(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002662
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】急性、亜急性または慢性の咳を治療するためのジアミノピリミジンP2X3およびP2X2/3受容体モジュレーター
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20221227BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20221227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P11/14
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166618
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2019055849の分割
【原出願日】2014-08-22
(31)【優先権主張番号】61/869,174
(32)【優先日】2013-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516053718
【氏名又は名称】アファレント ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フォード,アンソニー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,ブルース ジー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】慢性の咳を治療するための方法を提供する。
【解決手段】有効量の式(I):
(R
1は、水素または任意選択で置換されたC1~C6アルキルであり、R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノなどである)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者において慢性の咳を治療するための方法であって、有効量の式(
I):
【化1】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、方法。
【請求項2】
慢性の咳が、突発性または治療抵抗性の咳である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が約600mgで1日に2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が約2週間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の化合物が約600mgで1日に2回、約2週間投与される、請求項1に記載
の方法。
【請求項6】
慢性の咳が難治性の慢性の咳である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
慢性の咳が約75%減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
咳が昼間の咳である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
R1が、水素またはメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
R2が、ハロアルキル、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニル
またはカルボキシアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
R2がハロアルキルであり、さらにアルキルがメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
R2がアミノスルホニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
R2がカルボキシアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
R2がアルキルカルボニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
化合物が、
【化2】
から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
化合物が、
【化3】
である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有効量の式(I):
【化4】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、急性、亜急性または慢
性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき、その開示が全体として参照に
より本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第61/869174号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、P2Xプリン作動性受容体と関連する疾患を治療するための化合物および方
法に関し、より特定には、呼吸器の状態および障害における咳、慢性の咳および咳への衝
動を治療するためにP2X3および/またはP2X2/3のアンタゴニストを使用する方
法に関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸器、または気道は、酸素摂取および二酸化炭素除去に対する要求を支持するための
ガス交換の生命維持過程に関与する。迷走神経性自律神経系の神経は、気管気管支樹の平
滑筋、したがって気道の内径、ならびに分泌物(粘液および体液)の放出および動きを制
御する。制御は、気道組織からの迷走神経の感覚シグナルの強烈な入力に依存して随意お
よび自律神経性の流出を調節する脳幹核内で調整されて、それが結果として意識性感覚を
伝えて自律神経性の反射を誘発する。迷走神経の感覚線維は主に、頸部および下神経節内
の細胞体から生じて、それらの活性は様々な化学物質により調節される(Carrおよび
Undem(2003年)Respirology8巻(3号):291~301頁)。
そのような1つの物質はATPであり、それは迷走神経の求心性を敏感にして収束的な機
械的受容性の気道シグナルとして機能する(Weigand、FordおよびUndem
(2012年)J Physiol.590巻(16号):4109~20頁)。
【0004】
ATPは、多くの生理学的および病理学的役割を媒介するプリン受容体(例えば、P2
X3およびP2X2/3)を活性化する(Burnstock(1993年)Drug
Dev.Res.28巻:195~206頁を参照されたい)。ATPは、感覚神経の末
端を刺激して敏感にし、疼痛、不快感、切迫感、掻痒感および衝動などの強力な感覚をも
たらし、さらに齧歯類およびヒトの組織および器官、特に中空の体腔内諸器官を刺激する
求心性神経線維に、P2X3受容体活性化を主に媒介とした感覚神経の放出における顕著
な増大をもたらす。
【0005】
ATPは、膨脹、運動、圧力または炎症の結果として中空器官(気道、膀胱など)の上
皮細胞および間質性細胞から放出され得ることをデータが示唆している(Burnsto
ck(1999年)J.Anatomy194巻:335~342頁;およびFergu
sonら(1997年)J.Physiol.505巻:503~511頁)。したがっ
て、ATPは、上皮のおよび上皮下の区画、例えば、上皮下の基底膜に位置する感覚ニュ
ーロンに情報を伝達することにおいて役割を果たす(Namasivayamら(199
9年)BJU Intl.84巻:854~860頁;Weigand、Fordおよび
Undem(2012年)J Physiol.590巻(16号):4109~20頁
)。
【0006】
Undemおよび共同研究者は、P2X3およびP2X2/3受容体は、広く発現され
て哺乳動物の気道における結節のおよび頸部の求心性線維の機能をモジュレートすること
を報告した(Weigand、FordおよびUndem(2012年)J Physi
ol.590巻(16号):4109~20頁)。それに加えて、クエン酸によって誘発
された咳のATPまたはヒスタミン増強作用のテンジクネズミモデルにおいて、P2Xサ
ブファミリー受容体は関与が立証されたが、P2X3またはP2X2/3受容体の寄与は
推定されなかった(Kamei、Takahashi、Yoshikawa、Saito
h(2005年)Eur J Pharmacol.528巻(158~161頁);K
ameiおよびTakahashi.(2006年)Eur J Pharmacol.
547巻:160~164頁)。最終的に、咳および息切れを伴う気道疾患(喘息、CO
PDまたは肺線維症など)を有する患者は、彼らの気道体液中に過剰のATP濃度を有す
ること(Esther、AlexisおよびPicher.(2011年)Subcel
l.Biochem.55巻:75~93頁;Lommatzschら(2010年)A
m J Respir Crit Care Med.181巻(9号):928~34
頁)、ならびに霧化されたATPの喘息患者による吸入は、気道感覚を活性化して咳への
衝動をもたらし、咳そのものを促進する可能性があること(Pellegrinoら(1
996年)J Appl Physiol.81巻(2号):964~75頁;Baso
gluら(2005年)Chest.128巻(4号):1905~9頁)がヒトの研究
で示されたが、ATPのこの効果の作用部位および関与する受容体は証明されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、P2X3および/またはP2X2/3受容体により媒介される疾患、状態
および障害を治療する方法に対する必要性、ならびにP2X3およびP2X2/3受容体
のアンタゴニストを含むP2X受容体のモジュレーターとして作用する化合物に対する必
要性がある。そのような疾患および障害は、呼吸器疾患または障害と関連する咳を含む咳
、慢性の咳および咳への衝動を含むことが本明細書において示される。慢性の咳は、苦痛
を与えるものであり、機能的障害を引き起こすが、新規に認可された咳の治療は約50年
出現していない。本発明は、他の必要性だけでなくこれらの必要性も満足させる。
【0008】
本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体活性化により引き起こされ、または媒介
される疾患の治療に使用するための化合物に関し、さらにP2X3および/またはP2X
2/3受容体により媒介される疾患の共通の徴候、症状および病的状態の治療のための選
択的なP2X3および/またはP2X3-P2X2/3のアンタゴニストとして使用する
ための化合物に特に関する。そのような化合物は、医薬の製造においても使用することが
できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、P2X3受容体および/またはP2X3-P2X2/3の二重受容体のアン
タゴニストを使用して、咳に強く影響される呼吸器疾患の治療で使用するための化合物を
提供する。これらの化合物は、そのような疾患を治療するための医薬の製造においても使
用することができる。さらに具体的に、呼吸器疾患は、急性または亜急性の咳、咳への衝
動、および慢性の咳を含むことができる。これらの呼吸器疾患は、主としてP2X3を含
有する受容体(例えば、P2X3およびP2X2/3)の拮抗作用により治すことができ
る。その上、本明細書において例示される化合物(例えば、ジアミノピリミジンP2X3
/P2X2/3アンタゴニスト)は、急性および亜急性の咳、咳への衝動、ならびに慢性
の咳を含む多くの呼吸器疾患の咳が関係する症状を弱めることに非常に効果的である。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、それを必要とする対象における呼吸器疾患と
関連する咳または咳への衝動を治療するための方法を目的とする。該方法は、それを必要
とする対象に有効量の式(I):
【0011】
【化1】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含むことができる。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、R1は、水素または任意選択で置換されたC1~C
6アルキルである。1つまたは複数の実施形態において、R2は、アルキル、アルケニル、
アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒ
ドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロ
キシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カ
ルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0013】
一態様において、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳または咳への衝動について対象を
治療することにおいて使用するための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0014】
【化2】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0015】
一態様において、本発明は、それを必要とする患者において呼吸器疾患と関連する咳ま
たは咳への衝動を治療するための医薬を製造するための、式(I):
【0016】
【化3】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物の使用を提供する。
【0017】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または
治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0018】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約6
00mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる
。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0019】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の
咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約5
0~90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85
%)減少される。
【0020】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/
3アンタゴニストの化合物は、化合物1~38から選択される。例えば、該化合物は、化
合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例え
ば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0021】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R1は、水素またはメチル
である。
【0022】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2は、ハロアルキル、ア
ミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルで
ある。
【0023】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はハロアルキルであり
、さらにアルキルはメチルである。
【0024】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアミノスルホニルで
ある。
【0025】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はカルボキシアルキル
である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアルキルカル
ボニルである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、呼吸器の症状、状態または障害は、P2X3また
はP2X3-P2X2/3受容体のアンタゴニストにより弱められる。呼吸器疾患は、咳
過敏性が優性な多くの状態から選択することができ、原因不明の咳、または上部呼吸器感
染、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、もしくは突発性肺線維症と関連する咳を含み
得る。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、咳は、亜急性もしくは慢性の咳、治療抵抗性の咳
、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳、後鼻漏と関連する咳、上部呼吸器
感染、喘息および/もしくはCOPDと関連する咳、間質性疾患と関連する咳、逆流性食
道炎(GERD)と関連する咳および/もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の一形
態である。医原性の咳は、ACE阻害剤により誘発され得る。それに加えて、間質性疾患
は肺線維症であり得る。
【0028】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳を治療するため
の方法を目的とする。該方法は、有効量の式(I):
【0029】
【化4】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含むことができる。1つまた
は複数の実施形態において、R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキル
である。
【0030】
1つまたは複数の実施形態において、R2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ア
ミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ
アルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ
、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキ
ル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0031】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳の治療に使用す
るための化合物を提供し、該化合物は、式(I):
【0032】
【化5】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0033】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において慢性の咳を治療するため
の医薬を製造するための、式(I):
【0034】
【化6】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物の使用を提供する。
【0035】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または
治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0036】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約6
00mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる
。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0037】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の
咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約5
0~90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85
%)減少される。
【0038】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/
3のアンタゴニストの化合物は、化合物1~38から選択される。例えば、該化合物は、
化合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例
えば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0039】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R1は、水素またはメチル
である。
【0040】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2は、ハロアルキル、ア
ミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルで
ある。
【0041】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はハロアルキルであり
、さらにアルキルはメチルである。
