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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026430
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】貫通枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 15/06 20060101AFI20230216BHJP
   E04B 5/48 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E04G15/06 A
E04B5/48 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190004
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2018104109の分割
【原出願日】2018-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】518191094
【氏名又は名称】株式会社オカゾエ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】岡添 啓
(57)【要約】
【課題】本発明は、施工現場での作業負担を軽減し、床部からの荷重に対する強度を向上させた貫通枠の提供を目的とした。
【解決手段】本発明の貫通枠10は、枠体20が、二以上の鋼板部材30により構成され、少なくとも一つの鋼板部材30が、高さ方向Hと交差する方向の端部が屈曲された第一折片部36を備えるものであり、角部22の少なくとも一部において、隣接する二つの鋼板部材30の一方の第一折片部36と他方の鋼板部材30とが重ね合わせられて接合されている接合部52が形成されており、接合部52には、二つの鋼板部材30の接触面の一部がスポット溶接により融解して接合された溶接部54を備えるものであることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向の両端に開口を備える枠体を有し、
前記枠体が、
二以上の鋼板部材により構成され、
複数の角部及び複数の側面が形成されるものであり、
少なくとも一つの前記鋼板部材が、前記高さ方向と交差する方向の端部が屈曲された第一折片部を備えるものであり、
複数の前記角部の少なくとも一部において、
隣接する二つの前記鋼板部材の一方の前記第一折片部と他方の前記鋼板部材とが重ね合わせられて接合されている接合部が形成されており、
前記接合部には、二つの前記鋼板部材の接触面の一部がスポット溶接により融解して接合された溶接部を備えるものであることを特徴とする貫通枠。
【請求項2】
複数の前記角部の少なくとも一部において、
隣接して配置される二つの前記鋼板部材の双方が、前記第一折片部を備えるものであり、
隣接して配置される二つの前記鋼板部材の前記第一折片部が、相互に他方の前記鋼板部材と重ね合わせられていることを特徴とする請求項1に記載の貫通枠。
【請求項3】
少なくとも一つの前記接合部において、
二以上の前記溶接部が、前記高さ方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通枠。
【請求項4】
前記枠体が、前記開口の縁部から前記開口の外側に向けて形成されるフランジ部を備え、
前記鋼板部材が、前記高さ方向の端部が屈曲された第二折片部を備えるものであり、
前記鋼板部材を構成して前記枠体が形成された状態において、前記第二折片部が前記フランジ部を構成することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の貫通枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の床部に貫通口を形成するための貫通枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の床部(床スラブ)に、ケーブルなどを取り出す貫通口を形成するための貫通枠が提供されている。貫通枠は、複数のパーツを相互にビス留めして組み立てるなど、多くは施工現場において組み立てられる。しかしながら、貫通枠を設置しようとする床スラブは、デッキプレートを敷設させ、デッキプレートに開口を形成した上でコンクリートを打設するなど、貫通口を形成するにあたり多くの作業が必要となる。貫通枠を施工現場で組み立てる必要がある場合、これらの作業の上に貫通枠の組み立て作業を行う必要があり、作業負担が増えて作業が煩雑になるとの問題があった。
【0003】
