IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キュラクル カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2023-26417フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤
<>
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図1
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図2
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図3
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図4
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図5
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図6
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図7
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図8
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図9
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図10
  • 特開-フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026417
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】フマル酸ジメチルを含有する腸溶性錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/225 20060101AFI20230216BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 33/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230216BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61K31/225
A61P1/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P7/00
A61P7/06
A61P9/00
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/08
A61P11/16
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/32
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P31/06
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P33/12
A61P43/00 105
A61K9/20
A61K9/32
A61K9/36
A61K47/18
A61K47/32
A61K47/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177059
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2021557880の分割
【原出願日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064576
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520473960
【氏名又は名称】キュラクル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CURACLE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】23-1 Hyoryeong-ro, Seocho-gu, Seoul 06694, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンファ
(72)【発明者】
【氏名】ピョ,ジョンイン
(72)【発明者】
【氏名】モ,ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ,チョルウ
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ヒョング
(57)【要約】
【課題】様々な患者群に適用することができる錠剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、活性成分としてフマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩を含有するコア;および腸溶性コーティング層を含む、腸溶性コーティング錠剤に関し、現在市販されているカプセル剤形と同等の効果を示し、単純な調製プロセスで調製することができ、優れた保管安定性および投与利便性を有する剤形であり、よって様々な患者群に適用することができる錠剤を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてフマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩を含有するコア;および
腸溶性コーティング層、
ここで、腸溶性コーティング層は、100重量部のコアを基準として6~9重量部の量で含まれる、
を含む、腸溶性コーティング錠剤。
【請求項2】
活性成分が、コアを基準として20~60重量%の量で含まれる、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項3】
活性成分が、コア中に60mg~480mgの量で含まれる、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項4】
コアが、賦形剤、崩壊剤および潤滑剤からなる群から選択される1以上の薬学的に許容し得る添加剤を含有する、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項5】
コアを基準として、賦形剤が30~45重量%の量で含まれ、崩壊剤が、10~20重量%の量で含まれ、潤滑剤が、0.1~2重量%の量で含まれる、請求項4に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項6】
錠剤が、コアと腸溶性コーティング層との間にシールコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項7】
シールコーティング層が、セルロースをベースとしたポリマーを含む、請求項6に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項8】
シールコーティング層が、100重量部のコアを基準として1~3重量部の量で含まれる、請求項6に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項9】
コアが、アルカリ化剤をさらに含む、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項10】
活性成分とアルカリ化剤との重量比が、12:0.5~12:2である、請求項9に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項11】
アルカリ化剤が、コアを基準として2~5重量%の量で含まれる、請求項9に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項12】
アルカリ化剤が、メグルミンまたはその薬学的に許容し得る塩である、請求項9に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項13】
腸溶性コーティング層が、スチレンアクリル酸コポリマー、エチルメタクリラートメタクリラートコポリマー、メチルアクリラートアクリラートオクチルメタクリラートコポリマーおよびエチルメタクリラートアクリラートコポリマーからなる群から選択される腸溶性のアクリル酸をベースとしたコポリマー;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタラート、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートマレアート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートマレアート、セルロースベンゾアートフタラート、セルロースプロピオナートフタラート、メチルセルロースフタラート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースフタラート、カルボキシメチルエチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースフタラートからなる群から選択される腸溶性のセルロースをベースとしたポリマー;酢酸ビニルマレイン酸無水物コポリマー、スチレンマレイン酸無水物コポリマー、スチレンマレイン酸モノエステロールコポリマー、ビニルメチルエーテルマレイン酸無水物コポリマー、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、ビニルブチルエーテルマレイン酸無水物コポリマー、アクリロニトリルメチルアクリラートマレイン酸無水物コポリマーおよびブチルアクリラートスチレンマレイン酸無水物コポリマーからなる群から選択される腸溶性のマレイン酸をベースとしたコポリマー;およびポリビニルアルコールフタラート、ポリビニルアセタールフタラート、ポリビニルブチラートフタラートおよびポリビニルアセトアセタールフタラートからなる群から選択される腸溶性のポリビニルをベースとしたポリマーからなる群から選択される1以上の腸溶性のコーティングポリマーを含む、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項14】
フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩の粒子サイズ分布が、以下の条件:
(a)粒子のうちの下位90%の平均粒子サイズ(D90)が、100μm以下である;
(b)粒子のうちの下位50%の平均粒子サイズ(D50)が、50μm以下である;
(c)粒子のうちの下位10%の平均粒子サイズ(D10)が、20μm以下である。
の1以上を満たす、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤
【請求項15】
腸溶性コーティング錠剤のコーティング層の厚さが20μm~90μmである、請求項1または6に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項16】
コアが、直接圧縮により製造される、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項17】
臓器線維症、神経変性疾患、乾癬、多発性関節炎、若年性糖尿病、橋本病、グレーブス病、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、悪性貧血、慢性活動性肝炎、ループス様肝炎(lupus-like hepatitis)、リウマチ性関節炎または視神経炎の予防または処置に使用される、請求項1に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項18】
臓器線維症が、腎線維症、心臓線維症、膵臓線維症、肺線維症、血管線維症、皮膚線維症、骨髄線維症、肝臓線維症、強皮症、嚢胞性線維症、膵臓線維症および腸線維症からなる群から選択される少なくとも1つであり;腎線維症が、腎不全、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、腎尿細管線維症、糸球体腎炎、慢性腎不全、急性腎傷害、慢性腎臓疾患、末期腎疾患およびアルブミン尿からなる群から選択される少なくとも1つであり;肝臓線維症が、肝硬変、肝性腎症、肝紫斑病、代謝性肝疾患、慢性肝疾患、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、住血吸虫症、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、肥満、糖尿病、タンパク質欠乏症、冠動脈疾患、自己免疫性肝炎、嚢胞性線維症、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症および原発性胆汁性肝硬変からなる群から選択される少なくとも1つであり;肺線維症が、気管支炎、急性気管支炎、びまん性汎細気管支炎(DPB)、細気管支炎、特発性肺線維症(IPF)、急性間質性肺炎、肺移植、放射線誘発肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支拡張症、肺結核、肺炎、塵肺、過敏症肺炎、肺浮腫およびサルコイドーシスからなる群から選択される少なくとも1つであり;皮膚線維症が、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、皮膚線維症障害、創傷治癒、創傷治癒遅延、乾癬および強皮症からなる群から選択される少なくとも1つであり;および神経変性疾患が、多発性硬化症、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、急性横断性脊髄炎、急性播種性脳脊髄炎、視神経炎、急性壊死性網膜炎、横断性脊髄炎、慢性進行性脊髄症、進行性多巣性白質脳症、放射線脊髄症、橋中心脱髄症、白質ジストロフィー、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)および急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP)からなる群から選択される少なくとも1つである;請求項17に記載の腸溶性コーティング錠剤。
【請求項19】
以下のステップ:
フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩、および薬学的に許容し得る添加剤を混合することにより混合物を調製するステップ;
混合物を直接打錠することによりコアを調製するステップ;および
コアを腸溶性コーティングするステップ;
ここで、腸溶性コーティングは、100重量部のコアを基準として6~9重量部の腸溶性コーティング層で行われる、
を含む、腸溶性コーティング錠剤を調製するための方法。
【請求項20】
腸溶性コーティングするステップの前に、シールコーティングするステップをさらに含む、請求項19に記載の腸溶性コーティング錠剤を調製するための方法。
【請求項21】
コーティングするステップが、20℃~50℃で行われる、請求項19または20に記載の腸溶性コーティング錠剤を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景
本発明は、フマル酸ジメチルを含有する医薬調製物に関する。具体的には、本発明は、フマル酸ジメチルおよび腸溶性コーティング層を含む腸溶性錠剤に関し、本発明の錠剤は、フマル酸ジメチルを吸収部位に安定的に送達し、かつ迅速に分散させることができ、そのためin vivoで所望の治療効果を得ることができる。本発明の錠剤は、現在市販されているカプセル剤形と同等の効果を示し、調製プロセスが現在市販されているカプセル剤形よりも単純であるため、生産性や経済性の点で有利であり、カプセルよりもサイズが小さく、そのため患者の服薬コンプライアンスを改善させることができる。とりわけ、本発明の錠剤は、動物由来の成分を含有しないので、宗教上の問題によりカプセルの摂取が禁忌である患者の群に使用することができる。
【0002】
本発明の活性成分であるフマル酸ジメチル(DMF)は、以下の式1で表される化合物であり、1950年代にドイツの化学者によって乾癬の治療薬として最初に提案され、長年乾癬の処置のために使用されてきた。1994年には、フマル酸ジメチル(DMF)およびフマル酸モノエチル(MEF)のカルシウム塩、マグネシウム塩、および亜鉛塩の混合物であるFumaderm(登録商標)(Fumapharm AG)が乾癬の処置のためにドイツで承認された。
【化1】
【0003】
乾癬を処置するためのこれらの使用に加えて、米国特許第6,509,376号には、フマル酸ジメチルが属するフマル酸ジアルキル化合物が、多発性関節炎、多発性硬化症、若年発症糖尿病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、乾癬、乾癬性関節炎、神経皮膚炎などの自己免疫疾患の処置に有用であることが開示されている。とりわけ、米国特許第7,320,999号は、フマル酸ジメチルが多発性硬化症に有効であることが開示されている。フマル酸ジメチルは、2013年3月に多発性硬化症の治療剤としてFDAにより初めて承認され、米国および韓国でTecfidera(登録商標)の製品名で現在販売されている。加えて、韓国特許公開第2009-0028047号には、フマル酸ジメチルが血管平滑筋細胞の増殖に阻害効果を有することが開示されており、韓国特許第1379427号には、それが、腎線維症を予防または処置する効果を有することが記載されている。
【0004】
US6,355,676およびUS6,509,376には、フマル酸ジメチルを含む腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤またはマイクロペレットの形態の医薬組成物が開示されており、WO2010/126605には、腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤を含有するカプセルの形態の、フマル酸ジメチルを含む医薬組成物が開示されている。現在販売されているTecfidera(登録商標)は、活性成分であるフマル酸ジメチルを含有するマイクロペレットを充填したハードゼラチン徐放性カプセルである。
【0005】
しかしながら、腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤やマイクロペレットをカプセルベースに充填する、またはマイクロ錠剤を作製する方法は、追加のプロセスや製造装置が要求されるため生産コストが増大するという欠点を有し、フマル酸ジメチルの昇華特徴に起因して、ペレットの製造プロセスにおいて主要構成要素の喪失が発生する可能性があるという問題が存在する。加えて、カプセルベースは動物(ウシ軟骨)由来の構成要素を含有するため、微生物による腐敗の可能性があり、宗教上の問題により動物由来の構成要素の摂取が禁忌である患者の群への投与が不可能であるという問題が存在する。したがって、カプセル剤形の問題点を解決することができ、現在市販されているカプセル財形と同等のin vivo効果を示す製剤の開発が要求されている。
【0006】
一般に、腸溶性コーティング層は、錠剤コアの総重量を基準として10~12重量%の量でコーティングされることが知られている(Singh Deep Hussan et al., 2012, IOSR Journal of Pharmacy, A review on recent advances of enteric coating)。その一方で、本発明者らは、腸溶性コーティング層の重量比を調整することにより、現行の問題を解決しつつ、優れたバイオアベイラビリティを有する、最適な重量比の腸溶性コーティング層を有する腸溶性錠剤を同定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第US6,509,376号
【特許文献2】米国特許第US7,320,999号
【特許文献3】米国特許第US6,355,676号
【特許文献3】国際公開第WO2010/126605号
【特許文献3】韓国特許公報第2009-0028047号
【特許文献3】韓国特許第1379427号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Singh Deep Hussan et al., 2012.
