(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026327
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】加工装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20230216BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20230216BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230216BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20230216BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G05B19/4155 Z
B23Q11/12 C
B23Q17/00 A
G05B19/18 X
G05B19/18 W
B23Q1/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106214
(22)【出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021132006
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 千紘
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C048
3C269
【Fターム(参考)】
3C011FF01
3C029EE01
3C048DD12
3C269BB11
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF02
3C269EF39
3C269KK04
3C269MN07
3C269MN23
3C269MN26
3C269MN27
3C269PP02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、エア圧の低下によって、加工が途中で停止しにくい加工装置、制御方法、プログラムを提供することができる。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置100は、工具12を保持して回転する主軸11と、主軸11の回転を制御する制御部85と、主軸11を冷却するためのエアのエア圧を検知するエア圧検知センサ301と、を備え、制御部85は、主軸11の回転数とエア圧検知センサ301の検知結果に応じて、加工を継続するか否かを決定することを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持して回転する主軸と、
前記主軸の回転を制御する制御部と、
前記主軸を冷却するためのエアのエア圧を検知するエア圧検知センサと、を備え、
前記制御部は、前記主軸の回転数と前記エア圧検知センサの検知結果に応じて、加工を継続するか否かを決定することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記主軸の回転数が所定の閾値以上、かつ、前記エア圧検知センサの検知結果が、所定の閾値よりも小さい場合に、加工を停止し、
前記主軸の回転数が所定の閾値よりも小さい場合に、
前記エア圧検知センサの検知結果に関わらず加工を継続することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
さらに、時間を計る計時手段を備え、
前記制御部は、前記主軸の回転数が所定の閾値以上、かつ、前記エア圧検知センサの検知結果が所定の閾値よりも小さい場合に、所定の時間が経過したことを前記計時手段が計時するまで加工を継続した後で加工を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記主軸に供給されているエアのエア経路に設けられた逆止弁と、を備え、
前記エア圧検知センサは、
前記逆止弁よりも下流側に設けられた第1エア圧検知センサと、
前記逆止弁に入る前のエア圧を検知する第2エア圧検知センサと、を有し、
前記制御部は、前記第1エア圧検知センサの出力がエア圧不足に対応した出力値以上で、前記第2エア圧検知センサの出力が所定の閾値よりも小さい場合に、
加工を継続するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
前記主軸を冷却するためのエアは、前記主軸に設けられたエアブロー部から吹き付けられることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の加工装置の前記制御部としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項7】
工具を保持して回転する主軸の回転を制御する制御部を備えた加工装置の制御方法であって、
前記主軸を冷却するためのエアのエア圧を検知するエア圧検知工程と、
前記主軸の回転数と前記エア圧の検知結果に応じて、加工を継続するか否かを決定する工程とを有することを特徴とする加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物の工作を行う加工装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置において、主軸の冷却のため、また主軸スピンドル内への切粉の流入を防ぐために圧縮空気を供給することはよく知られている。
【0003】
圧縮空気による主軸冷却エアのエア圧が不足していると十分に主軸の冷却および切粉の流入防止が行われない可能性があるため、一般的に主軸制御部には主軸冷却のエア圧監視用のエア圧検知センサが備えられている。例えば、エア圧不足を発生させないためには特許文献1のように流路の切り替えを行うことで十分なエア圧を供給できるようにする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、他の装置とエアコンプレッサを共有したり、同時に複数箇所でエアを吹き出す場合にエア圧が一時的に低下する場合がある。従来はエア圧が低下するとエア圧不足のエラーを基板ファームウェアが受け取った時点で、加工が途中で停止してしまっていた。
【0006】
