IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェラーリ エッセ.ピー.アー.の特許一覧

<>
  • 特開-回転電機の回転子 図1
  • 特開-回転電機の回転子 図2
  • 特開-回転電機の回転子 図3
  • 特開-回転電機の回転子 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026350
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2783 20220101AFI20230216BHJP
【FI】
H02K1/2783
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123145
(22)【出願日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】102021000021815
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダビデ フェラーラ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ファヴェルザーニ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ポッジョ
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB04
5H622PP03
5H622PP18
5H622PP19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】質量及び回転慣性が小さい回転電機用の回転子を提供する。
【解決手段】回転電機用の回転子は、軸方向に向けられ、閉じたリングを形成するように回転軸の周りに互いに隣接して配列された複数の永久磁石6、永久磁石が載置される外面9、及び中央空洞12を有する支持シリンダ8、並びに、互いに独立して分離しており、支持シリンダ8と共に単一のブロックを形成するように、支持シリンダ8の中央空洞12の両端に単独で挿入される、2つのハーフシャフト10,11を備える。この永久磁石は、永久磁石の内側で半径方向に磁場を無効にし、永久磁石の外側で半径方向に磁場を最大にするように、ハルバッハ配列に従って互いに連続して円周方向に配列される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(1)用の回転子(4)であって、
軸方向に向けられ、閉じたリングを形成するように回転軸(3)の周りに互いに隣接して配列された、複数の第1の永久磁石(6)と、
支持シリンダ(8)であって、中央空洞(12)、及び前記第1の永久磁石(6)が前記支持シリンダ(8)の外側の表面上に配列されるように、前記第1の永久磁石(6)が載置される外面(9)を有する、支持シリンダ(8)と、
互いに独立して分離しており、前記支持シリンダ(8)と共に単一ブロックを形成するように、前記支持シリンダ(8)の前記中央空洞(12)の両端に単独で挿入される、2つのハーフシャフト(10,11)と、を備え、
前記支持シリンダ(8)の2つの対向する端部に配列され、互いに束ねられた前記第1の永久磁石(6)を保持するように設計された2つの端部ディスク(13)が設けられており、
前記支持シリンダ(8)は、前記第1の永久磁石(6)より先に前記端部ディスク(13)と接触するように、すなわち前記端部ディスク(13)が前記支持シリンダ(8)に軸方向に突き当たるように、前記第1の永久磁石(6)よりも軸方向に長いことを特徴とする、回転子(4)。
【請求項2】
前記ハーフシャフト(10,11)のそれぞれが、干渉を介して前記支持シリンダ(8)の前記中央空洞(12)内に打ち込まれる、請求項1に記載の回転子(4)。
【請求項3】
前記支持シリンダ(8)の前記中央空洞(12)の内部及び前記2つの端部の領域には、対応する前記ハーフシャフト(10,11)が当接する2つの当接部が得られる、請求項1に記載の回転子(4)。
【請求項4】
前記第1のハーフシャフト(10)は、支持軸受けに取り付けられるように成形され、トランスミッションへ接続できるように機械加工を有し、