【0042】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアミノスルホニルで
ある。
【0043】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はカルボキシアルキル
である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアルキルカル
ボニルである。
【0044】
別の態様において、本発明は、急性、亜急性または慢性の咳の原因となるニューロン過
敏性を治療する方法を提供する。該方法は、有効量の式(I):
【0045】
【化7】
の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。
【0046】
1つまたは複数の実施形態において、R1は、水素または任意選択で置換されたC1~C
6アルキルである。1つまたは複数の実施形態において、R2は、アルキル、アルケニル、
アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒ
ドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロ
キシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カ
ルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニルである。
【0047】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において急性、亜急性、または慢
性の咳の原因となるニューロン過敏性の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物
は、式(I):
【0048】
【化8】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0049】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者において急性、亜急性または慢性
の咳の原因となるニューロン過敏性を治療するための医薬の製造のための、式(I):
【0050】
【化9】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物の使用を提供する。
【0051】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、突発性または
治療抵抗性の咳である。咳は昼間の咳であり得る。
【0052】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、式(I)の化合物は、約6
00mgで1日に2回投与される。式(I)の化合物は、約2週間投与することができる
。例えば、式(I)の化合物は、約600mgで1日に2回、約2週間投与される。
【0053】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は難治性の慢性の
咳である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、慢性の咳は、約5
0~90%(例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、または85
%)減少される。
【0054】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、P2X3またはP2X2/
3のアンタゴニストの化合物は、化合物1~38から選択される。例えば、該化合物は、
化合物6、7、13、16、20、27、34および37から選択することができる(例
えば、該化合物は化合物16であってもよい)。
【0055】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R1は、水素またはメチル
である。
【0056】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2は、ハロアルキル、ア
ミノスルホニル、アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルで
ある。
【0057】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はハロアルキルであり
、さらにアルキルはメチルである。
【0058】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアミノスルホニルで
ある。
【0059】
上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はカルボキシアルキル
である。上の態様のいずれかの1つまたは複数の実施形態において、R2はアルキルカル
ボニルである。
【0060】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および
咳への衝動を、式(I)の化合物を投与することにより治療するための方法に関する。本
発明は、それを必要とする対象における呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動
を治療することにおいて式(I)の化合物を使用するための化合物にも関する。本発明は
、それを必要とする対象における呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療
するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用にも関する。例えば、本発明は
、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患また
は障害と関連する慢性の咳の症状および/または咳への衝動を、式(I)の化合物を投与
することにより治療する方法に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体の
アンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する慢性の咳の症状および
/または咳への衝動を治療するために使用するための式(I)の化合物にも関する。本発
明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患
または障害と関連する慢性の咳の症状および/または咳への衝動を治療するための医薬の
製造における式(I)の化合物の使用にも関する。
【0061】
1つまたは複数の実施形態において、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳におけ
る昼間の慢性の咳を減少させるための方法に関する。本発明は、慢性の咳の原因となるニ
ューロン過敏性を治療する方法にも関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳に
おける昼間の慢性の咳を減少させることに使用するための、および慢性の咳の原因となる
ニューロン過敏性を治療するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、突発性/治
療抵抗性の慢性の咳における昼間の慢性の咳を減少させるための、および慢性の咳の原因
となるニューロン過敏性を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に
も関する。
【0062】
1つまたは複数の実施形態において、本発明の方法は、それを必要とする患者において
、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害または本明細書に記載されたそれらの症状
を、化合物1~39から選択された化合物を投与することにより治療、予防または改善す
ることに関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35お
よび38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。本発明は、本明細書に
記載された呼吸器疾患および障害を治療、予防または改善するための化合物1~39から
選択された化合物の使用にも関する。本発明は、本明細書に記載された呼吸器疾患および
障害を治療、予防または改善するための医薬の製造における化合物1~39から選択され
た化合物の使用にも関する。例えば、該化合物は、化合物6、7、13、17、21、2
8、35および38から選択される。例えば、該化合物は化合物16である。
【0063】
本発明は、本発明の化合物の医薬組成物およびそれを調製する方法も提供する。
【0064】
下の詳細な説明で述べるように、本発明は、慢性の咳を含む咳および咳への衝動を治療
または軽減するためのP2X3およびP2X2/3のアンタゴニストのクラスを特徴とす
る。本発明は、症状を知覚する中枢神経系のモジュレートを単に抑制するのではなくて、
これらの病気において咳過敏性を引き起こす根本原因に対処する利点を有する。例えば、
本発明は、感作された対象(例えば、ヒト)において持続性のおよび不適当な咳への衝動
を最終的に誘発する求心性神経の活性を低下させる方法を提供する。本発明は、高度に選
択的なP2X3およびP2X2/3のアンタゴニストを与える利点も有する。さらなる特
徴および利点は、下の詳細な説明で述べられ、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】治療抵抗性の慢性の咳の患者において他覚的に記録された昼間の咳の頻度(1時間当たりの咳)に対する化合物16の効果を描くグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
定義
特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本願において使用される以下の
用語は、下で与えられる定義を有する。明細書および添付された特許請求の範囲で使用さ
れるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」
は、文脈が明確に他のように指示していない限り、複数の指示対象を含むことが注意され
なければならない。
【0067】
「アゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の活性を増強させる化合物を指す。
【0068】
「アルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなり、1から12個の炭素原子を有
する1価の線状または分岐飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、炭素原子
が1から6個のアルキル基、すなわちC1~C6アルキルを指す。アルキル基の例として、
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブ
チル、ペンチル、n-ヘキシル、オクチル、およびドデシルなどが含まれるが、これらに
限定されない。
【0069】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する、炭素原子が2から6個の線
状で1価の炭化水素ラジカルまたは炭素原子が3から6個の分岐した1価の炭化水素ラジ
カル、例えば、エテニル、プロペニルなどを意味する。
【0070】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する、炭素原子が2から6個の線
状で1価の炭化水素ラジカルまたは炭素原子が3から6個の分岐した1価の炭化水素ラジ
カル、例えば、エチニル、プロピニルなどを意味する。
【0071】
「アルキレン」は、炭素原子が1から6個の線状の飽和した2価の炭化水素ラジカルま
たは炭素原子が3から6個の分岐した飽和した2価の炭化水素ラジカル、例えば、メチレ
ン、エチレン、2,2-ジメチルエチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ブチレ
ン、ペンチレンなどを意味する。
【0072】
「アルコキシ」は、式-ORの部分を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキ
ル部分である。アルコキシ部分の例として、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが
含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
「アルコキシアルキル」は、式Ra-O-Rb-の部分を意味し、Raは本明細書におい
て定義されたアルキルであり、Rbはアルキレンである。典型的なアルコキシアルキル基
は、例として、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、1-メチル-2-メトキシ
エチル、1-(2-メトキシエチル)-3-メトキシプロピル、および1-(2-メトキ
シエチル)-3-メトキシプロピルを含む。
【0074】
「アルキルカルボニル」は、式-R’-R’’の部分を意味し、R’は(C=O)であ
り、R’’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0075】
「アルキルスルホニル」は、式-R’-R’’の部分を意味し、R’は-SO2-であ
り、R’’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0076】
「アルキルスルホニルアルキル」は、式-R’-R’’-R’’’の部分を意味し、R
’はアルキレンであり、R’’は-SO2-であり、R’’’は本明細書において定義さ
れたアルキルである。
【0077】
「アルキルアミノ」は、式-NR-R’の部分を意味し、Rは、水素またはアルキルで
あり、R’は本明細書において定義されたアルキルである。
【0078】
「アルキルスルファニル」は、式-SRの部分を意味し、Rは本明細書において定義さ
れたアルキルである。
【0079】
「アミノ」は、式-NHRの部分を意味し、Rは、水素またはアルキルであってもよい
。
【0080】
「アミド」は、式-NR(CO)R’-の部分を意味し、RおよびR’は、Hまたは本
明細書において定義されたアルキルであってもよい。
【0081】
「ヒドロキシ」は、式-OHの部分を意味する。
【0082】
「ハロアルコキシ」は、式-ORの基を意味し、Rは本明細書において定義されたハロ
アルキル基である。
【0083】
「ニトロ」は、式-NO2の基を意味する。「アルキルカルボニル」は、式-(CO)
Rの基を指し、Rは本明細書において定義されたアルキル基である。
【0084】
「アミノアルキル」は、-R-R’基を意味し、R’は本明細書において定義されたア
ミノであり、Rはアルキレンである。「アミノアルキル」は、アミノメチル、アミノエチ
ル、1-アミノプロピル、2-アミノプロピルなどを含む。「アミノアルキル」のアミノ
部分は、アルキルで1度または2度置換されていてもよく、それぞれ「アルキルアミノア
ルキル」および「ジアルキルアミノアルキル」を提供する。「アルキルアミノアルキル」
は、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、およびエチルア
ミノエチルなどを含む。「ジアルキルアミノアルキル」は、ジメチルアミノメチル、ジメ
チルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、およびN-メチル-N-エチルアミノエチ
ルなどを含む。
【0085】
「アミノスルホニル」は、-SO2-NRR’基を意味し、RおよびR’は、各々独立
に水素または本明細書において定義されたアルキルである。
【0086】
「アルキルスルホニルアミド」は、式-NR’SO2-Rの部分を意味し、Rはアルキ
ルであり、R’は、水素またはアルキルである。
【0087】
「アルキニルアルコキシ」は、式-O-R-R’の基を意味し、Rは本明細書において
定義されたアルキレンであり、R’はアルキニルである。
【0088】
「アリール」は、単環式、二環式または三環式芳香環からなる1価の環状芳香族炭化水
素部分を意味する。アリール基は、任意選択で本明細書において定義されたように置換さ
れていてもよい。アリール部分の例には、任意選択で置換されたフェニル、ナフチル、フ
ェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニ
ル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジ
フェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラ
ニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニ
ル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル、
ベンゾピロジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシ
フェニルなど、および部分的に水素化されたそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定
されない。
【0089】
「アリールスルホニル」は、式-SO2-Rの基を意味し、Rは本明細書において定義
されたアリールである。
【0090】
「アンタゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の作用を弱めるかまたは妨げる化
合物を指す。
【0091】
「シアノアルキル」は式-R’-R’’の部分を意味し、R’は本明細書において定義
されたアルキレンであり、R’’は、シアノまたはニトリルである。
【0092】
互換的に使用され得る用語「ハロ」、「ハロゲン」および「ハロゲン化物」は、置換基
フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。
【0093】
「ハロアルキル」は、1個または2個以上の水素原子が、同じかまたは異なったハロゲ
ンで置換された本明細書において定義されたアルキルを意味する。典型的なハロアルキル
には、-CH2Cl、-CH2CF3、-CH2CCl3、およびパーフルオロアルキル(例
えば、-CF3)などが含まれる。
【0094】
「ヒドロキシアルコキシ」は、式-ORの部分を意味し、Rは本明細書において定義さ
れたヒドロキシアルキルである。
【0095】
「ヒドロキシアルキルアミノ」は、式-NR-R’の部分を意味し、Rは、水素または
アルキルであり、R’は本明細書において定義されたヒドロキシアルキルである。
【0096】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」は、式-R-NR’-R’’の部分を意味し、
Rはアルキレンであり、R’は、水素またはアルキルであり、R’’は本明細書において
定義されたヒドロキシアルキルである。
【0097】
「ヒドロキシカルボニルアルキル」または「カルボキシアルキル」は、式-R-(CO
)-OHの基を意味し、Rは本明細書において定義されたアルキレンである。
【0098】
「ヒドロキシアルキルオキシカルボニルアルキル」または「ヒドロキシアルコキシカル
ボニルアルキル」は、式-R-C(O)-O-R-OHの基を意味し、各Rはアルキレン
であり、同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
「ヒドロキシアルキル」は、1個または2個以上、好ましくは1、2または3個のヒド
ロキシ基で置換された、本明細書において定義されたアルキル部分を意味するが、ただし
、同じ炭素原子が、2個以上のヒドロキシ基を担持することはない。代表的な例には、ヒ
ドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロ
ピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒ
ドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、2-ヒドロキ
シ-1-ヒドロキシメチルエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシ
ブチルおよび2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピルが含まれるが、これら
に限定されない。
【0100】
「カルボキシ」は、式-O-C(O)-OHの基を意味する。
【0101】
「スルホンアミド」は、式-SO2-NR’R’’の基を意味し、R’およびR’’は
、各々独立に水素またはアルキルである。
【0102】
「任意選択で置換された」とは、例えば、用語アルキルと共に使用される場合、本明細
書において定義された置換基のいずれかから選択された1から3個の置換基、好ましくは
1個または2個の置換基、例えばアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、
ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ
、アミノ、アシルアミノ、モノ-アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ、ハロアルキル、
ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、-COR(Rは、水素、アルキル、フェニルまたはフ
ェニルアルキルである)、-(CR’R’’)n-COOR(nは0から5の整数であり
、R’およびR’’は、独立に水素またはアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シク
ロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)、また
