(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026358
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】加工装置、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/19 20060101AFI20230216BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230216BHJP
G05B 19/4067 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G05B19/19 W
B23Q17/24 B
G05B19/4067
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125254
(22)【出願日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2021132007
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 千紘
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029AA31
3C029AA40
3C269AB01
3C269BB12
3C269CC02
3C269EF15
3C269JJ19
3C269MN16
3C269MN32
3C269PP02
3C269PP03
3C269PP05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リミットセンサが誤検知した状態となっても、加工までの時間が長くなりにくい加工装置を提供する。
【解決手段】工具を保持して回転する主軸11と、工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、主軸11と保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、発光部からの光が受光部へ到達するのが遮られることで移動手段の位置の異常を検知するリミットセンサ402、403と、工具交換が行われた後から、リミットセンサ402、403による異常が検知されるまでの間の状態の情報を記憶する記憶手段と、主軸11による加工を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、リミットセンサ402、403による異常が検知された場合に、一時的に加工を停止し、記憶手段に記憶された情報に応じて、加工を再開することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、
発光部からの光が受光部へ到達するのが遮られることで前記移動手段の位置の異常を検知するリミットセンサと、
工具交換が行われた後から、前記リミットセンサによる前記異常が検知されるまでの間の状態の情報を記憶する記憶手段と、
前記工具による加工を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記リミットセンサによる前記異常が検知された場合に、一時的に加工を停止し、前記記憶手段に記憶された情報に応じて、加工を再開することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記主軸をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構であり、
前記リミットセンサは、前記Z軸移動機構の前記異常を検知することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記保持部が内部に収容され、前記工具により加工対象物に加工が行われる加工空間を形成する収容部を有し、
前記収容部の上面側には、開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記リミットセンサの前記異常が検知された場合に、加工を再開した回数をカウントし、
予め定められた回数のみ加工を再開することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶された情報により、前記工具交換が行われた直後の状態から加工を再開することを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の加工装置の前記制御手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項7】
工具を保持して回転する主軸と、
前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、
発光部からの光が受光部へ到達するのが遮られることで前記移動手段の位置の異常を検知するリミットセンサと、
工具交換が行われた後から、前記リミットセンサによる前記異常が検知されるまでの間の状態の情報を記憶する記憶手段と、
前記主軸による加工を制御する制御手段と、を備えた加工装置の制御方法であって、
前記リミットセンサによる前記異常を検知して一時的に加工を停止する工程と、
前記記憶手段に記憶された情報に応じて、加工を再開する工程と、を有することを特徴とする加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物の工作を行う加工装置、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内機構は、加工装置や組みたて装置などの各軸の駆動機構に用いられる。各駆動軸には、リミットセンサと呼ばれる、限界位置に達した場合に停止させるセンサが取り付けられることが多い。
【0003】
特許文献1には、Z軸テーブルが限界位置に到達したことを検出するリミットセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公報 特開2000-311015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リミットセンサに用いられるセンサはコストやサイズを考慮し透過型センサがよく用いられている。
モータによる駆動に伴い移動する部材がセンサに近づきセンサの発光部と受光部の間を遮ることでセンサの状態がアクティブになり、この遮光部材がセンサから離れセンサの発光部と受光部の間を遮らなくなることでセンサの状態が非アクティブになる。
【0006】
このような構成では、モータの駆動位置が移動範囲の端部へ達していない場合でも、透過型センサは光センサのため発光部側あるいは受光部側の検知面に切粉が付着するとセンサの状態が短い時間アクティブになり、モータの駆動位置が移動範囲の端部へ到達したと誤検知し、異常だと判断することがあった。異常終了した場合は、ユーザは同じ加工プログラムを再度登録し、加工プログラムの先頭から再度加工を実施するなど、何らかの処理が必要となり加工完了までの時間が長くなってしまう。
【0007】
