IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社QDレーザの特許一覧 ▶ 国立大学法人山梨大学の特許一覧

<>
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図1
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図2
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図3
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図4
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図5
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図6
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図7
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図8
  • 特開-視覚検査装置及び視覚検査方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026672
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】視覚検査装置及び視覚検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20230216BHJP
   A61B 3/06 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001204
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2019116292の分割
【原出願日】2019-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】柏木 賢治
(72)【発明者】
【氏名】足利 英昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(57)【要約】
【課題】視野、視力、視認等の視覚検査を行う際の被験者の負担を低減した視覚検査装置を提供する。
【解決手段】視覚検査装置は、レーザ照射部と、視線方向検出部と、被験者の網膜にレーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、投影画像上の複数の格子のうちの任意の位置の格子に検査用画像を生成することによって、被検者の網膜の任意の位置に検査用画像を投影する投影制御部と、各格子の位置情報に、当該位置情報が表す位置を被検者が視認しているときの標準的で基準となる視線方向の情報を対応させて記憶する記憶部と、投影画像上の検査用画像の各格子の位置情報と、被検者の網膜上の位置情報とは対応づけられており、検査用画像が投影される位置情報と、視線方向検出部によって検出される視線方向情報とに基づいて、被験者の視線方向から外れた方向に検査用画像を投影することで中心外視力の検査処理を行う検査処理部とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーとを有するレーザ照射部と、
被験者の視線方向を検出する視線方向検出部と、
前記被験者の網膜に前記レーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、前記投影画像上の複数の格子のうちの任意の位置の格子に検査用画像を生成することによって、被検者の網膜の任意の位置に前記検査用画像を投影する投影制御部と、
前記検査用画像を示す検査用画像データを格納する記憶部であって、各格子の位置情報に、当該位置情報が表す位置を被検者が視認しているときの標準的で基準となる視線方向の情報を対応させて記憶する記憶部と、
前記投影画像上の検査用画像の各格子の位置情報と、前記被検者の網膜上の位置情報とは対応づけられており、前記検査用画像が投影される位置情報と、前記視線方向検出部によって検出される視線方向情報とに基づいて、前記被験者の視線方向から外れた方向に前記検査用画像を投影することで中心外視力の検査処理を行う検査処理部と
を含む、視覚検査装置。
【請求項2】
前記投影制御部が、空間分解能又は色覚成分を有する検査用画像を生成して前記被検者の網膜へ投影することにより、網膜での中心外視力を含む空間鑑別および色覚の検査処理を行う、請求項1に記載の視覚検査装置。
【請求項3】
前記検査用画像は、所定のキャラクタを表す画像である、請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項4】
