波を伝搬可能な基板集積導波管を構成している。上記無機材料基板の厚みtは、下記式(1)を満たしている。
【数1】
(式中、tは、無機材料基板の厚みを表す。λは、導波素子に導波される電磁波の波長を表す。εは、無機材料基板の比誘電率を表す。aは、3以上の数値を表す。)
[2]上記[1]に記載の導波素子において、上記無機材料基板の厚みは、100μm以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の導波素子において、上記無機材料基板の厚みは、31μm以上であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の導波素子において、上記導体層は、上記信号配線と間隔を空けて配置されている接地電極をさらに備えていてもよい。
[5]上記[4]に記載の導波素子は、上記接地電極と上記第1金属層とを電気的に接続するビアをさらに備えていてもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の導波素子は、上記伝送線路と上記基板集積導波管とを、上記電磁波が伝搬可能となるように結合する導体ピンをさらに備えていてもよい。該導体ピンは、上記信号電極から、上記無機材料基板を貫通して、上記支持基板における基板集積導波管に到達している。
[7]上記[6]記載の導波素子において、上記第1金属層は、上記導体ピンが挿通される開口部であって、上記導体ピンの周囲に空気層を形成する開口部を有していてもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載の導波素子において、上記支持基板は、上記無機材料基板の厚み方向において互いに間隔を空けて複数配置され、複数の支持基板のそれぞれに基板集積導波管が設けられていてもよい。
[9]上記[8]に記載の導波素子において、複数の支持基板のうち互いに隣り合う支持基板の間には、スペーサー基板が設けられていてもよい。
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載の導波素子において、上記無機材料基板と上記支持基板との間には有機系接着剤が存在せず、上記無機材料基板と上記支持基板とは、上記第1金属層を介して直接接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、周波数が30GHz以上である高周波数の電磁波を導波する場合であっても伝搬損失を十分に低減できる導波素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態による導波素子の概略斜視図である。
図2図1の導波素子のII-II´断面図である。
図3図1の導波素子の分解斜視図である。
図4図2の導体ピンを絶縁材料によって覆った状態の概略断面図である。
図5】本発明の別の実施形態による導波素子の概略斜視図である。
図6図5の導波素子のVI-VI´断面図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態による導波素子の概略断面図である。
図8】本発明のさらに別の実施形態による導波素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.導波素子の全体構成
図1は本発明の実施形態による導波素子の概略斜視図であり;図2図1の導波素子のII-II´断面図であり;図3図1の導波素子の分解斜視図である。
図示例の導波素子101は、周波数が30GHz以上20THz以下である電磁波、言い換えれば、ミリ波~テラヘルツ波の電磁波を導波可能である。なお、ミリ波とは、代表的には周波数が30GHz~300GHz程度の電磁波であり、テラヘルツ波とは、代表的には周波数が300GHz~20THz程度の電磁波である。とりわけ、導波素子101は、周波数が30GHz以上2THz以下である電磁波(特に周波数が30GHz以上1THz以下である電磁波)を優れた伝搬損失で導波できる。
【0009】
導波素子101は、無機材料基板1と、信号電極21を備える導体層2と、支持基板7と、第1金属層3と、第2金属層4と、複数の基板貫通ビア5と、を備えている。
