(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026326
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】加工装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20230216BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23Q3/155 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106213
(22)【出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021132004
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
(72)【発明者】
【氏名】田中 千紘
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
【Fターム(参考)】
3C002HH09
3C011BB04
3C011BB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な方法で、加工対象物の着脱を行う前に堆積した切粉の量を低減し易い技術を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の加工装置100は、工具12を保持して回転する主軸11と、工具12により加工する加工対象物Wを保持する保持部41と、複数の工具12を収納する工具マガジン70と、保持部41及び工具マガジン70の少なくともいずれか一方に対して掃除を行う掃除手段と、複数の工具12のうち少なくとも一つを選択する選択手段と、を備え、選択された工具に応じて、掃除手段による掃除動作を行うことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
複数の前記工具を収納する工具マガジンと、
前記保持部及び前記工具マガジンの少なくともいずれか一方に対して掃除動作を行う掃除手段と、
複数の前記工具のうち少なくとも一つを選択する選択手段と、を備え、
前記掃除手段は、選択された前記工具に応じて、前記掃除手段による掃除動作を行うことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記掃除手段による前記掃除動作を実行するタイミングは、前記選択手段によって選択された前記工具により加工対象物を加工している途中であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記掃除手段による前記掃除動作を実行するタイミングは、前記選択手段により選択された前記工具が前記主軸に取り付けられた後であって、前記選択手段により選択された前記工具を前記主軸から取り外して前記工具とは異なる次に加工を行う工具で加工動作を実行する前の状態であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
前記掃除手段による掃除動作を加工終了時に行うか否か設定する設定手段とを有し、
前記設定手段により掃除を行う設定であっても、前記選択手段により掃除動作を行うように選択された前記工具で加工終了となる場合は、前記設定手段による掃除動作を行わないことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
前記掃除手段による掃除動作は、前記加工対象物の材料に応じて行われることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項6】
前記主軸による加工を制御する制御手段とを備え、請求項1~5の何れか1項に記載の加工装置の前記制御手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項7】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
複数の前記工具を収納する工具マガジンと、
前記保持部及び前記工具マガジンの少なくともいずれか一方に対して掃除を行う掃除手段と、を備えた加工装置の制御方法であって、
複数の前記工具のうち少なくとも一つを選択する選択工程と、
選択された前記工具に応じて、前記掃除手段による掃除動作を行う掃除工程とを有することを特徴とする加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物の加工を行う加工装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置において、加工装置の内部に工具マガジンを備えて、工具交換動作を行うものが知られている。
【0003】
工具マガジン、または、工具上に切粉が堆積する場合があるため、例えば、送風機構をヘッド内に配設して大型化を抑制する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1のように、送風機構をヘッド内に配設する以外にも、外部のエアコンプレッサを利用することも行われているが、切粉が堆積してしまっていると加工対象物の着脱を行う場合に取り付けがうまくいかない場合がある。
【0006】
