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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026682
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】止血弁付留置針および留置針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/06 20060101AFI20230216BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61M39/06 110
A61M39/06 122
A61M25/06 500
A61M5/158 500H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001335
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2019534593の分割
【原出願日】2018-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2017150204
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017216744
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(57)【要約】
【課題】内部流路中の空気を排出することができる、新規な構造の止血弁付留置針を提供する。
【解決手段】経皮的に血管に挿し入れられるカニューラ12を先端側に有していると共に、接続コネクタ14を基端側に備えており、該カニューラ12から該接続コネクタ14に至る内部流路18が形成されていると共に、該接続コネクタ14の内部に止血弁16が配されている止血弁付留置針10において、前記接続コネクタ14には前記内部流路18を前記止血弁16よりも前記カニューラ12側において外部空間へ連通させるエア抜き通路118が形成されており、該エア抜き通路118上に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタ120が圧縮された状態で装着されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的に血管に挿し入れられるカニューラを先端側に有していると共に、接続コネクタを基端側に備えており、該カニューラから該接続コネクタに至る内部流路が形成されていると共に、該接続コネクタの内部に止血弁が配されている止血弁付留置針において、
前記接続コネクタには前記内部流路を前記止血弁よりも前記カニューラ側において外部空間へ連通させるエア抜き通路が形成されており、該エア抜き通路上に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが圧縮された状態で装着されていることを特徴とする止血弁付留置針。
【請求項2】
経皮的に血管に挿し入れられるカニューラを先端側に有していると共に、接続コネクタを基端側に備えており、該カニューラから該接続コネクタに至る内部流路が形成されていると共に、該接続コネクタの内部に止血弁が配されている止血弁付留置針において、
前記接続コネクタには周壁に開口する空気流出口を通じて外部空間へ連通されたエア抜き通路が形成されており、前記内部流路が前記止血弁よりも前記カニューラ側において該エア抜き通路を通じて外部空間へ連通されていると共に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが複数の硬質部材で挟持されて該エア抜き通路上に配されていることを特徴とする止血弁付留置針。
【請求項3】
前記硬質部材の少なくとも1つが前記接続コネクタを構成している請求項2に記載の止血弁付留置針。
【請求項4】
前記硬質部材が何れも筒状とされている請求項2又は3に記載の止血弁付留置針。
【請求項5】
前記硬質部材の何れか1つが環状支持部を備えていると共に、前記フィルタが環状の嵌着部を備えており、該嵌着部が該硬質部材の該環状支持部に外挿状態で取り付けられている請求項2~4の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項6】
前記フィルタの前記嵌着部が前記硬質部材の間で径方向に挟まれて圧縮されている請求項5に記載の止血弁付留置針。
【請求項7】
前記硬質部材が軸方向に隣り合って配されていると共に、前記フィルタがそれら硬質部材の間で軸方向に挟まれて圧縮されている請求項2~6の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項8】
軸方向に隣り合って配された前記硬質部材がそれぞれ筒状とされて、前記フィルタがそれら硬質部材の軸方向間において全周に亘って圧縮されていると共に、それら硬質部材の軸方向対向面の少なくとも一方には、該フィルタに全周に亘って押し当てられる環状の圧縮リブが突出形成されている請求項7に記載の止血弁付留置針。
【請求項9】
前記接続コネクタが、前記内部流路を構成する流路を有するガイドコネクタと、該ガイドコネクタの先端部が挿入されて固定されるコネクタカバーとを含んで構成されており、該ガイドコネクタと該コネクタカバーとの間には隙間が設けられて、該隙間を含んで前記エア抜き通路が構成されている請求項1~8の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項10】
前記ガイドコネクタと前記コネクタカバーとの径方向間において前記フィルタが挟まれて圧縮された状態で装着されている請求項9に記載の止血弁付留置針。
【請求項11】
前記ガイドコネクタの外周面には外周側に突出する係合突起が設けられている一方、前記コネクタカバーの周壁には径方向で貫通する係合孔が設けられており、該ガイドコネクタの先端部が該コネクタカバーに挿入されることで該係合突起が該係合孔に係合して、該ガイドコネクタと該コネクタカバーが相互に固定されていると共に、該係合孔が該ガイドコネクタと該コネクタカバーとの間の前記隙間に連通されている請求項9又は10に記載の止血弁付留置針。
【請求項12】
前記コネクタカバーの内周面には凹溝が設けられており、該凹溝の開口部が前記止血弁で覆蓋されることで該止血弁と該コネクタカバーとで囲まれたトンネル状の通路が形成されていると共に、該トンネル状の通路を含んで前記エア抜き通路が構成されている請求項9~11の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項13】
前記フィルタが、気体は通過させるが液体を吸収する材質で構成されている請求項1~12の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の止血弁付留置針に対して抜去可能な内針が前記内部流路の基端側から先端側に向かって挿通されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項15】
押し子が先端側に移動して弾性弁体に挿入されることで該弾性弁体が押し開かれるようになっていると共に、該弾性弁体に挿入された該押し子が該弾性弁体の復元作用で基端側に移動されることで該弾性弁体が閉塞されるようになっている止血弁付留置針であって、
前記押し子における前記弾性弁体への挿入領域には、軸方向中間部分の外周面において先端側よりも傾斜角度の大きい急傾斜面が設けられていることを特徴とする止血弁付留置針。
【請求項16】
前記急傾斜面の先端側に先端側傾斜面が先細形状をもって設けられている請求項15に記載の止血弁付留置針。
【請求項17】
前記急傾斜面の基端側に基端側傾斜面が先細形状をもって設けられている請求項15又は16に記載の止血弁付留置針。
【請求項18】
前記急傾斜面が先細形状とされている請求項15~17の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項19】
前記急傾斜面が一定の傾斜角度を有している請求項15~18の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項20】
前記急傾斜面の先端側と基端側とに先端側傾斜面と基端側傾斜面とがそれぞれ先細形状をもって設けられており、該先端側傾斜面の傾斜角度が、該基端側傾斜面の傾斜角度よりも大きい請求項15~19の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項21】
前記急傾斜面の先端側と基端側とに先端側傾斜面と基端側傾斜面とがそれぞれ先細形状をもって設けられており、該急傾斜面と該先端側傾斜面と該基端側傾斜面が、何れも一定の傾斜角度を有している請求項15~20の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項22】
前記弾性弁体と前記押し子とが収容配置される筒状のハウジングを備えている一方、該押し子における前記挿入領域よりも基端側の外周面には当接部が設けられていると共に、該ハウジングの内周面には係合突部が設けられており、これら当接部と係合突部との当接によって該押し子の基端側への移動が規制されている請求項15~21の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項23】
前記弾性弁体と前記押し子とが収容配置される筒状のハウジングを備えており、該ハウジングが、相互に内外挿されて組み付けられる外周側ハウジングと内周側ハウジングとを含んで構成されている一方、該弾性弁体の外周部分には基端側に突出する筒状支持部が設けられており、該筒状支持部を該外周側ハウジングと該内周側ハウジングとで径方向で挟み込んだ圧縮状態で該弾性弁体が該ハウジングにより支持されている請求項15~22の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項24】
前記急傾斜面の傾斜角度が25度~75度の範囲内に設定されている請求項15~23の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【請求項25】
前記押し子の先端部分の外周面には前記急傾斜面を含んで構成される先細形状のテーパ状外周面が設けられており、該押し子における該テーパ状外周面の形成部分の軸方向寸法が4mm以上とされている請求項15~24の何れか1項に記載の止血弁付留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液や採血、血液透析等を行う際に、血管に穿刺されて留置される留置針および留置針組立体に係り、特に、内部流路に止血弁が配された止血弁付きの留置針および留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、透析のような長時間の採血や輸液(輸血を含む)、入院患者への複数回の採血や輸液などに際して、血管への経皮的な穿刺状態に保持されるカニューラを備えた留置針や留置針組立体が用いられている。かかる留置針や留置針組立体としては、例えば特許第5877196号公報(特許文献1)などに記載されているように、経皮的に血管に挿し入れられるカニューラ(カテーテル2)を先端側に有していると共に、外部流路に接続可能とされた接続コネクタ(カテーテルハブ3)を基端側に備えており、当該接続コネクタの内部に止血弁(弁体7)を配した構造のものが知られている。
【0003】
ところで、接続コネクタへ外部流路を接続するに際しては、体内への空気の混入を避けることが望ましく、カニューラから接続コネクタに至る内部流路中の空気を排出することが好ましい。そこで、上記特許文献1に記載の留置針(留置針組立体)では、接続コネクタと止血弁との内外周面間にエア抜き用の通路(連通部9)を形成して、当該通路の開口をカニューラ内に配したフィルタ(シール部材10)で塞いでいる。このフィルタは、気体を通過させるが液体を通過させないものであり、血液の漏出を防止しつつ内部流路中の空気の排出が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5877196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の留置針(留置針組立体)では、円筒形状のフィルタが接続コネクタの内周面に重ね合わされるようにして配されているに過ぎなかった。そのために、血液等の圧力が作用することで変形しやすく、微小な隙間が発生して血液が漏出するおそれがあることが判明した。
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、内部流路中の空気を排出することができる、新規な構造の止血弁付留置針および留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、経皮的に血管に挿し入れられるカニューラを先端側に有していると共に、接続コネクタを基端側に備えており、該カニューラから該接続コネクタに至る内部流路が形成されていると共に、該接続コネクタの内部に止血弁が配されている止血弁付留置針において、前記接続コネクタには前記内部流路を前記止血弁よりも前記カニューラ側において外部空間へ連通させるエア抜き通路が形成されており、該エア抜き通路上に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが圧縮された状態で装着されていることを特徴とするものである。
【0008】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、カニューラから接続コネクタに至る内部流路が、エア抜き通路を通じて外部空間に連通されていることから、穿刺後の逆血により内部流路内の空気が押し出されて、エア抜き通路を通じて外部空間に排出される。かかるエア抜き通路上に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが設けられていることから、エア抜き通路を通じての空気の排出が許容されるとともに、血液の漏出が防止され得る。
【0009】
特に、フィルタが接続コネクタに対して圧縮された状態で装着されていることから、フィルタに圧力が及ぼされたとしても、フィルタの変形が回避される、または変形量が小さく抑えられる。それ故、フィルタと接続コネクタとの間に隙間が生じることが防止されることから、血液の漏出がより確実に防止され得る。
【0010】