導体層2は、無機材料基板1の上部に設けられている。信号電極21は、所定方向(導波方向)に延びている。信号電極21は、上記した電磁波を伝搬可能な伝送線路を構成する。支持基板7は、無機材料基板1に対して導体層2と反対側に位置している。第1金属層3は、無機材料基板1と支持基板7との間に位置している。第2金属層4は、支持基板7に対して第1金属層3と反対側に位置している。複数の基板貫通ビア5のそれぞれは、第1金属層3と第2金属層4とを電気的に接続している。第1金属層3と第2金属層4と複数の基板貫通ビア5とは、電磁波を伝搬可能な基板集積導波管(SIW)を構成する。無機材料基板1の厚みtは、下記式(1)を満たしている。
【数1】
(式中、tは無機材料基板の厚みを表す。λは導波素子に導波される電磁波の波長を表す。εは無機材料基板の比誘電率を表す。aは3以上の数値を表す。)
上記した信号電極を備える導波素子では、高周波数の電磁波が、無機材料基板中の伝送線路を伝搬する。上記の構成によれば、無機材料基板の厚みが上記式(1)を満足するので、導波素子が高周波数の電磁波を導波する場合であっても、スラブモードの誘起および/または基板共振の発生を抑制できる。また、第1金属層が無機材料基板と支持基板との間に配置され、第2金属層が支持基板に対して第1金属層と反対側に配置されているので、電磁波が支持基板に漏洩することを抑制できる。そのため、スラブモードの誘起および/または基板共振の発生を抑制できつつ、電磁波の支持基板への漏洩を抑制できる。その結果、導波素子において、周波数が30GHz以上である高周波数の電磁波を導波する場合であっても、伝搬損失を十分に低減できる。
さらに、第1金属層および第2金属層は、複数の基板貫通ビアとともに基板集積導波管(以下、SIWとします。)を構成する。これによって、支持基板にSIWを設けることができ、支持基板を導波管として有効に利用できる。
なお、導波素子は小型化の開発が進められており、将来的には回路の集積化が見込まれる。上記の導波素子では、無機材料基板の薄板化が図られ、かつ、信号電極が構成する伝送線路とSIWとを効率的に配置できるので、優れた伝搬損失性能を確保しながら、小型化の要望にも対応することができる。
【0010】
1つの実施形態において、上記式(1)において、aは6以上の数値を表す。無機材料基板の厚みが、aが6以上の数値を表す式(1)を満足すると、上記した高周波数の電磁波を導波する場合の伝搬損失の低減を安定して図ることができる。
上記式(1)を満たす無機材料基板1の厚みは、具体的には1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、とりわけ好ましくは31μm以上であり、例えば1700μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。また、導波素子を伝搬する電磁波の周波数が30GHz以上5THz以下である場合、無機材料基板1の厚みは、好ましくは10μm以上である。
無機材料基板1の厚みが上記下限を下回ると、導波素子を構成する電極の厚みや幅が数μm程度まで小さくなり、表皮効果による影響で伝搬損失が大きくなることに加え、製造ばらつきによる線路性能のトレランスが著しく低下する。
無機材料基板1の厚みが上記上限以下であると、スラブモードの誘起や基板共振の発生が抑制され、広い周波数範囲にわたって伝搬損失が小さい(すなわち、広帯域の)導波素子を実現できる。
【0011】
図示例の信号電極21は、第1金属層3とともに、伝送線路の一例としてのマイクロストリップ線路を構成する。すなわち、信号電極21および第1金属層3は、マイクロストリップ型電極である。信号電極および第1金属層がマイクロストリップ型電極である場合、上記した高周波数の電磁波は、信号電極21と第1金属層3との間に生じた電界と結合して、無機材料基板1中を伝搬する。
【0012】
1つの実施形態において、導体層2は、信号電極21と間隔を空けて配置されている接地電極22をさらに備えている。図示例では、導体層2は、第1接地電極22aと、第2接地電極22bと、第3接地電極22cとを備えている。
第1接地電極22aおよび第2接地電極22bは、信号電極21の長手方向と交差(好ましくは直交)する方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1接地電極22aおよび第2接地電極22bの間には、信号電極21の一端部が位置している。信号電極21と、第1接地電極22aおよび第2接地電極22bのそれぞれとの間には、所定の空隙部(ギャップ)が形成されている。第1接地電極22aおよび第2接地電極22bは、図示しない外部素子と電気的に接続可能であってもよい。第3接地電極22cは、信号電極21の他端部に対して所定の間隔を空けて配置されている。信号電極21と第3接地電極22cとの間には、所定の空隙部(ギャップ)を形成されている。第3接地電極22cは、無機材料基板1の厚み方向から見て略C字形状を有しており、信号電極21の他端部を囲んでいる。なお、導体層2は、第3接地電極22cを備えなくてもよい。また、図示しないが、信号電極21は、第1接地電極22aおよび第2接地電極22bとともに、伝送線路の一例としてのコプレーナ型電極を構成してもよい。