本発明は、簡易な方法で、加工対象物の着脱を行う前に堆積した切粉の量を低減し易い技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、複数の前記工具を収納する工具マガジンと、前記保持部及び前記工具マガジンの少なくともいずれか一方に対して掃除を行う掃除手段と、複数の前記工具のうち少なくとも一つを選択する選択手段と、を備え、選択された前記工具に応じて、前記掃除手段による掃除動作を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な方法で、堆積した切粉の量を低減し易い加工装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
【
図2】実施形態に係る加工装置における内部構成の斜視図。
【
図4】実施形態に係る主軸のエアブロー部を示す図(
図4(a)は斜視図であり、
図4(b)は断面図である)。
【
図5】実施形態に係る加工装置における制御ブロック図。
【
図7】掃除動作(掃除モード)の制御フローチャート。
【
図9】加工中の掃除動作の実行判断の制御フローチャート。
【
図10】実施形態に係る加工装置における掃除動作を実施する工具の選択画面。
【
図11】工具選択時の掃除動作の実行判定制御の制御フローチャート。
【
図12】加工終了時に掃除動作を行うフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
本発明の実施形態に係る加工装置ついて、
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図であり、エアを発生させるエアコンプレッサ200に、増圧弁90が取り付けられて、増圧弁90によって、圧力が上昇したエアによって、チャックをアンクランプ状態にする。増圧弁90の後段にエア圧検知センサ91が設けられている。工具のチャックにどの程度の圧力がかかっているか測定するために、エア圧検知センサ91は、加工装置の内部に設けられてもよい。
【0012】
加工装置100は、
図1に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。外装カバー101は、開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換が可能となっている。
【0013】
加工装置100は、
図2に示すように、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な第1回転機構(回転機構)50及び第2回転機構(別の回転機構)60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。
【0014】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、
図2に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。第2フレーム部4は、Y軸方向に沿った部分とZ軸方向に沿った部分を別体として、ネジ等により接続し、梁を設けて構成してもよい。
【0015】
第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、加工具12が工具ホルダ(クランプ)を介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、
図2に示すように、モータ14と、Z軸方向に配置された不図示の案内軸とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材16を介して案内軸に沿って移動可能に支持されている。例えば、案内軸はボールねじであり、Z軸支持部材16はモータ14の駆動により回転する案内軸(ボールねじ)に沿って移動する部材である。案内軸やZ軸支持部材16は、カバー17により覆われている。
【0016】
第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。第2移動機構20についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0017】
第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。第3移動機構30についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0018】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図2に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構60がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0019】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など加工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部41と、両端部が第1回転機構50の回転部51にそれぞれ連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持部41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持部41が支持部42に対して固定されている。但し、保持部41と支持部42とを一体としても良い。
【0020】
第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び回転部51を支持する第1支持部53aと、回転部51に対向して設けられる不図示の回転部を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0021】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸を中心として回転可能に支持する。