前記投影制御部が、前記投影画像上に投影した検査用画像の位置を所定の移動パターン情報に基づいて移動させ、
前記視線方向検出部が、前記被検者の視線方向情報を検出し、
前記移動パターン情報と前記被検者の視線方向情報とに基いて、視覚検査処理を行う請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項5】
前記視線方向検出部は、撮像装置であって、
前記投影制御部は、前記撮像装置が撮像した画像データに基づき、前記被験者の視線方向を検出する、請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項6】
前記視線方向検出部は、前記被験者の顔面の筋肉の動きにより、前記被験者の視線方向を検出する、請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項7】
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーとを有するレーザ照射部と、
被験者の視線方向を検出する視線方向検出部と
前記被験者の網膜に前記レーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、前記投影画像上の複数の格子のうちの任意の位置の格子に検査用画像を生成することによって、被検者の網膜の任意の位置に前記検査用画像を投影する投影制御部と、
前記検査用画像を示す検査用画像データを格納する記憶部であって、各格子の位置情報に、当該位置情報が表す位置を被検者が視認しているときの標準的で基準となる視線方向の情報を対応させて記憶する記憶部と、
を含み、
前記投影画像上の検査用画像の各格子の位置情報と、被検者の網膜上の位置情報とは対応づけられており、前記検査用画像が投影される位置情報と、前記視線方向検出部によって検出される視線方向情報とに基づいて、前記被験者の視線方向から外れた方向に前記検査用画像を投影することで中心外視力の検査処理を行う、視覚検査方法。
【請求項8】
空間分解能又は色覚成分を有する検査用画像を生成して前記被検者の網膜へ投影することにより、網膜での中心外視力を含む空間鑑別および色覚の検査処理を行う、請求項7に記載の視覚検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置及び視覚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被験者の視野を覆う筐体の中に注視点を提示し、被験者が視線を注視点に向けた状態で、輝点(視標)を被験者の視野内にランダムに表示し、それを被験者が視認できたかどうかを検査する視野検査装置が知られている。
【0003】
また、近年では、被験者の網膜にレーザ光を照射して検査用画像を網膜に投影させる網膜走査技術を用いた視野検査装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-142313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の視野検査装置では、検査中は視線を注視点に向け続ける必要があるため、被験者にとっての負担が大きい。特に子供は一点を見続けることに飽きやすいため、注視点を見続けさせることは困難である。また、高齢者は、肉体的な負担が大きいことから注視点を見続けさせることは容易ではない。これは、視野検査だけでなく、視力(特に周辺視力)の検査や、視認しているかどうかの検査においても同様視野、視力、視認等の視覚検査である。
【0006】
そこで、視野、視力、視認等の視覚検査を行う際の被験者の負担を低減した視覚検査装置及び視覚検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態の視覚検査装置は、レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーとを有するレーザ照射部と、被験者の視線方向を検出する視線方向検出部と、前記被験者の網膜に前記レーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、前記投影画像上の複数の格子のうちの任意の位置の格子に検査用画像を生成することによって、被検者の網膜の任意の位置に前記検査用画像を投影する投影制御部と、前記検査用画像を示す検査用画像データを格納する記憶部であって、各格子の位置情報に、当該位置情報が表す位置を被検者が視認しているときの標準的で基準となる視線方向の情報を対応させて記憶する記憶部と、前記投影画像上の検査用画像の各格子の位置情報と、前記被検者の網膜上の位置情報とは対応づけられており、前記検査用画像が投影される位置情報と、前記視線方向検出部によって検出される視線方向情報とに基づいて、前記被験者の視線方向から外れた方向に前記検査用画像を投影することで中心外視力の検査処理を行う検査処理部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
