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特開2023-26387二次元マップを使用した、血管内組織アブレーションの品質尺度の提示
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  • 特開-二次元マップを使用した、血管内組織アブレーションの品質尺度の提示 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026387
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】二次元マップを使用した、血管内組織アブレーションの品質尺度の提示
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127852
(22)【出願日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】17/400,432
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK62
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】二次元マップを使用して血管内の組織アブレーションの品質尺度を提示するための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】本方法は、アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から、複数の信号を受信することを含む。複数の信号に基づいて、アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度が生成される。1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示は、2次元(2D)極座標系でユーザに表示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
プロセッサであって、(i)アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から複数の信号を受信し、(ii)前記複数の信号に基づいて、前記アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成し、(iii)2次元(2D)極座標系において、前記1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を生成するように構成されている、プロセッサと、
前記グラフ提示をユーザに表示するように構成されている表示部と、を備える、システム。
【請求項2】
前記複数の電極の位置が、前記血管の長手方向軸線に沿って前記ユーザによって選択され、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記長手方向軸線に沿った前記内周の前記選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記半径が、前記血管の小孔からの前記複数の電極の前記選択された位置の距離を示す、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アブレーションが、前記内周に沿って損傷を生成し、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記損傷が生成された前記内周の区分で前記円の少なくとも前記一部分を生成するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記損傷が生成されていない前記内周の追加の区分を識別することに応答して、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記追加の区分の前記位置を示す前記円の開口部を生成するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記血管が、患者の心臓と肺との間で血液を伝達する肺静脈(PV)を含み、前記信号が、前記PVの組織の少なくとも一部分を通って、又はそれに沿って伝播する波動を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の品質尺度が、それぞれ、前記複数の信号の複数の振幅を含み、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、少なくとも、前記複数の信号のうちの少なくとも1つの前記振幅を示すベクトルを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記座標系が、原点を有し、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記内周上の、かつ前記血管の長手方向軸線に沿った前記電極のうちの1つの位置を示す、前記原点からある距離を置いたグラフィックオブジェクトを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から、複数の信号を受信することと、
前記複数の信号に基づいて、前記アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成することと、
2次元(2D)極座標系において、前記1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示をユーザに表示することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記複数の電極の位置が、前記血管の長手方向軸線に沿って前記ユーザによって選択され、前記グラフ提示を表示することが、前記長手方向軸線に沿った前記内周の前記選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を表示することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記半径が、前記血管の小孔からの前記複数の電極の前記選択された位置の距離を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アブレーションが、前記内周に沿って損傷を生成し、前記グラフ提示を表示することが、前記損傷が生成された前記内周の区