本発明は、リミットセンサが誤検知した状態となっても、加工までの時間が長くなりにくい加工装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の加工装置は、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、発光部からの光が受光部へ到達するのが遮られることで前記移動手段の位置の異常を検知するためのリミットセンサと、工具交換が行われた後から、前記リミットセンサによる前記異常が検知されるまでの間の状態の情報を記憶する記憶手段と、前記工具による加工を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記リミットセンサによる前記異常が検知された場合に、一時的に加工を停止し、前記記憶手段に記憶された情報に応じて、加工を再開することを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の加工装置の制御方法は、工具を保持して回転する主軸と、前記工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、発光部からの光が受光部へ到達するのが遮られることで前記移動手段の位置の異常を検知するためのリミットセンサと、工具交換が行われた後から、前記リミットセンサによる前記異常が検知されるまでの間の状態の情報を記憶する記憶手段と、前記主軸による加工を制御する制御手段と、を備えた加工装置の制御方法であって、前記リミットセンサによる前記異常を検知して一時的に加工を停止する工程と、前記記憶手段に記憶された情報に応じて、加工を再開する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加工がリミットセンサの誤検知で異常停止した場合でも、より短時間で加工を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
【
図2】実施形態に係る加工装置における内部構成の斜視図。
【
図4】実施形態に係る加工装置における制御ブロック図。
【
図6】Z軸の駆動機構を機体内に収容した状態の斜視図
【
図7】実施形態に係るZ軸の上昇端リミットに入った場合の、リトライをするか否かについてのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態に係る加工装置ついて、
図1~
図5を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加工装置の外観斜視図であり、エアを発生させるエアコンプレッサ200に、増圧弁90が取り付けられて、増圧弁90によって、圧力が上昇したエアによって、チャックをアンクランプ状態にする。増圧弁90の後段にエア圧検知センサ91が設けられている。工具のチャックにどの程度の圧力がかかっているか測定するために、エア圧検知センサ91は、加工装置の内部に設けられてもよい。
【0014】
加工装置100は、
図1に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。外装カバー101は、開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換が可能となっている。
【0015】
加工装置100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な第1回転機構(回転機構)50及び第2回転機構(別の回転機構)60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。
【0016】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、
図2に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。第2フレーム4は、Y軸方向に沿った部分とZ軸方向に沿った部分を別体として、ネジ等により接続し、梁を設けて構成してもよい。
【0017】
第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、加工具12が工具ホルダ(クランプ)を介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、
図2に示すように、モータ14と、Z軸方向に配置された不図示の案内軸とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材16を介して案内軸に沿って移動可能に支持されている。例えば、案内軸はボールねじであり、Z軸支持部材16はモータ14の駆動により回転する案内軸(ボールねじ)に沿って移動する部材である。案内軸やZ軸支持部材16は、カバー17により覆われている。
【0018】
第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。第2移動機構20についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0019】
第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。第3移動機構30についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0020】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図2に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0021】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など加工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部41と、両端部が第1回転機構50の回転部51にそれぞれ連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持部41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持部41が支持部42に対して固定されている。但し、保持部41と支持部42とを一体としても良い。
【0022】
第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び回転部51を支持する第1支持部53aと、回転部51に対向して設けられる不図示の回転部を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0023】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸を中心として回転可能に支持する。
【0024】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。
【0025】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部61を回転駆動するモータとを有する。回転部61は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータ62に回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸を中心として回転可能に支持する。