【0013】
1つの実施形態において、導波素子101は、接地電極22と第1金属層3とを電気的に接続するビア6をさらに備えている。これによって、グランドを強化でき、周囲の線路や素子による浮遊容量を抑制できる。図示例では、第1接地電極22a、第2接地電極22bおよび第3接地電極22cのそれぞれが、複数のビア6により、第1金属層3と電気的に接続されている。
【0014】
ビア6は、導体材料から構成され、代表的には導体層2と同様の金属(後述)で構成されている。ビア6は、第1ビアホール8内に配置される(図2参照)。つまり、導波素子101は、複数のビア6に対応して、複数の第1ビアホール8を有している。図示例では、第1ビアホール8は、接地電極22、無機材料基板1および第1金属層3を一括して貫通している。ビア6は、代表的には、ビアホール8の内面全体に形成される導電膜である。なお、第1ビアホールは、接地電極および第1金属層を貫通せずに無機材料基板のみを貫通していてもよい。この場合、ビアは、接地電極および第1金属層と接触するように、第1ビアホールに充填される。第1ビアホール8には、ホール内全体に導電性材料が充填されていてもよい。ビア6が導体膜で形成される場合、その内部は導電性材料で充填されていてもよい。導電性材料は、ビア6と同じ金属であってもよく、導電性ペーストなどの異なる材料であってもよい。
【0015】
複数の基板貫通ビア5のそれぞれは、支持基板7を厚み方向に貫通しており、支持基板7において周期的に配置されている。代表的には、複数の基板貫通ビア5は、第1ビア列5aと第2ビア列5bとを含んでいる。第1ビア列5aおよび第2ビア列5bのそれぞれは、所定方向に互いに間隔を空けて並ぶ複数の基板貫通ビア5からなる。第2ビア列5bは、第1ビア列5aの延びる方向と直交する方向において、第1ビア列5aから離れて位置している。1つの実施形態では、支持基板7において、第1金属層3と第2金属層4と第1ビア列5aと第2ビア列5bとによって囲まれる領域が、SIWとして機能する。
【0016】
基板貫通ビア5は、導体材料から構成され、代表的には導体層2と同様の金属(後述)で構成されている。基板貫通ビア5は、第2ビアホール9内に配置される(図2参照)。つまり、導波素子101は、複数の基板貫通ビア5に対応して、複数の第2ビアホール9を有している。図示例では、第2ビアホール9は、第1金属層3、支持基板7および第2金属層4を一括して貫通している。基板貫通ビア5は、代表的には、第2ビアホール9の内面全体に形成される導電膜である。なお、第2ビアホールは、第1金属層および第2金属層を貫通せずに支持基板のみを貫通していてもよい。この場合、基板貫通ビアは、第1金属層および第2金属層と接触するように、第2ビアホールに充填される。また、第1金属層3と第2金属層4とを導通する基板貫通ビア5が導体膜で形成される場合、その内部は樹脂などの材料で充填されていてもよい。
【0017】
導波素子101において、信号電極21が構成する伝送線路とSIWとは、互いに独立していてもよく、電磁波が伝搬可能となるように結合されていてもよい。1つの実施形態では、図2に示すように、信号電極21が構成する伝送線路(代表的にはマイクロストリップ型伝送線路)とSIWとは、導体ピン25によって結合されている。これによって、電磁波の伝搬モードを、伝送線路モードと導波管モードとに変換可能である。例えば、無機材料基板を伝搬する伝送線路モードの電磁波(信号)を、導体ピンを介して、支持基板を伝搬する導波管モードの電磁波に変換できる。支持基板は、導波管モードで伝搬する電磁波を基板面内方向に空間放射するアンテナとして機能し得る。
【0018】
導体ピン25は、信号電極21から、無機材料基板1を貫通して、支持基板7におけるSIWに到達している。導体ピン25は、電磁波の伝搬媒質となり得る。導体ピン25は、導体材料から構成され、代表的には導体層2と同様の金属(後述)で構成されている。図示例では、導体ピン25は、無機材料基板1の厚み方向に延びている。導体ピン25は、円柱形状などの柱形状であってもよく、円筒形状などの筒形状(中空形状)であってもよい。導体ピン25の基端部は、信号電極21の端部に接続されている。導体ピン25の遊端部は、支持基板7に形成される凹部71に挿入されている(図3参照)。凹部71は、第1ビア列5aと第2ビア列5bとの間に位置している。導体ピン25における基端部と遊端部との間の部分は、第1金属層3が有する開口部31に挿通されている。