また、施工現場での貫通口の形成作業に要する作業負担を軽減するため、下記特許文献1には、予め切欠き開口を形成した基板部を備える貫通枠ユニットが記載されている。特許文献1の貫通枠ユニットは、基板部に切欠き開口を予め形成することで、現場での作業負担を軽減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-144193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、施工現場での作業負担をさらに軽減するために、貫通枠を予め組み付けられた状態で提供することが考えられる。例えば、図6に示すとおり、平板状の鋼板材Sの縁部同士を突き合わせて溶接して線状の接合部Lを形成して接合し、略矩形の断面形状を有するスリーブ部(枠体)を形成することが考えられる。
【0006】
本発明の発明者が上述の構成を検討したところ、鋼板材を突き合わせて溶接する場合、鋼板材を突き合わせる角度や強度を均一にして、枠体を製造することは簡単ではないことが判明した。具体的には、図6に示すとおり、鋼板材の縁部同士を突き合わせて溶接により接合する場合、枠体を構成する鋼板材はさほど板厚が大きくものではないため、加工を行う者の熟練度により、接合角度に差が生じたり、溶接漏れやヨレなどが生じたりする場合がある。その結果、加工を行う者の熟練度等の個人差により、完成した製品の精度や強度に差が生じる。そのため、突き合わせ溶接により枠体を製造する場合には、製品の品質を均一に保つことが困難となる。また、鋼板材を突き合わせて溶接する場合には、溶接作業に手間がかかり、製造コストの悪化に繋がる恐れがある。
【0007】
また、鋼板材の縁部同士を突き合わせて溶接する場合、溶接領域が枠体の高さ方向全域に亘り線状に形成されることとなる。枠体の高さ方向全域に溶接による接合部が形成されると、溶接による応力が大きくなって鋼板材が撓み、枠体全体の寸法に狂いが生じることが想定される。
【0008】
さらに、貫通枠の枠体は、コンクリートが用いられる床スラブに埋め込まれた状態が想定される。そのため、貫通枠の枠体は、周囲に打設されるコンクリートからの荷重に耐え得る強度が求められる。
【0009】
そこで本発明は、施工現場での作業負担を軽減し、床部からの荷重に対する強度を向上させた貫通枠の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決すべく提供される本発明の貫通枠は、高さ方向の両端に開口を備える枠体を有し、前記枠体が、二以上の鋼板部材により構成され、複数の角部及び複数の側面が形成されるものであり、少なくとも一つの前記鋼板部材が、前記高さ方向と交差する方向の端部が屈曲された第一折片部を備えるものであり、複数の前記角部の少なくとも一部において、隣接する二つの前記鋼板部材の一方の前記第一折片部と他方の前記鋼板部材とが重ね合わせられて接合されている接合部が形成されており、前記接合部には、二つの前記鋼板部材の接触面の一部がスポット溶接により融解して接合された溶接部を備えるものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、少なくとも一つの角部において、鋼板部材の一部を屈曲させた部分(第一折片部)と隣接する鋼板部材とがスポット溶接により接合される。そのため、平板状の2枚の鋼板部材の縁部を突き合わせて溶接により接合する場合と比較して、鋼板部材同士の位置決めや溶接角度の調整が容易となり、製品の品質の均一化を図ることができる。また、本発明の貫通枠によれば、鋼板部材同士を溶接するための位置決め等の工程数を減らして、安価に、かつ短納期で製造することができる。さらに、本発明によれば、突き合わせ溶接により鋼板部材を接合する場合と比較して、溶接漏れやヨレを抑制して見栄え良く仕上げることができる。
【0012】
また、本発明の貫通枠は、スポット溶接により鋼板部材同士を接合することにより、溶接領域を少なくすることができる。これにより、本発明の貫通枠は、溶接による応力を低減させ、貫通枠全体の撓み等の変形を抑制することができる。その結果、本発明の貫通枠は、製品の精度を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明の貫通枠によれば、少なくとも一部の角部において、鋼板部材を屈曲させ、かつ、鋼板部材が重ね合わせられた部分を形成することができる。これにより、本発明の貫通枠は、床部からの耐荷重を向上させることができ、強度を向上させることができる。すなわち、本発明の貫通枠によれば、枠体の外側に流し込まれるコンクリートなどに対する耐荷重を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の貫通枠は、予め枠体が組み立てられた状態で施工現場に提供することができる。その結果、本発明の貫通枠は、施工現場での組み立て作業を要さず、施工作業の作業負担を軽減ことができる。