【0026】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、第2回転機構60とともに回転しないように支持されている。また、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。
【0027】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の加工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける加工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分であり、加工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、加工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、加工具を取り付けても良い。加工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。
【0028】
加工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の加工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている加工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい加工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい加工具12を装着する。なお、加工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0029】
電装ユニット80は、フレーム1のXYZ方向の最大辺を含んだ直方体で囲んだ空間の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1フレーム部3の第1の面3aの反対側で、第2フレーム部4の第2の面4aの反対側に配置されている。このようにL字型に形成されたフレーム1の、各移動機構や回転機構が配置されていない内側に電装ユニット80を配置することで、スペースを有効に利用でき、装置の小型化を図れる。
【0030】
このような電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、
図3に示すように、枠体81に制御基板83、各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが支持されている。制御基板83は、主軸や各軸のモータの駆動を制御する。各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zは、例えば、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御するものである。制御基板83の回路において実行されたNCコードに対して、サーボアンプである各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが指示された位置や回転数となるように対応するモータを回転させる。
【0031】
即ち、制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータを制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ13を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。
【0032】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100の制御基板83には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が通信可能に接続される。外部端末がNCコードを条件に従って作成し、制御基板83に送信されるようにしてもよい。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0033】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工装置100を制御してワークWを加工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0034】
図4に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。制御基板83に設けられたCPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行い、接続されたサーボアンプとしての制御部84x、84y、84z、84a、84b、84cに回転数や位置の指示を送信する。
【0035】
I/O86iは、加工装置本体のエアブロー部87、集塵装置88、工具長センサ96に接続される。エアブロー部87は上述のように工具へエアを吹き付け、除去した切粉を集塵装置88で集める。工具長センサ96は、工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。
【0036】
各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータを駆動する。各モータの制御部84x、84y、84zには、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータの制御部84x、84y、84zの回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータの制御部84x、84y、84zの駆動により各ステージx、y、zが移動した量(位置)を検知する。
【0037】
制御部84cは、主軸11を回転させる不図示のモータを制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータを駆動する。
【0038】
このようにCPU85により加工装置100の各部を制御することにより、上述のように保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0039】
後述する各手段や工程は、CPU85がメモリ86m等の記憶手段にプログラムを展開して実行する。
【0040】
一般的に、加工装置では加工の結果ごとに紐づけられた数値をテーブルとして持っており、この数値をエラーコードと呼ぶ。エラーコードの数値と状態が紐付けられており、エラーコードを取得することで、どのような状態で加工が終了したかわかる。
【0041】
表1にエラーコードと状態の紐付け一覧をしめす。
【表1】
【0042】
エラーコードが0000の場合は、加工が正常に完了した状態となる。
【0043】
エラーコードが1000の場合は、NCファイルに記述されたNCコードが誤記などにより文法不良となり、解読不可能だった状態となる。
【0044】
