IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジック アーゲーの特許一覧

<>
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図1
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図2
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図3
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図4
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図5
  • 特開-流れる流体の貫流の測定 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026329
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】流れる流体の貫流の測定
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
G01F1/684 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108188
(22)【出願日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10 2021 120 883.1
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェンス アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】マリオ キュンツェルマン
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流れ測定装置の測定精度を改善する。
【解決手段】配管(12)中を流れる流体(14)の貫流を測定するための流れ測定装置(10)を提示する。該装置は、配管(12)内の測定点(18)に配置された、流れる流体(14)の測定量を点的に検出するための測定素子(20)と、前記測定量から貫流を測定するための制御及び評価ユニット(22)と、測定点(18)より手前に配置された流れ案内要素(24)とを備える。流れ案内要素(24)は流れの代表的な部分(26)を測定点(18)に案内する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管(12)中を流れる流体(14)の貫流を測定するための流れ測定装置(10)であって、前記配管(12)内の測定点(18)に配置された、前記流れる流体(14)の測定量を点的に検出するための測定素子(20)と、前記測定量から前記貫流を測定するための制御及び評価ユニット(22)と、前記測定点(18)より手前に配置された流れ案内要素(24)とを備える流れ測定装置(10)において、
前記流れ案内要素(24)が流れの代表的な部分(26)を前記測定点(18)に案内することを特徴とする流れ測定装置(10)。
【請求項2】
前記測定素子(18)が熱量測定式の貫流測定のために少なくとも1つの発熱素子と少なくとも1つの温度プローブを備えている、又は、前記測定素子(18)が圧力測定素子を備えている、請求項1に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項3】
前記測定点(18)が前記流れ案内要素(24)の内部に配置されている又は該流れ案内要素(24)のすぐ後ろに続いている、請求項1に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項4】
前記流れ案内要素(24)が、前記流体(14)のうち前記代表的な部分(26)と相補的な、影響を受けない部分(28)を通過させるために少なくとも1つの開口(42)を備えている、請求項1に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項5】
前記代表的な部分(26)が、前記流れる流体(14)の断面の75%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、10%以下、又は5%以下に相当する、請求項4に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項6】
前記流れ案内要素(24)が、前記代表的な部分(26)を採取するための案内スリット(36)を有する複数のスポーク状に配置された腕部(34)を備えている、請求項1に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項7】