【0015】
本発明の貫通枠は、複数の前記角部の少なくとも一部において、隣接して配置される二つの前記鋼板部材の双方が、前記第一折片部を備えるものであり、隣接して配置される二つの前記鋼板部材の前記第一折片部が、相互に他方の前記鋼板部材と重ね合わせられているものであることが望ましい。
【0016】
上述の構成によれば、鋼板部材が重ね合わせられた部分が、枠体の柱のような補強部分としての機能を持たせることができる。その結果、本発明の貫通枠は、より強度を向上させることができる。
【0017】
本発明の貫通枠は、少なくとも一つの前記接合部において、二以上の前記溶接部が、前記高さ方向に沿って形成されているものであることが望ましい。
【0018】
上述の構成によれば、確実に二つの鋼板部材を接合しつつ溶接による応力を最小限に抑え、鋼板部材の撓み等の変形を抑制することができる。
【0019】
本発明の貫通枠は、前記枠体が、前記開口の縁部から前記開口の外側に向けて形成されるフランジ部を備え、前記鋼板部材が、前記高さ方向の端部が屈曲された第二折片部を備えるものであり、前記鋼板部材を構成して前記枠体が形成された状態において、前記第二折片部が前記フランジ部を構成するものであってもよい。
【0020】
上述の構成によれば、高さ方向に延びる第一屈曲部と、幅方向又は奥行き方向に延びる第二屈曲部とを枠体に形成して、枠体の強度をより向上させることができる。また、枠体にフランジ部を形成して、フランジ部を枠体に蓋体を取り付ける場合の蓋体取付部として機能させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、施工現場での作業負担を軽減し、床部からの荷重に対する強度を向上させた貫通枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の貫通枠を示す斜視図である。
図2図1の貫通枠の枠体の断面図を示している。(a)は正面視における断面図、(b)は図2(a)のA-A’線断面図である。
図3図1の貫通枠が床スラブに埋め込まれた状態を示す模式図である。
図4図1の貫通枠の枠体を示す分解斜視図である。
図5図1の貫通枠の角部を示す図である。(a)は正面図、(b)は図5(a)のB-B’線断面図である。
図6】鋼板材の縁部同士を突き合わせて溶接を行った場合を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の貫通枠10について図面を参照しつつ説明する。図1に示すとおり、貫通枠10は、枠体20及び蓋プレート60を有している。
【0024】
図1に示すとおり、枠体20は、略矩形の断面形状を有する箱状の外観を有している。枠体20は、高さ方向Hの両端に開口が形成されている。より具体的には、図2(a)に示すとおり、枠体20には、高さ方向Hのうち、蓋プレート60が取り付けられる上方側の上方開口26a(開口)と、下方側の下方開口26b(開口)とが形成されている。
【0025】
なお、以下の説明において、貫通枠10の高さ方向Hと交差する方向のうち、枠体20の長側面が延びる方向を単に「幅方向W」と、短側面が延びる方向を単に「奥行き方向D」と記載して説明する場合がある。
【0026】
枠体20は、幅方向Wの長さが700ミリ程度、奥行き方向Dの長さが200ミリ程度、高さ方向Hの長さが200ミリ程度の大きさとされている。また、蓋プレート60は、平面視において幅方向Wの長さが約740ミリ、奥行き方向Dの長さが約240ミリの大きさとされている。なお、本発明の貫通枠の大きさは、本実施形態の貫通枠10の大きさに限定されない。本発明の貫通枠の大きさは、種々選択可能である。
【0027】
図3に示すとおり、貫通枠10は、建造物の床スラブ1に、ケーブル等を取り出すための貫通口4を形成するために用いられる。本実施形態で一例として図示する床スラブ1は、デッキプレート2が敷設された上でコンクリート3が打設されて形成されている。
【0028】
図3に示すとおり、貫通口4を床スラブ1に形成させた状態では、貫通枠10の枠体20は、上方開口26a側の一部の領域が外部に取り出され、その他の領域が床スラブ1に埋め込まれた状態となる。すなわち、枠体20は、床スラブ1に配置された状態において、高さ方向Hのうち半分以上の領域がコンクリート3に取り囲まれた状態となる。また、枠体20は、上方開口26aが床スラブ1から外部に露出するように配置され、上方開口26aは蓋プレート60により覆われる。
【0029】