【発明の概要】
【0009】
本発明の簡単な概要
結果的に、本発明者らは、上記の問題を解決するために研究し、結果として、フマル酸ジメチルを含有するコアを囲む腸溶性コーティング層を最適な量で使用した場合、活性成分の昇華や複雑な製造プロセスなどのカプセル剤形の問題点を解決することができ、in vivoでの優れたバイオアベイラビリティを有する錠剤製剤を調製することができることを確認することにより、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の目的は、炎症性または自己免疫性の疾患または障害、血管平滑筋細胞の増殖に起因する疾患、腎線維症などを予防または処置するための腸溶性錠剤を提供することである。具体的に言うと、本発明の目的は、活性成分としてフマル酸ジメチルを含み、活性成分を含有するコアの重量を基準として6~9重量%の量の腸溶性コーティング層を含有し、そのためフマル酸ジメチルが吸収部位に安定的に送達され、かつ急速に分散させることができ、所望の治療効果がin vivoで期待できる腸溶性錠剤を提供することである。
【0011】
加えて、本発明の別の目的は、優れた保管安定性、投与の利便性、様々な適用可能な患者群、および市販のカプセル製剤と同等のバイオアベイラビリティを有しながら、単純な調製プロセスにより低い生産コストを要求する製剤を提供することである。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の側面において、本発明は、活性成分としてフマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩を含有するコア;および腸溶性コーティング層を含み、ここで腸溶性コーティング層は、100重量部のコアを基準として6~9重量部の量で含まれる、腸溶性コーティング錠剤を提供する。
【0013】
本発明の別の側面において、本発明は、以下のステップ:
フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩、および薬学的に許容し得る添加剤を混合することにより混合物を調製するステップ;
混合物を直接打錠することによりコアを調製するステップ;および
コアを腸溶性コーティングするステップ;
ここで、腸溶性コーティングは、100重量部のコアを基準として6~9重量部の腸溶性コーティング層で行われる、
を含む、腸溶性コーティング錠剤を調製するための方法を提供する。
【0014】
本発明による腸溶性錠剤は、炎症性または自己免疫性の疾患または障害、血管平滑筋細胞の増殖に起因する疾患、腎線維症などに対して予防または治療効果を示す。より具体的には、マイクロペレット調製プロセスの間に生じる可能性のある活性成分の喪失のない、単純な調製プロセスにより、優れた保管安定性、投与の利便性を有し、様々な患者群に適用可能な錠剤、剤形を提供することが可能である。とりわけ、本発明の腸溶性錠剤は、in vivoで市販のカプセル製剤と同等の薬物放出パターンを確保でき、それにより優れたバイオアベイラビリティを示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
図1図1は、例11および12、ならびに比較例4による一次コーティング層(シールコーティング層)およびコーティング層の厚さを確認するための走査電子顕微鏡での観察の結果を示す図表である。
図2図2は、腸溶性コーティング比率による錠剤の溶出率を比較および分析するために、例1~3による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
図3図3は、腸溶性コーティングベースのコポリマー比率による錠剤の溶出率を比較および分析するために、例2および4による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
【0016】
図4図4は、腸溶性コーティングベースのコーティング比率による錠剤の溶出率を比較および分析するために、例4および5による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
図5図5は、コーティングプロセスにおける重量喪失率を評価することにより、乾燥ステップの適切な温度範囲を確立するために、フマル酸ジメチル(主成分)と、フマル酸ジメチルおよび薬学的に許容し得る添加剤を含有する混合物の重量喪失率(%)を評価した結果を示すグラフである。
図6図6は、フマル酸ジメチルの粒子サイズによる溶出率を評価するために、例5および6による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
【0017】
図7図7は、アルカリ化剤の使用による溶出率を評価するために、例5および7、ならびに比較例1による製剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
図8図8は、120mgのフマル酸ジメチルを含有する製剤の溶出率を評価するために、pH1.2の溶液(人工胃液条件、崩壊液1、韓国薬局方)の条件下で、例5および比較例1による製剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
図9図9は、120mgのフマル酸ジメチルを含有する製剤の溶出率を評価するために、pH6.8の溶液(人工腸液)の条件下で、例5および比較例1による製剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
【0018】
図10図10は、240mgのフマル酸ジメチルを含有する錠剤の溶出率を確認するために、例5および8による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を確認した結果を示すグラフである。
図11図11は、本発明による腸溶性コーティング錠剤の薬物動態評価のために、例11および比較例1~4による製剤をビーグル犬に経口投与することにより、in vivoでの薬物の動態を確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の側面において、本発明は、フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩を活性成分として含有するコア;および腸溶性コーティング層を含み、ここで腸溶性コーティング層は、100重量部のコアを基準として6~9重量部の量で含まれる、腸溶性コーティング錠剤を提供する。
【0020】
市販のカプセル製剤の場合において、調製プロセスの間にフマル酸ジメチルの喪失が生じる可能性があり、宗教上の問題や投与の利便性などから動物由来の構成要素の摂取が禁忌であるの患者群への投与が不可能であるという問題がある。他方、本発明の腸溶性コーティング錠剤は、腸溶性コーティング層の含量を調整することにより、フマル酸ジメチルが安定的に吸収部位に送達され、かつ迅速に分散して治療効果を示すことに基づく。とりわけ、腸溶性コーティング層は、典型的には、錠剤コアの総重量と比べて、10~12重量%または10~13重量%の量で使用される。本発明において、フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩を含有する、100重量部の錠剤コアを基準として6~9重量部を使用することにより、吸収部位での溶解が迅速に進行し、それによって優れたバイオアベイラビリティが確保される。
【0021】
このとき、活性成分は、コアを基準として、20~60重量%、好ましくは25~55重量%、30~50重量%、35~45重量%、40~45重量%、43~45重量%、または約44重量%の量で含まれ得る。
【0022】