視野、視力、視認等の視覚検査を行う際の被験者の負担を低減した視覚検査装置及び視覚検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の視覚検査装置100を示す図である。
図2】視覚検査装置100の構成を示すブロック図である。
図3】レーザ照射部110を示す図である。
図4】制御部130の構成を示す図である。
図5】検査用画像50のデータを含む投影画像10と網膜22上に投影される検査用画像とを示す図である。
図6】検査用画像50を示す図である。
図7】検査用画像50を示す図である。
図8】制御部130が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
図9】検査用画像50の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の視覚検査装置及び視覚検査方法を適用した実施の形態について説明する。
【0011】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の視覚検査装置100を示す図である。視覚検査装置100は、フレーム102、調整部材103、104、基部105、支持部106a、106b、画像投影部107a、107b、台座108、撮像部180a、180bを有する。
【0012】
視覚検査装置100において、基部105の上に台座108が設けられており、フレーム102は、両端が基部105の上面に固定されている。
【0013】
画像投影部107a、107bは、支持部106a、106bによって支持されており、内部に、後述するレーザ照射部と投影制御部とを有する。画像投影部107a、107bは、それぞれが有するレーザ照射部によって、視野、視力、視認等の視覚を検査する被験者の左眼と右眼に対し、レーザ光を照射し、被験者の網膜に検査用画像を含む投影画像を投影させる。
【0014】
撮像部180a、180bは、検査中の被験者の眼球の動きを検出するために、被験者の右眼、左眼それぞれの眼球の画像を撮像するカメラである。
【0015】
以下の説明では、画像投影部107aと画像投影部107bとを区別しない場合には、画像投影部107と呼び、支持部106a、106bを区別しない場合には、支持部106と呼び、撮像部180a、180bを区別しない場合には撮像部180と呼ぶ。
【0016】
調整部材103は、画像投影部107が支持された支持部106を、紙面に示すY軸方向に移動させる。調整部材104は、画像投影部107を支持部106に沿ってZ軸方向に移動させる。
【0017】
視覚検査装置100は、台座108とフレーム102のそれぞれに被験者の顎と額とを接触させ、調整部材103、104によって、被験者が画像投影部107を覗くような状態となるように、画像投影部107を眼球に近づけた状態で検査が行われる。
【0018】
以下に、図2を参照して、視覚検査装置100のハードウェア構成について説明する。図2は、視覚検査装置100の構成を示すブロック図である。
【0019】
視覚検査装置100は、レーザ照射部110、通信部120、制御部130、記憶部140、レーザ出力制御部150、及び撮像部180を含む。
【0020】
これらのうち、制御部130、記憶部140、及びレーザ出力制御部150は、制御装置101に含まれる。制御装置101は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び内部バス等を含むコンピュータのような情報処理装置によって実現される。制御部130及びレーザ出力制御部150は、制御装置101が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、記憶部140は、制御装置101のメモリを機能的に表したものである。
【0021】
レーザ照射部110は、記憶部140に格納された検査用画像データを含む投影画像データに基づくレーザ光を、予め設定された光量で被験者の網膜に照射する。すなわち、レーザ照射部110は被験者にとっての接眼部であり、このレーザ照射部110に眼を当てる(レーザ照射部110を覗き込む)ことによって、被験者は網膜に投影された検査用画像等を脳で認識(認知)し、視野や視力等検査や、検査用画像等を視認するかどうかの検査等の視覚検査を行うことができる。
【0022】
