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特開2023-26539R-スポンジン(RSPO)サロゲート分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026539
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】R-スポンジン(RSPO)サロゲート分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230216BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230216BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20230216BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230216BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230216BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/26
C12N15/24
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/55
C07K14/54
C07K14/47
C07K14/52
C12N15/19
A61P1/04
A61P1/14
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/10
A61P7/06
A61P11/00
A61P13/02
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/14
A61P19/02
A61P19/08
A61P19/10
A61P25/30
A61P25/32
A61P27/16
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P37/06
A61P39/02
A61P43/00 105
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211719
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019537335の分割
【原出願日】2018-01-11
(31)【優先権主張番号】62/444,987
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケナン クリストファー ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント クリストファー ルカ
(57)【要約】
【課題】R-スポンジン(RSPO)サロゲート組成物及びそれを使用するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明のRSPOサロゲートは、(i)RINGフィンガータンパク質43(RNF43)またはジンク及びRINGフィンガータンパク質3(ZNRF3)のための特異的結合ドメインと、(ii)細胞標的化ドメインとを含み、より具体的には、RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインは抗体断片であり、細胞標的化ドメインはサイトカインである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月11日に出願された米国特許出願第62/444,987号の優先権を主張し、その各々の内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
進化的に保存されたWntシグナリング経路は、全ての多細胞動物における胚発生及び成体組織ホメオスタシスで極めて重要な役割を担っている。Wntタンパク質は分泌リポ糖タンパク質リガンドであり、細胞増殖、遊走、細胞運命特定、及び極性形成をコントロールする。カノニカルWntシグナリングカスケードは、転写補因子β-カテニンの安定性の制御を通じて特定の遺伝子発現プログラムを推進する。また、Wntタンパク質は、細胞及び組織の運動を協調させるためのβ-カテニン非依存的な平面内細胞極性(PCP)経路も活性化することができる。7回膜貫通ドメインタンパク質のフリズルド(Frizzled)(FZD)ファミリーは、Wntタンパク質のコア受容体として働き、Wnt/β-カテニンシグナリング及びWnt/PCPシグナリングの両方で必要とされる。Wntタンパク質は、異なる共受容体を利用して、異なる下流シグナリング経路を活性化し、Wntタンパク質は共受容体LRP5/6に結合してWnt/β-カテニン経路を作動し、共受容体ROR1/2、RYK、またはPTK7に結合してWnt/PCP経路を始動する。
【0003】
Wnt受容体のユビキチン化媒介ターンオーバーは、Wnt経路活性における極めて重要な制御機構であることが分かっている。細胞表面FZDレベルはUBPY/USP8及びUSP6により安定化されており、このことからユビキチン化がFZDリソソーム分解の基礎をなす重要な制御機構として働くことが示唆される。細胞表面膜貫通E3ユビキチンリガーゼのジンク及びRINGフィンガー3(Zinc and Ring Finger 3)(ZNRF3)及びその機能的ホモログのRINGフィンガータンパク質43(RNF43)は、Wntシグナリングのネガティブフィードバック制御因子として作用する。ZNRF3及びRNF43は、ユビキチン化と、次に続くWnt受容体FZD及びLRP6の内在化及び分解とを促進することにより、Wnt/β-カテニンシグナリングを阻害する。ディシブルド(DVL)は、FZDに対し直接結合することにより、Wntシグナリングのポジティブ制御因子として働き、またディシブルドは、ZNRF3/RNF43をFZDに標的化してFZDのユビキチン化及び分解を促進するアダプタータンパク質である。
【0004】
R-スポンジンタンパク質(RSPO1~4)は、細胞をWnt/β-カテニンシグナリング及びWnt/PCPシグナリングに対し強力に感作させる分泌タンパク質である。4種のRSPOタンパク質は全て、2つのN末端フリンドメイン及び1つのC末端TSRドメインを有する同様のドメイン構造を有する。LGR4、LGR5、及びLGR6は、RSPOの高親和性受容体であり、RSPOは、Wntシグナリングを活性化するのにLGR4/5/6を要するが、LGR4/5/6の下流のカノニカルGPCRシグナリングは活性化しない。RSPOは、ZNRF3/RNF43及びLGR4/5/6の細胞外ドメインに同時に結合することによりWntシグナリングを増強し、ZNRF3/RNF43の自己ユビキチン化及び膜クリアランスを誘導し、FZDの細胞表面レベル増加をもたらす。FZDターンオーバーの制御から、どのようにRSPOがWnt/β-カテニンシグナリング及びWnt/PCPシグナリングの両方をコントロールすることができるかが説明される。RSPOは、フリン1及び2ドメインを介してLGR4/5/6に結合し、フリン1ドメインを介してZNRF3/RNF43に結合する。RSPOが機能するためには、LGR4/5/6及びZNRF3/RNF43の両方と相互作用する必要がある。種々のRSPOタンパク質のWnt刺激活性は、RSPOタンパク質とZNRF3またはRNF43との結合親和性と相関する。
【0005】
受容体アクセスのブロック、Wntリガンドの隔離、またはWntの分解により機能する多数のWntアンタゴニストが分泌される。これに対し、RSPO(Rspo1~4)は、Wntシグナリングの唯一の分泌増強物質であり、in vivo及びin vitroでの幹細胞維持における決定的な制御因子であることが明らかになっている。RSPOは、骨再生から化学療法後の腸管回復に至るまで多くの治療用途が探索されている。RSPOは、グローバルなWnt活性化における潜在的な発がん性または毒性のオフターゲット効果を回避しながら既存のWntシグナルを増幅するため、魅力的な薬物候補である。しかし、RSPOは、標的細胞タイプにおけるLGR4/5/6発現要件のため、そして、RNF43/ZNRF3及びLGR4/5/6についての内在的な交差反応性や、多くの組織上にRSPO作用をもたらし多面的な効果及び所望されない毒性につながると考えられるRNF43/ZNRF3及びLGR4/5/6の幅広い組織発現プロファイルのため、臨床的有用性が限定されている。
【0006】
Wntアゴニストの臨床使用に関する潜在的障壁としては、RNF43/ZNRF3媒介による拮抗作用及び毒性のオフターゲット効果が挙げられる。Wntは強力なモルフォゲンであり、Wnt経路の過剰活性化はいくつかのヒトのがんの発生に結びつけている。そのため、細胞及び組織特異的様式で送達され得るRSPO活性をもたらすサロゲート分子の開発は、臨床的に大きな関心対象である。
【発明の概要】
【0007】
標的細胞タイプに対するWntシグナリングを増強する、サロゲートRSPO(RSPO)として作用するタンパク質の組成物及びその使用方法が提供される。いくつかの実施形態では、RSPOサロゲートは、Wntシグナリング増強のためにRSPO同族受容体LGR4、LGR5、またはLGR6の発現要件を回避する。他の実施形態では、RSPOサロゲートは、Wntシグナリングの増強のためにLGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ以上を特異的に標的とし、それによりRSPO活性に対する選択性の強化をもたらす。いくつかの他の実施形態では、RSPOサロゲートは、Wntシグナリングの増強のためにLGR4、LGR5、またはLGR6を含めない1つ以上の細胞表面受容体を特異的に標的とし、それによりRSPO活性に対する選択性の強化をもたらす。
【0008】
本明細書で使用するRSPOサロゲートは、(i)RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインと、(ii)的確な細胞及び組織に特異的なWnt増強を可能にするために、所望の細胞タイプ上に発現する細胞表面受容体に特異的な細胞標的化ドメインとを含む。ドメインは、直接連結してもよく、またはリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー、もしくは非ペプチドリンカー等)によって分離されてもよい。リンカーの長さ、及びそのための結合ドメイン間の間隔は、シグナルの長さを調節するために使用することができ、またRSPOサロゲートの所望の使用に応じて選択することができる。ポリペプチドRSPOサロゲートは、1本鎖、2量体、またはより高次の多量体であり得る。
【0009】
RNF43またはZNRF3結合ドメインは、高い親和性、例えば、1×10-6M以下、1×10-7M以下、1×10-8M以下、1×10-9M、または1×10-10M以下のKdにてRNF43またはZNRF3に結合する任意のドメインから選択することができる。好適な結合ドメインとしては、以下に限定されないが、新規に設計された結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及びRNF43またはZNRF3タンパク質に対し特異的に結合する抗体の他の部分;ナノボディ由来結合タンパク質;ノッチンベースの改変スキャフォールド;ノリン及びそれに由来する改変結合断片、天然存在の結合ドメインなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインは、例えば、RSPOフリン1ドメインを含む、それからなる、または本質的にそれからなる、RSPOの結合断片である。結合ドメインは、所望の1つのタンパク質または複数のタンパク質に対する結合を強化するように親和性選択的であり得る。
【0010】
細胞標的化ドメインまたはエレメントは、高い親和性、例えば、1×10-7M以下、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下のKにて細胞表面タンパク質、炭水化物、または脂質に対し選択的に結合する任意のドメインから選択することができる。好適な細胞標的化ドメインとしては、以下に限定されないが、新規に設計された結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及び細胞表面タンパク質、炭水化物、または脂質に対し特異的に結合する抗体の他の部分;ナノボディ由来結合タンパク質;ノッチンベースの改変スキャフォールド;天然存在の結合ドメインまたはポリペプチド、サイトカイン、成長因子などが挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、標的細胞上に同族受容体を有するサイトカインまたは成長因子である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたは成長因子は、その同族受容体のうちの1つ以上に対する結合親和性を低下させる1つの変異または複数の変異を含有する。いくつかのこのような実施形態では、サロゲートRSPOは、マルチサブユニットサイトカイン受容体または成長因子受容体の複合体の個々の受容体サブユニットを発現する細胞を選択的に標的化することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、細胞表面タンパク質、炭水化物、または脂質に結合する、共有結合小分子、炭水化物、またはヌクレオチド由来分子である。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、標的細胞表面上に存在する抗原に対する特異性を有する抗体またはその活性断片である。いくつかのこのような実施形態では、抗原は、LGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ以上であり、例えば、単一のLGRタンパク質(すなわち、LGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ)に対し選択的に結合する抗体である。LGR結合部分は、目的LGRタンパク質に対し選択的であり得、例えば、他のLGRタンパク質との対比において少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、またはそれ以上の所望のLGRタンパク質に対する特異性を有する。
【0014】
標的細胞をRSPOサロゲートに接触させることは、Wnt存在下のWnt経路におけるシグナリングを増強し、例えば、活性は、RSPOサロゲートの不在時における活性との対比において、少なくとも約10%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%の増加であり得、また約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、またはそれ以上の増加であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、リンカーはリジッドリンカーであり、他の実施形態では、リンカーはフレキシブルリンカーである。リンカーがペプチドリンカーである場合、リンカーは、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸またはそれ以上であり得、結合ドメイン間の距離を強化するのに十分な長さ及びアミノ酸組成である。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つ以上のグリシン及び/またはセリン残基を含むか、またはそれらからなる。
【0016】
RSPOサロゲートは、例えば、Fcドメインを介し、連鎖、コイルドコイル、ポリペプチドジッパー、ビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン多量体化などにより、多量体化することができる。また、RSPOサロゲートは、当技術分野で公知のようにPEG、Fc等のような部分に連結させてin vivoで安定性を強化することもできる。
【0017】
目的組成物としては、以下に限定されないが、薬学的に許容される賦形剤中の有効用量のRSPOサロゲートが挙げられる。組成物は、追加の作用物質、例えば、アジュバントなどを含んでもよい。RSPOサロゲートは、合成により;当技術分野で公知のように様々な好適な組換え法などにより、産生することができる。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、細胞内のWntシグナリングを増強するための方法が提供される。このような方法では、フリズルド受容体を発現する細胞を、フリズルド受容体上で活性のWntタンパク質の存在下で、シグナリングを増加させるのに有効な濃度、例えば、シグナリングをRSPOサロゲートの不在下でのシグナリングとの対比において25%、50%、75%、90%、95%またはそれ以上増加させるのに有効な濃度のRSPOサロゲートに接触させる。このようなシグナリング活性化は、標的細胞の/標的細胞内の増殖、分化、または特定の遺伝子発現プロファイルを誘導することができ(このような標的細胞には幹細胞が含まれるが限定されない)、あるいは他の場合には標的細胞におけるWntシグナリング経路を強化することができる。いくつかの方法では、細胞をin
vitroで接触させる。他の実施形態では、細胞をin vivoで接触させる。目的細胞としては、当技術分野において公知であるような、例えば、皮膚細胞、腸管細胞、骨芽細胞、肝臓細胞、軟骨細胞、有毛細胞、幹細胞、成体幹細胞等といった細胞を発現する幅広い種類のFzd受容体が挙げられる。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、RSPOサロゲートは、Wntアゴニスト、サロゲートWntアゴニスト、またはWntシグナリング活性を強化するための天然のWntタンパク質に対し、融合または結合している。他の実施形態では、Wntシグナリングの強化は、RSPOサロゲートを、Wntアゴニスト、サロゲートWntアゴニスト、または天然のWntタンパク質と共に同時投与することにより達成される。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、疾患または障害の処置または防止を必要とする対象における疾患または障害を処置または防止するための方法であって、対象に有効量のRSPOサロゲートを提供することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、対象は、Wntシグナリング低下または天然に低いWntシグナリングに関連する疾患または障害を有する。本発明のいくつかの態様では、創傷治癒及び/または組織生成の強化を必要とする対象における創傷治癒及び/または組織生成を強化するための方法であって、対象に有効量のRSPOサロゲートを提供することを含む方法が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、RSPOサロゲートは、Wnt活性化により抑制される制御性T細胞の活性を選択的に調節するように標的化される。いくつかのこのような実施形態では、サロゲートRSPOは、標的化タンパク質としてIL-2またはその活性断片もしくは誘導体を含む。IL-2は、エフェクターT細胞よりも優先的に制御性T細胞(T reg)に結合する。関連実施形態では、RSPOは、細胞上の細胞タイプ特異的な表面マーカーに標的化され、このような表面マーカーとしては、以下に限定されないが、マクロファージ、NK細胞、樹状細胞、B細胞、エフェクターT細胞などが挙げられる。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、3つのタンパク質因子:RSPO、上皮増殖因子(EGF)、及びノギンにより推進されるプロセスであるサロゲートRSPO媒介の腸管幹細胞の回復方法が提供される。サロゲートRSPOは、EGFと融合したRNF43/ZNRF3結合タンパク質を含むことができ、これは、RSPO及びEGFシグナリングを単一の作用物質で同時に活性化することにより、RSPO及びEGFを同時投与する要件を回避する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
(i)RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインと、(ii)細胞標的化ドメインとを含む、RSPOサロゲート組成物。
(項目2)
前記RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインが、タンパク質または小分子である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインが、RSPOの断片である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインが、抗体またはその断片である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインが、配列番号1~4に示されるZ6またはR5結合配列の1~6つのCDR配列を含む、項目4に記載の組成物。(項目6)
前記RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインが、1本鎖Fv(scFv)コンストラクトである、項目1~5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記細胞標的化ドメインが、サイトカイン、成長因子、小分子、ヌクレオチド、炭水化物、ホルモン、または細胞表面抗原に特異的な抗体もしくはその断片である、項目1~6のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記抗体が、LRG4、5、または6タンパク質に特異的である、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記細胞標的化ドメインがサイトカインである、項目7に記載の組成物。
(項目10)
前記サイトカインがIL-2またはIL-4である、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記ドメインがフレキシブルリンカーを介して融合している、項目1~10のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
前記ドメインが直接連結している、項目1~10のいずれか1項に記載の組成物。
(項目13)
有効用量のwnt作用物質を用いて製剤化された、項目1~12のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
wnt作用物質に連結している、項目1~12のいずれかに記載の組成物。
(項目15)
有効用量の、項目1~14のいずれか1項に記載のRSPOサロゲートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
(項目16)
Wntシグナリングを増強する方法であって、フリズルド受容体を発現する細胞を、有効用量の、項目1~15のいずれか1項に記載のRSPOサロゲートに、Wnt作用物質の存在下で接触させることを含む、前記方法。
(項目17)
疾患または障害の処置または防止を必要とする対象における疾患または障害を処置または防止する方法であって、前記対象に、有効量の、項目1~15のいずれか1項に記載のRSPOサロゲートを提供することを含む、前記方法。
(項目18)