加えて、活性成分は、50mg~500mg、好ましくは60mg~480mg、100mg~400mg、50mg~400mg、100mg~350mg、100mg~300mg、100mg~250mg、100mg~150mg、200mg~250mg、330mg~400mg、330mg~480mg、50mg~100mg、約60mg、約120mg、約240mg、約360mg、約480mg、より好ましくは60mg、120mg、240mg、360mgまたは480mgの量で、コア中に含まれ得る。フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩の用量比例線形排泄動態は、120mgから360mgまで実証されている。
【0023】
コアは、賦形剤、崩壊剤および潤滑剤からなる群から選択される1以上の薬学的に許容し得る添加剤を含む。薬学的に許容し得る添加剤は、賦形剤、崩壊剤、および潤滑剤に限定されるものではなく、それらが薬学的に一般的に使用される添加剤である限り使用することができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、界面活性剤、潤滑剤、可塑剤、および色素などの添加剤が含まれ得る。
【0024】
賦形剤の例は、デンプン、ラクトース、無水ラクトース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、ヒプロメロース、無水ケイ酸、リン酸カルシウム、無水リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウム、デキストリン、デキストロース、デキストレート(dextrate)、マンニトール、マルトース、ソルビトール、スクロース、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム等を含み、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、ケイ化微結晶性セルロースが使用され得る。
【0025】
崩壊剤は、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、α化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン粒(grain starch)等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、クロスカルメロースナトリウムが使用され得る。
【0026】
潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素またはステアリン酸マグネシウムが使用され得、最も好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムが使用され得る。
【0027】
可塑剤の例は、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、グリセロール酢酸脂肪酸エステル、トリアセチン、フタル酸ジブチル、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
結合剤の例は、ポビドン、コポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、キサンタンガム等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
抗酸化剤の例は、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、tert-ブチルヒドロキノン、没食子酸プロピル、ビタミンC等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポロキサマー等を含み得、これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
シールコーティング層は、コアと腸溶性コーティング層との間にさらに含まれ得る。このとき、シールコーティング層は、中間コーティング層、一次コーティング層、または非腸溶性コーティング層とも称される。シールコーティング層は、セルロースをベースとしたポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むが、常にこれらに限定されるものではなく、非腸溶性コーティングベースであれば特に限定されない。セルロースをベースとしたポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール移植片コポリマー(例えば、Kollicoat-IR)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトースおよびマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。シールコーティング層は、100重量部のコアを基準として、1~3重量部、好ましくは1~2重量部、約1.5重量部、または約2重量部の量で含まれ得る。
【0030】
コアは、アルカリ化剤をさらに含み得、ここで、活性成分とアルカリ化剤との重量比は、12:0.5~12:2、12:0.7~12:1.8、12:0.8~12:1.5、12:0.9~12:1.3、または12:0.9~12:1.1であってもよく、好ましくは12:1であり得る。
アルカリ化剤は、コアを基準として、2~5重量%、2.5~4.5重量%、3~4重量%、3.5~4重量%、または約3.7重量%の量で含むことができる。
アルカリ化剤として、活性成分の水可溶性を増大させるために、公知のアルカリ化剤を使用することができる。好ましくは、錠剤に好適な、圧縮成形性、吸着性、崩壊性、安定性などを改善するために、アルカリ化剤としてメグルミンまたはその薬学的に許容し得る塩を使用することができる。
【0031】
腸溶性コーティング層について、スチレンアクリル酸コポリマー、エチルメタクリラートコポリマー、メチルアクリラートオクチルメタクリラートコポリマーおよびエチルメタクリラートアクリラートコポリマーからなる群から選択される腸溶性のアクリル酸をベースとしたコポリマー;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタラート、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートマレアート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートマレアート、セルロースベンゾアートフタラート、セルロースプロピオナートフタラート、メチルセルロースフタラート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースフタラート、カルボキシメチルエチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースフタラートからなる群から選択される腸溶性のセルロースをベースとしたポリマー;酢酸ビニルマレイン酸無水物コポリマー、スチレンマレイン酸無水物コポリマー、スチレンマレイン酸モノエステロールコポリマー、ビニルメチルエーテルマレイン酸無水物コポリマー、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、ビニルブチルエーテルマレイン酸無水物コポリマー、アクリロニトリルメチルアクリラートマレイン酸無水物コポリマーおよびブチルアクリラートスチレンマレイン酸無水物コポリマーからなる群から選択される腸溶性のマレイン酸をベースとしたコポリマー;およびポリビニルアルコールフタラート、ポリビニルアセタールフタラート、ポリビニルブチラートフタラートおよびポリビニルアセトアセタールフタラートからなる群から選択される腸溶性のポリビニルをベースとしたポリマーからなる群から選択される1以上の腸溶性のコーティングポリマーが使用され得るが、腸溶性のコーティングポリマーは、薬学的に許容し得る腸溶性コーティングベースである限り、特に限定されない。本発明による腸溶性錠剤は、腸溶性コーティングベース以外の添加剤を混合することにより、2以上のタイプのコーティングベースを混合する際に生じ得る混合の不均一性に起因するバッチ間の品質の差を解決することができる。