は-(CR’R’’)n-CONRaRb(nは0から5の整数であり、R’およびR’’
は、独立に水素またはアルキルであり、RaおよびRbは、互いに独立に、水素、アルキル
、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキルである)
により、任意選択で独立に置換されたアルキル基を意味する。
【0103】
「脱離基」とは、合成有機化学においてそれと従来関連する意味を有する基、すなわち
、置換反応条件下で置き換えられ得る原子または基を意味する。脱離基の例には、ハロゲ
ン、アルカンスルホニルオキシまたはアリーレンスルホニルオキシ、例えば、メタンスル
ホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシ
ルオキシ、およびチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、任意選択で置換された
ベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、ならびにアシルオキシなどが含まれるが、これら
に限定されない。
【0104】
「モジュレーター」とは、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用は、本明細書
において定義されたアゴニストおよびアンタゴニストなどを含むが、これらに限定されな
い。
【0105】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、その後で記載される事象または状況が起こ
るかもしれないが、起こる必要がないこと、および該記載が該事象または状況が起こる場
合および起こらない場合を含むことを意味する。
【0106】
「疾患」および「疾患状態」とは、任意の疾患、状態、症状、障害または適応症を意味
する。
【0107】
「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」とは、該溶媒がそれと関連して記載される反
応の条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル
、テトラヒドロフラン、Ν,Ν-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンま
たはジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert
-ブタノール、ジオキサン、およびピリジンなどを含む。反対に特定されない限り、本発
明の反応で使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0108】
「薬学的に許容される」とは、一般的に安全で、無毒性であり、生物学的にも他の意味
でも望ましくないことがなく医薬組成物の調製に有用であることを意味し、それが獣医学
的なならびにヒトの薬学的使用のために許容されることを含む。
【0109】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、本明細書において定義された薬学的に許容さ
れ、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩として、塩
酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;または酢酸、ベンゼンスルホン酸、
安息酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプト
ン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフト酸、2-ヒドロキシ
エタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホ
ン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒
石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸で形成された酸付加塩;あ
るいは親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン
、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられたか;または有
機もしくは無機塩基と配位している場合に形成された塩が含まれる。許容される有機塩基
は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールア
ミン、およびトロメタミンなどを含む。許容される無機塩基は、水酸化アルミニウム、水
酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含む。
【0110】
好ましい薬学的に許容される塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸
、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびマグネ
シウムから形成された塩である。
【0111】
薬学的に許容される塩への全ての言及は、溶媒添加形(溶媒和物)または同じ酸付加塩
の本明細書において定義された結晶形(多形)を含むことが理解されるべきである。
【0112】
「保護基(protective group)」または「保護基(protecting group)」とは、合成化
学においてそれが関連する型通りの意味で、化学反応が別の保護されていない反応性部位
で選択的に実施され得るように、多官能性化合物中の1つの反応性部位を選択的に封鎖す
る基を意味する。本発明のある工程は、反応物中に存在する反応性窒素原子および/また
は酸素原子を封鎖する保護基に依存する。例えば、用語「アミノ保護基」および「窒素保
護基」は、本明細書において互換的に使用され、合成手順中に望ましくない反応に対して
窒素原子を保護することを意図されるこれらの有機基を指す。典型的な窒素保護基として
、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル
(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニト
ロベンジルオキシカルボニル、およびtert-ブトキシカルボニル(BOC)などが含
まれるが、これらに限定されない。当業者は、除去の容易さおよび以降の反応に耐える能
力について、基をどのように選択するべきかを知っているであろう。
【0113】
「溶媒和物(単数)」または「溶媒和物(複数)」とは、化学量論量または非化学量論
量のいずれかで溶媒を含有する溶媒添加形を意味する。幾つかの化合物は、固定されたモ
ル比の溶媒分子を結晶性固体状態で捕捉して、そのようにして溶媒和物を形成する傾向を
有する。溶媒が水であれば形成された溶媒和物は水和物であり;溶媒がアルコールである
場合には、形成された溶媒和物はアルコレートである。水和物は、1分子または2分子以
上の水と、その中で水がその分子の状態をH2Oとして保持する物質の1つとの組合せに
より形成され、そのような組合せは1種または2種以上の水和物を形成することができる
。
【0114】
「対象」は、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒト;チンパンジー
および他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、および
ブタなどの飼育動物;ウサギ、イヌ、およびネコなどの家畜;ラット、マウス、およびテ
ンジクネズミなどの齧歯類を含む実験動物などを含むが、これらに限定されない哺乳綱の
任意の構成員を意味する。非哺乳動物の例としては鳥類などが含まれるが、これらに限定
されない。用語「対象」は、特定の年齢または性別を表さない。
【0115】
「咳が関係する呼吸器の障害」または「呼吸器疾患」は、限定されないが、咳過敏性症
候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気管支痙攣などを指す。呼吸器障害として
、例えば、亜急性または慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、上部呼吸器の感染
と関連した咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘発され
たような)、突発性肺線維症もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の形態が含まれる
。呼吸器障害は、任意の呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例えば慢性閉塞性肺疾患(C
OPD)、咳変形喘息、間質性肺疾患と関連する咳、またはゼイゼイいう咳への衝動を含
むことができる。
【0116】
「急性の咳」とは、期間にして2週間まで続く咳を意味すると理解される。例えば、急
性の咳は、風邪またはインフルエンザなどの急性疾患の結果であり得る。急性の咳は、原
因となる要因(例えば、風邪またはインフルエンザ)が排除されたときに消失するであろ
う。
【0117】
「亜急性の咳」は、2から8週間の間続く咳を意味すると理解される。幾つかの場合に
、亜急性の咳は、対象が疾患(例えば、風邪またはインフルエンザ)に感染している期間
に続いて起こる。亜急性の咳は、原因となる要因が除去された後もしばしばとどまる咳で
ある。例えば、亜急性の咳は、感染後(例えばウイルス感染後)に現れる。
【0118】
「慢性の咳」とは、明白な原因となる要因を有しないことがある8週間を超えて長く続
く持続性または難治性の咳を指し、喘息またはCOPD(すなわち、突発性)などの他の
呼吸器疾患と関連しないこともある。慢性の咳は、他の呼吸器疾患(例えばCOPD)と
は対照的に、それを定義および診断するための顕著な特徴がないことも特徴とする。慢性
の咳の別の特性は、慢性の咳に悩む対象が他の大部分の点では一見正常であってもよいこ
とである。慢性の咳は、頻繁な咳込み(例えば、昼間の1時間当たり少なくとも5~10
回の咳)および睡眠中のうるさい咳込みを特徴とする。慢性の咳は、十年を超えることを
含む、数年の期間継続し得る。
【0119】
対象が慢性の咳により悩まされているかどうかを決定するために、開業医または臨床医
は、3ステップの試験を実施することができる。第1に、対象を、推定上の後鼻漏につい
て治療することができる。幾つかの場合に、そのような治療は、抗ヒスタミンの形態を取
る。第2に、対象を、プロトンポンプ阻害剤で治療することができる(例えば、逆流性疾
患などの推定上の胃食道疾患を治療するために)。第3に、対象を、ステロイドで治療す
ることができる(例えば、推定上の喘息の場合を治療するために)。
【0120】
対象が上の3ステップの治療措置後も慢性の咳を示し続けるならば、その咳は慢性の咳
と言われるべきであり、恐らく難治性である。難治性の咳に悩む患者は、慢性の咳と診断
される前に急性および亜急性の咳の両方に悩まされていたことが多いことが理解される。