導体ピン25は、好ましくは、第1金属層3から絶縁されている。1つの実施形態において、図2に示すように、開口部31は、導体ピン25の周囲に空気層を形成している。開口部31は導体ピン25の外形よりも大きく、開口部31の周縁部の全体が導体ピン25から離れている。これによって、導体ピンを第1金属層から絶縁でき、ひいては、信号電極と第1金属層とを安定して絶縁できる。また、支持基板への電界の漏れによる基板共振をより一層抑制できる。さらに、空気層に樹脂が充填されている構造と比較して誘電体損失の影響を抑制できる。
【0019】
なお、図4に示すように、導体ピン25の周囲を絶縁材料15で覆ってもよい。これによっても、導体ピンを第1金属層から絶縁できる。絶縁材料としては、例えば、樹脂、SiOが挙げられる。
【0020】
B.導波素子の別の実施形態
図5は本発明の別の実施形態による導波素子の概略斜視図であり;図6図5の導波素子のVI-VI´断面図である。なお、図5では、便宜上、接地電極およびビアを省略している。
上記した導波素子101では、1つの信号電極21を備えるが、信号電極21の個数は特に制限されない。導波素子102は、互いに離れて位置する複数の信号電極21を備えている。そのため、導波素子102は、信号電極に対応する伝送線路を複数備えている。図示例では、導波素子102は、第1信号電極21aおよび第2信号電極21bを備える導体層2と;第1導体ピン25aと;第2導体ピン25bと;を備えている。第1信号電極21aは、第1金属層3とともに第1の伝送線路を構成し、第2信号電極21bは、第1金属層3とともに第2の伝送線路を構成している。第1導体ピン25aは、第1金属層3、第2金属層4および複数の基板貫通ビア5から構成されるSIWと、第1の伝送線路とを結合している。第2導体ピン25bは、第1金属層3、第2金属層4および複数の基板貫通ビア5から構成されるSIWと、第2の伝送線路とを結合している。
これによって、1つの実施形態では、無機材料基板を伝搬する伝送線路モードの電磁波(信号)を、第1導体ピンを介してSIWモードに変換した後、SIWモードで支持基板を伝搬させ、次いで、第2導体ピンを介して再び無機材料基板を伝搬する伝送線路モードに変換することができる。本実施形態では、無機材料基板を伝搬した電磁波は、無機材料基板に設けられたアンテナ素子から放出され得る。
【0021】
C.導波素子のさらに別の実施形態
図7および図8のそれぞれは本発明のさらに別の実施形態による導波素子の概略断面図である。
上記した導波素子101および導波素子102では、1つの支持基板7を備えるが、支持基板7の個数は特に制限されない。導波素子103および導波素子104では、支持基板7が、無機材料基板1の厚み方向において互いに間隔を空けて複数配置され、複数の支持基板7のそれぞれに基板集積導波管(SIW)が設けられている。このような構成によれば、SIWモードで電磁波を放射するアンテナ部分を厚み方向にアレイ化できる。そのため、このような導波素子は、無線通信においてフェーズドアレイアンテナとして用いることができる。なお、信号(電磁波)を伝送する基板を複数集積した場合、導波素子の発熱が問題となる場合があるが、上記の実施形態では、支持基板を貫通する基板貫通ビアが金属層に接続されているので、導波素子から円滑に放熱され得る。
【0022】
図7に示すように、導波素子103では、複数の支持基板7のうち互いに隣り合う支持基板7の間に、第2金属層4が配置されている。これによって、各支持基板7に設けられるSIWは、当該支持基板7の両側に配置される金属層(すなわち、第1金属層3および第2金属層4、または、2つの第2金属層4)と、当該支持基板7を貫通する複数の基板貫通ビア5とによって構成される。
【0023】
図8に示すように、導波素子104では、SIWを含む導波管ユニット12が、無機材料基板1の厚み方向において互いに間隔を空けて複数配置されている。複数の導波管ユニット12のそれぞれは、第1金属層3と支持基板7と第2金属層4と複数の基板貫通ビア5とを備えている。