【0032】
腸溶性コーティング層は、20~80重量%の量で腸溶性のコーティングポリマーを含む腸溶性のコーティングベースを使用して形成され得る。このとき、腸溶性のコーティングベースに含まれるポリマーは、20~60重量%、40~80重量%、40~60重量%、35~45重量%、55~65重量%、約40重量%、または約60重量%の量で含まれ得る。
【0033】
腸溶性コーティング層が100重量部のコアを基準として5重量部以下の場合、薬物が胃の中で溶出および分解されるという問題が生じる可能性がある。他方、腸溶性コーティング層が100重量部のコアを基準として9重量部以上である場合、体内における薬物の吸収率が低下し、有効濃度に達するまでに時間がかかり、治療効果が適切に発揮されないという問題が生じる可能性がある。本発明による腸溶性コーティング層の含量範囲は、薬物であるフマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩がin vivoで吸収部位に安定して送達されるように溶出率を制御され、治療効果が十分に発揮できる溶解が可能であることが好ましい。
【0034】
フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩の粒子サイズ分布は、(a)粒子のうちの下位90%の平均粒子サイズ(D90)が、100μm以下である;(b)粒子のうちの下位50%の平均粒子サイズ(D50)が、50μm以下である;および(c)粒子のうちの下位10%の平均粒子サイズ(D10)が、20μm以下である、(a)粒子のうちの下位90%の平均粒子サイズ(D90)が、80μm以下である;(b)粒子のうちの下位50%の平均粒子サイズ(D50)が、40μm以下である;および(c)粒子のうちの下位10%の平均粒子サイズ(D10)が、15μm以下である、または(a)粒子のうちの下位90%の平均粒子サイズ(D90)が、50μm以下である;(b)粒子のうちの下位50%の平均粒子サイズ(D50)が、30μm以下である;および(c)粒子のうちの下位10%の平均粒子サイズ(D10)が、10μm以下である。
【0035】
腸溶性コーティング錠剤のコーティング層の厚さは、20μm~90μm、30μm~80μm、30μm~50μm、60μm~80μm、35μm~50μm、65μm~80μm、35μm~80μm、または40μm~75μmであり得る。このとき、腸溶性コーティング錠剤のコーティング層の厚さは、腸溶性コーティング層の厚さ、またはシールコーティング層および腸溶性コーティング層を含むコーティング層の厚さであり得る。
腸溶性コーティング錠剤は、従来の乾式/湿式造粒法、直接粉末圧縮法、または直接圧縮法などの従来の錠剤製造方法で調製することができ、好ましくは直接圧縮法によって調製することができる。
【0036】
腸溶性コーティング錠剤は、臓器線維症、神経変性疾患、乾癬、多発性関節炎、若年性糖尿病、橋本病、グレーブス病、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、悪性貧血、慢性活動性肝炎、ループス様肝炎(lupus-like hepatitis)、リウマチ性関節炎、自己免疫疾患、炎症性疾患、血管平滑筋細胞の増殖により引き起される疾患または視神経炎の予防または処置に使用され得る。このとき、臓器線維症は、腎線維症、心臓線維症、膵臓線維症、肺線維症、血管線維症、皮膚線維症、骨髄線維症、肝臓線維症、強皮症、嚢胞性線維症、膵臓線維症および腸線維症からなる群から選択される少なくとも1つであり;腎線維症は、腎不全、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、腎尿細管線維症、糸球体腎炎、慢性腎不全、急性腎傷害、慢性腎臓疾患、末期腎疾患およびアルブミン尿からなる群から選択される少なくとも1つであり;肝臓線維症が、肝硬変、肝性腎症、肝紫斑病、代謝性肝疾患、慢性肝疾患、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、住血吸虫症、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、肥満、糖尿病、タンパク質欠乏症、冠動脈疾患、自己免疫性肝炎、嚢胞性線維症、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症および原発性胆汁性肝硬変からなる群から選択される少なくとも1つであり;肺線維症は、気管支炎、急性気管支炎、びまん性汎細気管支炎(DPB)、細気管支炎、特発性肺線維症(IPF)、急性間質性肺炎、肺移植、放射線誘発肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支拡張症、肺結核、肺炎、塵肺、過敏症肺炎、肺浮腫およびサルコイドーシスからなる群から選択される少なくとも1つであり;皮膚線維症は、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、皮膚線維症障害、創傷治癒、創傷治癒遅延、乾癬および強皮症からなる群から選択される少なくとも1つであり;および神経変性疾患は、多発性硬化症、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、急性横断性脊髄炎、急性播種性脳脊髄炎、視神経炎、急性壊死性網膜炎、横断性脊髄炎、慢性進行性脊髄症、進行性多巣性白質脳症、放射線脊髄症、橋中心脱髄症、白質ジストロフィー、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)および急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP)からなる群から選択される少なくとも1つである。しかしながら、これらは例にすぎず、腸溶性コーティング錠剤の適応症は必ずしもこれらに限定されない。
【0037】
腸溶性コーティング錠剤は、粉末形態を含むことができ、好ましくは、固体形態の腸溶性コーティング錠剤として調製されるが、液体形態で製造することも不可能ではなく、これは権利範囲から除外されない。
腸溶性コーティング錠剤は、個々の治療剤として投与され得、他の治療剤と組み合わせて投与されてもよく、従来の治療剤と連続してまたは同時に投与され得、単独または複数で投与され得る。
【0038】
本明細書で使用される「投与」なる用語は、いずれかの好適な方法により腸溶性錠剤を患者に導入することを意味する。腸溶性錠剤は、標的組織に到達することができる限り、経口または非経口のいずれかの様々なルートで投与することができる。好ましくは、腸溶性錠剤は、経口で投与することができる。加えて、腸溶性錠剤は、所望の投与方法に応じて様々な剤形で調製することができる。
【0039】
腸溶性コーティング錠剤の投与頻度は特に限定されないが、1日1回または2回投与することができ、または用量を分割することにより複数回投与することもできる。例えば、120mgの錠剤を午前および午後に各1錠剤投与することができ、240mgの錠剤を午前または午後に1錠投与することができる。投与される対象は、ヒトを含むいずれかの動物であり得、動物はウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、アンテロープ、イヌ、ネコ等などの哺乳動物であり得、常にこれらに限定されない。
【0040】
本発明の別の側面において、本発明は、以下のステップ:
フマル酸ジメチルまたはその薬学的に許容し得る塩、および薬学的に許容し得る添加剤を混合することにより混合物を調製するステップ;
混合物を直接打錠することによりコアを調製するステップ;および
コアを腸溶性コーティングするステップ
を含む、腸溶性コーティング錠剤を調製するための方法を提供する。