【0022】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。
【0023】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部61を回転駆動するモータとを有する。回転部61は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータ62に回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸を中心として回転可能に支持する。
【0024】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、第2回転機構60とともに回転しないように支持されている。また、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。
【0025】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の加工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける加工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分であり、加工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、加工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、加工具を取り付けても良い。加工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。
【0026】
加工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の加工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている加工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい加工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい加工具12を装着する。なお、加工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0027】
電装ユニット80は、フレーム1のXYZ方向の最大辺を含んだ直方体で囲んだ空間の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1フレーム部3の第1の面3aの反対側で、第2フレーム部4の第2の面4aの反対側に配置されている。このようにL字型に形成されたフレーム1の、各移動機構や回転機構が配置されていない内側に電装ユニット80を配置することで、スペースを有効に利用でき、装置の小型化を図れる。
【0028】
このような
図2に示した電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、
図3に詳細な構成を示すように、枠体81に制御基板83、各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが支持されている。制御基板83は、主軸や各軸のモータの駆動を制御する。各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zは、例えば、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御するものである。制御基板83の回路において実行されたNCコードに対して、サーボアンプである各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが指示された位置や回転数となるように対応するモータを回転させる。
【0029】
即ち、制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ13を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。
【0030】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100の制御基板83には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が通信可能に接続される。外部端末がNCコードを条件に従って作成し、制御基板83に送信されるようにしてもよい。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0031】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工装置100を制御してワークWを加工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0032】
図4について説明する。
図4(a)のエアブロー部87は主軸11の構成の一部である。エア入口122から圧縮空気を送りこむと、4箇所の送風口121から主軸11の先端に設けられた工具に向かってエアを吹き付けて、工具を冷却すると共に工具に付着した切粉を除去する。送風口121が4箇所あることで、工具全体へエアを当てることができる。勿論、送風口121は4箇所以上あっても構わない。
【0033】
