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特開2023-26388電気生理学的手順において提示される電気解剖学的マッピング及び注釈
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026388
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】電気生理学的手順において提示される電気解剖学的マッピング及び注釈
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/287 20210101AFI20230216BHJP
   A61B 5/339 20210101ALI20230216BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B5/339
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127864
(22)【出願日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】17/400,402
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127HH06
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】カテーテルを提供すること。
【解決手段】カテーテルは、(a)患者の心臓に挿入するためのシャフトと、(b)シャフトに結合され、心臓の組織と接触するように構成されている、拡張可能な遠位端アセンブリと、(c)拡張可能な遠位端アセンブリの外面に結合され、組織と接触して配置されたときに、組織内の心電図(ECG)信号を検知するように構成されている、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、(d)遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、遠位端アセンブリの拡張位置において、(i)組織と物理的に接触せず、(ii)第1のECG電極から第1の距離に、且つ第2のECG電極から第2の距離に配置され、第1の距離と第2の距離との間の差が、所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
患者の心臓に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトに結合され、前記心臓の組織と接触するように構成されている、拡張可能な遠位端アセンブリと、
前記拡張可能な遠位端アセンブリの外面に結合され、前記組織と接触して配置されたときに、前記組織内の心電図(ECG)信号を検知するように構成されている、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、
前記遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、前記遠位端アセンブリの拡張位置において、(i)前記組織と物理的に接触せず、(ii)前記第1のECG電極から第1の距離に、且つ前記第2のECG電極から第2の距離に配置され、前記第1の距離と前記第2の距離との間の差が、所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記拡張可能な遠位端アセンブリが、少なくとも第1及び第2のスプラインを備え、前記第1のECG電極及び前記第2のECG電極が、それぞれ、前記第1及び第2のスプラインに結合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記拡張位置において、前記基準電極が、前記組織から少なくとも9mmに配置されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記拡張位置において、前記所定の閾値が1mmよりも小さい、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記ECG信号のうちの少なくとも1つが、前記基準電極に対して前記組織内で検知される単極ECG信号を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記組織上の1つ以上の位置において検知された前記ECG信号に基づいて、前記組織内を伝播する電気生理学的波を示す1つ以上のそれぞれの局所興奮伝達時間(LAT)を計算するように構成されたプロセッサを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記計算されたLATに基づいて、前記プロセッサが、少なくとも前記心臓のリズムにおけるタイミングエラーを示す注釈をユーザに表示するように構成されている、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記ECG信号のうちの少なくとも1つのグラフにわたって少なくとも前記注釈を表示するように構成されている、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記プロセッサが、棒グラフに少なくとも前記注釈を表示するように構成されている、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記棒グラフに、少なくとも前記タイミングエラーの第1のタイプを示す第1の注釈、及び前記第1のタイプとは異なる前記タイミングエラーの第2のタイプを示す第2の異なる注釈を表示するように構成されている、請求項9に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療装置に関し、特に、患者心臓における単極信号の検知を改善し、ユーザに提示される注釈の正確さを改善するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学的信号を分析及び注釈付けするための様々な技術が公開されている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2020/0367751号は、心臓内又は心臓上の回転電気生理学的活動の点及び/又は領域を検出するための装置を記載している。