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特開2023-26538シアリル-Lewis aに対するヒト抗体をコードする核酸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026538
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】シアリル-Lewis aに対するヒト抗体をコードする核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230216BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230216BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/44
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211698
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2021103311の分割
【原出願日】2014-08-26
(31)【優先権主張番号】61/870,137
(32)【優先日】2013-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519296314
【氏名又は名称】バイオエヌテック リサーチ アンド デベロップメント, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リツコ サワダ
(72)【発明者】
【氏名】シュ-マン サン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ショルツ
(57)【要約】
【課題】シアリル-Lewis aに対するヒト抗体をコードする核酸の提供。
【解決手段】本発明は、シアリル-Lewis(sLe)に対する抗体またはその機能性断片を作製するための組成物を提供する。本発明の組成物は、sLeに結合する重鎖および/または軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明は、単離された抗体またはその機能性断片およびがんまたは腫瘍形成などの疾患を処置または予防する方法も提供し、当該抗体または機能性断片は、本明細書で提供されるアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインを含む。本発明は、診断剤、検出可能剤または治療剤とコンジュゲートされたかまたは組換えによって融合した抗体またはその機能性断片のコンジュゲート、およびそれを必要とする被験体において疾患を処置、予防または診断する方法をさらに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリル-Lewis に結合し、ADCCまたはCDC活性を誘導する単離された抗体であって、前記抗体が、可変重鎖(VH)ドメインおよび可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VHドメインおよび前記VLドメインがそれぞれ、配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130のアミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項2】
抗体重鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドおよび抗体軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記抗体重鎖が、配列番号2の残基20~142のアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含み、前記抗体軽鎖が、配列番号4の残基20~130のアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記抗体重鎖および前記抗体軽鎖を含む抗体が、シアリル-Lewis に結合し、ADCCまたはCDC活性を誘導する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号1の残基58~426の核酸配列によりコードされる、請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号3の残基58~390の核酸配列によりコードされる、請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記抗体がヒト抗体であり、好ましくはIgGまたはIgMアイソタイプであり、前記IgG抗体は好ましくはIgG1サブクラスである、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項6】
請求項1または5に記載の抗体および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
疾患の処置または予防における使用のための、請求項1または5に記載の抗体および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物であって、前記使用が、疾患の処置または予防を必要とする被験体に前記医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項8】
前記疾患ががんまたは腫瘍形成であり、前記がんまたは前記腫瘍の細胞がsLe を発現するか、あるいは、前記がんまたは腫瘍が、胃腸管の腫瘍、結腸がん、結腸直腸腺癌、転移性結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、膵臓腺癌、膀胱腺癌、卵巣印環細胞がん、卵巣がん、転移性癌、胃の腺癌、食道の腺癌、咽喉の腺癌、尿生殖路の腺癌、および乳房の腺癌からなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が第2の治療剤を同時にまたは逐次投与するために適合され、好ましくは、前記第2の治療剤が化学療法剤または免疫療法剤である、請求項7に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年8月26日に出願した米国仮出願第61/870,137号の優先権の利益を主張する。この出願の内容全体は、本明細書で参考として援用される。
【0002】
本発明は、National Cancer Institute、NIHによって授与された助成金番号CA-128362の下で政府の支援を受けてなされた。合衆国政府は、本願に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
本発明は、一般に、シアリル-Lewis(sLe)を対象とする抗体に関し、より詳細には、抗sLe抗体をコードするポリヌクレオチドおよび対応するコードされた抗体またはその断片に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍特異的抗原を対象とする抗体の受動的な投与により、がん発生の間の腫瘍細胞および初期転移が排除され得る。この処置は、がん再発に対しても重要な影響を及ぼし得る。このがん処置では、腫瘍特異的炭水化物を対象とする抗体が有用な候補であり得る。例えば、ヒトがん細胞を用いてマウスを免疫することによって生じる、腫瘍により制限される多くのモノクローナル抗体は、細胞表面に糖脂質または糖タンパク質として発現する炭水化物抗原を対象とすることが示されている。炭水化物sLeは、胃腸管の腫瘍において発現することが示されている。sLeの発現は、転移能に影響を及ぼすことも示されており、ヒト結腸がんおよび膵臓腺癌の転移能の増大と相関する。しかし、炭水化物化学はどちらかといえば難しいものであり、そのような腫瘍特異的炭水化物を認識する抗体の臨床開発は遅れている。
【0005】
膵癌は最も侵襲性の高い腺癌の1つであり、多くの場合、予後不良が伴う。膵癌は、がん死亡率の主な原因の第4位である。様々な癌腫のスクリーニングにおける進歩にもかかわらず、膵臓から生じる悪性病変の検出の信頼度は不十分なままである。膵がんの検出および病期分類にはフルオロデオキシグルカーゼ(fluorodeoxyglucase)を利用する陽電子放出断層撮影法(FDG-PET)が適応する。しかし、FDG-PETは、悪性腫瘍から分化中の膵炎に対しては非感受性であり、小さな原発性病変(<7mm)および肝転移(<1cm)の病期分類には問題が残っている。膵管腺癌(PDAC)患者の状態をモニタリングするために使用される1つの診断的なスクリーニング方法は、血清中の循環sLe抗原のレベルの上昇を検出するステップを含む。循環sLe抗原が>37U/mlである患者はがん再発を示す。しかし、そのような腫瘍特異的炭水化物を利用する代替の診断ツールの開発は遅れている。
【0006】
したがって、再発性のがんを処置するため、ならびに悪性病変および転移を検出するために、sLeなどの腫瘍特異的炭水化物を特異的に認識する抗体を同定し、生成することが必要とされている。本発明は、この必要性を満たし、関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、sLeに結合する抗体またはその機能性断片を作製するための組成物が本明細書で提供される。組成物は、本明細書で提供されるアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供される、抗体またはその機能性断片のVHドメインをコードする核酸配列も含み得る。
【0008】
本発明の別の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードし得る。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供される、抗体またはその機能性断片のVLドメインをコードする核酸配列も含み得る。
【0009】
本発明の組成物は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片も含む。一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、本明細書で提供されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体またはその機能性断片を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、本明細書で提供されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体またはその機能性断片を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、VHドメインおよびVLドメインの両方を含み、VHドメインおよびVLドメインが、それぞれ、本明細書で提供されるクローン単離体のVHドメインおよびVLドメインそれぞれのアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能性断片を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書で提供される抗体または機能性断片が診断剤、検出可能剤(detectable agent)または治療剤とコンジュゲートしまたは組換えによって融合したコンジュゲートを提供する。本発明の一部の態様では、腫瘍形成を検出および/または診断するための方法において使用することができる検出可能剤を含む本発明のコンジュゲートを主題とする。そのような方法は、それを必要とする被験体にコンジュゲートの有効量を投与するステップを含み得る。
【0013】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の1種または複数種の抗体または機能性断片および薬学的に許容され得る担体を有する医薬組成物を提供する。一部の態様では、本発明は、疾患を処置または予防することを必要とする被験体において、本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することによって疾患を処置または予防するための方法も提供する。さらに別の態様では、本発明は、第2の治療剤を本発明の抗体または機能性断片と同時にまたは逐次投与することを提供する。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
抗体重鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記抗体重鎖またはその機能性断片が、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含む、単離されたポリヌクレオチド。
(項目2)
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号1の残基58~426、配列番号5の残基58~426、配列番号9の残基58~426および配列番号13の残基58~435からなる群から選択される核酸配列によりコードされる、項目1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目3)
抗体軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記抗体軽鎖またはその機能性断片が、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含む、抗体軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(項目4)
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号3の残基58~390、配列番号7の残基58~387、配列番号11の残基58~390および配列番号15の残基67~390からなる群から選択される核酸配列によりコードされる、項目3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目5)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変重鎖(VH)ドメインを含み、前記VHドメインが、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能性断片。
(項目6)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VLドメインが、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその機能性断片。
(項目7)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変重鎖(VH)ドメインおよび可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VHドメインおよび前記VLドメインが、それぞれ、配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130;配列番号6の残基20~142および配列番号8の残基20~129;配列番号10の残基20~142および配列番号12の残基20~130;ならびに配列番号14の残基20~145および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその機能性断片。
(項目8)
前記抗体がヒト抗体である、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目9)
前記抗体機能性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディおよび単一ドメイン抗体(sdAB)からなる群から選択される、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目10)
前記抗体機能性断片がダイアボディである、項目9に記載の抗体またはその機能性断片。
(項目11)
前記ダイアボディが、配列番号18または20のアミノ酸配列を含む、項目10に記載の抗体または機能性断片。
(項目12)
前記抗体がモノクローナル抗体である、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目13)
前記抗体がIgGまたはIgMアイソタイプである、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目14)
前記IgG抗体がIgG1サブクラスである、項目13に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目15)
診断剤、検出可能剤または治療剤とコンジュゲートしているかまたは組換えによって融合している、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体または機能性断片を含むコンジュゲート。
(項目16)
検出可能剤を含む、項目15に記載のコンジュゲート。
(項目17)
前記検出可能剤がジルコニウム(89Zr)である、項目16に記載のコンジュゲート。
(項目18)
項目5から7までのいずれか一項に記載の抗体または機能性断片および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
(項目19)
疾患を処置または予防するための方法であって、疾患を処置または予防することを必要とする被験体に項目18に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法。
(項目20)
前記疾患ががんまたは腫瘍形成であり、前記がんまたは前記腫瘍の細胞がsLeを発現する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記がんまたは腫瘍が、胃腸管の腫瘍、結腸がん、結腸直腸腺癌、転移性結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、膵臓腺癌、肺小細胞癌、膀胱腺癌、卵巣印環細胞がん、卵巣がん、転移性癌、胃の腺癌、食道の腺癌、咽喉の腺癌、尿生殖路の腺癌、および乳房の腺癌からなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
第2の治療剤を同時にまたは逐次投与するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記第2の治療剤が化学療法剤または免疫療法剤である、項目22に記載の方法。
(項目24)
被験体における腫瘍を検出するための方法であって、被験体における腫瘍を検出することを必要とする被験体に項目16に記載のコンジュゲートの有効量を投与するステップを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、組換え発現のために使用することができるクローン5B1の可変重(VH)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号1のヌクレオチド配列と配列番号2のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図2図2は、組換え発現のために使用することができるクローン5B1の可変軽(VL)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号3のヌクレオチド配列と配列番号4のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図3図3は、組換え発現のために使用することができるクローン9H3の可変重(VH)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号5のヌクレオチド配列と配列番号6のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図4図4は、組換え発現のために使用することができるクローン9H3の可変軽(VL)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号7のヌクレオチド配列と配列番号8のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図5図5は、組換え発現のために使用することができるクローン5H11の可変重(VH)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号9のヌクレオチド配列と配列番号10のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図6図6は、組換え発現のために使用することができるクローン5H11の可変軽(VL)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号11のヌクレオチド配列と配列番号12のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図7図7は、組換え発現のために使用することができるクローン7E3の可変重(VH)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号13のヌクレオチド配列と配列番号14のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図8図8は、組換え発現のために使用することができるクローン7E3の可変軽(VL)鎖ドメインおよびリーダー配列のヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号15のヌクレオチド配列と配列番号16のアミノ酸配列のアラインメントを示す。3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)も特定されている。
図9図9は、クローン5B1の可変重(VH)鎖ドメインと可変軽(VL)鎖ドメインの両方のCDR1、CDR2およびCDR2を有する、5B1CysDbと名付けたダイアボディのヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号17のヌクレオチド配列と配列番号18のアミノ酸配列のアラインメントを示す。VHドメインおよびVLドメインの両方の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は太字の下線が引かれたテキストで特定されている。リンカー配列およびアミノ酸が付加されたポリヒスチジンタグ(ポリHisタグ)も、イタリック体で下線が引かれたテキストで示されている。
図10図10は、クローン7E3の可変重(VH)鎖ドメインと可変軽(VL)鎖ドメインの両方のCDR1、CDR2およびCDR2を有する、7E3CysDbと名付けたダイアボディのヌクレオチド配列およびコードされるアミノ酸配列を示す。図の上部は、配列番号19のヌクレオチド配列と配列番号20のアミノ酸配列のアラインメントを示す。VHドメインおよびVLドメインの両方の3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は太字の下線が引かれたテキストで特定されている。リンカー配列およびアミノ酸が付加されたポリヒスチジンタグ(ポリHisタグ)も、イタリック体で下線が引かれたテキストで示されている。
図11A-11C】図11のパネルA~Eは、フローサイトメトリーによって分析した、ヒト抗sLe抗体の腫瘍細胞への結合を示す。パネルAは、組換え(r)5B1、9H3、5H11、および7E3抗体を用いて染色したDMS-79細胞を示す。パネルB~Fは、それぞれ、実施例Iに記載の通り1~2μg/mLのr5B1またはr7E3プラスIgGまたはIgM特異的二次抗体を用いて染色したHT29、BxPC3、SW626、SK-MEL28、およびColo205-luc細胞を示す。
図11D-11F】図11のパネルA~Eは、フローサイトメトリーによって分析した、ヒト抗sLe抗体の腫瘍細胞への結合を示す。パネルAは、組換え(r)5B1、9H3、5H11、および7E3抗体を用いて染色したDMS-79細胞を示す。パネルB~Fは、それぞれ、実施例Iに記載の通り1~2μg/mLのr5B1またはr7E3プラスIgGまたはIgM特異的二次抗体を用いて染色したHT29、BxPC3、SW626、SK-MEL28、およびColo205-luc細胞を示す。
図12図12のパネルAおよびBは、DMS-79細胞に対して測定した、ヒト補体(Hu C’)の存在下でのr5B1およびr7E3抗体のCDC活性をネズミ121SLE(IgM)と比較して示す。ヒトアイソタイプ対照抗体、Hu IgG(◇)およびHu IgM(◆)は<4%の細胞傷害性を示した。r5B1 IgG(■)、r7E3 IgM(●)および121SLE mIgM(▲)抗体についての用量反応がパネルAに示されている。r5B1(IgG)、r7E3(IgM)および121SLE(mIgM)抗体についての算出されたEC50(μg/ml)がパネルBに示されている。
図13図13のパネルA~Cは、r5B1抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示す。パネルAは、ヒトPBMCを用いたDMS-79細胞に対するr5B1媒介性ADCCを示す。PBMCを、2μg/mLのr5B1の存在下または不在下、DMS-79腫瘍細胞と100:1から12.5:1までのE:T比で試験した。パネルBは、初代ヒトNK細胞を用いたDMS-79細胞に対するr5B1媒介性ADCCを示す。NK細胞を、2μg/mLのr5B1の存在下または不在下、DMS-79腫瘍細胞と5:1から0.6:1までの低E:T比で試験した。パネルCは、示されている濃度のr5B1の存在下、2ドナー由来のPBMCをDMS-79腫瘍細胞と1:100のE:T比で用いた、様々な濃度のr5B1のADCCを示す。