本発明の第2の態様は、経皮的に血管に挿し入れられるカニューラを先端側に有していると共に、接続コネクタを基端側に備えており、該カニューラから該接続コネクタに至る内部流路が形成されていると共に、該接続コネクタの内部に止血弁が配されている止血弁付留置針において、前記接続コネクタには周壁に開口する空気流出口を通じて外部空間へ連通されたエア抜き通路が形成されており、前記内部流路が前記止血弁よりも前記カニューラ側において該エア抜き通路を通じて外部空間へ連通されていると共に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが複数の硬質部材で挟持されて該エア抜き通路上に配されていることを、特徴とするものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが硬質部材間で挟持されていることにより、フィルタがエア抜き通路上に安定して保持されて、フィルタによる血液の漏出防止が高い信頼性で実現される。
【0012】
さらに、エア抜き通路の外部空間への開口が、接続コネクタの周壁に設けられた空気流出口とされていることから、例えば、接続コネクタの内部圧力がエア抜き通路を通じた空気の排出に及ぼす影響が低減されて、内部流路中の空気を安定して排出することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係る止血弁付留置針において、前記硬質部材の少なくとも1つが前記接続コネクタを構成しているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、硬質部材を接続コネクタの構成部材とすることで、部品点数の削減や構造の簡略化などが図られる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第2又は第3の態様に係る止血弁付留置針において、前記硬質部材が何れも筒状とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、筒状とされた硬質部材によって、フィルタを全周に亘って挟持させることができて、フィルタのより安定した保持が可能になることから、血液の漏出などがより有利に防止される。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記第2~第4の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記硬質部材の何れか1つが環状支持部を備えていると共に、前記フィルタが環状の嵌着部を備えており、該嵌着部が該硬質部材の該環状支持部に外挿状態で取り付けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが嵌着部において筒状の硬質部材に外挿状態で取り付けられることで、フィルタを一方の硬質部材とともに取り扱うことができて、フィルタを硬質部材間へ組み付ける作業が容易になる。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る止血弁付留置針において、前記フィルタの前記嵌着部が前記硬質部材の間で径方向に挟まれて圧縮されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタの嵌着部が径方向に圧縮されていることで、硬質部材の径方向間を通じた血液などの漏出が、圧縮されたフィルタによってより効果的に防止される。
【0021】
本発明の第7の態様は、前記第2~第6の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記硬質部材が軸方向に隣り合って配されていると共に、前記フィルタがそれら硬質部材の間で軸方向に挟まれて圧縮されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが硬質部材の間で軸方向に圧縮されていることにより、硬質部材の軸方向間がフィルタによって液密的に封止されて、硬質部材の軸方向間において血液などの通過が防止される。
【0023】
本発明の第8の態様は、前記第7の態様に係る止血弁付留置針において、軸方向に隣り合って配された前記硬質部材がそれぞれ筒状とされて、前記フィルタがそれら硬質部材の軸方向間において全周に亘って圧縮されていると共に、それら硬質部材の軸方向対向面の少なくとも一方には、該フィルタに全周に亘って押し当てられる環状の圧縮リブが突出形成されているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが筒状とされた硬質部材の軸方向間において全周に亘って挟まれて圧縮されていることにより、それら硬質部材の間において液体の通過がフィルタによって一層効果的に防止される。しかも、硬質部材に圧縮リブが突出形成されていることにより、圧縮リブの形成部分においてフィルタが硬質部材により強く押し当てられて、フィルタの安定した保持などに起因する血液の通過制限作用をより有利に実現することができる。
【0025】
本発明の第9の態様は、前記第1~第8の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記接続コネクタが、前記内部流路を構成する流路を有するガイドコネクタと、該ガイドコネクタの先端部が挿入されて固定されるコネクタカバーとを含んで構成されており、該ガイドコネクタと該コネクタカバーとの間には隙間が設けられて、該隙間を含んで前記エア抜き通路が構成されているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、接続コネクタが、ガイドコネクタとコネクタカバーとを含んで構成されており、これらガイドコネクタとコネクタカバーとの間の隙間を含んでエア抜き通路が構成されていることから、コネクタカバーに対してガイドコネクタの先端部を挿入して固定することで、接続コネクタに対してエア抜き通路を容易に形成することができる。
【0027】
本発明の第10の態様は、前記第9の態様に係る止血弁付留置針であって、前記ガイドコネクタと前記コネクタカバーとの径方向間において前記フィルタが挟まれて圧縮された状態で装着されているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが、ガイドコネクタとコネクタカバーとの径方向間において挟まれて圧縮された状態で装着されることから、接続コネクタへのフィルタの装着が容易とされ得る。
【0029】
本発明の第11の態様は、前記第9又は第10の態様に係る止血弁付留置針において、前記ガイドコネクタの外周面には外周側に突出する係合突起が設けられている一方、前記コネクタカバーの周壁には径方向で貫通する係合孔が設けられており、該ガイドコネクタの先端部が該コネクタカバーに挿入されることで該係合突起が該係合孔に係合して、該ガイドコネクタと該コネクタカバーが相互に固定されていると共に、該係合孔が該ガイドコネクタと該コネクタカバーとの間の前記隙間に連通されているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、ガイドコネクタの外周面に設けられた係合突起が、コネクタカバーの周壁を貫通して設けられた係合孔に係合することでガイドコネクタとコネクタカバーとが相互に固定されることから、これらの組付後における、ガイドコネクタとコネクタカバーとの周方向の相対移動(相対回転)や軸方向の相対移動が防止され得る。特に、コネクタカバーの周壁に設けられた係合孔が、ガイドコネクタとコネクタカバーとの間の隙間、即ちエア抜き通路に連通していることから、内部流路内の空気が、係合孔を通じて外部空間に排出される。要するに、ガイドコネクタとの係合に利用する係合孔をエア抜きの孔(通路)としても巧く利用することができて、構造の簡略化や製造効率の向上が図られ得る。
【0031】
本発明の第12の態様は、前記第9~第11の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記コネクタカバーの内周面には凹溝が設けられており、該凹溝の開口部が前記止血弁で覆蓋されることで該止血弁と該コネクタカバーとで囲まれたトンネル状の通路が形成されていると共に、該トンネル状の通路を含んで前記エア抜き通路が構成されているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、コネクタカバーの内周面に設けられた凹溝の開口部が止血弁により覆蓋されることで止血弁とコネクタカバーとで囲まれたトンネル状の通路が形成されて、当該トンネル状の通路を含んでエア抜き通路が構成されることから、接続コネクタに対してエア抜き通路を容易に形成することができる。特に、止血弁をガイドコネクタとコネクタカバーとの間に設けることにより、例えばガイドコネクタの先端に止血弁を配置して、更にその先端側からコネクタカバーを被せることで、接続コネクタと止血弁とを組み付けることができて、接続コネクタへの止血弁の組付けと接続コネクタにおけるエア抜き通路の形成とが同時に、且つ容易に達成され得る。
【0033】
本発明の第13の態様は、前記第8~第12の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記フィルタが、気体は通過させるが液体を吸収する材質で構成されているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、フィルタが血液を吸収することで当該フィルタにおける血液の通過が阻止されており、フィルタ内に血液を積極的に保持することでエア抜き通路を通じての血液の漏出が防止され得る。
【0035】
本発明の第14の態様は、前記第1~第13の何れかの態様に係る止血弁付留置針に対して抜去可能な内針が前記内部流路の基端側から先端側に向かって挿通されていることを特徴とする留置針組立体である。
【0036】
本態様によれば、前記第1~第13の何れかの態様に記載の効果が発揮される留置針組立体が製造され得る。
【0037】
ところで、留置針の流体流路上に弾性弁体と軸方向に移動可能な押し子とを設けて、押し子の先端側および基端側への移動により弾性弁体を開閉せしめ、それに伴い流体流路を連通および遮断可能とした止血弁付留置針がある。本出願人は、かかる止血弁付留置針を、例えば特開2016-13359号公報(特許文献2)において、提案している。
【0038】
すなわち、上記特許文献2では、押し子の基端側から外部流路を押し込んで押し子を先端側に移動させることで、当該押し子が弾性弁体に挿入されて弾性弁体が押し開かれるようになっている。これにより、流体流路が連通されて輸液や採血などが実施される。一方、輸液や採血の終了時や中断時には、外部流路が抜去されることで、弾性弁体の弾性的な復元変形により押し子が基端側に移動せしめられて、弾性弁体が閉塞されるとともに流体流路が遮断されるようになっている。これにより、外部流路の抜去時における血液などの漏出が防止される。
【0039】
ここにおいて、流体流路の安定した遮断のために、弾性弁体の弾性的な復元作用に伴って押し子をより確実に基端側に移動させて弾性弁体を安定して閉塞せしめることが求められていた。
【0040】
上述の事情を背景として、本発明の第15の態様は、押し子が先端側に移動して弾性弁体に挿入されることで該弾性弁体が押し開かれるようになっていると共に、該弾性弁体に挿入された該押し子が該弾性弁体の復元作用で基端側に移動されることで該弾性弁体が閉塞されるようになっている止血弁付留置針であって、前記押し子における前記弾性弁体への挿入領域には、軸方向中間部分の外周面において先端側よりも傾斜角度の大きい急傾斜面が設けられていることを特徴とするものである。
【0041】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、押し子における弾性弁体への挿入領域において先端側よりも傾斜角度が大きくされた急傾斜面が設けられていることから、外部流路の接続時(押し子の先端側への移動時)に弾性弁体と急傾斜面とが相互に当接することで、例えば前記特許文献1に記載の止血弁付留置針(隔壁部材付きハブ組立体)のように押し子における挿入領域が単一の傾斜角度をもったテーパ面とされる場合に比べて、外部流路の抜去時において急傾斜面に及ぼされる弾性弁体の復元力における軸方向成分を大きくすることができる。これにより、押し子に対して基端側に移動させる力を安定して及ぼすことができて、押し子の基端側への移動、即ち弾性弁体の閉塞、および流体流路の遮断がより確実に実現され得る。また、押し子を先端側へ移動させる場合において、移動抵抗が少ない一方、押し子を基端側へ戻させる場合において、基端側へ移動させる力を大きく得ることができる。
【0042】
本発明の第16の態様は、前記第15の態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面の先端側に先端側傾斜面が先細形状をもって設けられているものである。
【0043】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、例えば外部流路の押込量、即ち押し子の先端側への移動量が小さく、外部流路の接続時(押し子の先端側への移動時)に急傾斜面と弾性弁体との当接量が小さい場合であっても、先細形状とされた先端側傾斜面と弾性弁体とが相互に当接することで、外部流路の抜去時において、弾性弁体の復元力が先端側傾斜面に有効に及ぼされて、押し子がより安定して基端側に移動され得る。
【0044】
本発明の第17の態様は、前記第15又は第16の態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面の基端側に基端側傾斜面が先細形状をもって設けられているものである。
【0045】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、例えば外部流路の押込量、即ち押し子の先端側への移動量が大きい場合であっても、基端側傾斜面に及ぼされる弾性弁体の復元力を利用することができて、押し子がより確実に基端側に移動され得る。
【0046】
本発明の第18の態様は、前記第15~第17の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面が先細形状とされているものである。
【0047】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、例えば急傾斜面が軸直角方向に広がる場合に比べて、押し子の挿入領域において軸方向に対する角度変化が小さくされることから、弾性弁体の弾性変形がより滑らかに実現されるとともに、弾性弁体への挿入抵抗の低減が図られ得る。また、押し子が先端側に移動して弾性弁体が弾性変形した際に、押し子の急傾斜面と弾性弁体との間に隙間が発生するおそれが低減されて、急傾斜面と弾性弁体との当接面積を大きく確保することができることから、弾性弁体の復元力をより確実に急傾斜面に及ぼすことができる。