【0041】
このとき、腸溶性コーティングは、100重量部のコアを基準として6~9重量部の腸溶性コーティング層で行われる。
方法は、腸溶性コーティングするステップの前に、シールコーティングするステップをさらに含み得る。
このとき、腸溶性コーティングするステップおよび/またはシールコーティングするステップは、20℃~50℃、20℃~40℃、および好ましくは約25℃~35℃において行われ得る。
腸溶性コーティング層は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、界面活性剤、潤滑剤、可塑剤、色素などの添加剤をさらに含み得る。
【0042】
腸溶性コーティングするステップは、腸溶性コーティングベースおよび/または薬学的に許容し得る添加剤を溶媒に溶解させたコーティング溶液を用いて行うことができる。溶媒は、精製水、アルコール、酢酸アルキル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アニソール、酢酸、ブチルメチルエーテル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ペンタン、ヘプタン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンからなる群から選択される1つ、または2以上の組み合わせとして使用することができる。
【0043】
コーティングは、公知の手段で行うことができる。例えば、スプレーコーティングの場合、パンコーティングデバイス、ドラムコーティングデバイス、流動床コーティングデバイス、撹拌流動床コーティングデバイスを使用することができる。このようなデバイスに付属するスプレーヤーとしては、エアースプレーヤー、エアレススプレーヤー、3流体スプレーヤー(3-fluid sprayer)を使用することができる。乾式タイプの場合において、例えば、遠心流動コーティングデバイス、パンコーティングデバイス、流動床コーティングデバイス、遠心電動流動床コーティングデバイス等を使用することができる。
【0044】
腸溶性コーティング錠剤の調製方法に関して、腸溶性コーティング錠剤の上述した含量を適用することができる。
以下、本発明は、以下の例および実験例により詳細に説明される。
しかしながら、以下の例および実験例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の内容はこれに限定されない。
【0045】
例:腸溶性コーティング錠剤の調製
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
フマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤の調製
フマル酸ジメチルを含有する混合物の安息角は40°以下であり、通常、安息角が40°未満である場合、直接打錠が十分可能なほど流動性が良いと評価される。他方、流動性を改善するために湿式造粒法を適用する場合、溶媒の使用や乾燥により引き起こされるフマル酸ジメチルの昇華による喪失が懸念される。したがって、水との接触を最小化し、単純な調製プロセスによる直接打錠法を適用することにより、フマル酸ジメチルを含む腸溶性コーティング錠剤を以下のように調製した。
【0048】
表1および2の組成物に従って、以下のステップ:
フマル酸ジメチルおよび薬学的に許容し得る添加物(賦形剤(ケイ酸化微結晶性セルロース)、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウムおよび/またはクロスポビドン)、潤滑剤(コロイド状二酸化ケイ素および/またはステアリン酸マグネシウム)、およびアルカリ化剤(メグルミン))を混合し、混合物を圧縮することにより、コア(無コートの錠剤、すなわち、コーティングされていない圧縮状態の錠剤)を調製するステップ;
非腸溶性コーティングベースを溶媒に溶解したコーティング溶液でコアを一次コーティング(シールティング)するステップ;および
腸溶性コーティングベースを溶媒に溶解したコーティング溶液でコアを二次コーティングするステップ;
により、例1~12による腸溶性コーティング錠剤を調製した。
【0049】
腸溶性コーティングの前にシールコーティング(一次コーティング)が適用される場合、腸溶性コーティングベースの錠剤表面への付着性を増大させ、酸耐性を増大させることができるという利点がある。このとき、シールコーティングベースとしてポリビニルアルコール(PVA)ベースを使用することができるが、PVAベースを使用する場合、コーティングベース中のポリマー比率が低いため、HPMCベースよりも厚く、無コート錠剤の重量の約6~10%でコーティングすべきである。加えて、この場合において、錠剤の表面や曲線によっては、腸溶性コーティングフィルムが一様に適用されない可能性が高く、そのため酸耐性が損なわれる可能性が高い。PVAベースは、溶媒として水を使用する水をベースとしたコーティングでコーティングされ、45℃以上の高温で長時間乾燥させるべきである。したがって、水をベースとしたコーティングは適切なコーティング方法ではない。
【0050】
他方、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ベースでのシールコーティングの場合において、無コートの錠剤の重量の約1.5~3%のコーティング比率で薄くコーティングすることが可能であり、エタノールの有機溶媒を使用した、油をベースとしたコーティングも可能である。フマル酸ジメチルの喪失は、約25~35℃の低温で短時間乾燥することにより最小化することができる。加えて、HPMCベースを使用する場合、コポリマーを含有する腸溶性コーティングベースがシールコーティングフィルムの表面に十分付着しながら、腸溶性コーティングフィルムが安定的に維持されるという利点がある。したがって、例によるフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤において、主にHPMCから構成されるOPADRY 03K19229をシールコーティングベースとして使用した。
【0051】
腸溶性コーティングベースであるACRYL-EZE MPは、メタクリル酸とアクリル酸エチルコポリマーの組成比により、ACRYL-EZE MP 93O18508とACRYL-EZE MP 93O18509に分類される。表3に示すように、メタクリル酸とアクリル酸エチルの重量比が60w/w%である場合、ACRYL-EZE MP 93O18508として分類され、メタクリル酸とアクリル酸エチルの重量比が40w/w%である場合、ACRYL-EZE MP 93O18509として分類される。腸溶性コーティングベースとしては、メタクリル酸とアクリル酸エチルコポリマーに加えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートをベースとしたコーティングベースもある。他方、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートをベースとしたコーティングベースは、有機溶剤の使用量が多く、そのため残留溶剤を検出する可能性が高く、コーティング時間もメタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマーをベースとしたコーティングベースよりも長く、そのため一般的に使用に好適ではない。
【表3】
【0052】
<比較例>
比較例1において、120mgの市販の参照薬物であるテクピデラカプセル(Tecfidera(登録商標)、Eisai Korea Inc.)を使用した。比較例2~比較例4において、表4の成分表に従って、例に記載されるのと同じ様式にて錠剤を調製した。
【表4】
【0053】
<実験例1>コーティング層の厚さの測定