分において、前記円の少なくとも前記一部分を表示することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記損傷が生成されていない前記内周の追加の区分を識別することに応答して、前記グラフ提示を表示することが、前記追加の区分の前記位置を示す、前記円における開口部を表示することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血管が、患者の心臓と肺との間で血液を伝達する肺静脈(PV)を含み、前記信号が、前記PVの組織の少なくとも一部分を通って、又はそれに沿って伝播する波動を示す、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の品質尺度が、それぞれ、前記複数の信号の複数の振幅を含み、前記グラフ提示を表示することが、少なくとも、前記複数の信号のうち少なくとも1つの前記振幅を示すベクトルを表示することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記座標系が、原点を有し、前記グラフ提示を表示することが、前記内周上の、かつ前記血管の長手方向軸線に沿った前記電極のうちの1つの位置を示す、前記原点からある距離を置いたグラフィックオブジェクトを表示することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療システムにおけるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)に関し、特に、二次元マップを使用して血管内の組織アブレーションの品質尺度を提示するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺静脈(PV)隔離術などの組織アブレーションを提示するための種々の技術が公開されている。
【0003】
例えば、国際公開第2021/001338号は、アブレーション処置を誘導するためのシステム、デバイス、及び方法を記載している。例えば、一実施形態では、アブレーションを誘導するためのシステムは、複数の電極を備える電気生理学(EP)カテーテルを通信するプロセッサ回路を含む。EPカテーテルは、アブレーション部位に配置される間、アブレーションバルーンの近くに位置付けられ、誘電特性に関連する電気信号を検出することによって心臓の腔内の血流を検出するために使用される。次に、バルーンとアブレーション部位との間の界面においていずれかの間隙が存在するかどうかを判定し得る。例えば、プロセッサ回路は、検出された血流に基づいて、バルーンが目的領域を閉塞するかどうかを判定し得る。次に、プロセッサは、バルーンが目的領域を閉塞するかどうかを表示部に示す視覚化を出力する。
【0004】
国際公開第2020/154543号は、グラフィカルユーザインターフェース上で表示するための治療アノテーションを生成するためのシステム、デバイス、及び方法を記載している。いくつかの実施形態では、治療アノテーションは、治療が解剖学的構造に送達される場合に、患者の解剖学的構造に対するカテーテルの先端区分の位置に対応し得る。治療アノテーションの1つ以上の特性は、カテーテルの先端区分の周囲及び/又は治療送達のその他の特徴部に分配されたセンサから受信された信号に少なくとも部分的に基づき得る。治療アノテーションでは、解剖学的構造の三次元表面表示、カテーテルの表示、及び/又は治療輪郭、最も近い治療部位からの距離並びに/若しくは最も最近の治療部位からの距離などのその他の視覚的表示、及び/又は2つの療法部位間の間隙の表示が単独で、又はそれらと組み合わされて、表示され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載された本発明の実施形態は、アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から複数の信号を受信することを含む方法を、提供する。複数の信号に基づいて、アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度が生成される。1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示は、2次元(2D)極座標系でユーザに表示される。
【0006】
いくつかの実施形態では、複数の電極の位置は、血管の長手方向軸線に沿ってユーザによって選択され、グラフ提示を表示することは、長手方向軸線に沿った内周の選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を表示することを含む。その他の実施形態では、半径は、血管の小孔からの複数の電極の選択された位置の距離を示す。更にその他の実施形態では、アブレーションは、内周に沿って損傷を生成し、グラフ提示を表示することは、損傷が生成された内周の区分において、円の少なくとも一部分を表示することを含む。
【0007】
一実施形態では、損傷が生成されていない内周の追加の区分を識別することに応答して、グラフ提示を表示することは、追加の区分の位置を示す、円における開口部を表示することを含む。別の実施形態では、血管は、患者の心臓と肺との間で血液を伝達する肺静脈(PV)を含み、信号は、PVの組織の少なくとも一部分を通って、又はそれに沿って伝播する波動を示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ以上の品質尺度は、それぞれ複数の信号の複数の振幅を含み、グラフ提示を表示することは、少なくとも、複数の信号のうち少なくとも1つの振幅を示すベクトルを表示することを含む。その他の実施形態では、座標系は、原点を有し、グラフ提示を表示することは、原点からある距離を置いたグラフィックオブジェクトを表示することを含むが、これは、内周上の、かつ血管の長手方向軸線に沿った電極のうちの1つの位置を示す。
【0009】
また、本発明の一実施形態によれば、プロセッサと表示部とを含むシステムが更に提供される。プロセッサは、(i)アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から複数の信号を受信し、(ii)複数の信号に基づいて、アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成し、(iii)2次元(2D)極座標系において、1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を生成するように構成されている。表示部は、ユーザにグラフ提示を表示するように構成されている。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテル系の追跡及びアブレーションシステムの概略描画図である。