図4(b)はエアブロー部87の送風口121周辺の断面図である。送風口121はエア入口側の空洞123に対して主軸11側に向かって傾斜するように設けられた送風側の穴124が細く、設けられているため、吹き付けるエアの流速を上げることができる。送風側の穴124は細くなった部分から先端が口広になっている。これにより、送風口121の製作加工が安易になる。
【0034】
図5に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。制御基板83に設けられたCPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行い、接続されたサーボアンプとしての制御部84x、84y、84z、84a、84b、84cに回転数や位置の指示を送信する。
【0035】
I/O86iは、加工装置本体のエアブロー部87、集塵装置88、工具長センサ96に接続される。エアブロー部87は上述のように工具へエアを吹き付け、除去した切粉を集塵装置88で集める。工具長センサ96は、工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。
【0036】
各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータを駆動する。各モータの制御部84x、84y、84zには、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータの制御部84x、84y、84zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータの制御部84x、84y、84zの駆動により各ステージx、y、zが移動した量(位置)を検知する。
【0037】
制御部84cは、主軸11を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータを駆動する。
【0038】
このようにCPU85により加工装置100の各部を制御することにより、上述のように保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0039】
本実施形態における加工装置の掃除モードについて以下に説明する。
【0040】
エアブロー部87から工具ホルダ12aにエアを吹き付けることで工具ホルダ12aに付着した切粉を除去することができる。
【0041】
図7に、本発明の実施形態に係る加工装置のある工具で加工対象物を加工している途中で、その工具を工具マガジンに格納した後に、同じ工具をとって加工動作を再開する場合の掃除モード動作の制御フローチャートを示す。後述する各手段や工程は、CPU85がメモリ86m等の記憶手段にプログラムを展開して実行する。
【0042】
掃除モードの動作は、実行したNCファイルの中に、掃除モード用のコードである掃除用Mコードがあることによって実行される。加工中に掃除モードを実行する場合、まず掃除動作のための予備動作としてステップS101で現在の座標位置を戻り座標位置としてメモリ86mに記憶する。ステップS102~S104を実行し、制御部84zは主軸11を上昇させ、工具を加工対象物から離して主軸11の回転を停止させ、主軸11を工具マガジン70の上部に位置するように移動させる制御を行った後、加工具12を工具マガジン70に格納する。
【0043】
ステップS105~S106において制御部84zは主軸11を加工具12を格納した高さから上昇させて離し、制御部84xと84yとで主軸11を
図6に示す工具マガジン70の工具位置T1へ移動させる。このステップS106が掃除動作の最初のステップであり、それ以前のステップは、掃除動作のための予備動作となる。また、後述するステップS112で掃除動作を終えて、ステップS113でエアブローをOFFにする。
【0044】
ステップS107では、制御部84zは、主軸11をエアを吹き付ける高さまで下降させる。この時、格納した加工具12に当たらない高さまで主軸11を下降させる。加工具12に近いほど掃除の効率が上がる。
【0045】
ステップS108でエアブローを開始する。可能な範囲の最大の流量でエアを吹き付ける。
【0046】
ステップS109~S112を実行し、
図6の軌跡(矢印)71のように主軸11を移動させてすべての工具を掃除する。具体的にはまず制御部84xと84yとで、工具位置T1からT5へ移動させて数秒停止、次にT10へ移動させて数秒停止、そしてT6へ移動させて数秒停止し、最後にT1へ戻り数秒停止させる。ステップS112で掃除動作を開始したT1に戻り掃除動作は終了する。
【0047】
ステップS113~S114でエアブローを停止させ、制御部84zで主軸11を上昇させる。
【0048】
ステップS115~S117で戻した工具を取り出し、主軸11を回転させ、上述の戻り座標位置へ移動し、掃除モードを終了する。
【0049】
加工後に加工具12を工具マガジン70に戻した際に掃除モードを実行する場合(加工具12を工具マガジン70に格納した後であって、次の加工動作の工具を主軸に取り付ける前に掃除用Mコードを実行する場合)は、ステップS105からS114までを実行する。
【0050】
工具マガジン70に収納された工具12a(
図1参照)に向けてエアを吹き付けると、主軸11と加工具12との間に切粉が入ることを未然に防ぐことができ、工具クランプを行い易くすることができる。掃除手段として主軸に取り付けられたエアブロー部87を用いたが、工具の他の掃除専用のブラシやバーを取付けたり、他の掃除機構を加工装置100に取り付けてもよい。
【0051】
図8に、本発明の実施形態に係る加工装置の、加工前に材料情報を解析して掃除モードを有効にするかを判断するフローチャートを示す。
【0052】