前記対象が、Wntシグナリング低下に関連する疾患または障害を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記対象が、放射線/化学療法傷害、粘膜炎、炎症性腸疾患、短腸症候群、遺伝性腸障害、セリアック病、代謝性疾患、遺伝性症候群、ウイルス感染症(例えば、HepB/C)、中毒状態、アルコール性肝臓、脂肪肝、肝硬変、感染症、悪性貧血、潰瘍、糖尿病、糖尿病性足部潰瘍(例えば、難治性糖尿病性足部潰瘍)、島細胞の破壊、骨質量の喪失(骨粗鬆症)、機能的皮膚の喪失、毛髪の喪失、機能的肺組織の喪失、腎組織の喪失(例えば、急性尿細管壊死)、内耳における感覚細胞の喪失、関節障害、骨粗鬆症及び関連骨疾患、脱毛症、ならびに移植片対宿主病より選択される疾患または障害を有する、項目17または18に記載の方法。
(項目20)
創傷治癒及び/または組織生成の強化を必要とする対象における創傷治癒及び/または組織生成を強化する方法であって、前記対象に、有効量の、項目1~15のいずれか1項に記載のRSPOサロゲートを提供することを含む、前記方法。
【0023】
本発明は、添付の図面と併用して以下の詳細な説明を参照することで、十分に理解される。慣例に従い、図面の様々な特徴が縮尺通りではないことを強調する。別の見地から、様々な特徴の寸法は、分かりやすくするため任意に拡大または縮小されている。以下の図が図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】サロゲートRSPOタンパク質の例。
図2】抗体のスクリーニング。RNF43またはZNRF3に特異的なscFv抗体断片を生成するため、ナイーブなヒトscFvコンストラクトの酵母ディスプレイライブラリーから結合物質が選択された。
図3】ZNRF3に特異的に結合するZ6 scFvをヒトIL2と融合させることにより、候補サロゲートRSPOを生成した。
図4】Z6-IL2融合体を昆虫細胞内で発現させ、ニッケル及びゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。Z6-IL2は、ゲル濾過カラムから単分散ピークとして溶離しており、このことは当該タンパク質が凝集せず、好ましい生化学的挙動を有することを示している。
図5-1】サロゲートRSPOの生物学的効果。
図5-2】サロゲートRSPOの生物学的効果。
図6】さらなるサロゲートRSPOコンストラクト。
図7】R-スポンジンシグナリング機構。RSPOの不在下では、ZNRF3はFzd受容体の膜クリアランスを推進して、Wntシグナリングをネガティブに制御する。RSPO媒介によるRNF43及びZNRF3のECDと、LGR4、LGR5、またはLGR6との架橋は、RNF43/ZNRF3を隔離してFzd表面レベルを回復し、それによってWnt活性を増強する。サロゲートRSPOは、RNF43またはZNRF3と、リガンド結合の際にエンドサイトーシスを経ることが知られている組織特異的マーカーとを架橋することにより、野生型RSPOの機能を模倣する。
図8A-C】RNF43及びZNRF3に特異的なscFvの特性決定。(A)酵母ディスプレイされたR5及びZ6 scFvとRNF43及びZNRF3との結合をそれぞれ示す、フローサイトメトリードットプロット。R5またはZ6発現酵母を1uM濃度のRNF43またはZNRF3で染色し、c-Mycエピトープに対する抗体で表面発現を検出した。(B)R5-IL2及びZ6-IL2サロゲートRSPOのコンストラクト設計。(C)及び(D)。SPRを使用して、R5-IL2またはZ6-IL2と、RNF43及びZNRF3との結合をそれぞれ測定した。解離定数は、1:1結合モデルに対するフィッティング値から得た。
図8D】RNF43及びZNRF3に特異的なscFvの特性決定。(A)酵母ディスプレイされたR5及びZ6 scFvとRNF43及びZNRF3との結合をそれぞれ示す、フローサイトメトリードットプロット。R5またはZ6発現酵母を1uM濃度のRNF43またはZNRF3で染色し、c-Mycエピトープに対する抗体で表面発現を検出した。(B)R5-IL2及びZ6-IL2サロゲートRSPOのコンストラクト設計。(C)及び(D)。SPRを使用して、R5-IL2またはZ6-IL2と、RNF43及びZNRF3との結合をそれぞれ測定した。解離定数は、1:1結合モデルに対するフィッティング値から得た。
図9A】サロゲートRSPOによるWntシグナリング増強。CD25発現細胞におけるサロゲートRSPOのWnt活性増強を測定するルシフェラーゼレポーターアッセイ。レンチウイルスによりCD25を形質導入したHEK STF 293T細胞を、20%のWnt3a条件培地の存在下で、様々な組換えタンパク質と共にインキュベートした。
図9B】Aと同じ条件下で、非感染(CD25陰性)HEK STF 293T細胞を用いてレポーターアッセイを実施した。
図10】サロゲートRSPOによる腸管オルガノイド成長への刺激。CD25を発現するようにレンチウイルスにより形質導入したLGR5+ヒト結腸オルガノイドの成長を刺激する能力について、サロゲートRSPOを試験した。培地が欠如したRSPO2に500nM濃度の指示タンパク質を追加し、オルガノイドの成長を顕微鏡(上)及び蛍光(棒グラフ、下)によりモニターした。右側の棒グラフは、左側のグラフの着色領域を拡大したパネルである。
図11】ゲル濾過カラムからの単分散ピークとして溶出するR5-IL2及びZ6-IL2タンパク質。R5-IL2(左)及びZ6-IL2(右)のUV280吸光度のゲル濾過プロファイルからのUV280吸光度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法及び組成物について説明する前に、本発明が、記載されている特定の方法及び組成物に限定されるものではなく、そのため当然ながら様々であり得るということを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本明細書の範囲は付属の請求項によってのみ限定されることになるため、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことも理解されたい。
【0026】
値の範囲が示されている場合、各介在値(文脈による別段の指示が明確にない限り、当該範囲の上限と下限との間の下限の10分の1の単位まで)も明確に開示されていることを理解されたい。記載範囲内における、任意の記載値または介在値と他の任意の記載値または介在値との間の各々の小範囲は、本発明に含まれる。これらの小範囲における上限及び下限は、独立してその小範囲に含めても除外してもよく、この小範囲に上限下限の一方が含まれる、いずれも含まれない、または両方が含まれる各々の範囲も本発明に含まれ、記載範囲における任意の明確に除外された制限の対象となる。記載範囲が上限下限の一方または両方を含む場合、この含まれた上限下限の一方または両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載の方法及び材料に同様または同等の任意の方法及び材料を使用してもよいが、以下、いくつかの有望かつ好ましい方法及び材料について説明する。本明細書で言及する全ての刊行物は、これらの刊行物の引用に関連した方法及び/または材料を開示及び説明するため、参照により本明細書に組み入れられる。本開示は、矛盾が存在する限りにおいて、組み入れられた刊行物の任意の開示に取って代わるものであることを理解されたい。
【0028】
本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「a」「an」及び「the」は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「1つの細胞」という言及には複数のこのような細胞が含まれ、「当該ペプチド」という言及には、1つ以上のペプチド及び当業者に公知のその等価物(例えば、ポリペプチド)への言及が含まれる、などとなる。
【0029】
本明細書で論じられている刊行物は、単に本出願の出願日より前にそれらが開示されていたために提供されている。本明細書のいかなる内容も、本発明が先発明によってこのような刊行物に先行する権利を有しないことを承認するものとして解釈すべきではない。さらに、示される公開日は実際の公開日と異なる可能性があり、実際の公開日は独立に確認する必要があり得る。
【0030】
「含む」とは、挙げられた要素が組成物/方法/キット内に必要とされ、ただし請求項の範囲内で組成物/方法/キット等を形成するのに他の要素が含まれてもよいことを意味する。例えば、RSPOサロゲートを含む組成物は、RSPOサロゲート(複数可)に加えて他の要素を含んでもよい組成物であり、他の要素とは、例えば、RSPOサロゲートに結合している、例えば共有結合している、ポリペプチド、小分子、または核酸のような機能的部分;当技術分野で容易に理解されるようなRSPOサロゲート組成物の安定性を促進する作用物質、RSPOサロゲート組成物の溶解性を促進する作用物質、アジュバント等であり、任意の陰性条件により包含される要素は例外とする。
【0031】
「~から本質的になる」とは、主題発明における基本的な新規の特徴(複数可)に本質的に影響を及ぼさない指定の材料またはステップに対し説明される、組成物または方法の範囲の限定を意味する。例えば、開示された配列「から本質的になる」RSPOサロゲートは、開示された配列に対し、配列の境界にて、由来する配列に基づいて約5アミノ酸残基をプラスまたはマイナスしたアミノ酸配列を有し、例えば、挙げられた境界のアミノ酸残基よりも約5残基、4残基、3残基、2残基、もしくは約1残基少ないか、または挙げられた境界のアミノ酸残基よりも約1残基、2残基、3残基、4残基、もしくは5残基多い。
【0032】
「~からなる」とは、請求項内に指定されていない任意のエレメント、ステップ、または成分を、組成物、方法、またはキットから除外することを意味する。例えば、開示された配列「からなる」RSPOサロゲートは、開示されたアミノ酸配列のみからなる。
【0033】
「特異的結合」という用語は、共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用、または共有結合的及び非共有結合的な相互作用の組み合わせにより媒介され得る、酵素/基質、受容体/リガンド、抗体/抗原、及びレクチン/炭水化物のような、対になった種間に生じる結合を指す。2つの種の相互作用が非共有結合的に結合した複合体を産生する場合、生じる結合は、典型的には、静電気的であるか、水素結合であるか、または親油性相互作用の結果である。したがって、「特異的結合」は、対になった種間において、この2つの種間に相互作用が存在する場合に生じ、抗体/抗原またはリガンド/受容体の相互作用の特徴を有する結合複合体を産生する。組成物中のRSPOサロゲートの生物学的活性は、in vivo投与後に機能的アッセイで活性のレベル(例えば、骨再生の加速、肝細胞増殖の強化等;β-カテニンの核局在化、Wnt応答性遺伝子の転写増加等)を決定することにより、決定することができる。
【0034】
「機能的部分」または「FM」とは、組成物に機能的活性を付与するポリペプチド、小分子、炭水化物、または核酸組成物を意味する。機能的部分の例としては、以下に限定されないが、治療部分、結合部分、及びイメージング部分が挙げられる。
【0035】
「治療部分」または「TM」とは、組成物に治療活性を付与するポリペプチド、小分子、または核酸組成物を意味する。治療部分の例としては、細胞毒、例えば、小分子化合物、タンパク質毒素、及び細胞に本来有害な放射線増感部分、すなわち放射性核種等;細胞の活性を変更する作用物質、例えば、小分子、ペプチド模倣薬、サイトカイン、ケモカイン;ならびにADCCまたはCDC依存的死のために細胞を標的化する部分、例えば、免疫グロブリンのFc構成要素が挙げられる。
【0036】
「イメージング部分」または「IM」とは、細胞を、例えば、主題出願の組成物により標的化された細胞を位置付け、任意選択で可視化するために使用され得る非細胞傷害性作用物質を意味する。
【0037】
「処置」、「処置すること」などの用語は、本明細書では、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを広く意味するように使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に防止するという観点で予防的であってもよく、及び/または、疾患または疾患に起因し得る有害作用を部分的もしくは完全に治癒するという観点で治療的であってもよい。本明細書で使用する「処置」は、哺乳類における疾患の任意の処置を網羅し、(a)疾患にかかりやすい可能性があるがまだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわちその発生を抑止すること、または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことを含む。治療剤は、疾患または傷害の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。進行中の疾患の処置は、その処置が患者の望ましくない臨床的症状を安定化または低減する場合、特に関心対象となる。このような処置は、患部組織における完全な機能喪失の前に実施することが望ましい。対象の療法は、疾患の症候段階中に投与することができ、いくつかの場合には疾患の症候段階後に投与することができる。
【0038】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は本明細書では互換的に使用され、診断、処置、または治療が望ましい任意の哺乳類対象、特にヒトを指す。
【0039】
分子及び細胞の生化学における全般的方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,CSH Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al. eds.,John Wiley & Sons 1999);Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley
& Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al. eds.,Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplift & Loewy eds.,Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(I. Lefkovits ed.,Academic Press 1997);及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle &
Griffiths,John Wiley & Sons 1998)のような標準的な教科書に見いだすことができ、これらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。本開示で言及されている遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClonTechのような商業的ベンダーから入手可能である。
【0040】
ポリペプチド
本明細書で使用する「タンパク質」とは、アミノ酸から構成され、かつ当業者にタンパク質と認識される任意の組成物を指す。「タンパク質」、「ペプチド」、及びポリペプチドは、本明細書では互換的に使用される。アミノ酸は、完全名(例えば、アラニン)で呼ばれることも、許容されている1文字(例えば、A)または3文字(例えば、ala)の省略形で呼ばれることもある。ペプチドがタンパク質の一部である場合、当業者は、当該用語の使用を文脈で理解する。「タンパク質」という用語は、成熟形態のタンパク質に加えて、プロ形態及びプレプロ形態の関連タンパク質も包含する。プレプロ形態のタンパク質は、タンパク質のアミノ末端に対し作用可能に結合したプロ配列と、プロ配列のアミノ末端に対し作用可能に結合した「プレ」または「シグナル」配列とを有する成熟形態のタンパク質を含む。
【0041】
本明細書で使用する「目的タンパク質」とは、解析、同定、及び/または修飾されているタンパク質を指す。天然存在のタンパク質に加えて、組換えタンパク質、合成産生タンパク質、バリアントタンパク質、及び誘導タンパク質の全てが、本発明で使用される。
【0042】
本明細書で使用する機能的に同様なタンパク質は、「関連タンパク質」とみなされる。いくつかの実施形態では、このようなタンパク質は、異なる属及び/または種に由来し、生物の綱間の違い(例えば、細菌タンパク質と真菌タンパク質)も含まれる。追加的な実施形態では、関連タンパク質は、同じ種から提供される。実際には、本発明が任意の特定の供給源(複数可)からの関連タンパク質に限定されるようには意図されていない。
【0043】
本明細書で使用する「誘導体」という用語は、C末端及びN末端のいずれかもしくは両方への1つ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の複数の異なる部位における1つ以上のアミノ酸の置換、及び/またはアミノ酸配列中の1つ以上の部位またはタンパク質の一方もしくは両方の末端における1つ以上のアミノ酸の欠失、及び/またはアミノ酸配列中の1つ以上の部位における1つ以上のアミノ酸の挿入による、前駆タンパク質に由来するタンパク質を指す。タンパク質誘導体の調製は、好ましくは、ネイティブタンパク質をコードするDNA配列を修飾し、そのDNA配列を好適な宿主に入れて形質転換し、修飾DNA配列を発現させて誘導体タンパク質を形成することにより、達成される。
【0044】
関連(及び誘導体)タンパク質の1つのタイプは、「バリアントタンパク質」である。好ましい実施形態では、バリアントタンパク質は、少数のアミノ酸残基により、親タンパク質及び互いと相違する。相違するアミノ酸残基の数は、1個以上、好ましくは1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50個またはそれ以上のアミノ酸残基であり得る。1つの好ましい実施形態では、バリアント間の異なるアミノ酸の数は、1個から10個の間である。特に好ましい実施形態では、関連タンパク質、特にバリアントタンパク質は、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を含む。さらに、本明細書で使用する関連タンパク質またはバリアントタンパク質とは、プロミネント領域の数において別の関連タンパク質または親タンパク質と相違するタンパク質を指す。例えば、いくつかの実施形態では、バリアントタンパク質は、親タンパク質とは相違する1、2、3、4、5、または10個の対応するプロミネント領域を有する。
【0045】
本明細書で使用する「~に対応する」とは、タンパク質もしくはペプチド内の挙げられた位置における残基、またはタンパク質もしくはペプチド内の挙げられた残基と類似、相同、もしくは同等の残基を指す。本明細書で使用する「対応する領域」とは、概して、関連タンパク質または親タンパク質に沿って類似する位置を指す。
【0046】
本明細書で使用する「類似配列」という用語は、目的タンパク質(すなわち、典型的にはオリジナルの目的タンパク質)と同様の機能、3次構造、及び/または保存残基をもたらすタンパク質内の配列を指す。特に好ましい実施形態では、類似配列は、エピトープにある、またはエピトープの付近にある配列(複数可)を伴う。例えば、アルファヘリックスまたはベータシート構造を含有するエピトープ領域では、類似配列中の置換えアミノ酸は、同じ特定の構造を維持するのが好ましい。この用語は、アミノ酸配列だけでなくヌクレオチド配列も指す。いくつかの実施形態では、類似配列は、置換えアミノ酸が、エピトープにてまたはエピトープ付近で、目的タンパク質におけるアミノ酸と同様の機能、3次構造、及び/または保存残基を示すように発生する。したがって、エピトープ領域が、例えばアルファヘリックスまたはベータシート構造を含有する場合、置換えアミノ酸はその特定の構造を維持するのが好ましい。
【0047】
本明細書で使用する「相同タンパク質」とは、目的タンパク質と同様の作用、構造、抗原性、及び/または免疫原性応答を有するタンパク質を指す。ホモログ及び目的タンパク質は必ずしも進化的に関連するとは限らないことが意図されている。したがって、この用語は、異なる種から得られる同じ機能的タンパク質を包含する。
【0048】
本明細書で使用する「野生型」及び「ネイティブ」タンパク質とは、自然界で見いだされるタンパク質のことである。「野生型配列」及び「野生型遺伝子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、宿主細胞内でネイティブである、または天然に存在する配列を指す。いくつかの実施形態では、野生型配列とは、タンパク質改変プロジェクトの出発点である目的配列を指す。天然存在の(すなわち、前駆体)タンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野で公知の一般的方法に従い得ることができる。
【0049】
「Wnt遺伝子産物」または「Wntポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ネイティブ配列Wntポリペプチド、Wntポリペプチドバリアント、Wntポリペプチド断片、及びキメラWntポリペプチドを包含する。特定の実施形態では、Wntポリペプチドは、ネイティブヒト全長成熟Wntタンパク質である。
【0050】
例えば、本出願における目的ヒトネイティブ配列Wntタンパク質としては、以下のものが挙げられる:Wnt-1(GenBankアクセッションNo.NM_005430);Wnt-2(GenBankアクセッションNo.NM_003391);Wnt-2B(Wnt-13)(GenBankアクセッションNo.NM_004185(アイソフォーム1)、NM_024494.2(アイソフォーム2))、Wnt-3(RefSeq.:NM_030753)、Wnt3a(GenBankアクセッションNo.NM_033131)、Wnt-4(GenBankアクセッションNo.NM_030761)、Wnt-5A(GenBankアクセッションNo.NM_003392)、Wnt-5B(GenBankアクセッションNo.NM_032642)、Wnt-6(GenBankアクセッションNo.NM_006522)、Wnt-7A(GenBankアクセッションNo.NM_004625)、Wnt-7B(GenBankアクセッションNo.NM_058238)、Wnt-8A(GenBankアクセッションNo.NM_058244)、Wnt-8B(GenBankアクセッションNo.NM_003393)、Wnt-9A(Wnt-14)(GenBankアクセッションNo.NM_003395)、Wnt-9B(Wnt-15)(GenBankアクセッションNo.NM_003396)、Wnt-10A(GenBankアクセッションNo.NM_025216)、Wnt-10B(GenBankアクセッションNo.NM_003394)、Wnt-11(GenBankアクセッションNo.NM_004626)、Wnt-16(GenBankアクセッションNo.NM_016087))。各メンバーは、当該ファミリーに対し様々な程度の配列同一性を有するが、全てが、小さな(すなわち、39~46kD)、アシル化され、パルミトイル化され、スペーシングが高度に保存された23~24個のシステイン保存残基を含有する、分泌糖タンパク質をコードする(McMahon,A P et al.,Trends Genet.1992;8:236-242;Miller,JR.Genome Biol.2002;3(1):3001.1-3001.15)。目的Wntポリペプチドの他のネイティブ配列としては、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、実験用、またはペット用動物を含めた任意の哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、虫等からの上記のオルソログが挙げられる。
【0051】