【0121】
「治療的有効量」とは、疾患状態を治療するために対象に投与されたときに、該疾患状
態のためのそのような治療をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。「治療的有効量
」は、化合物、治療される疾患状態、重症度または治療される疾患、対象の年齢および相
対的健康、投与の経路および形態、診察する開業医または開業獣医の判断、ならびに他の
要因に依存して変わるであろう。
【0122】
用語「上で定義されたもの」および「本明細書において定義されたもの」は、可変性の
ものについて言及される場合、その可変性のものの広い定義に加えて、存在するのであれ
ば好ましい、より好ましい、および最も好ましい定義もその言及により包含する。
【0123】
「治療すること」または疾患状態の「治療」は、
(i)疾患状態を抑制すること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症状の発症を阻
止すること、または
(ii)疾患状態を軽減すること、すなわち、疾患状態もしくはその臨床的症状の一時的
または永続性退行を起こさせること
を含む。
【0124】
「予防すること」または疾患状態の「予防」は、疾患状態の臨床的症状を、疾患状態に
さらされるかまたは罹患しやすくされ得るが、疾患状態の症状を未だ経験しておらずまた
は示していない対象で発症しないようにすることを含む。例えば、呼吸器疾患または障害
を治療または予防することは、呼吸器疾患と関連する咳および/または咳への衝動などの
障害の症状を治療または予防することを含む。
【0125】
化学反応に言及する場合、用語「処理すること」、「接触すること」および「反応させ
ること」は、指示されたおよび/または所望の生成物を生成させるために、適当な条件下
で2種以上の試薬を添加または混合することを意味する。指示されたおよび/または所望
の生成物を生成する反応が、必ず最初に添加された2種の試薬の組合せから直接生じなく
てもよい、すなわち、指示されたおよび/または所望の生成物の形成に最終的に結びつく
混合物中で生成された1種または2種以上の中間体があってもよいことが認識されるべき
である。
【0126】
命名法および構造
一般的に、本願において使用される命名法は、AUTONOM(商標)v.4.0;I
UPACの系統的命名法を作成するためにBeilstein Instituteがコ
ンピューター化したシステムに基づく。本明細書で示した化学構造は、ISIS(登録商
標)バージョン2.2を使用して調製された。本明細書中における構造中の炭素、酸素ま
たは窒素原子に現れる任意の開放原子価は、水素原子の存在を示す。
【0127】
本明細書中で同定された全ての特許および出版物は、それらの全体で参照により本明細
書に組み込まれる。
【0128】
方法
本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸
器疾患を治療するための化合物および方法を提供し、前記方法は、それを必要とする対象
に有効量の式(I):
【0129】
【化10】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物を投与することを含む。
【0130】
本発明は、それを必要とする患者においてP2X3またはP2X2/3受容体のアンタ
ゴニストにより媒介される呼吸器疾患の治療に使用するための化合物を提供し、該化合物
は、式(I):
【0131】
【化11】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。
【0132】
本発明は、それを必要とする患者においてP2X3またはP2X2/3受容体のアンタ
ゴニストにより媒介される呼吸器疾患を治療するための医薬の製造のための、式(I):
【0133】
【化12】
(式中、
R
1は、水素または任意選択で置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アミノスルホニル、ハロ、アミ
ド、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ハロアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシアル
キル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシ、アルキニルアルコキシ、アルキルス
ルホニル、アリールスルホニル、カルボキシアルキル、シアノまたはアルキルカルボニル
である)
の化合物の使用を提供する。
【0134】
本発明の化合物および方法で治療可能な典型的呼吸器疾患には、急性、亜急性もしくは
慢性の咳、治療抵抗性の咳、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、ゼイゼイいう咳、医
原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘発されたような)、突発性肺線維症もしくは喫
煙と関連する咳または気管支炎の形態が含まれる。本発明により治療可能な疾患には、何
らかの呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘
息と関連する咳への衝動が含まれる。例えば、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状
および咳への衝動を治療するための方法に関する。本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の
症状および咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物にも関する。本発明は、
呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための医薬を製造するための
式(I)の化合物の使用にも関する。
【0135】
例えば、本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介さ
れる呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動の治療方法にも
関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介され
る呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動の治療に使用する
ための式(I)の化合物に関する。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアン
タゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳
への衝動を治療するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
【0136】
本発明は、呼吸器の症状がP2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により
媒介される呼吸器疾患の治療方法も提供する。本発明は、呼吸器の症状がP2X3および
/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器疾患の治療に使用するため
の式(I)の化合物を提供する。本発明は、呼吸器の症状がP2X3および/またはP2
X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸器疾患の治療における式(I)の化合物の
使用を提供する。
【0137】
方法は、対象に有効量の式(I)の化合物を投与することを含むことができる。該方法
は、式(I)の本明細書において説明した実施形態のいずれかを投与することを含むこと
ができる。使用するための式(I)の化合物は、有効量で使用することができる。式(I
)の化合物は、医薬を製造するための有効量で使用することができる。
【0138】
本発明は、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化により媒介される呼吸
器の症状(例えば、咳または慢性の咳)の治療に使用するための化合物も提供する。本発
明は、本発明の化合物が、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性化および感
作により媒介される呼吸器疾患(例えば、咳または慢性の咳)の治療に使用するための医
薬の製造に使用され得ることも提供する。
【0139】
本発明のある特定の実施形態において、治療または予防されるべき呼吸器疾患は、慢性
の咳であってもよい。例えば、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の
咳を減少させるための方法に関する。幾つかの実施形態において、慢性の咳を有する対象
は、24時間の期間にわたって1時間当たり40回以上の多くの咳を有する(例えば、1
時間当たり少なくとも25回の咳)。幾つかの実施形態において、慢性の咳は、原因とな
る疾患または慢性的な軽い病気により引き起こされるのか明らかでない。例えば、慢性の
咳は、P2X3またはP2X2/3受容体の持続的な内因性の過活性化により引き起こさ
れ得る。そのような活性化は、単独の慢性的な軽い病気の結果でないこともある。本発明
のある特定の実施形態において、治療されるべき症状または障害は、慢性の咳の原因とな
るニューロン過敏性である。
【0140】
いかなる特定の理論にもとらわれることは望まず、幾つかの実施形態において、本発明
は、P2X3および/またはP2X2/3受容体の活性に拮抗し、最終的にモジュレート
する(例えば、減少させる)ことにより役に立つことができる。これは結果として哺乳動
物の気道中の結節性のおよび頸部の求心性線維の機能をモジュレートする(例えば、下方
に調節する)効果を有し得る。この過程は、例えば、急性、亜急性または慢性の咳に悩む
患者において、咳への衝動を誘発するニューロンのシグナルを減少させる総体的な効果を
有し得る。いかなる理論にもとらわれることは望まず、化合物16は、慢性の咳込みに対
する有効な治療であり得る。さらに理論にとらわれることは望まず、本明細書に記載され
たP2X3受容体のモジュレーターは、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を調節し
および/または弱めることができる。
【0141】
本発明の多くの実施形態において、治療または予防されるべき障害は、呼吸器疾患と関
連する咳への衝動である。
【0142】
例えば、本発明は、それを必要とする患者において、本明細書に記載された呼吸器疾患
および障害、または本明細書に記載されたそれらの症状を、化合物1~39から選択され
た化合物を投与することにより、治療、予防または改善することに関する。例えば、該化
合物は、化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例え
ば、該化合物は化合物16である。
【0143】