前記案内スリット(36)が前記配管(12)の長さ方向に案内チャネル(38)として前記測定点(18)へと続いている、請求項6に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項8】
前記流れ案内要素(10)が、十字形に配置された4本の腕部(34)を備えている、請求項6に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項9】
前記流れ案内要素(24)が、前記腕部(34)に対して角度のずれた複数の支持要素(44)、特に2本の腕部(34)間の真ん中にそれぞれ1つの支持要素(44)を備えている、請求項6に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項10】
前記流れ案内要素(24)が中心のブロック要素(32)を備えている、請求項1~9のいずれかに記載の流れ測定装置(10)。
【請求項11】
前記流れ案内要素(24)が、前記測定点(18)に向かう中心の案内チャネル(40)を備えている、請求項1~9のいずれかに記載の流れ測定装置(10)。
【請求項12】
前記測定点(18)が中心を外して配置されている、請求項1~9のいずれかに記載の流れ測定装置(10)。
【請求項13】
前記案内チャネル(38)が前記配管(12)の中心縦軸に対して非対称に構成されている、請求項7に記載の流れ測定装置(10)。
【請求項14】
前記流れ案内要素(24)が、流れてくる前記流体(14)に対して現れる最初の断面において配管断面の中心に対して対称に構成されている、請求項1~9のいずれかに記載の流れ測定装置(10)。
【請求項15】
配管(12)中を流れる流体(14)の貫流を測定する方法であって、測定点(18)において、前記配管(12)内に配置された測定素子(20)を用いて前記流れる流体(14)の測定量を点的に検出し、該測定量から前記貫流を測定し、前記測定点(18)の手前で流れ案内要素(24)を用いて流れを変化させる方法において、
前記流れ案内要素(24)が、流れの代表的な部分(26)を前記測定点(18)に案内することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は15のプレアンブルに記載の、配管中を流れる流体の貫流を測定するための流れ測定装置及び配管中を流れる流体の貫流を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管中の流体の流速又は貫流を測定するための様々な公知技術のなかに、点的な測定に基礎を置くものがいくつかある。これによれば様々な流入条件に対して測定が非常に高感度になる。図6は配管100において妨害箇所(ここでは湾曲部)の下流で点的な測定を行う場合の例を示しており、湾曲部により流体102の流れが矢印104で示したように向きを変えられて乱される。測定点106は妨害箇所の背後にある。
【0003】
妨害箇所より手前の第1の流れプロファイル108はまだ乱れておらず対称である。ここでは点的な測定から流れの全断面を問題なく推量することができる。妨害箇所の背後の第2の流れプロファイル110では局所的な質量流量密度の分布が変化している。乱れのない第1の流れプロファイル108の場合と同じ仮定の下で点的な測定により流れの全断面を推量したとすると、大きく外れた測定結果になってしまう。ここで特に問題となるのは、第2の流れプロファイル110が不明であり、再現もできないということである。故に、流れプロファイル108及び110の間の違いから測定誤差が生じるが、そこでは±50%以上の測定ずれが十分に想定される。
【0004】
このような点的な測定方法の1つに、流れている流体の熱伝達が流速によって異なることに基づく熱的な又は熱量測定式の貫流測定がある。そのために発熱素子と温度プローブが流れの中に配置される。様々な変形が知られているが、その違いはゾンデの種類及び配置並びに測定法にある。
【0005】
熱線風力測定では細いワイヤが用いられる。この方法は大気圧下での高速且つ局所的な貫流変動に適しているが、汚染に非常に弱い。薄膜技術による別のゾンデの構成はより高い頑強性をもたらす。金属製のゾンデも知られているが、応答時間が著しく長くなる。
【0006】
投入する熱については様々な制御の構想がある。CCA法(Constant Current Anemometry)では発熱素子は単に一定の電流が与えられるだけであり、電子的な制御も熱的な制御もない。やや複雑な制御にCPA法(Constant Power Anenometry)がある。この方法では熱出力の電子的な制御が行われる。この方法には、流体が静止している場合に放熱が起きないと発熱素子が過熱する恐れがあるという欠点がある。CTA法(Constant Temperature Anenometry)では電子的な制御と熱的な制御の両方が実施される。流体の流れの中に配置された発熱素子が、規定の超過温度、又は別の温度プローブの温度測定値に対する規定の温度差を目標として制御される。そもそも温度差を判定できるようにするために、発熱素子の温度が該素子に統合された又はそれに付設された別の温度プローブで追加的に測定される。質量流量は、発熱素子と温度プローブの間に所要の温度差を維持するために必要な熱出力の関数である。