RSPOファミリーのタンパク質は、脊椎動物において保存されている4つのメンバー(Rspo1~4)を含む。4つのRSPOタンパク質は、約40~60%のペアワイズ配列相同性を共有し、1つのN末端分泌シグナルペプチド配列と、2つのタンデムフリン様システインリッチ(Fu-CRD)ドメインと、1つのトロンボスポンジンI型リピート(TSP)ドメインと、1つのC末端塩基性アミノ酸リッチ(BR)ドメインとからなる共通のドメインアーキテクチャーをとる。4つのサブドメインの中でも、2つの中心的なタンデムFu-CRDドメインが、RSPOのWntシグナリング刺激に必須かつ十分であることが実証されている。RSPOは、Wntタンパク質のすぐ上流で作用する。したがって、RSPO駆動型のWnt活性化は、細胞外Wnt受容体Dkk1の存在に対し感受性である。
【0052】
RSPOの固有のWnt強化能力は、胚組織におけるその動的な発現パターンと合わせて、胚形成中のRSPOの重要かつ多面的な役割が予測される。他の活性の中でも、RSPO1は性決定に関与する。RSPO-2の発現は、卵胞の卵母細胞において報告されている。この卵母細胞由来RSPOは、一次卵胞の発生をパラクリン物質において第2段階に向けさせているように思われた。このような観測は、卵巣内での複数のWntリガンド及び同族フリズルド受容体の発現と符合するものである。RSPO-3は、胎盤の発生中に支配的な役割を果たしている。
【0053】
4つのRSPO全てが、3つのLGRタンパク質全てに高親和性で結合する。例示的なRSPOタンパク質配列の配列は、Genbankで公開されており、例えば、R-スポンジン-1アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001033722.1;R-スポンジン-1アイソフォーム2[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001229838.1;R-スポンジン-1アイソフォーム3前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001229839.1;R-スポンジン-1アイソフォームX1[Homo sapiens]、アクセッション:XP_006710646.1;R-スポンジン-2アイソフォームX3[Homo sapiens]、アクセッション:XP_016868884.1;R-スポンジン-2アイソフォーム3[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001304871.1;R-スポンジン-2アイソフォームX2[Homo sapiens]、アクセッション:XP_011515321.1;R-スポンジン-2アイソフォームX1[Homo sapiens]、アクセッション:XP_011515320.1;R-スポンジン-2アイソフォーム2 precursor[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001269792.1;R-スポンジン-2アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_848660.3 GI:222446611;R-スポンジン-3前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_116173.2;R-スポンジン-4アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001025042.2;R-スポンジン-4アイソフォーム2前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001035096.1がある。
【0054】
E3ユビキチンリガーゼのWnt LGR/RSPOシグナリング関与。RNF43及びZNRF3は、2つの高度に相同なWnt標的遺伝子であり、そしてRINGドメインE3リガーゼである。両方のタンパク質が、その基本構造及び配列において、細胞外PAドメインを有するシングルパス膜貫通E3リガーゼ、Grail(Rnf128)との関連性を示している。RNF43及びZNRF3は、フリズルドの7TMドメインの細胞質ループにおいてリジンのマルチユビキチン化を特異的に媒介する。これは、Wnt受容体の迅速なエンドサイトーシス及びリソソーム内での破壊をもたらす。RNF43及びZNRF3は、Wnt標的遺伝子によりコードされるため、Wnt受容体発現のネガティブフィードバック制御因子として機能し得る。これら2つのE3リガーゼの発現喪失は、内在性のWntシグナルに対する応答性亢進をもたらすことが予測される。実際に、RNF43における変異は、いくつかのヒト結腸癌細胞株や、胆管、膵臓、及び卵巣に影響を及ぼす様々なヒト腫瘍タイプにおいて見られる。RNF43/ZNRF3媒介によるWnt受容体の膜クリアランスは、RSPOが添加されると反転される。RSPO-LGR複合体はRNF43/ZNRF3を無効化し、表面フリズルド受容体の持続及びWntシグナル強度のブーストを可能にする。
【0055】
例示的なヒトE3ユビキチンリガーゼの配列はGenbankで公開されており、例えば、E3ユビキチン・タンパク質リガーゼRNF43アイソフォーム1前駆体[Homo
sapiens]、アクセッション:NP_001292473.1またはNP_060233.3;E3ユビキチン・タンパク質リガーゼRNF43アイソフォーム2[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001292474.1;E3ユビキチン・タンパク質リガーゼRNF43アイソフォームX1[Homo sapiens]、アクセッション:XP_016880289.1またはXP_011523257.1;E3ユビキチン・タンパク質リガーゼRNF43アイソフォームX2[Homo sapiens]、アクセッション:XP_011523258.1;E3ユビキチン・タンパク質リガーゼZNRF3アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001193927.1;E3ユビキチン・タンパク質リガーゼZNRF3アイソフォーム2[Homo sapiens]、アクセッション:NP_115549.2がある。
【0056】
RNF43及びZNRF3に特異的に結合する抗体は当技術分野において公知であり、商業的に入手可能であり、または新規に生成することができる。RNF43及びZNRF3またはこれらの断片は、免疫原として使用することができ、または、例えば、当技術分野で公知のようにライブラリーのスクリーニング、動物の免疫化等により、抗体を開発するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。公知の抗体の例としては、以下に限定されないが、本明細書に記載の抗体が挙げられる。
【0057】
RNF43/ZNRF3結合ドメインは、所望のタンパク質に対する結合を強化するように親和性選択的であり得る。この目的における親和性選択の方法は、任意選択で1ラウンド以上の選択を利用することができ、選択は、標的アミノ酸変化を導入し候補コード配列のライブラリーを生成し、例えば酵母細胞に、候補コード配列を用いて細胞集団を形質転換させ、(例えば、常磁性マイクロビーズを用いて)所望の特異性を選択することによるものである。典型的には複数ラウンドの選択が実施され、得られたベクターはシークエンシングされタンパク質改変の基礎として使用される。
【0058】
ある特定の実施形態では、RNF43/ZNRF3結合ドメインは、本明細書で例示され図3に示されているように、scFv抗体の6つのCDR領域を含む。
【0059】
他の実施形態では、結合ドメインは、複数のRNF43/ZNRF3特異的抗体のいずれかからの可変領域配列、またはそのCDRを含み、このような抗体は当技術分野において公知であり、商業的に入手可能であり、または新規に生成することができる。RNF43/ZNRF3は、免疫原として使用することができ、または抗体を開発するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。
【0060】
グループB、ロイシンリッチリピートGタンパク質共役受容体(LGR4、5、6)は、17コピーのロイシンリッチリピート(LRR)を有する大きな細胞外ドメイン(外部ドメイン)によって特徴づけられる、GPCRのユニークなクラスである。LRRは、疎水性アミノ酸に富む保存された11残基の配列からなる構造的モチーフであり、ロイシンは規定された位置(LxxLxLxxNxL(xは任意のアミノ酸))にある場合が多い。一連のLRRリピートにおける3次フォールドは、α/β馬蹄形(horseshoe)として知られている。細胞外ドメインは、リガンド結合を下流のLGR細胞内シグナリング経路の調節に結びつける。LGR4~6受容体における17のLRRリピートは、N末端のシステインリッチLRRNT領域及びC末端のシステインリッチLRRCT領域に隣接している。外部ドメインは、リガンド結合が下流の細胞内シグナリング経路を調節するのを媒介する。LGR4~6は約50%の配列同一性を共有し、幹細胞発生において主要な役割を果たしており、様々な上皮幹細胞(例えば、毛髪、皮膚、腸管、乳房組織等)上で見いだされている。また、LGR5は、卵巣、肝臓、及び肺のがんにおいても強力に発現する。
【0061】
例示的なヒトLGRタンパク質配列の配列は、Genbankで公開されており、例えば、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体4アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_060960.2;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体4アイソフォーム2前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001333361.1;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5アイソフォーム3前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001264156.1;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5アイソフォーム2前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001264155.1;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_003658.1;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体6アイソフォーム3[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001017404.1;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体6アイソフォーム2[Homo sapiens]、アクセッション:NP_067649.2;ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体6アイソフォーム1前駆体[Homo sapiens]、アクセッション:NP_001017403.1がある。
【0062】
本明細書で使用する「サイトカイン(1つまたは複数)」は、免疫システムの細胞に効果/影響を及ぼす生物学的分子における一般的なクラスを指す。この定義は、以下に限定されないが、局部的に作用するまたは血液中を循環することができ、かつ本明細書に記載の組成物または方法で使用した場合にRSPOサロゲートを目的細胞に標的化することができる生物学的分子を含むように意図されている。細胞標的化に使用するための例示的なサイトカインとしては、以下に限定されないが、インターフェロン-アルファ(IFN-α)、インターフェロン-ベータ(IFN-β)、及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン(例えば、IL1~IL29、特にIL-2、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、及びIL-18)、腫瘍壊死因子(例えば、TNF-アルファ及びTNF-ベータ)、エリスロポエチン(EPO)、MIP3a、単球走化性タンパク質(MCP)-1、細胞内接着分子(ICAM)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙げられる。この用語は、修飾サイトカイン分子(すなわち、「バリアントサイトカイン」)も包含するように意図されており、修飾サイトカイン分子としては、サイトカイン受容体アミノ酸及び/または核酸配列に対する置換、欠失、及び/または付加を有するサイトカインが挙げられる。したがって、この用語は、野生型に加えて組換え、合成産生、及びバリアントのサイトカイン受容体を包含するように意図されている。本明細書で使用する「サイトカイン受容体」とは、サイトカインを認識しサイトカインに結合する受容体分子を指す。
【0063】
サイトカインの代替として、特定の細胞表面受容体を有する任意の成長因子、抗体またはそのアナログが誘導され得る細胞表面抗原、細胞表面受容体に結合する小分子、ヌクレオチド、ホルモン、または炭水化物などを含めた複数のドメインまたは分子が、RSPOサロゲートを細胞に標的化させるのに使用されてもよい。
【0064】
結合ドメインには、上述したポリペプチドの誘導体、バリアント、及び生物学的に活性の断片も含まれる。「バリアント」ポリペプチドとは、以下に定義されるような、示された配列に対し100%未満の配列同一性を有する、生物学的に活性のポリペプチドを意味する。このようなバリアントとしては、示された配列と比較して、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、挿入、欠失、または置換)を含み、例えば、1個以上のアミノ酸残基がネイティブ配列のN末端もしくはC末端、またはネイティブ配列内に付加されている;約1~40個のアミノ酸残基が欠失し、任意選択で1個以上のアミノ酸残基により置換されている、ポリペプチド;ならびに、得られる産物が非天然存在のアミノ酸を有するように、アミノ酸残基が共有結合的に修飾されている、上記のポリペプチドの誘導体が挙げられる。通常、生物学的に活性のバリアントは、ネイティブ配列ポリペプチドに対し、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0065】
ある配列の「機能的誘導体」とは、初期配列と共通して定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」としては、以下に限定されないが、配列の断片及び配列の誘導体が挙げられ、ただし共通の生物学的活性を有することを条件とする。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント及びその共有結合的修飾物の両方を包含する。
【0066】
主題組成物で使用するためのRSPOサロゲート及び方法は、通常の生物学的技法及び合成化学を用いて、タンパク質分解に対する抵抗性を向上させるように、または溶解性特性を最適化するように、または治療剤としてより好適なものにするように、変更することができる。このようなポリペプチドのアナログとしては、天然存在のL-アミノ酸以外の残基(例えば、D-アミノ酸または非天然存在の合成アミノ酸)を含有するものが挙げられる。D-アミノ酸は、アミノ酸残基の一部または全てに対し置換されてもよい。
【0067】
RSPOサロゲートは、当技術分野で公知の従来的方法を用いて、in vitro合成により調製することができる。様々な市販の合成装置、例えば、Applied Biosystems,Inc.、Beckman等の自動合成機が入手可能である。合成機を使用することにより、天然存在のアミノ酸を人工のアミノ酸で置換することができる。特定の配列及び調製の様式は、利便性、経済性、必要とされる純度などにより決定される。所望される場合、合成中または発現中のペプチドに様々な基を導入してもよく、これにより、他の分子または表面への結合が可能になる。したがって、システインはチオエーテルの作製に使用することができ、ヒスチジンは金属イオン錯体への結合に、カルボキシル基はアミドまたはエステルの形成に、アミノ基はアミドの形成に、などというように使用することができる。
【0068】
リンカー。RNF43/ZNRF3結合ドメイン及び細胞標的化ドメインは、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー、または非ペプチドリンカー等)により分離することができる。ドメインを連結するアミノ酸リンカーは、マルチドメインタンパク質の構造及び機能において重要な役割を果たし得る。自らが有する触媒活性のために適切なリンカー組成が必要となるタンパク質の例は多数存在する。概して、ドメインに接続するリンカーの長さを変更することは、タンパク質の安定性、フォールディング速度、及びドメイン間配向に影響を及ぼすことが示されている(George and Hering(2003)Prot.Eng.15:871-879を参照)。RSPOサロゲートにおけるリンカーの長さ、及びそのための結合ドメイン間の間隔は、RSPOサロゲートのシグナルの長さを調節するために使用することができ、またRSPOサロゲートの所望の使用に応じて選択することができる。RSPOサロゲートの結合ドメイン間の強制的距離は様々であり得るが、ある特定の実施形態では、約100オングストローム未満、約90オングストローム未満、約80オングストローム未満、約70オングストローム未満、約60オングストローム未満、約50オングストローム未満であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、リンカーはリジッドリンカーであり、他の実施形態では、リンカーはフレキシブルリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカー部分はペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは2~100アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、ただし100以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、5~75、5~50、5~25、5~20、5~15、5~10、または5~9の間の長さのアミノ酸を含む。例示的なリンカーとしては、少なくとも2個のアミノ酸残基、例えば、Gly-Gly、Gly-Ala-Gly、Gly-Pro-Ala、Gly-Gly-Gly-Gly-Serを有する直鎖状ペプチドが挙げられる。好適な直鎖状ペプチドとしては、ポリグリシン、ポリセリン、ポリプロリン、ポリアラニン、ならびにアラニル及び/またはセリニル及び/またはプロリニル及び/またはグリシルアミノ酸残基からなるオリゴペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、Gly、Glu、Ser、Gly-Cys-Pro-Cys、(Gly-Ser)、Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Gly-Gly-Cys-Cys-Asn、Pro-Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Gly-Gly-Cys-Cys-Asn、Gly-Asp-Leu-Ile-Tyr-Arg-Asn-Gln-Lys、及びGly-Pro-Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Gly-Gly-Cys-Cys-Asnからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。1つの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GSTSGSGKSSEGKG、または(GGGGS)n(nは、1、2、3、4、5等である)を含むが、多くのこのようなリンカーは当技術分野において公知でありかつ使用されており、この目的を果たし得る。
【0070】
RSPOサロゲートは1本鎖形態で提供され得る。このことは、結合ドメインがリンカーペプチドを介したペプチド結合により結合していることを意味する。他の実施形態では、結合ドメインは個別のペプチドであり、非ペプチドリンカーを介して連結され得る。
【0071】
結合ドメインを結合するのに使用される化学基としては、当技術分野で公知のように、カルバメート;アミド(アミン+カルボン酸);エステル(アルコール+カルボン酸);チオエーテル(ハロアルカン+スルフヒドリル;マレイミド+スルフヒドリル)、シッフ塩基(アミン+アルデヒド)、ウレア(アミン+イソシアネート)、チオウレア(アミン+イソチオシアネート)、スルホンアミド(アミン+スルホニルクロリド)、ジスルフィド;ヒドロラゾン(hyrodrazone)、脂質などが挙げられる。
【0072】
結合ドメイン間の結合は、スペーサー(例えば、アルキルスペーサー)を含むことができ、スペーサーは直鎖状であっても分枝状であってもよく、通常は直鎖状であり、また1つ以上の不飽和結合を含むことができ、通例的には1~約300個の炭素原子、より通例的には約1~25個の炭素原子を有し、約3~12個の炭素原子であり得る。また、このタイプのスペーサーは、ヘテロ原子または官能基(アミン、エーテル、ホスホジエステルなどを含む)も含むことができる。目的の特定の構造としては、(CHCHO)n(nは1~約12である);(CHCHNH)n(nは1~約12である);[(CH)n(C=O)NH(CH(n及びmは1~約6であり、zは1~約10である;[(CH)nOPO(CH(n及びmは1~約6であり、zは1~約10である)が挙げられる。このようなリンカーには、直鎖状であっても分枝状であってもよいポリエチレングリコールが含まれ得る。
【0073】
結合ドメインは、一方の端部に親水性頭部基への安定した結合を形成可能な基を有し、反対側の端部に標的部分への安定した結合を形成可能な基を有する、ホモまたはヘテロ二官能性リンカーを介して連結していてもよい。例示的な実体としては、アジドベンゾイルヒドラジド、N-[4-(p-アジドサリチルアミノ)ブチル]-3’-[2’-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)、スベリン酸ビス-スルホスクシンイミジル、アジプイミド酸ジメチル、酒石酸ジスクシンイミジル、N-γ-マレイミドブチリルオキシスクシンアミドエステル、N-ヒドロキシ スルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート、[4-アジドフェニル]-1,3’-ジチオプロピオン酸N-スクシンイミジル、[4-ヨードアセチル]アミノ安息香酸N-スクシンイミジル、グルタルアルデヒド、NHS-PEG-MAL;4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル;3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP);N、N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド;N、N’-エチレン-ビス-(ヨードアセトアミド);または4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、及びMBSの延長鎖アナログである4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミド(SMPB)が挙げられる。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は1級アミンと反応し、チオール反応性マレイミドはシステイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0074】
