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特開2023-26357干渉チェック装置、干渉チェック方法、及び、干渉チェックシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026357
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】干渉チェック装置、干渉チェック方法、及び、干渉チェックシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4061 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
G05B19/4061 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125253
(22)【出願日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2021132005
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真仁
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB14
3C269CC02
3C269MN08
3C269MN12
3C269MN40
3C269PP02
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、加工装置の各構造体同士の干渉をチェックし易い技術を提供する。
【解決手段】
工具12を保持して回転する主軸11と、工具12により加工する加工対象物を保持する保持部41と、主軸12と保持部41とを所定方向に相対移動させる移動手段10、20、30、50、60と、保持部41を収容する収容部とを備えた加工装置の収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェック装置300であって、NCファイルを順次読み込み、移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理部310と、干渉を禁止するための禁止領域の情報を予め記憶した記憶部320を備え、処理部310によって、NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が禁止領域に含まれるか否かをチェックすることを特徴とする。
【選択図】図5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、
前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、
NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理部と、
干渉を禁止するための禁止領域の情報を予め記憶した記憶部を備え、
前記処理部によって、前記NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が前記禁止領域に含まれるか否かをチェックすることを特徴とする干渉チェック装置。
【請求項2】
前記保持部の種類を識別する識別部と、を備え、
前記処理部によって、前記NCファイルに含まれる前記保持部の種類に関する情報を抽出し、前記識別部による情報が異なるか否かをチェックする請求項1に記載の干渉チェック装置。
【請求項3】
前記記憶部に、それぞれ領域の異なる複数の前記禁止領域を記憶し、
前記識別部による情報と、前記処理部によってNCファイルに含まれる前記保持部の種類に関する情報とが異なる場合に、複数の前記禁止領域から干渉チェックを行う前記禁止領域を選択することを特徴とする請求項1に記載の干渉チェック装置。
【請求項4】
請求項1~4の何れか1項に記載の干渉チェック装置の前記処理部としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項5】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、
前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェック方法であって、
NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出する工程と、
前記NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が予め記憶された干渉を禁止するための禁止領域に含まれるか否かをチェックする工程とを有することを特徴とする干渉チェック方法。
【請求項6】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、
前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェックシステムであって、
NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理手段と、
干渉を禁止するための禁止領域の情報を予め記憶した記憶手段と、を備え、
前記処理手段によって、NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が前記禁止領域に含まれるか否かをチェックすることを特徴とする干渉チェックシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物の工作を行う加工装置の干渉チェック装置、干渉チェック方法、及び、干渉チェックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置において、NCファイルのチェックの一例として加工を行うと相対的に移動する各構造体同士が干渉のある部分をチェックする干渉チェック動作を行うものが知られている。
【0003】
干渉等のNCファイルのチェックを行う方法として三次元モデルデータと工具の移動データを基に、加工前に移動命令毎に干渉の発生有無を調べる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-4128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1のように、三次元モデルデータを作るためには、高性能なコンピュータや処理時間が必要であった。
【0006】