【0048】
本発明の第19の態様は、前記第15~第18の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面が一定の傾斜角度を有しているものである。
【0049】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、押し子が先端側に移動して弾性弁体が弾性変形した際の、押し子の急傾斜面と弾性弁体との間の隙間を小さくすることも可能であり、急傾斜面と弾性弁体との当接面積を大きく確保して、弾性弁体の復元力をより確実に急傾斜面に及ぼすこともできる。
【0050】
本発明の第20の態様は、前記第15~第19の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面の先端側と基端側とに先端側傾斜面と基端側傾斜面とがそれぞれ先細形状をもって設けられており、該先端側傾斜面の傾斜角度が、該基端側傾斜面の傾斜角度よりも大きいものである。
【0051】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、先細形状とされた先端側傾斜面および基端側傾斜面を設けることで、前記第16および第17の態様の効果が両立して発揮され得る。すなわち、外部流路の押込量(押し子の先端側への移動量)の大小に拘らず、外部流路の抜去時において押し子を安定して基端側に移動させることができる。特に、先端側傾斜面の傾斜角度を基端側傾斜面の傾斜角度より大きく設定することで、先端側傾斜面に弾性弁体の復元力が安定して及ぼされるとともに、基端側傾斜面、ひいては挿入領域の軸方向寸法が十分に確保され得る。
【0052】
本発明の第21の態様は、前記第15~第20の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面の先端側と基端側とに先端側傾斜面と基端側傾斜面とがそれぞれ先細形状をもって設けられており、該急傾斜面と該先端側傾斜面と該基端側傾斜面が、何れも一定の傾斜角度を有しているものである。
【0053】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、挿入領域を全体として略先細形状として形成することも可能であり、弾性弁体への挿入抵抗を低減させることもできる。また、弾性弁体の弾性変形時において、挿入領域の略全体と弾性弁体とを略隙間なく当接させることも可能となり、弾性弁体の復元力を押し子に、より安定して及ぼすこともできる。
【0054】
本発明の第22の態様は、前記第15~第21の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記弾性弁体と前記押し子とが収容配置される筒状のハウジングを備えている一方、該押し子における前記挿入領域よりも基端側の外周面には当接部が設けられていると共に、該ハウジングの内周面には係合突部が設けられており、これら当接部と係合突部との当接によって該押し子の基端側への移動が規制されているものである。
【0055】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、外部流路の抜去時における押し子の基端側への移動規制機構が設けられる。すなわち、前記第15の態様が採用されることにより外部流路の抜去時において押し子が基端側に移動し易くなるが、本態様の如き移動規制機構を設けることで、外部流路の抜去時におけるハウジングからの押し子の抜落ちが効果的に防止され得る。
【0056】
本発明の第23の態様は、前記第15~第22の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記弾性弁体と前記押し子とが収容配置される筒状のハウジングを備えており、該ハウジングが、相互に内外挿されて組み付けられる外周側ハウジングと内周側ハウジングとを含んで構成されている一方、該弾性弁体の外周部分には基端側に突出する筒状支持部が設けられており、該筒状支持部を該外周側ハウジングと該内周側ハウジングとで径方向で挟み込んだ圧縮状態で該弾性弁体が該ハウジングにより支持されているものである。
【0057】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、ハウジングを外周側ハウジングと内周側ハウジングとの分割構造として、弾性弁体をこれら外周側ハウジングと内周側ハウジングとの間で挟み込んで支持することで、弾性弁体のハウジングへの組付けが容易とされ得る。特に、弾性弁体に、基端側に突出する筒状支持部を設けて、当該筒状支持部を外周側ハウジングと内周側ハウジングとの径方向間において圧縮状態で支持することで、外部流路の接続時、即ち弾性弁体に対して押し子を基端側から挿入する際の、ハウジングからの弾性弁体の抜落ちが効果的に防止され得る。
【0058】
本発明の第24の態様は、前記第15~第23の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記急傾斜面の傾斜角度が25度~75度の範囲内に設定されているものである。
【0059】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、急傾斜面の傾斜角度を上記範囲内に設定することで、弾性弁体の弾性的な復元力を、押し子に対して基端側への移動力として効率的に及ぼすことができる。
【0060】
本発明の第25の態様は、前記第15~第24の何れかの態様に係る止血弁付留置針において、前記押し子の先端部分の外周面には前記急傾斜面を含んで構成される先細形状のテーパ状外周面が設けられており、該押し子における該テーパ状外周面の形成部分の軸方向寸法が4mm以上とされているものである。
【0061】
本態様に従う構造とされた止血弁付留置針によれば、押し子の先端部分に上記寸法以上とされたテーパ状外周面を設けることで、例えば前記第16の態様に記載の先端側傾斜面および/または前記第17の態様に記載の基端側傾斜面を、それぞれ十分な軸方向寸法をもって形成することも可能となり、前記第16および/または第17の態様に記載の効果をより安定して発揮させることもできる。
【発明の効果】
【0062】
本発明に従う構造とされた止血弁付留置針および留置針組立体によれば、フィルタが、エア抜き通路上に圧縮された状態で装着されることにより、安定したエア抜き作用が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の第1の実施形態としての止血弁付留置針を示す斜視図。
図2図1に示された止血弁付留置針の縦断面図。
図3図2における要部を拡大して示す縦断面図。
図4図3におけるIV-IV断面図。
図5図3におけるV-V断面図。
図6図3におけるVI-VI断面図。
図7図1に示された止血弁付留置針を含んで構成される留置針組立体の具体的な一例を示す斜視図。
図8図7に示された留置針組立体の縦断面図。
図9図8における要部を拡大して示す縦断面図。
図10】本発明の第2の実施形態としての止血弁付留置針を示す縦断面図。
図11図10における要部を拡大して示す縦断面図。
図12図10における要部を拡大して示す縦断面図であって、内部流路の連通状態を示す図。
図13】本発明の第3の実施形態としての止血弁付留置針を外部流路の接続前の状態で示す斜視図。
図14図13に示された止血弁付留置針の縦断面図。
図15図14における要部を拡大して示す縦断面図。
図16図15における更に要部を拡大して示す縦断面図。
図17図13に示された止血弁付留置針を外部流路の接続状態で示す縦断面図。
図18図17における要部を拡大して示す縦断面図。
図19図18における更に要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0065】
先ず、図1~6には、本発明の第1の実施形態としての止血弁付留置針10が示されている。この止血弁付留置針10は、先端側に中空針としてのカニューラ12を備えているとともに、当該カニューラ12の基端側に、外部流路が接続されるハウジングとしての接続コネクタ14を備えており、かかる接続コネクタ14の内部には止血弁(弾性弁体)としてのディスク弁16が収容配置されている。そして、これらカニューラ12と接続コネクタ14の内部を含んで内部流路18が構成されている。かかるカニューラ12が患者の血管に経皮的に挿し入れられて留置されることにより、内部流路18を通じて輸液や採血が行われるようになっているとともに、接続コネクタ14への外部流路の接続と抜去に伴い、ディスク弁16の開放と閉塞、即ち内部流路18の連通と遮断とが切り換えられるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、各部材の中心軸方向であって、中空針であるカニューラ12の針軸方向に略相当し、長さ方向である図2中の左右方向をいう。また、先端側とは、カニューラ12の穿刺される側である図2中の左側をいう一方、基端側とは、使用者が操作する側である図2中の右側をいう。
【0066】
より詳細には、カニューラ12は、本実施形態では、軟質の合成樹脂により形成されており、先端部分の外周面は、先端側に向かって次第に外径寸法が小さくなるテーパ状外周面20とされている。また、カニューラ12の先端部分の周壁には、複数の貫通孔22が形成されており、当該貫通孔22を通じて血液などがカニューラ12内へ流入し易くされている。なお、カニューラ12の材質は、軟質の合成樹脂に限定されるものではなく、例えば金属製であってもよい。
【0067】
かかるカニューラ12の基端部分は、針ハブ24により固定支持されている。この針ハブ24は略筒状の周壁26を備えており、例えば硬質の合成樹脂により形成される。そして、かかる針ハブ24にカニューラ12が挿通されて、カニューラ12の基端部分が針ハブ24に接着や溶着などにより固着されることで、針ハブ24から先端側にカニューラ12が延び出している。
【0068】
この針ハブ24の基端側には弾性チューブ28が接続されている。当該弾性チューブ28は、例えば軟質の合成樹脂により形成されて、弾性チューブ28の先端部分が、針ハブ24の基端側開口部において針ハブ24の周壁26とカニューラ12とにより挟まれて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針ハブ24の基端側に弾性チューブ28が接続されている。これにより、針ハブ24に対してカニューラ12や弾性チューブ28が強固に固定されている。
【0069】
かかる弾性チューブ28の基端部分が、接続コネクタ14の先端部分に固着されている。この接続コネクタ14は、全体として略筒形状とされており、接続コネクタ14の先端側開口部から弾性チューブ28の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着の処理が施されることにより、弾性チューブ28と接続コネクタ14とが接続されている。すなわち、かかる接続コネクタ14の先端部分が、弾性チューブ28が接続されるチューブ接続部30とされている。
【0070】
そして、これらカニューラ12、弾性チューブ28、接続コネクタ14(特に接続コネクタ14の内部に設けられる後述する押し子90)のそれぞれの内孔により、カニューラ12から接続コネクタ14に至る内部流路18が構成されている。
【0071】
本実施形態の接続コネクタ14は、何れも略円筒形状とされた外周側ハウジングとしてのコネクタカバー32と内周側ハウジングとしてのガイドコネクタ34とが軸方向で相互に連結固定された形状とされている。すなわち、コネクタカバー32の基端側にガイドコネクタ34の先端側が挿し入れられて組み付けられることでガイドコネクタ34の先端部にコネクタカバー32が固定されて、接続コネクタ14が構成されており、接続コネクタ14の周壁が、コネクタカバー32の周壁36とガイドコネクタ34の周壁38とから構成されている。また、ガイドコネクタ34の周壁38において、コネクタカバー32に挿し入れられる先端側の部分が、略円筒状の挿入部40とされている。また一方、コネクタカバー32の周壁36において、ガイドコネクタ34の挿入部40が挿し入れられる基端側の部分が、略円筒状の被挿入部42とされている。
【0072】
そして、かかるガイドコネクタ34の基端が、コネクタカバー32よりも、所定の軸方向寸法をもって基端側に延び出している。それ故、接続コネクタ14の周壁は、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との連結部分である挿入部40と被挿入部42との内外挿部分で二重壁構造とされている一方、接続コネクタ14の先端側の周壁がコネクタカバー32の周壁36で構成されているとともに、接続コネクタ14の基端側の周壁がガイドコネクタ34の周壁38で構成されている。すなわち、コネクタカバー32の内周面44における基端部分(被挿入部42における内周面)44aとガイドコネクタ34の外周面46における先端部分(挿入部40における外周面)46aとが相互に重ね合わされることで、上記コネクタカバー32とガイドコネクタ34とが連結されて二重壁構造とされている部分が構成されている。
【0073】
コネクタカバー32は、硬質の合成樹脂により形成されており、略筒状の周壁36を備えている。かかる周壁36の軸方向中間部分における内周面44には、環状壁部48が内周側に突出して形成されている。そして、コネクタカバー32の先端側開口部から挿入された弾性チューブ28の基端が環状壁部48の先端面に当接しており、コネクタカバー32における環状壁部48よりも先端側の部分により、弾性チューブ28が接続されるチューブ接続部30が構成されている。
【0074】
かかるコネクタカバー32において、先端側であるチューブ接続部30では、内径寸法および外径寸法が、軸方向の略全長に亘って略一定とされている。また、基端側である被挿入部42では、内径寸法および外径寸法が、チューブ接続部30よりも大きくされており、軸方向の略全長に亘って略一定とされている。
【0075】
さらに、コネクタカバー32の周壁36における被挿入部42において、径方向1方向の両側(図2中の上下方向両側)には、周壁36を厚さ方向(径方向)で貫通する一対の係合孔50,50が形成されている。これらの係合孔50,50は、それぞれ平面視における形状が略矩形状とされており、1/2周に満たない周方向寸法をもって形成されている。また、コネクタカバー32の周壁36において、これら一対の係合孔50,50を周方向で外れた位置には、基端側開口部52の開口縁から軸方向内方(先端側)に向かって延びる切欠き54が形成されている。本実施形態では、一対の係合孔50,50の対向方向と直交する方向の両側(図2中の紙面手前奥方向両側)に一対の切欠き54,54が、所定の幅寸法をもって形成されている。