この目的に有用な他の試薬としては、p,p’-ジフルオロ-m,m’-ジニトロジフェニルスルホン(アミノ基及びフェノール基と不可逆的架橋を形成);アジプイミド酸ジメチル(アミノ基に対し特異的);フェノール-1,4-ジスルホニルクロリド(主にアミノ基と反応);ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはジイソチオシアネート、またはアゾフェニル-p-ジイソシアネート(主にアミノ基と反応);ジスジアゾベンジジン(disdiazobenzidine)(主にチロシン及びヒスチジンと反応);O-ベンゾトリアゾイルオキシテトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ブロモ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムブロミド(PyBroP);N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP);4-ピロリジノピリジン;N-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどが挙げられる。ホモ二官能性架橋試薬としては、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」)が挙げられる。
【0075】
抗体:本明細書で使用する「抗体」という用語は、特定の標的抗原に対する特異的結合を付与するのに十分なカノニカル免疫グロブリン配列エレメントを含むポリペプチドを指す。当技術分野で公知のように、自然界で産生されるインタクトな抗体は、2つの同一な重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)と、2つの同一な軽鎖ポリペプチド(それぞれ25kD)とから構成されたおよそ150kDの4量体の作用物質であり、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドは互いに会合して、一般に「Y字型」構造と呼ばれる構造をもたらす。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長)から構成され、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)の次に3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端側のCH3(Y字の幹部分の底部にある)が続く。「スイッチ」として知られている短い領域は、重鎖可変領域及び定常領域を接続する。「ヒンジ」は、CH2及びCH3ドメインを抗体の残り部分と接続する。このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体内の2つの重鎖ポリペプチドを相互に接続する。各軽鎖は2つのドメインから構成され、アミノ末端側の可変(VL)ドメインの次にカルボキシ末端側の定常(CL)ドメインが続き、これらは別の「スイッチ」により互いから分離されている。インタクトな抗体の4量体は2つの重鎖-軽鎖2量体から構成されており、重鎖及び軽鎖は1つのジスルフィド結合によって互いに結合し、2つの他のジスルフィド結合は重鎖ヒンジ領域を互いに接続し、その結果ダイマーが互いに接続して4量体が形成される。また、天然産生抗体は、典型的にはCH2ドメイン上で、グリコシル化もされている。天然抗体内の各ドメインは、「免疫グロブリンフォールド」によって特徴づけられる構造を有し、この免疫グロブリンフォールドは、圧縮された逆平行ベータバレル内で互いに対し詰め込まれた2つのベータシート(例えば、3、4、または5ストランドシート)から形成されている。各可変ドメインは、「相補性決定領域」(CDR1、CDR2、及びCDR3)として知られている3つの超可変ループと、4つのある程度インバリアントな「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)とを含有する。天然抗体がフォールディングするとき、FR領域は、ドメインに構造フレームワークをもたらすベータシートを形成し、重鎖及び軽鎖の両方からのCDRループ領域は、Y構造の先端に位置する1つの超可変抗原結合部位を創出するように、3次元スペース内に一緒にまとめられる。
【0076】
天然存在の抗体のFc領域は、補体システムのエレメントに結合し、さらにエフェクター細胞(例えば、細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含む)上の受容体にも結合する。当技術分野で公知のように、Fc受容体に対するFc領域の親和性/及び他の結合属性は、グリコシル化または他の修飾を介して調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明に従い産生及び/または利用される抗体にはグリコシル化Fcドメインが含まれ、これには修飾または改変されているこのようなグリコシル化を伴うFcドメインが含まれる。
【0077】
天然抗体に見いだされるような十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体は、このようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物により生成される)か、あるいは組換え改変、化学合成、または他の人工システムもしくは方法論により産生されるかにかかわらず、「抗体」と呼ばれ得、及び/または「抗体」として使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体配列エレメントは、当技術分野で公知のように、ヒト化、霊長類化、キメラ化等されている。
【0078】
さらに、本明細書で使用する「抗体」とは、適切な実施形態では(別段の明記がないまたは文脈から明らかでない限り)、代替的提示において抗体の構造的及び機能的な特徴を利用するための、当技術分野で公知のまたは開発されたコンストラクトまたは形式のいずれかを指すことができる。例えば、実施形態で、本発明に従い利用される抗体は、以下に限定されないが、インタクトなIgG、IgE、及びIgM、二重または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)等)、1本鎖Fv、Fab、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs」(商標))、1本鎖またはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)、ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPIN(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProtein、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、及びKALBITOR(登録商標)より選択される形式をとる。いくつかの実施形態では、抗体は、天然産生された場合に有するであろう共有結合的修飾(例えば、グリカンの付着)が欠如している場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合的修飾(例えば、グリカンの付着)、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療部分、触媒的部分等]、または他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコール等]を含有し得る。
【0079】
多くの実施形態では、抗体作用物質は、当業者により相補性決定領域(CDR)と認識される1つ以上の構造的エレメントを含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはこのようなポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体作用物質は、参照抗体に見いだされるCDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはこのようなポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、配列において同一であるか、または参照CDRと比較して1~5つの間のアミノ酸置換を含有することから、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRに対し、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すことにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRに対し、少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すことにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRがそれ以外では参照CDRのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有することにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の1~5つのアミノ酸が欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRがそれ以外では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有することにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が置換されているが、含まれるCDRがそれ以外では参照CDRのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有することにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の1~5つのアミノ酸が欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRがそれ以外では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有することにより、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、抗体作用物質は、当業者により免疫グロブリン可変ドメインと認識される構造的エレメントを含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはこのようなポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗体作用物質は、免疫グロブリン結合ドメインと相同であるまたは大部分が相同である結合ドメインを有する、ポリペプチドタンパク質である。
【0080】
発現コンストラクト:本発明の方法では、RSPOサロゲートは組換え法により産生することができる。アミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化をDNAコード配列に導入することにより調製される。このようなバリアントは、アミノ酸配列内の、またはアミノ酸配列の一端もしくは両端の残基の挿入、置換、及び/または指定された欠失を表す。最終コンストラクトが本明細書で定義されるような所望の生物学的活性を有することを条件に、任意の組み合わせの挿入、置換、及び/または指定された欠失が最終コンストラクトに到達するよう施される。また、アミノ酸変化は、ポリペプチドの翻訳後プロセスも変更することができ、例えば、ポリペプチドのリーダー配列に挿入する、欠失させる、または他の方法で影響を及ぼすことにより、グリコシル化部位の数もしくは位置の変化、膜アンカー特性の変更、及び/または細胞位置の変更が行われ得る。
【0081】
サロゲートをコードする核酸は、発現用の複製可能なベクターに挿入することができる。多くのこのようなベクターが入手可能である。概して、ベクター構成要素には以下のうちの1つ以上が含まれるが、これに限定されない:複製開始点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0082】
発現ベクターは、宿主生物により認識され、サロゲートコード配列に対し作用可能に結合しているプロモーターを含有することになる。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)にある(概して約100~1000bp以内)非翻訳配列であり、プロモーターが作用可能に結合している特定の核酸配列の転写及び翻訳をコントロールする。このようなプロモーターは、典型的には誘導的及び構成的の2つのクラスに分類される。誘導的プロモーターとは、培養条件における何らかの変化(例えば、栄養素の存在もしくは不在、または温度の変化)に応答して、当該プロモーターのコントロール下でDNAからの転写レベル増加を開始するプロモーターである。
【0083】
真核生物の宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写の終了及びmRNAの安定化に必要な配列も含有することができる。このような配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’(及び場合によっては3’)非翻訳領域から一般的に利用可能である。
【0084】
上記の構成要素のうちの1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、標準的な技法を用いる。単離されたプラスミドまたはDNA断片は、必要とされるプラスミドを生成するように所望される形態で切断、調整、及び再ライゲーションすることができる。構築されたプラスミド内の正しい配列を確認するための解析については、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞を形質転換し、アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により好結果の形質転換体を選択する。形質転換体からのプラスミドは、調製され、制限エンドヌクレアーゼ消化により解析され、及び/またはシークエンシングされる。
【0085】
本明細書におけるベクター内でDNAをクローニングまたは発現させるのに好適な宿主細胞は、原核生物、酵母、または上述のより高等な真核細胞である。この目的において好適な原核生物としては、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、Enterobacteriaceae、例えば、Escherichia、例えば、E. coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescens、及びShigella、さらにBacilli、例えば、B.subtilis及びB.licheniformis、Pseudomonas、例えば、P.aeruginosa、ならびにStreptomycesが挙げられる。このような例は例示的なものであり、限定的なものではない。
【0086】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母のような真核微生物も好適な発現宿主である。Saccharomyces cerevisiae、すなわち一般的なパン酵母は、下等な真核宿主微生物の中でも最も一般的に使用されている。ただし、複数の他の属、種、系統、例えば、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis等;Pichia pastoris;Candida;Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状菌、例えば、Penicillium、Tolypocladium、ならびにAspergillus宿主、例えば、A.nidulan、及びA.nigerも、本明細書では一般的に利用可能であり有用である。
【0087】
ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養物は、宿主として利用することができる。典型的には、植物細胞は、細菌Agrobacterium tumefaciensにおけるある特定の系統と共にインキュベートすることによりトランスフェクトされる。このような植物細胞培養物のインキュベート中にDNAコード配列を植物細胞宿主に移行させて、植物細胞宿主がトランスフェクトされ、適切な条件下でDNAを発現するようにする。加えて、植物細胞に適合する制御及びシグナル配列、例えば、ノパリンシンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列が利用可能である。
【0088】
宿主細胞は、RSPOサロゲート産生のために上述の発現ベクターを用いてトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜変更された従来的な栄養培地で培養される。哺乳類宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI 1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)のような商業的に入手可能な培地は、宿主細胞の培養に好適である。これらの培地のいずれも、必要に応じてホルモン及び/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質、微量元素、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を追加することができる。任意の他の必要な追加物も、当業者に公知であると考えられる濃度で含めることができる。温度、pHなどのような培養条件は、発現用に選択した宿主に以前使用したものであり、このような条件は当業者には明らかであると考えられる。
【0089】
小分子組成物本発明のRSPOサロゲートは、有機分子、好ましくは、50ダルトン超約20,000ダルトン未満の分子量を有する低分子の有機化合物も含むことができる。有用なサロゲートは、例えば、スクリーニングアッセイによって同定され、このスクリーニングアッセイでは、分子は、RNF43/ZNRF3への高親和性結合性についてアッセイされ、次に細胞標的化ドメインに連結される。分子は、別の結合部分に連結される結合部分、またはポリペプチド作用物質に関し上述したような結合ドメインに連結される結合部分を備え得る。
【0090】
候補サロゲートは、タンパク質との構造的な相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基、好ましくはこれらの官能化学基のうちの少なくとも2つを含む。候補サロゲートは、多くの場合、上記の官能基のうちの1つ以上で置換された、環状炭素もしくは複素環構造、及び/または芳香族もしくはポリ芳香族構造を含む。また、候補作用物質は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的アナログ、またはこれらの組み合わせを含めた生体分子からも見いだされる。
【0091】
候補サロゲートは、合成または天然の化合物のライブラリーを含めた幅広い種類の供給源から得られる。例えば、幅広い種類の有機化合物及び生体分子をランダム及び指向的に合成するために、ランダム化されたオリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現を含めた多数の手段が利用可能である。代替的に、細菌、真菌、植物、及び動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であり、またはこれらは容易に産生される。加えて、天然または合成産生のライブラリー及び化合物は、従来的な化学的、物理的、及び生化学的手段を介して容易に修飾され、組み合わせライブラリーを産生するのに使用することができる。公知の薬理学的作用物質を指向的またはランダムな化学修飾、例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化等に供して、構造的アナログを産生することができる。試験作用物質は、例えば、天然産物ライブラリーまたは組み合わせライブラリーのようなライブラリーから得ることができる。複数の異なるタイプの組み合わせライブラリー及びこのようなライブラリーを調製するための方法は、例えば、PCT公報WO93/06121、WO95/12608、WO95/35503、WO94/08051、及びWO95/30642を含めて記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み入れられる。
【0092】
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、1つ以上の分子を標識に連結させてもよく、このとき標識は、直接的または間接的に検出可能なシグナルをもたらす。様々な標識としては、ラジオアイソトープ、蛍光剤、化学発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば、磁性粒子)などが挙げられる。特異的結合分子としては、ビオチン及びストレプトアビジン、ジゴキシン及びアンチジゴキシンのような対が挙げられる。特異的結合メンバーについては、通常は、補完的なメンバーが、公知の手順に従い、検出をもたらす分子で標識されると考えられる。
【0093】
様々な他の試薬をスクリーニングアッセイに含めることができる。このような試薬としては、塩、中性タンパク質、例えば、アルブミン、洗浄剤等のような試薬が挙げられ、これらは、最適なタンパク質間結合を容易にする及び/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を低減するために使用される。アッセイの効率を改善する試薬、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を使用してもよい。構成要素の混合物は、必須の結合をもたらす任意の順序で添加される。インキュベートは、任意の好適な温度で、典型的には4から40℃の間で実施される。インキュベート期間は、最適な活性となるように選択されるが、迅速な高スループットスクリーニングを容易にするように最適化されてもよい。典型的には、0.1から1時間の間が十分であると考えられる。
【0094】
RNF43/ZNRF3ポリペプチドに結合可能な化合物をスクリーニングすることにより予備スクリーニングが行われ得る。結合アッセイは、通例的には、RNF43/ZNRF3ポリペプチドを1つ以上の試験化合物に接触させることと、タンパク質及び試験化合物が結合複合体を形成するのに十分な時間を与えることとを伴う。形成された任意の結合複合体は、複数の確立した解析技法のいずれかを用いて検出され得る。タンパク質結合アッセイとしては、以下に限定されないが、共沈殿、非変性SDS-ポリアクリルアミドゲル上の共遊走、及びウェスタンブロット上の共遊走を測定する方法が挙げられる(例えば、Neurotransmitter Receptor Binding(Yamamura,H.I.,et al.,eds.),pp.61-89におけるBennet,J.P.and Yamamura,H.I.(1985)“Neurotransmitter,Hormone or Drug Receptor Binding Methods”を参照)。
【0095】
ある特定のスクリーニング法は、Wntシグナリング活性を増強する化合物をスクリーニングすることを伴う。このような方法は、細胞ベースアッセイを行うことを伴い、細胞ベースアッセイでは、試験化合物を、Fzdを発現する1つ以上の細胞に接触させ、次にWnt応答性遺伝子の発現増加の検出、β-カテニンの核局在化の検出などが行われる。
【0096】