図2A】本発明の実施形態による、アブレーションされた肺静脈(PV)のグラフ提示上に提示される品質尺度の概略描画図である。
図2B】本発明の実施形態による、アブレーションされた肺静脈(PV)のグラフ提示上に提示される品質尺度の概略描画図である。
図2C】本発明の実施形態による、アブレーションされた肺静脈(PV)のグラフ提示上に提示される品質尺度の概略描画図である。
図2D】本発明の実施形態による、アブレーションされた肺静脈(PV)のグラフ提示上に提示される品質尺度の概略描画図である。
図3】本発明の一実施形態による、アブレーションされたPVの1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を表示するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
アブレーション処置は、典型的には、例えば、器官を横切る電気生理学的(EP)波動の伝播を遮断するために、患者の器官の組織内の所定の位置に損傷を生成することを目的とする。組織をアブレーションした後、損傷が連続的であり、所望の寸法を有し、EP波動を遮断することを検証することが重要である。
【0013】
肺静脈(PV)又は患者の心臓に接続された別の血管などの管状組織をアブレーションする場合、損傷特性及び有効性の検証は困難である。具体的には、PV隔離処置は、患者の心臓における心房細動などの不整脈を防止又は最小化するように、PVの内周に沿って環形状を有する連続的な損傷を生成することを意図している。したがって、PV隔離における損傷特性及び有効性の検証は、患者の安全性にとって非常に重要である。
【0014】
以下に記載される本発明の実施形態は、PVなどの血管内の組織アブレーションの品質尺度を2次元(2D)マップにわたって提示するための、改善された技術を提供する。品質尺度は、損傷の寸法、形状、及び連続性、並びにPVの壁に沿ったEP波動の伝播を遮断する損傷の能力を示す。
【0015】
いくつかの実施形態では、組織アブレーションを実行するためのシステムは、1つ以上の拡張可能な遠位端部アセンブリ(DEA)を有するカテーテルを備える。本実施例では、カテーテルは、(i)バルーンの外表面上に配置されたアブレーション電極を有し、かつ対象とする組織と接触して配置される場合に損傷を形成するように構成された、膨張可能なバルーンDEAと、(ii)ラッソ形状のアセンブリの拡張可能なアームに沿って配置された検知電極を有し、PV組織と接触して配置された場合に、PVの壁を通って及び/又はその壁に沿って伝播されるEP波動を表示するEP信号を検知するように構成されている、ラッソ形状のDEAと、を備える。本実施例では、意図された損傷は、環又は円形の形状を有するが、閉鎖ループの任意のその他の形状を有してもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサと表示部とを備える。プロセッサは、(i)アブレーションされたPVの内周に沿って配置されたラッソ形状のDEAの複数のそれぞれの検知電極から複数の信号を受信し、(ii)複数の信号に基づいて、アブレーションされたPVの1つ以上の品質尺度を生成し、(iii)2次元(2D)極座標系において、1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を生成するように、構成されている。いくつかの実施形態では、表示部は、システムのユーザ(例えば、医師)にグラフ提示を表示するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、検知電極の位置は、PVの長手方向軸線に沿ってユーザによって選択され、プロセッサは、PVの長手方向軸線に沿った内周の選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分においてグラフ提示を生成するように、構成されている。更に、半径は、PVの小孔から検知電極の選択された位置の距離を示す。
【0018】
いくつかの実施形態では、損傷が形成されていない内周の区分を識別することに応答して、プロセッサは、グラフ提示において、前述の区分の位置を示す円内の開口部を生成するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、品質尺度は、とりわけ、検知信号の振幅を含んでもよく、プロセッサは、検知電極のうちの1つ以上のそれぞれの位置における信号の振幅を示すベクトルをグラフ提示に生成するように構成されている。
【0020】
開示された技術は、管状器官で実行されるアブレーション処置部に形成された損傷の質を改善する。損傷の幾何学的特徴及び品質尺度のグラフ提示を改善することにより、開示された技術は、成功したアブレーション処置を得ることと、アブレーション検証を必要とする時間を短縮することと、を支援する。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテル系の追跡及びアブレーションシステム20の概略描画図である。
【0022】
いくつかの実施形態では、システム20は、本実施例では心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に記載された実施形態では、カテーテル22は、以下に詳細に記載されるように、電気生理学的(EP)信号を検知し、心臓26の組織の電気解剖学的(EA)マッピングを実行し、心臓26の対象とする組織をアブレーションするためだがこれらに限定されないなどの、任意の好適な治療及び/又は診断目的のために使用されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、コンソール24は、カテーテル22を介して信号を受信し、かつ本明細書に記載されたシステム20のその他の構成要素を制御する、好適なフロントエンド回路及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ34を備える。コンソール24は、プロセッサ34から心臓26のマップ27及びその他のグラフ提示を受信して、マップ27及びグラフ提示を表示するように構成されているユーザ表示部35を更に備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、マップ27は、任意の好適な技術を使用して生成された、任意の好適な種類の2次元(2D)解剖学的マップ又は3次元(3D)解剖学的マップを含んでもよい。例えば、解剖学的マップは、好適な医療用撮像システムを使用することによって生成された解剖学的画像を使用して、又はBiosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムで利用可能な高速解剖学的マッピング(fast anatomical mapping、FAM)技術を使用して、又は任意のその他の好適な技術を使用して、又は上記の任意の好適な組み合わせを使用して、生成されてもよい。