【0076】
更にまた、コネクタカバー32の被挿入部42における内周面44において、基端側開口部52には、一対の傾斜面56,56が形成されている。これら傾斜面56,56は、係合孔50,50の対向する方向と同方向(図2中の上下方向両側)に形成されており、基端側に向かって周壁36の厚さ寸法が次第に小さくなっている。そして、かかる傾斜面56,56と、当該傾斜面56,56の周方向両側の壁部により、コネクタカバー32の基端側開口部52には、内周側に開口する一対の傾斜溝58,58が形成されている。なお、傾斜面56,56の幅方向寸法は、係合孔50,50の幅方向寸法と略等しくされており、係合孔50,50と傾斜溝58,58とが、コネクタカバー32の周壁36において、周上の対応する位置で周上部分的に形成されている。すなわち、傾斜溝58,58の先端側に係合孔50,50が形成されている。
【0077】
また、図4にも示されているように、コネクタカバー32の内周面44には、環状壁部48の基端面48aにおいて径方向に延びると共に更に当該基端面48aから基端側に延びる凹溝60が形成されている。この凹溝60は、略矩形断面を有しており、環状壁部48の基端面48aにおいては基端側に開口していると共に周壁36の内周面44においては内周側に開口している。本実施形態では、4つの凹溝60,60,60,60が、周上で略等間隔に形成されており、一対の凹溝60,60が、係合孔50,50と周上で対応する位置に形成されているとともに、もう一対の凹溝60,60が、切欠き54,54と周上で対応する位置に形成されている。そして、これら凹溝60,60,60,60がそれぞれ、所定の軸方向寸法をもって形成されている。
【0078】
一方、ガイドコネクタ34は、硬質の合成樹脂により形成されており、コネクタカバー32の周壁36よりも小径の周壁38を備えている。この周壁38は、内径寸法が軸方向の略全長に亘って略一定とされている一方、外径寸法が軸方向で変化している。
【0079】
すなわち、ガイドコネクタ34(周壁38)の内周面62において、軸方向中間部分には、係合突部としての環状の係合壁部64が内周側に突出して形成されている。そして、かかるガイドコネクタ34の内周面62において、係合壁部64よりも先端側は、後述する押し子90の軸方向移動をガイドする案内面66とされており、内径寸法が略一定とされている。一方、係合壁部64よりも基端側は、内径寸法が基端側へ向かって次第に大きくなるテーパ状面68とされている。
【0080】
また、ガイドコネクタ34の外周面46における先端部分46a、即ち挿入部40における外周面46aは、先端側に向かって段階的に小径となっている。すなわち、挿入部40における基端側には、外径寸法が略一定とされた当接部70が設けられており、当該当接部70における外径寸法が、被挿入部42における内径寸法と略等しくされている。
【0081】
さらに、挿入部40の外周面46aにおいて、軸方向中間部分には、径方向に広がる環状の段差面72が形成されている。すなわち、段差面72よりも基端側が上記当接部70とされているとともに、段差面72よりも先端側が、当接部70よりも外径寸法の小さくされた環状支持部74とされている。当該環状支持部74は所定の軸方向寸法を有しており、更に先端側に、より外径寸法の小さくされた挿入筒部76が形成されている。
【0082】
更にまた、挿入部40の外周面46aにおける、当接部70の外周面には、外周側に突出する係合突起78が設けられている。本実施形態では、径方向1方向の両側(図2中の上下方向両側)に、一対の係合突起78,78が形成されている。これら係合突起78,78の平面視における形状は、コネクタカバー32における係合孔50,50と略対応する略矩形状とされている。そして、係合突起78,78の先端側端面が、先端側に向かって係合突起78,78の突出高さが次第に小さくなる傾斜面80,80とされている一方、基端側端面が、略軸直角方向に広がる垂直面82,82とされている。なお、係合突起78,78における傾斜面80,80の軸方向に対する傾斜方向は、傾斜溝58,58における傾斜面56,56の軸方向に対する傾斜方向と等しくされている。本実施形態では、これら両傾斜面56,80の軸方向に対する傾斜角度も略等しくされており、傾斜面56と傾斜面80とが軸方向で相互に略平行とされている。かかる係合突起78や係合孔50の個数は、2つ(一対)に限定されるものではなく、周上で1つまたは3つ以上設けられてもよい。
【0083】
また、図5にも示されているように、当接部70の外周面において、係合突起78,78の先端側には、外周側に開口する凹部83,83が形成されている。これらの凹部83,83は、係合突起78,78と略等しい周方向寸法を有しており、当接部70の外周面において係合突起78,78よりも先端側の全長に亘って形成されている。すなわち、これら凹部83,83が、先端側に開放されている。かかる凹部83,83が設けられていることにより、当接部70の外径寸法が、凹部83,83の形成位置以外では被挿入部42における内径寸法と略等しくされている一方、凹部83,83の形成位置では、被挿入部42における内径寸法よりも、凹部83,83の深さ寸法(径方向寸法)分だけ小さくされている。
【0084】
さらに、挿入部40の外周面46aにおいて、一対の係合突起78,78の対向する方向と直交する方向の両側(図2中の紙面手前奥方向の両側)には、コネクタカバー32における切欠き54,54と略対応する形状とされた一対の位置決め突起84,84が突出形成されている。
【0085】
なお、ガイドコネクタ34において、挿入部40よりも基端側は、挿入部40よりも小さい外径寸法をもって略ストレートに延びているとともに、基端側開口部86には、外周側に突出する略環状のフランジ部88が形成されている。当該フランジ部88の外周面には雄ねじが形成されており、後述する外部流路の接続時において、ルアーロックタイプの外部流路を接続することが可能とされている。
【0086】
かかる形状とされたガイドコネクタ34の内周側には、中央に軸方向に貫通する内孔89を備える筒状の押し子90が収容されている。なお、後述するように、当該押し子90の内孔89を含んで止血弁付留置針10の内部流路18が構成されることから、換言すれば、ガイドコネクタ34が、内部流路18を構成する流路(押し子90の内孔89)を備えている。この押し子90の内径寸法は、軸方向の略全長に亘って略一定とされている一方、押し子90の外周面には、軸直角方向に広がる環状の段差面(当接部)92が形成されている。そして、押し子90の外周面において、当該段差面92よりも先端側が、先端側に向かって次第に小径となるテーパ状外周面94とされている一方、段差面92よりも基端側が、略一定の外径寸法とされたストレート状外周面96とされている。なお、テーパ状外周面94の基端側部分における最大外径寸法は、ストレート状外周面96の外径寸法より大きくされている。また、押し子90のディスク弁16への挿入領域に設けられたテーパ状外周面94は、先細形状とされた急傾斜面97を軸方向の中間部分に備えており、急傾斜面97の軸方向に対する傾斜角度が、テーパ状外周面94における急傾斜面97よりも先端側(先端側傾斜面)の傾斜角度に比べて大きくされていると共に、テーパ状外周面94における急傾斜面97よりも基端側(基端側傾斜面)の傾斜角度に比べて大きくされている。
【0087】
ここで、接続コネクタ14の内部において、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との間には、ディスク弁16が収容配置されている。このディスク弁16は、略円板形状とされており、ゴムやエラストマーなどの弾性を有する材質により形成されている。そして、ディスク弁16の中央部分98には、軸方向で貫通するスリット100が形成されている。このスリット100の形状は限定されるものではないが、本実施形態では、周方向の三方に略均等(略120°毎)に延びる放射状とされている。なお、接続コネクタ14に組み付けられる以前のディスク弁16の単品状態では、ディスク弁16の外径寸法がコネクタカバー32の内径寸法より大きくされており、接続コネクタ14に組み付けられることで、ディスク弁16に対して例えば外周側から内周側に向かって径方向の押圧力が及ぼされて、スリット100が安定して閉塞状態とされるようになっている。すなわち、接続コネクタ14の内周面にディスク弁16の外周面を径方向に押圧する押圧部が設けられている。本実施形態では、単品状態におけるディスク弁16の先端部分の外径寸法がコネクタカバー32の内径寸法より大きくされており、接続コネクタ14に組み付けられることで、ディスク弁16に対して例えば外周側から内周側に向かって径方向の押圧力が及ぼされて、スリット100が安定して閉塞状態とされるようになっている。ここにおいて、ディスク弁16の基端部分(後述する筒状支持部102の基端部)の外径寸法は、全周に亘ってまたは周上で部分的にコネクタカバー32の内径寸法より小さくされている。これにより、ディスク弁16の基端部分においてディスク弁16とコネクタカバー32との径方向間には、内部空間とされた肉盗み部101が設けられている。よって、ディスク弁16を接続コネクタ14に組み付ける際にディスク弁16の先端部分が押圧されることでディスク弁16の基端部分が径方向に広がるように変形する力が及ぼされた場合でも、肉盗み部101により圧縮力の逃げ場が用意されているため、ディスク弁16の組付けが容易となる。
【0088】
かかるディスク弁16の外周部分には、基端側に延びる筒状支持部102が設けられている。また、ディスク弁16の基端側面104における外周部分において、筒状支持部102よりも内周側には、周方向の全周に亘って連続して延びるとともに基端側に開口する環状の周溝106が形成されている。
【0089】
以上の如き構造とされたコネクタカバー32とガイドコネクタ34とを含んで接続コネクタ14が構成されており、当該接続コネクタ14の内部に、ディスク弁16および押し子90が組み付けられている。
【0090】
すなわち、ガイドコネクタ34の先端側開口部から押し子90が挿入されて配設される。その際、押し子90の基端位置は、ガイドコネクタ34の内周面62に設けられた係合壁部64と、押し子90の外周面に設けられた段差面92とが相互に当接することで規定される。また、かかる押し子90の収容状態では、押し子90のストレート状外周面96と係合壁部64の内周面とが当接しているか僅かに離隔しているとともに、押し子90のテーパ状外周面94の基端部分における外周面とガイドコネクタ34の案内面66とが当接しているか僅かに離隔している。これにより、押し子90が、ガイドコネクタ34の内周面62に案内されつつ、軸方向で移動可能とされている。
【0091】
そして、かかるガイドコネクタ34の先端部分において、ディスク弁16の筒状支持部102が被せられて支持されている。すなわち、ディスク弁16の基端側面104に設けられた周溝106内に、ガイドコネクタ34の先端となる挿入筒部76の先端部分が挿入されている。本実施形態では、挿入筒部76の先端部分の内外周面が、周溝106の内面を構成する内外周面にそれぞれ当接しているか、僅かに離隔している。なお、挿入筒部76の先端面と周溝106の溝底面との軸方向間には隙間が設けられてもよい。
【0092】
また、ディスク弁16の筒状支持部102における内周面が挿入筒部76の外周面に当接しており、ディスク弁16の基端側に対してガイドコネクタ34の先端部分が嵌め入れられている。そして、本実施形態では、かかるディスク弁16の支持状態において、ディスク弁16の基端側面104に対して押し子90の先端が当接しており、押し子90が、ディスク弁16と係合壁部64との軸方向間で位置決めされている。なお、押し子90の先端は、必ずしもディスク弁16の基端側面104と当接する必要はなく、押し子90の先端とディスク弁16の基端側面104とが軸方向で相互に離隔していてもよい。
【0093】
かかるディスク弁16の先端側からコネクタカバー32が組み付けられている。すなわち、先端にディスク弁16を被せて支持した状態でガイドコネクタ34の先端部分をコネクタカバー32の基端側開口部52から挿入して、ガイドコネクタ34の係合突起78,78をコネクタカバー32の係合孔50,50に係合させることにより、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とが軸方向で直列的に略同一中心軸上で連結固定される。なお、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との組付状態において、係合突起78,78の先端側端面である傾斜面80,80と、係合孔50,50の内面を構成する先端側内面50a,50aとの軸方向間には隙間108,108が形成されている。
【0094】
本実施形態では、係合突起78,78の先端側端面が傾斜面80,80とされていることから、係合孔50,50内への係合突起78,78の嵌まり込みが容易とされている。また、係合突起78,78の基端側端面が垂直面82,82とされていることから、係合孔50,50からの係合突起78,78の抜出し、即ちコネクタカバー32からのガイドコネクタ34の抜出しが防止されている。
【0095】
また、本実施形態では、コネクタカバー32の基端側開口部52には、傾斜面56,56を含んで構成される傾斜溝58,58が形成されていることから、コネクタカバー32へのガイドコネクタ34の挿入に際して、傾斜溝58,58に係合突起78,78が差し入れられることで、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との周方向の相対回転が防止され得る。また、傾斜面56,56の案内作用によって係合突起78,78が安定して係合孔50,50まで案内されることから、係合突起78,78がより確実に係合孔50,50に係合され得る。
【0096】
更にまた、ガイドコネクタ34をコネクタカバー32に挿入する際、コネクタカバー32の基端側開口部52に設けられた切欠き54,54にガイドコネクタ34の位置決め突起84,84を挿入することにより、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とが周方向で容易に位置決めされて、係合突起78,78が一層確実に係合孔50,50に係合され得る。
【0097】