前記第2のハーフシャフト(11)は、別の支持軸受けに取り付けられ、角度位置センサに接続されるように成形されている、請求項1に記載の回転子(4)。
【請求項5】
前記支持シリンダ(8)の前記外面(9)は切子面を有し、すなわち、複数の平坦面からなり、それぞれが、対応する前記第1の永久磁石(6)のための平坦な支持部を提供する、請求項1に記載の回転子(4)。
【請求項6】
前記端部ディスク(13)のそれぞれが、対応する前記ハーフシャフト(10,11)の周りに嵌合され、干渉を介して前記ハーフシャフト(10,11)に打ち込まれる、請求項1に記載の回転子(4)。
【請求項7】
内部が中空であり、前記第1の永久磁石(6)を前記支持シリンダ(8)と接触させて保持するように、前記第1の永久磁石(6)の周りに配置された、円筒状の収容要素(14)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項8】
前記収容要素(14)が、非磁性材料、特に複合材料で作製されている、請求項7に記載の回転子(4)。
【請求項9】
前記収容要素(14)が、互いに分離され、独立しており、かつ互いに隣接して配置された、異なる部品からなる、請求項7に記載の回転子(4)。
【請求項10】
前記収容要素(14)は、干渉によって前記第1の永久磁石(6)の周りに嵌合される、請求項7に記載の回転子(4)。
【請求項11】
前記第1のハーフシャフト(10)が、前記第2のハーフシャフト(11)を構成する材料とは異なる材料で作製されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項12】
前記支持シリンダ(8)が、前記2つのハーフシャフト(10,11)を構成する材料とは異なる材料で作製されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項13】
前記支持シリンダ(8)が炭素繊維で作製されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項14】
前記第1の永久磁石(6)は、好ましくは電気絶縁体である、取付け用接着剤を挿入することによって、前記支持シリンダ(8)の前記外面(9)に直接接着される、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項15】
前記第1の永久磁石(6)は、前記永久磁石(6)の内側で半径方向に磁場を無効にし、前記永久磁石(6)の外側で半径方向に磁場を最大にするように、ハルバッハ配列に従って互いに連続して円周方向に配列される、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転子(4)。
【請求項16】
前記ハルバッハ配列が、時計回り方向の円周方向に配向されたNS方向を有する第1の永久磁石(6)、外側に向かって半径方向に配向されたNS方向を有する後続の第1の永久磁石(6)、反時計回り方向の円周方向に配向されたNS方向を有する後続の第1の永久磁石(6)、及び内側に向かって半径方向に配向されたNS方向を有する後続の第1の永久磁石(6)の、4つの第1の永久磁石(6)のセットを、周期的に繰り返すことを伴う、請求項15に記載の回転子(4)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2021年8月12日に出願されたイタリア特許出願第102021000021815号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、回転電機の回転子に関する。
【0003】
本発明は、車両に搭載され、モータ(電気エネルギーを吸収して機械的トルクを発生させる)、又は発電機(機械エネルギーを電気エネルギーに変換する)として使用することができる、自動車動力用の回転電機において有利な用途を見出すものである。
【背景技術】
【0004】
自動車動力用の回転電機は、中心回転軸の周りを回転するように回転式に取り付けられたシャフト、一般に永久磁石を有し、シャフトと共に回転するようにシャフトに取り付けられた回転子、及び回転子を内側に囲むように回転子の周りに配置された固定子を備える。
【0005】