【0025】
ここで、挿入図23を参照する。いくつかの実施形態では、アブレーション処置を実行する前に、医師30は、心臓26の対象とする組織のEAマッピングを実行するために、テーブル29に横たわる患者28の脈管構造系を通してカテーテル22を挿入する。
【0026】
いくつかの実施形態では、組織アブレーションを実行した後、医師30は、アブレーションされた組織のEAマップを生成するために、カテーテル22の1つ以上の電極55(以下に詳細に記載)を、対象とする組織と接触させるように位置付ける。その後、医師30は、アブレーション衝撃及びアブレーションされた組織の状態を評価するために、生成されたEAマップを使用する。これらの実施形態は、以下の図2及び図3に詳細に記載されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は、バルーン70と、本明細書ではラッソ44と称されるラッソ形状のアセンブリと、を有する、遠位端部アセンブリを備える。本実施例では、バルーン70は、1つ以上のアブレーションパルスを組織に印加するように構成されているアブレーション電極(図示せず)を有し、バルーン70に遠位に取り付けられたラッソ44は、複数の検知電極55を有する。本開示との関連において、かつ特許請求の範囲において、ラッソ44の電極55と称される用語「電極」及び「検知電極」は、互換的に使用される。非検知電極は、本明細書では、以下に詳細に記載されるように、バルーン70に連結された「アブレーション電極」と称される。
【0028】
いくつかの実施形態では、心臓26の組織におけるEP信号、例えば心電図(ECG)信号の検知に応答して、各検知電極55は、検知されたEP信号を示す1つ以上の信号を生成するように構成されている。挿入図23に示される実施例では、医師30は、患者28の心臓26と肺(図示せず)との間で血液を伝達する肺静脈(PV)51内へと遠位端部アセンブリを挿入する。アブレーション処置は、典型的には、(i)ラッソ44を使用した第1のEAマッピングと、(ii)バルーン70の電極を使用した組織アブレーションと、(iii)ラッソ44を使用した第2のEAマッピングとの、少なくとも3つの工程を必要とする。ラッソ44及びバルーンの両方は拡張可能であり、それらの電極のうちの1つ以上をPV51の組織と接触させるように構成されている。本工程は、以下でより詳細に記載される。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1のEAマッピングに基づいて、医師30は、組織アブレーションを実行することを意図した1つ以上の位置を決定する。組織をアブレーションした後、医師30は、患者の心臓26の不整脈を治療するための所望の結果がアブレーションにより得られたかどうかをチェックするための、第2のEAマッピングを実行する。
【0030】
ここで、PV51、及びPV51の長手方向軸線59に沿って挿入されたラッソ44の側面図を示す、挿入図57を参照する。PV51の組織をアブレーションするように構成されており、かつラッソ44へと近位方向でカテーテル22に連結されたバルーン70は、挿入図57には示されていないことに留意されたい。
【0031】
いくつかの実施形態では、アブレーション処置中、医師30は、上記の検知及び組織アブレーション作用を実行するように、PV51の小孔54を通してラッソ44を挿入する。医師30は、ラッソ44を長手方向軸線59に沿って移動させ、所望の位置を得た場合に、ラッソ44の1つ以上の電極55をPV51の内周62の表面と接触させて配置するように、医師30は、ラッソ44を拡張するためのマニピュレータ32を使用する。
【0032】
ここで、ラッソ44の平面図である挿入図50を参照する。いくつかの実施形態では、ラッソ44は、(i)マニピュレータ32によって制御され、(a)PV51の内周62の表面に適合するように拡張し、(b)患者28の心臓26及び血管構造内でラッソ44を移動させるように萎む、可撓性アーム52と、(ii)アーム52に連結され、(本発明の実施例において)EP信号を検知する及び/又はPV51の内周62の表面をアブレーションするように構成された複数の電極55と、を備える。電極55は、EP信号を検知するように構成され、バルーン70の電極(図示せず)は、PV51の内周62の組織にアブレーションパルスを印加するように構成されていることに留意されたい。
【0033】
ここで、再び挿入図23を参照する。いくつかの実施形態では、医師30は、シース25を通してカテーテル22を挿入し、カテーテル22を操作するための、並びにPV51の小孔54に極めて接近させてラッソ44及びシース25の遠位端部を位置付けるための、マニピュレータ32を使用する。その後、医師30は、バルーン70及びラッソ44をPV51内の所望の位置へと露出及び移動させるために、マニピュレータ32を使用してシース25を後退させる。第1のEAマッピングの間、医師30は、アーム52を拡張するためのマニピュレータ32を適用し、これによって、電極55の少なくともいくつかは、PV51の内周62の表面と接触して配置される。PV51内のバルーン70及びラッソ44の位置付けは、以下で詳細に記載される位置追跡システムを使用して実行されることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、PV51の所望の位置(複数可)でラッソ44を位置決め及び拡張させた後、医師30は、組織アブレーションを実行する前に第1のEAマッピングを実行する。第1のEAマッピングに基づいて、プロセッサ34は、表示部35上に第1のEAマップを生成及び表示してもよく、第1のEAマップに基づいて、医師30は、PV51の内周62に沿ってアブレーション部位(複数可)を画定してもよいことに留意されたい。本実施例では、アブレーション処置は、上記の第1のEAマッピングに基づいて、医師30によって画定された標的位置で、PV51の内周62の組織がバルーン70の電極によってアブレーションされるPV隔離処置を含む。PV隔離は、PV51の内周62の組織を通った及び/又は組織に沿ったEP波動の伝播を、防止又は(閾値未満のレベルへと)最小化するために、組織に損傷を形成することを意図している。