かかるコネクタカバー32とガイドコネクタ34との組付状態において、ガイドコネクタ34の挿入部40に設けられた当接部70は、凹部83,83の形成位置以外においては、その外径寸法が、コネクタカバー32における被挿入部42の内径寸法と略等しくされていることから、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とが、略隙間なく当接するようになっている。一方、凹部83,83の形成位置では、当接部70の外径寸法が小さくされていることから、凹部83,83の外周側開口部がコネクタカバー32で覆蓋されることにより、図5にも示されているように、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間に、軸方向に延びる隙間110,110が形成されている。当該隙間110,110は、その基端において、係合孔50,50に連通されており、具体的には、係合突起78,78と係合孔50,50との隙間108,108に連通されている。要するに、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間の隙間110,110が、係合孔50,50(隙間108,108)を介して、外部空間に連通されている。
【0098】
さらに、ガイドコネクタ34において、当接部70よりも先端側には、当接部70よりも外径寸法の小さい環状支持部74が形成されている。これにより、図6にも示されているように、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とが組み付けられることで、コネクタカバー32の周壁36と環状支持部74との径方向間には、略環状の収容領域112が形成されている。そして、当該収容領域112が、その基端側に位置するコネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間の隙間110,110に連通されている。本実施形態では、かかる収容領域112が、所定の径方向幅寸法A(図6参照)をもって形成されている。
【0099】
そして、かかるコネクタカバー32とガイドコネクタ34との組付状態では、ディスク弁16の外周部分が、相互に組み付けられたコネクタカバー32とガイドコネクタ34との間で軸方向および軸直角方向に位置決めされて保持されることにより、ディスク弁16が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とに嵌め合わされた嵌合状態で組み付けられている。すなわち、ディスク弁16の外周部分が、コネクタカバー32に設けられた環状壁部48の基端面48aとガイドコネクタ34の先端部分である挿入筒部76との軸方向間で挟持されている。また、ディスク弁16において基端側に突出する筒状支持部102が、コネクタカバー32の周壁36と挿入筒部76との径方向間において、好適には圧縮状態で挟持されている。さらに、ディスク弁16が、コネクタカバー32の周壁36により、径方向内方に圧縮されて組み付けられている。なお、ディスク弁16における筒状支持部102の基端面と、後述するフィルタ120の先端面とは、軸方向で略隙間なく当接している。
【0100】
このように、コネクタカバー32の内周面44に対して、ディスク弁16の外面が重ね合わされることで、図4にも示されているように、コネクタカバー32の内周面44に設けられた凹溝60,60,60,60の開口部114,114,114,114がディスク弁16の外面により覆蓋されて、ディスク弁16とコネクタカバー32とで囲まれたトンネル状の通路116,116,116,116が形成されている。すなわち、当該トンネル状の通路116,116,116,116の先端側が、環状壁部48の内周面に開口して、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側(カニューラ12側)に連通しているとともに、基端側が収容領域112に連通されている。なお、コネクタカバー32の内周面44に対して、ディスク弁16の外周面が圧縮状態で重ね合わされることで、これら重ね合わせ面における凹溝60,60,60,60の形成位置以外の部分が、液密的に封止されている。
【0101】
これにより、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側の空間が、トンネル状の通路116,116,116,116、収容領域112、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との隙間110,110および隙間108,108を通じて、外部空間に連通されている。換言すれば、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側(カニューラ12側)の空間を外部空間に連通するエア抜き通路118が、接続コネクタ14の内部において、トンネル状の通路116,116,116,116、収容領域112、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との隙間110,110および隙間108,108を含んで構成されている。このエア抜き通路118は、接続コネクタ14を構成するコネクタカバー32の周壁36に開口する係合孔50,50を通じて外部空間に連通されており、係合孔50,50が本実施形態の空気流出口とされている。
【0102】
ここにおいて、図6にも示されているように、エア抜き通路118上に位置する収容領域112には、フィルタ120が設けられている。このフィルタ120は、全体として略筒状とされており、本実施形態では、フィルタ120の先端面における外周部分がエア抜き通路118(トンネル状の通路116,116,116,116)に露出しているとともに、フィルタ120の外周面における基端部分がエア抜き通路118(隙間110,110)に露出している。そして、このフィルタ120は、気体は通過させるが液体は通過させない性質を有している。かかるフィルタ120としては、上記性質を有していれば何等限定されるものではないが、例えばポリエチレン等の高分子材料と親水性、水溶性または水膨潤性ポリマーを含む材料とを焼結してなる焼結多孔体や、疎水性不織布、多孔質体等が好適に採用され得る。特に、フィルタ120として、高吸水性高分子(SAP)を含有する焼結体が採用される場合には、水分がフィルタ120に触れるまでの初期状態では気体を通過させるとともに、水分がフィルタ120に触れると水と反応して(水分を吸収して)膨潤することで通過を阻止するから、後述するエア抜きおよび血液の漏出防止効果が安定して発揮され得る。なお、本実施形態のフィルタ120は、全体が環状(筒状)の嵌着部とされている。
【0103】
このフィルタ120の、接続コネクタ14に組み付けられる以前の単品状態における径方向幅寸法B(図6において二点鎖線で図示)は、収容領域112における径方向幅寸法Aより大きくされている。すなわち、ガイドコネクタ34における環状支持部74の外周側に略筒状のフィルタ120が外挿されるとともに、かかるガイドコネクタ34の先端部分がコネクタカバー32に挿入されることで、フィルタ120が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とにより径方向で挟まれて圧縮された状態で装着されるようになっている。要するに、フィルタ120が、環状支持部74の外周面と、コネクタカバー32の内周面44(44a)との径方向対向面に対して押し付けられた状態で組み付けられている。これにより、本実施形態では、フィルタ120を径方向に挟持する硬質部材が、接続コネクタ14を構成するコネクタカバー32とガイドコネクタ34によって構成されている。また、フィルタ120は、ディスク弁16の基端面とガイドコネクタ34の段差面72との軸方向対向面に対しても当接した状態で組み付けられており、好適にはこれらの面により軸方向でも圧縮された状態で組み付けられる。特に、本実施形態では、フィルタ120の軸方向両側面および径方向両側面は、各押付面に対して、それぞれ半分以上の面積をもって押し付けられている。
【0104】
なお、これらコネクタカバー32、ガイドコネクタ34、ディスク弁16、押し子90およびフィルタ120の組付けを、先端側を上方にして組み付けることにより、組付時におけるガイドコネクタ34からのディスク弁16の脱落などが効果的に防止されて、組付効率の向上が図られ得る。本実施形態では、コネクタカバー32において、フィルタ120を挟持する部分の内径が、基端側の開口部の内径よりも小さくされており、挟持部分と基端開口部分との間に傾斜段差面121が形成されていると共に、当該傾斜段差面121が先細のテーパ形状とされている。これにより、ガイドコネクタ34に外嵌状態で取り付けられたフィルタ120を、コネクタカバー32の内周へ押し込む際に、フィルタ120が傾斜段差面121に接して案内されることで、フィルタ120の縮径変形態様の安定化が図られて、目的とする挟持状態でフィルタ120を配設することができる。
【0105】
以上の如きカニューラ12と針ハブ24と弾性チューブ28と接続コネクタ14を軸方向で連結することにより、本実施形態の止血弁付留置針10が構成されている。かかる止血弁付留置針10は、例えば止血弁付留置針10を外針ユニットとして、針先を備える内針を含んで構成される内針ユニットが挿通されることで止血弁付きの留置針組立体として使用される。または、カニューラ12が、針先を有する金属製などの中空針とされることで、止血弁付留置針10を患者の血管に直接穿刺して留置することも可能である。
【0106】
図7~9には、本発明に係る留置針組立体の具体的な一例が示されている。本実施形態の留置針組立体122は、止血弁付留置針10を外針ユニットとして、当該外針ユニット10の内部流路18に、内針ユニット124が基端側から先端側に向かって挿通されることで構成されている。
【0107】
すなわち、内針ユニット124は、先端に鋭利な針先126を有する内針128と、内針128の基端に取り付けられた内針ハブ130と、内針128に対して針軸方向に移動可能に装着された針先プロテクタ132とを備えている。
【0108】
本実施形態では、内針128は中空針であり、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン又はそれらの合金等の公知の材料から形成されている。内針128の先端に設けられた針先126には、針軸方向に対して傾斜する刃面134が形成されており、生体への穿刺が容易且つ低刺激で行い得るようになっている。また、内針128の先端部分の外周面には、外径寸法が大きくされた大径部136が形成されている。かかる大径部136は、内針128がセンタレス加工により製造されることで周方向の全周に亘って形成されてもよいが、本実施形態では、内針128に対して潰し加工が施されることで、径方向1方向の両側(図8中の上下方向両側)に一対形成されている。
【0109】
一方、内針128の基端に取り付けられた内針ハブ130は、内針128の基端が埋設状態で固定された略円柱形状の台座部138と、台座部138の先端から当該台座部138よりも大きな外径寸法をもって突出する略円筒形状のプロテクタ収容部140と、台座部138の基端から突出する略円筒形状の連結部142が、合成樹脂により一体成形された構造とされている。なお、プロテクタ収容部140の先端には、より大径とされた略円筒形状のキャップ収容部144が形成されている。
【0110】
さらに、連結部142の基端側開口部には、内針キャップ146が離脱可能に組み付けられている。内針キャップ146は、針軸方向中間部分に段差部が設けられた略段付円筒形状の合成樹脂部材とされている。なお、内針キャップ146の内部には図示しない通気フィルタが設けられており、当該通気フィルタが、気体は透過するが液体は遮断する性質を有している。かかる通気フィルタとしては、例えば接続コネクタ14内部のエア抜き通路118上に設けられるフィルタ120と同様の材質のものが採用され得る。かかる内針キャップ146が連結部142に組み付けられることにより、内針ハブ130の基端側開口部が液密に覆蓋されており、内針128を通じての逆血が外部に漏れ出さないようになっている。また、内針ハブ130や内針キャップ146が透明な部材で製造されることにより、逆血(フラッシュバック)の確認を容易に行うことができる。
【0111】
内針ユニット124の針先プロテクタ132は、略円筒形状のプロテクタ本体148を含んで構成されている。このプロテクタ本体148は、先端部分が基端部分に比べて大径とされており、即ち先端側の大径筒部150と、基端側の小径筒部152と、これら大径筒部150と小径筒部152とを連結するテーパ筒部154とを含んで構成されている。また、かかるプロテクタ本体148の基端側開口部(小径筒部152の基端側開口部)は、軸直角方向に広がる底壁156により閉塞されている。この底壁156の中央には針軸方向に貫通する基端側針挿通孔158が形成されているとともに、底壁156の先端側端面には金属製の係止リング160が固着されている。なお、これら基端側針挿通孔158および係止リング160の内径寸法は、内針128における大径部136,136の外径寸法よりも小さくされているとともに、内針128における大径部136,136以外の部分における外径寸法よりも大きくされている。
【0112】
一方、プロテクタ本体148の先端側開口部(大径筒部150の先端側開口部)は、全体として略平板形状とされた蓋体162が組み付けられることによって閉塞されている。この蓋体162の基端側には中間部分針挿通孔164が針軸方向で貫通して形成されているとともに、先端側には先端側針挿通孔166が針軸方向で貫通して形成されており、これら中間部分針挿通孔164と先端側針挿通孔166とが針軸方向で相互に所定の離隔距離を有して設けられている。なお、これら中間部分針挿通孔164および先端側針挿通孔166の内径寸法は、内針128における大径部136,136の外径寸法よりも大きくされている。また、基端側針挿通孔158から中間部分針挿通孔164までの針軸方向の長さ寸法は、内針128における大径部136,136から針先126までの長さ寸法と略等しいか、より大きくされている。そして、針先プロテクタ132における基端側針挿通孔158、中間部分針挿通孔164、先端側針挿通孔166に内針128の大径部136,136より基端側が挿通されることにより、針先プロテクタ132が内針128に対して針軸方向で移動可能に外挿装着されている。
【0113】