中国特許出願公開第102263448号明細書、ドイツ特許出願公開第102011012429号明細書、米国特許出願公開第2021129709号明細書、米国特許出願公開第2021242741号明細書、米国特許出願公開第2019288579号明細書、ロシア特許2659796号明細書、米国特許出願公開第2020036246号明細書、欧州特許第2069180号明細書、欧州特許第1892512号明細書、及び米国特許出願公開第2017271934号明細書には、回転電機用の回転子のいくつかの例が記載されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、特に質量及び回転慣性が小さい回転電機用の回転子を提供することである。
【0007】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲による、回転電機用の回転子が提供される。
【0008】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を説明し、説明の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで、その非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
【0010】
図1】本発明による回転子を備える、回転電機の概略縦断面図である。
図2】より明瞭にするために、いくつかの部分を省略した図1の回転子の斜視図である。
図3図1の回転子の斜視分解図であり、より明瞭にするためにいくつかの部分が省略されている。
図4図1の回転子の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、番号1は、全体として、自動車動力用の同期電気機械を示しており、この電気機械は可逆電気機械(すなわち、電気モータとして、電気エネルギーを吸収して機械的トルクを発生させ、発電機として、機械エネルギーを吸収して電気エネルギーを発生させることができる電気機械)である。
【0012】
電気機械1は、少なくとも2つの駆動輪を備える電気駆動又はハイブリッド駆動車両(すなわち、二輪駆動又は四輪駆動の電気又はハイブリッド車両)に設置するのに適している。特に、電気機械1は、(直接的に、又は場合によってはクラッチを備えたドライブトレインを使用して)駆動輪に接続することができる。すなわち、電気機械1と駆動輪との間に直接接続することができ、単純な減速機を設けることができ、あるいはクラッチを設けることもできる。
【0013】
電気機械1は、中心回転軸3の周りを回転するように回転式に取り付けられたシャフト2、シャフト2と共に回転するようにシャフト2に取り付けられた、永久磁石を有する回転子4、及び回転子4を内側に囲むように回転子4の周りに配置された、管状の円筒形状を有する固定子5を備える。
【0014】
回転子4と固定子5との間には、厚さの小さい環状のエアギャップ(通常、回転子4が固定子5の内側で総合的に安全に回転できるようにするための、必要最低限のもの)が画定されている。
【0015】
図2及び図3によれば、回転子4は、軸方向に向けられ、閉じたリングを形成するように回転軸3の周りに互いに並んで配列された、複数の永久磁石6を備える。図2に示す実施形態では、閉じたリングを形成するように配置された24個の永久磁石6があるが、本明細書に示されていない他の実施形態によれば、永久磁石6の総数は異なっていてもよく、例えば、4~32個の永久磁石6であり得る。永久磁石6は、表面に配列されている。すなわち、永久磁石6は、回転子4の外面の領域に配置され、回転子4に設けられたスロットには挿入されない。
【0016】
閉じたリングを構築する一連の永久磁石6は、永久磁石6の内側で半径方向に磁界を無効にし、永久磁石6の外側で半径方向に磁界を最大にするために、ハルバッハ配列による円周方向の配列を必要とする。言い換えれば、永久磁石6は、永久磁石6の内側で(シャフト2に向かって)半径方向に磁界を無効にし、永久磁石6の外側で(固定子5の磁気コアに向かって)半径方向に磁界を最大にするように配列される。すなわち、永久磁石6は、永久磁石6の内側で半径方向に磁界を無効にし、永久磁石6の外側で半径方向に磁界を最大にするように、ハルバッハ配列に従って互いに連続して円周方向に配列される。
【0017】