複数の支持基板7のうち互いに隣り合う支持基板7の間には、スペーサー基板13が設けられていてもよい。1つの実施形態において、スペーサー基板13は、互いに隣り合う導波管ユニット12の間に配置される。スペーサー基板を設けることにより、複数の支持基板におけるアンテナ部分の間隔を調整できる。とりわけ、複数のアンテナ部分の間隔をλ/2に調整すれば、電磁波の放射角を十分に走査できる。スペーサー基板の材料として、代表的には、無機材料基板と同様の無機材料(後述)が挙げられる。
【0024】
また、複数のSIWを備える導波素子は、好ましくは、SIWと同数の信号電極21および導体ピン25を備える。各導体ピン25は、各信号電極21が構成する伝送経路と、対応するSIWとを結合する。導体ピン25は、対応する信号電極21から、無機材料基板1を貫通し、第1金属層3の開口部31に挿通され、さらに必要に応じて支持基板7、第2金属層4およびスペーサー基板13を貫通して、対象の支持基板7に到達している。このような構成によれば、比較的容易に作製可能でありながら、無機材料基板上に設置した外部信号源Xからの信号(電磁波)を、各支持基板のSIWに容易に伝搬することができる。
【0025】
本明細書において「導波素子」は、少なくとも1つの導波素子が形成されたウエハー(導波素子ウエハー)および当該導波素子ウエハーを切断して得られるチップの両方を包含する。
以下、導波素子の各構成要素の具体的な構成についてD項~H項で説明する。
【0026】
D.無機材料基板
無機材料基板1は、導体層2が設けられる上面と、複合基板内に位置する下面と、を有する。無機材料基板1の100GHz~10THzにおける誘電率は、例えば10.0以下であり、好ましくは3.7以上10.0以下であり、より好ましくは3.8以上9.0以下である。使用する周波数が300GHzである場合、無機材料基板1の比誘電率εは、代表的には3.5以上であり、代表的には12.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下である。無機材料基板の誘電率がこのような範囲であれば、伝搬する電磁波の遅延を抑制できる。
無機材料基板の誘電正接(tanδ)は、使用する周波数において好ましくは0.01以下であり、より好ましくは0.008以下であり、さらに好ましくは0.006以下であり、特に好ましくは0.004以下である。使用する周波数が300GHzである場合、無機材料基板1における誘電正接tanδは、好ましくは0.0030以下、より好ましくは0.0020以下、さらに好ましくは0.0015以下である。
誘電正接がこのような範囲であれば、導波路における伝搬損失を小さくすることができる。誘電正接は小さいほど好ましい。誘電正接は、例えば0.001以上であり得る。
無機材料基板の比誘電率εおよび誘電正接(誘電体損失)tanδが上記の範囲であると、上記した高周波数の電磁波(特に300GHz以上の電磁波)を導波する場合の伝搬損失の低減をより安定して図り得る。なお、比誘電率εおよび誘電正接(誘電体損失)tanδは、テラヘルツ時間領域分光法によって測定できる。また、本明細書において、比誘電率および誘電正接に関して測定周波数の言及がない場合、300GHzにおける比誘電率および誘電正接を意味する。
【0027】
無機材料基板1は、無機材料で構成されている。無機材料として、本発明の実施形態による効果が得られる限りにおいて任意の適切な材料が用いられ得る。そのような材料としては、代表的には、単結晶石英(比誘電率4.5、誘電正接0.0013)、アモルファス石英(石英ガラス、比誘電率3.8、誘電正接0.0010)、スピネル(比誘電率8.3、誘電正接0.0020)、AlN(比誘電率8.5、誘電正接0.0015)、サファイア(比誘電率9.4、誘電正接0.0030)、SiC(比誘電率9.8、誘電正接0.0022)、酸化マグネシウム(比誘電率10.0、誘電正接0.0012)、および、シリコン(比誘電率11.7、誘電正接0.0016)が挙げられる。無機材料基板1は、好ましくはアモルファス石英から構成される石英ガラス基板である。
無機材料基板が石英ガラス基板であると、上記した高周波数の電磁波を導波する場合であっても、伝搬損失が増大することをより一層安定して抑制できる。さらに樹脂系の基板と比較して誘電率が大きいので基板サイズが小さくできる、また無機材料の中で比較的に誘電率が小さいので低遅延化で有利である。
【0028】