また、蓋体162における中間部分針挿通孔164よりも先端側には、遮蔽部材168と固定部材170とが設けられて、これら遮蔽部材168と固定部材170とが針先プロテクタ132の大径筒部150内に収容配置されている。これら遮蔽部材168と固定部材170はそれぞれブロック状とされて、軸直角方向で内針128を挟んで両側に設けられており、遮蔽部材168が図8,9中において内針128の上方に設けられている一方、固定部材170が図8,9中において内針128の下方に設けられている。また、遮蔽部材168は、軸直角方向で変位可能であるのに対して、固定部材170は、蓋体162に固定的に取り付けられている。そして、これら遮蔽部材168と固定部材170の一方は磁石とされていると共に他方は磁石あるいは鉄などの強磁性材とされており、相互に磁気的な吸引力が及ぼされている。これにより、遮蔽部材168には、固定部材170に接近する付勢力が常時及ぼされており、遮蔽部材168の固定部材170に接近する方向への変位が、内針128に当接することにより制限されている。
【0114】
なお、これらプロテクタ本体148や蓋体162は、例えば硬質の合成樹脂により好適に形成され得る。
【0115】
以上の如き構造とされた内針128の基端が内針ハブ130の台座部138に挿入されて、必要に応じて接着や溶着の処理が施されることにより内針128が内針ハブ130に固定支持されるとともに、内針128に針先プロテクタ132が外挿装着されることにより、本実施形態の内針ユニット124が構成されている。そして、当該内針ユニット124において先端側に突出する内針128が、外針ユニット10の基端側開口部、即ちガイドコネクタ34の基端側開口部86から挿入されて、ディスク弁16およびカニューラ12を貫通して、内針128の針先126が、カニューラ12の先端から突出している。
【0116】
ここにおいて、外針ユニット10のガイドコネクタ34と内針ユニット124の針先プロテクタ132との間には接続キャップ172が設けられている。この接続キャップ172は、全体として略筒状とされており、軸方向中間部分には、内周側に突出する略環状の中間壁部174が形成されている。すなわち、接続キャップ172は、中間壁部174を底壁部として先端側に開口する連結筒部176と、中間壁部174を底壁部として基端側に開口する係合筒部178とを備えている。
【0117】
この連結筒部176の内周面には、雌ねじ180が形成されており、ガイドコネクタ34の基端側開口部86におけるフランジ部88の外周面に設けられた雄ねじと螺合可能とされている。また、連結筒部176の内周側において、中間壁部174の内周縁部からは先端側に向かって嵌合筒部182が突出している。当該嵌合筒部182の外径寸法は、ガイドコネクタ34の基端側開口部86における内径寸法と略等しくされており、嵌合筒部182の外周面が、ガイドコネクタ34の内周面62におけるテーパ状面68と略対応するテーパ面とされている。一方、嵌合筒部182の内径寸法は、押し子90の基端部分(ストレート状外周面96)の外径寸法よりも僅かに大きくされている。
【0118】
一方、係合筒部178の基端側開口部において、径方向1方向両側部分(図8,9中の上下方向両側部分)のそれぞれには、先端側に向かって延びる一対のスリット184,184が形成されている。これらスリット184,184は、周方向で所定距離をもって相互に離隔しており、これらスリット184,184の周方向間、即ち係合筒部178において図8,9中の上下方向両側の部分が、厚さ方向(径方向)で撓み変形可能な可撓片186,186とされている。そして、これら可撓片186,186の突出先端(軸方向基端)には、周方向の略全長に亘って、内周側に突出する係止爪188,188が設けられている。かかる係止爪188,188の対向方向間距離(図8,9中の上下方向距離)は、針先プロテクタ132における大径筒部150の外径寸法よりも小さくされている。
【0119】
以上の如き構造とされた接続キャップ172が、ガイドコネクタ34と針先プロテクタ132との間に設けられて、これらを相互に連結することで、留置針組立体122において、外針ユニット10と内針ユニット124とが相互に連結されている。
【0120】
すなわち、ガイドコネクタ34の基端側開口部86に対して、接続キャップ172の嵌合筒部182が挿入されるとともに、フランジ部88に設けられた雄ねじに対して、連結筒部176の内周面に設けられた雌ねじ180が螺合されることにより、ガイドコネクタ34に対して接続キャップ172が連結されている。また、係合筒部178に設けられた可撓片186,186の係止爪188,188が、針先プロテクタ132のテーパ筒部154に外周側から係止されることで、接続キャップ172と針先プロテクタ132とが相互に連結されている。なお、本実施形態において、かかる係止爪188,188のテーパ筒部154への係止状態では、針先プロテクタ132(蓋体162)の先端側端面と接続キャップ172の中間壁部174における基端側端面とが相互に当接するようになっている。このようにガイドコネクタ34と針先プロテクタ132とが接続キャップ172を介して相互に連結されることで、内針ユニット124からの外針ユニット10の意図しない脱落が防止されている。
【0121】
なお、かかる外針ユニット10と内針ユニット124との組付状態において、初期状態では、針先プロテクタ132の小径筒部152が、内針ハブ130のプロテクタ収容部140に収容されているとともに、係止爪188,188を含む接続キャップ172(係合筒部178)の基端が、プロテクタ収容部140の先端に設けられたキャップ収容部144に収容されている。すなわち、可撓片186,186が外周側からキャップ収容部144に覆われており、当該可撓片186,186の外周側への撓み変形が防止されている。これにより、意図せず可撓片186,186が外周側へ撓み変形して係止爪188,188のテーパ筒部154への係止が解除されることが防止され得る。
【0122】
以上の如き構造とされた本実施形態の留置針組立体122は、図7~9に示される、外針ユニット10に内針ユニット124が挿通された状態で患者の皮膚に穿刺される。その後、外針ユニット10から内針ユニット124を基端側に引き抜くことにより、患者の血管に外針ユニット10が経皮的に挿し入れられた状態で留置される。
【0123】
すなわち、内針128が基端側に引き抜かれて、内針128の針先126が遮蔽部材168よりも基端側に至ることにより、内針128と遮蔽部材168との当接が解除されて、遮蔽部材168は付勢力に従い、固定部材170に接近する方向に変位する。これにより、遮蔽部材168が内針128の針軸上に変位して、内針128の針先126が針先プロテクタ132により保護される。
【0124】
ここにおいて、内針ハブ130が接続キャップ172に対して基端側に変位することで、接続キャップ172の基端がキャップ収容部144から離脱せしめられて、可撓片186,186が外周側へ撓み変形可能とされる。かかる状態で、内針128を基端側に引き抜くことにより、内針128の大径部136,136と針先プロテクタ132の基端部分に設けられた係止リング160(底壁156)とが係合して、内針128の引抜きに伴い、針先プロテクタ132も外針ユニット10および当該外針ユニット10に対して連結される接続キャップ172に対して基端側に変位する。かかる針先プロテクタ132の基端側への移動に伴い、針先プロテクタ132の大径筒部150により可撓片186,186が外周側へ押し広げられるように撓み変形せしめられて、係止爪188,188のテーパ筒部154への係止が解除される。これにより、針先プロテクタ132が内針128の針先126を保護した状態で接続キャップ172から離脱させられて、内針ユニット124が外針ユニット10から抜去される。
【0125】
なお、針先プロテクタ132の基端部分に係止リング160が設けられることにより、内針128の大径部136,136と針先プロテクタ132との係合力の向上が図られ得る。また、針先プロテクタ132の基端側への引抜きに際して、係止爪188,188が大径筒部150を乗り越えるまでは、使用者が比較的大きな引抜抵抗を感じることができるとともに、係止爪188,188が大径筒部150を乗り越えることで引抜抵抗が略0となることから、接続キャップ172から針先プロテクタ132が離脱したことを使用者が操作の感触のみで把握することができて、即ち良好な節度感をもって外針ユニット10から内針ユニット124を引き抜くことができる。
【0126】
かかる内針ユニット124の抜去後、ガイドコネクタ34の基端側開口部86におけるフランジ部88に設けられた雄ねじ部と接続キャップ172における連結筒部176の内面に設けられた雌ねじ部との螺合を解除することで、ガイドコネクタ34から接続キャップ172が取り外される。これにより、外針ユニット(止血弁付留置針)10が、図1~3に示される状態で、患者の血管に留置される。なお、外針ユニット10から内針ユニット124を引き抜くことで、ディスク弁16が弾性的に復元変形してスリット100が閉鎖される。これにより、かかる血管への留置状態では、止血弁付留置針10の内部流路18がディスク弁16により遮断されている。
【0127】
そして、かかる止血弁付留置針10における接続コネクタ14の基端側開口部(ガイドコネクタ34の基端側開口部)86にシリンジなどの外部流路が接続されることにより、シリンジなどの雄ルアーが押し子90を先端側へ押し込んで、ディスク弁16の中央部分98が先端側に押し広げられつつディスク弁16のスリット100が開放されて、内部流路18が連通状態とされるようになっている。これにより、カニューラ12の内孔、弾性チューブ28の内孔および押し子90の内孔89を含んで構成される内部流路18を通じて、輸液や採血、血液透析などが実施され得る。
【0128】
ここにおいて、止血弁付留置針10が患者の血管に留置された状態では、止血弁付留置針10の内部流路18におけるディスク弁16より先端側の空間は、エア抜き通路118を通じて外部空間に連通されていることから、カニューラ12および弾性チューブ28を通じて血液が内部流路18を逆流する。そして、このように血液が内部流路18を逆流することで、内部流路18内のエアが血液により押し出されて、エア抜き通路118を通じて外部空間に排出されるようになっている。これにより、外部流路の接続時に、内部流路18内に残留するエアが体内に混入することが回避され得る。なお、留置針組立体122が患者に穿刺されることで、カニューラ12に設けられた貫通孔22およびカニューラ12と内針128との隙間を通じて血液が逆流するようになっていてもよく、即ち内部流路18内のエアの排出は、内針ユニット124が引き抜かれる前に達成されるようになっていてもよい。
【0129】
また、かかるエア抜き通路118上にはフィルタ120が設けられて液体の通過が防止されていることから、エア抜き通路118を通じての血液の漏出が防止され得る。特に、かかるフィルタ120が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34により径方向内外で挟まれて圧縮状態で装着されていることから、例えば止血弁付留置針10が動脈等に留置されてフィルタ120に対して動脈圧のような比較的強い圧力が及ぼされる場合にも、フィルタ120の変形が効果的に抑制されて、フィルタ120と、コネクタカバー32および/またはガイドコネクタ34との間に隙間が生じるおそれが低減され得る。これにより、より確実に血液の漏出が防止され得る。しかも、フィルタ120が圧縮されることによって、例えばスポンジフィルタなどでは、フィルタ120の密度が増して空隙が減ることから、血液の通過がより効果的に防止され得る。
【0130】
また、本実施形態では、かかるエア抜き通路118が、コネクタカバー32の内周面44における凹溝60,60,60,60の開口部114,114,114,114をディスク弁16で覆蓋することで形成されるトンネル状の通路116,116,116,116と、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との間に形成される隙間108,108,110,110とを含んで構成されていることから、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とディスク弁16とを組み付けることでエア抜き通路118が容易に形成され得る。特に、コネクタカバー32に傾斜溝58,58や切欠き54,54が設けられたり、ディスク弁16に筒状支持部102を設けてガイドコネクタ34に被せるように装着することで、コネクタカバー32とガイドコネクタ34とディスク弁16との組付作業性の向上が図られており、内部にエア抜き通路118を有する接続コネクタ14、ひいては止血弁付留置針10や留置針組立体122の製造効率の向上が図られ得る。
【0131】
図10には、本発明の第2の実施形態としての止血弁付留置針190が示されている。この止血弁付留置針190は、先端側に中空針としてのカニューラ12を備えているとともに、カニューラ12の基端側に、外部流路が接続される接続コネクタ192を備えており、かかる接続コネクタ192の内部には止血弁としてのディスク弁16が収容配置されている。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0132】
本実施形態の接続コネクタ192は、何れも略円筒形状とされたコネクタカバー32とガイドコネクタ194とが軸方向で相互に連結固定された形状とされている。すなわち、コネクタカバー32の基端側にガイドコネクタ194の先端側が挿し入れられて組み付けられることで、ガイドコネクタ194の先端部にコネクタカバー32が固定されて、接続コネクタ192が構成されている。
【0133】
ガイドコネクタ194は、硬質の合成樹脂により形成されており、図11にも示すように、コネクタカバー32の周壁36よりも小径の周壁196を備えている。この周壁196は、前記実施形態の周壁38に対して、ディスク弁16の筒状支持部102に差し入れられる挿入筒部76が省略された構造とされており、内径寸法が軸方向の略全長に亘って略一定とされている一方、外径寸法が軸方向で変化している。
【0134】
また、ガイドコネクタ194の内周側には、押し子198が配されている。この押し子198は、全体として筒状とされていると共に、軸方向の中間部分に外周へ突出するフランジ状の突起部200が設けられており、突起部200の基端側端面によって段差面92が構成されている。さらに、押し子198の先端部分は、先端側に向かって薄肉になるように形成されている。また、押し子198の外周面において、突起部200よりも基端側にストレート状外周面96が設定されていると共に、突起部200よりも先端側に略一定の外径寸法で延びるストレート状外周面202が設定されており、テーパ状外周面94は、ストレート状外周面202よりも先端側に設定されている。なお、テーパ状外周面94の基端側部分における最大外径寸法は、ストレート状外周面202の外径寸法と略同じとされていると共に、ストレート状外周面96の外径寸法より大きくされている。
【0135】