図14図14は、BxPC3細胞へのsLeの内部移行を示す。BxPC3膵腫瘍細胞を、サポリンとコンジュゲートした抗ヒトIgGであるHum-ZAPと複合体を形成したr5B1(抗sLe)またはr1B7(抗GD2)抗体の存在下で成長させた。3日後に、細胞の生存能力を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを使用して測定し、試料の値を、処理していない培養物の値に対して正規化した。
図15図15は、Colo205-luc細胞を使用した異種移植モデルにおけるr5B1抗体の活性を示す。重症複合免疫不全(SCID)マウス(群あたり5匹)に、0日目にColo205-luc細胞500,000個を尾静脈注射した。マウスにr5B1を、総用量を600μgとして、1日目、7日目、14日目、および21日目(実験1、Exp1)または1日目、4日目、7日目、10日目、14日目、および21日目(実験2、Exp2)に100μgを腹腔内注射した。対照(Ctrl)動物にはPBS偽注射を行った。
図16図16は、SCIDマウスにおけるr5B1のColo205-luc腫瘍に対する効果を示す。実施例Iに記載の通り、マウスにr5B1抗体を注射1回当たり100μg(▼)、300μg(■)または1mg(◆)注射した。対照(■)動物にはPBS偽注射を行った。
図17図17は、r5B1で処置した、Colo205-luc腫瘍を有するマウスに関する、群当たり5匹のマウスの0日目および5週目の蛍光画像処理を示す。マウスに、図16に示されており、実施例Iに記載されている処置レジメンを行った。
図18A図18のパネルAおよびBは、治療的皮下異種移植モデルにおけるDMS-79細胞を使用した抗腫瘍活性を示す。パネルAは、ヒトIgG(IgG単独(◆)またはIgG+cRGD(●))およびPBSを注射した対照(■)と比較した、5B1で処置したマウス(5B1単独(▲)または5B1+cRGD(▼))に関する抑制または退縮を示す。矢印は、抗体またはPBSを注射した日を示す。
図18B図18のパネルAおよびBは、治療的皮下異種移植モデルにおけるDMS-79細胞を使用した抗腫瘍活性を示す。パネルBは、処置したマウスの代表的な画像を示す。矢印は、目に見える腫瘍が少しも存在しないことを示す。
図19図19のパネルA~Fは、5B1の種々の腫瘍型への結合を示す。パネルAは、膵臓、管腺癌、III期の腫瘍である。パネルBは、S状結腸、癌腫IIIB期の腫瘍である。パネルCは、肺、腺癌、IB期の腫瘍である。パネルDは、膀胱、粘液性腺癌、IV期の腫瘍である。パネルEは、卵巣、結腸腫瘍由来の転移性癌である。パネルFは、リンパ節、転移性癌、IIIA期の腫瘍である。
図20図20は、BxPC3膵腫瘍を皮下に植え込んだ雌SCIDマウスに静脈内投与した89Zr放射標識5B1抗体(89Zr-5B1)を用いて2~120時間で得られた段階的なPET最大値投影法(MIP)画像を示す。PET-MIP画像処理により、早ければ注射後24時間(h p.i.)で非特異的に結合したトレーサーの排除を伴う高い腫瘍への取り込みが実証される。
図21図21は、体内分布結果を示す。これは図20のPETデータと一致し、84.73±12.28%ID/gの腫瘍への取り込みが観察された。腫瘍重量が小さいので、時間に対する%IDで表した腫瘍への取り込みのプロットを挿入グラフで示した。腫瘍%IDは全ての時点での89Zr-5B1による有意な腫瘍への取り込みを示し、非特異的89Zr-IgGの少なくとも7倍である。非放射性5B1(200μg)を用いた競合阻害により、腫瘍蓄積の減少が示される。
図22図22、パネルA~Cは、DMS79異種移植片を有するマウス(パネルA)およびColo205-luc異種移植片を有するマウス(パネルB)のPET-MIP画像を示す。89Zr-5B1による腫瘍(T)、心臓(H)および肝臓(L)のPET-MIP画像処理による描写が示されている。結腸直腸Colo205-luc異種移植モデルは、24時間でピークに達する89Zr-5B1蓄積を示し、それは結局減少するが、肝臓への非特異的な結合の増加が示された(パネルC)。
図23図23は、5B1抗体とタキソール(パクリタキセル)を連続的に同時投与することにより処置したDMS-79小肺細胞癌異種移植モデルにおける腫瘍の成長の用量依存性の阻害および退縮を示す。X軸上の大きな矢印は5B1による処置を示す。5B1抗体とタキソールを同時投与することにより、対照ヒトIgG(HuIgG)または5B1抗体とタキソールの個別投与と比較して腫瘍の成長が有意に制限され、腫瘍の退縮がもたらされた。二元配置ANOVAにより、p<0.01(**)およびp<0.001(***)で有意差が示されている。N=5。
図24図24は、5B1抗体とタキソール(パクリタキセル)を連続的に同時投与することにより処置したBxPc3膵癌異種移植モデルにおける腫瘍の成長の阻害を示す。X軸上の大きな矢印はタキソールと5B1による処置を示し、小さな矢印は5B1単独での処置を示す。5B1抗体とタキソールを同時投与することにより、対照(PBS-Ctrl;ヒトIgG-HuIgG)または5B1抗体とタキソールの個別投与と比較して腫瘍の成長が有意に制限された。
図25図25のパネルAおよびBは、BxPC3-luc膵腫瘍異種移植片を同所移植したマウスの代表的な画像を示す。パネルA:FDG-PETとコンピュータ断層撮影法(CT)の共表示(左側)およびFDG-PETのみの平面断面(右側)により、トレーサーによる最小腫瘍検出が示され、高代謝組織(すなわち、心臓、Hおよび膀胱、B)での取り込みが大きいことが示された。パネルB:同じマウスの取得した89Zr放射標識5B1抗体(89Zr-5B1)PET画像とCTの共表示により、BxPC3-luc腫瘍異種移植片のすぐれた腫瘍検出が示された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
腫瘍細胞表面上に発現する炭水化物は、受動免疫療法の標的であり得る。本明細書で提供される組成物は、少なくとも一部において、シアリル-Lewis-キーホールリンペットヘモシアニン(sLe-KLH)コンジュゲートワクチンを用いて免疫した個体の血液リンパ球から生成されたヒト抗体の同定および特徴付けに基づく。sLeに対する親和性が高い抗体が少なくとも4種同定された(5B1、9H3、5H11および7E3)。これらの抗体のうちの2種を組換え抗体として発現させ(r5B1およびr7E3)、in vitroおよびin vivoモデルにおいてさらに特徴付けた。どちらの抗体も補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイにおいて効力があり、5B1抗体は抗体依存性細胞傷害アッセイにおいても高度に活性であった。抗体のin vivoにおける有効性を、重症複合免疫不全(SCID)マウスに植え付けたColo205腫瘍細胞またはDMS-79腫瘍細胞のいずれかを使用した2種の異種移植モデルにおいて試験した。本明細書で提供される本発明の技術移転の妥当性は2倍である。第1に、本明細書で提供される手法により、sLe-KLHワクチンによって引き出される抗体応答がワクチン自体として有用であることが実証される。第2に、臨床試験において生成した最も強力な抗体を保存し、標的がん集団に対する、治療薬として、または治療薬の生成において最終的に使用することができる。本明細書で提供される抗体の親和性が高いこと、およびそれらのエフェクター機能が高いことにより、この技術移転の潜在性が支持される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特異的な分子抗原に結合することができ、2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対が1つの重鎖(約50~70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100~約130またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む、ポリペプチドの免疫グロブリンクラスの範囲に入るB細胞のポリペプチド産物を意味するものとする(Borrebaeck(編)(1995年)Antibody Engineering、第2版、Oxford University Press.;Kuby(1997年)Immunology、第3版、W.H. Freeman and Company、New Yorkを参照されたい)。本発明に関しては、本発明の抗体が結合し得る特異的な分子抗原として、標的炭水化物sLeが挙げられる。
【0017】
「ヒト」という用語は、抗体またはその機能性断片に関して使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に対応するヒト可変領域および/またはヒト定常領域またはその一部を有する抗体またはその機能性断片を指す。そのようなヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列は、Kabatら(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91~3242により記載されている。ヒト抗体は、本発明に関しては、sLeに結合し、かつ、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞性バリアントである核酸配列によりコードされる抗体を含み得る。ヒト抗体を作製する典型的な方法が実施例Iに提示されているが、当業者に周知の任意の方法を使用することができる。
【0018】
「モノクローナル抗体」という用語は、単一細胞クローンもしくはハイブリドーマまたは単一細胞に由来する細胞の集団の産物である抗体を指す。モノクローナル抗体とは、単一分子免疫グロブリン種が産生されるように組換え方法によって重鎖および軽鎖をコードする免疫グロブリン遺伝子から作製される抗体も指すものとする。モノクローナル抗体調製物内の抗体のアミノ酸配列は実質的に均一であり、そのような調製物内の抗体の結合活性は実質的に同じ抗原結合活性を示す。対照的に、ポリクローナル抗体は、集団内の異なるB細胞から得られる、特異的な抗原に結合する免疫グロブリン分子の組合せである。ポリクローナル抗体の各免疫グロブリンは、同じ抗原の異なるエピトープに結合し得る。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方の作製方法は当技術分野で周知である(HarlowおよびLane.、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)およびBorrebaeck(編)、Antibody Engineering: A Practical Guide、W.H. Freeman and Co.、Publishers、New York、103~120頁(1991年))。
【0019】
本明細書で使用される場合、「機能性断片」という用語は、抗体に関して使用される場合、その断片が由来する抗体としての結合活性の一部または全部を保持する重鎖または軽鎖ポリペプチドを含む抗体の一部を指すものとする。そのような機能性断片としては、例えば、Fd、Fv、Fab、F(ab’)、F(ab)、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)およびミニボディを挙げることができる。他の機能性断片としては、例えば、そのような機能性断片が結合活性を保持する限りは、重鎖または軽鎖ポリペプチド、可変領域ポリペプチドまたはCDRポリペプチドまたはその一部を挙げることができる。そのような抗体の結合性断片は、例えば、HarlowおよびLane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989年);Myers(編)、Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference、New York:VCH Publisher, Inc.;Hustonら、Cell Biophysics、22巻:189~224頁(1993年);PlueckthunおよびSkerra、Meth. Enzymol.、178巻:497~515頁(1989年)ならびにDay、E.D.、Advanced Immunochemistry、第2版、Wiley-Liss, Inc.、New York、NY(1990年)に見いだすことができる。
【0020】
「重鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、アミノ末端部分が約120~130またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と称される5種の別個の型のうちの1種であり得る。別個の重鎖は、サイズが異なり、α、δおよびγはおよそ450アミノ酸を含有し、μおよびεはおよそ550アミノ酸を含有する。これらの別個の型の重鎖を軽鎖と組み合わせると、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含め、5つの周知のクラスの抗体、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが生じる。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0021】
「軽鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、アミノ末端部分が約100~約110またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおおよその長さは211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2種の別個の型が存在する。軽鎖アミノ酸配列は当技術分野で周知である。軽鎖はヒト軽鎖であり得る。
【0022】
「可変ドメイン」または「可変領域」という用語は、一般に軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置し、長さが重鎖では約120~130アミノ酸、軽鎖では約100~110アミノ酸であり、特定の抗体それぞれの、その特定の抗原に対する結合および特異性に使用される、抗体の軽鎖または重鎖の一部を指す。可変ドメインは異なる抗体の間で配列が広範囲にわたって異なる。配列の変動性はCDRに集中し、可変ドメイン内の変動性の低い部分はフレームワーク領域(FR)と称される。軽鎖および重鎖のCDRは、抗体と抗原の相互作用に主に関与する。本明細書で使用されるアミノ酸の位置の番号付けは、Kabatら(1991年)Sequences of proteins of immunological interest.(U.S. Department of Health and Human Services、Washington、D.C.)、第5版にある通りEU Indexに従う。可変領域はヒト可変領域であり得る。
【0023】
CDRとは、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体VL β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRとは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者には周知であり、例えば、Kabatにより、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域であると定義されている(Kabatら、J. Biol. Chem. 252巻:6609~6616頁(1977年);Kabat、Adv. Prot. Chem. 32巻:1~75頁(1978年))。またCDR領域配列は、Chothiaにより、保存されたβ-シートフレームワークの一部ではなく、したがって、異なるコンフォメーションに適合させることができる残基であると構造的に定義されている(ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol. 196巻:901~917頁(1987年))。どちらの用語法も当技術分野において十分に認識されている。標準的な抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、多数の構造を比較することによって決定されている(Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol. 273巻:927~948頁(1997年);Moreaら、Methods 20巻:267~279頁(2000年))。超可変領域内の残基の数は異なる抗体では変動するので、標準的な可変ドメイン番号付けスキームでは慣習的に、標準的な位置と比較して追加的な残基には残基数の隣にa、b、cなどの番号が付される(Al-Lazikaniら、上記(1997年))。そのような命名法も同様に当業者に周知である。
【0024】
例えば、Kabat(超可変)またはChothia(構造的)による命名のいずれかに従って定義されるCDRは、以下の表1に記載されている。
【0025】
【表1】
【0026】
1つまたは複数のCDRを共有結合または非共有結合のいずれかにより分子に組み入れて、イムノアドヘシンを作出することもできる。イムノアドヘシンは、CDR(複数可)をより大きなポリペプチド鎖の一部として組み入れることもでき、CDR(複数可)を別のポリペプチド鎖と共有結合により連結することもでき、CDR(複数可)を非共有結合により組み入れることもできる。CDRにより、イムノアドヘシンが特定の目的の抗原に結合することが可能になる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、抗体、抗体機能性断片またはポリヌクレオチドに関して使用される場合、参照されている分子が天然で見いだされる少なくとも1つの成分を含まないことを意味するものとする。この用語は、その天然の環境で見いだされる他の成分の一部または全部から取り出された抗体、抗体機能性断片またはポリヌクレオチドを包含する。抗体の天然の環境の成分としては、例えば、赤血球、白血球、血小板、血漿、タンパク質、核酸、塩および栄養素が挙げられる。抗体機能性断片またはポリヌクレオチドの天然の環境の成分としては、例えば、脂質膜、細胞小器官、タンパク質、核酸、塩および栄養素が挙げられる。本発明の抗体、抗体機能性断片またはポリヌクレオチドはまた、それが単離されたまたは組換えによって作製された細胞のこれらの成分または任意の他の成分の全てを含まないまたは実質的にまで含まないものであり得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスを指す。所与の抗体または機能性断片の重鎖により、その抗体または機能性断片のクラス、IgM、IgG、IgA、IgDまたはIgEが決定される。各クラスはκまたはλ軽鎖のいずれかを有し得る。「サブクラス」という用語は、サブクラスを識別する重鎖のアミノ酸配列の軽微な差異を指す。ヒトでは、IgAのサブクラスが2つ(サブクラスIgA1およびIgA2)存在し、IgGのサブクラスが4つ(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)存在する。そのようなクラスおよびサブクラスは当業者には周知である。
【0029】
「結合する(binds)」または「結合(binding)」という用語は、本明細書で使用される場合、複合体が形成される、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含めた、非共有結合性の相互作用であってよい。複合体は、共有結合性または非共有結合性の結合、相互作用または力によって一緒に保持される2つまたはそれ超の分子の結合も含み得る。抗体またはその機能性断片の結合は、例えば、実施例Iで提示される方法である酵素結合免疫吸着アッセイ、または当業者に周知のいくつかの方法の任意の1つを使用して検出することができる。
【0030】
抗体または機能性断片上の単一の抗原結合性部位とsLeなどの標的分子の単一のエピトープの間の非共有結合性の相互作用全体の強度は、そのエピトープに対する抗体または機能性断片の親和性である。抗体またはその機能性断片と一価の抗原の会合(k)と解離(k-1)の比(k/k-1)が会合定数Kであり、これが親和性の尺度である。Kの値は、抗体または機能性断片と抗原の異なる複合体で変動し、kおよびk-1の両方に依存する。本発明の抗体または機能性断片についての会合定数Kは、本明細書で提供される任意の方法または当業者に周知の任意の他の方法を使用して決定することができる。
【0031】
1つの結合性部位における親和性が必ずしも抗体または機能性断片と抗原の間の相互作用の真の強度を反映するとは限らない。複合体の抗原が、例えば、多価sLeなど、多数の結合性部位を含有する抗体と接触する多数の反復抗原性決定因子を含有するものである場合、1つの部位における抗体または機能性断片と抗原の相互作用により、第2の部位における反応の確率が上昇する。そのような多価抗体と抗原の間の多数の相互作用の強度は結合活性と称される。抗体または機能性断片の結合活性は、その結合能に関して、その個々の結合性部位の親和性よりも良好な尺度であり得る。例えば、IgGよりも低い親和性を有する可能性があるが、その多価性によって生じるIgMの高結合活性により抗原に有効に結合することが可能になる五量体IgM抗体に関して時に見いだされる通り、高結合活性によって低親和性が補償され得る。
【0032】
抗体またはその機能性断片の特異性とは、個々の抗体またはその機能性断片の、1つの抗原とのみ反応する能力を指す。抗体または機能性断片は、抗原または抗原の異性体型の一次、二次または三次構造の差異を区別することができるものであれば、特異的であるとみなすことができる。
【0033】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはその類似体の、任意の長さのポリマーの形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの配列は4種のヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAの場合にはチミンの代わりにウラシル(U)で構成される。したがって、「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」という用語は、ポリヌクレオチドのアルファベット表示である。ポリヌクレオチドは、遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマーを含み得る。ポリヌクレオチドはまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。別段の指定または必要がない限り、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態および二本鎖形態を構成することが分かっているまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれの両方を包含する。本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチドおよび核酸は、天然に存在しないポリヌクレオチドおよび核酸を対象とすることが理解される。天然に存在しないポリヌクレオチドおよび核酸としては、これらに限定されないが、cDNAおよび化学的に合成された分子を挙げることができる。
【0034】
ポリヌクレオチドに関して使用される「コードする」という用語またはその文法上の等価物は、そのネイティブな状態の、または当業者に周知の方法によって操作した場合に、転写されてmRNAを生じ得、次いでそれがポリペプチドおよび/またはその断片に翻訳されるポリヌクレオチドを指す。アンチセンス鎖は、そのようなポリヌクレオチドの相補物であり、それからコード配列を推定することができる。
【0035】
「治療剤」という句は、sLeの発現に関連する疾患および/またはそれに関連する症状の処置、管理または好転に使用することができる任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、治療剤とは、本発明の抗体または機能性断片を指す。他の実施形態では、治療剤とは、本発明の抗体または機能性断片以外の薬剤を指す。治療剤は、sLeの発現に関連する疾患および/またはそれに関連する1つもしくは複数の症状を処置する、管理するまたは好転させるために有用であることが周知である、または、そのために使用されていたもしくは現在使用されている薬剤であってよい。
【0036】
「診断剤」という句は、疾患の診断に役立つ、被験体に投与される物質を指す。そのような物質は、疾患を引き起こすプロセスの局在化を明らかにするため、正確に示すため、および/または定義するために使用することができる。ある特定の実施形態では、診断剤は、被験体に投与した場合または被験体由来の試料と接触させた場合に、がんまたは腫瘍形成の診断に役立つ、本発明の抗体または機能性断片とコンジュゲートした物質を含む。
【0037】
「検出可能剤」という句は、試料または被験体における本発明の抗体または機能性断片などの所望の分子の存在(existence)または存在(presence)を確認するために使用することができる物質を指す。検出可能剤は、可視化することができる物質または他のやり方で決定および/もしくは測定すること(例えば、定量化によって)ができる物質であってよい。
【0038】
「有効量」とは、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与、塗布または投薬で投与することができる。そのような送達は、個々の投薬単位が使用される期間、薬剤の生物学的利用能、投与経路などを含めたいくつかの変数に左右される。
【0039】
「治療有効量」という句は、本明細書で使用される場合、所与の疾患および/またはそれに関連する症状の重症度および/または持続時間を低下および/または好転させるのに十分な、治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体もしくは機能性断片または本明細書で提供される任意の他の治療剤)の量を指す。治療剤の治療有効量は、所与の疾患の進行(advancement)または進行(progression)を低下もしくは好転させるため、所与の疾患の再発、発生もしくは発症を低下もしくは好転させるため、および/または、別の療法(例えば、本明細書で提供される抗体または機能性断片を投与すること以外の療法)の予防もしくは治療効果を改善もしくは増強するために必要な量であり得る。