エラーコードが2000の場合は、X軸のサーボアンプが異常信号を発したことを基板ファームウェアが検知した状態となる。サーボアンプが異常となる場合は複数ある。例えば、指示位置に対し実際の位置が追従せず位置ずれが起こる場合に、位置偏差として異常となる。また、重切削を行い加工負荷が大きい時に、モータへの指示トルクが大きくなり、オーバロード保護として異常となる。
【0045】
エラーコードが2001の場合は、X軸の前進端リミットセンサエラーとなる。
【0046】
リミットセンサエラーについて説明する。一般的に、ステージの移動範囲の端に近づくと、オーバラン防止のために、サーボアンプが強制的に移動を停止させる仕組みがある。ステージ端にセンサを設け、センサの信号をサーボアンプへ入力させ、センサが反応した場合はサーボアンプがステージをその場で保持しそれ以上の移動を禁止するものである。このセンサはリミットセンサと呼ばれ、このセンサによるエラー停止はリミットセンサエラーと呼ばれる。
【0047】
エラーコード3000、3001、3002については、Y軸に関するエラーであり、上記X軸と同様となる。
【0048】
エラーコード4000、4001、4002については、Z軸に関するエラーであり、上記X軸と同様となる。ただし、Z軸は上下に移動する軸のため、下降端と上昇端の2つの端点についてのリミット異常となる。
【0049】
エラーコード5000、5001、5002についてはA軸に関するエラーである。A軸は回転軸であり360度以上の回転が可能のため、リミットセンサを設けていない。
【0050】
エラーコード6000、6001、6002についてはB軸に関するエラーである。B軸は±30度までの回転が可能だが、スペースの都合上リミットセンサを設けていない。
【0051】
図5はZ軸駆動機構の斜視図である。Z軸駆動機構としての第1移動機構10について、説明する。本実施形態の第1移動機構10は、主軸11と保持装置41をZ軸方向(所定方向)に相対移動させる機構であり、本実施形態では、主軸11をZ軸方向に往復移動させる。
【0052】
歯科用ミリングマシンのZ方向の移動を受け持つ第1移動機構10において、Z軸の上昇側をZ軸上昇端リミットセンサ403と呼び、Z軸の下降側をZ軸下降端リミットセンサ402と呼んでいる。
図5に示すように、検知片401が通過可能なZ軸方向両側の位置に、検知片401の通過を検知するリミットセンサ402、403が設けられている。リミットセンサ402、403は、フォトインタラプタなどの光学センサである。
【0053】
図6はZ軸の駆動機構を機体内に収容した状態の斜視図である。収容部300は、加工装置100(
図1参照)の外装カバー101内に設けられている。収容部300には、主軸11の先端側や保持部41や工具マガジン70などが内部に配置され、工具による加工空間を形成する。外装カバー101の開閉ドア102(
図1参照)を開けた場合に、加工空間にアクセス可能な開口部301が形成されている。また第1移動機構10がX軸方向に移動可能にするための開口部302が上面側に形成されている。主軸11の移動に伴って移動するロールカーテン303が開口部302をふさぐように設けられている。開口部302から収容部への切粉の流入が起こりやすく、流入を防ぐためにロールカーテン303が設置されているが、ロールカーテン303と開口部302の間から切粉の漏れが発生する場合がある。その場合、機体内部に蔓延した切粉がZ軸上昇端リミットセンサ403やZ軸下降端リミットセンサ402に付着することでセンサの状態がアクティブになり、モータの駆動位置が移動範囲の端部へ到達したと誤検知し、異常だと判断することがある。
【0054】
図7は、Z軸の上昇端リミット(リミットセンサ403)がリミット異常を検出した場合に、リトライをするか否かについてのフローチャートである。
【0055】
ステップS1では、CPU85は、リトライカウンタに0を代入する。
【0056】
ステップS2では、CPU85は、加工動作を実行する。加工動作とは、NCファイルに記述された内容に従い、加工を実施することである。工具交換、工具長測定、主軸に装着された工具の回転、各軸の移動動作が含まれる。この加工動作により、所望の形状を得ることができる。
【0057】
ステップS3では、CPU85は、加工動作後に加工の結果を取得する。加工の結果とは、前述のエラーコードとなる。
【0058】
ステップS4では、CPU85は、加工の結果が正常かエラーかを判定している。判定方法は、エラーコードの数値がゼロ(正常)か否かというものとなる。正常の場合は、終了となる。エラーの場合はS5へ進む。
【0059】
ステップS5では、CPU85は、エラーコードがZ軸上昇端リミット異常かを判定している。判定方法は、エラーコードの数値が4002か否かというものとなる。Z軸上昇端リミット異常の場合は、S6へ進む。そうでない場合は、S10へ進む。
【0060】
ステップS10では、CPU85は、エラー処理を実施する。例えば、エラーコードの表示や、インジケータなど表示灯への色設定となる。このときエラーが発生しているので加工動作は、一時的に停止している。
【0061】
ステップS6では、CPU85は、リトライカウンタが1未満か否かを判定している。1未満の場合はS7へ進み、1以上の場合はS10へ進む。
【0062】
ステップS7では、CPU85は、リトライカウンタに1を加算してカウントする。リトライカウンタは加工開始時にS1で初期化されており、Z軸上昇端リミット異常が発生するとS7にて加算される。
【0063】
ステップS8では、CPU85は、エラーをリセットする。エラーのリセットは、加工を再開するために必要となる。エラーのリセットとは、制御的状態をエラー状態から正常状態へ戻し、各軸が動作可能な状態にすることである。
【0064】
ステップS9では、CPU85は、メモリ86mに記憶された後述する各種変数を基に、加工を再開するために、工具交換直後の状態を復元している。工具交換直後の状態を復元する理由は、その状態ならば実際には工具の刃先は被削材に切り込んでおらず、上空に退避しており、再開するポイントとして適切だからである。状態を復元するためには、工具交換を実施するたびに、加工動作に使っている各種変数の保存が必要となる。各種変数とは、例えば、NCファイルの実行ポイント変数、それまでに実行したNCコードの状態を管理する変数、各軸の座標位置などがある。これらの情報を基に工具交換が行われてからリミットエラーがでる前の状態を復元する。
【0065】
上述した実施例では、リミットセンサ403による異常をエラーコードにより判定したが、センサの出力をそのまま利用しても、他の方法を用いてもよい。Z軸上昇端リミットにおけるリトライ処理を説明したが、他の各軸についてエラーが発生した場合にもリトライ処理を行ってもよい。またリトライカウンタの予め定められた値として1としたが、複数回行ってもよく、予め定められた回数のみ加工のリトライ処理を行うことで、検知片がリミットセンサの受光部を遮光したことによるリミットエラーでリトライ処理が繰り返されないようにしている。
【符号の説明】
【0066】
11 主軸
12 加工具
40 支持機構
70 工具マガジン
85 CPU
86m メモリ
87 エアブロー部
96 工具長センサ
100 加工装置
300 収容部
402 403 リミットセンサ