【0035】
換言すれば、用語「PV隔離」とは、PV51の壁を通って及び/又は壁に沿って伝播するEP波動の遮断を意味する。
【0036】
いくつかの実施形態では、組織をアブレーションした後に実行される第2のEAマッピングでは、医師30は、ラッソ44を長手方向軸線59に沿って移動させ、医師が、アブレーション部位で、また同様に、典型的にはPV51に沿った追加の位置でEP信号を検知するためにラッソ44を拡張する、1つ以上の位置を選択する。本実施例では、アブレーションパルスは、小孔54に極めて接近して位置する又は直接に位置する内周62の組織に適用され、第2のEAマッピングは、長手方向軸線59に沿って、小孔54とPV51への約2cmとの間の、複数の位置において、実行される。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のEAマッピングを実行する場合に、医師30は、アブレーションされたPV51の1つ以上の品質尺度をチェックする。1つの代表的な品質尺度は、それぞれの電極55によって検知されたEP信号(例えば、電圧)の振幅を含んでもよい。検知されたEP信号は、PV51のアブレーションされた部位におけるEP波動の伝播又は遮断のいずれかを示す。換言すれば、第2のEAマッピングは、アブレーションがPV51の所望の電気的絶縁を得たかどうかをチェックし、これによって、測定された振幅は、非常に低い値(例えば、ゼロ~約10ミクロボルト)を有してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、アブレーションが所望のレベルのPV隔離を得た場合に、医師30は、ラッソ44をPV51から後退させ、ラッソ44をシース25内へと挿入して、カテーテル22を患者28の身体から引き出すことによって、アブレーション処置を終了する。検知されたEP電圧の振幅が、内周62に沿った1つ以上の位置における所定の閾値よりも大きい場合、医師30は、検知されたEP電圧の振幅によって又は任意のその他の好適な測定されたパラメータによって測定される所望のレベルのPV隔離を得るために、追加のアブレーションセッションを実施する必要があり得る。バルーン70を使用して組織アブレーションを実施した後、医師30は、典型的には、所望のレベルのPV隔離が得られたことを確認するために、第2のEAマッピングを繰り返す。
【0039】
ここで、再び図1の全体図を参照する。いくつかの実施形態では、カテーテル22の近位端部は、とりわけ、インターフェース回路(図示せず)に接続され、これによって、EPの検知された信号をコンソール24のメモリ38へと伝送及び記憶し、これによって、プロセッサ34は、EAマッピングを実行するために記憶されたEP信号を使用し得る。いくつかの実施形態では、検知されたEP信号に基づいて、プロセッサ34は、2Dマップ又は3Dマップを医師30に(例えば、表示部35上に)提示するように構成されている。更に、プロセッサ34は、2Dマップ又は3Dマップ上に、上記の1つ以上の品質尺度のグラフ表示を提示するように構成されている。
【0040】
本開示及び特許請求の範囲の文脈において、任意の数値又は数値の範囲に関する用語「約」又は「およそ」とは、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書に記載されたその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0041】
その他の実施形態では、カテーテル22は、前述のPV隔離を実行するために、内周62に沿った1つ以上の所望の位置(複数可)において組織をアブレーションするための、バルーン70以外の装置を有してもよい。追加的又は代替的に、医師30は、PV51の組織アブレーションのために、別個のカテーテルを使用してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、心臓の腔内の、及びPV51に沿った遠位端部アセンブリの位置は、任意の好適な位置において遠位端部アセンブリに連結され得る磁気位置追跡システムの位置センサ39を使用して、測定される。本実施例では、コンソール24は、駆動回路41を備えるが、これは、テーブル29に横たわった患者28の外部の周知の位置、例えば、患者の胴体の下に配置された磁場発生器36を駆動するように構成されている。上記のように、位置センサ39は、遠位端部に連結され、場発生器36からの検知された外部磁場に応答して位置信号を生成するように構成されている。位置信号は、位置追跡システムの座標系におけるカテーテル22の遠位端部の位置を示す。
【0043】
本位置検知方法は、種々の医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0044】
いくつかの実施形態では、位置追跡システムの座標系は、システム20の座標系及びマップ27と正しく合わされており、これによって、プロセッサ34は、解剖学的マップ又はEAマップ(例えば、マップ27)にわたって、ラッソ44及び/又は遠位端部アセンブリのバルーン70の位置を表示するように、構成されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は好適なコンピュータに組み立てられ、典型的には、汎用プロセッサを含むが、これは、本明細書で記載された機能を実行するようにソフトウェアにおいてプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードされてもよい、あるいは代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的実体的媒体に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0046】
システム20のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、またこのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を実証するために、実施例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の代表的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載された原理は、その他の種類の医療システムにも同様に適用されてよい。