【0040】
「シアリル-Lewis」(sLe)という化合物は、シアリルLe、シアリル-Lewis A、シアリル化Lewis aおよびCA19.9としても公知であり、分子式C315223およびモル質量820.74g/molを有する四糖である。sLeの構造は、Neu5Acα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβおよびNeu5Gcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβを含み得る。sLeは、胃腸管の腫瘍上に広範に発現し、膵がんおよび結腸がんの腫瘍マーカーとして使用される。sLeはまた、内皮白血球接着分子(ELAM)としても公知であるE-選択に対する公知のリガンドでもある。
【0041】
一部の実施形態では、本発明は、抗体重鎖または軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、抗体重鎖または軽鎖を使用して生成される抗体またはその機能性断片がsLeに結合する、単離されたポリヌクレオチドを提供する。したがって、一部の実施形態では、本発明は、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1の残基58~426、配列番号5の残基58~426、配列番号9の残基58~426または配列番号13の残基58~435の核酸配列も含み得、当該核酸配列は、抗体またはその機能性断片のVHドメインをコードする。
【0042】
本発明の別の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードし得る。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号3の残基58~390、配列番号7の残基58~387、配列番号11の残基58~390または配列番号15の残基67~390の核酸配列も含み得、当該核酸配列は、抗体またはその機能性断片のVLドメインをコードする。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、抗体重鎖または軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる抗体重鎖または軽鎖またはその機能性断片は図1~8に示されているまたは表2に列挙されている相補性決定領域(CDR)のうちの1つまたは複数を有する。CDRのうちの1つまたは複数を含む抗体またはその機能性断片は、本明細書に記載の通りsLeに特異的に結合することができる。sLeへの特異的な結合は、本明細書で提供される抗体のいずれかに関して実施例Iで提示される特異性、親和性および/または結合活性を含み得る。別の態様では、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる抗体またはその機能性断片は、本明細書に記載のクローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3の任意の1つの補体依存性細胞傷害(CDC)活性および/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を含み得る。抗体またはその機能性断片の特異性、親和性および/または結合活性を評価するための方法は当技術分野で周知であり、例示的な方法は本明細書で提供される。
【0044】
【表2】
【0045】
一部の実施形態では、本発明の抗体またはその機能性断片は、6つ未満のCDRを含む。一部の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、および/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体またはその機能性断片は、本明細書に記載のクローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、および/またはVL CDR3からなる群から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのCDRを含む。
【0046】
一部の実施形態では、本発明は、クローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を有する可変重(VH)鎖ドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。そのようなVHドメインは、配列番号2のアミノ酸残基55~62、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号6のアミノ酸残基45~52、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号10のアミノ酸残基45~52、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号14のアミノ酸残基45~52、70~77および116~134を含み得る。別の態様では、VHドメインのCDR1、CDR2およびCDR3をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号1の残基133~156、208~231および346~393のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号5の残基133~156、208~231および346~393のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号9の残基133~156、208~231および346~393のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号13の残基133~156、208~231、346~402のヌクレオチド配列を含み得る。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、クローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を有する可変軽(VL)鎖ドメインを含む抗体またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。そのようなVLドメインは、配列番号4のアミノ酸残基45~52、70~72および109~120、またはその代わりに配列番号8のアミノ酸残基45~52、70~72および109~119、またはその代わりに配列番号12のアミノ酸残基45~52、70~72および109~120、またはその代わりに配列番号16のアミノ酸残基49~53、72~74および111~120を含み得る。別の態様では、VHドメインのCDR1、CDR2およびCDR3をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号3の残基133~156、208~216および325~360のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号7の残基133~156、208~216および325~357のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号11の残基134~156、208~216および325~360のヌクレオチド配列、またはその代わりに配列番号15の残基145~162、214~222および331~360のヌクレオチド配列を含み得る。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、本明細書で提供されるポリヌクレオチドのバリアントを提供する。バリアントは、ポリヌクレオチドに関して使用される場合、例えば、これらに限定されないが、メチル化されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体などの、1つまたは複数の修飾されたヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを含む。さらに、バリアントポリヌクレオチドは、非ヌクレオチド成分が間に入ったポリヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドに対する修飾は、当業者に周知の方法を使用してポリヌクレオチドの集合前または後に加えることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、重合後に酵素的または化学的技法のいずれかを使用して標識成分とコンジュゲートすることによって修飾することができる(例えば、GottfriedおよびWeinhold、2011年、Biochem. Soc. Trans.、39巻(2号):523~628頁;Paredesら、2011年、Methods、54巻(2号):251~259頁に記載の通り)。
【0049】
当技術分野で周知の任意の方法によってポリヌクレオチドを得、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。5B1、9H3、5H11および7E3の可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列は既知であるので(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14および16を参照されたい)、抗体およびこれらの抗体の修飾型をコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で周知の方法を使用して決定することができる、すなわち、特定のアミノ酸をコードすることが分かっているヌクレオチドコドンを、当該抗体をコードする核酸が生成するように集合させる。そのような抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチドから集合させることができ(例えば、Kutmeierら、1994年、BioTechniques 17巻:242頁に記載の通り)、これは、簡単に述べると、抗体、断片、またはそのバリアントをコードする配列の重複オリゴヌクレオチド含有部分を合成し、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーションを行い、次いで、ライゲーションしたオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅することを伴う。
【0050】
本発明の抗体またはその機能性断片をコードするポリヌクレオチドは、単離体5B1、9H3、5H11または7E3の可変重鎖ドメインおよび/または可変軽鎖ドメインの核酸配列(例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13および15)を使用して生成することができる。抗体または機能性断片をコードする核酸は、化学的に合成することもでき、適切な供給源(例えば、抗体またはその機能性断片を発現させるために選択されたハイブリドーマ細胞などの抗体またはその機能性断片を発現する細胞から単離したcDNA)から、配列の3’および5’末端とハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用したPCR増幅によって、または特定の核酸配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用したクローニングによって得ることもできる。次いで、PCRによって生成した増幅核酸を、当技術分野で周知の任意の方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0051】
一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片を提供する。したがって、一部の態様では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体またはその機能性断片を提供する。
【0052】
一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む抗体またはその機能性断片を提供する。
【0053】
一部の実施形態では、本発明は、sLeに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、VHドメインおよびVLドメインの両方を含み、VHドメインおよびVLドメインがそれぞれ配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130;配列番号6の残基20~142および配列番号8の残基20~129;配列番号10の残基20~142および配列番号12の残基20~130;ならびに配列番号14の残基20~145および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む抗体またはその機能性断片を提供する。
【0054】
一部の実施形態では、sLeに結合させるために、本発明の抗体またはその機能性断片は、図1~8に示されているまたは表2に列挙されているCDRのうちの1つまたは複数を有する。CDRのうちの1つまたは複数、特にCDR3を含む抗体またはその機能性断片は、本明細書に記載の通りsLeに特異的に結合することができる。sLeへの特異的な結合は、本明細書で提供される抗体のいずれかに対する実施例Iにおいて提示される特異性および親和性を含み得る。一部の態様では、本発明の抗体またはその機能性断片は、本明細書に記載のクローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3の任意の1つのCDC活性および/またはADCC活性を含み得る。
【0055】
一部の実施形態では、本発明は、クローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を有するVH鎖ドメインを含む単離された抗体またはその機能性断片を提供する。そのようなVHドメインは、配列番号2のアミノ酸残基55~62、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号6のアミノ酸残基45~52、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号10のアミノ酸残基45~52、70~77および116~131、またはその代わりに配列番号14のアミノ酸残基45~52、70~77および116~134を含み得る。
【0056】
一部の実施形態では、本発明は、クローン単離体5B1、9H3、5H11または7E3のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を有するVL鎖ドメインを含む単離された抗体またはその機能性断片を提供する。そのようなVLドメインは、配列番号4のアミノ酸残基45~52、70~72および109~120、またはその代わりに配列番号8のアミノ酸残基45~52、70~72および109~119、またはその代わりに配列番号12のアミノ酸残基45~52、70~72および109~120、またはその代わりに配列番号16のアミノ酸残基49~53、72~74および111~120を含み得る。
【0057】
本発明の一部の態様では、単離された抗体またはその機能性断片はモノクローナル抗体である。本発明の一部の態様では、本明細書で提供される単離された抗体またはその機能性断片はIgGまたはIgMアイソタイプである。本発明のさらなる態様では、抗体またはその機能断片は、IgG1サブクラスの抗体である。
【0058】
一部の実施形態では、本発明の抗体機能性断片は、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディまたは単一ドメイン抗体(sdAB)であってよい。一部の態様では、本発明は、配列番号18または20のアミノ酸配列を含むダイアボディを提供する。そのような本発明のダイアボディは、一部の態様では、配列番号17または19の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ得る。抗体およびその機能性断片に関して、種々の形態、変更および修飾が当技術分野で周知である。本発明のsLe特異的抗体断片は、そのような種々の抗体の形態、変更および修飾のいずれかを含み得る。当技術分野で公知のそのような種々の形態および用語の例は以下に記載されている。
【0059】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の抗体またはその機能性断片を作製する方法を提供する。本発明の方法は、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するステップ、宿主細胞を、本発明の抗体または機能性断片のコードされる重鎖および/または軽鎖を産生させる条件下、それに十分な期間にわたって培養するステップ、ならびに抗体または機能性断片の重鎖および/または軽鎖を精製するステップを含み得る。
【0060】
sLe抗原に結合する本発明の抗体またはその機能性断片の組換え発現は、本発明の抗体または機能性断片の重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を含み得る。本発明の抗体またはその機能性断片(重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含有することが好ましいが、必ずしもそうでなくてよい)をコードするポリヌクレオチドが得られたら、抗体または機能性断片を産生させるためのベクターを、当技術分野で周知の技法を使用して組換えDNA技術によって作製することができる。抗体またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載されている。
【0061】
当業者に周知の方法を使用して、抗体またはその機能性断片のコード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、in vitroにおける組換えDNA技法、合成法、およびin vivoにおける遺伝子組換えが挙げられる。したがって、本発明は、プロモーターに作動可能に連結した、本発明の抗体またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、国際公開第WO86/05807およびWO89/01036号;ならびに米国特許第5,122,464号を参照されたい)、重鎖全体、軽鎖全体、または重鎖全体と軽鎖全体の両方を発現させるために、抗体の可変ドメインをそのようなベクターにクローニングすることができる。
【0062】
発現ベクターを従来の技法によって宿主細胞に移入することができ、次いで、トランスフェクトされた細胞を従来の技法によって培養して本発明の抗体またはその機能性断片を産生させる。したがって、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結した、本発明の抗体またはその機能性断片をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を包含する。二本鎖抗体の発現に関する一部の実施形態では、以下に詳述されている通り、免疫グロブリン分子全体を発現させるために、重鎖および軽鎖を両方コードするベクターを宿主細胞において同時発現させることができる。
【0063】
本発明の抗体またはその機能性断片を発現させるために、種々の宿主-発現ベクター系を利用することができる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照されたい)。そのような宿主-発現系は、目的のコード配列を産生させ、その後、精製することができるビヒクルを意味するが、適切なヌクレオチドコード配列を用いて形質転換またはトランスフェクトすると、in situで本発明の抗体分子を発現し得る細胞も意味する。これらとしては、これらに限定されないが、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換した細菌(例えば、E.coliおよびB.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母(例えば、Saccharomyces Pichia)などの微生物;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた、もしくは抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;または、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0、および3T3細胞)が挙げられる。一部の態様では、特に組換え抗体全体を発現させるための、Escherichia coliなどの細菌細胞、または真核細胞を、組換え抗体または機能性断片を発現させるために使用する。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foeckingら、1986年、Gene 45巻:101頁;およびCockettら、1990年、Bio/Technology 8巻:2頁)。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその断片をCHO細胞において産生させる。一実施形態では、sLeに結合する本発明の抗体またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列の発現を構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターによって調節する。
【0064】
細菌系では、発現させる抗体分子の意図された使用に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の医薬組成物を生成するためにそのような抗体を大量に産生させる場合、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとしては、これらに限定されないが、抗体コード配列を個別にlac Zコード領域とインフレームでベクターにライゲーションすることができ、したがって融合タンパク質を産生させるE.coli発現ベクターpUR278(Rutherら、1983年、EMBO 12巻:1791頁);pINベクター(Inouye & Inouye、1985年、Nucleic Acids Res. 13巻:3101~3109頁;Van Heeke & Schuster、1989年、J. Biol. Chem. 24巻:5503~5509頁)などが挙げられる。外来ポリペプチドをグルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるためにpGEXベクターを使用することもできる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズに吸着および結合させ、その後、遊離のグルタチオンの存在下で溶出させることによって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含み、したがって、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができるように設計されている。
【0065】
昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用する。ウイルスはSpodoptera frugiperda細胞で成長する。抗体または機能性断片のコード配列を個別にウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
【0066】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、目的の抗体コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子をin vitroまたはin vivoにおける組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1領域またはE3領域)への挿入により、感染した宿主において生存可能であり、抗体分子を発現することができる組換えウイルスが生じる(例えば、Logan & Shenk、1984年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻:355~359頁を参照されたい)。挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために特定の開始シグナルを使用することもできる。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらに、挿入断片全体の翻訳を確実にするために、開始コドンは所望のコード配列の読み枠と同相になければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然でも合成でも種々の起源のものであってよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって増強することができる(例えば、Bittnerら、1987年、Methods in Enzymol. 153巻:51~544頁を参照されたい)。
【0067】