発現または活性のレベルは、ベースライン値と比較され得る。上に示されているように、ベースライン値は、対照試料の値、または対照集団の発現レベルを代表する統計値であり得る。発現レベルは、陰性対照としての、Wnt受容体を発現しない細胞に対しても決定され得る。概して、このような細胞は、他の点においては試験細胞と実質的に遺伝的に同じである。様々な対照法を行って、レポーターコンストラクトを欠いた細胞との並発反応の実行を含めて、またはレポーターコンストラクトを有する細胞を試験化合物と接触させないことにより、観察される活性が真正であることを確認することができる。また、化合物は、以下に記載のように、さらに検証することもできる。
【0097】
前述のスクリーニング法のいずれかにより最初に同定される化合物は、さらに試験を行って見かけ上の活性を検証することができる。このような方法の基本的形式は、最初のスクリーニング中に同定されたリード化合物を、動物に、またはヒトのモデルとして働く細胞培養モデルに投与することを伴う。概して、検証実験で利用される動物モデルは、哺乳類である。好適な動物の具体的な例としては、以下に限定されないが、霊長類、マウス、及びラットが挙げられる。
【0098】
本明細書に記載のスクリーニング法により同定された活性試験作用物質は、アナログ化合物合成のためのリード化合物として働き得る。典型的には、アナログ化合物は、リード化合物と同様の電子的配置及び分子的立体構造を有するように合成される。アナログ化合物の同定は、自己無撞着場(SCF)解析、配置間相互作用(CI)解析、及び正規モードダイナミクス解析のような技法の使用を介して実施することができる。このような技法を実装するコンピュータープログラムが利用可能である。例えば、Rein et al.,(1989)Computer-Assisted Modeling of Receptor-Ligand Interactions(Alan Liss,New
York)を参照。
【0099】
RSPOサロゲート及びWntシグナリング
RSPOサロゲート組成物及びそれを使用するための方法が提供される。本発明におけるこれら及び他の目的、利点、及び特徴は、以下でより十分に説明される組成物及び方法の詳細を読めば、当業者には明らかなものとなるであろう。
【0100】
RSPOサロゲート分子は、その物理的及び生物学的特性によって定義される。当該サロゲートの配列は、ネイティブRSPOタンパク質とは異なる。本明細書で使用するRSPOサロゲートは、(i)RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインと、(ii)細胞標的化ドメインとを含む。ドメインは、直接連結してもよく、またはリンカー(例えば、ポリペプチドリンカー、もしくは非ペプチドリンカー等)によって分離されてもよい。リンカーの長さ、及びそのための結合ドメイン間の間隔は、シグナルの長さを調節するために使用することができ、またRSPOサロゲートの所望の使用に応じて選択することができる。ポリペプチドRSPOサロゲートは、1本鎖、2量体、またはより高次の多量体であり得る。当該サロゲートの主要な特徴は、細胞内の、カノニカルβ-カテニンWntシグナリングカスケードとβ-カテニン非依存的平面内細胞極性(PCP)経路とにおけるWntシグナリングの増強である。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞である。
【0101】
「Wnt増強活性」という用語は、Wntタンパク質のフリズルドタンパク質に結合する効果または活性を増強するRSPOサロゲートの能力を指す。本発明のサロゲートにおけるWntの活性を強化する能力は、複数のアッセイで確認することができる。本明細書で使用する「強化する」という用語は、Wnt/β-カテニンシグナリングまたはWnt/PCPシグナリングのレベルにおける、本発明のサロゲートの不在下でのレベルと比較しての測定可能な増加を指す。
【0102】
いくつかの実施形態では、RSPOサロゲートは、Wntシグナリング増強のためにRSPO同族受容体LGR4、LGR5、またはLGR6の発現要件を回避する。他の実施形態では、RSPOサロゲートは、Wntシグナリングの増強のためにLGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ以上を特異的に標的とし、それによりRSPO活性に対する選択性の強化をもたらす。
【0103】
RNF43またはZNRF3結合ドメインは、高い親和性、例えば、1×10-6M以下、1×10-7M以下、1×10-8M以下、1×10-9M、または1×10-10M以下のKdにてRNF43またはZNRF3に結合する任意のドメインから選択することができる。好適な結合ドメインとしては、以下に限定されないが、新規に設計された結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及びRNF43またはZNRF3タンパク質に対し特異的に結合する抗体の他の部分;ナノボディ由来結合タンパク質;ノッチンベースの改変スキャフォールド;ノリン及びそれに由来する改変結合断片、天然存在の結合ドメインなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、RNF43またはZNRF3のための特異的結合ドメインは、例えば、RSPOフリン1ドメインを含む、それからなる、または本質的にそれからなる、RSPOの結合断片である。結合ドメインは、所望の1つのタンパク質または複数のタンパク質に対する結合を強化するように親和性選択的であり得る。
【0104】
細胞標的化ドメインまたはエレメントは、高い親和性、例えば、1×10-7M以下、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下のKにて細胞表面タンパク質に対し選択的に結合する任意のドメインから選択することができる。好適な細胞標的化ドメインとしては、以下に限定されないが、新規に設計された結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及び細胞表面タンパク質に対し特異的に結合する抗体の他の部分;ナノボディ由来結合タンパク質;ノッチンベースの改変スキャフォールド;天然存在の結合ドメインまたはポリペプチド、サイトカイン、成長因子などが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、標的細胞上に同族受容体を有するサイトカインまたは成長因子である。いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、標的細胞表面上に存在する抗原に対する特異性を有する抗体またはその活性断片である。いくつかのこのような実施形態では、抗原は、LGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ以上であり、例えば、単一のLGRタンパク質(すなわち、LGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つ)に対し選択的に結合する抗体である。LGR結合部分は、目的LGRタンパク質に対し選択的であり得、例えば、他のLGRタンパク質との対比において少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、またはそれ以上の所望のLGRタンパク質に対する特異性を有する。
【0105】
RSPOサロゲートの具体的な実施形態としては、以下に限定されないが、本明細書に記載の例示的なタンパク質、例えば、配列番号1~4に示されるような、サイトカイン(例えば、IL-2またはIL-4)に連結したヒトRNF43またはヒトZNRF3に特異的な抗体由来の結合ドメイン(例えば、scFv)が挙げられ、配列番号1は、IL-2に連結したZNRF3に特異的なサロゲートを示し、配列番号2は、IL-4に連結したZNRF3に特異的なサロゲートを示し、配列番号3は、IL-2に連結したRNF43に特異的なサロゲートを示し、配列番号4は、IL-4に連結したRNF43に特異的なサロゲートを示す。
【0106】
代替となる具体的な実施形態としては、以下に限定されないが、成長因子(例えば、EGF、NGF等)に連結したヒトRNF43またはヒトZNRF3に特異的な抗体由来の結合ドメイン(例えば、scFv)が挙げられる。代替となる具体的な実施形態としては、以下に限定されないが、ヒトLGR4、LGR5、またはLGR6のうちの1つに特異的な抗体またはその断片に連結したヒトRNF43またはヒトZNRF3に特異的な抗体由来の結合ドメイン(例えば、scFv)が挙げられる。
【0107】
いくつかのこのような実施形態では、ヒトRNF43またはヒトZNRF3に特異的な抗体由来の結合ドメイン(例えば、scFv)は、配列番号1~4の抗体由来部分からの1、2、3、4、5、6つのCDR配列を含む。当業者であれば、Kabat定義(“Zhao et al.A germline knowledge based computational approach for determining antibody complementarity determining regions.” Mol Immunol.2010;47:694-700を参照)を含めたCDRの複数の定義が、一般的に使用されていることを理解するであろう。
Kabat定義は、配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている。Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づいている(Chothia et al.“Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.” Nature. 1989;342:877-883)。代替となる目的CDR定義としては、以下に限定されないが、Honegger,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool.” J Mol Biol.2001;309:657-670;Ofran et al.“Automated identification of complementarity determining regions(CDRs) reveals peculiar characteristics of CDRs and B cell epitopes.” J Immunol.2008;181:6230-6235;Almagro “Identification of differences in the specificity-determining residues of antibodies that recognize antigens of different
size: implications for the rational design of antibody repertoires.” J Mol Recognit.2004;17:132-143;及びPadlanet al.“Identification of specificity-determining residues in antibodies.” Faseb J.1995;9:133-139により開示されている定義が挙げられ、これらの各々は参照により具体的に本明細書に組み入れられる。
【0108】
「Wntタンパク質シグナリング」または「Wntシグナリング」は、生物学的に活性のWntが、細胞の活性を調節するために細胞に対しその効果を発揮する機構を指すように本明細書で使用されている。Wntタンパク質は、フリズルド(Fz)ファミリータンパク質からのタンパク質、RORファミリータンパク質からのタンパク質、LRPファミリータンパク質からのタンパク質LRP5、LRP6、タンパク質FRL1/crypto、及びタンパク質Derailed/Rykを含めたWnt受容体に結合することにより、細胞活性を調節する。Wnt受容体(複数可)は、ひとたびWnt結合により活性化されると、1つ以上の細胞内シグナリングカスケードを活性化する。このようなシグナリングカスケードは、カノニカルWntシグナリング経路;Wnt/平面内細胞極性(Wnt/PCP)経路;Wnt-カルシウム(Wnt/Ca2+)経路(Giles,RH et al.(2003) Biochim Biophys Acta 1653,1-24;Peifer,M.et al.(1994) Development 120:369-380;Papkoff,J.et al(1996) Mol.Cell
Biol.16:2128-2134;Veeman,M.T.et al.(2003) Dev.Cell 5:367-377);及び当技術分野で周知されているような他のWntシグナリング経路を含む。
【0109】
例えば、カノニカルWntシグナリング経路が活性化された結果、細胞内タンパク質β-カテニンのリン酸化が阻害され、β-カテニンのサイトゾル中での蓄積とその後の核への転座とにつながり、核においてβ-カテニンは転写因子(例えば、TCF/LEF)と相互作用して、標的遺伝子を活性化する。Wnt/PCP経路の活性化により、RhoA、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、及びネモ様キナーゼ(NLK)シグナリングカスケードが活性化されて、組織極性及び細胞運動のような生物学的プロセスをコントロールする。例えば、Wnt-4、Wnt-5A、またはWnt-11の結合によるWnt/Ca2+の活性化は、カルシウムイオンの細胞内放出を誘発し、それによりタンパク質キナーゼC(PKC)、カルシウム-カルモジュリン依存性キナーゼII(CamKII)、またはカルシニューリン(CaCN)のようなカルシウム感受性酵素が活性化される。上記のシグナリング経路の活性をアッセイすることにより、Wnt組成物の生物学的活性を容易に決定することができる。「生物学的活性RSPOサロゲート」とは、in vitroまたはin vivo(すなわち、動物、例えば、哺乳類に投与する場合)で細胞に提供されたときに、Fzd受容体に特異的に結合しWntシグナリングを活性することができるRSPOサロゲート組成物である。
【0110】
ある特定の実施形態では、本発明のRSPOサロゲートは、Wnt経路のシグナリングを、サロゲートの不在下でのWntシグナリングのレベルとの対比において少なくとも約50%、約75%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約5倍、約10倍増加させ、場合によりシグナリングを50倍、100倍、500倍、またはそれ以上増加させる。
【0111】
Wntシグナリングのレベルを測定するための様々な方法が当技術分野において公知である。このような方法としては、以下に限定されないが、Wnt/β-カテニン標的遺伝子発現;TCFレポーター遺伝子発現;ベータ-カテニン安定化;LRPリン酸化;アキシンの細胞質から細胞膜への転座及びLRPへの結合、を測定するアッセイが挙げられる。カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路は、最終的には、転写因子TCF7、TCF7L1、TCF7L2、及びLEFを介して遺伝子発現における変化をもたらす。Wnt活性化への転写応答は、複数の細胞及び組織で特性が明らかにされている。そのため、当技術分野で周知の方法による全般的な転写プロファイリングは、Wnt/β-カテニンシグナリング活性化を評価するために使用することができる。
【0112】
Wnt応答性遺伝子発現における変化は、概して、TCF及びLEF転写因子により媒介される。TCFレポーターアッセイは、TCF/LEFコントロール遺伝子の転写における変化を評価して、Wnt/ベータ-カテニンシグナリングのレベルを決定する。TCFレポーターアッセイは、最初にKorinek,V.et al.,1997によって説明された。TOP/FOPの別名でも知られているこの方法は、最適なTCFモチーフCCTTTGATCの3つのコピーまたは変異モチーフCCTTTGGCCの3つのコピーを、ルシフェラーゼ発現を推進する最小限のc-Fosプロモーターの上流に使用して(それぞれpTOPFLASH及びpFOPFLASH)、内在性β-カテニン/TCF4のトランス活性化活性を決定することを伴う。これら2つのレポーター活性(TOP/FOP)の比率が高いほど、β-カテニン/TCF4活性が高いことを示す。
【0113】
Wntシグナルに応答する様々な他のレポーター導入遺伝子がインタクトな状態で動物内に存在し、そのため、内在性Wntシグナリングを有効に反映する。このようなレポーターは、LacZまたはGFPの発現を推進する多量体化されたTCF結合部位に基づいており、当技術分野で公知の方法により容易に検出可能である。このようなレポーター遺伝子としては、TOP-GAL、BAT-GAL、ins-TOPEGFP、ins-TOPGAL、LEF-EGFP、アキシン2-LacZ、アキシン2-d2EGFP、LGR5tm1(cre/ERT2)、TOPdGFPが挙げられる。
【0114】
脱リン酸化β-カテニンの膜への動員、β-カテニンの安定化及びリン酸化状態、ならびにβ-カテニンの核への転座(Klapholz-Brown Z et al.,PLoS One.2(9) e945,2007)は、いくつかの場合にはTCF転写因子及びTNIKとの複合体形成により媒介され、Wntシグナリング経路における重要なステップである。安定化は、「破壊」複合体を阻害するディシブルドファミリータンパク質により媒介され、その結果、細胞内β-カテニンの分解が低減され、その後にβ-カテニンの核への転座が行われる。そのため、細胞内でのβ-カテニンのレベル及び位置の測定は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを良好に反映するものである。このようなアッセイの非限定的な一例は、「BioImage β-Catenin Redistribution Assay」(Thermo Scientific)であり、これは、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のC末端に融合したヒトβ-カテニンを安定的に発現する組換えU2OS細胞を提供する。イメージング及び解析は、EGFP-β-カテニンのレベル及び分布の可視化を可能にする蛍光顕微鏡またはHCSプラットフォームを用いて実施される。
【0115】
破壊複合体を阻害するもう1つの方法は、アキシンをWnt共受容体LRPの細胞質側末端に動員することによるアキシン除去による方法である。アキシンは、リン酸化形態のLRPテールに対し優先的に結合することが示されている。そのため、アキシン転座の可視化(例えば、GFP-アキシン融合タンパク質を用いて)は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを評価するためのもう1つの方法である。
【0116】
ある特定の実施形態では、本発明のサロゲートは、Wntシグナリングを、上記のアッセイで測定したとき、例えば、TOPFlashアッセイで測定したときに、中性物質または陰性対照により誘導されるシグナリングと比較して、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、150%、200%、250%、300%、400%、または500%強化することができる。このようなアッセイでは陰性対照が含まれ得る。特定の実施形態では、本発明のサロゲートは、β-カテニンシグナリングを、上記のアッセイで測定したとき、例えば、TOPFlashアッセイ、または本明細書で言及されている他のアッセイのいずれかで測定したときに、アゴニストの不在下での活性と比較して、2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10000倍、またはそれ以上強化することができる。
【0117】
代替的に、サロゲートの活性は、標的細胞上のフリズルド受容体のユビキチン化及び/または破壊を測定することにより決定することができ、このとき、活性RSPOサロゲートは、細胞表面上に残存し、ユビキチン化により修飾されない多数のフリズルドタンパク質をもたらし、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、またはそれ以上の増加をもたらす。
【0118】
RSPOサロゲートは、追加のポリペプチド配列に融合または結合していてもよい。例としては、サロゲートを免疫グロブリン配列(特に、Fc配列)と組み合わせるイムノアドヘシン、及び「タグポリペプチド」に融合したネイティブな阻害剤ポリペプチドまたはその一部を含むエピトープタグ化ポリペプチドが挙げられる。タグポリペプチドは、抗体が作製され得るエピトープをもたらすのに十分な残基を有し、その上、ネイティブな阻害剤ポリペプチドの生物学的活性を妨げないように十分短い。概して、好適なタグポリペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸残基を有し、通例的には約6~60個の間のアミノ酸残基を有する。
【0119】
医薬組成物
治療用途に関しては、RSPOサロゲートは、ヒトを含めた哺乳類に、生理的に許容される剤形で(ボーラスとして、またはある時間期間にわたる持続注入により、ヒトに投与され得る剤形を含む)、投与される。代替となる投与経路としては、局所、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、または吸入の経路が挙げられる。RSPOサロゲートはさらに、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、もしくは病変周囲の経路により、またはリンパに対し、局部的及び全身的治療効果を発揮するように好適に投与される。
【0120】
薬学的組成物は、本発明の分子と細胞(幹細胞、前駆細胞などを含む)との組み合わせも含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の分子と、再生性の体性幹細胞、例えば、上皮幹細胞、神経幹細胞、肝臓幹細胞、造血幹細胞、骨芽細胞、筋肉幹細胞、間葉幹細胞、膵臓幹細胞等との組み合わせを含む。このような組み合わせにおいて、細胞は、本発明の分子を用いた前処置(例えば、RSPOサロゲートを用いた細胞のex vivo処置)が行われる場合があり、細胞は、別々のまたは合わせた製剤で、本発明の分子と同時に投与される場合があり、細胞は、本発明の分子を用いた処置の前に個体に提供される場合があるなど、様々である。
【0121】
本明細書で使用する「幹細胞」という用語は、自己再生特性を有し、かつ複数の細胞タイプに分化する発生的潜在可能性を有する細胞を指す。幹細胞は、増殖しさらにこのような幹細胞を生じさせ、同時にその発生的潜在可能性を維持することができる。幹細胞は非対称に分割することができ、一方の娘細胞は親幹細胞の発生的潜在可能性を保持し、他方の娘細胞は、親細胞とはいくらか異なる他の特定の機能、表現型、及び/または発生的潜在可能性を発現する。娘細胞自体は、増殖し、その後1つ以上の成熟細胞タイプに分化する後代を産生するように誘導し、同時に親の発生的潜在可能性を有する1つ以上の細胞も保持することができる。分化細胞は多能性細胞に由来する場合があり、その多能性細胞自体は多能性細胞に由来するなど様々である。このような多能性細胞の各々は幹細胞とみなされ得るが、各幹細胞が生じ得る細胞タイプの範囲、すなわち発生的潜在可能性は相当に変動し得る。代替的に、集団内の幹細胞の一部は対称的に2つの幹細胞へと分割することがあり(これは確率的分化として知られている)、このように、全体としては集団内の一部の幹細胞が保持され、一方、集団内の他の細胞は分化した後代のみを生じる。したがって、「幹細胞」という用語は、特定の状況下ではさらに特化または分化した表現型に分化する発生的潜在可能性を有し、ある特定の状況下では実質的に分化することなく増殖する能力を保持する、任意の細胞サブセットを指す。
【0122】