本発明は、エア圧の低下によって、加工が途中で停止しにくい加工装置、制御方法、プログラムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、工具を保持して回転する主軸と、前記主軸の回転を制御する制御部と、前記主軸を冷却するためのエアのエア圧を検知するエア圧検知センサと、を備え、前記制御部は、前記主軸の回転数と前記エア圧検知センサの検知結果に応じて、加工を継続するか否かを決定することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の加工装置の制御方法は、工具を回転させる主軸の回転を制御する制御部を備えた加工装置の制御方法であって、前記主軸を冷却するためのエアのエア圧を検知するエア圧検知工程と、前記主軸の回転数と前記エア圧の検知結果に応じて、加工を継続するか否かを決定する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、主軸の回転数を監視することで主軸回転数が既定の回転数以下であればエア圧が低下しても加工を継続し、加工が途中で停止しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
【
図2】実施形態に係る加工装置における内部構成の斜視図。
【
図4】実施形態に係る主軸のエアブロー部を示す図(
図4(a)は斜視図であり、
図4(b)は断面図である)。
【
図5】実施形態に係る加工装置における制御ブロック図。
【
図7】実施形態に係る回転数を監視し加工の継続可否を判断するフローチャート
【
図8】実施形態に係る特定のシーケンス後にエアブローを行うか否かを判断するためのフローチャート
【
図9】実施形態に係る張り付き検知のフローチャート
【
図10】実施形態に係る原点復帰が開始されるまでのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
<実施形態>
本発明の実施形態に係る加工装置ついて、
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図である。
【0013】
加工装置100は、
図1に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。外装カバー101は、開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換が可能となっている。
【0014】
加工装置100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な第1回転機構(回転機構)50及び第2回転機構(別の回転機構)60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。
【0015】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、
図2に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。第2フレーム4は、Y軸方向に沿った部分とZ軸方向に沿った部分を別体として、ネジ等により接続し、梁を設けて構成してもよい。
【0016】
第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、加工具12が工具ホルダ(クランプ)を介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、
図2に示すように、モータ14と、Z軸方向に配置された不図示の案内軸とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材16を介して案内軸に沿って移動可能に支持されている。例えば、案内軸はボールねじであり、Z軸支持部材16はモータ14の駆動により回転する案内軸(ボールねじ)に沿って移動する部材である。案内軸やZ軸支持部材16は、カバー17により覆われている。
【0017】
第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。第2移動機構20についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0018】
第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。第3移動機構30についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0019】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図2に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0020】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など加工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部41と、両端部が第1回転機構50の回転部51にそれぞれ連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持部41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持部41が支持部42に対して固定されている。但し、保持部41と支持部42とを一体としても良い。
【0021】
第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び回転部51を支持する第1支持部53aと、回転部51に対向して設けられる不図示の回転部を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0022】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸を中心として回転可能に支持する。
【0023】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。
【0024】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部61を回転駆動するモータとを有する。回転部61は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータ62に回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸を中心として回転可能に支持する。
【0025】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、第2回転機構60とともに回転しないように支持されている。また、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。