例11、例12および比較例4による腸溶性コーティング錠剤の腸溶性コーティング層の厚さを測定するために、例11、例12および比較例4の錠剤の一次コーティング層(シールコーティング)、コーティング層をESEM(Thermo Fisher、Quattro S)を使用して走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。このとき、例11の錠剤の腸溶性コーティング層(二次コーティング層)の重量は、コアの総重量を基にして6%、例12では8%、比較例4では12%であった。SEM観察のために、例11、例12および比較例4の錠剤の一次コーティング層(シールコーティング)、コーティング層を、Osコーターを使用して10nm以下の薄さでOsを蒸着することにより前処理した。結果を表5および図1に示す。
【表5】
【0054】
表5の結果において、例11、12、および比較例4の腸溶性コーティング層のフィルムの厚さは、各平均測定値から一次コーティング層(シールコーティング層)の厚さを差し引くことにより得られた値である。上記結果に示すように、例11の腸溶性コーティング層の厚さが最も薄く、例12、比較例4の厚さがこれに続いた。すなわち、コアの総重量に対する重量比が小さいほど、腸溶性コーティング層は薄くなった。溶出率評価および薬物動態の結果がコーティング層の厚さによって影響を受けることが確認された。したがって、コーティング層の厚さによって、溶出率評価および薬物動態の結果が影響を受けることが確認された。
【0055】
<実験例2>腸溶性コーティング比率による溶出率の評価
2-1.腸溶性コーティング比率によるpH6.8における錠剤の溶出率
腸溶性コーティング比率による錠剤の溶出率を評価するために、pH6.8溶液中での例1~3による腸溶性コーティング錠剤の溶出率を評価した。例1~3の錠剤は、腸溶性コーティングベースとして、ACRYL-EZE MP 93O18508(メタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマー60%w/w)を夫々10.8mg/錠剤、16.2mg/錠剤、および21.6mg/錠剤含有していた。
【0056】
溶出率を評価するために、pH6.8の緩衝溶液(マッキルベイン緩衝液)を調製し、第2の方法(パドル法)に従って各溶出液について溶出試験を行った。具体的には、緩衝溶液を900mLに維持し、撹拌速度を75rpmに維持し、緩衝溶液の温度を37±0.5℃に維持した。試験の間、溶出試験の開始後、pH6.8を代表する内臓(腸)に滞在する一般的な時間に基づいて最終時点を設定し、一定間隔で中間時点を設定することにより試料溶液を回収した。回収した試料溶液をフィルターで濾過し、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。結果を表6および図2に示す。
【表6】
【0057】
表6および図2に示すように、腸溶性コーティング比率が高いほど、錠剤の初期の溶出率が遅延することが確認された。すなわち、腸溶性コーティングベースとしてACRYL-EZE MP 93O18508(メタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマー60%w/w)を10.8mg/錠剤含有する例1による錠剤の溶出が最も迅速に進行した。
【0058】
2-2.腸溶性コーティングベースのコポリマー比率によるpH6.8における錠剤の溶出率
腸溶性コーティングベースのコポリマー比率による錠剤の溶出率を評価するために、例2および4による腸溶性コーティング錠剤のpH6.8における溶出率を測定した。例2の錠剤は、腸溶性コーティングベースとしてACRYL-EZE MP 93O18508(メタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマー60%w/w)を16.2mg/錠剤含有しており、例4の錠剤は、腸溶性コーティングベースとしてACRYL-EZE MP 93O18509(メタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマー40%w/w)を16.2mg/錠剤含有していた。
溶出率評価を、例2-1に記載されるのと同じ様式で行い、結果を表7および図3に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
表7および図3に示すように、腸溶性コーティングベースとしてメタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマーの高い組成比率を有するACRYL-EZE MP 93018508を含有する例2の錠剤の初期溶出速度が相対的に遅延することが確認された。すなわち、例2および例4の錠剤は、いずれも16.2mg/錠剤の腸溶性コーティングベースを含有する一方で、相対的に低いメタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマーの組成比率を有するACRYL-EZE MP 93018509(40%w/w)を含有する例4の腸溶性コーティング錠剤の溶出がより良好に進行した。
【0061】
2-3.腸溶性コーティングベースACRYL-EZE MP 93018509のコーティング比率によるpH6.8における錠剤の溶出率
例2-2により相対的に良好な溶解を有することが確認された腸溶性コーティングベースであるACRYL-EZE MP 93018509のコーティング比率による錠剤の溶出率を評価するため、例4および5による腸溶性コーティング錠剤のpH6.8における溶出率を測定した。例4および5の錠剤は、腸溶性コーティングベースとして、夫々16.2mg/錠剤および21.6mg/錠剤のACRYL-EZE MP 93018509(メタクリル酸およびアクリル酸エチルコポリマー40%w/w)を含有していた。
溶出率評価を、例2-1に記載の方法と同じ様式で行い、結果を表8および図4に示す。
【0062】
【表8】
【0063】
表8および図4に示すように、6%の腸溶性コーティング比率を有する例4の錠剤と8%の腸溶性コーティング比率を有する例5の錠剤の溶出率は、同様の傾向を示すことが確認された。しかしながら、錠剤特性の安定性を考慮すると、コーティング比率を8%に設定することが好ましい。したがって、2-1~2-3の結果により、腸溶性コーティングベースであるACRYL-EZE MP 93018509のコーティング比率が8%である例5の錠剤が、最も最適な腸溶性コーティング錠剤であることが確認された。
【0064】
<実験例3>コーティングプロセスにおける重量喪失率を評価することによる温度範囲設定
フマル酸ジメチルは保管温度によって昇華により喪失する特性を有する。結果的に、コーティング乾燥温度による重量喪失の程度を確認するために、フマル酸ジメチルおよびその混合物について、60℃の温度で2週間、重量喪失の程度を繰り返して評価した。このとき、フマル酸ジメチルの混合物は、フマル酸ジメチルおよび他の薬学的に許容し得る添加剤が混合された混合物であった。結果を図5に示す。
【0065】
図5に示すように、フマル酸ジメチル(主要構成要素)およびその混合物は、コーティングステップにおいて乾燥および昇華の間に重量を喪失し続けた。したがって、フマル酸ジメチルの喪失を防ぐためには、給気温度を低下させる必要がある。このとき、コーティングプロセス間の給気温度が約55~60℃である場合、製品温度は約35~40℃であり、そのためシールコーティングおよび腸溶性コーティングの間に安定で迅速な乾燥が達成される一方で、温度はコーティングを乾燥させるには低すぎた。したがって、製品の乾燥温度は約25~35℃の温度範囲が適切であった。
【0066】
<実験例4>フマル酸ジメチルの粒子サイズによる溶出率の評価