なお、視野検査とは見えている範囲を調べる検査であり、視力検査とは中心視力又は中心外視力(周辺視力)を調べる検査である。また、視認とは、画像を網膜で捉えて(見て)、かつ、脳で認識することである。視覚検査装置100は、レーザ照射部110で検査用画像が移動する投影画像を網膜に投影させて視認検査を行うため、視覚検査装置100を用いて行う視認検査とは、移動する検査用画像を網膜で捉えて(見て)追って、かつ、脳で認識しているかどうかを調べる検査である。
【0023】
通信部120は、視覚検査装置100と、外部装置との通信を行うための通信装置である。具体的には、例えば、通信部120は、ネットワーク等を介して医療機関に設けられた端末等と通信を行ってもよいし、視覚検査装置100と有線等で接続された装置と通信を行ってもよい。なお、通信部120による通信の方式は、視覚検査装置100と外部装置とが通信を行うことができれば、どのような方式であってもよい。
【0024】
制御部130は、視覚検査装置100の動作の全体を制御する。記憶部140は、制御部130により実行されるプログラムや、演算により取得された各種の値等を格納する。また、記憶部140は、視覚検査に用いられる検査用画像を示す検査用画像データを格納する。
【0025】
レーザ出力制御部150は、記憶部140に格納された検査用画像データに基づくレーザ光を、設定された光量で、レーザ照射部110から照射させる。
【0026】
撮像部180は、レーザ照射部110の近傍に配置されたカメラである。撮像部180により撮像された画像データから、被験者の眼球20の動きや、被験者の瞳孔の向きが検出される。したがって、言い換えれば、撮像部180は、被験者の瞳孔25の位置を検出する瞳孔位置検出部の機能を果たす。また、撮像部180は、被験者の視線方向を検出するための視線方向検出部とも言える。
【0027】
撮像部180は、視覚検査が開始されると、被験者の画像を撮像し、その画像データを制御部130へ渡す。
【0028】
なお、図示していないが、視覚検査装置100は、各種の情報を出力するための出力部(ディスプレイ)を有してもよい。また、このディスプレイには、検査用画像に基づく被験者Pによる視力検査の結果を入力させる入力画面等が表示されてもよい。また、出力部は、記憶部140に格納された検査結果を示す情報を、記録媒体等に書き出すためのものであってもよい。
【0029】
次に、図3を参照して、レーザ照射部110について説明する。図3は、レーザ照射部110を示す図である。
【0030】
レーザ照射部110は、マクスウェル視を利用して、被験者の眼球20の網膜22にレーザ光を照射する。
【0031】
レーザ照射部110は、光源111、調整部112、光学系113を有する。光学系113は、走査部114、平面ミラー115、レンズ116、117を有する。走査部114は、例えば、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。
【0032】
レーザ照射部110において、光源111が出射したレーザ光Lは、調整部112において開口数(NA)及び/又はビーム径が調整される。レーザ光Lは、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の可視レーザ光である。
【0033】
レーザ光Lは、平面ミラー115で反射し、走査部114より2次元に走査される。走査されたレーザ光Lは、レンズ116及びレンズ117を介し、被験者の眼球20に照射する。レーザ光Lは、水晶体21近傍で収束し、硝子体23を通過し網膜22に照射する。これにより、網膜22に画像が投影される。走査部114は、例えば、1秒間に60フレームの画像が投影されるような28kHz等の比較的高い周波数で振動する。
【0034】
次に、図4及び図5を参照して、制御部130の機能について説明する。図4は、制御部130の構成を示す図である。図5は、検査用画像50のデータを含む投影画像10と網膜22上に投影される検査用画像とを示す図である。
【0035】
制御部130は、撮像制御部131、投影制御部132、視線方向検出部133、検査処理部134を有する。撮像制御部131、投影制御部132、視線方向検出部133、検査処理部134は、制御部130が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。
【0036】
撮像制御部131は、撮像部180による画像の撮像を制御する。具体的には、撮像制御部131は、所定の間隔で撮像部180に、被験者の画像を撮像させてもよい。
【0037】
投影制御部132は、レーザ照射部110による検査用画像の投影を制御する。具体的には、投影制御部132は、記憶部140から図5(A)に示すように検査用画像50のデータを含む投影画像10のデータを読み出してレーザ出力制御部150へ渡す。レーザ出力制御部150は、レーザ照射部110に対し、投影画像10のデータに基づくレーザ光を、予め設定された光量で、被験者の網膜22に照射させる。
【0038】