装置は、心臓内又は心臓上の複数の空間的位置に対応する時空間電気生理学的データを受信するための入力と、空間的位置における複数の電位波形の所定の特徴の発生時間を示す時間値を提供するための時間特徴抽出器と、隣接する空間的位置の対を提供するためのマッピングユニットと、有向エッジを含む有向グラフを生成するための有向グラフ生成器と、トポロジカル特徴分析器とを備える。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0303414号は、組織の正確な処置、マッピング、及び/又は試験を行うためのシステム、装置、及び方法を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、カテーテルであって、(a)患者の心臓に挿入するためのシャフトと、(b)シャフトに結合され、心臓の組織と接触するように構成されている、拡張可能な遠位端アセンブリと、(c)拡張可能な遠位端アセンブリの外面に結合され、組織と接触して配置されたときに、組織内の心電図(ECG)信号を検知するように構成されている、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、(d)遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、遠位端アセンブリの拡張位置において、(i)組織と物理的に接触せず、(ii)第1のECG電極から第1の距離に、且つ第2のECG電極から第2の距離に配置され、第1の距離と第2の距離との間の差が、所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を含む、カテーテルを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、拡張可能な遠位端アセンブリは、少なくとも第1及び第2のスプラインを含み、第1のECG電極及び第2のECG電極は、それぞれ、第1及び第2のスプラインに結合されている。他の実施形態では、拡張位置において、基準電極は、組織から少なくとも9mmに配置されている。更に他の実施形態では、拡張位置において、所定の閾値は、1mmよりも小さい。
【0007】
実施形態では、ECG信号のうちの少なくとも1つは、基準電極に対して組織内で検知される単極ECG信号を含む。別の実施形態では、カテーテルは、組織上の1つ以上の位置において検知されたECG信号に基づいて、組織内を伝播する電気生理学的波を示す1つ以上のそれぞれの局所興奮伝達時間(LAT)を計算するように構成されたプロセッサを含む。更に別の実施形態では、計算されたLATに基づいて、プロセッサは、少なくとも心臓のリズムにおけるタイミングエラーを示す注釈をユーザに表示するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、ECG信号のうちの少なくとも1つのグラフにわたって少なくとも注釈を表示するように構成されている。他の実施形態では、プロセッサは、棒グラフに少なくとも注釈を表示するように構成されている。更に他の実施形態では、プロセッサは、棒グラフに、少なくともタイミングエラーの第1のタイプを示す第1の注釈、及び第1のタイプとは異なるタイミングエラーの第2のタイプを示す第2の異なる注釈を表示するように構成されている。
【0009】
本発明の実施形態によれば、方法であって、患者の心臓内に、心臓の組織と接触するための拡張位置を有する拡張可能な遠位端アセンブリを挿入することであって、遠位端アセンブリが、(i)組織と接触して配置されたときに組織による心電図(ECG)信号を検知するために遠位端アセンブリの外面に結合された少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、(ii)遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、拡張位置において、(a)組織と物理的に接触せず、(b)第1のECG電極から第1の距離に、且つ第2のECG電極から第2の距離に配置され、第1の距離と第2の距離との差が所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を含む、挿入することを含む方法が更に提供される。遠位端アセンブリは、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極を組織と接触して配置するために拡張され、ECG信号は、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極を使用して組織内で検知される。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの位置追跡システム及びアブレーションシステムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、カテーテルの遠位端アセンブリの概略側面図である。
図3】本発明の一実施形態による、組織内の単極ECG信号を検知するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