本発明は、簡易な方法で、NCファイルのチェックの時間を低減し易い技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の干渉チェック装置は、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理部と、干渉を禁止するための禁止領域の情報を予め記憶した記憶部を備え、前記処理部によって、前記NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が前記禁止領域に含まれるか否かをチェックすることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の干渉チェック方法は、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェック方法であって、NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出する工程と、前記NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が予め記憶された干渉を禁止するための禁止領域に含まれるか否かをチェックする工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の干渉チェックシステムは、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、前記保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の前記収容部内の各構造体の干渉をチェックする干渉チェックシステムであって、NCファイルを順次読み込み、前記移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理手段と、予め記憶された干渉を禁止するための禁止領域の情報を記憶する記憶手段と、を備え、前記処理手段によって、前記NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が前記禁止領域に含まれるか否かをチェックすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない処理量で移動軸を持つ数値制御加工装置の干渉チェックが行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
図2】実施形態に係る加工装置における内部構成の斜視図。
図3】収容部と主軸、保持部の関係を示す内部構成の斜視図。
図4】実施形態に係る加工装置における制御ブロック図。
図5】本発明の実施形態に係る干渉チェックのフローチャート。
図6】本発明の実施形態に係る工具と工具長センサの位置関係を示す側面図
図7】他の実施形態において、ワークを水平方向に対して90°傾けた状態を示す斜視図。
図8】他の実施形態に係るNCチェックのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態に係る加工装置ついて、図1図7を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図であり、エアを発生させるエアコンプレッサ200に、増圧弁90が取り付けられて、増圧弁90によって、圧力が上昇したエアによって、チャックをアンクランプ状態にする。増圧弁90の後段にエア圧検知センサ91が設けられている。工具のチャックにどの程度の圧力がかかっているか測定するために、エア圧検知センサ91は、加工装置の内部に設けられてもよい。
【0014】
加工装置100は、図1に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。外装カバー101は、開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換が可能となっている。
【0015】
加工装置100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な第1回転機構(回転機構)50及び第2回転機構(別の回転機構)60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。
【0016】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、図2に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。第2フレーム4は、Y軸方向に沿った部分とZ軸方向に沿った部分を別体として、ネジ等により接続し、梁を設けて構成してもよい。
【0017】
第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、加工具12が工具ホルダ(クランプ)を介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、図2に示すように、モータ14と、Z軸方向に配置された不図示の案内軸とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材16を介して案内軸に沿って移動可能に支持されている。例えば、案内軸はボールねじであり、Z軸支持部材16はモータ14の駆動により回転する案内軸(ボールねじ)に沿って移動する部材である。案内軸やZ軸支持部材16は、カバー17により覆われている。
【0018】
第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。第2移動機構20についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0019】
第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。第3移動機構30についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0020】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。図2に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0021】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など加工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部41と、両端部が第1回転機構50の回転部51にそれぞれ連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持部41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持部41が支持部42に対して固定されている。但し、保持部41と支持部42とを一体としても良い。
【0022】