図5(B)は、検査用画像50のデータが、網膜22上に投影されている状態を模式的に表した図である。
【0039】
このように、投影画像10上の任意の位置に検査用画像50を投影することによって、検査用画像50を網膜22の任意の位置に投影させることができる。
【0040】
図5(A)、図5(B)では、説明のために縦横の分解能を粗く記載しているが、実際には、横1278ピクセル、縦720ピクセル程度が一例であり、検査用画像50は通常複数ピクセルで描画される。
【0041】
視線方向検出部133は、撮像部180により撮像された瞳孔25、虹彩26等の画像の画像データを解析して、被験者の眼球20の視線方向と動きを検出する。具体的には、視線方向検出部133は、被験者の瞳、瞼など眼球とその周囲の画像を撮像し、瞳の形状や瞳と瞼の位置関係などから、視線方向を検出する。その検出を複数回行い、その結果を比較することによって、被験者の眼球が動いたか否かを判定している。
【0042】
例えば、視線方向検出部133は、複数の画像について、画素毎に画素値を比較し、画素値差分が所定の値以上となる画素が、一定数存在する場合に、被験者の眼球20が動いたと判定してもよい。
【0043】
図5(A)に示す投影画像10上の各格子内の検査用画像50の位置情報(データ)には、被検者がこの位置を視認しているときの標準的で基準となる視線方向の情報(データ)を対応させて所持している。
【0044】
検査処理部134は、投影制御部132によって制御されるレーザ照射部110によって網膜に検査用画像が投影される位置と、それに対応した視線方向データと、視線方向検出部133によって検出される視線方向とに基づいて、視覚検査処理を行う。
【0045】
図6及び図7は、検査用画像50を示す図である。図6及び図7に示すように、レーザ照射部110は、投影制御部132によって制御されるによって、網膜22に検査用画像50を含む投影画像10を投影する。
【0046】
図6は、検査用画像50が網膜22に投影されてから消滅し、異なる位置に投影されることを繰り返す投影パターンを示している。換言すれば、図6は検査用画像50が位置を変化させながら(移動しながら)飛び飛びで網膜22に投影されることを繰り返す投影パターンを示している。
【0047】
図7は、網膜22に投影される検査用画像50の位置を矢印で示すように移動させる投影パターンを示している。
【0048】
これらの投影パターンを表すデータは、記憶部140に格納しておけばよく、投影制御部132が投影パターンを記憶部140から読み出して、読み出した投影パターンに従って、レーザ照射部110を制御することによって網膜22に投影することができる。また、投影制御部132は、投影パターンを表すデータを検査処理部134に出力する。
【0049】
検査処理部134は、投影画像10上での検査用画像50の位置情報に基づいて網膜22に検査用画像が投影される位置を認識し、検査用画像の位置が変化したときに、視線方向検出部133によって検出される視線方向が変化するかどうかに基づいて、視覚検査処理を行う。
【0050】
網膜22上の任意の位置に検査用画像50を投影するために、その位置に対応した投影画像10上の位置に検査用画像50が表示された画像データにより、投影画像10を投影する。視線方向検出部133によって検出される視線方向と、検査用画像50が持つ視線方向データとを比較することによって、被検者が検査用画像50を視認しているかどうかの視覚検査処理を行う。
【0051】
また、検査用画像50の位置が異なった投影画像10を順次投影し、視線方向検出部133によって検出される視線方向が変化するかどうかに基づいても、視覚検査処理を行うことができる。
【0052】
より具体的には、検査処理部134は、投影制御部132から入力される投影画像10上での検査用画像50の位置情報に基づいて網膜22に検査用画像が投影される位置が変化する方向とタイミングを検出する。また、検査処理部134は、視線方向検出部133によって検出される視線方向が変化する方向とタイミングを検出する。
【0053】
そして、検査処理部134は、検査用画像が投影される位置が変化する方向と、視線方向検出部133によって検出される視線方向が変化する方向との差が所定角度以下であり、かつ、検査用画像が投影される位置が変化するタイミングに対する、視線方向検出部133によって検出される視線方向が変化するタイミングの遅れが所定時間以下である場合に、被験者の視覚が正常であると判定する。
【0054】
被験者の視覚が正常であることとは、被験者が検査用画像を正しく視認していることである。移動する検査用画像を視認するとは、検査用画像を網膜で捉えて(見て)追い、かつ、検査用画像を認識していると考えられることをいう。
【0055】
なお、タイミングの遅れが所定時間以下であるかどうかを判定する代わりに、視線方向の速度が所定速度以上であるかどうかを判定してもよい。所定速度は、視覚が健常な人間が動体に反応する際の視線歩行の平均的な速度に、ある程度のマージン(余裕代)を加えた速度に設定すればよい。