【0007】
実際の実験では、薄膜技術を用いた熱量測定の場合、図6を参照して説明した測定誤差があるため、測定結果が再現可能になるには配管内径の200倍というオーダーの理想的な流入条件が必要であることが分かった。この条件が整っている取り付け状況は多くない。
【0008】
長くて真っ直ぐな流入区間の代わりに従来から流れ案内要素が用いられている。様々な流れ現象が区別できる。既に図6に描いたプロファイルの他、流れは旋回運動を示したり、とりわけ時間的に変化する挙動を示したりする可能性があり、それは場合によっては流体、流速及び障害物に応じて乱流へと遷移する。流れ案内要素は、補償すべき主な作用に応じて流れ変換器又は流れ調整器として構成される。プロファイルを狭めることも可能である。
【0009】
流れに作用することは圧力損失につながるが、従来の流れ案内要素にはこの圧力損失が著しいという欠点がある。圧力損失は最終的にどこかの箇所で補填されなければならず、それにより連続的にエネルギーを消費する。その上、従来技術による流れ案内要素を用いるには測定点の手前の流れを鎮静化する一定の区間が相変わらず必要である。
【0010】
特許文献1は、放射状に配置された複数の略長方形のフィンを有し、該フィンに貫通口を設けた流れ調整器を開示している。特許文献2には、同様に超音波測定に用いられる別の流れ調整器が紹介されている。こちらは交互に流れ方向及びその逆方向に傾いた複数のウェブを備え、より複雑な形状である。その上、隘路が作り出されている。特許文献3は超音速貫流測定装置用の流れ調整器の別の変形を提示している。第1及び第2の調整手段を互いに逆方向に回転させることにより乱流を消すことを目的としている。これらの流れ調整器はすべて超音波測定のために構想されており、超音波路であるため単なる点状の測定の問題は生じない。先に論じた圧力低下という欠点には言及されず、解決もされない。
【0011】
特許文献4から、これもまた超音波測定装置用の流れ調整器が知られている。ウェブの非対称な配置により流れ断面が複数の部分断面に分割される。乱流はほとんど妨害されずに通過できる一方、層流は旋回させられて乱流になるとされている。これによれば圧力損失がほとんど生じず、且つ副次的な直交流が誘起されないとされている。しかし、単一の測定点(ちなみに特許文献4の超音波法はこの点まで縮小できない)を配置するにしても、それは流れ調整器のせいで常に乱れている流れの中にしか配置できない。故に、仮にそれを熱量測定式の貫流測定のような点的な測定法に移行したとしても、信頼性の高い再現可能な測定値を得ることはできない。
【0012】
特許文献5には流れ制限器が記載されている。その役割は放物線状の流頭を直線状にすることである。そのために星形に配置された多数の翼があるが、特許文献5では、翼の間隔が均等でないそれ以前のアプローチの仕方には問題があるとの判断から、翼の配置を均等にしている。特許文献5の冒頭には測定方法として熱線風力測定への言及がある。しかし、その後に紹介されている流れ制限器の形状は差圧測定法のために設計され、説明されている。また、圧力採取点では流体が流れないため、流れの案内は話題になり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE 10 2006 047 526 A1
【特許文献2】EP 2 607 718 B1
【特許文献3】EP 1 775 560 A2
【特許文献4】DE 10 2008 049 891 B4
【特許文献5】US 2005/0039809 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
故に本発明の課題は冒頭で述べた種類の流れ測定装置の測定精度を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は請求項1又は15に記載の配管中を流れる流体の貫流を測定するための流れ測定装置及び配管中を流れる流体の貫流を測定する方法により解決される。測定される量は質量流量であることが多い。流体が既知で配管形状も既知の場合、質量流量、流速、体積流量、又は流量は相互に対応している又は相互に換算できるから、流れ測定装置で測定されるこれらの典型的な量を「貫流(Durchfluss)」で代表する。配管のうち測定が行われる区間は該配管内に挿入された流れ測定装置で置き換えられていることが多い。この相違にはこれ以上踏み込まず、以下では単に「配管」という名称を用いる。
【0016】