かかる押し子198の内径寸法は、基端部分において軸方向に略一定とされていると共に、先端部分において先端側で小さく且つ基端側で大きくなるように変化しており、本実施形態では、押し子198の先端部分の内周面199が、軸方向に略一定の変化率で変化するテーパ形状とされている。これにより、押し子198の基端側で流路断面積を確保しつつ、押し子198の先端面においては、ディスク弁16に押し当てられる最内周縁を中央に接近位置させることが可能になる。その結果、押し子198の内周に形成される流体流路(内部流路)の流動抵抗の増大を抑えて小さい流動抵抗を確保しつつ、ディスク弁16の押し開き易さの向上が図られ得る。
【0136】
さらに、押し子198は、先端部分がガイドコネクタ194よりも先端側へ突出しており、ガイドコネクタ194から突出した押し子198の先端部分が、弁支持部材204の内周側へ差し入れられている。弁支持部材204は、全体として筒状とされており、硬質の合成樹脂や金属などで形成されている。さらに、弁支持部材204は、筒状の挿入筒部206を備えていると共に、挿入筒部206の基端部から外周へ突出する環状の嵌合部208を備えている。弁支持部材204の挿入筒部206は、第1の実施形態におけるガイドコネクタ34の挿入筒部76と略同じ形状とされており、内径寸法がガイドコネクタ194と略同じとされていると共に、基端部が内周へ突出して部分的に小径とされている。また、弁支持部材204の嵌合部208には、外周面に開口する凹溝210,210,210,210が、周方向で等間隔となる4箇所において、それぞれ軸方向に貫通して形成されている。さらに、弁支持部材204における基端側の軸方向端面(基端面)211には、略一定の断面形状で周方向に連続する環状の圧縮リブ212が突出形成されており、本実施形態では、圧縮リブ212が突出先端に向けて径方向で狭幅となる三角断面とされている。
【0137】
この弁支持部材204は、挿入筒部206がディスク弁16の筒状支持部102に嵌め入れられており、ディスク弁16が弁支持部材204の先端部分に取り付けられている。そして、弁支持部材204は、コネクタカバー32の内周へ差し入れられており、弁支持部材204の嵌合部208がコネクタカバー32の周壁36に嵌め合わされることにより、コネクタカバー32に固定されている。これにより、ディスク弁16は、弁支持部材204によって支持された状態で、コネクタカバー32の内周に収容されており、コネクタカバー32の内周空間において所定の位置に位置決めされている。
【0138】
さらに、弁支持部材204の嵌合部208に設けられた凹溝210,210,210,210の外周開口が、コネクタカバー32で覆われることにより、コネクタカバー32と弁支持部材204の間を軸方向に延びる4つの隙間214,214,214,214が凹溝210,210,210,210によって形成されている。
【0139】
また、ガイドコネクタ194の先端部分が、弁支持部材204よりも基端側でコネクタカバー32に挿入される。そして、第1の実施形態と同様に、ガイドコネクタ194の係合突起78がコネクタカバー32における係合孔50,50の内面に係合されることによって、コネクタカバー32とガイドコネクタ194が相互に連結されている。また、ガイドコネクタ194の内周に配された押し子198は、ガイドコネクタ194から突出した先端部分が、弁支持部材204の内周へ挿入されていると共に、先端がディスク弁16の中央部分98よりも基端側に位置している。
【0140】
さらに、コネクタカバー32の周壁36とガイドコネクタ194の環状支持部74との間には、略環状の収容領域216が形成されている。本実施形態では、ガイドコネクタ194と弁支持部材204が軸方向で相互に離れて隣り合うように配されており、収容領域216は、ガイドコネクタ194の先端と弁支持部材204の基端との軸方向間において、内周へ開放されている。そして、収容領域216が、その基端側に位置するコネクタカバー32とガイドコネクタ194との径方向間の隙間110,110に連通されていると共に、その先端側に位置するコネクタカバー32と弁支持部材204の径方向間の隙間214,214に連通されている。
【0141】
これにより、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側の空間が、トンネル状の通路116,116,116,116、コネクタカバー32と弁支持部材204との隙間214,214,214,214、収容領域216、コネクタカバー32とガイドコネクタ194との隙間110,110および隙間108,108を通じて、外部空間に連通されている。換言すれば、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側(カニューラ12側)の空間を外部空間に連通するエア抜き通路218が、接続コネクタ14の内部において、トンネル状の通路116,116,116,116、コネクタカバー32と弁支持部材204との隙間214,214,214,214、収容領域216、コネクタカバー32とガイドコネクタ194との隙間110,110および隙間108,108を含んで構成されている。なお、エア抜き通路218は、空気流出口としての係合孔50,50を通じて外部空間に連通されている。
【0142】
ここにおいて、収容領域216には、フィルタ220が配設されている。フィルタ220は、第1の実施形態のフィルタ120と同様に、気体は通過させるが液体は通過させない性質を有しており、第1の実施形態のフィルタ120と同様の材料によって形成され得る。また、本実施形態のフィルタ220は、ガイドコネクタ194に外嵌される嵌着部222と、ガイドコネクタ194と弁支持部材204との軸方向間に配される内周突出部224とを、一体的に備えている。嵌着部222は、略円筒形状とされており、単体状態において、内径寸法がガイドコネクタ194の環状支持部74の外径よりも小さくされていると共に、外径寸法が収容領域216の壁部を構成するコネクタカバー32の周壁36の内径寸法よりも大きくされている。内周突出部224は、嵌着部222の先端部分から内周へ向けて突出しており、軸方向寸法がガイドコネクタ194の先端面と弁支持部材204の基端面211との軸方向対向面間距離に対して、略同じか或いは僅かに大きくされている。
【0143】
このフィルタ220は、内周突出部224がガイドコネクタ194の先端面に重ね合わされた状態で、嵌着部222がガイドコネクタ194の先端部分(環状支持部74)に外挿状態で嵌め合わされることによって、ガイドコネクタ194に取り付けられている。そして、ガイドコネクタ194がコネクタカバー32に取り付けられることにより、フィルタ220が、収容領域216に収容されて、エア抜き通路218上に配される。このようにフィルタ220がガイドコネクタ194に外挿状態で取り付けられることにより、フィルタ220をガイドコネクタ194と一体的に取り扱うことが可能となることから、フィルタ220の収容領域216への配設を、コネクタカバー32とガイドコネクタ194の組付けと同時に完了することができて、フィルタ220の配設作業が容易になる。
【0144】
なお、例えば、ディスク弁16を予め装着された弁支持部材204が、コネクタカバー32に組み付けられた後、押し子198およびフィルタ220を予め装着されたガイドコネクタ194が、コネクタカバー32に組み付けられることにより、接続コネクタ192がディスク弁16と押し子198とフィルタ220とを収容した状態で形成される。
【0145】
フィルタ220の嵌着部222は、接続コネクタ192に組み付けられる前の単品状態において、径方向の厚さ寸法が、収容領域216の壁面を構成するコネクタカバー32の内周面とガイドコネクタ194の外周面との径方向の距離よりも大きくされている。これにより、フィルタ220の嵌着部222は、コネクタカバー32とガイドコネクタ194とにより径方向に挟まれて圧縮された状態で、接続コネクタ192に組み付けられている。なお、本実施形態では、フィルタ220を径方向に挟持する内外硬質部材が、コネクタカバー32とガイドコネクタ194によって構成されている。
【0146】
さらに、フィルタ220の内周突出部224は、接続コネクタ192に組み付けられる前の単品状態において、軸方向の厚さ寸法が、弁支持部材204の圧縮リブ212の突出先端とガイドコネクタ194の先端面との軸方向の距離よりも大きくされている。これにより、フィルタ220の内周突出部224は、ガイドコネクタ194と弁支持部材204とによって、全周に亘って軸方向に挟まれて圧縮された状態で、接続コネクタ192に組み付けられている。なお、本実施形態では、フィルタ220を軸方向に挟持する硬質部材が、ガイドコネクタ194と弁支持部材204によって構成されている。また、内周突出部224は、ガイドコネクタ194と弁支持部材204の間で挟持された状態において、内径がガイドコネクタ194および弁支持部材204の内径よりも大きくされており、フィルタ220がガイドコネクタ194および弁支持部材204よりも内周へ突出しないようにされている。
【0147】
このように、フィルタ220が嵌着部222と内周突出部224において圧縮された状態で接続コネクタ192に組み付けられていることにより、接続コネクタ192の収容領域216に収容されたフィルタ220の略全体が圧縮状態とされており、フィルタ220が接続コネクタ192に対して安定して位置決め保持されている。特に本実施形態では、フィルタ220を挟持する硬質部材が、接続コネクタ192を構成するコネクタカバー32とガイドコネクタ194と、ディスク弁16を支持する弁支持部材204とによって構成されていることから、部品点数の増加させることなく硬質部材を設けることができる。
【0148】
なお、フィルタ220は、内周突出部224の全体がガイドコネクタ194と弁支持部材204との軸方向間で挟まれて圧縮されていてもよいし、内周突出部224が圧縮リブ212の押し付けられた部分などで部分的に挟まれて圧縮されていてもよい。同様に、嵌着部222は、軸方向の全長に亘って径方向に挟まれて圧縮されていてもよいし、部分的に径方向で挟まれて圧縮されていてもよく、例えば、本実施形態の構造において、内周突出部224が設けられた先端部分は、ガイドコネクタ194よりも先端側に位置していることから、径方向に圧縮されていない場合もある。また、仮に、フィルタ220の嵌着部222の軸方向寸法が、単体状態において、ガイドコネクタ194の段差面72と弁支持部材204の基端面211との軸方向距離よりも小さくされていたとしても、例えば、嵌着部222がコネクタカバー32とガイドコネクタ194で径方向に挟まれて圧縮されることにより、嵌着部222が軸方向に伸びて、嵌着部222が段差面72と基端面211の両方に押し付けられるようにもされ得る。要するに、フィルタ220は、収容領域216への配設状態において、コネクタカバー32、ガイドコネクタ194、弁支持部材204によって挟持されるようになっていればよい。
【0149】
もっとも、フィルタ220が硬質部材によって挟持されるとは、必ずしも硬質部材の間に圧縮状態で挟み込まれて支持されることのみならず、例えば、硬質部材に対して0タッチ(非圧縮での接触状態)で当接して、硬質部材によって略非圧縮状態で挟まれて支持されている場合を含む。なお、フィルタ220が実施形態に例示したような立体的な濾過構造体(例えばスポンジフィルタや焼結体)である場合、エアの流れに直交する方向に圧縮状態で挟まれて支持されていることによって、フィルタ220からの液体の通過を極めて効果的に防止することができる。さらに、フィルタ220は、必ずしも硬質部材による挟持だけで支持されていなくてもよく、例えば、接着や溶着などを併用することもできるし、軟質部材を介して硬質部材による挟持を実現してもよい。
【0150】
本実施形態では、コネクタカバー32とガイドコネクタ194が、フィルタ220の装着部分において何れも筒状とされていることから、フィルタ220の嵌着部222が、コネクタカバー32とガイドコネクタ194の間で全周に亘って径方向に挟まれて圧縮されている。さらに、ガイドコネクタ194と弁支持部材204が、フィルタ220の装着部分において何れも筒状とされていることから、フィルタ220の内周突出部224が、ガイドコネクタ194と弁支持部材204の間で全周に亘って軸方向に挟まれて圧縮されている。
【0151】
このような構造とされた本実施形態に係る止血弁付留置針190は、前記第1の実施形態と同様に、内部流路18に内針ユニット(図示せず)が挿通されることにより留置針組立体とされて、外針としてのカニューラ12に内針ユニットの内針が挿通された状態で、患者の皮膚に穿刺される。その後、外針ユニットである止血弁付留置針190から内針ユニットを基端側に引き抜くことにより、カニューラ12が患者の血管に経皮的に差し入れられた状態で止血弁付留置針190が留置される。
【0152】
このように止血弁付留置針190が患者の血管に留置された状態において、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側の空間には、カニューラ12および弾性チューブ28を通じて血液が流入する。そして、血液が内部流路18を逆流することで、内部流路18におけるディスク弁16よりも先端側の空気が、血液によってエア抜き通路218へ押し出されて、エア抜き通路218を通じて外部空間に排出されるようになっている。
【0153】
また、血管から内部流路18内への逆流した血液は、エア抜き通路218上に配されたフィルタ220を通過し得ないことから、エア抜き通路218を通じた外部空間への漏出が防止される。
【0154】
本実施形態では、エア抜き通路218上に配されたフィルタ220の嵌着部222が、コネクタカバー32とガイドコネクタ194の間で径方向に圧縮されていることから、フィルタ220の嵌着部222による血液の通過防止が、より効果的に実現されて、血液が外部空間へ漏れ出し難くなっている。
【0155】
さらに、フィルタ220の内周突出部224が、ガイドコネクタ194と弁支持部材204との間に配されていることから、血液の内周への通過が内周突出部224によって防止されて、血液がガイドコネクタ194や弁支持部材204と押し子198との間に入り込み難く、血液の凝固による押し子198の作動不良などが防止される。
【0156】
しかも、本実施形態では、弁支持部材204の基端面211に圧縮リブ212が突出しており、この圧縮リブ212がフィルタ220の内周突出部224により強く押し付けられることで、内周突出部224が軸方向に大きく圧縮されている。それ故、ガイドコネクタ194と弁支持部材204の軸方向間において、内周突出部224の圧縮によるフィルタ220の安定した保持や、フィルタ220による血液の通過防止性能の向上などが図られて、血液の内周への通過が防止されている。なお、圧縮リブ212は、フィルタ220を軸方向に挟み込む部分に設けられていればよく、例えば、ガイドコネクタ194の先端面から先端側へ突出するように設けることもできる。