「体性幹細胞」という用語は、胎児組織、幼若組織、及び成体組織を含めた非胚組織に由来する任意の多分化能または多能性の幹細胞を指すように本明細書で使用されている。天然の体性幹細胞は、血液、骨髄、脳、嗅上皮、皮膚、膵臓、骨格筋、及び心筋を含めた幅広い種類の成体組織から単離されている。「前駆細胞」という用語は、分化により生じさせ得る細胞との対比において、発生経路または進行に従って早期段階にある細胞を指すように本明細書で使用されている。しばしば、前駆細胞は顕著なまたは非常に高い増殖可能性を有する。前駆細胞は、発生経路に応じて、また細胞が発生し分化する環境に応じて、複数の異なる分化細胞タイプを生じる場合もあれば、単一の分化細胞タイプを生じる場合もある。
【0123】
薬学的組成物は、所望の製剤に応じて、医薬的に許容される希釈剤の無毒性担体を含むことができ、これらは、動物またはヒトの投与向けの医薬組成物の製剤化に一般に使用されるビヒクルとして定義される。希釈剤は、配合物の生体活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例に、蒸留水、緩衝水、生理的食塩水、PBS、リンガー液、ブドウ糖液、及びハンクス液がある。加えて、医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または無毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤、賦形剤などを含むことができる。組成物は、適切な生理条件に対する追加の物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、及び洗浄剤も含むことができる。
【0124】
組成物は、様々な安定剤のいずれか、例えば抗酸化剤を含んでもよい。薬学的組成物がポリペプチドを含む場合、このポリペプチドは、ポリペプチドのin vivo安定性を強化する、または薬理学的特性を強化する(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる、毒性を低減する、溶解性もしくは摂取量を強化する)、様々な周知の化合物と複合体化されてもよい。このような修飾物または複合体化剤としては、硫酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。組成物のポリペプチドは、そのin vivo属性を強化する分子と複合体化されてもよい。このような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が挙げられる。
【0125】
様々なタイプの投与に好適な製剤に関するさらなる指針は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に見いだすことができる。薬物送達方法の簡潔な概説については、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照。
【0126】
薬学的組成物は、予防的及び/または治療的処置のために投与することができる。活性成分の毒性及び治療効果は、細胞培養物及び/または実験動物における標準的な薬学的手順(例えば、LD50の決定(個体群の50%に対し致死的な用量)及びED50の決定(個体群の50%において治療的に有効な用量)を含む)に従って決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比率が治療指数であり、治療指数は比LD50/ED50として表現することができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。
【0127】
細胞培養及び/または動物実験から得られたデータは、ヒト向けの薬用量範囲の製剤化で使用することができる。活性成分の薬用量は、典型的には、毒性が低いED50を含む血中濃度の範囲内とする。薬用量は、用いる剤形及び利用する投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。
【0128】
経口投与に関しては、活性成分は、カプセル、錠剤、及び粉末のような固体剤形で、またはエリキシル、シロップ、及び懸濁液のような液体剤形で投与され得る。活性の構成要素(複数可)は、不活性成分及び粉末状の担体、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、スターチ、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、滑石、炭酸マグネシウムと共に、ゼラチンカプセルにカプセル化することができる。望ましい色、味、安定性、緩衝能、分散、または他の公知の望ましい特徴をもたらすために添加され得る追加の不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、及び食用白色インクである。同様の希釈剤を使用して圧縮錠剤を作製することができる。錠剤及びカプセルの両方は、数時間の期間にわたる薬物の持続的放出を提供するための徐放製品として製造することができる。圧縮錠剤は、糖衣もしくはフィルムでコーティングして任意の不快な味を隠し大気から錠剤を保護することができ、または消化管内での選択的崩壊のために腸溶コーティングを行うことができる。経口投与向けの液体剤形は、患者の許容性を高めるために着色及び味付けを含んでもよい。
【0129】
活性成分は、単体で、または他の好適な構成要素と組み合わせて、エアロゾル製剤にして(すなわち、「噴霧する」ことができる)、吸入を介して投与することができる。エアロゾル製剤は、加圧された許容できる噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素内に入れることができる。
【0130】
非経口投与(例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下経路による非経口投与)に好適な製剤としては、水性及び非水性の等張性無菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び意図されたレシピエントの血液と等張の製剤にする溶質を含有することができる)、ならびに水性及び非水性の無菌懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存料を含むことができる)が挙げられる。
【0131】
薬学的組成物を製剤化するのに使用される構成要素は、高純度であり、潜在的に有害な不純物を実質的に含まないことが好ましい(例えば、少なくともNational Food(NF)グレード、概して少なくとも分析用グレード、より典型的には少なくとも医薬品グレード)。さらに、in vivo使用が意図されている組成物は、通例的に無菌である。所与の化合物が使用前に合成されていなければならない限りにおいて、得られる製品は、典型的には、潜在的に毒性の任意の作用物質、特に、合成または精製プロセス中に存在する恐れのある任意のエンドトキシンを実質的に含まない。非経口投与向けの組成物はさらに、無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。
【0132】
特定の患者に投与される治療組成物の有効量は様々な因子に依存し、このような因子のいくつかは患者によって異なると考えられる。製剤は、例えば、単位用量で提供され得る。適任の臨床医であれば、患者に投与する治療薬の有効量を決定することができるであろう。サロゲートの薬用量は、処置、投与経路、治療の性質、治療薬に対する疾患の感受性等に依存することになる。臨床医は、LD50動物データ及び他の利用可能なデータを利用して、個体にとっての最大安全用量を投与経路に応じて決定することができる。身体から迅速に除去される組成物は、治療濃度を維持するために、より高用量にて、または反復用量で投与されてもよい。適任の臨床医であれば、通常の技量を利用して、定型的な臨床試験の過程で特定の治療薬またはイメージング組成物の薬用量を最適化することができるであろう。典型的には、薬用量は、対象の体重キログラム当たり0.001~100ミリグラムの作用物質となる。
【0133】
組成物は、対象に、1回を超える一連の投与で投与され得る。治療組成物に関しては、通常の定期的投与(例えば、2~3日に1回)は、時として要件とされ、または毒性を低減するためにそれが望ましい場合がある。反復用量レジメンで利用される治療組成物に関しては、免疫応答を引き起こさない部分が好ましい。
【0134】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の状態の処置に有用な材料を含有する製造品が提供される。この製造品は、容器及びラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成され得る。容器は、状態を処置するために有効である組成物を保持し、また無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の活性作用物質は、RSPOサロゲートである。容器上にある、または容器に付随するラベルは、組成物が、選択された状態を処置するために使用されることを示す。例えば、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、またはブドウ糖液のような薬学的に許容される緩衝液を保持するさらなる容器(複数可)が、製造品と共に提供されてもよい。製造品は、さらに、商業的立場及びユーザーの立場から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明を含む添付文書を含む)を含んでもよい。
【0135】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、ある疾患、障害、及び/または状態を患うまたはそれに感受性を有する集団に投与される場合に、この疾患、障害、及び/または状態を処置するのに十分である量を意味する。いくつかの実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状に対し、その発生率及び/または重症度を低減する量、その1つ以上の特徴を安定化する量、及び/またはその発症を遅延させる量である。当業者であれば、「治療有効量」という用語が、実際には、特定の個体における好結果の処置の達成を要求するわけではないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、このような処置を必要とする患者に投与したときに、意義ある数の対象において特定の所望の薬理学的応答をもたらす量と考えられる。
【0136】
例えば、いくつかの実施形態では、「治療有効量」という用語は、本発明の療法の文脈において、それを必要とする個体に投与したときに、前述の個体に生じる疾患プロセスをブロック、安定化、減弱、または反転する量を指す。
【0137】
使用方法
RSPOサロゲートは、予防的目的及び治療的目的の両方に有用である。したがって、本明細書で使用する「処置すること」という用語は、疾患の防止及び既存の状態の処置の両方を指すように使用される。ある特定の場合には、防止とは、ある疾患または状態を発生させるリスクがあると識別されている患者における疾患または状態の発症を阻害または遅延させることを示す。患者の臨床的症状を安定化または改善するための進行中疾患の処置は、本発明によってもたらされる特に重要な利益である。このような処置は、患部組織における機能喪失の前に実施されることが望ましく、その結果、本発明によってもたらされる予防的治療利益も重要である。治療効果の根拠は、疾患の重症度における何らかの減少であり得る。治療効果は、臨床的結果の観点から測定することができ、または免疫学的試験もしくは生化学的試験によって決定することができる。処置対象患者は、哺乳類(例えば、ヒトを含めた霊長類)である場合もあれば、実験動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス等)、特に療法の評価向けにはウマ、イヌ、ネコ、家畜等である場合もある。
【0138】
治療製剤(例えば、薬学的組成物)の薬用量は、状態の性質、投与頻度、投与様式、宿主からの作用物質のクリアランスなどに応じて幅広く変動する。特定の実施形態では、初期用量は多めで、その後は少なめの維持用量となり得る。ある特定の実施形態では、用量は、1週間に1回または2週間に1回と低頻度に投与される場合もあれば、より頻繁には、少なめの用量に分割し、1日に1回、1週間に2回、または必要に応じてその他の頻度で有効な薬用量レベルを維持するように投与される場合もある。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態では、RSPOサロゲートを含む組成物または製剤の投与は、局部投与により実施される。本明細書で使用する局部投与とは、局所投与を指す場合もあるが、処置部位における注射または体内へのその他の導入も指す。このような投与の例としては、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射などが挙げられる。他の実施形態では、RSPOサロゲートを含む組成物または製剤は、全身的に、例えば、経口的または静脈内に投与される。1つの実施形態では、RSPOサロゲートを含む製剤の組成物は、注入により、例えば、ある時間期間、例えば、10分、20分、3分、1時間、2時間、3時間、4時間、またはそれ以上にわたる持続的注入により投与される。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物または製剤は、迅速で意義のある活性の増加を得るために短期ベースで投与され、例えば、単回投与、または、例えば1、2、3日もしくはそれ以上から1週間もしくは2週間にわたり実施される一連の投与が行われる。投与される用量サイズは、医師によって決定されなければならず、また投与される用量サイズは、疾患の性質及び重大性、患者の年齢及び健康状態、ならびに患者の薬物自体に対する忍容性のような、複数の因子に依存する。
【0141】
本発明のある特定の実施形態では、有効量の、RSPOサロゲートを含む組成物は、例えば、細胞を、所望の効果を達成する(例えば、Wntシグナリング、増殖等を増強する)有効量の当該組成物に接触させることにより、細胞に提供される。特定の実施形態では、この接触は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで生じる。特定の実施形態では、細胞は、Wntシグナリング増加を必要とする対象に由来するか、または当該対象内に存在する。
【0142】
本発明のいくつかの方法では、細胞内のWntシグナリングを増強するための有効量の主題組成物が提供される。生化学的に述べると、RSPOサロゲートの有効量または有効用量は、細胞内のWntシグナリングを、当該サロゲートの不在下でのシグナリングとの対比において、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%増加させる量である。細胞の活性の調節量は、Wnt生物学の技術分野における当業者に公知の複数の方法によって決定することができる。
【0143】
臨床的な意味において、RSPOサロゲート組成物の有効用量は、対象に、好適な時間期間、例えば、少なくとも約1週間、場合によっては約2週間またはそれ以上から約4週間、8週間、またはそれ以上までにわたり投与されたときに、Wntシグナリングの欠如に関連する症状の変化を立証する用量である。いくつかの実施形態では、有効用量は、単に疾患状態の進行を遅くさせるまたは休止させることができるだけでなく、状態の反転も誘導することができる。当業者には、初期用量がこのような時間期間の間投与され、その後に維持用量が投与され得、そして維持用量が、いくつかの場合には薬用量を低減してなされるということが理解されよう。
【0144】
RSPOサロゲート組成物の投与されるべき有効量または有効用量の計算は、当業者の技量の範囲内であり、当業者にとって定型的なものであると考えられる。言うまでもなく、投与されるべき最終量は、投与経路と、処置されるべき障害または状態の性質とに依存することになる。
【0145】
主題方法で使用するのに好適な細胞は、概して、1つ以上のFzd受容体を含む細胞であり、このとき、Fzd受容体のユビキチン化はRSPOサロゲートの投与によって低下する。接触させるべき細胞は、in vitro、すなわち培養液中にある場合もあれば、in vivo、すなわち対象内にある場合もある。細胞は、任意の生物からの/生物内のものであってもよいが、好ましくは、ヒトを含めた哺乳類、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、実験用、または愛玩用動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、(寄生)虫等である。好ましくは、哺乳類はヒトである。細胞は、任意の組織からのものであってもよい。細胞は凍結されてもよく、または新鮮であってもよい。細胞は、初代細胞であってもよく、細胞株であってもよい。多くの場合、細胞は、in vivoで使用される初代細胞であるか、またはex vivoで処置してからレシピエントに導入される。
【0146】
in vitroの細胞は、当技術分野で周知の複数の方法のいずれかにより、RSPOサロゲートを含む組成物に接触させることができる。例えば、タンパク質組成物は、対象細胞が培養されている培地内で、細胞に提供することができる。RSPOサロゲートをコードする核酸は、当技術分野で周知の摂取量を促進する条件(例えば、エレクトロポレーション、塩化カルシウムトランスフェクション、及びリポフェクション)下で、ベクター上の対象細胞に、または対象細胞と共に共培養されている細胞に提供することができる。代替的に、RSPOサロゲートをコードする核酸は、ウイルスを介して、対象細胞に、または対象細胞と共に共培養されている細胞に提供することができ、すなわち、細胞は、Wntペプチドサロゲートポリペプチドをコードする核酸を含むウイルス粒子と接触される。レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)は、非分裂細胞のトランスフェクトに使用することができるため、本発明の方法に特に好適である(例えば、Uchida et
al.(1998) P.N.A.S.95(20):11939-44を参照)。一般的に使用されているレトロウイルスベクターは「不完全」であり、すなわち、増殖性感染に必要とされるウイルスタンパク質を産生することができない。逆に、ベクターの複製は、パッケージ化細胞株における成長を必要とする。
【0147】
同様に、in vivoの細胞は、タンパク質、ペプチド、小分子、または核酸の対象への投与についての当技術分野で周知の複数の方法のいずれかにより、主題RSPOサロゲート組成物に接触させることができる。RSPOサロゲート組成物は、様々な製剤または薬学的組成物に組み入れることができ、いくつかの実施形態では、このような製剤または薬学的組成物は、全長Wntタンパク質の製剤化に関して記載されているように、洗浄剤、リポソーム等の不在下で製剤化される。
【0148】
WNTシグナリングは、ヒトの身体内のほとんどあらゆる組織の治癒に必要とされる。例えば、WNTは、成体の組織常在性幹細胞を活性化することが示されている。このような幹細胞は自己再生及び分割し、その際に後代細胞を生じ、この後代細胞は目的の組織内で成熟する。本発明の分子は、薬理学的に許容される形式でWNT活性を増強する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、病的なまたは損傷した組織の処置で使用するために、組織再生で使用するために、ならびに細胞成長及び増殖で使用するために、及び/または組織改変で使用するために投与される。特に、本発明は、加齢、外傷、感染、または他の病的状態による組織の喪失または損傷の処置で使用するための、RSPOサロゲート、または本発明による1つ以上のサロゲートを含む組成物を提供する。
【0150】
本発明の組成物を用いた処置対象となる目的の状態としては、以下に限定されないが、再生的細胞成長が所望される複数の状態が挙げられる。このような状態としては、例えば、骨成長または再生の強化、例えば、骨再生、骨移植片、骨折の治癒等におけるもの;脱毛症の処置;感覚器官再生の強化、例えば、聴力損失の処置、黄斑変性症の処置等;歯成長、歯再生、脳卒中の処置、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び血液脳関門に影響を及ぼす他の状態;口腔粘膜炎の処置、表皮再生の強化が所望される状態、例えば、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍の処置等、造血細胞成長の強化、例えば、骨髄、動員末梢血からの造血幹細胞移植片の強化、免疫不全症の処置等;肝臓細胞再生の強化、例えば、肝臓再生、肝硬変の処置、肝臓移植の強化などが挙げられ得る。
【0151】
骨成長の強化が所望される状態としては、以下に限定されないが、骨折、移植、人工装具周囲の内部成長などが挙げられ得る。WNTタンパク質は、骨ターンオーバーにおける極めて重要な制御因子であり、豊富な科学的データは、WNTタンパク質における骨再生を促進する役割を支持している。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は本発明の分子に曝露されて、その結果、当該骨髄細胞内の幹細胞が活性化される。このような活性化細胞は、個体の利益のためにin situで残存してもよく、または骨移植手順で使用されてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、骨再生は、応答性の細胞集団(例えば、骨髄、骨前駆細胞、骨幹細胞等)を、有効用量の本発明の分子に接触させることにより、強化される。いくつかのこのような実施形態では、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態では、接触はex vivoで実施される。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、以下に限定されないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、骨セメントなどが挙げられる。
【0153】
本発明の分子のうちの1つ以上を含む組成物は、(例えば、骨格形成幹細胞からの)骨組織のin vitro生成において、さらに骨組織欠損のin vivo処置において使用することができる。主題化合物は、軟骨形成及び/または骨形成の速度の制御に使用することができる。「骨組織欠損」とは、骨または他の骨結合組織の欠陥であって、どのように欠陥が生じたかにかかわらず、例えば、外科的介入、腫瘍の除去、潰瘍、移植、骨折、または他の外傷もしくは変性状態のいずれかの結果として、骨または結合組織の回復が所望される任意の部位における欠陥を意味する。例えば、本発明の組成物は、結合組織に対する軟骨機能を回復させるためのレジメンの一部として使用することができる。このような方法は、例えば、変性摩耗(例えば、関節炎をもたらす摩耗)の結果である軟骨組織の欠損または病変の修復において、さらに、組織への外傷(例えば、断裂した半月板組織の置換、半月板切除、断裂した靱帯による関節の弛緩、関節の不正整列(malignment)、骨折)により、または遺伝性疾患により引き起こされ得る他の機械的混乱の修復において有用である。
【0154】
本発明の組成物は、眼内組織の再生でも使用される。加齢性黄斑変性症(AMD)は、中心視野及び視力の進行的な低下により特徴づけられ、高齢の米国人における視力喪失及び失明の主因であり続けている。現時点では、AMDの標準治療は、硝子体内の血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤である。AMDは、VEGF、血小板由来成長因子(PDGF)、細胞内接着分子-1(ICAM-1)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、シクロオキシゲナーゼ-2(Cox-2)、結合組織成長因子(CTGF)、及びフィブロネクチン(FN)のような、AMDにおける血管新生、炎症、線維化、及び酸化ストレスに寄与する多数の病原因子を伴う多因子性疾患である。本発明の組成物は、黄斑変性症の処置向けに、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、またはその他の目への局所的適用で、使用することができる。