図1に示すとおり、蓋プレート60は、平面視において略矩形のプレート部材である。蓋プレート60は、上方開口26aを覆うに足りる大きさとされている。蓋プレート60には複数のねじ孔62が設けられている。蓋プレート60は、ねじ孔62にねじ等を挿通させて枠体20に取り付けられ、上方開口26aを閉塞する。図1に示すとおり、蓋プレート60には、例えば「開口部注意」等の注意喚起の文字を付すことができる。
【0030】
図1及び図2(b)に示すとおり、枠体20には、角部22、側面24、フランジ部28a,28bが形成されている。
【0031】
図2(b)に示すとおり、枠体20は、2つの長側面を構成する側面24a,24b、及び2つの短側面を構成する側面24c,24dを含む4つの側面24を有している。
【0032】
図2(b)に示すとおり、枠体20には、角部22a,22b,22c,22dを含む4つの角部22を有している。角部22aは、側面24aと側面24cとが隣接する位置に形成されている。角部22bは、側面24cと側面24bとが隣接する位置に形成されている。角部22cは、側面24bと側面24dとが隣接する位置に形成されている。角部22dは、側面24dと側面24aとが隣接する位置に形成されている。
【0033】
図1及び図2(a)に示すとおり、フランジ部28aは、上方開口26aの縁部から枠体20の外側に向けて形成されている。フランジ部28bは、下方開口26bの縁部から枠体20の外側に向けて形成されている。
【0034】
図4に示すとおり、枠体20は、鋼板材を所定の形状に屈曲させた複数の鋼板部材30により構成されている。本実施形態の枠体20は、4つの鋼板部材30により構成されている。より具体的には、枠体20は、枠体20の長側面を構成する二つの鋼板部材30a,30b、及び枠体20の短側面を構成する2つの鋼板部材30c,30dにより構成されている。
【0035】
図4に示すとおり、鋼板部材30a,30bは、高さ方向Hと交差する幅方向Wの両側に、高さ方向Hに沿って直線的に形成された折目部として、第一屈曲部34,34を有している。また、鋼板部材30a,30bは、第一屈曲部34,34を境界として、鋼板部材30a,30bの幅方向Wの端部を屈曲された第一折片部36,36を備えている。
【0036】
また、図4に示すとおり、鋼板部材30a,30bは、高さ方向Hの両側に、幅方向Wに沿って直線的に形成された折目部として、第二屈曲部38,38を有している。また、鋼板部材30a,30bは、第二屈曲部38,38を境界として、鋼板部材30a,30bの高さ方向Hの端部が屈曲された第二折片部40,40を備えている。
【0037】
図4に示すとおり、鋼板部材30aには、第一屈曲部34,34、及び第二屈曲部38,38により取り囲まれた部分に、枠体20の側面24aを構成する側面部32が形成されている。また、鋼板部材30bには、第一屈曲部34,34、及び第二屈曲部38,38により取り囲まれた部分に、枠体20の側面24bを構成する側面部32が形成されている。言い方を換えれば、鋼板部材30a,30bにおいて、枠体20の側面24を構成する部分である側面部32は、第一屈曲部34,34及び第二屈曲部38,38に取り囲まれている。これにより、貫通枠10は、枠体20の側面24の強度を向上させている。
【0038】
図4に示すとおり、鋼板部材30c,30dは、高さ方向Hと交差する奥行き方向Dの両側に、高さ方向Hに沿って直線的に形成された折目部として、第一屈曲部34,34を有している。また、鋼板部材30c,30dは、第一屈曲部34,34を境界として、鋼板部材30c,30dの幅方向Wの端部を屈曲された第一折片部36,36を備えている。
【0039】
また、図4に示すとおり、鋼板部材30c,30dは、高さ方向Hの両側に、奥行き方向Dに沿って直線的に形成された折目部として、第二屈曲部38,38を有している。また、鋼板部材30c,30dは、第二屈曲部38,38を境界として、鋼板部材30c,30dの高さ方向Hの端部が屈曲された第二折片部40,40を備えている。
【0040】
図4に示すとおり、鋼板部材30cには、第一屈曲部34,34、及び第二屈曲部38,38により取り囲まれた部分に、枠体20の側面24cを構成する側面部32が形成されている。また、鋼板部材30dには、第一屈曲部34,34、及び第二屈曲部38,38により取り囲まれた部分に、枠体20の側面24dを構成する側面部32が形成されている。言い方を換えれば、鋼板部材30c,30dにおいて、枠体20の側面24を構成する部分である側面部32は、第一屈曲部34,34及び第二屈曲部38,38に取り囲まれている。これにより、貫通枠10は、枠体20の側面24の強度を向上させている。
【0041】