一部の電気生理学的(EP)処置は、問題の組織内の単極心電図(ECG)信号を取得するための電極を使用した心臓組織の電気解剖学的(EA)マッピングを必要とする。「単極信号」という用語は、基準電極に対して問題の組織と接触して配置された検知電極によって取得された信号を指す。
【0013】
原則として、適切なパッチを使用して、患者の皮膚上に配置された1つ以上の外部基準電極上で測定された基準注釈に対するECG信号を測定することが可能である。更に、取得されたECG信号に基づいて、問題の組織内を伝播するEP波の局所興奮伝達時間(LAT)の値を計算することが可能である。例えば、所与のECG電極によって検知される単極信号は、所与の電極88における電位と、患者の右腕、左腕、及び左脚に配置された体表面電極のウィルソン中央端子(WCT)セットとの間の差を構成してもよい。しかしながら、1つ以上の外部基準電極のセットを使用することは、ECG信号の検知にノイズ、不正確さ及び/又は不安定性を導入することがある。これらの不正確さ及び/又は不安定性は、LAT値の誤った計算、したがってECG信号及び計算されたLAT値に基づく不整脈の誤ったビニング及び誤った注釈をもたらすことがある。
【0014】
いくつかの実施形態では、ECG信号の検知を改善するためのシステムは、カテーテル及びプロセッサを備える。カテーテルは、患者の心臓に挿入するためのシャフトと、シャフトに結合された拡張可能な遠位端アセンブリと、複数のECG電極と、1つ以上の基準電極とを備える。いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリは、標的位置に移動するための折り畳み位置と、問題の組織と接触するための拡張位置とを有するように構成されている。本例では、カテーテルは、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極を備え、これらの電極は、拡張可能な遠位端アセンブリの外面に結合され、組織と接触して配置されたときに、組織内のECG信号を検知するように構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、例えば、拡張位置まで拡張されたときに遠位端アセンブリの中心に配置されたシャフト上など、遠位端アセンブリの内部容積内に配置された単一の基準電極を備える。更に、遠位端アセンブリの拡張位置において、基準電極は、組織と物理的に接触せず、本例では、問題の組織から少なくとも9mmの距離を有する。更に、基準電極は、第1のECG電極から第1の距離に、且つ第2のECG電極から第2の距離に配置される。第1の距離及び第2の距離は、典型的には同様であり、換言すれば、第1の距離と第2の距離との間の差は、所定の閾値、例えば約1mmよりも小さい。
【0016】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、組織と接触しているECG電極から、基準電極に対して測定された単極ECG信号を受信し、組織内を伝播するEP波を示す1つ以上の局所興奮伝達時間(LAT)を計算するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、計算されたLATに基づいて、プロセッサは、心臓のリズムにおけるそれぞれの1つ以上のタイミングエラーを示す1つ以上の注釈をシステムのユーザに表示するように構成されている。プロセッサは、単極ECG信号のうちの1つ以上のグラフにわたって1つ以上の注釈を表示するように更に構成されている。追加的又は代替的に、プロセッサは、誤った注釈をもたらす2つ以上のタイプのタイミングエラーを有する棒グラフを表示するように構成されている。
【0018】
開示された技術は、患者の心臓内で検知される単極ECG信号の品質、及び電気生理学的処置中にユーザに提示される注釈の正確さを改善する。更に、開示された技術は、EAマッピングの品質及びEAマッピングに基づいて行われるアブレーション処置の成功率を改善する。
【0019】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。いくつかの実施形態では、システム20は、本例ではバスケット形状を有する拡張可能な心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に記載の実施形態では、カテーテル22は、限定されないが、心臓26内の組織の電気解剖学的(EA)マッピング及び/又はアブレーションなどの任意の適切な治療及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、コンソール24は、フロントエンド回路及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ42を備え、フロントエンド回路及びインターフェース回路は、カテーテル22からの信号を受信し、且つ本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御することに好適なものである。プロセッサ42は、システムによって使用される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよく、且つ、プロセッサ42は、ソフトウェア用のデータをメモリ50内に格納するように構成されている。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードされてもよく、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的な有形媒体で提供されてもよい。代替的に、プロセッサ42の機能の一部又は全部は、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)又は任意の好適なタイプのプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素を使用して実行されてもよい。