【0047】
その他の実施形態では、システム20は、ラッソ44及び/又はバルーン70の代わりに、又はそれらに加えて、PV51において、又は任意のその他の種類の血管内で、又は任意のその他の器官あるいは管状形状若しくは任意のその他の形状を有する器官の区分において、上記の検知及びアブレーションを実行するように構成されている、任意のその他の好適な種類の1つ以上のカテーテルを有してもよい。
【0048】
アブレーションされたPV組織の1つ以上の品質尺度を2Dマップ上に提示する
図2Aは、本発明の一実施形態による、PV51の2Dマップ61の概略描画図である。
【0049】
いくつかの実施形態では、マップ61は、PV51の長手方向軸線59を示す原点58を有する極座標系を含む。このような実施形態では、小孔54は円53で表され、円56は、上記の図1に記載されるように、長手方向軸線59に沿ってPV51へと約2cmに位置する第2の位置を表す。
【0050】
その他の実施形態では、円53及び56のうちの少なくとも1つは、円形の形状の代わりに、楕円又は任意のその他の好適な形状の形状を有してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、PV51の内周62の組織は、円53と56との間に画定された灰色のドーナツ形状の要素によって表される。極座標系は、マップ61内のPV51の3D形状の2D提示を可能にし、原点58からの距離は、PV51の長手方向軸線59に沿って、本明細書に記載された任意の要素の位置を示すことに留意されたい。
【0052】
本実施例では、マップ61は、心臓26の腔(例えば、左心房)からPV51への視野を表し、これによって、円53(小孔54を表す)は、長手方向軸線59に沿ってPV51へと約2cmに位置付けられた円56よりも大きく見える。
【0053】
図2Bは、本発明の一実施形態による、PV51の2Dマップ71上に表示されたPV隔離状態の概略描画図である。
【0054】
いくつかの実施形態では、マップ71は、上記の図2Aのマップ61に基づくものであり、ラッソ44の電極55から受信されたEP信号に基づいて、PV51の隔離レベルを示す円77を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、電極55の位置は、PV51の長手方向軸線59に沿って、医師30(又はシステム20の任意のその他のユーザ)によって選択される。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、PV51の長手方向軸線59に沿って内周62上の電極55の選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を表示するように、構成されている。
【0056】
図2Bの実施例では、アブレーション後の第2のEAマッピング(上記の図1に詳細に記載されている)は、小孔54から約1.8cmの(長手方向軸線59に沿った)距離で実行され、したがって、円56に極めて接近して、例えば円56から約0.2cmの距離で出現する。
【0057】
いくつかの実施形態では、組織アブレーションは、内周62に沿って損傷を生成し、プロセッサ34は、アブレーション中に形成された損傷に関連する品質尺度を示す円77を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、円77の連続性は、PV51の組織を通って及び/又は組織に沿って伝播するEP波動の伝播を遮断する、損傷能力を示す。
【0058】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、損傷が生成された選択された内周62の区分において、円の少なくとも一部分を提示するように構成されている。本実施例では、損傷は、EP波動を完全に又は十分に遮断し、これによって、円77は完全で連続的である(実線で示される)。
【0059】
マップ71の2D提示は、(i)第2のEAマッピングが実行された位置の即時視覚化、及び(ii)損傷が連続的であり、かつPV51の組織を通って及び/又は組織に沿ってEP波動の伝播を遮断するかどうかの即時視覚化によって、医師30に提供されることに留意されたい。換言すれば、円77の半径及び形状は、検知電極55の位置及びPV51の隔離レベルの指標を医師30に提供する。
【0060】
図2Cは、本発明の一実施形態による、PV51の2Dマップ81上に表示されたPV隔離状態の概略描画図である。
【0061】
いくつかの実施形態では、マップ81は、上記の図2Aのマップ61に基づくものであり、検知電極55の位置及びPV51の隔離レベルを示す円66を含む。更に、円66は、ラッソ44の電極55から受信されたEP信号に基づく。
【0062】
いくつかの実施形態では、(原点58からの)円66の半径は、円53と56の寸法との間の寸法を有する。本提示は、ラッソ44の電極55が、小孔51から約1cmの距離で長手方向軸線62に沿って位置付けられていることを示す。
【0063】
いくつかの実施形態では、損傷が生成されていない内周62の所与の区分を識別することに応答して、プロセッサ34は、グラフ提示において、所与の区分の位置を示す円の開口部を生成するように構成されている。図2Cの実施例では、円66は、不完全な又は損傷のない構成を示す開口部67を有する。したがって、開口部67は、PV51の組織を通った及び/又は組織に沿ったEP波動の伝播、あるいは内周62の表面にわたったEP波動の伝播の、不十分な遮断を示す。
【0064】
いくつかの実施形態では、開口部67の位置に基づいて、医師30は、(i)PV51の内周62上の表面上の1つ以上の好適な位置(複数可)においてアブレーションを実行し、続いて、(ii)図1に記載されたEAマッピングを「第2の」EAマッピングとして再実行することを、決定してもよい。医師30は、プロセッサ34が完全かつ連続した形状の円66を表示するまで、これを1つ以上の反復に適用してもよい。
【0065】