無機材料基板1の抵抗率は、例えば100kΩ・cm以上であり、好ましくは300kΩ・cm以上であり、より好ましくは500kΩ・cm以上であり、さらに好ましくは700kΩ・cm以上である。抵抗率がこのような範囲であれば、電磁波が電子伝導に影響を与えることなく、材料中を低損失で伝搬することができる。この現象は、詳細には明らかではないが、抵抗率が小さいと電磁波が電子と結合し電磁波のエネルギーが電子伝導に奪われるために損失となると推察され得る。この観点から、抵抗率は大きいほど好ましい。抵抗率は、例えば3000kΩ(3MΩ)・cm以下であり得る。
【0029】
無機材料基板1の曲げ強度は、例えば50MPa以上であり、好ましくは60MPa以上である。曲げ強度がこのような範囲であれば、基板が変形しにくいので特性変化の小さい導波素子を実現することができる。曲げ強度は大きいほど好ましい。曲げ強度は、例えば700MPa以下であり得る。なお、曲げ強度は、JIS規格R1601に準拠して測定することができる。
【0030】
無機材料基板1の熱膨張係数(線膨張係数)は、例えば10×10-6/K以下であり、好ましくは8×10-6/K以下である。熱膨張係数がこのような範囲であれば、基板の熱変形(代表的には、反り)を良好に抑制することができる。なお、熱膨張係数はJIS規格R1618に準拠して測定することができる。
【0031】
また、上記したように、無機材料基板1における誘電正接tanδは、小さいほど好ましい。300GHz帯における無機材料基板1の誘電正接(tanδ)を低減する方法として、無機材料基板中に含有するOH基濃度を低減することが挙げられる。導波素子101が周波数250GHz~350GHzの電磁波を導波する場合、無機材料基板におけるOH基濃度は、例えば100wtppm以下、好ましくは15wtppm以下、より好ましくは10wtppm以下である。なお、無機材料基板におけるOH基濃度は、代表的には0wtppm以上であり得る。OH基濃度は、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)、ラマン散乱分光、カールフィーッシャー法によって測定することができる。
【0032】
また、無機材料基板1の誘電損失は、FQ値によって評価し得る。FQ値は、誘電正接(tanδ)の逆数と、導波素子101に導波される電磁波の周波数の積とによって算出される。
無機材料基板1のOH基濃度が100wtppm以下である場合、電磁波の周波数が150GHz以上250GHz未満であると、FQ値は、好ましくは45000GHz以上であり、電磁波の周波数が周波数250GHz以上350GHz未満であると、FQ値は、好ましくは75000GHz以上である。
また、無機材料基板1のOH基濃度が15wtppm下である場合、電磁波の周波数が150GHz以上250GHz未満であると、FQ値は、好ましくは75000GHz以上であり、電磁波の周波数が250GHz以上350GHz未満であると、FQ値は、好ましくは105000GHz以上である。
さらに、無機材料基板1のOH基濃度が10wtppm下である場合、電磁波の周波数が150GHz以上250GHz未満であると、FQ値は、好ましくは150000GHz以上、代表的には270000GHz以下であり、電磁波の周波数が周波数250GHz以上350GHz未満であると、FQ値は、好ましくは250000GHz以上、代表的には390000GHz以下である。
【0033】
無機材料基板1の気孔率は、気孔サイズ1μm以上の気孔が、例えば0.5ppm以上3000ppm以下であり、好ましくは0.5ppm以上1000ppm以下であり、より好ましくは0.5ppm以上100ppm以下である。気孔率がこのような範囲であれば緻密化が可能であり、機械強度および長期信頼性のいずれの観点からも安定な導波素子を実現できる。なお、気孔率が3000ppmを超えると、導波路における伝搬損失が大きくなる場合がある。気孔率を0.5ppm未満とすることは、無機材料基板を用いる技術では困難である。
【0034】
気孔のサイズとは、気孔が略球状である場合には直径であり、略円柱状である場合には平面視した場合の直径であり、その他の形状である場合には気孔に内接する円の直径である。気孔の有無は、例えば、光CT(Computed Tomograohy)または透過率測定器により確認することができる。気孔のサイズは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0035】
E.導体層
導体層2は、無機材料基板1に対して第1金属層3と反対側に位置し、無機材料基板1の表面に設けられている。導体層2は、代表的には無機材料基板1と直接接触している。