【0021】
ここで、挿入図25を参照する。いくつかの実施形態では、カテーテル22は、複数のスプラインを有する遠位端アセンブリ40(以下の図2に詳細に示す)と、心臓26内の組織のアブレーションを行うために遠位端アセンブリ40を標的位置に挿入するためのシャフト23と、を備える。アブレーション手技中、医師30は、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通して、カテーテル22を挿入する。医師30は、プロセッサ42のインターフェース回路に接続されたカテーテル22の近位端付近のマニピュレータ32を使用して、遠位端アセンブリ40を心臓26内の標的位置に移動させる。
【0022】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は、例えば遠位端アセンブリ40に近接して、カテーテル22の遠位端に結合された位置追跡システムの1つ以上の位置センサ39を備える。本例では、位置センサ39は、磁気位置センサを含むが、他の実施形態では、任意の他の適切なタイプの位置センサ(例えば、磁気ベース以外)及び対応する位置追跡システムが使用されてもよい。
【0023】
再度図1の概略図を参照する。いくつかの実施形態では、心臓26内での遠位端アセンブリ40の誘導中、プロセッサ42は、例えば、心臓26内での遠位端アセンブリ40の位置を測定するために、外部磁場発生器36からの磁場に応答して、磁気位置センサ39から信号を受信する。場合によっては、遠位端アセンブリ40は、遠位端アセンブリ40の拡張のレベルを制御するように、2つの位置センサを備える。いくつかの実施形態では、コンソール24は、磁場発生器36を駆動するように構成されたドライバ回路34を備える。磁場発生器36は、例えば、テーブル29の下など、患者28の外部の既知の位置に配置される。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサ42は、例えば、コンソール24のディスプレイ46上に、心臓26の画像44上に重ねられた遠位端アセンブリ40の追跡された位置を表示するように構成されている。
【0025】
外部磁場を使用するこの位置感知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine、Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に説明されており、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
中央基準電極を有する遠位端アセンブリ
図2は、本発明の一実施形態による、遠位端アセンブリ40の概略側面図である。
【0027】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、シャフト23に結合され、上記図1に記載されるように、心臓26の問題の組織又は患者の任意の他の器官の組織と接触して配置されるように医師30によってナビゲートされる。
【0028】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、拡張可能であり、本例ではバスケット形状を有するが、他の実施形態では、遠位端アセンブリ40は、任意の他の適切なタイプの拡張可能アセンブリを有してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、遠位端アセンブリ40の近位頂部66と遠位頂部77との間に結合されたスプライン33を有する。本例では、スプライン33のうちの少なくとも1つ、典型的には全ては、任意の適切な生体適合性材料から作製され、例えば頂部66及び77によって、又は任意の他の適切な電気絶縁装置を使用して、互いに電気的に絶縁される。
【0030】
いくつかの実施形態では、スプライン33のうちの少なくとも1つ、典型的には全ては、本明細書では簡潔にするために電極88と呼ばれる心電図(ECG)電極を有する。本例では、各スプライン33は、スプラインの外面85に結合された1つ以上の電極88を有する。本開示の文脈及び特許請求の範囲において、「外面」という用語は、心臓26の組織27と接触して配置されるように意図されたスプライン33の表面を指す。電極88は、組織27内のECG信号を検知するように構成されている。電極88のうちの少なくとも1つは、心臓26の組織27内の電気記録図(EGM)信号を検知するように構成されることに留意されたい。
【0031】
いくつかの実施形態では、頂部66及び77は、遠位端アセンブリ40を拡張する及び折り畳むように互いに対して移動可能である。例えば、頂部66は、遠位端アセンブリ40を拡張するように、カテーテル22の軸68に平行な方向72に遠位に移動される。同様に、頂部66は、遠位端アセンブリ40を折り畳むように、軸68に沿って近位に移動される(すなわち、方向72の反対側)。本例では、軸68は、カテーテル22及び遠位端アセンブリ40の双方の長手方向軸を構成する。
【0032】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、頂部77及び66にそれぞれ結合されているか、又はそれに隣接している2つの位置センサ39a及び39bを有してもよい。位置センサ39a及び39bから受信した位置信号に基づいて、プロセッサ42は、頂部66と頂部77との間の距離を計算し、それにより、遠位端アセンブリ40の拡張レベルを計算する。