さらに、挿入配列の発現を調節する、または遺伝子産物を所望の特定の様式で修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、抗体または機能性断片の機能のために重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に関して特徴的かつ特異的な機構を有する。発現させる外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にするために適切な細胞系統または宿主系を選択することができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞としては、これらに限定されないが、CHO細胞、VERY細胞、BHK細胞、Hela細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT2O細胞およびT47D細胞、NS0(内因的にはいかなる免疫グロブリン鎖も産生しないネズミ骨髄腫細胞系統)細胞、CRL7O3O細胞およびHsS78Bst細胞が挙げられる。
【0068】
長期間にわたり、組換えタンパク質の高収率の産生、安定発現が好ましい。例えば、本発明の抗体または機能性断片を安定に発現する細胞系統を工学的に作製することができる。ウイルスの複製開始点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNA、および選択マーカーを用いて宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、工学的に作製した細胞を栄養強化培地で1~2日間成長させることができ、次いで選択培地に切り換える。組換えプラスミド内の選択マーカーにより選択に対する耐性が付与され、細胞がそれらの染色体内にプラスミドを安定に組み込み、成長して巣を形成させることが可能になり、今度はそれをクローニングし、拡大増殖させて細胞系統にすることができる。この方法を有利に使用して、抗体分子を発現する細胞系統を工学的に作製することができる。
【0069】
これらに限定されないが、それぞれtk-細胞、hgprt-細胞またはaprt-細胞において使用することができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、1977年、Cell 11巻:223頁)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska & Szybalski、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48巻:202頁)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、1980年、Cell 22巻:8~17頁)を含めた、いくつかの選択系を使用することができる。また、代謝拮抗薬耐性を以下の遺伝子に対する選択の基礎として使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら、1980年、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 77巻(6号):3567~70頁;O'Hareら、1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78巻:1527頁);グルタミン酸およびアンモニアが使用されるグルタミンの生合成に関与する酵素であるグルタミンシンテターゼ(GS)(Bebbingtonら、1992年、Biuotechnology 10巻:169頁);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg、1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78巻:2072頁);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(WuおよびWu、1991年、Biotherapy 3巻:87~95頁;Tolstoshev、1993年、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32巻:573~596頁;Mulligan、1993年、Science 260巻:926~932頁;ならびにMorganおよびAnderson、1993年、Ann. Rev. Biochem. 62巻:191~217頁;1993年5月、TIB TECH 11巻(5号):155~215頁);およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら、1984年、Gene 30巻:147頁)。所望の組換えクローンを選択するために、組換えDNA技術の技術分野で周知の方法を常套的に適用することができ、そのような方法は、例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(1993年);Kriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990年);ならびにDracopoliら(編)、Current Protocols in Human Genetics、12章および13章、John Wiley & Sons、NY(1994年);Colberre-Garapinら、1981年、J. Mol. Biol. 150巻:1頁に記載されている。
【0070】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって上昇させることができる(総説については、BebbingtonおよびHentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells、DNA cloning、3巻(Academic Press、New York、1987年)を参照されたい)。抗体またはその機能性断片を発現させるベクター系内のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルが上昇すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。増幅された領域は抗体遺伝子に関連するので、抗体の産生も増加する(Crouseら、1983年、Mol. Cell. Biol. 3巻:257頁)。
【0071】
宿主細胞に、本発明の2種の発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターを同時トランスフェクトすることができる。2種のベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択マーカーを含有してよい。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現させることができる単一のベクターを使用することができる。そのような状況では、毒性の遊離重鎖が過剰になるのを回避するために、軽鎖を重鎖の前に置くことができる(Proudfoot、1986年、Nature 322巻:52頁;およびKohler、1980年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:2197~2199頁)。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
【0072】
さらに、本発明の抗体または機能性断片の重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、当技術分野で周知の技法を使用したコドン最適化に供して、所望の宿主細胞における本発明の抗体または機能性断片の最適化された発現を実現することができる。例えば、コドン最適化の1つの方法では、ネイティブなコドンを参照遺伝子セット由来の最も頻度の高いコドンで置換し、各アミノ酸についてのコドン翻訳の速度が高くなるように設計する。本発明の抗体または機能性断片の重鎖および/または軽鎖に適用することができる、所望のタンパク質を発現させるためのコドン最適化されたポリヌクレオチドを生成するための追加的な例示的な方法は、Kanayaら、Gene、238巻:143~155頁(1999年)、Wangら、Mol. Biol. Evol.、18巻(5号):792~800頁(2001年)、米国特許第5,795,737号、米国特許公開第2008/0076161号およびWO2008/000632に記載されている。
【0073】
本発明の抗体分子が組換え発現によって産生されたら、それを、免疫グロブリン分子を精製するための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、特に特異的な抗原に対してはプロテインAクロマトグラフィーの後にアフィニティクロマトグラフィー、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的な溶解性によって、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準の技法によって精製することができる。さらに、本発明の抗体または機能性断片は、精製を容易にするために、本明細書で提供されるまたはそうでなければ当技術分野で公知の異種ポリペプチド配列と融合することができる。例えば、本発明の抗体または機能性断片は、市販されている、とりわけ、ポリ-ヒスチジンタグ(Hisタグ)、FLAGタグ、赤血球凝集素タグ(HAタグ)またはmyc-タグを組換えによって付加することおよび当業者に周知の精製方法を利用することによって精製することができる。
【0074】
Fab断片とは、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片を指し、F(ab’)断片は、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価の断片であり、Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなり、Fv断片は、抗体の単一の腕のVLおよびVHドメインからなり、dAb断片(Wardら、Nature 341巻:544~546頁、(1989年))は、VHドメインからなる。
【0075】
抗体は1つまたは複数の結合性部位を有し得る。2つ以上の結合性部位が存在する場合、結合性部位は互いと同一であってもよく、異なってもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは2つの同一の結合性部位を有し、単鎖抗体またはFab断片は1つの結合性部位を有するが、「二特異性」または「二機能性」抗体は2つの異なる結合性部位を有する。
【0076】
単鎖抗体(scFv)とは、VL領域とVH領域がリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)によってつながって連続的なポリペプチド鎖を形成した抗体を指し、リンカーは、タンパク質鎖が折りたたまれ、一価の抗原結合性部位が形成されるのが可能になるのに十分に長いものである(例えば、Birdら、Science 242巻:423~26頁(1988年)およびHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:5879~83頁(1988年)を参照されたい)。ダイアボディとは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を指し、各ポリペプチド鎖は、リンカーによってつながったVHドメインとVLドメインを含み、リンカーは、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成が可能になるには短すぎ、したがって各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的なドメインと対形成するのを可能にするものである(例えば、Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444~48頁(1993年)、およびPoljakら、Structure 2巻:1121~23頁(1994年)を参照されたい)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合には、それらの対形成によって生じるダイアボディは2つの同一の抗原結合性部位を有するものになる。異なる配列を有するポリペプチド鎖を使用して、2つの異なる抗原結合性部位を有するダイアボディを作出することができる。同様に、トリボディ(tribody)およびテトラボディは、それぞれポリペプチド鎖を3つおよび4つ含み、同じであっても異なってもよい抗原結合性部位をそれぞれ3つおよび4つ形成する抗体である。
【0077】
本発明は、sLeに結合する、5B1、9H3、5H11および/または7E3の誘導体である抗体またはその機能性断片も提供する。本発明の抗体またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために、例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発およびPCR媒介性変異誘発を含めた、当業者に周知の標準の技法を使用することができる。一部の態様では、誘導体は、元の分子と比較して25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、または2個未満のアミノ酸置換を含む。
【0078】
一部の実施形態では、本発明は、修飾された形態の天然に存在するアミノ酸、保存的置換、天然に存在しないアミノ酸、アミノ酸類似体および模倣物を有する抗体またはその機能性断片が本明細書で定義されている機能活性を保持する限りは、そのような抗体または機能性断片を提供する。一実施形態では、誘導体は、1つまたは複数の予測される非必須アミノ酸残基においてなされた保存的アミノ酸置換を有する。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が同様の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものである。同様の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。あるいは、飽和変異誘発などによってコード配列の全部または一部を通してランダムに変異を導入することができ、得られた変異体を生物活性についてスクリーニングして、活性を保持する変異体を同定することができる。変異誘発後、コードされる抗体またはその機能性断片を発現させることができ、抗体または機能性断片の活性を決定することができる。
【0079】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の抗体または機能性断片内に含有されるFc断片のフコシル化、ガラクトシル化および/またはシアリル化が改変された抗体またはその機能性断片を提供する。Peippら、Blood、112巻(6号):2390~2399頁(2008年)において論じられている通り、そのようなFc断片の改変により、Fc受容体媒介性活性がもたらされ得る。例えば、Fc N-グリカン由来のコアフコース残基を欠く糖鎖工学により作製された治療用抗体は、フコシル化対応物と比較して低濃度で強力なADCCを示し、また、有効性がはるかに高い。Shieldsら、J. Biol. Chem.、277巻(30号):26733~40頁(2002年);Okazakiら、J Mol Biol.、336巻:1239~1249頁(2004年);Natsumeら、J. Immunol. Methods.、306巻:93~103頁(2005年)。抗体のフコシル化、ガラクトシル化および/またはシアリル化をその機能性断片に関して改変するための方法は当技術分野で周知である。例えば、脱フコシル化手法は、Yamane-Ohnukiら、MAbs.、1巻(3号):230~236頁(2009年)に記載の通り、3つの方法体系(1)非哺乳動物細胞のN-グリコシル化経路の「ヒト化」非フコシル化経路への変換;(2)哺乳動物細胞のN-グリカンフコシル化経路の不活化および(3)非フコシル化N-糖タンパク質のin vitroにおける化学合成またはN-グリカンから非フコシル化形態への酵素による改変に群分けすることができる。これらの方法の任意の1つまたは当技術分野において周知の任意の他の方法を使用して、フコシル化、ガラクトシル化および/またはシアリル化が改変された抗体またはその機能性断片を作製することができることが理解される。
【0080】
sLeに結合する本発明の抗体またはその機能性断片は、抗体を、特に化学合成によってまたは組換え発現技法によって合成するための当技術分野で公知の任意の方法によって作製することができる。本発明の実施には、別段の指定のない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子解析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成および修飾、核酸ハイブリダイゼーション、ならびに当技術分野の技術の範囲内の関連する分野の従来の技法を使用する。これらの技法は、本明細書において引用されている参考文献に記載されており、文献において十分に説明されている。例えば、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Maniatisら(1982年) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrookら(1989年), Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrookら(2001年)Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987年および毎年の更新物); Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (1987年および毎年の更新物) Gait (編)(1984年) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein(編)(1991) Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Birrenら(編)(1999年) Genome Analysis: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Borrebaeck(編)(1995年) Antibody Engineering, 第2版, Oxford University Press; Lo (編)(2006年) Antibody Engineering: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology); 248巻, Humana Press, Incを参照されたい。
【0081】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマおよび組換え技術、またはこれらの組合せの使用を含めた当技術分野で公知の多種多様な技法を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えば、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれるHarlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563~681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)において教示されているものを含めたハイブリドーマ技法を使用して作製することができる。モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術によって作製された抗体に限定されない。モノクローナル抗体を作製する他の例示的な方法は当技術分野で公知である。モノクローナル抗体を作製する追加的な例示的な方法は、本明細書の実施例Iにおいて提示されている。
【0082】
sLeに結合する抗体機能性断片は、当業者に周知の任意の技法によって生成することができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)断片は、パパイン(Fab断片を作製するため)またはペプシン(F(ab’)断片を作製するため)などの酵素を使用した免疫グロブリン分子のタンパク質分解性の切断によって作製することができる。F(ab’)断片は、重鎖の可変領域、軽鎖定常領域およびCH1ドメインを含有する。
【0083】
本発明の抗体機能性断片は、当技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を使用して生成することもできる。例えば、ファージディスプレイ法では、本明細書で提供されるCDRを1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ有する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域などの機能性抗体ドメインを、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面上に提示させる。VHおよびVLドメインをコードするDNAをPCRによってscFvリンカーと一緒に組み直し、ファージミドベクターにクローニングする。ベクターをE.coliに電気穿孔により導入し、E.coliにヘルパーファージを感染させる。これらの方法において使用するファージは、典型的には、fdおよびM13を含めた繊維状ファージであり、通常、VHおよびVLドメインをファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかと、組換えによって融合する。sLeなどの特定の抗原に結合する抗原結合性ドメインを発現するファージを、抗原を用いて、例えば、標識した抗原または固体表面もしくはビーズに結合させたもしくは捕捉した抗原を使用して選択または同定することができる。本発明の抗体機能性断片を作出するために使用することができるファージディスプレイ法の例としては、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Brinkmanら, 1995年, J. Immunol. Methods 182巻:41-50頁; Amesら,1995年, J. Immunol. Methods 184巻:177-186頁; Kettleboroughら,1994年, Eur. J. Immunol. 24巻:952-958頁; Persicら,1997年, Gene 187巻:9-18頁;Burtonら,1994年, Advances in Immunology 57巻:191-280頁; PCT出願第PCT/GB91/01134号;国際公開第WO 90/02809号、同第WO 91/10737号、同第WO 92/01047号、同第WO 92/18619号、同第WO 93/1 1236号、同第WO 95/15982号、同第WO 95/20401号、および同第WO97/13844号;ならびに米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号に開示されているものが挙げられる。
【0084】
上記の参考文献に記載の通り、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、それを使用して、ヒト抗体を含めた全抗体または任意の他の所望の抗原結合性断片を生成し、例えば、本明細書に記載の哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含めた任意の所望の宿主において発現させることができる。
【0085】
Fab、Fab’およびF(ab’)断片を組換えによって作製するための技法も、そのそれぞれの全体が参照により組み込まれる、PCT公開第WO92/22324号;Mullinaxら、1992年、BioTechniques 12巻(6号):864~869頁;Sawaiら、1995年、AJRI 34巻:26~34頁;およびBetterら、1988年、Science 240巻:1041~1043頁に開示されているものなどの当技術分野で公知の方法を使用して利用することができる。
【0086】
全抗体を生成するために、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位、および制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローンにおいてVHまたはVL配列を増幅することができる。当業者に周知のクローニング技法を利用して、PCR増幅されたVHドメインをVH定常領域、例えば、ヒトガンマ1定常領域を発現するベクターにクローニングすることができ、PCR増幅されたVLドメインをVL定常領域、例えば、ヒトカッパまたはラムダ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができる。VHおよびVLドメインを必要な定常領域を発現する1つのベクターにクローニングすることもできる。次いで、当業者に周知の技法を使用して重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを細胞系統に同時トランスフェクトして、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定なまたは一過性の細胞系統を生成する。
【0087】
一部の実施形態では、本発明の抗体または機能性断片を1つまたは複数の診断剤、検出可能剤または治療剤または任意の他の所望の分子とコンジュゲートする(共有結合または非共有結合によるコンジュゲーション)または組換えによって融合する。コンジュゲートしたまたは組換えによって融合した抗体または機能性断片は、特定の療法の有効性の決定などの、臨床試験の手順の一部として、sLeの発現に関連する疾患、例えば、がんまたは腫瘍形成などの発症、発生、進行および/または重症度をモニタリングまたは診断するために有用であり得る。
【0088】