第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び回転部51を支持する第1支持部53aと、回転部51に対向して設けられる不図示の回転部を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0023】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸を中心として回転可能に支持する。
【0024】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸の中心として360°回転させることができる。
【0025】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部61を回転駆動するモータとを有する。回転部61は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータ62に回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸を中心として回転可能に支持する。
【0026】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、第2回転機構60とともに回転しないように支持されている。また、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。
【0027】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の加工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける加工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分であり、加工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、加工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、加工具を取り付けても良い。加工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。
【0028】
加工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の加工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている加工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい加工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい加工具12を装着する。なお、加工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0029】
電装ユニット80は、フレーム1のXYZ方向の最大辺を含んだ直方体で囲んだ空間の内側に取り付けられている。このような電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、後述する制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ13を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。
【0030】
加工装置100は、図1に示すように、CPU310、メモリ311を搭載した、外部端末300を備える。
【0031】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末300を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100の制御基板には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が通信可能に接続される。外部端末がNCコードを条件に従って作成し、制御基板に送信されるようにしてもよい。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPU、メモリや表示器を搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0032】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データが掛かれたNCファイルを作成する。そして、このNCファイルに基づいて、加工装置100を制御してワークWを加工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0033】
図3はZ軸の駆動機構を機体内に収容した状態の斜視図である。収容部400は、加工装置100(図1参照)の外装カバー101内に設けられている。収容部400には、主軸11の先端側や保持部41や工具マガジン70などが内部に配置され、工具による加工空間を形成する。外装カバー101の開閉ドア102(図1参照)を開けた場合に、加工空間にアクセス可能な開口部401が形成されている。また第1移動機構10がX軸方向に移動可能にするための開口部402が上面側に形成されている。
【0034】
図4に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。制御基板に設けられたCPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行い、接続されたサーボアンプとしての制御部84x、84y、84z、84a、84b、84cに回転数や位置の指示を送信する。
【0035】
I/O86iは、加工装置本体のエアブロー部87、集塵装置88、工具長センサ96に接続される。エアブロー部87は上述のように工具へエアを吹き付け、除去した切粉を集塵装置88で集める。工具長センサ96は、工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。
【0036】
各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータを駆動する。各モータの制御部84x、84y、84zには、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータの制御部84x、84y、84zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータの制御部84x、84y、84zの駆動により各ステージx、y、zが移動した量(位置)を検知する。
【0037】
制御部84cは、主軸11を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータを駆動する。
【0038】