【0056】
図8は、制御部130が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【0057】
視覚検査装置100は、検査の開始指示を受けると、制御部130の投影制御部132は、投影パターンを記憶部140から読み出して、読み出した投影パターンに従って、レーザ照射部110を制御するとともに、投影パターンを表すデータを検査処理部134に出力する(ステップS101)。これにより、網膜22に検査用画像50(図6、6参照)が投影される。検査用画像50の位置を表すデータは、投影画像10上の座標で示される位置情報である。
【0058】
次いで、視線方向検出部133は、撮像部180により、被験者の瞳孔25、虹彩26などの眼球画像に基づいて、視線方向を検出する(ステップS102)。
【0059】
次いで、視線方向検出部133は、ステップS101で投影した検査用画像50の投影角度情報と、ステップS102で検出した視線方向の角度情報とから、検査用画像50の投影角度と視線方向の角度との差が所定角度以下であるかどうかを判定する(ステップS103)。
【0060】
視線方向検出部133によって、検査用画像50の投影角度と視線方向の角度との差が所定角度以下との差が所定値以下である(S103:YES)と判定されたときは、投影制御部132は、投影パターンを記憶部140から読み出して、読み出した投影パターンに従って、レーザ照射部110を制御するとともに、投影パターンを表すデータを検査処理部134に出力する(ステップS104)。
【0061】
次いで、視線方向検出部133は、撮像部180により、被験者の瞳孔25、虹彩26などの眼球画像に基づいて、視線方向を検出する(ステップS105)。
【0062】
検査処理部134は、検査用画像が投影される位置が変化する方向と、視線方向が変化する方向との差が所定角度以下であるかどうかを判定する(ステップS106)。まず、方向の差を判定することで、被験者の網膜が検査用画像を捉えているか(見えているかどうか)を判定する趣旨である。
【0063】
検査処理部134は、所定角度以下である(S106:YES)と判定すると、検査用画像が投影される位置が変化するタイミングに対する視線方向が変化するタイミングの遅れが所定時間以下であるかどうかを判定する(ステップS107)。被験者が網膜で捉えた画像を認識する際の応答性を判定する趣旨である。
【0064】
検査処理部134は、タイミングの遅れが所定時間以下である(S107:YES)と判定すれば、被験者は検査用画像を正常に視認していると判定する(ステップS108)。この場合には、被験者は移動する検査用画像を網膜で捉えて追っており(検査用画像を見て、かつ、検査用画像を追跡しており)、かつ、被験者が網膜で捉えた画像を脳で認識する際の応答性が良好である場合であり、被験者が検査用画像を視認している(見て追って、かつ、認識している)場合である。
【0065】
また、ステップS103において、視線方向検出部133によって、検査用画像50の投影角度と視線方向の角度との差が所定角度以下ではない(S103:NO)と判定されたときは、検査用画像50の投影位置と視線方向に差異があるため、検査処理部134は、被験者は検査用画像を正常に視認していると判定する(ステップS109)。
【0066】
また、検査処理部134は、ステップS106又はS107でNOと判定した場合には、被験者は検査用画像を正常に視認していないと判定する(ステップS109)。フローがステップS109に進行する場合は、移動する検査用画像を被験者が視認しておらず、被験者の視覚に異常がある場合である。視覚に異常があるとは、被験者が網膜で検査用画像を捉えていない場合(ステップS106でNOになる場合)、又は、被験者が網膜で捉えた画像を脳で認識する際の応答性が遅い場合(ステップS107でNOになる場合)である。
【0067】
なお、ここでは、ステップS106で検査用画像が投影される位置が変化する方向と、視線方向が変化する方向との差が所定角度以下であるかどうかを判定することに加えて、ステップS107で検査用画像が投影される位置が変化するタイミングに対する視線方向が変化するタイミングの遅れが所定時間以下であるかどうかを判定する形態について説明した。しかしながら、ステップS107の判定を行わずに、ステップS106でYESの場合にステップS108に進行して被験者の視覚が正常であると判定し、ステップS106でNOの場合にステップS109に進行して被験者の視覚が正常ではないと判定してもよい。
【0068】