検出および診断は、例えば、本発明の抗体または機能性断片と、これらに限定されないが、放射性材料、例えば、これらに限定されないが、ジルコニウム(89Zr)、ヨウ素(131I、125I、124I、123I、および121I)、炭素(14C、11C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、15O、13N、64Cu、94mTc、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、86Y、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Snなど;および種々の陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出性金属、種々の酵素、例えば、これらに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなど;補欠分子族、例えば、これらに限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなど;蛍光材料、例えば、これらに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンなど;発光材料、例えば、これに限定されないが、ルミノールなど;生物発光材料、例えば、これらに限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなど、ならびに非放射性常磁性金属イオンを含めた、検出可能な物質をカップリングすることによって実現することができる。
【0089】
本発明は、1つまたは複数の治療剤とコンジュゲートした(共有結合または非共有結合によるコンジュゲーション)または組換えによって融合した本発明の抗体または機能性断片の治療的使用をさらに包含する。この場合、例えば、抗体は、細胞毒、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤、または放射活性金属イオン、例えば、アルファ-エミッターなどの治療剤とコンジュゲートするまたは組換えによって融合することができる。細胞毒または細胞傷害剤は、細胞に対して有害である任意の薬剤を含む。治療剤は、化学療法薬、例えば、これらに限定されないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンおよびダウノルビシン(以前はダウノマイシン))など;タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール)およびドセタキセル(タキソテレ);代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルおよびデカルバジン);またはアルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)およびシスプラチン);抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC));アウリスタチン分子(例えば、アウリスタチンPHE、ブリオスタチン1、ソラスタチン(solastatin)10、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF));ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロゲスチン、アンドロゲン、およびエストロゲン);ヌクレオシド類似体(例えばゲムシタビン)、DNA修復酵素阻害剤(例えば、エトポシドおよびトポテカン)、キナーゼ阻害剤(例えば、グリベックまたはメシル酸イマチニブとしても公知の化合物ST1571);細胞傷害剤(例えば、マイタンシン、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド(glucorticoid)、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体またはホモログ、ならびに米国特許第6,245,759号、同第6,399,633号、同第6,383,790号、同第6,335,156号、同第6,271,242号、同第6,242,196号、同第6,218,410号、同第6,218,372号、同第6,057,300号、同第6,034,053号、同第5,985,877号、同第5,958,769号、同第5,925,376号、同第5,922,844号、同第5,911,995号、同第5,872,223号、同第5,863,904号、同第5,840,745号、同第5,728,868号、同第5,648,239号、同第5,587,459号に開示されている化合物);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、R115777、BMS-214662、および、例えば、米国特許第6,458,935号、同第6,451,812号、同第6,440,974号、同第6,436,960号、同第6,432,959号、同第6,420,387号、同第6,414,145号、同第6,410,541号、同第6,410,539号、同第6,403,581号、同第6,399,615号、同第6,387,905号、同第6,372,747号、同第6,369,034号、同第6,362,188号、同第6,342,765号、同第6,342,487号、同第6,300,501号、同第6,268,363号、同第6,265,422号、同第6,248,756号、同第6,239,140号、同第6,232,338号、同第6,228,865号、同第6,228,856号、同第6,225,322号、同第6,218,406号、同第6,211,193号、同第6,187,786号、同第6,169,096号、同第6,159,984号、同第6,143,766号、同第6,133,303号、同第6,127,366号、同第6,124,465号、同第6,124,295号、同第6,103,723号、同第6,093,737号、同第6,090,948号、同第6,080,870号、同第6,077,853号、同第6,071,935号、同第6,066,738号、同第6,063,930号、同第6,054,466号、同第6,051,582号、同第6,051,574号、および同第6,040,305号によって開示されているもの);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、SN-38、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、GG-211(GI147211)、DX-8951f、IST-622、ルビテカン(rubitecan)、ピラゾロアクリジン、XR-5000、サイントピン(saintopin)、UCE6、UCE1022、TAN-1518A、TAN 1518B、KT6006、KT6528、ED-110、NB-506、ED-110、NB-506、ファガロニン(fagaronine)、コラリン(coralyne)、ベータ-ラパコンおよびレベッカマイシン(rebeccamycin));DNA副溝結合物質(例えば、Hoescht色素33342およびHoechst色素33258);アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、リン酸フルダラビンおよび2-クロロデオキシアデノシン);またはそれらの薬学的に許容され得る塩、溶媒和化合物、クラスレート、もしくはプロドラッグであってよい。治療剤は、例えば、これらに限定されないが、セツキシマブ、ベバシズマブ、ハーセプチン(heceptin)、リツキシマブ)などの免疫療法薬であってよい。
【0090】
さらに、本発明の抗体または機能性断片は、例えば、放射活性金属イオン、例えば、213Biなどのなどのアルファ-エミッターなど、または、これらに限定されないが、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含めた放射性金属イオンのコンジュゲートに有用な大環状キレート化剤;または、大環状キレート化剤、例えば、リンカー分子によって抗体または機能性断片に付着させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)などの治療剤とコンジュゲートすることができる。そのようなリンカー分子は一般に当技術分野で公知であり、Denardoら、1998年、Clin Cancer Res. 4巻(10号):2483~90頁;Petersonら、1999年、Bioconjug. Chem.10巻(4号):553~7頁;およびZimmermanら、1999年、Nucl. Med. Biol. 26巻(8号):943~50頁に記載されている。
【0091】
さらに、本発明の抗体または機能性断片は、所与の生物学的応答を改変する治療剤とコンジュゲートする(共有結合または非共有結合によるコンジュゲーション)または組換えによって融合することができる。したがって、治療剤は、古典的な化学的治療剤に限定されると解釈されるべきでない。例えば、治療剤は、所望の生物活性を有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであってよい。そのようなタンパク質としては、例えば、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素およびジフテリア毒素);腫瘍壊死因子、γ-インターフェロン、α-インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス作用物質(例えば、TNF-γ、AIM I、AIM II、FasリガンドおよびVEGF)、抗血管新生作用物質(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンおよび組織因子などの凝固経路の成分)などのタンパク質;生物学的反応修飾物質(例えば、インターフェロンガンマ、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-23、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、および顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカイン);増殖因子(例えば、成長ホルモン)、または凝固作用物質(例えば、カルシウム、ビタミンK、組織因子、例えば、これらに限定されないが、ハーゲマン因子(第XII因子)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン(PK)、凝固タンパク質-第II因子(プロトロンビン)、第V因子、第XIIa因子、第VIII因子、第XIIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第IX因子、第IXa因子、第X因子、リン脂質、およびフィブリン単量体など)を挙げることができる。
【0092】
本発明は、異種タンパク質またはポリペプチドと組換えによって融合または化学的にコンジュゲートして(共有結合または非共有結合によるコンジュゲーション)融合タンパク質を生成する本発明の抗体または機能性断片を包含する。一部の態様では、そのようなポリペプチドの長さは約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90または約100アミノ酸であってよい。一部の態様では、本発明は、本発明の抗体の機能性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)および異種タンパク質またはポリペプチドを有する融合タンパク質を提供する。一実施形態では、抗体または機能性断片と融合させる異種タンパク質またはポリペプチドは、抗体または機能性断片を、sLeを発現する細胞などの特定の細胞型にターゲティングするために有用である。
【0093】
本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、診断剤、検出可能剤または治療剤とコンジュゲートした(共有結合または非共有結合によるコンジュゲーション)または組換えによって融合した本明細書で提供される本発明のいずれかの抗体または機能性断片を含む。一実施形態では、本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、5B1、9H3、5H11または7E3抗体と、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。別の実施形態では、本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、5B1、9H3、5H11または7E3抗体の機能性断片と、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。別の実施形態では、本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、もしくは配列番号14の残基20~145に示されているVHドメインの任意の1つのアミノ酸配列を有するVHドメイン、および/または配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、もしくは配列番号16の残基23~130に示されているVLドメインの任意の1つのアミノ酸配列を有するVLドメインと、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。別の実施形態では、本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、配列番号2、6、10または14に示されているVH CDRの任意の1つのアミノ酸配列を有する1つまたは複数のVH CDRと、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。別の実施形態では、コンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、配列番号4、8、12または16に示されているVL CDRの任意の1つのアミノ酸配列を有する1つまたは複数のVL CDRと、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。別の実施形態では、本発明のコンジュゲートしたタンパク質または融合タンパク質は、それぞれ配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130;配列番号6の残基20~142および配列番号8の残基20~129;配列番号10の残基20~142および配列番号12の残基20~130;または配列番号14の残基20~145および配列番号16の残基23~130に示されている少なくとも1つのVHドメインおよび少なくとも1つのVLドメインと、診断剤、検出可能剤または治療剤とを含む。
【0094】
診断剤、検出可能剤または治療剤(ポリペプチドを含む)と抗体を融合またはコンジュゲートするための方法は周知である。例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Arnonら,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編),243-56頁(Alan R. Liss, Inc. 1985年); Hellstromら,“Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら(編),623-53頁 (Marcel Dekker, Inc. 1987年); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84巻: Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編),475-506頁(1985年); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編),303-16頁(Academic Press 1985年), Thorpeら, 1982年, Immunol. Rev. 62巻:119-58頁;米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,095号、同第5,112,946号、同第7,981,695号、同第8,039,273号、同第8,142,784;米国出願公開第2009/0202536号、同第2010/0034837号、同第2011/0137017号、同第2011/0280891号、同第2012/0003247; EP 307,434; EP 367,166; EP 394,827; PCT公開第WO 91/06570号、同第WO 96/04388号、同第WO 96/22024号、同第WO 97/34631号および同第WO 99/04813号; Ashkenaziら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88巻:10535-10539頁, 1991年; Trauneckerら, Nature, 331巻:84-86頁,1988年; Zhengら, J. Immunol., 154巻:5590-5600頁,1995年; Vilら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89巻:11337-11341頁,1992年;ならびにSenter, Current Opinion in Chemical Biology, 13巻:235-244頁(2009年)を参照されたい。
【0095】
別の態様では、診断剤、検出可能剤または治療剤は、還元した抗体成分のヒンジ領域においてジスルフィド結合を形成させることによって付着させることができる。あるいは、そのような薬剤は、N-サクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)などの異種二官能性(heterobifunctional)架橋剤を使用して抗体成分に付着させることができる。Yuら、Int. J. Cancer 56巻:244号(1994年)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技法は当技術分野で周知である。例えば、Wong、CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING(CRC Press 1991年);Upeslacisら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS、Birchら(編)、187~230頁(Wiley-Liss, Inc. 1995年);Price、「Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies」、MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION、ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION、Ritterら(編)、60~84頁(Cambridge University Press 1995年)を参照されたい。
【0096】
あるいは、診断剤、検出可能剤または治療剤は、抗体のFc領域の炭水化物部分を介してコンジュゲートすることができる。ペプチドを抗体成分と抗体炭水化物部分を介してコンジュゲートするための方法は、当業者には周知である。例えば、全てその全体が参照により組み込まれる、Shihら、Int. J. Cancer. 41巻:832~839頁(1988年);Shihら、Int. J. Cancer. 46巻:1101~1106頁(1990年);およびShihら、米国特許第5,057,313号を参照されたい。一般的な方法は、酸化した炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離のアミン官能を有し、複数のペプチドを担持させた担体ポリマーと反応させることを伴う。この反応により、最初のシッフ塩基(イミン)連結がもたらされ、これを還元によって第二級アミンに安定化して最終的なコンジュゲートを形成することができる。
【0097】
しかし、Fc領域が存在しない場合、例えば、本明細書で提供される抗体機能性断片が望ましい場合でも、診断剤、検出可能剤または治療剤を付着させることが可能である。炭水化物部分を全長抗体または抗体断片の軽鎖可変領域に導入することができる。例えば、全てその全体が参照により組み込まれる、Leungら、J. Immunol.、154巻:5919頁(1995年);米国特許第5,443,953号および同第6,254,868号を参照されたい。工学的に作製した炭水化物部分を使用して診断剤、検出可能剤または治療剤を付着させる。
【0098】
sLeに結合する本発明の抗体機能性断片とコンジュゲートしまたは組換えによって融合した治療剤は、所望の予防または治療効果(複数可)が実現されるように選択することができる。どの治療剤を本発明の抗体または機能性断片とコンジュゲートしまたは組換えによって融合するかを決定する際に、疾患の性質、疾患の重症度、および被験体の状態を考慮することは、臨床医または他の医療関係者の技術レベルの範囲内であることが理解される。
【0099】
本明細書で提供される通り検出可能に標識した、sLeに結合する本発明のコンジュゲートまたは融合抗体または機能性断片は、診断目的で、疾患を検出、診断、またはモニタリングするために使用することができ、ここで、疾患を引き起こすまたは疾患に関連する細胞はsLeを発現する。例えば、本明細書で提供される通り、例えば、これらに限定されないが、胃腸管の腫瘍、乳がん、卵巣がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、膵がん、膵臓腺癌、肺小細胞癌、膀胱腺癌、転移性結腸がん、結腸直腸がん、卵巣印環細胞がん(signet ring ovarian cancer)および転移性癌などのがん細胞および腫瘍は、sLeを発現することが示されている。したがって、本発明は、被験体におけるがんまたは腫瘍形成を検出することを必要とする被験体に本発明のコンジュゲートまたは融合抗体または機能性断片の有効量を投与することによって被験体におけるがんまたは腫瘍形成を検出するための方法を提供する。一部の態様では、検出方法は、sLeに結合する本発明の1種または複数種のコンジュゲートまたは融合抗体または機能性断片を使用して、被験体の細胞または組織試料におけるsLeの発現をアッセイするステップ、およびsLeのレベルを対照レベル、例えば、正常組織試料(例えば、疾患を有さない被験体由来のもの、または疾患が発症する前の同じ被験体由来のもの)におけるレベルと比較し、それにより、アッセイされたsLeのレベルがsLeの対照レベルと比較して上昇していることにより、疾患が示されるステップをさらに含んでよい。そのような診断方法により、医療従事者が他の場合で可能になるよりも早く予防の尺度または侵襲性の処置を使用し、それにより、疾患の発生またはさらなる進行を予防することが可能になり得る。
【0100】
本発明の抗体または機能性断片は、本明細書で提供されるまたは当業者に周知の古典的な免疫組織学的方法を使用して生体試料中のsLe抗原レベルをアッセイするためにも使用することができる(例えば、Jalkanenら、1985年、J. Cell. Biol. 101巻:976~985頁;およびJalkanenら、1987年、J. Cell. Biol. 105巻:3087~3096頁を参照されたい)。sLeを検出するために有用な他の抗体に基づく方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。適切な抗体アッセイ標識は当技術分野で公知であり、それらとして、酵素標識、例えばグルコースオキシダーゼなど;放射性同位元素、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99Tc)など;発光標識、例えばルミノールなど;および蛍光標識、例えばフルオレセインおよびローダミンなど、ならびにビオチンが挙げられる。
【0101】
一態様では、本発明は、ヒトにおける疾患の検出および診断を提供する。一実施形態では、診断は、a)sLeに結合する本発明のコンジュゲートまたは融合タンパク質の有効量を被験体に投与する(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)ステップ、b)コンジュゲートまたは融合タンパク質を被験体におけるsLeが発現している部位に優先的に集中させるために(および、一部の態様では、結合していないコンジュゲートまたは融合タンパク質をバックグラウンドレベルまで除くために)、投与後ある時間間隔をあけるステップ、c)バックグラウンドレベルを決定するステップ、およびd)被験体におけるコンジュゲートまたは融合タンパク質を検出し、その結果、バックグラウンドレベルを上回るコンジュゲートまたは融合タンパク質が検出されることにより、被験体が疾患を有することが示されるステップを含む。バックグラウンドレベルは、検出されたコンジュゲートまたは融合タンパク質の量を特定の系に関して予め決定された標準値と比較することを含めた、種々の方法によって決定することができる。
【0102】
被験体のサイズおよび使用する画像処理系は、診断画像を作成するために必要な画像処理部分の数量を決定し、当業者により容易に決定され得ることが理解される。例えば、ヒト被験体に関して、本発明の抗体または機能性断片とコンジュゲートした放射性同位元素の場合では、注射する放射活性の数量は通常、約5~20ミリキュリーの99Tcに及ぶ。次いで、コンジュゲートはsLeを発現する細胞の場所に優先的に蓄積する。in vivoにおける腫瘍画像処理は、S.W. Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.」(Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer、13章、S.W. BurchielおよびB.A. Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982年)に記載されている。
【0103】