このようにCPU85により加工装置100の各部を制御することにより、上述のように保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0039】
本実施例では後述する各手段や工程は、外部端末300上で実行するが、加工装置100自体で表示器を設け実行しても良い。その場合、CPU85がメモリ86m等の記憶手段にプログラムを展開して実行する。
【0040】
本発明の実施例に係る干渉チェックのフローチャートを図5に示す。ユーザは外部端末300上で加工装置100へ送信するNCファイルを選択すると、下記干渉チェックフローを実行する。本実施例ではNCファイルの送信処理と共に干渉チェックを行っているが、干渉チェックのみを行うモードを外部端末300に備えても良い。
【0041】
図5のステップS100において外部端末300は記憶されている最大干渉量1~10のデータを全て0にクリアする。最大干渉量は工具毎に外部端末300内に記憶され、加工装置100が収納可能な工具の数だけ存在する。本実施例では選択した工具数を10とする。
【0042】
ステップS101において外部端末300は選択したNCファイルから一行読み出す。
【0043】
ステップS102において外部端末300はステップS101で読み出した行データにG**(**は数字)やM**(**は数字)が含まれているか調べ、含まれる場合はG**、M**部を抽出する。
【0044】
ステップS103において外部端末300はG02,G03の円弧補間、ヘリカル補間コードの場合、ステップS104の処理に進む。それ以外の場合はステップS105へ進む。
【0045】
ステップS104において外部端末300は、自身の表示器へ未対応のNCコードを使用している旨を表示する。表示後、干渉チェック処理を終了する。
【0046】
本実施例ではG02、G03コードは未対応としているが、対応する場合は、異動軌跡を計算し、後述するS131で異動軌跡が全て干渉エリア内に含まれるかどうか比較する処理を追加する。
【0047】
ステップS105において外部端末300はステップS101で読み出した行データに特定の座標データが含まれるか調べ、座標データを抽出する。座標データはN*****(N:軸名X,Y,Z,A,B, *****:数値データ)の文字列が含まれているかで判断し、******部を座標データとして抜き出す。
【0048】
ステップS106において外部端末300はステップS105で抽出した座標データにZ軸のデータが含まれる場合、Z軸のデータを機械座標に変換する。
【0049】
図6にZ軸の座標変換で使用する距離を示す。図6において主軸11及び加工具12のZ軸位置は機械原点にあるものとする。このとき、各記号の意味は次のようになる。
offset:Z軸のデータを機械座標に変換する為のオフセット値である
hsens: 工具長センサ96~ワーク座標0mmのZ軸距離
d0:加工具12の突き出し量が0の場合の機械原点位置における工具先端から工具長センサ96までの距離
drn:加工具12の突き出し量がn(単位mm)の場合の機械原点位置における工具先端から工具長センサ96までの距離測定値
Zm:Z軸機械座標値
Zw:抽出したZ座標データ
tl:現時点の加工具12突き出し量
Z軸データの座標変換は下記の式で行う。
Zm = Zw + offset
offset = hsens + (d0 - tl)
d0 = (dr35 + dr25)/2 - 30
【0050】
ここで現時点の加工具12突き出し量tlは予め設定項目としてユーザに設定させても良いし、工具長センサ96を用いて工具突き出しを測定しても良い。また、工具突き出し量0mm 工具長センサ反応位置は、本実施例では突き出し量35mmと25mmの工具長センサ96の検知位置を事前に測定しておき、平均を取ったものから30mm減算して算出しているが、こちらも工具長センサ96を用いて、事前に測定しても良いし、干渉チェック時に実測しても良い。
【0051】
ステップS107において外部端末300はステップS101で読み出し、ステップS103で座標変換した座標データを記憶する。記憶する座標データは(X,Y,Z,A,B)の各軸についてそれぞれ持つ。ステップS101で読み出したデータが全軸ではない場合は、足りない軸は前回記憶した座標データを記憶し続ける。例えば前回記憶したデータが(X:10.0000,Y:9.0000,Z:-2.0000,A:10.0000,B:3.0000) であり、今回読み出したデータが(X:12.0000, Z:5.0000)だったとすると、記憶する座標データは(X:12.0000,Y:5.0000,Z:-2.0000,A:10.0000,B:3.0000)となる
【0052】
ステップS110において外部端末300はステップS107で記憶した座標データと表1に示す干渉エリアを比較する。干渉エリアは、その領域外において、(X,Y,Z,A,B)の各軸を自由に動作させても、主軸11と保持部41が干渉しないように設定する。表1の空欄部には最小値の場合、-999.9999となり、最大値の項目の場合、999.9999が入る。この数値は加工装置100の各軸ストローク最大値を超える数字であることが望ましい。記憶した座標データがいずれかの干渉エリアに含まれる場合、ステップS120の処理を行う。そうではない場合は、S130の処理を行う。例えば、主軸11の主軸固定板、Y軸の移動機構である第3移動機構30のY前板との関係は、Xの値を固定で、Tの値の条件によって、Zの値の範囲を変えている。これは、主軸の根元の太い部分が干渉する場合が出てくるため、Yの値によって、禁止領域を大きくしている。また、保持部41であるディスクホルダの取付板と、工具ホルダ12aとの関係は、B軸の値の変化に伴いXの値、Zの値を3通りの禁止領域を作成している。これは、B軸の傾きの正負によって、Xの値の正負が変化し、B軸が水平とみなせる場合の条件を設定しているためである。そのため、干渉物によっては、複数の禁止領域を設定することが好ましく、軸方向に沿った移動をする対象の場合には、2種類以上、軸方向に回転する場合の対象には、3つ以上の禁止領域を設定することが好ましい。このように、複数の禁止領域を設定すると、禁止領域を大きくし過ぎることなく、干渉が発生する可能性をなくすことができる。
【0053】
【表1】
【0054】
ステップS120において外部端末300は干渉量を算出する。ここで、干渉量とは干渉したエリアのZ軸最大値から、ステップS107で記憶した座標データのZ軸値を減算したものである。
【0055】
ステップS121において外部端末300はステップS120で算出した干渉量と最大干渉量nと比較する。nは使用中の工具番号になる。干渉量が最大干渉量nよりも大きい数値の場合S122の処理を行い、そうでない場合はS130の処理を行う。
【0056】
ステップS122において外部端末300は干渉発生した行数、干渉量、工具番号を記憶する。