配管内の測定点に配置された測定素子が、流れている流体の測定量を点的に検出する。制御及び評価ユニットが測定素子の測定量を用いて目的とする貫流を測定する。測定点、又は点的な検出とは、1つの点のみで、又は実際的な枠内においては極めて小さい面で測定が行われることを意味する。つまり、流れ断面のうち非常に小さい局所的な部分だけが捕らえられるのであり、測定そのものにおいて流れプロファイルの平均化は行われない。そうしようとすれば、逆に、例えば超音波路が点又は0次元ではなく少なくとも1次元になり、しかもその場合、流れ断面をより良く写し取るためにしばしば複数の超音波路が用いられる。
【0017】
測定点に対し、流体の流れ方向に関して手前に流れ案内要素が配置される。従来ならこのような流れ案内要素は、冒頭で論じたように、再現可能な一様な流れを生じさせて、いわば、あたかも流れ測定装置の手前により長くて真っ直ぐな妨害のない流入区間があるかのような、仮想的な取り付け状況下のような環境を作り出す。一方、本発明では、以下で説明するように、この流れ案内要素は異なる機能を有している。
【0018】
本発明の出発点となる基本思想は、流れプロファイルを代表する測定状況を測定点において生じさせるということにある。流れ案内要素は、流れの一部であって該流れの残りをも代表する部分を測定点に供給するように構成されている。その際、全体としての流れは可能な限り変化しないままにしておく。流れ全体の鎮静化等の効果を明確に得ようとしたり、達成したりはしない。流れ案内要素は、前述した流れの代表的な部分を切り取って測定点へ導くための一種の流れ採取器の役割を果たす。故に測定点においては流れプロファイル全体の代わりとして局所的な質量流量密度を測定することができる。本発明に係る流れ案内要素がなければ、測定点においては単にそこに当たる非常に小さい内側の部分流しか捕らえられず、それは、特に妨害箇所の背後では、想定される平均的な流れに対して著しい逸脱及び変動を示す可能性がある。これについては冒頭で図6を参照して説明した。
【0019】
本発明には、不都合なものでもある流入条件に対する感度が大きく低減されるという利点がある。乱れのない延長された流入区間を設けるとすれば、その長さは冒頭で論じたように内径の200倍以上にする必要があるが、そのような区間はもはや必要ない.ただしその際、従来の流れ変換器又は流れ調整器を用いる場合のように、流れをそのまま鎮静化して、あたかも前記流入区間があるかのように振る舞わせようとするのではない。むしろ、その流れのうち小さくても代表的な部分だけが採取され、影響を受ける。従って本発明によればはるかに小さな圧力損失しか生じない。測定点においては、非対称な流れプロファイルが物理的に平均化されるから、測定値は本発明に係る流れ案内要素のおかげではるかに正確になる。
【0020】
測定素子は熱量測定式の貫流測定のために少なくとも1つの発熱素子と少なくとも1つの温度プローブを備えていることが好ましい。これにより熱量測定式の流れ測定装置が得られる。これは、単に点的に測定を行う広く知られた簡単な方法である。この測定方法は熱的な貫流測定又は熱的な風力測定と呼ぶこともでき、そのいくつかのより詳しい特徴は冒頭で簡単に説明した。前記少なくとも1つの温度プローブは、前記少なくとも1つの発熱素子に統合したり、別の構成要素として該発熱素子の近くに配置したりできる。貫流は温度及び/又は熱出力から、あるいはそれらから導き出された量から決まる。
【0021】
制御及び評価ユニットは、実施形態によっては、前記少なくとも1つの発熱素子に一定の電流を与えるように、又は、該素子の熱出力そのもの若しくは該素子の熱出力を制御することで前記発熱素子の温度が前記少なくとも1つの温度プローブの温度情報から所定の温度差だけ外れるように構成することができる。これは、冒頭で説明した考え得る変形であるCCA法(Constant Current Anemometry)、CPA法(Constant Power Anenometry)及びCTA法(Constant Temperature Anemometry)に相当する。
【0022】
前記少なくとも1つの発熱素子及び/又は前記少なくとも1つの温度プローブは薄膜技術で製造されていることが特に好ましい。これにより、有利であると同時に信頼できる頑強な部品が得られ、それにより再現性のある加熱乃至は温度測定が可能になる。
【0023】
代わりの実施形態では測定素子が圧力測定素子を備えている。これは、1つの測定点における点的な測定を基礎とする貫流測定の別の例である。例えばこの流れ測定装置はピトー管乃至は動圧ゾンデとして構成される。
【0024】
測定点は流れ案内要素の内部に配置されている又は該流れ案内要素のすぐ後ろに続いていることが好ましい。本発明では、従来の流れ変換器又は流れ調整器とは異なり、下流の鎮静化区間が全く不要であるか、少なくとも極めて短いものしか必要ではない。
【0025】