使用する検出可能剤の種類および投与形式を含めたいくつかの変数に応じて、コンジュゲートを被験体における部位に優先的に集中させるため、および結合していないコンジュゲートをバックグラウンドレベルまで除くための投与後の時間間隔は6~48時間または6~24時間または6~12時間である。別の実施形態では、投与後の時間間隔は5~20日または5~10日である。一実施形態では、疾患のモニタリングを、本明細書で提供される診断方法を、例えば、最初の診断の1カ月後、最初の診断の6カ月後、最初の診断の1年後、またはそれよりも後に繰り返すことによって行う。
【0104】
コンジュゲートまたは融合タンパク質の存在は、被験体においてin vivoにおけるスキャンの技術分野で公知の方法を使用して検出することができる。これらの方法は、使用する検出可能剤の種類に依存する。当業者は、特定の検出可能剤を検出するために適した方法を決定することができる。本発明の診断方法において使用することができる方法およびデバイスとしては、これらに限定されないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放出断層撮影法(position emission tomography)(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗体または機能断片を放射性同位元素とコンジュゲートし、被験体において放射線応答性外科用機器を使用して検出する。別の実施形態では、本発明の抗体または機能断片を蛍光化合物とコンジュゲートし、被験体において蛍光応答性スキャン機器を使用して検出する。別の実施形態では、本発明の抗体または機能断片を、ジルコニウム(89Zr)などの陽電子放出性金属または本明細書で提供されるもしくは陽電子放出断層撮影法によって検出可能であることが当技術分野において周知である任意の他の陽電子放出性金属とコンジュゲートし、被験体において陽電子放出断層撮影法を使用して検出する。さらに別の実施形態では、本発明の抗体または機能断片を常磁性標識とコンジュゲートし、被験体において磁気共鳴画像法(MRI)を使用して検出する。
【0105】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗体または機能性断片および薬学的に許容され得る担体を有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物において使用することができる薬学的に許容され得る担体としては、リン酸緩衝食塩水溶液、水、および油・水エマルションなどのエマルション、および種々の型の湿潤剤などの当技術分野で公知の標準の医薬担体のいずれかが挙げられる。これらの医薬組成物は、本発明の抗体または機能性断片を、処置を必要とする被験体の標的領域に送達するのに十分な液体の単位用量形態または任意の他の投薬形態で調製することができる。例えば、医薬組成物は、選択された投与形式、例えば、血管内、筋肉内、皮下、腹腔内などに適した任意の様式で調製することができる。他の任意選択の成分、例えば、医薬品グレードの安定剤、緩衝剤、防腐剤、賦形剤などは、当業者が容易に選択することができる。pH、等張性、安定性などを考慮する医薬組成物の調製は当技術分野の技術レベルの範囲内である。
【0106】
本明細書で提供される本発明の1つまたは複数の抗体または機能性断片を含有する医薬製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を任意選択の生理的に許容され得る担体、賦形剤または安定剤と混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences(1990年)Mack Publishing Co.、Easton、PA)、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保管用に調製することができる。許容され得る担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性のものであり、それらとして、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性物質が挙げられる。
【0107】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、疾患を処置または予防することを必要とする被験体において疾患を処置または予防するための方法を提供する。本発明の方法は、本明細書で提供される医薬組成物の治療有効量を被験体に投与するステップを含み得る。例えば、医薬組成物は、本明細書で提供される1つまたは複数の抗体または機能性断片を含み得る。本発明の方法を使用して処置または予防することができる疾患としては、がん、腫瘍形成および/または転移が挙げられる。特に、本発明の方法は、がん細胞または腫瘍が炭水化物sLeを発現するがんまたは腫瘍形成を処置するために有用である。本発明の方法を使用して処置または予防することができるがんまたは腫瘍の非限定的な例としては、胃腸管の腫瘍、例えば、結腸がん、結腸直腸腺癌、転移性結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、または膵臓腺癌;肺小細胞癌;膀胱腺癌;卵巣印環細胞がん;卵巣がん、転移性癌;および胃、食道、咽喉、尿生殖路、または乳房の腺癌が挙げられる。
【0108】
したがって、一部の態様では、本発明は、がんを処置するまたは腫瘍転移を予防することを必要とする被験体において、抗体またはその機能性断片を有する医薬組成物の治療有効量を投与することによってがんを処置するまたは腫瘍転移を予防するための方法であって、抗体または機能性断片がsLeに結合し、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、方法を提供する。別の態様では、本発明は、がんを処置するまたは腫瘍転移を予防することを必要とする被験体において、抗体またはその機能性断片を有する医薬組成物の治療有効量を投与することによってがんを処置するまたは腫瘍転移を予防するための方法であって、抗体または機能性断片がsLeに結合し、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、方法を提供する。さらに別の態様では、本発明は、がんを処置するまたは腫瘍転移を予防することを必要とする被験体において、抗体またはその機能性断片を有する医薬組成物の治療有効量を投与することによってがんを処置するまたは腫瘍転移を予防するための方法であって、抗体または機能性断片がsLeに結合し、VHドメインおよびVLドメインの両方を含み、VHドメインおよびVLドメインがそれぞれ、配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130;配列番号6の残基20~142および配列番号8の残基20~129;配列番号10の残基20~142および配列番号12の残基20~130ならびに配列番号14の残基20~145および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法を提供する。
【0109】
本明細書に記載されているものなどの製剤は、処置する特定の疾患に対する必要に応じて2種以上の活性化合物を含有してもよい。ある特定の実施形態では、製剤は、本発明の抗体または機能性断片と、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する1種または複数種の活性化合物とを含む。そのような分子は、意図された目的のために有効な量で組み合わせて適切に存在する。例えば、本発明の抗体または機能性断片は、1種または複数種の他の治療剤と組み合わせることができる。そのような併用療法は、被験体に同時にまたは逐次投与することができる。
【0110】
したがって、一部の態様では、本発明は、疾患を治療または予防することを必要とする被験体に本明細書で提供される医薬組成物の治療有効量を投与することによって疾患を治療または予防するための方法であって、医薬組成物が本発明の抗体または機能性断片と第2の治療剤とを含む、方法を提供する。適切な第2の治療剤は、本明細書で論じられている通り当業者が容易に決定することができる。本明細書において実施例IVで提示されている通り、本発明の一部の態様では、第2の治療剤はタキソールであってよい。
【0111】
本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体中で、本明細書で提供される本発明の抗体の1つまたは複数の治療有効量、および任意選択で1種または複数種の追加的な治療剤を含有する。そのような医薬組成物は、がんもしくは腫瘍形成などの疾患、またはその症状の1つもしくは複数の予防、処置、管理または好転において有用である。
【0112】
医薬組成物は、本発明の1つまたは複数の抗体または機能性断片を含有してよい。一実施形態では、抗体または機能性断片を、非経口投与用の滅菌溶液または懸濁剤などの適切な医薬調製物に製剤化する。一実施形態では、本明細書で提供される抗体または機能性断片を、当技術分野で周知の技法および手順を使用して医薬組成物に製剤化する(例えば、Ansel(1985年)Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版、126頁を参照されたい)。
【0113】
本発明の抗体または機能性断片は、処置される被験体に対して、望ましくない副作用がなく、治療的に有用な効果が発揮されるのに十分な治療有効量で医薬組成物中に含めることができる。治療有効濃度は、常套的な方法を使用して化合物をin vitroおよびin vivo系において試験し、次いで、そこからヒトに対する投薬量を推定することによって経験的に決定することができる。医薬組成物中の抗体または機能性断片の濃度は、例えば、抗体または機能性断片の物理化学特性、投薬スケジュール、および投与量、ならびに当業者に周知の他の因子に左右される。
【0114】
一実施形態では、治療有効投薬量により、約0.1ng/mlから約50~100μg/mlまでの、抗体または機能性断片の血清中濃度がもたらされる。別の実施形態では、医薬組成物により、1日当たり体重1キログラム当たり抗体約0.001mgから約500mgまでの投薬量がもたらされる。医薬単位剤形(dosage unit form)を、単位剤形当たり約0.01mg、0.1mgまたは1mgから約30mg、100mgまたは500mgまで、一実施形態では約10mgから約500mgまでの抗体もしくは機能性断片および/または他の任意選択の基本的な成分の組合せがもたらされるように調製することができる。
【0115】
本発明の抗体または機能性断片は、一度に投与することもでき、時間間隔をあけて投与するいくつかのより小さな用量に分けることもできる。処置の正確な投薬量および持続時間は、処置される疾患に応じ、公知の試験プロトコールを使用して、またはin vivoもしくはin vitroにおける試験データを外挿することによって、経験的に決定することができることが理解される。濃度および投薬量値は、軽減しようとする状態の重症度によっても変動し得ることに留意すべきである。任意の特定の被験体に対して、個々の必要性および組成物の投与を管理または監督する人の専門的な判断に応じて特定の投薬レジメンを経時的に調整することができること、および本明細書に記載されている濃度範囲は単なる例示であり、特許請求された組成物の範囲または実施を制限するものではないことがさらに理解されるべきである。
【0116】
本発明の抗体または機能性断片を混合または添加した際に生じる混合物は、溶液、懸濁液などであってよい。生じる混合物の形態は、意図された投与形式および選択された担体またはビヒクル中での化合物の溶解性を含めたいくつかの因子に左右される。有効濃度は、処置される疾患、障害または状態の症状を好転させるのに十分であり、経験的に決定することができる。
【0117】
医薬組成物は、ヒトおよび動物に、化合物または薬学的に許容され得るそれらの誘導体の適切な分量を含有する滅菌非経口用溶液または懸濁液などの単位剤形(unit dosage form)で投与するように提供される。一実施形態では、抗体または機能性断片は、単位剤形または複数剤形(multiple-dosage form)で製剤化し投与することができる。単位剤形(unit-dose form)とは、ヒトおよび動物被験体に適するものであり、当技術分野で公知の通り個別に包装された物理的に別個の単位を指す。各単位用量は、所望の治療効果をもたらすのに十分な本発明の抗体または機能性断片の所定数量を、必要な医薬担体、ビヒクルまたは希釈剤を伴って含有する。単位剤形の例としては、アンプルおよびシリンジが挙げられる。単位剤形は、その分数または倍数で投与することができる。複数剤形(multiple-dose form)は、単位剤形を分けて投与するように単一の容器内に包装された複数の同一の単位剤形である。複数剤形の例としては、パイントまたはガロンのバイアルまたはビンが挙げられる。したがって、複数剤形は、包装が分けられていない複数の単位用量である。
【0118】
一実施形態では、本発明の1種または複数種の抗体または機能性断片は、液体医薬製剤中にある。薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば、本明細書で提供される抗体または機能性断片と任意選択の医薬アジュバントを、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体中に溶解させるか、分散させるか、または他のやり方で混合して、それにより、溶液を形成することによって調製することができる。所望であれば、投与される医薬組成物は、微量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のそのような薬剤も含有してよい。そのような剤形の実際の調製方法は当業者に公知である、または明らかになる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990年)Mack Publishing Co.、Easton、PAを参照されたい。
【0119】
本発明の医薬組成物を投与するための方法は当技術分野で周知である。医薬組成物の適切な投与経路は、熟練臨床医が容易に決定することができることが理解される。例示的な投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射または皮下注射が挙げられる。さらに、医薬組成物の製剤は、投与経路に適応するように容易に調整することができることが理解される。本発明は、本発明の医薬組成物の投与後に、本明細書で提供される1種または複数種の医薬組成物の遅延、連続的および/または反復投薬を被験体に施すことができることも提供する。
【0120】
疾患を処置するための本発明の方法は、(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患の素因があり得るが、まだ疾患の症状を経験しておらず、現していない被験体において疾患の臨床症状が発生しないようにすること;(2)疾患を阻害すること、すなわち、疾患もしくはその臨床症状の発生を静止もしくは低下させること;または(3)疾患を軽減すること、すなわち、疾患もしくはその臨床症状の退縮を引き起こすことを含むものとする。疾患を予防するための本発明の方法は、がんまたは腫瘍形成を示す臨床症状を未然に防ぐことを含むものとする。そのような未然に防ぐことは、例えば、被験体における正常な生理的指標の維持を含む。したがって、予防は、被験体を腫瘍転移の出現から保護するための被験体に対する予防的処置を含み得る。
【0121】
本発明の方法において使用される医薬組成物の治療有効量は、使用される医薬組成物、疾患およびその重症度、ならびに処置される被験体の年齢、体重などに応じて変動し、これらは全て、担当臨床医の技能の範囲内である。本発明の方法によって処置される被験体は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを含む。
【0122】
本発明の種々の実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない改変も本明細書で提供される本発明の定義の範囲内で提供されることが理解される。したがって、以下の実施例は、例示であるが本発明を限定するものではないものとする。
【実施例0123】
(実施例I)
sLeに対するヒトモノクローナル抗体は強力な抗腫瘍活性を有する
【0124】
炭水化物抗原sLeは、胃腸管、乳房、および膵臓の上皮腫瘍上、ならびに小細胞肺がん上に広範に発現する。sLeの過剰発現は多くの腫瘍の浸潤および転移における重要な事象であると思われ、抗体に媒介される溶解を受けやすくなるので、sLeは腫瘍療法の魅力的な分子標的である。したがって、本明細書に記載の通り、sLe-KLHワクチンを用いて免疫した個体由来の血液リンパ球由来の完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)を生成し特徴付けた。ELISAおよびFACSに基づいて、sLeに対する親和性が高い2種のmAb(5B1および7E3、結合親和性がそれぞれ0.14および0.04nmol/L)を含めたいくつかのmAbを選択し、さらに特徴付けた。どちらの抗体も、グリカンアレイ解析によって決定したところNeu5Acα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβおよびNeu5Gcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβに特異的であった。DMS-79細胞に対する補体依存性細胞傷害は、r7E3(IgM)の方がr5B1(IgG1)よりも高かった(EC50、0.1μg/mL対1.7μg/mL)。さらに、r5B1抗体はヒトNK細胞または末梢血単核細胞を用いてDMS-79細胞に対する高レベルの抗体依存性細胞傷害活性を示した。in vivoにおける有効性を評価するために、異種移植モデルにおいて、重症複合免疫不全(SCID)マウスに植え付けたColo205腫瘍細胞またはDMS-79腫瘍細胞を用いて抗体を試験した。Colo205異種移植モデルでは、最初の21日間のr5B1の4回投薬(投薬当たり100μg)を用いた処置により、生存期間中央値が207日に倍増し、動物5匹中3匹が6回の投薬で生存した。DSM-79異種移植モデルでは、r5B1抗体で処置した動物において、樹立DMS-79腫瘍の成長が抑制されたまたは退縮した。免疫攻撃の標的としてのsLeの潜在性ならびにそれらの親和性、特異性、およびエフェクター機能に基づいて、5B1および7E3には、がんの処置における臨床的な有用性がある。
【0125】
材料、細胞、および抗体
DMS-79(Pettengillら、Cancer、45巻:906~18頁(1980年))、SW626、EL4、HT29、BxPC3、SK-MEL28、およびP3×63Ag8.653細胞系統はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。Colo205-luc細胞(Bioware ultra)はCaliper Life Sciencesから入手した。ネズミ対照mAb 121SLE(IgM)は、GeneTexから購入した。sLe四糖(Cat番号S2279)はSigma-Aldrichから購入した。sLe-HSA(ヒト血清アルブミン)コンジュゲート(Cat番号07-011)、一価ビオチン化sLe(sLe-sp-ビオチン;Cat番号02-044)、多価ビオチン化sLe-PAA(Cat番号01-044)、ビオチン標識Le-PAA(Cat番号01-035)、およびsLe-PAA-ビオチン(Cat番号01-045)はGlycoTechから購入した。多価の提示形態では、四糖をポリアクリルアミドマトリックス(PAA)に組み入れ、それにより、ポリマー鎖のおよそ5番目のアミド基ごとに4:1の比でビオチンによりN置換されており、炭水化物含有量がおよそ20%である30kDaの多価ポリマーを創出した。この研究において使用した他のHSAまたはBSA複合糖質は、記載の通りsLeペンテニル配糖体を使用して社内で調製した。Ragupathiら、Cancer Immunol Immunother、58巻:1397~405頁(2009年)。GD3、フコシル-GM1、GM2、およびGM3はMatreyaから購入し、GD2はAdvanced ImmunoChemicalから購入した。
【0126】
抗sLemAb産生ハイブリドーマの生成
MSKCCにおいて、MSKCCおよびFDAの認可を受けたIRBプロトコールおよびINDの下で開始された、乳がんの患者におけるsLe-KLHコンジュゲートワクチンを用いた進行中の治験における患者3名から血液試料を得た。3回または4回のワクチン接種後の患者2名から血液検体を選択し、これらはsLeに対してそれぞれ1/160および1/320の抗体価を示した。これらの血清(およびネズミmAb19.9)はFACSアッセイにおいてsLe陽性細胞系統と十分に反応し、強力なCDCを媒介する。Ragupathiら、Cancer Immunol Immunother、58巻:1397~405頁(2009年)。およそ80~90mLの血液からHistopaque-1077(Sigma-Aldrich)での勾配遠心分離によって末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0127】
L-グルタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、ビタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%FBS(Omega Scientific)、10ng/mLのIL-21(Biosource)、および1μg/mLの抗CD40 mAb(G28-5ハイブリドーマ上清;ATCC)を補充したRPMI-1640培地でPBMCを培養した。細胞を電気融合によってP3×63Ag8.653骨髄腫細胞と融合した。
【0128】
sLe ELISA
sLe ELISAのために、プレートを、1μg/mLのsLe-HSAコンジュゲート、一価ビオチン化sLeを用いて、またはNeutr-アビジンでコーティングしたプレート上に捕捉した多価ビオチン化sLe-PAAを用いてコーティングした。コーティングしていないウェル(PBS)およびHSAでコーティングしたウェルを対照として使用した。結合した抗体を、最初に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ヒトIgA+G+M(Jackson ImmunoResearch)を用いて検出し、陽性ウェルをその後、IgG-FcまたはIgM特異的二次抗体を用いてプローブしてアイソタイプを決定した。
【0129】
炭水化物特異性分析
密接に関連する抗原、LeおよびsLeに対する交差反応性を表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価し、ビオチン標識Le-PAAおよびビオチン-sLe-PAAを使用したELISAによって確認した。ガングリオシドGD2、GD3、フコシル-GM1、GM2、およびGM3への結合をELISAによって試験した。競合ELISAを使用して、いくつかの他の関連する炭水化物部分に対するmAbの特異性を評価した。簡単に述べると、2μg/mLのsLe-HSAコンジュゲートをプレートにコーティングし、その後、PBS中3%BSAでブロッキングした。次に、コンジュゲートしていないか、またはHSAもしくはBSAとコンジュゲートした異なる炭水化物部分30μL(1mg/mLの保存溶液から調製したPBS中40μg/mL)を別々に試験抗体30μLと混合し、試料プレート中、室温でインキュベートした。30分後、混合物50μLを、コーティングしたアッセイプレートに移し、1時間インキュベートし、その後、HRP標識したヤギ抗ヒトIgA+G+Mと一緒にインキュベートし、洗浄し、Versamax spectrofluorometerを使用して結合した抗体を比色定量検出した(全てのステップを室温で行った)。試験した炭水化物部分としては、globo H、Lewis Y、Lewis X、シアリル-Thomson-nouveaux(sTn)、clustered sTn、Thomson Friedenreich(TF)、Tighe Le/Leムチン、ブタ顎下ムチン(porcine submaxillary mucin)(PSM)、およびsLe四糖およびsLe-HSAコンジュゲートが含まれた。抗体の細かい特異性を決定するために、Consortium for Functional Glycomics Core H groupによるグリカンアレイ解析を行った。465種のグリカンからなるprinted arrayのバージョン4.1を使用して6連で10μg/mLの5B1および7E3抗体を試験した。
【0130】
免疫グロブリンcDNAクローニングおよび組換え抗体発現
ヒトmAb重鎖および軽鎖の可変領域cDNAをRT-PCRによって個々のハイブリドーマ細胞系統から回収し、以前に記載されている通りIgG1もしくはIgM重鎖発現ベクターまたはIgKもしくはIgL軽鎖発現ベクターにサブクローニングした。Sawada-Hiraiら、J. Immune Based Ther. Vaccines、2巻:5頁(2004年)。Ig重鎖または軽鎖発現ベクターをNot IおよびSal Iで2重消化し、次いで、両方の断片をライゲーションして二重遺伝子発現ベクターを形成した。6ウェルプレート中のCHO細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して二重遺伝子発現ベクターをトランスフェクトした。24時間後に、トランスフェクトされた細胞を、選択培地[10%透析FBS(Invitrogen)、50μmol/LのL-メチオニンスルホキシイミン(MSX)、GS supplement(Sigma-Aldrich)、およびペニシリン/ストレプトマイシン(Omega Scientific)を補充したDMEM]を伴う10cmのディッシュに移した。2週間後、MSX耐性トランスフェクタントを単離し、拡大増殖させた。sLe特異的ELISAアッセイにおいて上清中の抗体レベルを測定することによって高抗sLe抗体産生クローンを選択し、大規模mAb産生のために拡大増殖させた。