NCファイルの例を表1に例示する。
【0053】
【表1】
まず、ステップS201でCPU85は、NCファイルのコメント行の先頭にCECOMMENTと書かれている行を探し、材料の文字列を読取り、記憶手段としてのメモリ86mに記憶されているテーブル内に存在するか比較参照することによって確認する。このとき、メモリ86mのテーブルには、樹脂材料であるPMMAまたはPEEKが記憶されている。ステップS202で材料を指定している情報がPMMAまたはPEEKだった場合、ステップS203~S204を実行し、掃除モードを有効にして加工を開始する。掃除モードが有効な場合は、同じ加工具12を取って加工動作を再開する場合には、ステップS101~S117のステップを実行し、加工後に加工具12を工具マガジン70に戻した際に掃除モードを実行する場合は、ステップS105~S114までを実行する。CPU85の一機能としてNCコードの読取手段、樹脂情報の比較手段としてメモリ86mに展開されたプログラムを実行する。
【0054】
ステップS202でそれら以外の材料だった場合は、ステップS205で強制掃除モードが選択されているか確認する。選択されていた場合は材料に関わらずステップS203~S204で掃除モードを有効にして加工を開始する。選択されていなかった場合はステップS206で掃除モードを無効にして加工を開始する。
【0055】
この制御により、必要な材料でのみ掃除を実施するため、加工の効率が上がる。例えば、セラミックやハイブリットレジン等では、堆積する切粉の粒径が小さいため、掃除を行わなくても加工の精度に影響が少ない場合があるため、掃除も行われない。これの材料を判定し掃除モードをOFFにしても良い。
【0056】
本実施例では大きな切粉になり易いPMMAやPEEKを記憶しているが、その他の材料情報をメモリ86に記憶しても構わない。また、材料情報は、NCコードから読み取っているが、材料の導電率や抵抗値を測定して得てもよく、加工対象物の表面や切粉を撮像して得てもよい。例えば、下記材料の体積抵抗率(Ω・cm)はPEEK10^(17-18)、PMMA 10^14、ジルコニア10^13、コバルト5.6、クロム12.7である。
【0057】
図9に、本発明の実施形態に係る加工装置の加工中に掃除モードを実行するか否かの判定を含んだフローチャートを示す。
【0058】
ステップS301でCPU85の時間カウンタをリセットする。
【0059】
ステップS302でNCファイルから1行読みだした文字列であるNC_strを確認し、空文字列であれば終了する。
【0060】
ステップS303~S305を実行し、経過時間のカウントを開始し、経過時間の閾値を越え、掃除動作が有効であるときはステップS306に進む。ステップS306では、主軸11が現在保持している工具が後述する掃除動作を行う工具として掃除動作を実施する工具に設定した工具(clean_tool。詳しくは後述する。)であるかを確認する。この確認は、どの工具を掃除動作を実施する工具に選択しているかの設定値を参照して、現在保持している工具と比較することによって行う。参照する設定値は、例えばT1~T10のそれぞれ設定値に対応した1bitの値を10個記録していても良いし、4bitの値として記録していてもよい。
【0061】
そして掃除動作を実施する工具であれば、ステップS307~S308でバッファしているNCファイルに含まれる主軸の位置を移動させる動作である線分動作の完了を待ち、NCファイルから読み出した文字列が格納されるNC_strに掃除用Mコードを格納する。ステップS309では、NC_str内のNCコードを実行する。ステップS309では、ステップS308で掃除用MコードがNC_strに格納されていれば、掃除用Mコードに従った掃除動作を行う。
【0062】
加工装置に所定の動作を行わせるMコードには、掃除用Mコードの他に、工具交換を実行させる工具交換Mコードなどがある。ステップS310で工具交換Mコードを実行しておらず、且つ、ステップS311で掃除モードを実行していた場合、S312で経過時間カウンタをリセットして、ステップS302に戻る。
【0063】
ステップS310で工具交換Mコードを実行していた場合、ステップS315で経過時間カウンタをリセットし、現在保持している工具を確認し、掃除動作を実施する工具であればS311へ進み、掃除動作を実施する工具でなかった場合はステップS302へ進む。
【0064】
この制御により加工中に、付着する切粉がなるべく少ないうちに、こまめに掃除を行うことができるので、安定した工具クランプや加工を行うことができる。また、このとき、後述するように、所定の時間が経過したら掃除動作を行うように設定することと併用することもできる。
【0065】
また、加工中のみではなく、例えば、荒加工のように切粉が大量に出ると考えられる工具を掃除動作を実施する工具として任意に設定することで、掃除動作を実施する工具を戻した際に掃除モードを実行することで、より安定した動作が得られる。荒加工の方が、切粉が大きくなりやすいため、荒加工のときに樹脂材料に応じて掃除モードを実行し、掃除動作を実施しない工具による加工は大きな切粉が生じない仕上げ加工であるとして、樹脂材料の種類によらず、掃除モードを実行しないようにしてもよい。
【0066】