【0155】
他の実施形態では、本発明の組成物は、網膜組織の再生で使用される。成体哺乳類の網膜では、ミュラーグリアは脱分化し、例えば、in vivoの神経毒性受傷後に、光受容体を含めた網膜細胞を産生する。しかし、新たに生成される網膜ニューロンは非常に限定されている。しかし、Wntシグナリングは、損傷後または変性中のミュラーグリア由来網膜前駆細胞の増殖及び神経再生を促進することができる。本発明の組成物は、網膜再生の強化向けに、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または、その他の目への局所的適用で、使用することができる。
【0156】
他の感覚器官、例えば、聴力喪失に関与する細胞も、本発明の組成物から利益がもたらされる。内耳において、聴覚器官は、音の振動を電気インパルスに変換するのに必要とされる機械感受性の有毛細胞を収容している。半規管(SSC)、卵形嚢、及び球形嚢から構成される前庭器官も、頭部の位置及び動きを検出するために感覚有毛細胞を含有する。音声及び前庭のシグナルは、今度はらせん及び前庭神経節ニューロンを介して中枢的に中継され、音声及び平衡の知覚が可能になる。多数の研究により、蝸牛発生中における、及び有毛細胞再生の促進におけるWntシグナリング経路の複数の役割が特徴づけられている。成熟した哺乳類の聴覚及び前庭器官は、有毛細胞の変性後に自発的に増殖性応答を開始しない。しかし、活性Wnt/β-カテニンシグナリングは、有毛細胞の増殖を促進することができ、このときLGR5陽性支持細胞は、有毛細胞前駆細胞として振る舞うことができる。LGR5陽性支持細胞は、有毛細胞を有糸分裂的に再生することができ、このときシグナリングは、有糸分裂応答と有毛細胞再生の程度との両方を増大させる。Wntシグナリングは、異所的な有毛細胞形成も誘導することができる。本発明の組成物は、聴覚再生の強化向けに、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または、その他の耳への局所的適用で、使用することができる。
【0157】
歯周疾患は、歯喪失の主因であり、複数の全身状態に関連づけられる。冒された歯支持組織の支持及び機能の再構築は、歯周再生医療における重要な治療エンドポイントに相当する。スキャフォールドマトリックスにおける最新の進歩と結びつけて歯周生物学の理解が向上したことにより、本発明の組成物を提供する処置が、任意選択で支持歯槽骨、歯周靱帯、及びセメント質の予測可能な組織再生のための再生細胞送達と組み合わせてもたらされる。いくつかの実施形態では、歯または根底の骨の再生は、応答性細胞集団を、有効用量の本発明の分子に接触させることにより強化される。いくつかのこのような実施形態では、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態では、接触はex vivoで実施され、その次に活性化された幹細胞または前駆細胞の移植が行われる。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、以下に限定されないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、骨セメントなどが挙げられる。
【0158】
毛髪喪失は、ホルモン感受性から自己免疫に至るまでの複数の原因を有する一般的な問題である。アンドロゲン性脱毛症は、しばしば男性型脱毛症と呼ばれ、男性において最も一般的な形態の毛髪喪失であり、加齢に伴って、50%もの多くの男性が発症する。アンドロゲン性脱毛症において、毛髪喪失は、アンドロゲン5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に対する頭皮上部内の毛包の感受性により引き起こされる。DHTは、この毛包が進行的に小型化し、もはや臨床的に明らかな毛幹を産生しない状態まで至らせる。DHTにより冒される細胞は真皮乳頭細胞であり、真皮乳頭細胞は成長を中止し、毛髪成長を誘導する能力を喪失する。表皮のWntシグナリングは、成人の毛包再生に極めて重要である。いくつかの実施形態では、毛包再生は、応答性細胞集団を、有効用量の本発明の分子に接触させることにより強化される。いくつかのこのような実施形態では、接触はin
vivoで実施される。他のこのような実施形態では、接触はex vivoで実施され、その次に活性化された幹細胞または前駆細胞(例えば、濾胞細胞)の移植が行われる。当該分子は、例えば、局所的なローション、ゲル、クリームなどで作用部位に局在化させることができる。
【0159】
様々な表皮状態は、本発明の化合物を用いた処置から利益がもたらされる。粘膜炎は、胃腸管の内側を覆う上皮細胞の迅速な分割が途絶したときに生じ、粘膜組織が潰瘍及び感染を受けやすい状態で放置される。粘膜組織(mucosal tissue)は、粘膜(mucosa)または粘膜(mucous membrane)の別名でも知られ、空気に連絡する全ての身体通路(例えば、気道及び消化管)の内側を覆っており、粘液を分泌する細胞及び関連する腺を有する。口内を覆うこの膜部分は、口腔粘膜と呼ばれ、身体の中で最も敏感な部分の1つであり、化学療法及び放射線に対し特に脆弱である。口腔は、粘膜炎の最も一般的な位置である。口腔粘膜炎は、がん処置、特に化学療法及び放射線における、おそらく最も一般的な衰弱性の合併症である。口腔粘膜炎は、痛み、食べられない結果としての栄養上の問題、及び粘膜内の開放創に起因する感染リスクの増加を含めたいくつかの問題をもたらし得る。口腔粘膜炎は、患者のクオリティーオブライフに顕著な影響を及ぼし、また用量限定的であり得る(すなわち、この後の化学療法用量の低減を要する)。その他の表皮状態としては、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍などが挙げられる。本発明の分子は、このような、再生細胞が本発明の化合物に接触される状態において使用され得る。接触は、例えば、局所的(皮内、皮下を含む)であり、ゲル、ローション、クリーム等において、標的部位等に適用され得る。
【0160】
肝臓は再生能力を有し、再生能力はWntシグナリングによって強化され得る。成人肝臓前駆(卵形)細胞は、肝臓内にある通性の幹細胞である。活性のWnt/β-カテニンシグナリングは卵形細胞集団内で優先的に生じ、Wntシグナリングは、再生された肝臓内の卵形細胞集団の増殖を促進する。肝臓組織の再生のための方法は、本発明の化合物の投与から利益がもたらされ、投与は、例えば、肝臓組織内への注射、肝臓に通じる静脈内への注射、徐放性製剤の植込みなどにより、全身的であっても局在化されていてもよい。肝臓の損傷は、感染、アルコール濫用等に関連し得る。
【0161】
脳卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、及びその他の血液脳関門に影響を及ぼす状態。血管新生は、酸素及び栄養を身体全体にわたる多くの組織に供給することを確実にするために極めて重要であり、また中枢神経系にとっては、神経組織が低酸素症及び虚血に対し敏感であることから、特に重要である。脳内の血管は、血液脳関門(BBB)と称される特化された構造を形成しており、この血液脳関門が、血液から脳への分子及びイオンの流れを限定している。このBBBは、脳のホメオスタシスを維持し中枢神経系を毒素及び病原体から保護するために、極めて重要である。BBBを形成する中枢神経系内皮細胞は、分子及びイオンの傍細胞の流れを限定するタイトジャンクションにより共に保持されている高度に分極した細胞である点において、非神経組織内の内皮細胞とは相違する。加えて、中枢神経系内皮細胞は、BBBを横断して脳に入る必須栄養素の選択的な輸送をもたらし、かつ脳から潜在的毒素を流出させるための、特定のトランスポーターも発現する。Wntシグナリングは、中枢神経系の血管形成及び/または機能を特異的に制御する。BBBが損なわれている状態は、例えば、直接注射、髄腔内投与、徐放性製剤の植込みなどによる本発明の化合物の投与から利益がもたらされ得る。
【0162】
患者は、任意の動物(例えば、哺乳類)であってもよく、以下に限定されないが、動物にはヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などが含まれる。典型的には、患者はヒトである。本発明のサロゲートまたは本発明のサロゲートを含む化合物もしくは組成物の処置方法及び医学的使用は、組織再生を促進する。「組織」という用語は、任意選択で同様の構造、機能、及び/または起源を有する、細胞からなる生物の一部または細胞の凝集体を指す。組織の例としては、以下に限定されないが、上皮組織、例えば、皮膚組織、胃の内膜、膵臓の内膜、肝臓;結合組織、例えば、皮膚の内層、腱、靱帯、軟骨、骨、脂肪、毛髪、血液;筋組織;ならびに神経組織、例えば、グリア細胞及びニューロンが挙げられる。喪失または損傷は、細胞数を減少させる任意の事象であり得る。例えば、事故、自己免疫障害、治療の副作用、または疾患状態は、外傷を構成すると考えられる。細胞数を減少させ得る状態の特定の例としては、以下に限定されないが、放射線/化学療法、粘膜炎、IBD、短腸症候群、遺伝性腸障害、セリアック病、代謝性疾患、遺伝性症候群、(ウイルス)感染症(HepB/C)、中毒状態、アルコール性肝臓、脂肪肝、肝硬変、感染症、悪性貧血、潰瘍、糖尿病、糖尿病性足部潰瘍(例えば、難治性糖尿病性足部潰瘍)、島細胞の破壊、骨質量の喪失(骨粗鬆症)、機能的皮膚の喪失、毛髪の喪失、機能的肺組織の喪失、腎組織の喪失(例えば、急性尿細管壊死)、内耳における感覚細胞の喪失が挙げられる。組織再生は、組織内の細胞数を増加させ、好ましくは組織の細胞間の接続が再確立するのを可能にし、より好ましくは組織の機能性が回復するのを可能にする。
【0163】
本発明のサロゲートまたは1つ以上のサロゲートを含む組成物を用いて処置され得るその他の状態としては、以下に限定されないが、関節障害、骨粗鬆症及び関連骨疾患、脱毛症、移植片対宿主病が挙げられる。
【0164】
本発明のサロゲートまたは1つ以上のサロゲートを含む組成物は、創傷治癒及び多くの器官(例えば、気道、大動脈、子宮)内の平滑筋組織の生成に使用することもできる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本発明は、先に記載されているように、処置方法及び医学的使用であって、本発明の2つ以上のサロゲートまたは本発明のサロゲートを含む化合物もしくは組成物が、動物または患者に、同時に、経時的に、または別々に投与される、処置方法及び医学的使用を提供する。また、サロゲート(複数可)は、Wntタンパク質またはそのサロゲートと同時に、逐次的に、または別々に投与されてもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明は、先に記載されているように、処置方法及び医学的使用であって、本発明の1つ以上のサロゲートまたは本発明のサロゲートを含む化合物もしくは組成物が、動物または患者に、1つ以上のさらなる化合物または薬物と組み合わせて投与され、前述の本発明のサロゲートまたは本発明のサロゲートを含む化合物もしくは組成物と前述のさらなる化合物または薬物とが、同時に、逐次的に、または別々に投与される、処置方法及び医学的使用を提供する。
【0167】
また、本発明のサロゲートは、非治療的方法、例えば、in vitroの研究方法における広範な用途も有する。
【0168】
本発明は、損傷組織(例えば、上記の医学的使用のセクションで論じられた組織)の組織再生のための方法であって、本発明のサロゲートを投与することを含む方法を提供する。サロゲートは、in vivoで細胞に直接投与されても、経口的に、静脈内に、または当技術分野で公知の他の方法により患者に投与されても、ex vivo細胞に投与されてもよい。本発明のサロゲートがex vivo細胞に投与されるいくつかの実施形態では、このような細胞は、本発明のアゴニストを投与する前、後、または最中に、患者に移植され得る。
【0169】
また、本発明は、細胞の増殖を強化するための方法であって、細胞に本発明のサロゲートを供給することを含む方法も提供する。このような方法は、in vivo、ex vivo、またはin vitroで実行され得る。
【0170】
Wntシグナリングは、幹細胞培養の主要な構成要素である。例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているような幹細胞培地。本発明のサロゲートは、このような幹細胞培地で使用するのに好適なRSPO代替物であり、またはRSPOと組み合わせることができる。
【0171】
したがって、1つの実施形態では、本発明は、幹細胞の増殖を強化するための方法であって、幹細胞に、Wntタンパク質またはそのサロゲートと組み合わせて本発明のサロゲートを供給することを含む方法を提供する。1つの実施形態では、本発明は、本発明の1つ以上のタンパク質を含む細胞培地を提供する。いくつかの実施形態では、細胞培地は、通常はWntまたはRSPOを含む、当技術分野で既に知られている任意の細胞培地であって、ただしWntまたはRSPOが本発明のサロゲートにより(完全にまたは部分的に)置き換えられているまたは供給されている、任意の細胞培地であり得る。例えば、培地は、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているようなものであってもよく、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0172】
幹細胞培地は、多くの場合、追加の成長因子を含む。したがって、当該方法は、幹細胞に成長因子を供給することを追加的に含んでもよい。細胞培地で一般的に使用される成長因子としては、上皮成長因子(EGF、(Peprotech))、形質転換成長因子(TGF-アルファ、Peprotech)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、Peprotech)、脳由来神経栄養因子(BDNF、R&D Systems)、ヒト成長因子(HGF)、及びケラチノサイト成長因子(KGF、Peprotech、別名FGF7)が挙げられる。EGFは、様々な培養された外胚葉及び中胚葉細胞に対する強力な分裂促進因子であり、in vivo及びin vitroでの特定の細胞の分化と、細胞培養におけるいくつかの線維芽細胞の分化とに、著明な効果を有する。EGF前駆体は、タンパク質切断されて細胞を刺激する53アミノ酸ペプチドホルモンを生成する、膜結合分子として存在する。EGFまたはその他の分裂促進成長因子は、このようにして幹細胞に供給され得る。幹細胞の培養中、分裂促進成長因子を2日に1回培地に添加してもよく、一方、培地は4日に1回取り替えることが好ましい。概して、分裂促進因子は、i)EGF、TGF-アルファ、及びKGF;ii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF7;iii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF;iv)EGF及びKGF;v)EGF及びFGF7;vi)EGF及びFGF;vii)TGF-α及びKGF;viii)TGF-アルファ及びFGF7;またはix)TGFα及びFGFからなる群より選択される。
【0173】
幹細胞の増殖を強化するこれらの方法は、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているように、幹細胞から新たなオルガノイド及び組織を成長させるのに使用することができる。
【0174】
複数の臨床的に意義のある状態は、組織を再生することができない、Wntシグナリングの増強が望ましい状態によって特徴づけられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、RSPOサロゲートは、幹細胞再生の強化に使用される。目的幹細胞としては、筋サテライト細胞;造血幹細胞及びそれに由来する前駆細胞(米国特許第5,061,620号);神経幹細胞(Morrison et al.(1999) Cell 96:737-749を参照);胚幹細胞;間葉幹細胞;中胚葉幹細胞;肝臓幹細胞等が挙げられる。
【0176】
RSPOサロゲートは、骨治癒の強化で使用される。多くの臨床的状況において、骨治癒状態は、例えば、高齢者の中で、受傷後、骨形成不全症等の場合、骨形成細胞の活性低下に起因し、理想的なものではない。様々な骨及び軟骨の障害は、高齢の個体に影響を及ぼす。このような組織は、通常は間葉系幹細胞によって再生される。このような状態には、変形性関節症が含まれる。変形性関節症は、身体の関節に「摩耗」の発現として生じる。したがって、運動選手または過体重の個体は、軟骨の喪失または損傷に起因して大きな関節(膝、肩、臀部)に変形性関節症を発生させる。骨性の関節表面を覆う、この硬質で滑らかなクッションは、身体における構造タンパク質であるコラーゲンから主に構成されており、コラーゲンはメッシュを形成して関節に支持及び柔軟性をもたらす。軟骨が損傷を受け喪失すると、骨表面は異常な変化を経る。いくらかの炎症が生じるが、他のタイプの関節炎で見られるものほど程度は大きくない。それにもかかわらず、変形性関節症は、高齢者において相当の痛み及び身体障害の原因となる。
【0177】
骨修復を加速する方法において、本発明の薬学的組成物は、(例えば、受傷後に)骨への損傷を患う患者に投与される。製剤は、好ましくは、骨再生を必要とする損傷の後、受傷の部位またはその付近に投与される。Wnt製剤は、好ましくは、短い時間期間の間、及び受傷部位に存在する骨前駆細胞の数を増加させるのに有効な用量で投与される。いくつかの実施形態では、Wntは、受傷から約2日以内、通例的には約1日以内に投与され、約2週間以下、約1週間以下、約5日以下、約3日以下等の間提供される。
【0178】
代替的な方法において、骨に対する損傷を患っている患者は、骨髄細胞を含む組成物、例えば、骨芽細胞に分化可能な間葉系幹細胞、骨髄細胞等を含む組成物が提供される。骨髄細胞は、ex vivoで、再生強化に十分な用量のWntタンパク質(1つまたは複数)を含む薬学的組成物で処置することができ、または、細胞組成物を本発明のWnt製剤と共に患者に投与することができる。
【0179】
配列
ZNRF3を認識するscFv断片は、以下のような例示的コンストラクトにおいて、ヒトIL-2と融合される。
【0180】
Z6 scFv-ヒトIL2(配列番号1):
【化1】
【0181】
配列の構成要素は、以下の通り:
配列番号1、ヒトZNRF3に特異的な残基1~255 scFv配列。例示的なCDR配列には下線が引かれている。配列番号1、残基256~265はリンカーである。配列番号1、残基266~398はヒトIL-2配列である。配列番号1、残基399~408はヒスチジンタグである。
【化2】


したがって、例示的な抗体のCDR配列は下記のようになる。
【化3】
【0182】
Z6抗体を含む同様のコンストラクトを、IL-4融合体を用いて以下のように作製した。
Z6-IL4(配列番号2)(残基266~394はヒトIL-4タンパク質である)
【化4】
【0183】
RNF43を認識するscFv断片は、以下のような例示的コンストラクトにおいて、ヒトIL-2と融合される。
【0184】
R5 scFv-ヒトIL2(配列番号3):
【化5】
【0185】
配列の構成要素は、以下の通り:
配列番号1、ヒトRNF43に特異的な残基1~258 scFv配列。例示的なCDR配列には下線が引かれている。配列番号1、残基258~268はリンカーである。配列番号1、残基268~403はヒトIL-2配列である。配列番号1、残基404~414はヒスチジンタグである。
【化6】


・したがって、例示的な抗体のCDR配列は下記のようになる。
【化7】
【0186】
R5抗体を含む同様のコンストラクトを、IL-4融合体を用いて以下のように作製した。
R5-IL4(配列番号4)(残基268~396はヒトIL-4タンパク質である)
R5IL4(配列番号4)
【化8】
【0187】
以下の実施例は、本発明の作製及び使用方法についての完全な開示及び説明を当業者に提供するために示されるものであり、発明者らが発明とみなすものの範囲を限定するようには意図されておらず、また以下の実験が実施された全ての実験である、すなわち以下の実験のみが実施された実験であることを表すようにも意図されていない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関しては正確さを保証するよう努めたが、ある程度の実験的誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧前後である。
【実施例0188】
実施例1
発明者らは、RNF43及び抗ZNRF3を認識するscFv抗体断片を生成するため、ナイーブヒトscFvの酵母ディスプレイライブラリーを用いて組換えRNF43及びZNRF3への結合剤を選択した。
【0189】
Z6 scFvをヒトIL2(配列番号1)と融合させることにより、候補サロゲートRSPOを生成した。
【0190】
Z6-IL2融合体を昆虫細胞内で発現させ、ニッケル及びゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。Z6-IL2は、ゲル濾過カラムから単分散ピークとして溶離しており、このことは当該タンパク質が凝集せず、好ましい生化学的挙動を有することを示している。
【0191】
発明者らは、サロゲートRSPOのシグナリング活性を試験するため、2つの異なるレポーター細胞株HEK293T SuperTOPflash(STF)細胞及びCD25+ HEK293T STF細胞を使用した。HEK293 STF細胞は、8x TCF/LEF結合部位(Wnt応答性プロモーター)により推進される安定的に統合されたホタルルシフェラーゼ及び構成的に発現されるRenillaルシフェラーゼコントロールレポーターを有する。HEK293T STF細胞にヒトCD25(IL-2受容体)を形質導入するレトロウイルス発現システムを用いて、CD25+ HEK293T STF細胞を生成した。
【0192】
発明者らは、Wnt活性の強化をモニターするため、サロゲートRSPO Z6-IL2または対象タンパク質の存在下または不在下で、STF細胞またはCD25+ STF細胞を、Wnt3a条件培地またはサロゲートWntアゴニストのいずれかで処置した。次に、細胞を溶解し、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0193】
サロゲートRSPO(Z6-IL2)は、Wnt3a条件培地で処置した非トランスフェクトSTF 293細胞に対し、中程度の効果を有する。Z6-IL2、陰性対照scFv、IL2は、Wntアゴニストの不在下では効果を有しない。サロゲートRSPO(Z6-IL2)は、サロゲートWnt(scFv+Dkk1)で処置した非トランスフェクトSTF 293細胞に対し、中程度の効果を有する。Z6-IL2、陰性対照scFv、IL2は、Wntアゴニストの不在下では効果を有しない。サロゲートRSPO(Z6-IL2)は、サロゲートWnt(scFv+Dkk1)で処置したCD25+細胞に対し強力な効果を有しており、これは標的細胞タイプに対する選択性を示すものである。Z6-IL2、陰性対照scFv、IL2は、Wntアゴニストの不在下では効果を有しない。
【0194】
また、発明者らは、Z6 scFvとIL4との融合体、ならびにRNF43結合scFv、R5とIL2及びIL4との融合体も生成した。
【0195】
実施例2