【0026】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の加工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける加工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分であり、加工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、加工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、加工具を取り付けても良い。加工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。
【0027】
加工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の加工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている加工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい加工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい加工具12を装着する。なお、加工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0028】
電装ユニット80は、フレーム1のXYZ方向の最大辺を含んだ直方体で囲んだ空間の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1フレーム部3の第1の面3aの反対側で、第2フレーム部4の第2の面4aの反対側に配置されている。このようにL字型に形成されたフレーム1の、各移動機構や回転機構が配置されていない内側に電装ユニット80を配置することで、スペースを有効に利用でき、装置の小型化を図れる。
【0029】
このような
図2に示した電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、
図3に詳細な構成を示すように、枠体81に制御基板83、各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが支持されている。制御基板83は、主軸や各軸のモータの駆動を制御する。各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zは、例えば、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御するものである。制御基板83の回路において実行されたNCコードに対して、サーボアンプである各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが指示された位置や回転数となるように対応するモータを回転させる。
【0030】
即ち、制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ13を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。
【0031】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100の制御基板83には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が通信可能に接続される。外部端末がNCコードを条件に従って作成し、制御基板83に送信されるようにしてもよい。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0032】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工装置100を制御してワークWを加工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0033】
図4について説明する。
図4(a)のエアブロー部87は主軸11の構成の一部である。エア入口122から圧縮空気を送りこむと、4箇所の送風口121から主軸11の先端に設けられた工具に向かってエアを吹き付けて、工具を冷却すると共に工具に付着した切粉を除去する。送風口121が4箇所あることで、工具全体へエアを当てることができる。勿論、送風口121は4箇所以上あっても構わない。
【0034】
図4(b)はエアブロー部87の送風口121の断面図である。送風口121はエア入口側の穴123に対して主軸11側に向かって傾斜するように設けられた送風側の穴124が細く、設けられているため、吹き付けるエアの流速を上げることができる。送風側の穴124は細くなった部分から先端が口広になっている。これにより、送風口121の製作加工が安易になる。
【0035】
図5に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85(制御部)、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。制御基板83に設けられたCPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行い、接続されたサーボアンプとしての制御部84x、84y、84z、84a、84b、84cに回転数や位置の指示を送信する。
【0036】
I/O86iは、加工装置本体のエアブロー部87、集塵装置88、工具長センサ96に接続される。エアブロー部87は上述のように工具へエアを吹き付け、除去した切粉を集塵装置88で集める。工具長センサ96は、工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。
【0037】
各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータを駆動する。各モータの制御部84x、84y、84zには、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータの制御部84x、84y、84zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータの制御部84x、84y、84zの駆動により各ステージx、y、zが移動した量(位置)を検知する。
【0038】