【0033】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、遠位端アセンブリ40の内部容積41内に配置された基準電極70を有する。本開示の文脈及び特許請求の範囲において、「内部容積」という用語は、スプライン33の間に限定された空間を指す。したがって、遠位端アセンブリ40の拡張レベルが大きいほど、内部容積41内に限定される空間が大きくなる。
【0034】
いくつかの実施形態では、基準電極70は、組織27と物理的に接触していない。図2の例では、基準電極70は、軸68に沿って延在するシャフト71に結合され、その結果、基準電極70は、内部容積41の中心に配置され、したがって、本明細書では中心電極とも呼ばれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40が心臓26の組織27と接触して配置されると、1つ以上のスプライン33及び電極88が組織27と接触して配置される。そのような実施形態では、基準電極70は、(組織27の表面上の他の全ての点の中から)基準電極70に最も近接している組織27の表面上の点を表す点98から距離99に配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、基準電極70は、電極88a、88b、88c及び88fからそれぞれ距離55a、55b、55c及び55fに配置される。本開示の文脈において、電極88という用語は、電極88a、88b、88c、88d、88e、及び88fの中からの任意の電極を指す。遠位端アセンブリ40が完全に拡張されて最大直径90を有するとき、全ての距離55(例えば、距離55a、55b、55c及び55f)は、ほぼ同じサイズを有する。例えば、距離55a、55b、55c及び55fの中から選択された距離の任意の対の間の差は、所定の閾値(例えば、約1mm)よりも小さいが、完全に拡張した位置では、直径90は、約18mmから30mmのサイズ、又は任意の他の適切なサイズを有してもよい。距離の任意の対の間の差はまた、遠位端アセンブリ40が完全に拡張した位置にあるときの最大直径90の百分率で定義されてもよいことに留意されたい。
【0037】
本開示及び特許請求の範囲の文脈において、任意の数値又は数値の範囲に関する用語「約」又は「およそ」とは、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書に記載されたその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。更に、「約」又は「およそ」という用語は、物理的寸法、又は2つ以上の要素の測定可能な特徴を比較するために使用されてもよく、「約」又は「およそ」という用語は、比較される要素間の適切な寸法公差を示してもよい。
【0038】
ここで、図2の全体図に示す完全に拡張した位置にある遠位端アセンブリ40の断面図AAを参照する。
【0039】
いくつかの実施形態では、電極88b及び88cは、組織27と接触して配置され、電極55fは、組織27と接触せず、距離55b、55c及び55fは、同様のサイズを有する。電極88aもまた、組織27に接触して配置されているが、断面図AAの面内には存在していないため、図示が省略されていることに留意されたい。更に、距離99は、基準電極70と組織27との間の最小距離を表す。本例では、距離99は、約9mmよりも大きい。
【0040】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、拡張位置において、基準電極70が全ての電極88(例えば、電極88a、88b、88c、88d、88e、及び88f)から同様の距離に配置されるように設計される。「同様の距離」という用語は、上記定義された閾値などの所定の閾値、又は任意の他の適切な閾値よりも小さい距離55間の差を指す。より具体的には、断面図AAで示される平面において、中心電極70と電極88との間の距離は全て、同様のサイズを有する(例えば、サイズ間の差は前述の閾値よりも小さい)。更に、中心電極70はまた、組織27から所定の最小距離に配置される。本例では、断面図AAにおいて距離99によって表される約9mmよりも大きい距離にある。
【0041】
ここで、再び図2の全体図を参照する。いくつかの実施形態では、心臓26内の組織27の電気解剖学的マッピング中に、ECG電極88は、組織27内のECG信号を検知するように構成され、プロセッサ42は、検知されたECG信号に基づいて、組織26に近接してまたそれに沿って心臓26内を伝播するEP波の局所興奮伝達時間(LAT)値を推定するように構成されている。プロセッサ42は、とりわけ、複数のECG電極88によって取得され、複数のECG電極から受信された複数のECG信号のタイミングに基づいて、LAT値を計算する。
【0042】
原則として、ECG信号を測定し、適切なパッチを使用して患者28の皮膚上に配置された1つ以上の外部基準電極(図示せず)上で測定された基準注釈に対するLAT値を計算することが可能である。例えば、所与のECG電極88によって検知される単極信号は、所与の電極88における電位と、患者28の右腕、左腕、及び左脚に配置された体表面電極(図示せず)のウィルソン中央端子(WCT)セットとの間の電位差を構成してもよい。しかしながら、1つ以上の外部基準電極のセットを使用することは、ECG信号の検知にノイズ、不正確さ及び/又は不安定性を導入することがある。これらの不正確さ及び/又は不安定性は、LAT値の誤った計算、したがってECG信号及び計算されたLAT値の誤ったビニング及び誤った注釈をもたらすことがある。
【0043】
いくつかの実施形態では、計算されたLAT並びにECG信号のビニング及び注釈の正確さ及び安定性は、基準電極70と組織27と接触して配置された電極88との間の単極信号を検知することによって改善される。