ハルバッハ配列は、配列の一方の側(この実施形態では半径方向外側)で磁界を増強し、他方の側(この実施形態では半径方向内側)で磁界を干渉によって相殺する(無効化する)ように配列された、永久磁石6の特別な接合(配列)である。図2によれば、このハルバッハ配列は、時計回り方向の円周方向に配向されたNS方向を有する永久磁石6、外側に向かって半径方向に配向されたNS方向を有する後続の永久磁石6(すなわち、中心回転軸3から離れる方向に移動する)、反時計回り方向の円周方向に配向されたNS方向を有する後続の永久磁石6、及び内側に向かって半径方向に配向されたNS方向を有する後続の永久磁石6(すなわち、中心回転軸3に近づく方向に移動する)の、4つの永久磁石6のセットを、周期的に繰り返すことを伴う。
【0018】
別の実施形態によれば、永久磁石6はハルバッハ配列に従って配列されない。
【0019】
好ましい実施形態によれば、各永久磁石6は、モノリス状(すなわち、当初から、分割されておらず不可分の磁性材料の単一片からなるもの)ではなく、軸方向に前後に並んだ(より小さい)永久磁石7の軸方向の連続によって形成され、すなわち、各永久磁石6は、軸方向に次々に配列された、複数の(より小さい)永久磁石7からなる。特に、各永久磁石6には、概して、前後に並んだ20~60個の永久磁石7がある。
【0020】
各永久磁石6において、永久磁石6を構成するすべての永久磁石7は同一の方向を有し、すなわち、それらはすべて等しく配向されている。言い換えれば、同じ永久磁石6において、永久磁石6を構成する各永久磁石7は、すべて全く同じように配向されている。
【0021】
添付の図面に示される実施形態では、永久磁石6は、交互に、長方形形状の断面及び等脚台形形状の断面を有する。本明細書に示されていない別の実施形態によれば、永久磁石6はすべて、(明らかに、リングを構築するために向きを互い違いにした)等脚台形形状の同じ断面を有する。
【0022】
図3及び図4によれば、回転子4は、永久磁石6を収容する支持シリンダ8を備える。特に、支持シリンダ8は、永久磁石6が載置される外面9を有する。好ましい実施形態によれば、支持シリンダ8の外面9は切子面を有する。すなわち複数の平坦面からなり、それぞれが対応する永久磁石6のための平坦な支持部を提供する。言い換えると、永久磁石6は、支持シリンダ8の外側の表面上に配列されている。
【0023】
支持シリンダ8は、シャフト2に結合され(すなわち、角度的に一体になるように拘束され)、それらは共に単一のブロックを形成する。図4によりよく示されている好ましい実施形態によれば、シャフト2は、それぞれが他方から分離され、支持シリンダ8に単独で結合(固定)された、2つのハーフシャフト10及び11からなる。すなわち、ハーフシャフト10又は11はそれぞれ、他方のハーフシャフト10又は11から独立して分離しており、他方のハーフシャフト10又は11から独立して、支持シリンダ8に結合(固定)されている。特に、支持シリンダ8は内部が中空であり、中央貫通空洞12を有し、その中に2つのハーフシャフト10及び11が挿入される。好ましい実施形態によれば、各ハーフシャフト10又は11は、干渉を介して(特に、高い締結力を得るための焼き嵌め、冷やし嵌めによって)支持シリンダ8内(すなわち、支持シリンダ8の中央空洞12内)に打ち込まれる。
【0024】
好ましい実施形態によれば、支持シリンダ8の中央空洞12の内部及び2つの端部の領域では、対応するハーフシャフト10及び11が当接する、2つの当接部が得られる。すなわち、2つの当接部は、ハーフシャフト10及び11を支持シリンダ8の中央空洞12に挿入するための制限止め具ある。
【0025】
ハーフシャフト10は、支持軸受けに取り付けられるように成形される。更に、ハーフシャフト10はまた、運動の伝達装置に接続されるように成形され、したがって、スプライン加工を有する。一方、ハーフシャフト11は、別の支持軸受けに取り付けられるように成形される。更に、ハーフシャフト11はまた、角度位置センサ(特に、レゾルバに)に接続されるように成形される。
【0026】
図4によれば、回転子4は、支持シリンダ8の2つの対向する端部でシャフト2の周りに配置され、(とりわけ)まとめて束ねられた複数の永久磁石6を保持するように設計された、一対の端部ディスク13を備える。言い換えれば、2つの端部ディスク13は、回転子4の2つの対向する端部を構成し、複数の永久磁石6をまとめて束ねた状態に保持するために、永久磁石6への軸方向の加圧を維持する。