制御部84cは、主軸11を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータを駆動する。
【0039】
このようにCPU85により加工装置100の各部を制御することにより、上述のように保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0040】
後述する各手段や工程は、CPU85がメモリ86m等の記憶手段にプログラムを展開して実行する。
【0041】
図5は加工装置100における制御ブロック図である。
【0042】
主軸冷却エアのエア圧が閾値を満たしていない場合、主軸制御部84cがエア圧不足のエラーを出す。後述する第1エア圧検知センサ301がエア圧の不足を検知して主軸制御部84cがエア圧不足のエラーを出した際には、主軸が惰性回転を続けてしまう可能性がある。そのため、第1エア圧検知センサ301とは別に主軸制御部84cに供給されているエア圧を監視するための後述する第2エア圧検知センサ302を加工機に設けている。第1エア圧検知センサ301よりエア圧不足になってからエラーを出すまでの時間の閾値を短く設定している第2エア圧検知センサ302でエア圧を監視することで第1エア圧検知センサ301がエア圧不足のエラーを出す前に第2エア圧検知センサ302で先に検知し主軸を惰性回転させないようにしている。後述するように、主軸制御部84cの第1エア圧検知センサ301にエアを供給する経路に逆止弁304を入れている。そのため、エア経路の逆止弁304よりも下流側である第1エア圧検知センサ301が設けられた位置は、エア圧の変化がゆっくりとなる。そして、逆止弁304が設けられていない位置(エア圧の変化がすぐ反映される位置)に設けられた第2エア圧検知センサ302は、第1のエア圧検知センサ301よりも後述するエアコンプレッサのエア圧に近い値が測定される。このような構成では、第1エア圧検知センサ301がエア圧不足に対応した出力値以上を出力しても、第2エア圧検知センサ302の検知結果によっては、加工を継続しない方がよい場合がある。
【0043】
以下の実施例では、正常時のエア圧0.3МPaに対してエア圧が低下したと検知する閾値を0.25MPaとする。第1エア圧検知センサ301では0.25MPaになってから4秒経過するとエラーを出すのに対して、第2エア圧検知センサ302では0.25MPaになってから0.1秒経過後にエラーを出す。そのため、第2エア圧検知センサ302が第1エア圧検知センサ301より早くエア圧が下がったことを検知するようになっている。また、第2エア圧検知センサ302のエア圧が低下したと検知する閾値を第1エア圧検知センサ301よりも大きくして、第2エア圧検知センサ302の方が、第1エア圧検知センサ301よりも早くエア圧が下がったことを検知するようにしてもよい。
【0044】
第2エア圧検知センサ302は主軸11に供給されるエアを監視する。第2エア圧検知センサ302によって監視しているエア圧が閾値より低くなった場合、CPU85によって主軸11の回転数を確認する。主軸11の回転数が既定値以下であれば主軸冷却エアが低下した状態であっても加工を継続する。
【0045】
図6は圧縮空気供給のブロック図である。
エアコンプレッサ200からは加工機100の各部に圧縮空気が供給されている。
【0046】
主軸制御部84cがすぐにエア圧不足のエラーを出さないようにするために、主軸制御部84cの第1エア圧検知センサ301にエアを供給する経路に逆止弁304を入れている。これによりエア圧の変動を緩やかにしエア不足のエラーがすぐに出ないため基板ファームウェアがすぐに加工を停止しなくなった。また主軸の回転数を監視することでエア圧が低下した状態での加工の継続可否を判断し、主軸回転数30000rpm以下であればエア圧が低下した状態においても加工を継続させるようにした。第2エア圧検知センサ302は、逆止弁304に入る前のエア圧を測定する。主軸冷却用のエアと主軸の先端に設けられた工具に向かって吹き付けるノズルエア303は、エアコンプレッサ200によって供給される。
【0047】
図7は回転数を監視し加工の継続可否を判断するフローチャートである。
【0048】
S401では、CPU85は、第2エア圧検知センサに302によってエア圧が所定の閾値よりも低下しているか否かを判断する。エア圧が所定の閾値よりも低下している場合S402にすすむ。エア圧が所定の閾値以上である場合はS404に進み、加工を継続する。
【0049】
S402では、CPU85は、主軸の回転数を確認する。主軸回転数が既定値である30000rpm以下であればS404に進み加工を継続する。主軸回転数が30000rpmを超えている場合はS403に進む。
【0050】
S403ではエア圧の回復を確認する。エア圧が回復した場合はS404に進み加工を継続する。エア圧が回復しない場合はS405に進む。
【0051】
S405では、CPU85は、エア圧不足になってから一定時間が経過したか否かを判断する。一定時間としては、ここでは1分を設定した。1分経過するまではS403に戻りエア圧が回復したか否かを確認する。1分経過してもエア圧が回復しない場合は停止となる。
時間を計る計時手段としてのタイマーはCPU85の機能を利用する。
【0052】
上述のように設定すると回転数が30000rpm以下の場合は無条件で加工を継続する。
【0053】
回転数が30000rpmを超える場合には最長で1分間加工を継続する。1分間経過中にエア圧が回復した場合には回復後も加工を継続し、エア圧が回復しなかった場合はエア圧不足のエラーで加工を停止する。
【0054】
本実施例では、エア圧が回復するまで待機する時間を1分としたが一定時間の長さは変更可能であり、主軸回転数の規定値も変更可能である。
【0055】
切粉が舞うシーケンス発生時には
図4に記載の噴出孔121よりエアコンプレッサより供給されたエアがノズルエア303として噴出されている。ノズルエア303を噴出させる目的は、加工動作中は工具刃先冷却のため、工具交換中は工具ホルダに付着した切粉除去のため、また工具測長中はタッチセンサに付着した切粉の除去のためである。ノズルエア303の噴出により切粉が庫内に充満するため、ノズルエア303を利用するような切粉が舞うシーケンス終了後に主軸冷却エアを一定時間噴出することで主軸スピンドル内に切粉が侵入することを防ぐことができる。このとき、集塵機88で集塵を行い庫内の切粉の吸引を行うと切粉が主軸スピンドル内に侵入しにくくなる。また切粉が舞うシーケンス終了後の冷却エア及び集塵の継続タイマー値はユーザによって変更することができる。
【0056】
また切粉が舞うシーケンス終了後、主軸スピンドルへの切粉の侵入路を小さくするために主軸チャックを閉じることも考えられる。主軸チャックはタイマー起動と同時に閉じ、タイマー終了後も主軸チャック閉じ状態を維持する。