難溶性薬物の可溶性の程度は、「ノイエス-ホイットニー式」に従って薬物の粒子サイズが増大するほど増大し、よって薬物の可溶性は改善する傾向にある。したがって、フマル酸ジメチルの粒子サイズを表9に示す条件下で調整し、微細化したフマル酸ジメチル(すなわち、D90 100μm以下に細かく微粉砕したフマル酸ジメチル)を含有する例5の錠剤と、微細化していないフマル酸ジメチルを含有する例6の錠剤の比較溶出パターンを、pH6.8において評価した。加えて、溶出率評価を例2-1に記載の方法と同じ様式で行った。結果を表10および図6に示す。
【0067】
【表9】

【表10】
【0068】
結果として、pH6.8溶液中のフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤の溶出率は、初期から中央値時点まで粒子サイズに有意に影響されることが確認された。具体的に、D90が100μm超の場合(例6)、溶出率が有意に低下した。したがって、初期の迅速な薬物放出のためには、フマル酸ジメチル粒子のうちの下位90%の平均粒子サイズ(D90)が100μm以下であることが好ましい。
【0069】
<実験例5>アルカリ化剤に使用による溶出率の評価
フマル酸ジメチルは-6.5のpKa値という強い塩基性を有する薬物であるため、低pHにおいて、「ヘンダーソン-ハッセルバルヒ式」に従ってイオン比が増大する一方で生体吸収率が低下するという特徴を有する。したがって,フマル酸ジメチルの生体吸収率を増大させるために,既知の薬物吸収部位である十二指腸において、6.5~6.8のpH範囲において薬物から迅速に放出されるように設計することが望ましい。結果的に、例1~7および比較例1の120mgのフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤の組成物のうち、アルカリ化剤であるメグルミン(C17NO)を含有する組成物(例5)、メグルミンを含まない組成物(例7)、および市販の対照薬物(比較例1)について、pH6.8溶液における比較溶出パターンを評価した。結果を表11および図7に示す。
【0070】
【表11】
【0071】
結果として、アルカリ化剤を含有する例5の組成物は、アルカリ化剤を含有しない例7および比較例1の組成物と比較して、改善された初期の溶出率を示した。したがって、例5の腸溶性コーティング錠剤に含まれる添加剤のうち、アルカリ性の可溶化剤として使用されるメグルミンを含有させることにより、pH6.8(人工腸液)において、薬物の初期の溶出率が、錠剤からの迅速な放出を可能にする効果が確認された。
【0072】
<実験例6>120mgのフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤の溶出率の評価
実験例5で優れた溶出率を示した、120mgのフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤(例5)と対照薬物(比較例1)について、pH1.2溶液(人工胃液条件、崩壊溶液1、韓国薬局方)およびpH6.8溶液(人工腸液)で比較溶出パターンを評価した。結果を夫々表12、表13、図8、および9に示す。
【0073】
【表12】
【表13】
【0074】
結果として、人工胃液であるpH1.2の条件下では、例5の腸溶性コーティング錠剤および比較例1による市販の対照や薬物のほとんどが溶出しなかった。他方、人工腸液であるpH6.8の条件下では、例5と比較例1による製剤の両方が溶出した一方で、例5による腸溶性コーティング錠剤は比較例1の製剤よりも早く溶出した。
例5による腸溶性コーティング錠剤が、比較例1の市販の製剤と同様の溶出パターンを示すかどうかを確認するために、以下の実験を行った。
【0075】
溶出パターン類似性の評価
例5の錠剤(試験薬物)と比較例1の製剤(対照薬物)のpH1.2およびpH6.8溶液における溶出パターンの類似性を決定するために、類似性因子(f)を算出して比較した。類似性因子は、二乗誤差の総和の対数的な相互(reciprocal)平方根変換であり、2つの曲線間の溶出率(%)の類似性を測定して得られる値であり、以下の数式によって導かれる。
【数1】
【0076】
このとき、対照薬物(比較例1)の平均溶出率が約85%になったあたりの適切な時点をTaとし、1/4Ta、2/4Ta、3/4Ta、Taにおける溶出率を比較した。結果を表14に示す。結果として、pH1.2およびpH6.8の溶液において、例5および比較例1の製剤は、いずれもin vitroでの薬物放出挙動において薬学的に同等であった。
【0077】
【表14】
【0078】
<実験例7>240mgのフマル酸ジメチルを含有する腸溶性コーティング錠剤の溶出率の評価
フマル酸ジメチルの用量比例線形排泄反応動態は120mgから360mgまで証明されているので、高用量製剤を開発する際には、既に承認されている治療用量範囲内の活性成分の用量に基づいて、食品医薬品安全省の医薬品同等性試験基準に従って比較溶出試験が可能である。したがって、フマル酸ジメチルの含量に従って溶出量を比較評価するために、例5と例8の錠剤の溶出量を評価した。例5の錠剤は、120mgのフマル酸ジメチルを含有し、例8の錠剤は、240mgのフマル酸ジメチルを含有した。
溶出率評価は、例2-1に記載した方法と同じ様式で行い、結果を表15および図10に示す。
【0079】
【表15】
【0080】
溶出パターン類似性の評価
例8(試験薬物)と例5(対照薬物)の錠剤のpH6.8溶液における溶出パターンの類似性を決定するために、類似性因子(f)を算出して比較した。類似性評価は、実験例6のように、食品医薬品安全省の医薬品同等性試験基準に従って行った。例5および例8の錠剤についての類似性評価の結果を表16に示す。結果として、pH6.8の溶液において、例8の錠剤のin vitroでの薬物放出挙動は、例5の錠剤と薬学的に同等であった。
【0081】
【表16】
【0082】
<実験例8>In vivo試験
例11および比較例1~4による製剤のビーグル犬への経口投与後、非臨床試験を行い、薬物のin vivo動態を調べた。このとき、例11の製剤の腸溶性コーティング層の重量比はコアの総重量を基準として6%であり、比較例2の製剤の腸溶性コーティング層の重量比は5%であり、比較例3の製剤の腸溶性コーティング層の重量比は10%であり、比較例4の製剤の腸溶性コーティング層の重量比は12%であった。具体的には、例11および比較例2~4で調製した腸溶性錠剤1個または比較例1によるカプセル1個をビーグル犬に経口投与し、設定した時間に血液試料を採取し、LC-MSMSで分析した。結果を表17および図11に示す。このとき、比較例3および比較例4の結果値は、計算するには低すぎ、このため表17には示していない。
【0083】
【表17】
【0084】
表17および図11に示すように、例11による腸溶性錠剤は、市販の製品(比較例1)と同様の薬物動態パラメータを示し、腸溶性コーティング層の重量比がコアの総重量を基準にして夫々5%、10%、および12%である比較例2~4の製剤は、in vivoで市販の製品(比較例1)と同様の効能を示さないことが確認された。
【0085】
具体的には、表17および図11に示すように、例11の錠剤は、比較例1の製剤と10%以下の差でほぼ同様のAUC値およびCmax値を示したが、比較例2の製剤と10%超の差により同様ではなかった。加えて、比較例3および比較例4の組成物は、おおよそ12時間までほとんど薬物吸収が見られなかった。以上の結果から、フマル酸ジメチルを主構成要素として含有する腸溶性錠剤の腸溶性コーティング層の重量比が、コアの総重量を基準として6%未満または9%超である場合、優れた薬物動態学的結果が得られないことが確認された。
【0086】
以上、本発明を好ましい準備例、例、実験例を通じて詳細に説明してきたが、本発明の範囲は特定の例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきものである。加えて、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの改変および変形が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】