導体層2は、代表的には金属で構成されている。金属として、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)が挙げられる。金属は、単独でまたは組み合わせて使用できる。導体層2は、単一層であってもよく、2層以上が積層されて形成されてもよい。導体層2は、例えばめっき、スパッタリング、蒸着、印刷によって、無機材料基板1上に形成される。
導体層2は、少なくとも信号電極21を備えている。信号電極21の幅(長手方向と直交する方向の寸法)は、例えば2μm以上、好ましくは100μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、例えば800μm以下、好ましくは500μm以下である。信号電極21の長手方向の寸法は、任意の適切な寸法とすることができる。
導体層2の厚みは、例えば1μm以上、好ましくは4μm以上であり、例えば20μm以下、好ましくは10μm以下である。
【0036】
F.第1金属層
1つの実施形態において、第1金属層3は、無機材料基板1における導体層2と反対側の表面に設けられている。第1金属層3は、無機材料基板1の厚み方向において、信号電極21に対して間隔を空けて配置されている。第1金属層3は、代表的には無機材料基板1と直接接触している。第1金属層3は、導体層2と同様の金属で構成可能である。第1金属層3は、無機材料基板1と支持基板7とを接合するという観点で、接合面を平坦化しやすい密着強度を確保する必要があり、第1金属層3の金属は、導体層2の金属と異なっていてよい。第1金属層3の厚みの範囲は、導体層2の厚みの範囲と同様である。
第1金属層3は、代表的には、スパッタリングやめっきにより、無機材料基板1に形成される。
【0037】
G.支持基板
支持基板7は、導波素子に優れた機械的強度を付与し得る。これにより、無機材料基板の厚みtを、上記式(1)を満たすように薄くすることができる。支持基板7としては、任意の適切な構成が採用され得る。支持基板7を構成する材料の具体例としては、インジウムリン(InP)、シリコン(Si)、ガラス、サイアロン(Si-Al)、ムライト(3Al・2SiO,2Al・3SiO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、スピネル(MgAl)、サファイア、石英(単結晶石英、アモルファス石英など)、水晶、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンナイトライド(Si)、酸化ガリウム(Ga)が挙げられる。
支持基板7は、好ましくはインジウムリン、シリコン、窒化アルミニウム、シリコンカーバイドまたはシリコンナイトライドから選択される少なくとも1種から構成され、より好ましくはシリコンから構成される。
本願においては、支持基板7にSIWが形成されるため、SIWを伝搬する電磁波の損失を低減するために、誘電体損失tanδの小さい材料が好ましい。この観点から、単結晶石英、アモルファス石英、スピネル、AlN、サファイア、酸化アルミニウム、SiC、酸化マグネシウム、および、シリコンが例示できる。
導波素子101に発振器や受信器等の能動素子を実装する場合、無機材料基板が加熱し、その他の能動素子や実装部品の特性が劣化してしまう恐れがある。これを防ぐために、支持基板には熱伝導率の高い材料を使用することができる。この場合、熱伝導率は150W/Km以上であることが好ましく、この観点における支持基板7を構成する材料としては、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンナイトライド(Si)が挙げられる。
【0038】
なお、支持基板7を構成する材料の線膨張係数は、無機材料基板1を構成する材料の線膨張係数に近いほど好ましい。このような構成であれば、複合基板の熱変形(代表的には、反り)を抑制することができる。好ましくは、支持基板7を構成する材料の線膨張係数は、無機材料基板1を構成する材料の線膨張係数に対して50%~150%の範囲内である。また、支持基板7を構成する材料の誘電正接は小さいほうが好ましい。誘電正接を小さくすることで伝搬損失を抑制することができる。この観点で、支持基板7の誘電正接は0.07以下であることが好ましい。
【0039】