【0057】
加工動作終了後は必ずこのタイマーが起動し、主軸冷却エアの噴出と集塵装置88による集塵を行う。
【0058】
工具交換と工具測長は加工中、原点復帰時、手動動作による時に実行される。工具交換と工具測長が発生した場合には、加工中もしくは原点復帰中または手動操作により行われているかどうかを判断する。加工中に発生した場合には、主軸冷却エアは噴出されており、加工終了ではないためタイマーを作動させず加工を継続する。原点復帰もしくは手動操作によって動作しているときに工具交換と工具測長が発生した場合にはタイマーを起動させ、主軸冷却エアの噴出と集塵装置88による集塵を行う。集塵装置として、外部の集塵装置を用いる場合には、エアの噴出と集塵を連動させずに、加工中の際には、集塵装置を稼働させ続けてもよい。
【0059】
図8は切粉が舞うシーケンス後にエアブローを行うか否かを判断するためのフローチャートである。
【0060】
S501ではCPU85は、加工が終了したか否かを判断する。加工終了であればS506に進みS507、S508を経て終了になる。
【0061】
S506では主軸冷却エアおよび集塵をONにし、主軸チャックを閉じる。
S507では設定されたタイマーの経過を待つ。
【0062】
S508ではS507のタイマーが終了次第、主軸冷却エアと集塵をOFFにする。
【0063】
S502では工具交換または工具長測定が終了したか否かを判断する。終了していればS503に進む。終了していなければタイマーを起動せず終了となる。
【0064】
S503では加工中の工具交換または工具長測定であったか否かを判断する。加工中であればタイマーを起動せず終了となる。そうでなければS504に進む。
【0065】
S504では原点復帰中の工具交換または工具長測定であったか否かを判断する。原点復帰中であればS506に進む。そうでなければS505に進む。
【0066】
S505では手動操作による工具交換または工具長測定であったか否かを判断する。手動操作によるものであればS506に進む。そうでなければタイマーを起動せず終了となる。
【0067】
主軸11のテーパ面に切粉が付着したまま、工具を把持した場合に、工具がテーパ面に張り付いた状態になることがある。工具張り付きが発生した場合には、工具を工具マガジンに収納する動作を行って主軸11に設けられたチャックが開き状態になった後に、移動等によって、主軸11に振動が加わった際に、工具が意図しない場所で落下してしまう可能性がある。そのため、移動時にはチャックを閉じるようにすると、工具の落下を防止することが可能である。
【0068】
【0069】
開始時に張り付き検知の回数を示す数値を1に設定する。S601から605では加工装置100は工具格納動作を行う。S601で、CPU85は、X軸、及び、Y軸の駆動機構を駆動させるモータを駆動し、主軸11が工具マガジン70上に位置するように移動させる。S602では、Z軸の駆動機構を駆動させるモータを駆動し、主軸11が工具離し位置に位置するように下降させる。S603でチャックを開き工具離し動作を実行する。この際、エアを吐出し、張り付き工具を離れやすくしてもよい。
【0070】
S604では工具離し後に、チャック開き状態で一定時間待機することで張り付き工具を離れやすくする。S605ではZ軸が退避位置に移動する。
【0071】
S606では工具離し後、チャックを閉じ、S607でXY軸が工具長センサ96上に移動する。このとき、工具が主軸11に張り付いているか、張り付いていないかわからないが、チャックを閉じているため、工具が張り付いていたとしても移動による工具の落下を防止することができる。
【0072】
S608ではタッチセンサである工具長センサ96を用いて工具検知動作を行う。このとき、メモリ86mに記憶している前回の工具長検知位置をもとに、CPU85が工具の有無を判断している。工具なしの場合は、S609で工具が張り付いていないと判断し正常停止となる。工具ありの場合は、S609で工具が張り付いていると判断し、S610に進み、1回目の張り付きかを判断する。1回目であれば再度工具離しを試みるため、張り付き検知の有無示す数値をインクリメントして2とし、張り付き検知有としてS601に戻る。
【0073】
S610で張り付き検知の回数を示す数値が2であった場合、張り付きが検知されたのが、2回目であると判断し、S611に進みチャックを閉じてXY軸の位置が工具マガジン70上に位置するように移動する。S612では、Z軸を所定の量降下させ、使用者が工具の取り外しを行うことが可能な位置で停止し、S613でチャックを開いた状態にする。その後、S614では、工具張り付きのエラー状態であるためCPU85がエラー状態であることを使用者に工具の取り外しを促す報知を行う。所定の量は例えば退避位置から25mm降下したところを指す。
【0074】
また、主軸11に工具が張り付いた状態で加工装置100が加工装置100の電源が切られてしまう可能性も考えられる。そのため、原点復帰時にも工具落下防止のためにチャックを閉じる必要がある。しかし、工具マガジン70上の工具をつかむことが可能な位置で電源が切られ、その位置から原点復帰を開始し、チャックを閉じてしまうと、工具が張り付いていない場合に誤って工具を掴んでしまうことが考えられる。このような場合には、工具マガジン70上の工具を掴むことができる工具掴み位置からZ軸を移動させ工具掴み位置ではない位置に退避させることで誤って工具を掴むことを防止することができる。
【0075】
原点復帰が開始されるまでのフローチャートを
図10に示す。
【0076】
S701では、CPU85内で原点復帰開始指示を出している。S702ではCPU85は、原点だしが完了しているかを判断する。原点だしが完了している場合にはS703で現在の主軸11の位置が工具マガジン70上か否かを判断する。工具マガジン70上である場合、S704でZ軸を退避位置に移動させてからS705でチャックを閉じる。 原点だしが未完了の場合には、各軸の正確な位置を取得することができないため、S706でZ軸を所定の量上昇させて、S707でチャックを閉じることで仮に工具をつかむことが可能な位置で停止していた場合に誤って工具を掴んでしまうことを防止する。所定の量は例えば5mmとする。
【0077】
S708で原点だし動作を行った後S709でCPU85は、加工装置100が原点復帰動作を開始するように制御している。
【符号の説明】
【0078】
11 主軸
12 加工具
84c 主軸制御部
85 CPU
86m メモリ
87 エアブロー部
100 加工装置(加工装置)
301 第1エア圧検知センサ
302 第2エア圧検知センサ