また、掃除動作を実施しない工具に設定した工具であっても、工具交換を実施せずに加工を長時間継続した場合に、工具ホルダに少量の切粉が徐々に堆積していき掃除動作の実施が必要となる状態となる場合が考えられる。その為、掃除動作を実施しない工具の加工中であっても、工具交換を実施せずに長時間が経過した場合に、強制的に掃除モードを実行してもよい。この時間設定は、加工状況を鑑みて任意に設定できる時間であってもいいし、1時間など固定値に設定した値であってもよい。また、予め設定された所定の時間を経過したら掃除動作を行うようにしてもよい。予め設定された所定の時間経過により掃除動作を実行する場合は、加工装置に指令を行う外部端末のソフトウェアの設定が反映された加工装置100のCPU85が所定の時間が経過するよりも少し前に、掃除用Mコードのみを発行する。すなわち、掃除用Mコードを含むNCファイルには、加工対象物を加工する加工動作に対応するコードを入れない。このようにすると、NCファイルに含まれる動作時間が正確に決まっていない他の動作の影響で、掃除動作が定期的に実行されないといった可能性をなくすことができる。また、後述する工具選択により掃除動作を行う場合も、選択された工具による加工動作を終えたら、CPU85が掃除用Mコードのみを発行するようにしてもよい。
【0067】
図10に、本発明の実施形態に係る加工装置の、掃除モードが有効であるときに掃除動作
を実施する工具を選択する選択画面の例を示す。
【0068】
選択部401~410は、
図6で示した工具マガジン70の工具位置T1~T10に格納する各工具にそれぞれ対応しており、チェックボックスを選択して有効にすることで掃除動作を実施する工具として設定を行う。このチェックボックスを選択された工具は、
図9のS306で工具を判定するときに、clean_toolとして設定される。
【0069】
この設定により、必要な工具でのみ掃除を実施するように選択が出来るため、加工の効率が上がる。例えば、荒加工を行う工具が1つであれば、選択部401~410のうち該当する工具に対応したチェックボックスのみ選択し、粗加工を行う工具が複数であれば、該当する複数の工具に対応したチェックボックスを全て選択することで、掃除動作が必要な工具だけを任意に選んで設定できる。
【0070】
図11に、本発明の実施形態に係る加工装置の、強制掃除モードを有効にしているかと、掃除モードを有効にする材料を使用しているかと、掃除動作を実施する工具として選択した工具を使用しているかを確認して、掃除処理を実施するかどうかを判断するフローチャートを示す。
【0071】
ステップS501で強制掃除モードが選択されているか確認し、選択されていなければ、ステップS502で掃除モードを有効にする材料を使用しているかを確認する。ステップS501で強制掃除モードが選択されているか、ステップS502で掃除モードを有効にする材料であることを確認した場合は、ステップS503で掃除動作を実施する工具として選択しているかを確認し、加工中に掃除処理が必要なタイミングで、掃除処理を実施すると判断する。
【0072】
ステップS501で強制掃除モードが選択されておらず、ステップS502で掃除モードを有効にする材料でないことが確認した場合、または、ステップS503で掃除動作を実施する工具として選択されていないことを確認した場合、掃除処理を実施しないと判断する。
【0073】
材料や加工中の掃除モードON・OFFにかかわらず、加工終了時に掃除動作を行うことも可能である。
図12にフローチャートを示す。
【0074】
S601ではCPU85は、一連のNCコードに基づいて加工装置100が加工動作を実行するように制御している。S602でCPU85が、加工終了のNCコードを実行すると、加工を終了する。S603ではCPU85は加工終了時に掃除動作を行うか否かの設定を確認する。掃除動作を行う掃除モードONの設定であれば、S604へ進み、掃除モードがONでなければ、終了する。加工終了時に掃除動作を行うか否かの設定は加工開始前にユーザが選択するが、この状態で選択可能になっていてもよい。また、ユーザの選択によらず特定の工具は、必ず加工終了時に掃除をするように構成してもよい。
【0075】
この加工終了後の掃除動作は、加工終了が記述されているNCコードによって、有無が判断される。S604では加工終了直前に使用していた工具が掃除動作を実施する工具である場合、CPU85は、Noと判断して動作を終了する。また、加工終了直前に使用していた工具が掃除動作を実施する工具でない場合、CPU85は、Yesと判断してS605へ進む。Noと判断して動作を終了するのは、掃除動作を実施する工具であった場合、工具を工具マガジン70へ戻した時に掃除モードの掃除動作を行っている。そのため、二回連続で掃除動作を行わないために、加工終了のNCコードに基づく掃除モードの掃除動作を実行しない。
【0076】
S605ではCPU85が加工終了のNCコードに基づく掃除モードの掃除動作を実行する。
【0077】
上述した掃除動作は、工具マガジンに対してだけでなく、ワークを保持している保持部に対して、行ってもよく、保持部に対して掃除動作を行場合には、工具マガジンから遠い方を下げて掃除動作を行うと工具マガジンに切粉が付きにくい。
保持部及び工具マガジンの少なくともいずれか一方に対して掃除を行う掃除手段が掃除動作のタイミングは、選択手段による選択に応じて決定されることで、簡易な方法で、堆積した切粉の量を低減し易い加工装置を提供することができる。
掃除手段による掃除動作のタイミングは、選択手段によって選択された工具が加工対象物を加工している途中で、主軸に工具が取り付けられているタイミングであってもよい。
また、掃除手段による掃除動作のタイミングは、選択手段によって選択された工具が加工対象物を加工し終わった後で、工具が前記工具マガジンに格納されているタイミング(今まで加工していた工具とは異なる次に加工を行う工具で加工動作を実行する前の状態)であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
11 主軸
12 加工具
40 支持機構
53 連結部
70 工具マガジン
85 CPU
86m メモリ
87 エアブロー部
96 工具長センサ
100 加工装置