【0027】
可能な実施形態によれば、端部ディスク13は、バランス開口部(本明細書には図示せず)を有するように設計される。これは回転軸3の周りで回転子4のバランスをとるものであり、円筒状穿孔又はフライス加工によって製造される。回転子4を高回転速度で動作させ、同時に動作寿命を長く保証するために、シャフト2を支持する軸受けが吸収しなければならない、動作中に発生する振動を最小限に抑える必要がある。この目的のために、回転子4は、多くの場合、回転中に振動を発生させる(不可避の構造的公差による)不均衡を低減するように、バランスをとる必要がある。回転子4がバランスをとれるようにするために、2つの端部ディスク13が使用される。バランス開口部(デッド開口部又は貫通開口部とすることができ、半径方向又は軸方向に配置することができる)によって質量の非対称性が較正される結果、端部ディスク13は、バランス調整要素として機能する。
【0028】
バランス穴の存在、数、配置、及び深さは、明らかに完全に不規則であり、その製造プロセス終了時における回転子4の(構造的公差による)実際の不均衡に依存するため、回転子4によって全面的に変わる可能性がある。理論的に言えば、回転子4は、構造的公差の組み合わせが好都合な場合には、その製造プロセス終了時に回転軸3の周りの不均衡から受ける影響は、補正を必要としないほど小さいものにすぎないため、バランス穴を全く必要としない。
【0029】
各端部ディスク13は、対応するハーフシャフト10又は11の周りに嵌合され、干渉を介してハーフシャフト10又は11上に打ち込まれる、すなわち、各端部ディスク13は、中央に、対応するハーフシャフト10又は11が(干渉嵌合によって)挿入される貫通孔を有する。
【0030】
端部ディスク13は、支持シリンダ8に軸方向に突き当たる。すなわち、端部ディスク13は、永久磁石6を押圧する代わりに、支持シリンダ8を軸方向に直接押圧するように、永久磁石6ではなく支持シリンダ8に軸方向に「接触」する。このため、支持シリンダ8は、永久磁石6よりも先に端部ディスク13に接触するように、永久磁石6よりも軸方向に長い(わずかに、実際には数ミリメートル長い)。本発明の一部ではない別の実施形態によれば、端部ディスク13は、複数の永久磁石6をまとめて束ねた状態に保持するように、永久磁石6に対して軸方向に突き当たる。すなわち、端部ディスク13は、支持シリンダ8を押圧する代わりに、永久磁石6を軸方向に直接押圧するように、支持シリンダ8ではなく永久磁石6に軸方向に「接触」する。このため、永久磁石6は、支持シリンダ8よりも先に端部ディスク13に接触するように、支持シリンダ8よりも軸方向に長い(わずかに、実際には数ミリメートル長い)。
【0031】
回転子4は、内部が中空であり、永久磁石6を支持シリンダ8と接触させて保持するように永久磁石6の周りに配置された、(図3によりよく示されている)円筒形の収容要素14を備える。すなわち、収容要素14は、遠心力によって永久磁石6が固定子5の磁気コアに押し付けられるのを防止するために、永久磁石6を半径方向に収容するように、外側で永久磁石6を覆うものである。好ましい実施形態によれば、収容要素14は、干渉を介して永久磁石6の周りに打ち込まれる、複合材料製の管状要素からなる。あるいは、収容要素14は、プラスチック材料、軽量の非強磁性金属材料(例えば、アルミニウム、チタン又はマグネシウム)、又は強磁性金属材料で作製される。更に代替として、収容要素14は、永久磁石6の周りに螺旋状に巻かれた樹脂結合フィラメントからなる。
【0032】
可能な実施形態によれば、収容要素14は、単一のモノリス状部品(すなわち、隙間なく)からなる。あるいは、収容要素14は2つ以上の部品からなり、これらは互いに分離かつ独立し、互いに隣接して配置される。この実施形態では、収容要素14を構成する異なる部品は、永久磁石6の周りに単独で取り付けられ、(上述したように、所与の干渉で行われる)操作に必要な力を全体的に低減する。
【0033】
一般的に言えば、ハーフシャフト10は、回転子4によって生成又は吸収されたトルクを伝達できなければならないため、高抵抗鋼(又は機械的特徴に関して同等の別の材料)で作製される。一方、ハーフシャフト11は、回転子4によって生成又は吸収されたトルクを伝達しないため、ハーフシャフト10の鋼材よりも抵抗が小さい、鋼材又は他の金属材料で作製される。