流れ案内要素は、流体のうち前記代表的な部分と相補的な、影響を受けない部分を通過させるために少なくとも1つの開口を備えていることが好ましい。本発明では流れの代表的な部分のみが測定点に供給される。残りの流れは好ましくは影響を受けずに、単に前記少なくとも1つの開口を通って流れる。全体として流れに影響を及ぼしたり、流れを鎮静化させるような流れにしたりすることは全く目指していない。流体のうち影響を受けない部分を通過させることにより、圧力低下を非常に小さく保つことができる。
【0026】
前記代表的な部分は、前記流れる流体の断面の75%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、10%以下、又は5%以下に相当することが好ましい。これらの数値で代表的な部分が数量的に示される。即ち、流れの断面のうちどの代表的な部分を測定点へと転じさせ、どの相補的で影響を受けない部分を単に通過させるかが示される。好ましくは、代表的な部分が流れプロファイルをなお十分に写し取るという条件の下で、圧力低下を可能な限り小さくするため、影響を受けない部分が優勢になるようにする。その際、他の部分(例えば、流れ案内要素の壁の厚みにより生じる部分)は無視する。
【0027】
流れ案内要素は、前記代表的な部分を採取するための案内スリットを有する複数のスポーク状に配置された腕部を備えていることが好ましい。これらの腕部は、好ましくは配管断面の全体にわたって放射状に延在し、それにより半径方向に流れプロファイルの全体を捕らえる。複数の腕部により流れプロファイルの様々な周方向が考慮される。これにより、前記代表的な部分が完全な流れプロファイルを本当に代表するものとなることができる。
【0028】
案内スリットは配管の長さ方向に案内チャネルとして測定点へと続いていることが好ましい。案内スリットは、流れ案内要素のうち最も手前にある、流れの方を向いた領域において、前記代表的な部分のための入口を示す。流れ案内要素の内部では、この入口をそれぞれ有する複数の案内チャネルが流れの方向に形成されており、それらのチャネルが前記代表的な部分から取り込まれた様々な部分流を更に先へ導き、それら部分流が測定点において合流する。その際、それらを事前に1つにしておくこともできる。
【0029】
流れ案内要素は十字形に配置された4本の腕部を備えていることが好ましい。これらの腕部は1つの中心から出ているものと考えられ、該中心は配管断面の中心にあることが好ましいが、必須ではない。この形状は、代表的な部分を測定点へ導くとともに相補的で影響を受けない部分のために大きな開口を空けておくための良い妥協である。また、それが互いに少なくともほぼ直交している腕部を有する十字形であり、好ましくは正十字形であれば特に有利である。なぜならそれは、特に配管の90度に曲がった部分の後ろに流れ測定装置を配置する場合に、流れを半径方向の2つの主方向において良好に写し取るからである。
【0030】
流れ案内要素は前記腕部に対して角度のずれた複数の支持要素を備えていること、特に2本の腕部間の真ん中にそれぞれ1つの支持要素を備えていることが好ましい。支持要素は流れの中で流れ案内要素を機械的に安定させる役割を果たす。支持要素はまだ十分な強度を持ちながらもできるだけ流れ断面を占有しないものとすべきである。2本の腕部の真ん中に配置する場合、流れは所望のとおりほとんど元のままである。腕部が十字形に配置されている場合、支持部は例えば45度だけ回転したもう一つの十字形となる。腕部とは違って支持部は案内スリットや案内チャネルを備えておらず、前記流れの代表的な部分を採取することには寄与しない。
【0031】
流れ案内要素は中心のブロック要素を備えていることが好ましい。中心のブロック要素は測定点から流れを真っ直ぐに遡ったところにあり、測定点に直接当たる流れをブロックする。そうしなければ、測定点に向かう中心の直接的な部分流が前記代表的な部分を圧倒してしまい、望ましくない。腕部を有する流れ要素の実施形態ではブロック要素が腕部の幾何学的な中心になっていることが好ましい。
【0032】
流れ案内要素は測定点に向かう中心の案内チャネルを備えていることが好ましい。流体が中心の案内チャネルに直接流れ込むことができないように、該チャネルは中心のブロック要素の背後にあることが好ましい。腕部から来る案内チャネルはこの中心の案内チャネルに合流していることが好ましい。
【0033】
測定点は中心を外して配置されていることが好ましい。流れ案内要素の前面はそれでもなお配管の中心縦軸に対称であることが好ましい。流れ案内要素の内部ではこの対称性を維持する必要はない。中心を外れた測定点にある測定素子、即ち配管断面の中心から半径方向にずれた測定素子は、外側からより容易に手が届いて接続することができる。代案として、流れ案内要素を全て対称に構成することが考えられる。これは、場合によっては流れ技術的により好都合であるが、そうすると測定素子を中心に置いてそこで接続しなければならない。
【0034】