【0131】
ヒトmAb精製
Unicorn5.0ソフトウェアを実行するAekta Explorer(GE Healthcare)システムを使用して抗体を精製した。簡単に述べると、5B1または7E3の安定なクローンをWaveバイオリアクター中、無血清培養培地で成長させ、回収した上清を遠心分離および濾過によって清澄化し、使用するまで冷蔵保管した。ヒトIgG抗体を、適切なサイズにしたプロテインAカラムで10mmol/LのPBSおよび150mmol/LのNaClランニング緩衝液を使用して精製した。ヒトIgM抗体をヒドロキシアパタイトカラムで精製し、500mmol/Lのリン酸の勾配を用いてIgMを溶出した。IgGおよびIgMについて、それぞれE1%1.4および1.18を使用してOD280によって抗体濃度を決定して濃度を算出した。各調製物の純度を還元性条件下でSDS-PAGE分析によって評価し(レーン当たり1~5μg)、純度は重鎖および軽鎖の合計に基づいて90%超であった。
【0132】
フローサイトメトリー
sLe陽性または陰性腫瘍細胞系統(条件当たり細胞0.5×10個)をPBS/2%FBS(PBSF)中で洗浄した。次いで、試験または対照ヒトmAbを添加し(完全培地中1~2μg/mL)、氷上で30分インキュベートした。Gilewskiら、Clin Cancer Res、6巻:1693~701頁(2000年);Gilewskiら Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、98巻:3270~5頁(2001年)。PBSF中で洗浄後、細胞をAlexa-488抗ヒトIgG-Fcγまたは抗ヒトIgM-μ(Invitrogen)と一緒に氷上で30分インキュベートした。細胞をPBSF中で2回洗浄し、Guava Personal Cell Analysis-96(PCA-96)System(Millipore)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。Colo205-luc細胞を、2μg/mLの一次抗体と一緒にインキュベートし、その後、SouthernBiotechからの二次抗体を用いて染色し、Becton Dickinson FACS Advantage IV instrumentでFlowJo7.2.4ソフトウェアを使用して分析した。
【0133】
親和性の決定
Biacore3000(GE Healthcare)でSPRの原理を使用して親和定数を決定した。ビオチン標識した一価sLe(Cat番号02-044)または多価sLe-PAA-ビオチン(Cat番号01-044)をSPAバイオセンサーチップの別々のフローセルに製造者の説明書に従ってカップリングした。HSA、および遊離のビオチンを含有する培養培地を用いてブロッキングしたフローセルを参照細胞として使用した。HBS-EP緩衝液(10mmol/LのHEPES、pH7.4、150mmol/LのNaCl、3.4mmol/LのEDTA、0.005%の界面活性物質P20)中に希釈したいくつかの既知濃度の抗体から、sLe-PAA-ビオチンでコーティングしたフローセルを使用して結合速度パラメータを決定した。Biacore instrumentから提供された曲線あてはめソフトウェアを使用して、親和性を算出するための会合および解離速度の推定値を出した。
【0134】
CDCアッセイ
sLe抗原陽性および陰性細胞系統を、以前に記載されている通り、ヒト補体(Quidel;Cat番号A113)および種々の希釈度(0.1~25μg/mL)の精製ヒトmAbを使用した、または陽性対照mAbを用いた90分細胞傷害アッセイ(Guava PCA-96 Cell-Toxicityキット;Millipore;Cat番号4500-0200)のために使用した(Ragupathiら Clin Cancer Res 2003年、9巻:5214頁;Ragupathiら Int J Cancer 2000年、85巻:659頁;Dicklerら Cancer Res 1999年、5巻:2773頁)。簡単に述べると、標的細胞2.5×10個にカルボキシフルオレセイン二酢酸サクシニミジルエステル(carboxyfluorescein diacetate succinymyl ester)(CSFE)を塗布して緑色/黄色蛍光標的細胞を得た。塗布された細胞(試料50μL当たり1×10個)を抗体100μLと一緒に氷上で40分インキュベートした。次に、完全培地(RPMI-1640、10%FCS)中1:2に希釈したヒト補体50μLまたは培地単独を3連の試料に添加し、37℃で90分インキュベートした。したがって、アッセイにおける最終的な補体の希釈度は1:8であった。このインキュベート時間の間に死滅した細胞を、膜不浸透性色素7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)を添加することによって標識し、Guava CellToxicity software moduleを利用した二色免疫蛍光法によって試料を分析した。NP40を添加した対照試料を最大死滅を決定するために使用し、補体単独を添加した試料はベースラインとしての機能を果たした。死滅した細胞の百分率を、適切なゲーティングによって決定し、次式に従って算出した:死滅%=[(試料%-補体単独%)/(NP40%-補体単独%)]×100。
【0135】
抗体依存性細胞傷害アッセイ
PBMCエフェクター細胞を、MSKCC IRBの認可を受けたプロトコールの下で得た血液試料からFicoll-Hypaque密度遠心分離によって単離した。標的細胞を完全成長培地1mL当たり細胞5×10個で、0.1%カルセイン-AM溶液(Sigma-Aldrich)15μLと一緒に、5%COの存在下、37℃で30分インキュベートした。細胞を15mLのPBS-0.02%EDTAで2回洗浄し、完全成長培地1mLに再浮遊させた。標識した標的細胞50マイクロリットル(細胞10,000個)を図13に記載の濃度の抗体の存在下または不在下で96ウェルプレートにプレーティングし、新鮮に単離した末梢血単核細胞(エフェクター細胞、E/T比100:1)50μLと一緒に適宜インキュベートした。2時間インキュベートした後に、プレートを300×gで10分遠心分離し、上清75μLを新しい平底96ウェルプレートに移した。上清における蛍光をFluoroskan Ascent(Thermo Scientific)で485nmにおける励起および535nmにおける放出で測定した。30%FBSを伴い、エフェクター細胞を伴わないRPMI-1640培地中の標的細胞から自然放出を決定し、30%FBSおよび6%トリトンX-100を伴い、エフェクター細胞を伴わないRPMI-1640培地中の標的細胞から最大放出を決定した。パーセント細胞傷害性を[(試料における計数-自然放出)/(最大計数-自然放出)]×100として算出した。
【0136】
mAb内部移行アッセイ
5B1抗体の内部移行を、2連で96ウェルプレートにプレーティングし(細胞2,000個/90μL/ウェル)、一晩インキュベートしたsLe発現BxPC3細胞に対するr5B1およびHum-ZAP二次コンジュゲート(Advanced Targeting Systems)複合体の細胞傷害活性を測定することによって評価した。様々な濃度の5B1抗体を、Hum-ZAP二次コンジュゲートと一緒に、製造者の説明書に従い、室温でインキュベートした。次に、10μL/ウェルのr5B1およびHum-ZAP複合体を細胞に添加し、3日間インキュベートした。Thiazolyl Blue Tetrazolium Bromide(Sigma-Aldrich)溶液(PBS中5mg/mL)25マイクロリットルを各ウェルに添加し、37℃でインキュベートした。2時間インキュベートした後に、100μL/ウェルの可溶化溶液(20%SDS/50%N,N-ジメチルホルムアミド)を各ウェルに添加し、37℃でさらに16時間インキュベートした。570/690nmにおいてODを測定し、培地単独を用いて得られた値をプレートバックグラウンド減算のために使用した。抗体を伴わない8つの並行した培養物を使用して試料の値を正規化した(試料/無処理平均×100)。
【0137】
異種移植モデル
雌CB17 SCIDマウス(5~8週齢)をTaconicから購入した。Colo205異種移植モデルのために、完全成長培地0.1mL中Colo205-luc細胞(0.5×10個)を、0日目に28G針を伴うBDインスリンシリンジ(Becton Dickinson&Co)を使用して尾静脈に注射した。第1の研究については、100マイクログラムのmAb 5B1を1日目、7日目、14日目、および21日目(実験1)または1日目、4日目、7日目、10日目、14日目、および21日目(実験2)に腹腔内に注射した。第2の研究については、100μg、300μgまたは1mgのmAb 5B1を腫瘍細胞注射の4日後、次いで、最初の2週間にわたって週2回および次の7週間にわたって週1回、腹腔内注射した。マウスを腫瘍の発生についてモニタリングした。DMS-79異種移植モデルについては、DMS-79細胞(1×10)を雌CB17 SCIDマウスに皮下注射し、腫瘍の長さが5mm(約20mm)に到達した後、19日目にマウスの処置を開始した。次いで、動物を、ヒトIgGまたは5B1抗体を投薬当たり200μgで腹腔内注射し、それに加えて、血管透過性を上昇させるためにcRGDを最初に80μg、次いで1週間当たり5日、投薬当たり40μgを37日目まで静脈内注射することにより処置した。
【0138】
全ての手順をMemorial Sloan Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committeeによる認可を受けたプロトコールの下で行った。GraphPad Prism 5.1(GraphPad Software)を使用してカプラン・マイヤー生存曲線を作成し、Mantel-Haenszelログランク検定を使用して解析した。
【0139】
結果
ELISAによるヒトモノクローナル抗体の同定および組換え抗体の生成 ワクチン接種を受けた患者3名由来の血液試料をハイブリドーマ生成の試みのために使用し、抗原特異的ELISAアッセイにおいて多くの陽性ウェルが検出された(表3)。広範囲にわたるスクリーニングを使用して、劣ったまたは非特異的な結合を示す抗体を排除した。sLeに対して強力な反応性を有する8つのヒト抗体発現ハイブリドーマ細胞(IgMが1つおよびIgGが7つ)を最初に選択し、拡大増殖させ、さらに特徴付けるためにサブクローニングした。2種の抗体(9H1および9H3)はsLe-HSAコンジュゲートへの強力な結合を示したが、sLe-PAAでコーティングしたプレートへの結合は示さなかった。3種の抗体(5B1、5H11、および7E3)はELISAアッセイによって測定したところ一価sLe、多価sLeおよびsLe-HSAコンジュゲートへの強力な結合を示した(表4)。
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
4種の選択された抗体由来の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をRT-PCRによって回収し、我々の全長IgG1またはIgM発現ベクターにクローニングした。IMGT/V-Questを使用した分子配列解析(Brochetら、Nucleic Acids Res.、36巻:W503~8頁(2008年))により、3種の選択されたIgG抗体、5B1(IgG/λ)、9H3(IgG/λ)、および5H11(IgG/λ)が同じVHファミリーに由来すること、および全てラムダ軽鎖が使用されていることが明らかになった。これらのIgG1抗体は、生殖細胞系列から外れた変異をそれぞれ16個、5個、または3個伴う異なるCDR配列を示した(図1~6;表5)。IgM抗体(7E3)ではカッパ軽鎖が利用され、重鎖変異が6個ある(図7~8;表5)。5B1における変異の増加により、親和性成熟が示される。ウェーブバイオリアクターシステム中、CHO細胞系統において組換え抗体を産生させ、IgGおよびIgMに対してそれぞれプロテインAまたはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを使用して精製した。精製された組換え抗体は、ELISAでの結合および特異性に関して元のハイブリドーマ由来の抗体の性質を保持した。
【0143】
【表5】
【0144】
腫瘍細胞結合の分析
細胞表面結合は細胞傷害活性に関して極めて重要であり、したがって、これを次に試験した。フローサイトメトリーにより、5B1、9H3、5H11、および7E3組換え抗体のDMS-79細胞、小細胞肺がん浮遊細胞系統への強力な結合が示された(図11A)。r5B1およびr7E3の結合は、HT29結腸がん細胞(図11B)、BxPC3膵がん細胞(図11C)、SW626卵巣がん細胞(図11D)、およびColo205-luc結腸がん細胞(図11F)でも確認された。これらの抗体は、sLe陰性(SLE121-陰性)SK-MEL28メラノーマ細胞(図11E)またはEL4マウスリンパ腫の細胞には結合することができなかった(データは示していない)。
【0145】
親和性測定
sLeへの結合の相対的な親和性/結合活性を、ビオチン化sLe-PPAを捕捉するためにストレプトアビジンでコーティングしたバイオセンサーチップを使用してSPRによってプローブした。表6に示されている通り、r5B1およびr7E3は、sLe-PPAに迅速に結合し、比較のために使用した市販のネズミIgM抗sLe抗体である121SLEと比較して有意に遅い解離速度(off-rate)を示す。5B1の親和性を0.14nmol/Lで測定し、7E3の見かけの親和性/結合活性はおよそ4倍高かった(表6)。9H3親和性の決定は、9H3抗体(ネイティブなおよび組換え)がsLe-PAAでコーティングしたバイオセンサーチップに結合できないことにより阻止された。
【0146】
【表6】
【0147】
特異性分析
炭水化物特異性をプローブするための予備アッセイにより、ELISAまたはSPRによって測定して、5B1、9H3、および7E3は密接に関連するsLe、Le、およびLe抗原にもガングリオシドGD2、GD3、フコシル-GM1、GM2、およびGM3にも結合しないことが示された。Biacoreアビジンチップに捕捉したsLe-PAA-ビオチンまたはsLe-sp-ビオチンへの7E3、5B1および121SLEの結合に関する追加的な分析により、3種の抗体全てが多価の形態のsLeに結合することが示され、一方では7E3および5B1が一価の形態に結合することが見いだされた。同様に、Biacore濃度分析シリーズにおいて、5B1のsLe-PAAへの結合はsLe四糖によって用量依存的に阻害された(データは示していない)。これらの結果は、抗sLe抗体価が高い血清はsLeに特異的である、すなわちELISAによりガングリオシドGM2、GD2、GD3、フコシルGM1、または中性糖脂質globo HおよびLeとは反応しないことが見いだされた以前の観察と一致する。Ragupathiら、Cancer Immunol Immunother 58巻:1397~405頁(2009年)。9種の別個の関連する炭水化物部分を種々の提示形態で(例えば、セラミドとして、またはBSAもしくはHSAとコンジュゲートして)用いた競合アッセイでは、sLe四糖およびsLe-HSAコンジュゲートだけがsLe-HSAコンジュゲートへの結合を阻害することができた(表7)。
【0148】
【表7】
【0149】
炭水化物特異性をさらに詳細に調査するために、Consortium for Functional Glycomics Core H groupにより行われたグリカンアレイ解析によって5B1および7E3抗体も試験した。どちらの抗体も、465種のグリカンからなるprinted arrayにおいて10μg/mLで6連で試験した。結果により、どちらの抗体も特異性が高いことが確認され、sLe四糖、Neu5Acα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβおよびNeu5Gcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβが選択的に認識され、また、sLe、Le、Le、およびLeを含めた、アレイに存在していた密接に関連する抗原への結合は事実上存在しなかった。結果が表8に要約されており、465種のグリカン構造のうち、それぞれの抗体によって認識された上位5種が示されている。
【0150】
【表8】
【0151】
CDC活性
5B1および7E3の機能活性を評価するために、DMS-79細胞を用い、補体の供給源としてヒト血清の存在下で細胞傷害活性を試験した。どちらの抗体も、いくつかのアッセイにおいて10μg/mLでほぼ100%の死滅活性を示したが、特異性が異なる対照抗体(1B7、抗GD2 IgG1 mAb)は同じ濃度で効果を有さなかった(データは示していない)。CDC活性は濃度依存性であり、このアッセイでは7E3が5B1よりも有意に活性が高く(図12)、これは、補体媒介性細胞傷害アッセイにおいてIgM抗体がより有効であることが分かっていたので、予測される。EC50(50%細胞傷害性)は、5B1については1.7μg/mLであり、7E3については0.1μg/mLであり、これを変換すると、モル濃度ベースでは7E3の効力がおよそ85倍大きい(図12)。
【0152】
ADCC活性
CDCアッセイでは7E3の効力が有意に大きいが、IgG抗体は、in vivoにおける腫瘍の死滅に関して重要であると考えられている抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有することが公知である。5B1抗体をヒトPBMCおよびDMS-79標的細胞と種々のE:T比で使用して、高レベルの細胞傷害性が測定された(図13A)。初代NK細胞ではより低いE:T比で同様のレベルの細胞傷害性が観察された(図13B)。E/T比100:1で測定した、2ドナー由来のPBMCを用いた用量-応答実験により同様の有効性が示され、0.5μg/mLまたはそれ超の濃度の5B1で細胞傷害性が85%超に達した(図13C)。5B1によって媒介される細胞傷害性は、3G8抗CD16抗体で遮断することができるので、FcγRIII受容体を必要とする。5B1抗体とヒトPBMCをColo205-luc細胞に対してE:T比100:1で使用して同様に高レベルの細胞傷害性が測定された。1μg/mLの5B1抗体を用いて実現されたADCC活性は、GM2、フコシル-GM1、globo H、またはポリシアル酸に対する抗体を用いて観察された活性よりも優れていた。予測通り、7E3およびネズミ121SLE(どちらもIgMである)はこのアッセイでは不活性であった。
【0153】
5B1内部移行アッセイ
Lewis Yに「密接に関連する」抗原を対象とする抗体コンジュゲートは、急速に内部移行し、動物モデルにおいて非常に有効であることが以前に示されている。Hellstromら、Cancer Res 50巻:2183~90頁(1990年);Trailら、Science 261巻:212~5頁(1993年)。sLeが内部移行するかどうかを調査するために、膵臓細胞系統BxPC3を5B1と一緒にインキュベートし、次いで、リボソーム不活化タンパク質サポリンとコンジュゲートした抗ヒトIgGであるHum-ZAPを添加した。Kohlsら、Biotechniques 28巻:162~5頁(2000年)。サポリンを含有する複合体が内部移行した細胞は死滅するが、サポリンが内部移行しないことにより細胞は無傷のままになる。図14に示されている通り、BxPC3細胞は漸増用量の5B1の存在下で有効に死滅するが、これらの細胞では発現しないGD2を対象とする、アイソタイプを適合させたIgG1抗体が存在することでは細胞は死滅しない。
【0154】
転移に関する異種移植動物モデルにおける活性
in vivoにおける5B1の活性を評価するために、SCIDマウスにColo205-luc腫瘍細胞またはDMS-79腫瘍細胞のいずれかを使用した2種の異種移植モデルにおいて抗体を試験した。Colo205-luc腫瘍細胞を使用した異種移植モデルについては、群当たり5匹のマウスに対し、0日目に細胞0.5×10個を尾静脈に注射し、上首尾の細胞の注射を、IVIS 200 in vivo imaging system(Caliper Life Sciences)を使用して動物を画像処理することによって検証した。1日後、動物を、腹腔内に与えた5B1抗体またはPBS偽注射で処置した。実験1では、100μgの5B1を1日目、7日目、14日目、および21日目に与え(総用量400μg)、実験2では、動物に100μgの5B1を1日目、4日目、7日目、10日目、14日目、および21日目に与えた(総用量600μg)。2つの実験における無処置の動物の平均生存期間中央値は102日であり、無処置の動物は全て155日以内に死亡した(図15)。動物を処置することにより、生存が有意に改善され、5B1を4回投薬した群における生存期間中央値は207日に倍増し、動物5匹中2匹が301日後に実験が終了するまで生存した(ログランク検定、P=0.0499;HR=3.46)。6回投薬を施した場合には生存動物の割合はマウス5匹中3匹にさらに増加した(ログランク検定、P=0.0064;HR=6.375)。第2の実験を308日後に終了し、生存していた動物では画像処理系の最も高い感度でColo205-luc腫瘍を明らかにすることができなかった(データは示していない)。
【0155】
第2の研究では、上記の通りColo205-luc腫瘍細胞を同様に注射したマウスを、漸増用量の5B1または7E3抗体(100μg、300μgまたは1mg)で処置した。全ての動物に、5B1または7E3抗体の腹腔内注射またはPBS偽注射(対照)を、最初に腫瘍細胞注射の4日後、次いで、最初の2週間にわたって週2回、および次の7週間にわたって週1回行った。Colo205-luc腫瘍細胞を植え付けたSCIDマウスにおいて、様々な用量の5B1を用いた遅延処置により、完全な治癒に至るまでの用量依存性の保護が示された(図16および17)。7E3抗体を用いた処置では、見かけの親和性の増加にもかかわらず、より高い保護は示されなかった(データは示していない)。
【0156】
DMS-79細胞を使用した異種移植モデルでは、群当たり5匹のマウスに対し、0日目に細胞1×10個を皮下注射し、腫瘍の長さが5mm(約20mm)に到達した後、19日目に処置を開始した。次いで、動物を、ヒトIgGまたは5B1抗体を投薬当たり200μgで腹腔内注射し、それに加えて、cRGDを最初に80μg、次いで1週間当たり5日、投薬当たり40μgを37日目まで静脈内注射することにより処置した。5B1または5B1プラスcRGDの組合せで処置した動物では、樹立DMS-79腫瘍の成長が抑制されたまたは退縮した(図18Aおよび18B)。皮下モデルにおいてDMS-79細胞を植え付けた日に5B1を用いて動物を処置することにより、腫瘍の成長が完全に妨げられた(データは示していない)。
【0157】
上記のデータにより、樹立腫瘍を抑制するまたは退縮させ、5B1抗体処置を使用した生存に対する利点をもたらす有意な能力が実証される。
【0158】
(実施例II)
放射標識したモノクローナル抗体5B1を使用した、膵がんおよび他のsLe陽性腺癌のImmuno-PETによる検出および診断
腺癌はがんによる死亡の主な原因である。膵がんの検出は特に難しいままであり、多くの場合、後期に診断がなされる。原発性および転移性膵がんを早期に検出するための手法は、著しい臨床的影響を有し得る。診療では、膵がんの患者における疑わしい肉眼で見えない悪性腫瘍を同定するためにsLe抗原のレベルの上昇をモニタリングする。本明細書に記載の通り、膵がんおよび他のsLe陽性腺癌の前臨床モデルにおけるsLeを標的とする新規のimmunoPET画像処理プローブの潜在性を調査した。ヒト抗sLeモノクローナル抗体5B1はsLe陽性であることが公知のヒト腺癌に対して陽性染色を示したが、sLe陰性悪性腫瘍および大部分の正常組織に対しては陽性染色を示さなかった。89Zr放射標識5B1(89Zr-5B1)は高い標識収率(>80%)および精製収率(>95%)を示した。雌SCIDマウスにおける皮下の同所性および転移性の膵がん異種移植片において89Zr-5B1を用いた画像処理を調査した。取得したPET画像および体内分布研究により、健康な組織への非特異的な結合は最小であり、sLeを過剰発現しているBxPC3異種移植片に対する89Zr-5B1のすぐれた特異性および局在化が実証された。結腸がん皮下異種移植モデルおよび小細胞肺がん皮下異種移植モデルにおけるさらなる分析により、同様に89Zr-5B1による優れた腫瘍描写がもたらされた。したがって、これらの結果により、89Zr-5B1を、診療所においてsLe発現悪性腫瘍を早期検出するための分子プローブとして使用することができることが示される。
【0159】
細胞系統および組織培養物
全ての組織培養操作を滅菌技法に従って実施した。小細胞肺がんDMS79細胞およびBxPC3膵がん細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から入手した。Colo205-luc結腸直腸がん細胞(Bioware Ultra)をCaliper Life Sciences(CLS、Hopkinton、MA)から購入した。全ての細胞をATCCおよびCLSの推奨に従い、5%CO加湿雰囲気、37℃で成長させた。
【0160】
FACSによるsLe発現レベルのin vitroにおける評価 示されている培養がん細胞系統を用いたフローサイトメトリーを本明細書の実施例Iに記載の通り実施した。簡単に述べると、チューブ当たり培養物腫瘍細胞1×10個の単一細胞浮遊液を、3%ウシ胎児血清(FBS)を伴うPBS中で洗浄した。次いで、ヒトモノクローナル抗体r5B1(sLeに対するIgG)をチューブごとに20μg/mlで添加し、氷上で30分インキュベートした。3%FBSを伴うPBS中で洗浄後、フルオレセイン-イソチオシアネート(FITC、Southern Biotechnology、Birmingham、AL)で標識したヤギ抗ヒトIgGの1:25希釈物20μlを添加し、混合物を氷上でさらに30分インキュベートした。最終的な洗浄後、染色された細胞の陽性集団および蛍光強度の中央値を、FACS Scan(Becton & Dickinson、San Jose、CA)を使用して識別した。フルオレセイン-イソチオシアネートで標識したヤギ抗ヒトIgGでのみ染色された細胞を使用して、1%のFACScan結果を一次mAbで染色されたパーセント陽性細胞と比較するためのバックグラウンドとして設定した。