【0034】
支持シリンダ8は、磁性金属材料(鋼)、非磁性材料(例えば、アルミニウム、チタン又はマグネシウムなど)、又は、更には非金属材料(典型的には、必要な抵抗を有するための、炭素繊維などの複合材料)で作製される。上述したように、永久磁石6のハルバッハ配列によって永久磁石6の内部の磁界はゼロであり、したがって、支持シリンダ8は大きな磁界の影響を受けない。結果として、支持シリンダ8は必ずしも強磁性特性を有する必要がない。磁性金属材料で作製された支持シリンダ8では、永久磁石6が磁気吸引によって支持シリンダ8の外面9に接着するので、回転子の組立てが単純化し、したがって、組立て中に、それらを支持シリンダ8の外面9上に、より容易に配置することができる。
【0035】
端部ディスク13は、通常、まとめて束ねられた永久磁石6を保持するのに必要な抵抗を有すると同時に、永久磁石6によって生成される磁場を乱さないように、非磁性ステンレス鋼で作製される。
【0036】
図3に示す可能な実施形態によれば、各永久磁石6において、単一の永久磁石7は、寄生電流による電力損失を低減するために、(電気絶縁体である)取付け用接着剤15を挿入することによって、互いに接着される。言い換えれば、各永久磁石6は、(電気絶縁体である)取付け用接着剤15を使用して、単一の永久磁石7を互いに接着することによって得られる。
【0037】
好ましい実施形態によれば、永久磁石6は、支持シリンダ8の外面9に直接取り付けられる。特に、各永久磁石6は、好ましくは、(支持シリンダ8の外面9を介して、同じ永久磁石6の異なる永久磁石7を「短絡」させることを回避するために)電気絶縁体である取付け用接着剤によって、支持シリンダ8の外面9に接着される。言い換えれば、支持シリンダ8の外面9と永久磁石6との間には、取付け用接着剤によって構築された電気絶縁層が介在している。
【0038】
取付け用接着剤は、永久磁石6を下にある支持シリンダ8の外面9から電気的に絶縁する機能を有し、特に、回転子4を構築しながら、永久磁石6を支持シリンダ8の外面9に接続する機能を有する(回転子4の高速回転時には、取付け用接着剤が遠心力に耐えられないため、永久磁石6の機械的保持は、収容要素14によって保証される)。
【0039】
本明細書に記載の実施形態は、互いに組み合わせることができ、この理由で本発明の保護範囲を超えることはない。
【0040】
上述の回転子4には、数々の利点がある。
【0041】
第1に、上述の回転子4は、性能の利点のために、小さい質量及び低い回転慣性の両方を有する(特に、回転慣性が低いことは、ドライブトレイン全体の動的応力を低減する)。
【0042】
更に、上述の回転子4は、革新的な材料(特に、複合材料)を使用して、かつて到達されたことのない性能/質量比を保証する。特に、上述の回転子4は、回転子4を構成する3つの主要部分(支持シリンダ8、ハーフシャフト10、ハーフシャフト11)に、異なる材料を使用する。このようにして、各主要部分(支持シリンダ8、ハーフシャフト10、ハーフシャフト11)は、使用時に発生する機械的応力に抵抗し、性能/質量比を最適化するのに最も適した材料で作製することができる。
【0043】
上述の回転子4は、高エネルギー効率(すなわち、入力された機械的又は電気的な力と、出力された電気的又は機械的な力との間の高い効率)を保証する。この点に関して、収容要素14が存在することで、半径方向の位置決め及び真円度の高い精度が保証され、回転子4と固定子5との間に存在するエアギャップが最小化されることを指摘しておくべきである。
【0044】
最後に、上述の回転子4は、単純な形状を有する、少数の構成要素からなるため、製造が簡単であり、自動化工程においても互いに迅速に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 電気機械
2 シャフト
3 回転軸
4 回転子
5 固定子
6 永久磁石
7 永久磁石
8 支持シリンダ
9 外面
10 ハーフシャフト
11 ハーフシャフト
12 中央空洞
13 端部ディスク
14 収容要素
15 取付け用接着剤
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】