幾つかの場合に、1つの群からの好ましい実施形態を、別の群からの好ましい実施形態
と組み合わせることができる。例えば、1つの好ましい実施形態において、R1は-CH3
である。別の好ましい実施形態において、R2は-SO2NH2である。本発明により、上
で開示された2つの好ましい実施形態が組み合わされて、R1が-CH3であり、R2が-
SO2NH2である好ましい化合物を生ずることができる。
【0144】
式(I)のある特定の実施形態において、R1はメチルである。
【0145】
式(I)のある特定の実施形態において、R1は水素である。
【0146】
式(I)のある特定の実施形態において、R2は、ハロアルキル、アミノスルホニル、
アルキルスルホニル、アルキルカルボニルまたはカルボキシアルキルである。
【0147】
式(I)のある特定の実施形態において、R2はハロアルキルであり、アルキルはメチ
ルである。
【0148】
式(I)のある特定の実施形態において、R2はアミノスルホニルである。
【0149】
式(I)のある特定の実施形態において、R2はカルボキシアルキルである。
【0150】
式(I)のある特定の実施形態において、R2はアルキルカルボニルである。
【0151】
R1またはR2が、アルキルであるかまたはアルキル部分を含有する場合、そのようなア
ルキルは、好ましくは低級アルキル、すなわちC1~C6アルキルであり、より好ましくは
C1~C4アルキルである。
【0152】
本発明による代表的な化合物を表1に示す。
【0153】
【0154】
合成
本発明の化合物は、下に示して説明した例示の合成反応のスキームに描いた種々の方法
により作製することができる。本発明で使用するための化合物の合成は、例えば、本明細
書に各々その全体で特に組み込まれる米国特許第7,858,632号、第8,008,
313号、第8,003,788号、第7,531,547号、第7,741,484号
および第7,799,796号で提供された教示により実施することもできる。
【0155】
これらの化合物の調製に一般的に使用される出発原料および試薬は、Aldrich
Chemical Co.などの市販の供給業者から入手できるか、またはFieser
およびFieserのReagents for Organic Synthesis
;Wiley&Sons:New York、1991年、1~15巻;RoddのCh
emistry of Carbon Compounds、Elsevier Sci
ence Publishers、1989年、1~5巻および補足資料;ならびにOr
ganic Reactions、Wiley&Sons:New York、1991
年、1~40巻などの参考文献で説明されている手順に従って当業者に知られた方法によ
り調製されるかのいずれかである。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成す
ることができる幾つかの方法の単なる例示にすぎず、これらの合成反応スキームに種々の
改変を施すことが可能であり、それらの改変は本願に含まれる開示を参照した当業者への
示唆となると予想される。
【0156】
合成反応スキームの出発原料および中間体は、所望であれば、濾過、蒸溜、結晶化、ク
ロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されない従来の技法を使用して、単離およ
び精製することができる。そのような材料は、物理定数およびスペクトルのデータを含む
従来の手段を使用して特徴付けることができる。
【0157】
反対のことが明記されない限り、本明細書に記載された反応は、好ましくは、不活性雰
囲気下の大気圧で、約-78℃から約150℃、より好ましくは約0℃から約125℃の
反応温度範囲、最も好ましくはおよび便利にはおよそ室温(または周囲温度)、例えば、
約20℃で実施される。
【0158】
下のスキームAに、上記式(I)の特定の化合物を調製するために使用され得る別の合
成手順を例示し、R3、R4、RdおよびReは、本明細書において定義される通りである。
【0159】
【0160】
スキームAのステップ1において、O-アルキル化は、フェノールjとヨードアセトニ
トリルkなどのハロアセトニトリルとの反応により実施されて、シアノエーテルlを生ず
る。多置換フェノールjは、市販されているかまたはステップ1で使用するために当技術
分野において周知の技法により調製できるかのいずれかである。例えば、置換されたアル
デヒドは、下の試験例で例示したように、mCPBAなどの過酸を使用してバイヤービリ
ガー酸化により、対応するフェノールjに変換することができる。ステップ1のアルキル
化は、極性の非プロトン性溶媒の条件下において温和な塩基の存在下で行うことができる
。
【0161】
ステップ2において、シアノエノールエーテル化合物nが、シアノエーテルlの水素化
ナトリウムなどの強塩基による処理と、それに続くエステルmの導入によるエノレートの
形成と(示していない)、それが結果としてヨードメタンまたは他のハロゲン化アルキル
の添加によりアルキル化されることにより形成される。このステップは、極性の非プロト
ン性溶媒の条件下で実施することができる。
【0162】
ステップ3において、シアノエノールエーテルnが、グアニジン化合物oと、極性の非
プロトン性の条件下における塩基の存在下で反応して、ジアミノピリミジン(p)を生ず
る。該ジアミノピリミジン(p)が、本発明の方法で使用され得る式(I)の化合物であ
る。
【0163】
スキームAの手順においては多数の変形が可能であり、当業者には自明であろう。
【0164】
本発明の化合物を製造するための特定の詳細を下の実施例の部に記載する。
【0165】
使用
本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾
患を治療するための方法を提供し、前記方法は、それを必要とする対象に有効量の式(I
)の化合物を投与することを含む。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴ
ニストにより媒介される呼吸器疾患の治療に使用するための式(I)の化合物も提供する
。本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾
患を治療するための医薬の製造において式(I)の化合物も提供する。
【0166】
本発明により治療可能な典型的呼吸器疾患は、亜急性もしくは慢性の咳、治療抵抗性の
咳、突発性慢性の咳、ウイルス感染後の咳、医原性の咳(例えば、ACE阻害剤により誘
発されるような)、突発性肺線維症もしくは喫煙と関連する咳または気管支炎の形態を含
む。本発明により治療可能な疾患には、何らかの呼吸器疾患と関連する咳への衝動、例え
ば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息または気管支痙攣と関連する咳への衝動が含まれ
る。
【0167】
本発明のある特定の実施形態において、呼吸器疾患は慢性の咳であってもよい。
【0168】
本発明の多くの実施形態において、該疾患は呼吸器疾患と関連する咳への衝動である。
【0169】
1つまたは複数の実施形態において、本発明の化合物は、慢性の咳(例えば、難治性の
慢性の咳)を有する対象における他覚的な昼間の咳の回数の減少をもたらすことができる
。例えば、本発明の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩を、それを必要とする対
象に投与することにより、他覚的な昼間の咳の回数を1%から99%の間で減少させる結
果をもたらすことができる。例えば、他覚的な昼間の咳の回数を50%から90%の間で
減少させることができ、または咳の回数を75%減少させることができる。それに加えて
、昼間の、および合計して2時間の咳の回数頻度、ならびに咳重症度スコアにおける有意
の減少もあり得る。
【0170】
投与および医薬組成物
例えば、本発明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を、式(I)の化
合物を投与することにより治療するための方法に関する。本発明は、呼吸器疾患と関連す
る咳の症状および咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物にも関する。本発
明は、呼吸器疾患と関連する咳の症状および咳への衝動を治療するための医薬の製造にお
ける式(I)の化合物の使用にも関する。
【0171】
例えば、本発明は、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介さ
れる呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動を、式(I)の
化合物を投与することにより治療する方法に関する。本発明は、P2X3またはP2X2
/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患または障害と関連する咳の症状
および/または咳への衝動の治療に使用するための式(I)の化合物に関する。本発明は
、P2X3またはP2X2/3受容体のアンタゴニストにより媒介される呼吸器疾患また
は障害と関連する咳の症状および/または咳への衝動を治療するための医薬の製造におけ
る式(I)の化合物の使用に関する。
【0172】
例えば、本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させるため
の方法に関する。本発明は、慢性の咳の原因となるニューロン過敏性を治療する方法にも
関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させることに
、または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性のために使用するための式(I)の化合
物に関する。本発明は、突発性/治療抵抗性の慢性の咳における昼間の咳を減少させるた
め、または慢性の咳の原因となるニューロン過敏性のための医薬の製造における式(I)
の化合物の使用に関する。
【0173】
例えば、本発明は、本明細書に記載された呼吸器疾患および障害、または本明細書に記
載されたそれらの症状を、それを必要とする患者に、化合物1~39から選択された化合
物を投与することにより治療、予防または改善することに関する。例えば、該化合物は、
化合物6、7、13、17、21、28、35および38から選択される。例えば、該化
合物は化合物16である。
【0174】
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、または個々の異性体、異性体のラセミも
しくは非ラセミ混合物またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、少なく
とも1種の薬学的に許容される担体、ならびに任意選択で他の治療のおよび/または予防
的含有成分と一緒に含む医薬組成物を含む。
【0175】
一般的に、本発明の化合物は、同様な役に立つ活性剤のための許容される投与様式のい
ずれかにより治療的有効量で投与するのに適する。適当な投薬量の範囲は、治療されるべ
き疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用される化合物の効力、投与の経路お
よび形態、投与が指示される適応症、ならびに関与する開業医の選好および経験などの多
数の要因に依存して、典型的には1~1000mgを1日に1回または2回、好ましくは
100~900mgを1日に1回または2回、最も好ましくは500~700mgを1日
に1回または2回である。適当な投薬量の範囲は、1日に1~1000mgの複数回(例
えば、3~4回)を含む投薬量を含むことができる。
【0176】
例えば、幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、約600mgを1日に2回の
投薬量で投与することができる。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、約10
0mg、200mg、300mg、400mg、500mg、550mg、650mg、
700mg、800mg、900mg、または1000mgを1日に2回の投薬量で投与
することができる。
【0177】
治療期間は、数日、数週間、数か月または数年の間継続し得る。幾つかの実施形態にお
いて、治療(例えば、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の投与)は、2週
間継続する。幾つかの実施形態では、治療は1か月継続する。幾つかの実施形態では、治
療は、無期限で続行することができる。本発明の幾つかの実施形態では、対象を式(I)
の化合物により600mgを1日に2回の投薬量で2週間治療することができる。
【0178】
上記のような疾患を治療する当業者は、過度の実験をせずに自分の知識および本願の開
示をよりどころに、所与の疾患のための本発明の化合物の治療的有効量を確かめることが
できるであろう。
【0179】
本発明の化合物は、経口(バッカルおよび舌下を含む)、直腸内、鼻内、局所、肺内、
膣内、もしくは非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下および静脈内を含む)投与に適し
た剤形を含む医薬配合物として、または吸入もしくは吹入による投与に適した形態で投与
することができる。好ましい投与様式は、一般的に、苦痛の程度により調節することがで
きる便利な毎日の投薬量の治療計画を使用する経口である。
【0180】
本発明の化合物(単数)または化合物(複数)は、1種または2種以上の在来型の補助
剤、担体、または希釈剤と一緒に、医薬組成物および単位投薬量の形態に入れることがで
きる。医薬組成物および単位剤形は、追加の有効化合物または有効薬剤成分を添加されま
たは添加されずに、在来型の含有成分を従来の比率で含むことができて、単位剤形は、使
用されるべき意図される毎日の投薬量の範囲と同一量の任意の適当な有効量の有効含有成
分を含有することができる。医薬組成物は、錠剤もしくは充填されたカプセル剤、半固体
、散剤、徐放性配合物などの固体、または溶液剤、懸濁液剤、エマルション剤、エリキシ
ル、もしくは充填されたカプセル剤などの経口使用ための液体として;あるいは直腸内ま
たは膣内投与のための坐剤の形態で;あるいは非経口的使用のための滅菌注射用溶液剤の
形態で使用することができる。したがって、1錠剤当たり約1ミリグラムまたは、より広
範には約0.01から約100ミリグラムの有効含有成分を含有する配合物が、適当な代
表的単位剤形である。
【0181】
本発明の化合物は、広範囲の経口投与の剤形に製剤化することができる。医薬組成物お
よび剤形は、有効成分として本発明の1種または2種以上の化合物またはそれらの薬学的
に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される担体は、固体または液体のどち
らであってもよい。固体形態の製剤は、散剤、錠剤、ピル、カプセル剤、カシェ剤、坐剤
、および分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤
、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としてもはたらき得る1種または
2種以上の物質であってもよい。散剤では、担体は、一般的に、微細化された固体であり
、それは微細化された有効成分との混合物である。錠剤では、有効成分は、一般的に、適
当な比率で必要な結合能力を有する担体と混合されて、所望の形状およびサイズに詰めら
れる。散剤および錠剤は、好ましくは、約1から約70パーセントの有効化合物を含有す
る。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラク
トース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどを含む
が、これらに限定されない。用語「製剤」は、担体としてのカプセル化材料による有効化
合物の配合物を含むことを意図され、担体を含むかまたは含まない有効成分が、それと共
にある担体により取り囲まれたカプセル剤を提供する。同様に、カシェ剤およびロゼンジ
が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、ピル、カシェ剤、およびロゼンジは、経口投与に
適した固体形態であることができる。
【0182】
経口投与に適した他の形態は、エマルション剤、シロップ剤、エリキシル、水溶液剤、
水性懸濁液剤を含む液体形態の製剤、または使用直前に液体形態の製剤に変換されること
を意図される固体形態の製剤を含む。エマルション剤は、溶液で、例えば、プロピレング
リコール水溶液で調製することができ、または例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエ
ートなどの乳化剤、もしくはアラビアゴムを含有することができる。水溶液剤は、有効成
分を水に溶解して、適当な着色剤、着香剤、安定剤、および増粘剤を添加することにより
調製することができる。水性懸濁液剤は、微細化された有効成分を、天然または合成ゴム
、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の
懸濁剤などの粘性材料を添加した水に分散させることにより調製することができる。液体
形態の製剤は、溶液剤、懸濁液剤、およびエマルション剤を含み、有効成分に加えて、着
色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤など
を含有することができる。
【0183】
本発明の化合物は、表皮に局所投与するために、軟膏、クリーム剤もしくはローション
剤として、または経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏およびクリーム剤は、
例えば、適当な増粘剤および/またはゲル化剤を添加された水性または油性基剤を用いて
製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性基剤を用いて製剤化すること
ができ、一般的には1種または2種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、ま
たは着色剤も含有するであろう。口腔内への局所投与に適した配合物には、着香された基
剤、通常スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント中に有効な活性剤を含むロゼ
ンジ、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤
中に有効含有成分を含むトローチ、ならびに適当な液体担体中に有効含有成分を含む口内
洗浄薬が含まれる。
【0184】
主題の化合物は、鼻内投与のために製剤化することができる。該溶液剤または懸濁液剤
は、鼻内空洞に従来の手段により、例えば、スポイト、ピペットまたはスプレーを用いて
直接適用される。この配合物は単回または複数回投与のための剤形で提供することができ
る。スポイトまたはピペットの後者の場合に、これは、適当な、所定の体積の溶液剤また
は懸濁液剤を投与する患者により達成することができる。スプレーの場合、これは、例え
ば、計量霧化スプレーポンプにより達成することができる。
【0185】
本発明の化合物は、鼻腔内投与を含む特に呼吸器へのエアロゾル投与のために製剤化す
ることができる。該化合物は、一般的に、例えば、5ミクロン以下のオーダーの小さい粒
子サイズを有するであろう。そのような粒子サイズは、当技術分野において知られた手段
により、例えばマイクロ化により得ることができる。有効含有成分は、クロロフルオロカ
ーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、も
しくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素または他の適当なガスなどの適
当な噴射剤と共に加圧パック中に提供される。エアロゾル剤は、レシチンなどの界面活性
剤も便利に含有することができる。薬剤の用量は、計量バルブにより制御することができ
る。あるいは有効含有成分は、乾燥粉末、例えばラクトース、デンプン、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)など
の適当な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、
鼻内空洞でゲルを形成するであろう。粉末組成物は、例えばカプセル、またはそれから散
剤を吸入器により投与することができる例えばゼラチンのカートリッジもしくはブリスタ
ーパック中の単位用量形態で提供することができる。
【0186】
薬学的製剤は、単位剤形であってもよい。そのような形態で、製剤は、適当量の有効成
分を含有する単位用量に小分けされる。単位剤形は、パッケージされた製剤、パックされ
た錠剤、カプセル剤、および瓶中の散剤またはアンプルなどの製剤の離散的量を含有する
パッケージであってもよい。単位剤形は、それ自体、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、経口
テープもしくはロゼンジであることもでき、またはそれは、適当な数のパッケージされた
形態にあるこれらのいずれかであることができる。
【0187】
他の適当な薬学的担体およびそれらの配合物は、Remington:The Sci
ence and Practice of Pharmacy 1995年、E.W.
Martin編、第19版、Mack Publishing Company、Eas
ton、Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的
な医薬配合物を下に記載する。
【実施例0188】
以下の製剤および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解して実行することを可能
にするように与えられる。それらは本発明の範囲を限定するとみなされるべきではなく、
単にそれらの例示のおよび代表例であるとみなされるべきである。