第1の実施形態では、医師30は、1つ以上のアブレーションパルス(複数可)を、PV51の内周62の組織と接触して配置されたバルーン70の選択された電極に適用することによって、PV隔離処置を繰り返すことを決定してもよい。第2の実施形態では、医師30は、1つ以上のアブレーションパルス(複数可)を、所望の損傷及び「閉鎖」開口部67を形成し得る位置(複数可)において組織と接触する、バルーン70の1つ以上の選択された電極にのみ適用することによって、PV隔離処置を繰り返してもよい。第3の実施形態では、医師30は、焦点アブレーションカテーテル(図示せず)をナビゲートし、完全な損傷及び「閉鎖」開口部67を形成する1つ以上の好適な位置にアブレーションパルス(複数可)を適用してもよい。本開示の文脈において、用語「閉鎖開口部67」とは、PV51の必要な隔離レベルを得るために、PV51の選択された周縁での完全な損傷の形成を意味する。図2Cの実施例では、PV隔離を得た後、プロセッサ34は、例えば、上記の図2Bの円77に示されるように、開口部67が実線によって閉鎖された完全な円を表示するように構成されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、EAマッピング処置中に各電極55によって測定された、EP信号の振幅の電圧レベルを示す閾値を保持してもよい。電圧が閾値よりも低い場合、円66は、実線のままであり、連続している。同様に、それぞれの1つ以上の電極(複数可)55によって測定された電圧が閾値よりも高い場合、プロセッサ34は、開口部67などの開口部を円66の1つ以上の対応する区分において提示してもよい。
【0067】
図2Dは、本発明の別の実施形態による、PV51の2Dマップ91上に表示されたPV隔離状態の概略描画図である。
【0068】
いくつかの実施形態では、マップ91は、上記の図2Aのマップ61に基づくものであり、円99及び点61を含むが、これらは、それぞれ、PV51の内周62の表面上のアーム52及び検知電極55の位置を示す。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、マップ91のグラフ提示において、少なくとも、複数のEP信号のうちの少なくとも1つの振幅を示すベクトルを生成するように構成されている。本実施例では、プロセッサ34は、矢印88としてベクトルを生成し、提示する。
【0070】
いくつかの実施形態では、マップ91は、点61に原点が位置付けられ、それらの寸法が、それぞれの電極55から受信されたEP信号の振幅電圧を示す1つ以上の矢印88を含む。換言すれば、矢印88は、それぞれの電極55の各位置におけるPV51の隔離レベルを表す。図4Dの実施例では、矢印88の方向は、PV51の組織内を伝搬するEP波動(複数可)の方向を表し得るか、又は表し得ず、これによって、各矢印88の長さは、それぞれの電極55によって検知されたEP信号の電圧レベルを示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、矢印88a、88b、及び88cは、それぞれ点61a、61b、及び61cによって表される位置の3つの電極55によって検知された電圧の振幅を示す。このような実施形態では、医師30は、点61b及び61cにおける電圧振幅が十分に小さい(すなわち、上記の図2Cに記載された所定の閾値よりも低い)ことを理解し得るが、これは、例えば、これらの位置に極めて接近している、所望の損傷の形成を示す。しかしながら、矢印88aは、所定の長さ閾値よりも大きい寸法(例えば、長さ)を有するように見えるが、これは、測定された電圧の振幅が所定の電圧閾値よりも高いことを示す。換言すれば、矢印88aの寸法は、損傷が点61aに極めて接近して形成されていないか、又は形成された損傷がPV51を隔離するのに不十分であることを示す。
【0072】
いくつかの実施形態では、図2C及び図2Dのマップ81及び91は、それぞれ、EAマッピング中に受信された同じEP信号に基づいて、プロセッサ34によって生成されてもよい。図2Cは、それぞれ、良好な又は不十分な隔離を表す、各区分、例えば、実線又は開口部の2元提示を示す。しかしながら、図2Dは、各電極55によって測定された電圧の大きさの指標を示しており、これによって、第2のアブレーションパルスを印加する際に、医師30は、PV51の隔離を得るために、また依然として、既に必要な損傷を有する部位におけるオーバーアブレーションを防止するために、システム20を使用して、バルーン70の異なるそれぞれのアブレーション電極に異なるアブレーションパルスを適用してもよい。
【0073】
その他の実施形態では、プロセッサ34は、前述のベクトル、例えば、矢印88のうちのいくつかのみを提示してもよい。例えば、プロセッサ34は、矢印88aのみを提示してもよく、その長さは閾値を超え、またマップ91からの余分な情報を低減するために、その他の矢印88が存在しなくてもよい。
【0074】
図2A図2B図2C、及び図2Dのマップ61、71、81、及び91は、それぞれ実施例として提供され、上記の実施形態に限定されるものではない。その他の実施形態では、プロセッサ34は、アブレーションされたPVの1つ以上のその他の品質尺度、又は患者28の任意のその他の血管若しくは別の器官を示すその他の好適な特徴を有する、任意のその他の好適なマップを生成するように、構成されている。
【0075】
その他の実施形態では、円66及び77の実線の代わりに、プロセッサ34は、EP波動の部分的な遮断を提示するように、これらの円の1つ以上の区分で破線を生成してもよい。更に、プロセッサ34は、単一のマップに複数の尺度を提示するように、グラフ要素を重ね合わせてもよい。例えば、プロセッサ34は、PV51の単一のマップ上に円66及び77を提示してもよく、アブレーションされたPVの1つ以上の品質尺度を示す幾何学的形状(例えば、三角形及び/又は長方形)を重ね合わせてもよい。更に、プロセッサ34は、円53及び56の順序及び寸法を逆転させてもよい。
【0076】
図3は、本発明の一実施形態による、アブレーションされたPV51の1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を表示するための方法を概略的に示す、フローチャートである。
【0077】
本方法は、上記の図1、及び図2B図2Dに記載されているように、アブレーションされた血管(例えば、PV51)の内周62に沿って配置された複数のそれぞれの電極55からの複数の信号を受信するプロセッサ34によって、信号受信工程100において開始する。
【0078】
品質尺度の生成工程102では、プロセッサ34は、上記の図1、及び図2B図2Dに詳細に記載されているように、複数の信号に基づいて、アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成する。
【0079】
本方法を結論付ける表示工程104では、プロセッサ34は、例えば、表示部35上に、それぞれ、図2B図2C、及び図2Dで上述したマップ71、81及び91などの2D極座標系において、品質尺度(例えば、PV51の組織と接触している電極55によって検知された電圧の振幅)を示すグラフ提示を医師30に表示する。