【0044】
他の実施形態では、基準電極70と組織27と接触して配置された電極88との間の単極ECG信号を検知することに加えて、又はその代わりに、基準電極70は、例えば、所与のスプライン33の1つ以上のアブレーション電極(図示せず)と基準電極70との間の単極アブレーション信号を例えば組織27に印加するための基準電極として使用されてもよい。そのような実施形態(すなわち、ECG検知及び組織アブレーション)では、基準電極70は、組織27と接触して配置されるようには意図されておらず、所与のスプライン33の1つ以上の電極は、組織27と接触して配置されることに留意されたい。
【0045】
システム20及び遠位端アセンブリ40のこれらの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示し、そのようなシステム及び電気生理学的用途の性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を実証するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、決してこの特定の種類の例示的なシステム又は例示的な用途に限定されず、本明細書に記載の原理は、任意の適切な配置の検知電極及び/又はアブレーション電極、並びに少なくとも処置中に問題の組織と物理的に接触しない基準電極を有する遠位端アセンブリの任意の他の適切な構成を使用して、他の種類の医療システムに同様に適用されてもよい。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態による、組織27内の単極ECG信号を検知するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【0047】
本方法は、カテーテル挿入ステップ100で始まり、医師30が遠位端アセンブリ40を心臓26の腔に挿入する。遠位端アセンブリ40は、(i)カテーテル22を心臓26の組織27内の標的位置に移動させるための折り畳み位置、及び(ii)電極88を組織27又は問題の任意の他の組織と接触させて配置するための拡張位置を有する。図2の例では、少なくとも電極88a、88b、88cが組織27に接触して配置されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリ40は、遠位端アセンブリ40の内部容積41内に配置された基準電極70を備え、遠位端アセンブリ40の拡張位置において、基準電極70は、組織27と物理的に接触せず、典型的には、距離99は約9mmより大きい。
【0049】
いくつかの実施形態では、基準電極70は、電極88a、88b、88c及び88fからそれぞれ距離55a、55b、55c及び55fに配置される。距離55a、55b、55c及び55fの任意の対の間の差は、所定の閾値、例えば約1mmよりも小さい。更に、遠位端アセンブリ40が拡張されると(例えば、上記図2に示すように)、基準電極70は、組織27と物理的に接触せず、本例では、基準電極70は、組織27から少なくとも9mmの距離に配置される。
【0050】
電極配置ステップ102において、遠位端アセンブリ40を組織27に近接して配置した後、医師30は、例えば上記図2に示すように、少なくとも電極88a、88b及び88cが組織27と接触して配置されるように、遠位端アセンブリ40を拡張位置に拡張するためにマニピュレータ32又は任意の他の適切な制御ノブを使用する。
【0051】
本方法を終了する単極信号検知ステップ103において、プロセッサ42は、少なくとも電極88a、88b及び88cから、基準電極70に対して測定された単極ECG信号を受信する。
【0052】
いくつかの実施形態では、検知された単極ECG信号に基づいて、プロセッサ42は、組織27内を伝播するEP波を示す1つ以上の局所興奮伝達時間(LAT)を計算するように構成されている。計算されたLATに基づいて、プロセッサ42は、心臓26のリズムにおいて識別されたそれぞれの1つ以上のタイミングエラーを示す1つ以上の注釈を医師30に表示するように更に構成されている。更に、プロセッサ42は、単極ECG信号のうちの1つ以上のグラフにわたって1つ以上の注釈を表示するように構成されている。
【0053】
本明細書に記載の実施形態は、主に電気生理学的用途における電気解剖学的マッピング及び分析に対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、他の用途にも使用されることができる。
【0054】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、且つ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
患者の心臓に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトに結合され、前記心臓の組織と接触するように構成されている、拡張可能な遠位端アセンブリと、
前記拡張可能な遠位端アセンブリの外面に結合され、前記組織と接触して配置されたときに、前記組織内の心電図(ECG)信号を検知するように構成されている、少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、
前記遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、前記遠位端アセンブリの拡張位置において、(i)前記組織と物理的に接触せず、(ii)前記第1のECG電極から第1の距離に、且つ前記第2のECG電極から第2の距離に配置され、前記第1の距離と前記第2の距離との間の差が、所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を備える、カテーテル。