案内チャネルは配管の中心縦軸に対して非対称に構成されていることが好ましい。今ちょうど述べたように、流れ案内要素の内部の対称性は放棄することができる。そうすれば、流れ案内要素の前面がなおも対称な構造であっても、案内チャネルは中心を外れた測定点に達する。
【0035】
流れ案内要素は、流れてくる流体に対して現れる最初の断面において配管断面の中心に対して対称に構成されていることが好ましい。これは流れ案内要素の前面が対称であれば特性上有利であることを再度述べたものである。特に4本の腕部を有する十字形を持つ実施形態では、流れてくる流体に対して現れる最初の断面において全体として中心の揃った正十字形が得られる。その後、流れ案内要素の内部では、1つの直径上で一方の腕部が短くなり他方が長くなるか、或いはそれらの腕部の案内チャネルがそのような推移をたどる。それと交差する直径上の別の2本の腕部では、案内チャネルが、測定点の方を向いた共通の成分を維持する。
【0036】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0037】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】流体が流れる配管の縦断面における流れ測定装置の概略的な全体図。
図2】流れ案内要素の前面図。
図3】該流れ案内要素の背面図。
図4】直立断面における該流れ案内要素の縦断面図。
図5図4の直立断面に対して90度だけ傾いた、横たわった断面における該流れ案内要素の縦断面図。
図6】本発明に係る流れ案内要素のない、従来の点的な測定の場合に生じる測定誤差を具体的に説明するための略図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は流れ測定装置10を配管12の縦断面図で示している。配管内では流体14が矢印16で示された流れ方向に流れる。測定点18に測定素子20が配置されている。これを用いて流体14の測定量が測定され、それが制御及び評価ユニット22において評価される。点的な測定により流体14の流速又は貫流を測定するために用いることができる様々な技術が知られている。点的な測定とは、測定点18でしか測定が行われず、従って配管12の断面にわたる流れプロファイルを単一の点だけで捕らえるということを意味する。なお、複数の測定素子を複数の測定点に配置することは排除されないが、これは測定コストが何倍にもなるため好ましくは避けるべきであり、つまりは1つの測定素子20を持つ1つの測定点18だけにすべきである。
【0040】
ここでより詳しく考察する本例の点的な測定は熱的な又は熱量測定式の貫流測定である。別の模範的に挙げられる代案として圧力又は圧力低下に基づく貫流測定がある。熱的な貫流測定については冒頭で既に簡単に紹介したが、この点に関して流れ測定装置10は従来技術と同様に構成することができる。例えば、測定素子20は少なくとも1つの発熱素子と少なくとも1つの温度プローブを備える下位構造を有しており、それらは好ましくは薄膜技術で製造されている。制御及び評価ユニット22は、温度測定値を評価し、熱出力を制御し、流体14の流速又は貫流を測定するために、前記少なくとも1つの発熱素子及び前記少なくとも1つの温度プローブと接続されている。熱的な貫流測定については原理的にいかなる公知の方法も考慮の対象となる。例えばCTA法(Constant Temperature Anemometry)では発熱素子が温度プローブの温度に対して一定温度だけ高い温度になるように制御される。言い換えれば、加熱されていない流体14の温度が温度プローブで測定され、それに対する一定の温度差が発熱素子に対する制御量として予め設定される。それに必要な熱出力を特性曲線に基づいて貫流に換算することができる。
【0041】
本発明に従って測定点18の上流側に流れ案内要素24が配置されている。これは図1では全く概略的にしか描かれていないが、後で図2~5を参照してより詳しく説明する。流れ案内要素24は、矢印26で大まかに示したように、流れの代表的な部分を測定点18へと導く。代表的な部分とは、まず、この部分が全体の流れを代表しており、従って測定点18においては流れ案内要素24のおかげで実質的に流れ断面全体の平均化が行われる、ということを意味する。これにより、流れプロファイルが不規則、未知又は変動的であっても、単なる点的な測定で流れ全体の貫流を捕らえることができる。他方で、それは流れの一部に過ぎず、他の相補的な部分は、矢印28で大まかに示したように、少なくとも広い範囲で、影響を受けずに流れ案内要素24を通り抜け、特に測定点18を通り過ぎる。これにより流れ案内要素24の圧力損失が限定される。
【0042】
図2~5は流れ案内要素24の様々な図を示している。これらを用いて該要素の形状及び機能を以下に説明する。なお、図2は前面図、図3は背面図、図4は直立した又は垂直な断面での縦断面図、図5はそれに垂直な、横たわった又は水平な断面における縦断面図である。
【0043】