図2(b)に示すとおり、枠体20の角部22には、隣接する二つの鋼板部材30の一方の第一折片部36と、他方の鋼板部材30とが重ね合わせられて接合されている接合部52が形成されている。また、枠体20は、4つの角部22のそれぞれにおいて隣接する二つの鋼板部材30をスポット溶接により接合させて4つの鋼板部材30を連結させ、略矩形の筒状体を形成している。
【0042】
例えば、図2(b)に示すとおり、枠体20には、角部22aにおいて隣接する鋼板部材30a及び鋼板部材30cのうち、鋼板部材30aの第一折片部36と鋼板部材30cの側面部32とが重ね合わせられて接合された接合部52が形成されている。
【0043】
また、図2(b)に示すとおり、角部22bでは、鋼板部材30bの第一折片部36と鋼板部材30cの側面部32とが重ね合わせられて接合された接合部52が形成されている。角部22cでは、鋼板部材30bの第一折片部36と鋼板部材30dの側面部32とが重ね合わせられて接合された接合部52が形成されている。角部22dでは、鋼板部材30aの第一折片部36と鋼板部材30dの側面部32とが重ね合わせられて接合された接合部52が形成されている。
【0044】
図1及び図5(a)に示すとおり、接合部52には、二つの鋼板部材30の接触面がスポット溶接により融解して接合された複数の溶接部54が形成されている。より具体的には、接合部52には、3つの溶接部54が、高さ方向Hに沿って形成されている。さらに具体的には、枠体20は、一つの接合部52において、高さ方向Hの両端近傍と、高さ方向Hの中間近傍との、計3箇所において溶接部54が形成されている。言い換えれば、枠体20は、一つの接合部52において二つの鋼板部材30が、3箇所のスポット溶接により接合されている。
【0045】
貫通枠10は、隣接して配置される二つの鋼板部材30をスポット溶接により接合することにより、例えば二つの鋼板部材30の縁部を突き合わせて線状に溶接して接合する場合と比較して、溶接領域を極力抑え、鋼板部材30の変形を抑制することができる。
【0046】
また、図5(b)に示すとおり、枠体20の各角部22には、隣接して配置される二つの鋼板部材30の双方が第一折片部36を備えるものであり、隣接して配置される二つの鋼板部材30のそれぞれの第一折片部36が、相互に他方の鋼板部材30の側面部32と重ね合わせられている補強部56が形成されている。
【0047】
言い換えれば、補強部56は、第一屈曲部34を境界として側面部32と第一折片部36とがL字状をなす部分が重なることにより、鋼板部材30の他の部分と比較して強度を向上させた部分とされている。また、貫通枠10は、4つの角部22において、二つの鋼板部材30の側面部32と第一折片部36とが相互に重なる補強部56が形成されている。
【0048】
鋼板部材30a,30bの上方開口26a側に設けられた第二折片部40、及び鋼板部材30c,30dの上方開口26a側に設けられた第二折片部40は、枠体20のフランジ部28aを構成している。また、鋼板部材30a,30bの下方開口26b側に設けられた第二折片部40、及び鋼板部材30c,30dの下方開口26b側に設けられた第二折片部40は、枠体20のフランジ部28bを構成している。
【0049】
また、フランジ部28aには、複数のねじ孔29が設けられている。枠体20は、蓋プレート60のねじ孔62と枠体20のねじ孔29とにビス(図示を省略)を挿通させることで、枠体20に対して蓋プレート60を取り付けることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態に係る貫通枠10について説明したが、本発明の貫通枠は、上述の実施形態に限定されない。
【0051】
具体的には、上述の実施形態に係る貫通枠10では、接合部52の高さ方向Hに3つの溶接部54を備えるものを一例として示したが、本発明の貫通枠はこれに限定されない。例えば、本発明の貫通枠の接合部は、高さ方向に2つの接合部を有するものであってもよいし、4以上の接合部を有するものであってもよい。
【0052】
また、上述の実施形態に係る貫通枠10では、4つの角部22の全てにおいて隣接する鋼板部材30の第一屈曲部34が重なり補強部56が形成されているものを挙げて説明したが、本発明の貫通枠はこれに限定されない。例えば、本発明の貫通枠は、隣接する鋼板部材のうちのいずれか一方に第一屈曲部及び第一折片部を設けて、当該第一折片部と他方の鋼板部材とをスポット溶接により接合された接合部を設けたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の貫通枠は、床スラブに開口を形成するためのものとして、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 貫通枠