(2) 前記拡張可能な遠位端アセンブリが、少なくとも第1及び第2のスプラインを備え、前記第1のECG電極及び前記第2のECG電極が、それぞれ、前記第1及び第2のスプラインに結合されている、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記拡張位置において、前記基準電極が、前記組織から少なくとも9mmに配置されている、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記拡張位置において、前記所定の閾値が1mmよりも小さい、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記ECG信号のうちの少なくとも1つが、前記基準電極に対して前記組織内で検知される単極ECG信号を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0056】
(6) 前記組織上の1つ以上の位置において検知された前記ECG信号に基づいて、前記組織内を伝播する電気生理学的波を示す1つ以上のそれぞれの局所興奮伝達時間(LAT)を計算するように構成されたプロセッサを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記計算されたLATに基づいて、前記プロセッサが、少なくとも前記心臓のリズムにおけるタイミングエラーを示す注釈をユーザに表示するように構成されている、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記プロセッサが、前記ECG信号のうちの少なくとも1つのグラフにわたって少なくとも前記注釈を表示するように構成されている、実施態様7に記載のカテーテル。
(9) 前記プロセッサが、棒グラフに少なくとも前記注釈を表示するように構成されている、実施態様7に記載のカテーテル。
(10) 前記プロセッサが、前記棒グラフに、少なくとも前記タイミングエラーの第1のタイプを示す第1の注釈、及び前記第1のタイプとは異なる前記タイミングエラーの第2のタイプを示す第2の異なる注釈を表示するように構成されている、実施態様9に記載のカテーテル。
【0057】
(11) 方法であって、
患者の心臓内に、前記心臓の組織と接触するための拡張位置を有する拡張可能な遠位端アセンブリを挿入することであって、前記遠位端アセンブリが、(i)前記組織と接触して配置されたときに前記組織による心電図(ECG)信号を検知するために前記遠位端アセンブリの外面に結合された少なくとも第1のECG電極及び第2のECG電極と、(ii)前記遠位端アセンブリの内部容積内に配置された基準電極であって、前記拡張位置において、(a)前記組織と物理的に接触せず、(b)前記第1のECG電極から第1の距離に、且つ前記第2のECG電極から第2の距離に配置され、前記第1の距離と前記第2の距離との差が所定の閾値よりも小さい、基準電極と、を備える、挿入することと、
少なくとも前記第1のECG電極及び前記第2のECG電極を前記組織と接触して配置するために、前記遠位端アセンブリを拡張することと、
少なくとも前記第1のECG電極及び前記第2のECG電極を使用して、前記組織内のECG信号を検知することと、を含む、方法。
(12) 前記拡張可能な遠位端アセンブリが、少なくとも第1及び第2のスプラインを備え、前記第1のECG電極及び前記第2のECG電極が、それぞれ、前記第1及び第2のスプラインに結合されている、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記遠位端アセンブリを拡張することが、前記基準電極を前記組織から少なくとも9mmに配置することを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記拡張位置において、前記所定の閾値が1mmよりも小さい、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記ECG信号を検知することが、前記基準電極に対する単極ECG信号を前記組織内で検知することを含む、実施態様11に記載の方法。
【0058】
(16) 前記組織上の1つ以上の位置において検知された前記ECG信号に基づいて、前記組織内を伝播する電気生理学的波を示す1つ以上のそれぞれの局所興奮伝達時間(LAT)を計算することを含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記計算されたLATに基づいて、少なくとも前記心臓のリズムにおけるタイミングエラーを示す注釈をユーザに表示することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 少なくとも前記注釈を表示することが、前記ECG信号のうちの少なくとも1つのグラフにわたって少なくとも前記注釈を表示することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 少なくとも前記注釈を表示することが、少なくとも前記注釈を棒グラフに表示することを含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記棒グラフに少なくとも前記注釈を表示することが、前記棒グラフに、少なくとも前記タイミングエラーの第1のタイプを示す第1の注釈、及び前記第1のタイプとは異なる前記タイミングエラーの第2のタイプを示す第2の異なる注釈を表示することを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
【外国語明細書】