分泌R-スポンジン1~4タンパク質(RSPO1~4)は、カノニカルWntシグナリングを増強することにより、腸管幹細胞再生及び組織ホメオスタシスを編成する。RSPOは、ネガティブWnt制御因子RNF43またはZNRF3の細胞外ドメイン(ECD)を共受容体LGR4、LGR5、またはLGR6に接続することにより機能し、これにより複合体の膜クリアランスが誘導される。RSPOは再生医療用途において浮上しつつある候補であるが、LGR4/5/6タンパク質の希薄な組織分布が、RSPOの全体的な生物医学的有用性を限定している。
【0196】
ここで発明者らは、LGR4/5/6とは無関係にWnt活性を増強する二重特異的リガンドを提供している。このような「サロゲートRSPO」は、フレキシブルリンカーを介して免疫サイトカインIL-2に接続しているRNF43またはZNRF3に特異的な1本鎖抗体可変断片(scFv)からなる。サロゲートRSPOは、RNF43またはZNRF3のECDとIL-2受容体CD25とを架橋することにより天然RSPOの機能を模倣して、CD25発現細胞上での高度に選択的なWntシグナリング増幅をもたらす。さらに、サロゲートRSPOは野生型RSPOと機能的に置き換わって、CD25+ヒト結腸オルガノイドの成長を刺激することができた。これらの結果は、広範囲の細胞タイプまたは組織タイプ上でRSPO機能を模倣する改変リガンドを実証し、RSPOベース治療薬の開発に対し新たな道を開くものである。
【0197】
Wntシグナリング経路は、全ての後生動物における幹細胞発生及び組織ホメオスタシスをコントロールする。Wnt活性は、いくつかの宿主コードタンパク質により緊密に制御されており、これらのタンパク質はシグナリングを増強または減弱するように機能し得る。R-スポンジンタンパク質(哺乳類におけるRSPO1~4)は、Wnt経路のネガティブ制御因子と拮抗することにより機能し、Wnt及びRSPOの同時投与は、Wnt単体の場合よりも数百倍大きいシグナリング出力をもたらし得る。RSPO媒介のWnt活性強化は、細胞表面上のWnt受容体フリズルド(Fzd)及びLRP5またはLRP6のレベルを大きく増加させる間接的な機構を介して生じる。RSPOの不在下では、Wnt受容体は、膜貫通E3リガーゼ(TMUL)RNF43及びZNRF3により持続的に下方制御されており、このRNF43及びZNRF3はFzdの細胞内領域のユビキチン化を媒介して、Fzd及び関連するLRP5/6の両方を内在化及び分解の標的とする(図7A)。RSPOは、細胞外プロテアーゼ関連(PA)ドメインと、第2の受容体、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体4、5、または6(LGR4~6)の細胞外ドメイン(ECD)とに同時に結合することにより、RNF43/ZNRF3を不活性化する。RSPOによるRNF43/ZNRF3とLGR4/5/6との架橋は、三元複合体の膜クリアランスを誘導し、これによりRNF43/ZNRF3はFzdから隔離され、ひいてはWntシグナリングが増強される(図7B)。
【0198】
組換えRSPOの生物医学的用途は、再生医療の分野で、特に、RSPOが陰窩の底部で幹細胞の再生を促進するように機能する小腸の文脈において、広く探索されてきた。例えば、組換えRSPOは、腸管再生を刺激することにより、実験的に誘導された大腸炎及び致死量の化学放射線治療の両方から動物を保護する。さらに、外来的RSPOは、腸上皮の研究に使用されるin vitroモデルシステムである腸管オルガノイド培養にとって極めて重要である。最近報告されたところによると、Wnt及びRSPOは、フィードバックループを通じての腸管幹細胞(ISC)自己再生で非等価の役割を果たしており、フィードバックループにおいて、WntはLGR5の発現を推進し、RSPOはISC増殖を誘導している。このことは、個別のまたは協調しての経路の標的化が固有の治療結果に関連し得るという可能性を提起するものである。
【0199】
RSPOは、生得的Wnt活性を選択的に高め、オフターゲット効果を回避する有望な候補であるものの、LGR4/5/6が小さなサブセットの細胞タイプのみに制約的に発現することにより、RSPOの生物医学的有用性は限定されている。天然にコードされたRSPOの限界を克服するため、発明者らは、LGR4/5/6非依存的機構を介してRSPO媒介のWntシグナル強化を表現型模写する合成リガンドを設計した。このような「サロゲートRSPO」は、RNF43またはZNRF3 ECDと、リガンド結合の際に内在化を経ることによりRSPO媒介のRNF43/ZNRF3の隔離を模倣することが知られている細胞表面マーカー(CD25)とを架橋することにより、機能する(図7C)。サロゲートRSPOは、レポーター細胞及びヒト結腸オルガノイドにおけるWntシグナリングの受容体特異的な増幅を推進し、自らのモジュラー設計により、実質的に任意の細胞タイプを標的化するように適合することが可能になる。これが、Wntベース治療薬の開発にとっての主な意味を有する特徴である。
【0200】
結果
RNF43及びZNRF3に特異的なscFvの生成発明者らのサロゲートRSPO設計は、以下の2つの構成要素の融合体を利用した:(i)RNF43またはZNRF3結合タンパク質、及び(ii)受容体のエンドサイトーシスを誘導する組織特異的標的化タンパク質。サロゲートRSPOタンパク質の投与は、RNF43またはZNRF3のECDとモジュールの同族受容体とを架橋し、複合体の膜クリアランスを推進することにより天然RSPOの機能を模倣する。発明者らは、ヒトB細胞に由来する約1×10配列の公表された酵母ディスプレイライブラリーから1本鎖可変断片(scFv)を選択することにより、サロゲートRSPOのためのRNF43またはZNRF3結合タンパク質構成要素を単離した。磁気活性化細胞選別(MACS)または蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いてRNF43 ECDまたはZNRF3 ECDに対し2つのパラレルな選択セットを実施することにより、scFvを得た。数ラウンドの選択の後、RNF43またはZNRF3に特異的な異なるscFvのパネルを単離し(図11)、蛍光ベースアッセイにおけるRNF43及びZNRF3にそれぞれロバストに結合する能力に基づいて、クローン「R5」及び「Z6」をサロゲートRSPOカセットへの組込みに選んだ(図8A)。
【0201】
サロゲートRSPOの設計、発現、及び精製。RSPOシグナリング複合体の膜クリアランスは受容体LGR4~6の内在化を必要とすることが報告されている。そのため、同族の受容体、CD25のエンドサイトーシスを誘導する能力に基づいて、免疫サイトカインIL-2を、発明者らのサロゲートRSPOコンストラクトにおけるRSPO-LGR結合の代理として作用するように選択した。2つのRSPOコンストラクトを生成し、一方はR5をIL-2と融合させることにより(R5-IL2)RNF43に標的化させ、一方はZ6をIL-2と融合させることにより(Z6-IL2)ZNRF3に標的化させた。R5/Z6及びIL-2がそれぞれの標的に独立的に結合できることを意図して、R5またはZ6がフレキシブル5x(Gly-Ser)リンカーを介してIL-2のN末端に接続するように1本鎖コンストラクトを設計した。バキュロウイルスを用いて昆虫細胞内でR5-IL2及びZ6-IL2を発現させ、両方のタンパク質はゲル濾過カラムから単分散ピークとして溶出した。これは好ましい生化学的挙動を示す(図11)。
【0202】
サロゲートRSPO受容体相互作用の生物物理学的特性決定。発明者らは、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、R5-IL2及びZ6-IL2のRNF43及びZNRF3に対する結合親和性を測定した。発明者らは、R5-IL2が58nMの解離定数(K)でRNF43に結合し、Z6-IL2が80nMのKでZNRF3に結合すると判定した。R5-IL2はZNRF3と交差反応せず、Z6-IL2はRNF43と交差反応しなかった。また、発明者らは、SPRをさらに使用して、R5-IL2及びZ6-IL2が、野生型CD25-IL2相互作用の報告Kとほぼ同一のKd値でCD25に結合すると判定した。まとめると、発明者らのSPR実験から明らかになったことは、R5及びZ6がそれぞれの標的に同様の親和性で結合すること、サロゲートRSPOの親和性が野生型RSPOとRNF43/ZNRF3との間で報告された親和性(約5~10,000nM)の範囲内に入ること、ならびにサロゲートRSPO形式においてIL-2とCD25との結合が保持されることである。
【0203】
サロゲートRSPO媒介のWntシグナリング強化。発明者らは、ルシフェラーゼアッセイを実施して、R5-IL2及びZ6-IL2のWntシグナリングを選択的に増強する能力を試験した。発明者らは、HEK293 Super Top Flash(STF)Wntレポーター細胞、またはレンチウイルスによりCD25を形質導入したHEK293 STF細胞におけるサロゲートRSPOの活性を比較した。CD25発現細胞では、R5-IL2がWnt3aレポーター活性を9.5倍まで増加させ、Z6-IL2がWnt3a活性を41倍まで増加させた(図9A)。Z6-IL2の活性がR5-IL2の活性よりも大きいのは、ZNRF3がHEK293細胞内で(RNF43との対比において)支配的にホモログを発現したことを見いだした過去の報告と整合している。天然RSPOが交差反応性であること、そしてRSPO2の強力な活性にはRNF43及びZNRF3の両方が必要とされ得ることを考えれば、発明者らは、R5-IL2及びZ6-IL2の組み合わせが相乗効果を有すると仮定した。そのため、発明者らは、細胞をR5-IL2及びZ6-IL2の1:1混合物と共にインキュベートし、この組み合わせがWnt3a活性を148倍増加させることを見いだした(図9A)。非形質導入細胞では、R5-IL2、Z6-IL2、及びR5-IL2+Z6-IL2の添加により、それぞれわずか2.7倍、3.9倍、及び5.8倍のWnt3a活性の増加がもたらされた(図9B)。このことは、サロゲートRSPOがCD25を発現する細胞に対し高度に選択的であることを示すものである。
【0204】
CD25陽性細胞及びCD25陰性細胞両方において、発明者らは、Wnt3a条件培地及びRSPO2の受容体結合断片(フリンドメイン1及び2)の混合物が、Wnt3a単体の場合よりも286~304倍大きな応答を誘発することを見いだした。これは、過去に観察されたRSPO媒介による強化のレベルと同様である。陰性対照として、発明者らは、R5、Z6、またはIL-2を追加したWnt3a条件培地で細胞を処置した。R5 scFv及びIL2サイトカインは、Wnt3aシグナリングを実質的に増強しなかった(図9B)。しかし、Z6 scFvは穏やかなアゴニスト活性を示し、HEK293 STF細胞及びCD25発現細胞において、それぞれ10倍、12倍の増加をもたらした(図9A、9B)。
【0205】
腸管オルガノイド成長のサロゲートRSPO媒介刺激。幹細胞からヒト結腸オルガノイドへの分化は、Wnt、EGF、ノギン、及びTGF-β阻害剤と共に外来的なRSPOの添加を必要とする。発明者らは、R5-IL2またはZ6-IL2がヒト結腸オルガノイド培養においてRSPOの代用になり得るかを決定するため、CD25を発現するようにレンチウイルスにより形質導入したLGR5+腸管幹細胞を用いてオルガノイド成長アッセイを実施した。このアッセイでは、CD25+幹細胞をRSPO、IL-2、R5 scFv、Z6 scFv、R5-IL2、Z6-IL2、またはR5-IL2及びZ6-IL2の1:1混合物の存在下で培養し、オルガノイドの成長を蛍光によりモニターした。R5-IL2、Z6-IL2、またはR5-IL2及びZ6-IL2の混合物はそれぞれ、陰性対照タンパク質、IL-2との対比において、オルガノイドの成長に顕著な増加をもたらした(図10)。一方、R5 scFvまたはZ6 scFvのいずれの添加も顕著な増加をもたらさなかった。蛍光は、R5-IL2処置培養物では7.3倍、Z6-IL2処置培養物では9.4倍、そしてR5-IL2及びZ6-IL2の混合物で処置した培養物では11倍増加した。陽性対照RSPO2は73倍成長を刺激し、R5-IL2及びZ6-IL2の混合物よりも強力な効果を示した。これは、発明者らがルシフェラーゼアッセイで観察した結果と同様である。重要なことには、R5-IL2もZ6-IL2も野生型オルガノイドの成長を刺激しなかった(図10)。このことは、サロゲートRSPOが、CD25の標的受容体を発現する細胞に対し特異的に効果を及ぼすことを示している。
【0206】
サロゲートRSPOタンパク質の開発は、Wnt活性の組織特異的な強化を容易にするための新たな方法に相当し、また、RSPOシグナリング機構に対する発明者らの理解を広げるものであった。ここで発明者らは、サロゲートRSPOが、CD25受容体のエンドサイトーシスを誘導することが知られているIL-2リガンドを利用することにより、同族のLGR4/5/6受容体の不在下で内在的なRSPOの活性を模倣することができることを示した。この知見は、RSPOがRNF43/ZNRF3のエンドサイトーシスを推進することにより機能するという現在のモデルを支持し、広いスペクトルのエンドサイトーシス性受容体に作用する改変サロゲートRSPOに新たな道を開くものである。注目すべきことは、293細胞における最も強力なWntシグナル増強は、R5-IL2及びZ6-IL2サロゲートRSPOの同時投与により達成されたことである(図9)。このことは、天然RSPOの固有の交差反応性により、RNF43及びZNRF3両方の媒介による阻害の克服が可能になることを示している。そのため、サロゲートRSPOの最適化は、交差反応性のRNF43/ZNRF3結合モジュール(例えば、RSPO FU1ドメイン)を設計に組み入れることにより達成され得る。一方で、既存のサロゲートRSPOが所与のE3リガーゼ(RNF43対ZNRF3)を標的化する能力により、ある特定の文脈において有益であり得る追加的な程度の選択性が付与される。
【0207】
材料及び方法
タンパク質発現及び精製。ヒトRNF43細胞外ドメイン(ECD)(アミノ酸24~197)及びZNRF3 ECD(アミノ酸56~219)を、C末端ビオチン受容体ペプチドタグ(配列番号5、GLNDIFEAQKIEW)及びその次の6X Hisタグと共にpAcGp67Aベクターにクローニングした。別段の明記がない限り、方法セクションにおけるRNF43/ZNRF3は、それらのECDのみを指すものとする。選択したRNF43及びZNRF3高親和性ヒト抗体scFv断片を、C末端6X Hisタグと共にpAcGp67Aにクローニングした。これらのヒト抗体scFv断片を、さらに、(GS)リンカー及びヒトインターロイキン-2(アミノ酸21~153)ならびにその次の6X Hisタグと共にインフレームでpAcGp67Aにクローニングした。全てのタンパク質を、バキュロウイルスに感染したTrichoplusianiからのHi-Five細胞(Invitrogen)に発現させた。感染から60時間後に培養物を採取した。タンパク質を、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより、次にサイズ排除クロマトグラフィーにより1X HBS緩衝液(10mM HEPES pH7.2、150mMの塩化ナトリウム)中で精製した。サイズ排除クロマトグラフィーの前に、RNF43及びZNRF3を、BirAリガーゼにより、C末端ビオチン受容体ペプチドにて部位特異的にビオチン化した。このサイズ排除クロマトグラフィーは、緩衝液中の遊離ビオチン除去のために行う。全てのタンパク質は、精製直後に使用したか、または20%グリセロールと共に液体窒素中で急速冷凍した。
【0208】
RNF43/ZNRF3結合scFv断片の選択。ヒト抗体scFv断片の非免疫酵母表面ディスプレイライブラリーが、Wittrupグループの厚意で提供された(Feldhaus et al.Flow-cytometric isolation of
human antibodies from a nonimmune Saccharomyces cerevisiae surface display library.Nature biotechnology 21,163(2003))。過去に報告された通りに(Luca et al.Structural basis for Notch1 engagement of Delta-like 4.Science 347,847-853(2015))、磁気ビーズ選択による経時的な選択戦略の次にフローサイトメトリー選別を使用した。選択ラウンド1は、最初に250uLの磁性ストレプトアビジンマイクロビーズ(Militenyi)と400nMのビオチン化RNF43/ZNRF3とを混合することにより実施した。これらのマイクロビーズをscFv断片ライブラリーからの1×1010酵母とさらに混合した。次に、酵母を磁気活性化細胞選別(MACS)LS分離カラム(Militenyi)に通して、ZNRF3/RNF43結合剤を収集した。ラウンド2は、収集した画分から1×10酵母を用いてラウンド1を繰り返すことにより実施した。ラウンド3では、酵母を200nMのビオチン化RNF43/ZNRF3と共にプレインキュベートしてからAlexafluor-647色素(SA-647、Life Technologies)と共にインキュベートした。抗647マイクロビーズ(Militenyi)を用いてMACSによりZNRF3/RNF43結合剤を濃縮した。ラウンド4では、酵母を5nMのビオチン化RNF43または10nMのビオチン化ZNRF3と共にプレインキュベートした。酵母をさらに、SA-647及びc-Mycエピトープに対するAlexa Fluor 488結合抗体(Myc-488、Cell Signaling)により染色した。蛍光活性化細胞選別(FACS)により、高親和性RNF43/ZNRF3結合剤を単離した。
【0209】
最終ラウンドの選択からのプラスミドを、Zymoprep Yeast Plasmid Miniprep Kit(Zymo Research)を用いて単離し、シークエンシングした。このプラスミドをエレクトロポレーションによりS.cerevisiae EBY100酵母に移入し、SDCAA選択培地中で回復させ、次にSGCAA誘導培地中で誘導した。個々のscFv形質転換酵母を、漸増濃度のビオチン化RNF43/ZNRF3と共にインキュベートした。これらの酵母をSA-647及びMyc-488で染色し、フローサイトメトリーにより蛍光をモニターした。データをGraphPad Prism 7により解析し、次の実験用に最も高い親和性のクローンを特定した。
【0210】
RNF43及びZNRF3と酵母表面ディスプレイscFvとの結合。R5またはZ6
scFvのいずれかを発現する酵母細胞を、1μM濃度の組換えRNF43またはZNR3 ECD(それぞれPBS+0.1% BSA中)で染色した。次に細胞を洗浄し、SA-647及びMyc-488と共にインキュベートし、再び洗浄し、次にフローサイトメトリーにより解析した。
【0211】
表面プラズモン共鳴。全ての結合の測定は、BIAcore T100装置(GE Healthcare)を用いて行った。ビオチン化RNF43、ZNRF3、及びCD25をSAセンサーチップ(GE Healthcare)上に低密度で結合した。無関係のビオチン化タンパク質を、対照フローセルと同等の結合密度にてキャプチャーした。漸増濃度のR5-IL2及びZ6-IL2を、HBS-P(GE Healthcare)中のチップ上に30μl/mLにて注入した。対照フローセルのレゾナンスユニットからRNF43、ZNRF3、またはCD25を含有するフローセルで観察されたレゾナンスユニットを引くことにより、レゾナンスユニットを算出した。Biaevaluationソフトウェア(Biacore/GE Healthcare)を用いて曲線を1:1結合モデルにフィットさせた。
【0212】
ルシフェラーゼシグナリングアッセイ。Janda et al.Surrogate
Wnt agonists that phenocopy canonical Wnt and β-catenin signalling.Nature 545,234-237(2017)に記載されている通りに、予めHEK293細胞に、レンチウイルスにより、7つのLEF/TCF結合部位のコンカテマーのコントロール下にあるホタルルシフェラーゼレポーター及びRenillaルシフェラーゼレポーターを安定的にトランスフェクトした。さらにこれらの細胞に、ヒトCD25をレトロウイルスにより安定的にトランスフェクトした。これらの細胞はYFPを同時発現する。トランスフェクトしたHEK293細胞をYFP発現によりFACS選別した。トランスフェクトしたHEK293細胞をBrilliant Violet 605抗体(BioLegend、Clone BC96、#302632)で染色することにより、さらにCD25表面発現を確認した。フローサイトメトリーにより蛍光をモニターし、非トランスフェクトHEK293細胞と比較した。Dual Luciferase Assayキット(Promega)を指示通りに用いてデュアルルシフェラーゼアッセイを行った。簡潔に述べると、刺激の24時間前に、細胞をウェル当たり10,000細胞の密度で96ウェルプレートにプレーティングした。RSPO2タンパク質またはサロゲートRSPOを追加した20% Wnt3A条件培地(ATCC)で細胞を刺激した。Dual Luciferase Assayキット(Promega)マニュアルの通りに、刺激試薬の存在下で細胞をさらに24時間培養し、その後に細胞を洗浄及び溶解した。SpectraMax
Paradigmを用いて輝度シグナルを記録し、GraphPad Prism 7により解析した。
【0213】
オルガノイド成長アッセイ。新鮮な結腸試料を、インフォームドコンセントによりStanford Hospitalで収集した。培養物をWENR培地(Wnt3a、R-スポンジン、EGF、ノギン)中で数回継代させて、オルガノイドのロバストな成長を確認した。サロゲート活性を評価するため、オルガノイドにCD25を発現するレンチウイルスを形質導入し、YFP+(YFPがCD25と同時発現)をFACS選別してCD25+集団を濃縮した。図10のような条件の培地でCD25+細胞を継代培養した。オルガノイド形態が観察され、Nikon TS100を用いて位相差写真を撮影した。細胞成長を定量化するため、オルガノイドを単一の細胞に分離し、96ウェル形式においてウェル当たり10,000細胞にてプレーティングする。プレーティングの3日後に、alamarBlue細胞生存能試薬(Thermo Fisher)を用いて細胞生存能アッセイを実施した。
【0214】
先述の内容は、単に本発明の原理を例示しているに過ぎない。当業者が、本明細書で明示的に記載されていないまたは示されていないとしても、本発明の原理を具現し本発明の趣旨及び範囲内に含まれる様々な仕組みを考案できることは理解されよう。さらに、本明細書で挙げられている全ての例及び条件付きの言葉は、主として、読者が本発明の原理と、発明者らが当技術分野の促進のために寄与する概念とを理解するのを助けるように意図されており、このような具体的に挙げられた例及び条件に限定されることがないものと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態ならびにこれらの具体例を挙げている本明細書中の全ての記述は、これらの構造的等価物及び機能的等価物の両方を包含するように意図されている。加えて、このような等価物は、現時点で知られている等価物及び将来開発される等価物(すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する任意の開発される要素)の両方を含むということが意図されている。そのため、本発明の範囲は、本明細書に示され記載されている例示的な実施形態に限定されるようには意図されていない。そうではなく、本発明の範囲及び趣旨は付属の請求項によって具現される。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8A-C】
図8D
図9A
図9B
図10
図11
【配列表】
2023026539000001.app
【外国語明細書】