【0080】
本明細書に記載された実施形態は、主として、PVの組織アブレーションによって実行される肺静脈(PV)隔離処置を扱うものであるが、本明細書に記載された方法及びシステムはまた、その他の用途においても使用され得る。
【0081】
したがって、上記実施形態は、実施例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載された種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形形態及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0082】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から、複数の信号を受信することと、
前記複数の信号に基づいて、前記アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成することと、
2次元(2D)極座標系において、前記1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示をユーザに表示することと、を含む、方法。
(2) 前記複数の電極の位置が、前記血管の長手方向軸線に沿って前記ユーザによって選択され、前記グラフ提示を表示することが、前記長手方向軸線に沿った前記内周の前記選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記半径が、前記血管の小孔からの前記複数の電極の前記選択された位置の距離を示す、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記アブレーションが、前記内周に沿って損傷を生成し、前記グラフ提示を表示することが、前記損傷が生成された前記内周の区分において、前記円の少なくとも前記一部分を表示することを含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記損傷が生成されていない前記内周の追加の区分を識別することに応答して、前記グラフ提示を表示することが、前記追加の区分の前記位置を示す、前記円における開口部を表示することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0083】
(6) 前記血管が、患者の心臓と肺との間で血液を伝達する肺静脈(PV)を含み、前記信号が、前記PVの組織の少なくとも一部分を通って、又はそれに沿って伝播する波動を示す、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記1つ以上の品質尺度が、それぞれ、前記複数の信号の複数の振幅を含み、前記グラフ提示を表示することが、少なくとも、前記複数の信号のうち少なくとも1つの前記振幅を示すベクトルを表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記座標系が、原点を有し、前記グラフ提示を表示することが、前記内周上の、かつ前記血管の長手方向軸線に沿った前記電極のうちの1つの位置を示す、前記原点からある距離を置いたグラフィックオブジェクトを表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) システムであって、
プロセッサであって、(i)アブレーションされた血管の内周に沿って配置された複数のそれぞれの電極から複数の信号を受信し、(ii)前記複数の信号に基づいて、前記アブレーションされた血管の1つ以上の品質尺度を生成し、(iii)2次元(2D)極座標系において、前記1つ以上の品質尺度を示すグラフ提示を生成するように構成されている、プロセッサと、
前記グラフ提示をユーザに表示するように構成されている表示部と、を備える、システム。
(10) 前記複数の電極の位置が、前記血管の長手方向軸線に沿って前記ユーザによって選択され、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記長手方向軸線に沿った前記内周の前記選択された位置を示す半径を有する円の少なくとも一部分を生成するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0084】
(11) 前記半径が、前記血管の小孔からの前記複数の電極の前記選択された位置の距離を示す、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記アブレーションが、前記内周に沿って損傷を生成し、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記損傷が生成された前記内周の区分で前記円の少なくとも前記一部分を生成するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記損傷が生成されていない前記内周の追加の区分を識別することに応答して、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記追加の区分の前記位置を示す前記円の開口部を生成するように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記血管が、患者の心臓と肺との間で血液を伝達する肺静脈(PV)を含み、前記信号が、前記PVの組織の少なくとも一部分を通って、又はそれに沿って伝播する波動を示す、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記1つ以上の品質尺度が、それぞれ、前記複数の信号の複数の振幅を含み、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、少なくとも、前記複数の信号のうちの少なくとも1つの前記振幅を示すベクトルを生成するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0085】
(16) 前記座標系が、原点を有し、前記プロセッサが、前記グラフ提示において、前記内周上の、かつ前記血管の長手方向軸線に沿った前記電極のうちの1つの位置を示す、前記原点からある距離を置いたグラフィックオブジェクトを生成するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
【外国語明細書】