20 枠体
22 角部
22a 角部
22b 角部
22c 角部
22d 角部
24 側面
24a 側面
24b 側面
24c 側面
24d 側面
26a 上方開口(開口)
26b 下方開口(開口)
28a フランジ部
28b フランジ部
30 鋼板部材
30a 鋼板部材
30b 鋼板部材
30c 鋼板部材
30d 鋼板部材
34 第一屈曲部
36 第一折片部
38 第二屈曲部
40 第二折片部
52 接合部
54 溶接部
H 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向の両端に開口を備える枠体を有し、
前記枠体が、
二以上の板部材により構成され、
複数の角部及び複数の側面が形成されたものであり、
少なくとも一つの前記板部材が、前記側面をなす側面部と、前記高さ方向と交差する方向の端部が屈曲された第一折片部とがL字状をなす部分を有し、
複数の前記角部の全てにおいて、隣接して配置される二つの前記板部材のうちの一方が備える前記L字状をなす部分と、他方が備える前記L字状をなす部分とが重なり合って互いに面接触した状態で接合された補強部を有すること、を特徴とする貫通枠。
【請求項2】
高さ方向の両端に開口を備える枠体を有し、
前記枠体が、
二以上の板部材により構成され、
複数の角部及び複数の側面が形成されたものであり、
少なくとも一つの前記板部材が、前記側面をなす側面部と、前記高さ方向と交差する方向の端部が屈曲された第一折片部とが略垂直に交差してL字状をなす部分を有し、
前記開口が、矩形状のものであり、
前記角部が、前記開口の四隅に設けられたものであり、
四隅に設けられた前記角部の全てにおいて、隣接して配置される二つの前記板部材のうちの一方が備える前記L字状をなす部分と、他方が備える前記L字状をなす部分とが重なり合って互いに面接触した状態で接合された補強部を有すること、を特徴とする貫通枠。
【請求項3】
前記枠体が、
前記開口の縁部から前記開口の外側に向けて形成され前記開口の周方向に連なるフランジ部を備えたものであり、
少なくとも一つの前記板部材が、前記第一折片部と、前記高さ方向の端部が屈曲された第二折片部と、を備えるものであり、
複数の前記角部において、隣接して配置される二つの前記板部材の一方及び他方が、それぞれ前記第二折片部を備えるものであり、
隣接して配置される二つの前記板部材のうち一方の前記板部材が備える前記第二折片部が、前記補強部が形成される位置からはみ出し、他方の前記板部材が備える前記第二折片部の端部に隣接する位置まで到達することにより、前記一方の前記板部材が備える前記第二折片部と、他方の前記板部材が備える前記第二折片部とが連なるように形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貫通枠。
【請求項4】
高さ方向の両端に開口を備える枠体を有し、
前記枠体が、
二以上の板部材により構成され、複数の角部及び複数の側面と、前記開口の縁部から前記開口の外側に向けて形成され前記開口の周方向に連なるフランジ部を備えたものであり、
複数の前記角部において隣接して配置される二つの前記板部材の一方及び他方が、それぞれ前記高さ方向の端部が屈曲された第二折片部を備えるものであり、
隣接して配置される二つの前記板部材のうち一方の前記板部材が備える前記第二折片部は、前記角部において隣接する二つの前記板部材が接合される接合部が形成される位置からはみ出し、他方の前記板部材が備える前記第二折片部の端部に隣接する位置まで到達することにより、前記一方の前記板部材が備える前記第二折片部と、他方の前記板部材が備える前記第二折片部とが連なるように形成されていること、を特徴とする貫通枠。
【請求項5】
前記開口を覆う蓋プレートを有し、
隣接して配置される二つの前記板部材のうち一方の前記板部材が備える前記第二折片部の端部であって、前記接合部が形成される位置からはみ出した部分に、ねじ孔が設けられており、
蓋プレートに設けられたねじ孔と、前記第二折片部に設けられた前記ねじ孔とにビスを挿通させることで、前記枠体に対して前記蓋プレートを取り付け可能であること、を特徴とする請求項3又は4に記載の貫通枠。
【請求項6】
前記板部材は、それぞれ、前記高さ方向と交差する幅方向の両側に、前記幅方向の端部を屈曲して形成された一対の第一折片部を設けるとともに、前記高さ方向の両側に、前記高さ方向の端部を屈曲して形成された一対の前記第二折片部を設けることにより、一対の第一屈曲部、及び一対の第二屈曲部によって取り囲まれた部分に、前記枠体の側面を構成する側面部を形成したものであること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の貫通枠。