【0057】
ステップS130において外部端末300は読み込み中のNCファイルがファイル終端であるか確認する。終端である場合はステップS131の処理に進む。終端ではない場合、ステップS100の処理へ戻る。以後、NCファイルの終端が来るまでステップS101からステップS130までの処理を繰り返す。
【0058】
ステップS131において外部端末300はステップS100からステップS130までの処理で干渉を検知した場合、ステップS200の処理を行う。干渉が検知されなかった場合、干渉チェック処理を終了する。
【0059】
ステップS200において外部端末300は最大干渉量1から10が全て最大突き出し量からtlを減算した値より小さい値かどうかを判断する。この条件を満たす場合、ステップS210の処理へ進む。この条件を満たさない場合、ステップS220の表示を行う。
【0060】
ステップS210において外部端末300は最大干渉量が発生したNC行数を自身の表示器に表示する。本実施例では最大干渉量が発生したNC行数を表示しているが、干渉を検知した最初の行を表示したり、干渉を検知した全ての行をリスト表示しても良い。
【0061】
ステップS220において外部端末300は各最大干渉量を自身の表示器に表示する。
【0062】
本実施例では、ステップS200~S220において、最大干渉量の大きさで表示内容を切り替えているが、これは最大干渉量が加工具12の突き出し量を調節すれば干渉が回避できる場合が否かで分けている。外部端末300がステップS220で表示した干渉量を表示した場合、ユーザは現在の加工具12の突き出し量をさらに干渉量以上増やした場合、干渉量を回避することが出来る。
【0063】
外部端末300がステップS210の処理を行った場合、ユーザは表示されたNC行数を確認し、NCファイルを修正し干渉を回避することが出来る。
【0064】
このように、本実施形態の加工装置では簡易的に主軸11と保持部41との干渉を検出し、干渉による装置故障を未然に防ぐ事が出来る。収容部内の各構造体の機械座標値が分かれば、主軸11と保持部41と同様に干渉を防ぐことができる。
【0065】
加工装置100において当該箇所の除去を行う場合は、図7に示すように、ディスク状のワークWを全周で固定するのではなく、一部を開放させたC型形状でクランプし、a軸(X軸方向)を中心に90°回転させた位置に移動し、ディスクを立てた状態で真上から加工することで、削り残りを無くす。即ち、第1回転機構50によりワークWをXY平面と平行な位置(本実施形態では水平位置)から90°回転させる。この角度は90°の状態からわずかに±数度回転させて、加工を行う場合もある。
【0066】
図7に示すような保持装置41を用いる場合には、以下のようにNCファイルのチェックを行う。フローチャートを図8に示す。干渉チェック以外にも、冶具の種類によっても加工の可否を判断してもよい。
【0067】
ステップS300において外部端末300は、本体加工機の機種コードを取得し、保持装置41の使用可能状態を記憶する。本実施例においては機種コードを用いて保持装置41が使用可能か判断しているが、他の保持装置の識別手段を用いても良い。その場合は保持装置の識別手段から保持装置の種別を取得する。CPU310が機種コードを識別する識別部として機能する。
【0068】
ステップS301、S302において外部端末300は、NCファイルを検索し、NCファイル内の使用する保持装置の情報を検索し取得する。保持装置の情報はコメント文に記載されても良いし、専用のコードを準備しても良い。また、検索する場合、ファイルの先頭に近い位置に記入する事が望ましい。
【0069】
ステップS310、S311において外部端末300は、ステップS300において取得した保持部41の使用可能状態を参照し、C型の保持部41が使用不可であり、かつステップS301、S302で取得したNCファイルの使用治具がC型の保持部41を使用する場合、S320の処理に進む。それ以外の場合はステップS340へ進む。本実施例ではC型の保持具41に対応しない加工装置の例を説明したが、C型以外でも、リング状の保持部を使用するNCファイルであるにも関わらず、リング状の保持具が使用不可の機種コードである場合に、警告を出すようにしてもよい。
【0070】
ステップS320とステップS330において外部端末300は、外部端末300画面上に、警告表示を行い、ユーザに読み込み中のNCファイルを使用し加工を行うか、ユーザの入力を待つ。ユーザが加工を承認した場合、ステップS340の処理に進み、加工を禁止した場合はNCファイルのチェック処理を終了し、以後の加工処理を行わない。加工装置100上で本フローチャートを実行している場合は、加工装置100上に表示器を取付け、そちらに表示しても良い。
【0071】
ステップS340において外部端末300は、NCファイルの問題がないと判断し、ファイルを加工装置100へ送信する。このとき、加工装置100の内部のメモリ上でNCファイルチェック処理を行った場合は、本工程を省略しても良い。
【0072】
ステップS341において外部端末300は、ステップS340で送信したNCファイルを使用し、加工処理を行う。
【0073】
本実施例において外部端末300は、機種コードとNCファイル上の使用治具で干渉有無を判断しているが、機種コードによって保持装置40が搭載されている装置には図6の干渉エリアに追加し、図5の干渉チェックフロー上で干渉を検知する方法でも良い。
【0074】
このように、本実施形態の加工装置ではNCファイルより保持装置41と加工工具との干渉を検出し、工具破損を未然に防ぐことができる。
【0075】
上述した干渉チェックは、工具を回転させる主軸と、工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、保持部を収容する収容部とを備えた加工装置の収容部内の各構造体の干渉をチェックする場合に適応することができる。
【0076】
NCファイルを順次読み込み、移動手段に対する動作指令を抽出して処理する処理部予め記憶された干渉を禁止するための禁止領域を記憶する記憶部と、が外部端末300にある実施例を示したが、加工装置内のコンピュータで処理しても、各機能を分散して複数のコンピュータで処理するシステムとしてもよい。NCファイル上の座標値より算出された機械座標値が予め記憶された禁止領域に含まれるか否かをチェックすることで、処理時間を低減し易い。
【符号の説明】
【0077】
10 第1移動機構
11 主軸
12 加工具
20 第2移動機構
30 第3移動機構
40 支持機構
41 保持部
50 第1回転機構
60 第2回転機構
85 CPU
86m メモリ
100 加工装置
200 エアコンプレッサ
300 外部端末
310 CPU
311 メモリ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8