【0161】
89Zr標識抗体の調製
組換え5B1抗体を本明細書に記載の通り調製し、精製した。5B1抗体および非特異的ヒトIgGに、p-イソチオシアネートベンジル-デスフェリオキサミン(DFO-Bz-NCS、Macrocyclics,Inc.、Dallas、TX)をmAb:DFO-Bz-NCS比1:4で用いて官能性をもたせた。例えば、300μLの5B1(PBS中1.23mg、pH約9)に、体積7.2μLのDFO-Bz-NCS(DMSO中4.25mM)を添加した。反応物を37℃で1~1.5時間インキュベートした。官能性をもたせた抗体をPD10脱塩カラム(GE Healthcare)または10kDaの遠心濾過器(Amicon)のいずれかで精製した。
【0162】
MSKCCにおいて、予め確立された手順に従ってイットリウムホイルの陽子線照射によってZr-89を生じさせ、Zr-89シュウ酸として高い純度で単離した。Hollandら、Nuclear Medicine and Biology 36巻:729~39頁(2009年)。抗体の標識をHollandら、Journal of Nuclear Medicine official publication、Society of Nuclear Medicine 51巻:1293~300頁(2010年)により記載されている方法によって進めた。概して、Zr-89シュウ酸を1MのNaCOでpH7.0~7.2に中和した。次いでDFO-抗体を添加した。反応物を室温で1~2時間インキュベートした。その後の精製を、0.9%生理食塩水を用いてPD10脱塩カラムを使用して行った。
【0163】
in vitroにおける実験
89Zr-5B1をin vitroにおける安定性について0.9%生理食塩水中および1%ウシ血清アルブミン中、37℃で5日間調査した。放射化学的純度の変化をt=0~5日に50mMのDTPAを移動相として用いた放射性iTLCによってモニタリングした。in vitroにおける免疫反応性アッセイをLindmoら、Journal of Immunological Methods 72巻:77~89頁(1984年)により記載されているプロトコールに従って実施して、Zr-89で放射標識された抗体の完全性を実証した。
【0164】
動物モデル
動物研究は全て、Institutional Animal Care and Use Committeeにより設定されたガイドラインに従って行った。雌CB17SC-F SCIDマウス(Jackson Laboratories、6~8週、20~22g)またはnude athymic(nu/nu)マウスに対して、後肢に腫瘍を誘導した。1:1培地:Matrigel(BD Biosciences)溶液200μL中で全ての細胞系統を皮下に接種し、使用する前に最大腫瘍体積250mmまで成長させた。
【0165】
体内分布研究
別々のColo205-luc結腸直腸異種移植片、BxPC3膵臓異種移植片およびDMS79小細胞肺異種移植片を有するマウス(n=3~5)のいくつかのコホートに対して体内分布研究を実施した。0.9%生理食塩水100μL中Zr-89 mAb(10~20μCi、1~2μg)を外側静脈に静脈内投与した。追加的な無標識mAb(10~50μg)をトレーサーと同時注射した。マウスのコホートにおいて250μgの過剰な無標識mAbを用いた遮断研究を実施してsLeに対する抗体の特異性に取り組んだ。各時点(t=24、48、120h p.i.)の後、マウスをCOを用いた窒息によって安楽死させた。すぐに血液を心臓穿刺によって採取すると同時に、腫瘍を選択された器官と一緒に回収した。各組織の湿重量を測定し、Wizard 2480 gamma counter(Perkin Elmer)を使用して、各器官に結合した放射活性を計数した。1グラム当たりの%注射用量として表されるトレーサー取り込みの百分率(%ID/g)を、計数時間に対して減衰補正した実際に注射した用量当たりの器官の重量当たりの組織に結合した活性として算出した。
【0166】
小動物immuno-PET
microPET Focus 120またはR4scanner(Concorde Microsystems)を用いて画像処理実験を行った。マウス(n=3~5)に、0.9%生理食塩水製剤100~200μL中Zr-89標識抗体(200~300μCi、15~25μg)を外側尾静脈注射によって投与した。注射後24~96時間の時点で酸素中1.5~2.0%イソフルオラン(Baxter Healthcare)を用いて麻酔しながらPET全身取得をマウスに記録した。ASIPro VM(商標)ソフトウェア(Concorde Microsystems)を使用して画像を解析した。関心領域(ROI)を引き出し、時間に対してプロットした。
【0167】
免疫組織化学的検査
20×モル過剰のスルホ-NHS-LC-ビオチン(Thermo Scientific/Pierce、cat番号21327)を室温で30分インキュベートすることによってビオチン化5B1を調製した。Zebra(商標)desalt spin column(Thermo Scientific/Pierce、cat番号89889)を製造者の説明書に従って用いて遊離のビオチンを除去した。抗体の緩衝液を、0.01%アジ化ナトリウムを1.1mg/mlの濃度で含有するPBSと交換した。DMS79細胞への結合をFACSによって確認し、それは親5B1抗体に匹敵するものであった。
【0168】
陽性対照としてColo205細胞、および陰性対照としてSK-MEL28細胞を使用して予備免疫組織化学的染色条件を決定した。細胞ペレットを調製し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した。スライドを、PBS中10%(v/v)正常ヒト血清(Jackson ImmunoResearch Labs;cat番号009-000-121)中に希釈したビオチン化5B1と一緒にインキュベートした。染色方法として標準のストレプトアビジン-ビオチン免疫ペルオキシダーゼ法およびDAB検出システムを用いてVentana automation(Discovery XT platform-Ventana Medical Systems,Inc、Tucson、AZ)によって染色を実施した。heat and Ventana’s CC1 conditioning solutionを使用して抗原の回収を行った。パイロット研究においてSignet(Covance)からのCA19.9マウスモノクローナル(クローン116-NS-19-9)により匹敵する結果がもたらされた。Colo205細胞は10μg/mlで使用したビオチン化5B1に対して強力に陽性であるが、SKMEL28細胞は完全に陰性であった。Histo-Array(商標)tissue microarrayはImgenex(San Diego、CA)から購入した。腫瘍生検コアならびにいくつかの正常な組織コアを含有する以下のスライドを使用した:IMH-327(Common Cancers、59試料)、IMH-359(結腸直腸の:がん-転移-正常;59試料)、およびIMH-324(卵巣への転移がん)。IMH-327には膵腫瘍組織コアが存在していた。
【0169】
in vivoにおけるsLe血清中濃度
Colo205、BxPC3およびDMS79の異種移植片を有するマウスをsLe抗原アッセイのために失血させた。腫瘍を有さないマウスの群が対照としての機能を果たした。ST AIA-PACK CA19.9 kit(Cat番号025271、TOSOH Bioscience Inc、South San Francisco、CA)を使用してマウスの血清中のsLeレベルを測定した。このアッセイの原理は、2部位免疫酵素測定アッセイに基づく。分析を製造者の取扱説明書に記載の通り実施した。イムノアッセイプレートの光学濃度をTOSOH AIA2000 Automated immunoassay analyzer(TOSOH Bioscience,Inc、San Francisco、CA)によって測定した。
【0170】
統計解析
別段の指定のない限りデータ値は平均±SDとして表した。統計解析は、GraphPad Prism バージョン5.03ソフトウェアを使用し、一元配置ANOVA、その後にダネット検定を使用して実施した。P値<0.05が統計的に有意であるとみなされる。
【0171】
結果
選択された悪性組織および正常組織のマイクロアレイを染色することによって5B1の結合特異性をプローブした。5B1反応性は悪性腫瘍およびsLeを過剰発現することが予め分かっている特定の場合の正常組織に制限された(図19;表9)。大部分の正常組織は完全に陰性であった(表9)。対照的に、結腸腺癌の21/34(62%)、卵巣への腺癌転移の33/57(58%)、および種々の病期の(表10)膵管がんの7/9(66%)において強力な陽性染色が見いだされた。図19に示されている通り、典型的な反応性は広がった細胞質染色であり、いくつかの腫瘍細胞では細胞膜の別個の染色が明白に示された。さらに、いくつかの卵巣印環細胞がん、ならびに肺および乳房のいくつかのがんも強力に陽性であることが見いだされた。対照的に、前立腺がん試料では4/43のみが陽性であり、GIST症例では0/51が陽性であった(データは示していない)。
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
5B1免疫染色のsLeを発現しているがん組織に対する特異性が高いことが、このmAbをPETプローブとして使用することの基礎であった。5B1のデスフェリオキサミンのベンジル-イソチオシアネート類似体(DFO-Bz-NCS)を用いた修飾を4:1(キレート:mAb)の比で行い、その後、生理食塩水を洗浄緩衝液として使用して遠心濾過によって精製した。pHを7.0~7.2に調整した後、Zr-89での簡易放射標識を室温で進行させた。80%超の最適な放射標識収率を実現するためには、中性に近い狭いpH範囲が必要である。遊離の結合していないZr-89をPD10脱塩カラムによって除去した。遠心濾過器(MWCO:10kDa)を使用して産物の濃縮を行った。12.1±1.1mCi/mgの比較的高い特異的活性が確立された。使用する前に95%超の放射化学的純度を確実にした。免疫反応性アッセイにより、sLeに対する活性の保持が示された(72.4±1.1%、n=3)。37℃におけるウシ血清アルブミン中での安定性は5日にわたって95%超で維持された(データは示していない)。生理食塩水中では、早ければ24時間で脱金属(de-metallation)が観察され(>85%複合体形成)、37℃で120時間後に約75%超の放射性金属が結合した。
【0175】
BxPC3膵がん異種移植片を左後肢の皮下に埋め込んだ雌SCIDマウスを使用して小動物PET画像処理および体内分布研究を行った。取得したPET画像により、89Zr-5B1による腫瘍関連sLeの実質的な描写が確認された。図20の最大値投影法(MIP)から、BxPC3異種移植片(n=3)は静脈内投与した放射性トレーサーのすぐれた付着を示した。PET画像から腫瘍に対して引き出された関心領域(ROI)は、5.0±0.4%ID/g(2時間)、16.2±2.5%ID/g(24時間)、23.8±4.7%ID/g(48時間)、36.8±6.1%ID/g(96時間)および49.5±7.7%ID/g(120時間)の取り込みを示した。血液プールおよび正常組織の結合活性は注射後24時間で消えると思われた。体内分布実験からの結果はPETデータと一致する。24時間の時点で89Zr-5B1の高い腫瘍局在化(84.7±12.3%ID/g、n=4)が観察され、さらに注射後120時間で取り込みの増加が示された(114.1±23.1%ID/g、n=4)(図21)。腫瘍への取り込みは重量が少ないことに起因して100%を超えた(62.4±0.03mg)。注射後24時間の時点での%IDは、同様の時点での非特異的IgGのものよりも10倍高いことが見いだされた(図21挿入図)。注射後24時間の時点での250μgの放射標識していない5B1による競合阻害により、取り込みの特異性を規定するトレーサー蓄積が遮断された。89Zr-5B1の正常な膵臓および回収された正常組織の残りへの最小の結合が観察され、これにより、全ての時点において高い腫瘍対組織対比がもたらされた。
【0176】
上記の結果に従って、同所性BxPC3膵臓腫瘍モデルにおいて89Zr-5B1をアッセイした。同所性モデルは臨床的に意義があり、PETプローブの有効性の臨床的に許容され得る試験をもたらす。膵臓への接種後、腫瘍の成長を週1回、生物発光による光学的画像処理によってモニタリングした。腫瘍が触知できたらPET画像処理実験を行った。FDG-PETと89Zr-5B1の間でプローブ腫瘍描写性の比較を行った(図25)。PETとタンデムなコンピュータ断層撮影法(CT)により、解剖学的関心領域の可視化の増強がもたらされた。
【0177】
他のsLe発現腺癌におけるPETプローブとして89Zr-5B1を評価するために、肺がんモデルおよび結腸がんモデルにおいて89Zr-5B1をアッセイした。雌SCIDマウスの右後肢に皮下注射したDMS79小細胞肺がん細胞およびColo205-luc結腸がん細胞を使用して小動物実験を行った。200~300μCi(16~25μg)の静脈内注射後24~120時間の時点でPET MIP画像を取得した。早ければ注射後24時間の時点で、バックグラウンドに対した優れたシグナルを伴う38.15±2.12%ID/gの異種DMS79腫瘍への取り込みが実証された(図22A)。注射後48時間の時点でトレーサー腫瘍蓄積が増加し(44.60±6.47%ID/g)、注射後120時間の時点で保持されていた(41.97±12.23%ID/g)。非特異的結合した89Zr-5B1は正常組織から急速に消え、注射後48時間の時点でバックグラウンド取り込みは最小であったか取り込みがなかった。さらに、図22Bに示されている通り、Colo205-luc異種移植片において注射後24~120時間の時点で腫瘍描写が観察された。ROIは、腫瘍蓄積を示し、2、24、48、96および120時間の時点でそれぞれ10.5±0.76、23.5±2.7、24.8±4.0、18.4±4.7、16.5±2.3%ID/gであった。PET画像から引き出された関心領域に示されている通り、肝臓蓄積の観察可能な増加が経時的に生じ、その結果として腫瘍への取り込みが減少した(図22C)。体内分布研究から生じたデータは、観察されたPET結果とよく相関する(データは示していない)。
【0178】
腫瘍が進行するに従ったマウス血清中のsLeレベルを数量化した。Colo205異種移植片を有するSCIDマウス、DMS79異種移植片を有するSCIDマウスおよびBxPC3異種移植片を有するSCIDマウス、それと共に対照としての機能を果たす、腫瘍を有さない群の全採血を実施した。sLe値は、Colo205を用いたチャレンジを行ったマウスにおいて膵臓BxPC3を埋め込んだマウスおよびDSM79を埋め込んだマウスと比較して高レベルのsLeを示した(表11)。
【0179】
【表11】
【0180】
これらの結果により、放射標識抗sLea抗体(89Zr-5B1)が、膵臓腺癌および他のsLe陽性腺癌の検出および診断に対して特異的であることが実証される。89Zr-5B1は、高い特異的活性および免疫反応性の保持と共に、優れた収率および純度で作製された。皮下同所性膵臓腫瘍モデルおよび転移性膵臓腫瘍モデルにおける89Zr-5B1の評価により、優れた腫瘍描写および診断がもたらされた。結腸腫瘍を有する小動物および小細胞肺腫瘍を有する小動物におけるこの放射性トレーサーの前臨床的評価により、このトレーサーのsLeを発現している悪性腫瘍に対する普遍的な有用性が実証された。
【0181】
(実施例III)
抗sLeダイアボディは種々のがん細胞系統に結合する
本明細書に記載の5B1および7E3クローン単離体のVHおよびVLドメインを使用して2種のダイアボディを生成し、それぞれ5B1CysDbおよび7E3CysDbと名付けた(図9および10)。どちらのダイアボディもVLドメインとVHドメインの間に5つのアミノ酸リンカー領域を含有した。精製および検出のために利用したC末端上のポリヒスチジンタグも両方のダイアボディに含めた。
【0182】
5B1CysDbおよび7E3CysDbの3種のがん細胞系統:(1)DMS-79細胞、小細胞肺がん浮遊細胞系統;(2)Capan-2細胞、膵臓腺癌細胞;および(3)BxPC3細胞、膵がん細胞への結合を、10μg/mlの5B1CysDbまたは7E3CysDbをそれぞれ伴う0.2ml中25万個の細胞をインキュベートすることによってアッセイした。細胞とダイアボディの組合せをPBS/2%FBS中、氷上で40分インキュベートした。
【0183】
洗浄後、細胞を、1:1000希釈したALEXA-488標識抗His抗体(Life Technology、Cat番号A21215)0.2mlと一緒に40分インキュベートした。2回目の洗浄後、Guavaフローサイトメーターを用いて細胞を分析した。5B1CysDbおよび7E3CysDbの両方でDMS-79、Capan-2およびBxPC3細胞への有意な結合が実証された(表12)。
【0184】
【表12】
【0185】
(実施例IV)
5B1およびタキソールの投与は、腫瘍の成長を阻害する
抗sLe抗体(5B1)と化学療法剤であるタキソール(パクリタキセル)を同時投与することの抗腫瘍活性を膵がんおよび小細胞肺がんの異種移植モデルにおいて評価した。本明細書で前に記載した通り、BxPc3細胞(膵腫瘍細胞)100万個またはDMS-79細胞(小細胞肺がん細胞)500万個を6週齢の雌CB17 SCIDマウスの後側腹部に注射した(0日目;N=5)。DMS79腫瘍を平均腫瘍サイズが193±64mmになるまで21日間成長させた。ヒトIgGまたは5B1(0.5または1mg)を週2回(21日目に開始)腹腔内に与え、タキソール(0.2mg/投薬)を23日目、30日目、37日目および44日目に静脈内投与した。DMS-79異種移植モデルでは、5B1抗体とタキソールを同時投与することにより、対照ヒトIgGまたは5B1抗体とタキソールの個別投与と比較して、腫瘍の成長が有意に制限され、腫瘍の退縮がもたらされた(図23)。
【0186】
BxPc3異種移植モデルでは、腫瘍を14日間成長させ、その時点で平均126±30mmに達した。タキソールを14日目、21日目、28日目および34日目に(週に1回)静脈内投与し、5B1を14日目から開始して週2回与えた。5B1抗体とタキソールを同時投与することにより、対照または5B1抗体とタキソールの個別投与と比較して腫瘍の成長が有意に制限された(図24)。これらの結果により、膵がんおよび小細胞肺がんに対する腫瘍の成長の予防および/または腫瘍サイズの縮小における抗sLe抗体と化学療法剤の相乗効果が実証される。
【0187】
本出願全体を通して種々の刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示は、本発明が関する技術分野の現状をより詳細に説明するためにそれらの全体がこれによって参照により本出願に組み込まれる。本発明は上に提供した実施例を参照して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の改変を行うことができることが理解されるべきである。
【0188】
(項目1)
抗体重鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記抗体重鎖またはその機能性断片が、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖(VH)ドメインを含む、単離されたポリヌクレオチド。
(項目2)
前記VHドメインのアミノ酸配列が、配列番号1の残基58~426、配列番号5の残基58~426、配列番号9の残基58~426および配列番号13の残基58~435からなる群から選択される核酸配列によりコードされる、項目1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目3)
抗体軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記抗体軽鎖またはその機能性断片が、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含む、抗体軽鎖またはその機能性断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(項目4)
前記VLドメインのアミノ酸配列が、配列番号3の残基58~390、配列番号7の残基58~387、配列番号11の残基58~390および配列番号15の残基67~390からなる群から選択される核酸配列によりコードされる、項目3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目5)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変重鎖(VH)ドメインを含み、前記VHドメインが、配列番号2の残基20~142、配列番号6の残基20~142、配列番号10の残基20~142、および配列番号14の残基20~145からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその機能性断片。
(項目6)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VLドメインが、配列番号4の残基20~130、配列番号8の残基20~129、配列番号12の残基20~130、および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその機能性断片。
(項目7)
シアリル-Lewisに結合する単離された抗体またはその機能性断片であって、前記抗体またはその機能性断片が、可変重鎖(VH)ドメインおよび可変軽鎖(VL)ドメインを含み、前記VHドメインおよび前記VLドメインが、それぞれ、配列番号2の残基20~142および配列番号4の残基20~130;配列番号6の残基20~142および配列番号8の残基20~129;配列番号10の残基20~142および配列番号12の残基20~130;ならびに配列番号14の残基20~145および配列番号16の残基23~130からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその機能性断片。
(項目8)
前記抗体がヒト抗体である、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目9)
前記抗体機能性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディおよび単一ドメイン抗体(sdAB)からなる群から選択される、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目10)
前記抗体機能性断片がダイアボディである、項目9に記載の抗体またはその機能性断片。
(項目11)
前記ダイアボディが、配列番号18または20のアミノ酸配列を含む、項目10に記載の抗体または機能性断片。
(項目12)
前記抗体がモノクローナル抗体である、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目13)
前記抗体がIgGまたはIgMアイソタイプである、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目14)
前記IgG抗体がIgG1サブクラスである、項目13に記載の単離された抗体またはその機能性断片。
(項目15)
診断剤、検出可能剤または治療剤とコンジュゲートしているかまたは組換えによって融合している、項目5から7までのいずれか一項に記載の単離された抗体または機能性断片を含むコンジュゲート。
(項目16)
検出可能剤を含む、項目15に記載のコンジュゲート。
(項目17)
前記検出可能剤がジルコニウム(89Zr)である、項目16に記載のコンジュゲート。
(項目18)
項目5から7までのいずれか一項に記載の抗体または機能性断片および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
(項目19)
疾患を処置または予防するための方法であって、疾患を処置または予防することを必要とする被験体に項目18に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法。
(項目20)
前記疾患ががんまたは腫瘍形成であり、前記がんまたは前記腫瘍の細胞がsLeを発現する、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記がんまたは腫瘍が、胃腸管の腫瘍、結腸がん、結腸直腸腺癌、転移性結腸がん、結腸直腸がん、膵がん、膵臓腺癌、肺小細胞癌、膀胱腺癌、卵巣印環細胞がん、卵巣がん、転移性癌、胃の腺癌、食道の腺癌、咽喉の腺癌、尿生殖路の腺癌、および乳房の腺癌からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目22)
第2の治療剤を同時にまたは逐次投与するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記第2の治療剤が化学療法剤または免疫療法剤である、項目22に記載の方法。
(項目24)
被験体における腫瘍を検出するための方法であって、被験体における腫瘍を検出することを必要とする被験体に項目16に記載のコンジュゲートの有効量を投与するステップを含む方法。
図1
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図3
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図10
図11A-11C】
図11D-11F】
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【配列表】
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【外国語明細書】