以上のように、実施の形態によれば、被験者の網膜に照射するレーザ光で検査用画像を網膜に投影し、検査用画像を一例として図6図7に示すようなパターンで移動させ、視線方向検出部133によって検出される視線方向が検査用画像を追っているかどうかで検査用画像を正常に視認しているかどうかを判定する。
【0069】
このため、従来の視野検査装置のように、検査中に視線を注視点に向け続ける必要はなく、被験者の負担を軽減することができる。
【0070】
また、以上では、検査用画像を正常に視認しているかどうかを検査する形態について説明したが、被験者の視線方向を追うことで視野検査を行うことができ、被験者の視線方向から外れた方向に検査用画像を投影することで中心外視力の検査を行うこともできる。
【0071】
したがって、視野、視力、視認等の視覚検査を行う際の被験者の負担を低減した視覚検査装置100及び視覚検査方法を提供することができる。
【0072】
実施の形態の視覚検査装置100及び視覚検査方法は、被験者に特定の方向の向くことを強いず、被験者の視線方向を検出し、検出した視線方向の所定の範囲内で検査用画像を移動させる。このため、被験者がどの方向を見ていても容易に視覚検査を行うことができる。
【0073】
子供や高齢者は一点を見続けることが困難な場合があり、特に検査が長時間にわたる場合はこの傾向が顕著になる。このような観点から、実施の形態の視覚検査装置100及び視覚検査方法は、視野、視力、視認等の視覚検査を行う際の被験者の負担を大幅に低減することができる。
【0074】
また、被験者が認知症である場合には、視覚検査を行うことを認識することができず、検査用画像を認識することができない場合がある。このような被験者であっても、眼を開いてさえいれば、網膜にレーザ光を照射して検査用画像を投影することができるため、非常に簡単に視覚検査を行うことができる。また、この際の被験者の肉体的や精神的な負担を大幅に軽減することができる。
【0075】
また、被験者が白内障や角膜混濁等の疾患を有する場合に、レーザ光が角膜等の前眼部を通過して網膜に到達できれば、このような疾患を有しない被験者と同様に視覚検査を行うことができ、さらに網膜で画像を捉えることができるかどうかを判定することができる。白内障や角膜混濁等の疾患を有する患者が白内障や角膜混濁等の疾患を治癒するための手術を行っても、網膜剥離等が生じている場合には、手術を行っても視力は回復しない。このような患者には、手術前に実施の形態の視覚検査装置100及び視覚検査方法で視認の検査を行うことにより、網膜が正常であるかどうか、網膜で捉えた画像を脳で認識できるかどうかの試験を行うことができ、患者の肉体的、精神的、経済的な負担を大幅に低減することができる。
【0076】
また、以上では、ステップS106又はS107でNOと判定した場合には、被験者は検査用画像を正常に視認していないと判定する形態について説明したが、ステップS106でYESと判定してステップS107でNOと判定した場合には、被験者は網膜で検査用画像を捉えているが、検査用画像を脳で認識する応答が遅い場合である。このため、ステップS107でNOと判定する場合には、被験者の脳における画像の認識が正常ではないと判定してもよい。
【0077】
また、従来の視野検査装置は、検査用の画像が点状の画像で、明度のみを測定する装置であるため、網膜のうちの明暗を鑑別する桿体機能の評価であったが、実施の形態の視覚検査装置100及び視覚検査方法では、空間分解能や色覚成分を有する検査用画像を網膜に投影することもできる。このため、網膜の重要な視機能である固視点近傍の空間鑑別(中心外視力)や色覚についての評価を容易に行うことができる。
【0078】
また、図9は、検査用画像50の変形例を示す図である。図9には、検査用画像として犬の画像を示す。このような検査用画像を用いると子供の興味を引きやすくできるため、視覚検査をより容易に行うことができ、被験者の負担を軽減することができる。検査用画像は犬に限らず、猫等のその他の動物や、動物以外のものであってもよい。子供だけでなく、高齢者の興味を引きやすい画像を用いてもよい。
【0079】
また、以上では、眼球の動き(視線方向の変化)を検出するために、撮像部180により被験者の眼球を含む画像を撮像するものとしたが、眼球の動きを検出する方法は、これに限定されない。例えば、被験者の顔面(上下の瞼等)に電極を貼り付けて、筋電計により顔面の筋肉の動きを検出して被験者の眼球の動きを検出してもよい。この場合、撮像部180は不要となる。
【0080】
以上、本発明の例示的な実施の形態の視覚検査装置、及び、視覚検査方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
100 視覚検査装置
110 レーザ照射部
130 制御部
131 撮像制御部
132 投影制御部
133 視線方向検出部
134 検査処理部
180 撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9