流れ案内要素24は円筒状の枠30で囲まれている。枠の外径は配管12の内径に適合している。前側の断面、即ち、図2で最も良く認識できる、流れてくる流体14の方を向いた前面には、中心のブロック要素32が設けられている。これは配管12の縦中心軸上で流体14を通り抜けさせないようにするものである。中心のブロック要素から複数の腕部34が外方へ放射状に延在している。図示した好ましい実施形態では4本の腕部34があり、腕部34同士が直角になった十字形を成している。腕部34は前面の方を向いた案内スリット36を備えており、これを通じて流体14が腕部34内に流れ込むことができる。そのために案内スリット36は腕部34の内部での更なる流れの過程で案内チャネル38へと続く。このチャネルは図3~5に見て取れる。案内チャネル38は測定点18を終端とする中心の案内チャネル40に合流している。
【0044】
流れ案内要素24の前面は好ましくは、中心に配置された中心のブロック要素32と、この断面における腕部34の長さが等しい正十字形とを有する対称形である。一方、測定点18は、図示した実施形態では、測定素子20に接近しやすいように中心を外れている。ここでは上方にずれているが、配管12は回転可能であるから一般性は損なわれない。従って、中心の案内チャネル40は縦中心軸上には留まらず、測定点18に向かって上方に逸れている。それに応じて、直立方向の半径上にある上側の腕部34は流れ案内要素24に沿って短くなり、下側の腕部34は長くなる。それらと交差するように配置された2本の腕部34は、図3から分かるように、案内チャネル38を上へ持ち上げている。ここで説明し且つ描画した非対称性は1つの考え得る実施形態に過ぎない。代わりに測定点18を中心に配置することもできる。即ちそれは配管12の縦中心軸上にあってもよい。その場合は測定素子20もそれに合わせて中心に配置し、接続する必要がある。
【0045】
流れ案内要素24は腕部34間に開口42を備えており、これを通じて流体14は影響を受けずに流れることができる。図2及び3から分かるように、これらの開口42の全面積は配管12の断面積の大部分を成している。ここで、腕部34内の案内スリット36により採取する部分が流れを十分に代表するようにすることと、広い開口42により圧力損失をできるだけ小さくすることの間のバランスを見出す必要がある。機械的な安定性をより高めるために開口内に支持要素44が配置されている。該要素は十分な強度を持ちながらも占有断面積は可能な限り小さくなっている。開口42内の真ん中に配置すれば流れへの影響は極めて小さくなる。従って、図示した好ましい実施形態では、支持要素44は腕部34と同様に十字形を成し、腕部に対して45度だけ回転している。
【0046】
流れ案内要素24は案内スリット36によって流れプロファイルの一部断面を採取し、その部分流を、該案内スリット36に接続している案内チャネル38と中心の案内チャネル40によって測定点18まで案内する。案内スリット36の形状は、測定点18へ導かれる部分流が全体の流れ断面を代表するものとなるように選択されている。案内スリット36は半径方向に配管12の全体にわたって延在しており、周方向において複数の腕部34を介して複数の放射状の部分流が採取される。これにより平均化が良好に行われる。同時に案内スリット36は大き過ぎない。これが大き過ぎると流れが測定点18において不所望に強く加速してしまうことになる。その上、流れ案内要素24の背後で全体として流れに大きな圧力低下が生じてしまう。なぜなら、流体14が妨害されずに流れて通り抜けることができる開口42が占める面積が案内スリット36に比べて小さくなり過ぎるからである。
【0047】
ここまでの説明では測定点18が中心を外れているものとしたが、代わりにそれを中心に配置することも同様に考えられる。これは流れのうち開口42を通って流れる部分が妨害されずに通り抜けることを助ける。しかし、測定点18が中心を外れていても、少なくとも前面が対称な構造に保たれ、中心からのずれが配管断面の半径に対して小さいままである限り、妨害作用は限定的である。
【0048】
測定位置の手前で配管が90度曲がっているという図6に描いた状況は実際に非常によく生じる。その他、流れ測定装置10が空間内で斜めに向けられている場合もあるだろう。このように90度だけ曲がると、1次近似で流れの重心が90度のラスタにおいて同様にずれることになる。これが、腕部34を互いに直角を成すように十字形に配置することが非常に有利であることの1つの理由である。
【0049】
シミュレーションで、流れ案内要素24により採取されて測定点18に導かれる部分流が実際に代表的であること、即ち、例えば配管12の90度の曲がりの後で流れプロファイル全体を平均化することが証明できた。同時に、流れ全体の鎮静化を目的とする従来の流れ変換器で達成可能な圧力損失に比べて、非常に明白に小さい圧力損失が達成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】