支持基板7の厚みは、支持基板7の比誘電率をε、導波素子に導波される電磁波の波長をλとすると、例えばλ/4√ε以上、好ましくはλ/2√ε以上であり、例えば2λ/√ε以下、好ましくは3λ/2√ε以下、より好ましくはλ/√ε以下である。支持基板の厚みが上記下限以上であれば、導波素子の機械強度の向上を安定して図ることができる。支持基板の厚みが上記上限以下であれば、スラブモード伝搬の抑制、導波素子の薄型化(導波素子の機械強度保持)、および基板共振の抑制を図ることができる。
支持基板7が無機材料基板1の厚み方向において互いに間隔を空けて複数配置される場合、フェーズドアレイアンテナとして用いるのであれば、互いに隣り合う支持基板7の間隔はアンテナピッチに適したλ/2程度であることが望ましいが、支持基板7の厚みが前記間隔に満たない場合、隣り合う支持基板の間にスペーサー基板13を設けることで、適切なアンテナピッチを確保することができる。
【0040】
支持基板7は、導体層2、無機材料基板1、第1金属層3および第2金属層4を支持している。より詳しくは、無機材料基板1と支持基板7との間には有機系接着剤(例えば、樹脂などの接着剤)が存在せず、無機材料基板1と支持基板7とは、第1金属層3を介して直接接合されている。本明細書において「直接接合」とは、有機系接着剤を介在させることなく2つの層または基板が接合していることを意味する。直接接合の形態は、互いに接合される層または基板の構成に応じて適切に設定され得る。
直接接合によりそれらを一体化することで、導波素子における剥離を良好に抑制することができ、結果として、このような剥離に起因する無機材料基板の損傷(例えば、クラック)を良好に抑制することができる。
さらに、直接接合により接合された界面は、アモルファス化して接合界面の熱抵抗を樹脂接合と比較して飛躍的によくすることが可能である。これにより導波素子に発振器や受信器等の能動素子を実装する場合、無機材料基板が加熱することなくパッケージへ熱を逃がすことができ、その他の能動素子や実装部品の特性劣化を抑制できる。
図示例では、支持基板7は、第1金属層3のみを介して無機材料基板1と直接接合されている。支持基板7が第1金属層3のみを介して無機材料基板1と接合されている場合、第1金属層3は、無機材料基板1と支持基板7とを接合する接合部として機能し、支持基板7は、第1金属層3と直接接触している。
また、支持基板7は、第1金属層3および接合部(図示せず)を介して無機材料基板1と直接接合されていてもよい。支持基板7が第1金属層3および接合部を介して無機材料基板1と接合されている場合、接合部は、無機材料基板1と第1金属層3との間に設けられてもよく、第1金属層3と支持基板7との間に設けられてもよい。すなわち、接合部は、無機材料基板と第1金属層との間、および/または、第1金属層と支持基板との間に設けられる。
接合部は、1層であってもよく、2層以上が積層されていてもよい。接合部として、例えば、SiO層、アモルファスシリコン層、酸化タンタル層が挙げられる。また、密着強度確保とマイグレーションの防止という観点で、Ti、Cr、Ni、Pt、Pdの金属膜を中間層として、無機材料基板と第1金属層の間や支持基板と第1金属層の間に形成してもよい。接合部の厚みは、例えば0.01μm以上3μm以下である。
【0041】
H.第2金属層
1つの実施形態において、第2金属層4は、支持基板7における第1金属層3と反対側の表面に設けられている。第2金属層4は、無機材料基板1の厚み方向において、第1金属層3に対して間隔を空けて配置されている。第2金属層4は、代表的には支持基板7と直接接触している。第2金属層4は、導体層2と同様の金属で構成され、第2金属層4の厚みの範囲は、導体層2の厚みの範囲と同様である。第2金属層4は、例えばスパッタリングもしくはめっきによって支持基板7上に形成される。第2金属層4は必ずしも支持基板7における第1金属層と反対側の表面全体に形成されなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の実施形態による導波素子は、導波路、次世代高速通信、センサ、レーザー加工、太陽光発電等の幅広い分野に用いられ得、特に、ミリ波~テラヘルツ波の導波路として好適に用いられ得る。このような導波素子は、例えば、アンテナ、バンドパスフィルタ、カプラ、遅延線(位相器)、またはアイソレータに用いられ得る。
【符号の説明】
【0043】
1 無機材料基板
2 導体層
21 信号電極
22 接地電極
3 第1金属層
4 第2金属層
5 基板貫通ビア
6 ビア
7 支持基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8