【0157】
また、フィルタ220を挟持するコネクタカバー32、ガイドコネクタ194、弁支持部材204が、何れも筒状とされており、フィルタ220は、コネクタカバー32とガイドコネクタ194の間およびガイドコネクタ194と弁支持部材204の間において、それぞれ全周に亘って連続的に挟持されている。これにより、フィルタ220がより安定して所定の装着状態に保持されることから、血液の外部空間や内周空間への漏れを一層効果的に防止することができる。
【0158】
なお、患者の血管に留置された止血弁付留置針10は、前記第1の実施形態と同様に、基端側にシリンジ226などが接続される。即ち、図12に示すように、止血弁付留置針10における接続コネクタ14の基端側開口部(ガイドコネクタ194の基端側開口部)86にシリンジ226の外部流路228が接続されることにより、ガイドコネクタ194に挿入されたシリンジ226の雄ルアー230が押し子198を先端側へ押し込んで、ディスク弁16の中央部分98が押し子198によって先端側に押し広げられつつ、ディスク弁16のスリット100が開放される。これにより、止血弁付留置針10の内部流路18が、シリンジ226の外部流路228に連通されることから、カニューラ12の内孔、弾性チューブ28の内孔および押し子198の内孔89を含んで構成される内部流路18を通じて、輸液や採血、血液透析などが実施され得る。
【0159】
図13~16には、本発明の第3の実施形態としての止血弁付留置針310が示されている。この止血弁付留置針310は、先端側に中空針としてのカニューラ312を備えているとともに、当該カニューラ312の基端側に、弾性弁体としてのディスク弁(止血弁)314が内部に収容配置されるハウジングとしての針ハブハウジング(接続コネクタ)316を備えている。そして、これらカニューラ312と針ハブハウジング316の内部を含んで内部流路318が構成されている。かかるカニューラ312が患者の血管に経皮的に挿し入れられて留置されることにより、内部流路318を通じて輸液や採血が行われるようになっているとともに、針ハブハウジング316への外部流路の接続と抜去に伴い、ディスク弁314の開放と閉塞、即ち内部流路318の連通と遮断とが切り換えられるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、各部材の中心軸方向であって、中空針であるカニューラ312の針軸方向に略相当し、長さ方向である図14中の左右方向をいう。また、先端側とは、カニューラ312の穿刺される側である図14中の左側をいう一方、基端側とは、使用者が操作する側である図14中の右側をいう。
【0160】
より詳細には、カニューラ312は、本実施形態では、軟質の合成樹脂により形成されており、先端部分の外周面は、先端側に向かって次第に外径寸法が小さくなるテーパ状外周面320とされている。また、カニューラ312の先端部分の周壁には、複数の貫通孔322が形成されており、当該貫通孔322を通じて血液などがカニューラ312内へ流入し易くされている。なお、カニューラ312の材質は、軟質の合成樹脂に限定されるものではなく、例えば金属製であってもよい。
【0161】
かかるカニューラ312の基端部分は、針ハブ324により固定支持されている。この針ハブ324は略筒状の周壁326を備えており、例えば硬質の合成樹脂により形成される。そして、かかる針ハブ324にカニューラ312が挿通されて、カニューラ312の基端部分が針ハブ324に接着や溶着などにより固着されることで、針ハブ324から先端側にカニューラ312が延び出している。
【0162】
この針ハブ324の基端側には弾性チューブ328が接続されている。当該弾性チューブ328は、例えば軟質の合成樹脂により形成されて、弾性チューブ328の先端部分が、針ハブ324の基端側開口部において針ハブ324の周壁326とカニューラ312とにより挟まれて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針ハブ324の基端側に弾性チューブ328が接続されている。これにより、針ハブ324に対してカニューラ312や弾性チューブ328が強固に固定されている。
【0163】
かかる弾性チューブ328の基端部分が、針ハブハウジング316の先端部分に固着されている。この針ハブハウジング316は、全体として略筒形状とされており、針ハブハウジング316の先端側開口部から弾性チューブ328の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着の処理が施されることにより、弾性チューブ328と針ハブハウジング316とが相互に接続されている。すなわち、かかる針ハブハウジング316の先端部分が、弾性チューブ328が接続されるチューブ接続部330とされている。なお、これら針ハブ324と弾性チューブ328と針ハブハウジング316とを含んで針ハブが構成されると捉えることも可能であり、針ハブハウジング316が針ハブを構成する一部材であると把握することもできる。尤も、かかる弾性チューブ328は必須なものでなく、針ハブハウジング316の先端部分からカニューラ312が延び出していてもよい。
【0164】
そして、これらカニューラ312、弾性チューブ328、針ハブハウジング316(特に針ハブハウジング316の内部に設けられる後述する押し子396)のそれぞれの内孔を含んで、カニューラ312から針ハブハウジング316に至る内部流路318が構成されている。
【0165】
本実施形態の針ハブハウジング316は、何れも略円筒形状とされた外周側ハウジング(コネクタカバー)332と内周側ハウジング(ガイドコネクタ)334とが相互に内外挿されて固定された形状とされている。すなわち、外周側ハウジング332の基端側に内周側ハウジング334の先端側が挿し入れられて組み付けられることで、内周側ハウジング334の先端部に外周側ハウジング332が軸方向で連結された状態で固定されて、針ハブハウジング316が構成されている。したがって、針ハブハウジング316の周壁が、外周側ハウジング332の周壁336と内周側ハウジング334の周壁338とから構成されている。また、内周側ハウジング334の周壁338において、外周側ハウジング332に挿し入れられる先端側の部分が、略円筒状の挿入部340とされている一方、外周側ハウジング332の周壁336において、内周側ハウジング334の挿入部340が挿し入れられる基端側の部分が、略円筒状の被挿入部342とされている。なお、これら挿入部340と被挿入部342は相互に逆に設けられてもよく、基端側に位置する外周側ハウジング332に、内周側ハウジング334の基端部分が挿入されてもよい。
【0166】
そして、かかる内周側ハウジング334の基端が、外周側ハウジング332よりも、所定の軸方向寸法をもって基端側に延び出している。それ故、針ハブハウジング316の周壁は、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との連結部分である挿入部340と被挿入部342との内外挿部分で二重壁構造とされている一方、針ハブハウジング316の先端側の周壁が外周側ハウジング332の周壁336で構成されているとともに、針ハブハウジング316の基端側の周壁が内周側ハウジング334の周壁338で構成されている。すなわち、外周側ハウジング332の内周面344における基端部分(被挿入部342における内周面)344aと内周側ハウジング334の外周面346における先端部分(挿入部340における外周面)346aとが相互に重ね合わされることで、上記外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とが内外挿されて二重壁構造とされている部分が構成されている。
【0167】
外周側ハウジング332は、硬質の合成樹脂により形成されており、略筒状の周壁336を備えている。かかる周壁336の軸方向中間部分における内周面344には、環状壁部348が内周側に突出して形成されている。そして、外周側ハウジング332の先端側開口部から挿入された弾性チューブ328の基端が、軸直角方向に広がる環状壁部348の先端側端面に当接しており、外周側ハウジング332における環状壁部348よりも先端側の部分により、弾性チューブ328が接続されるチューブ接続部330が構成されている。また、環状壁部348の基端側端面が軸直角方向に広がっており、これにより、外周側ハウジング332の内周面344には、環状の段差面349が形成されている。
【0168】
かかる外周側ハウジング332において、先端側であるチューブ接続部330では、内径寸法が、軸方向の略全長に亘って略一定とされている。また、基端側である被挿入部342では、内径寸法が、チューブ接続部330よりも僅かに大きくされており、軸方向の略全長に亘って略一定とされている。なお、本実施形態では、外周側ハウジング332の内周面344において、被挿入部342の先端部分、即ち環状壁部348に対して基端側に隣接する部分には、内周側に突出する押圧リブ350が、周方向の全長に亘って、または周上で部分的に形成されている。
【0169】
さらに、外周側ハウジング332の周壁336における被挿入部342において、径方向1方向の両側(図14中の上下方向両側)には、周壁336を厚さ方向(径方向)で貫通する一対の係合孔352,352が形成されている。これらの係合孔352,352は、それぞれ平面視における形状が略矩形状とされており、1/2周に満たない周方向寸法をもって形成されている。また、外周側ハウジング332の周壁336において、これら一対の係合孔352,352を周方向で外れた位置には、基端側開口部354の開口縁から軸方向内方(先端側)に向かって延びる切欠き356が形成されている。本実施形態では、一対の係合孔352,352の対向方向と直交する方向の両側(図14中の紙面手前奥方向両側)に一対の切欠き356,356が、所定の幅寸法をもって形成されている。なお、かかる切欠き356の個数は2つ(一対)に限定されるものではなく、周上で1つまたは3つ以上設けられてもよい。
【0170】
更にまた、外周側ハウジング332の被挿入部342における内周面344において、基端側開口部354には、一対の傾斜面358,358が形成されている。これら傾斜面358,358は、係合孔352,352の対向する方向と同方向(図14中の上下方向両側)に形成されており、基端側開口部354に向かって周壁336の厚さ寸法が次第に小さくなっている。そして、かかる傾斜面358,358と、当該傾斜面358,358の周方向両側の壁部により、外周側ハウジング332の基端側開口部354には、内周側に開口する一対の傾斜溝360,360が形成されている。なお、傾斜面358,358の幅方向寸法は、係合孔352,352の幅方向寸法と略等しくされており、係合孔352,352と傾斜溝360,360とが、外周側ハウジング332の周壁336において、周上の対応する位置で周上部分的に形成されている。すなわち、傾斜溝360,360の先端側に係合孔352,352が形成されている。
【0171】
一方、内周側ハウジング334は、硬質の合成樹脂により形成されており、外周側ハウジング332の周壁336よりも小径の周壁338を備えている。この周壁338は、内径寸法および外径寸法が軸方向の略全長に亘って略一定とされている。
【0172】
すなわち、内周側ハウジング334(周壁338)の内周面362において、軸方向中間部分には、環状の係合突部(係合壁部)364が内周側に突出して形成されている。そして、かかる内周側ハウジング334の内周面362において、係合突部364よりも先端側は、後述する押し子396の軸方向移動をガイドする案内面366とされており、内径寸法が略一定とされている。一方、係合突部364よりも基端側は、内径寸法が基端側へ向かって次第に大きくなるテーパ状面368とされている。
【0173】
また、内周側ハウジング334の外周面346における先端部分346a、即ち挿入部340における外周面346aは、その最先端部分において外径寸法が小さくされており、これにより、内周側ハウジング334の先端部分には、先端側に突出する略筒状の支持筒部370が形成されている。
【0174】
更にまた、挿入部340の外周面346aには、外周側に突出する係合突起372が設けられている。本実施形態では、径方向1方向の両側(図14中の上下方向両側)に、一対の係合突起372,372が形成されている。これら係合突起372,372の平面視における形状は、外周側ハウジング332における係合孔352,352と略対応する略矩形状とされている。そして、係合突起372,372の先端側端面が、先端側に向かって係合突起372,372の突出高さが次第に小さくなる傾斜面374,374とされている一方、基端側端面が、略軸直角方向に広がる垂直面376,376とされている。なお、係合突起372,372における傾斜面374,374の軸方向に対する傾斜方向は、傾斜溝360,360における傾斜面358,358の軸方向に対する傾斜方向と等しくされている。本実施形態では、これら両傾斜面358,374の軸方向に対する傾斜角度も略等しくされており、傾斜面358と傾斜面374とが軸方向で相互に略平行とされている。かかる係合突起372や係合孔352の個数は、2つ(一対)に限定されるものではなく、周上で1つまたは3つ以上設けられてもよい。
【0175】
さらに、挿入部340の外周面346aにおいて、一対の係合突起372,372の対向する方向と直交する方向の両側(図14中の紙面手前奥方向の両側)には、外周側ハウジング332における切欠き356,356と略対応する形状とされた一対の位置決め突起378,378が突出形成されている。
【0176】
なお、内周側ハウジング334において、挿入部340よりも基端側は、挿入部340と略等しいか僅かに小さい外径寸法をもって略ストレートに延びているとともに、基端側開口部380には、外周側に突出する略環状のフランジ部382が形成されている。当該フランジ部382の外周面には雄ねじが形成されており、後述する外部流路(シリンジ414)の接続時において、ルアーロックタイプの外部流路を接続することが可能とされている。また、本実施形態では、かかるフランジ部382の周上の一部(図14中の上方)において、軸方向に延びる位置決め凹溝384が形成されている。これにより、例えば本実施形態の止血弁付留置針310を外針ユニットとして、図示しない内針ユニットと組み合わせて留置針組立体として使用する際に、内針ユニットを構成する内針ハブから先端側に突出する位置決め凸部が位置決め凹溝384に差し入れられることで、内針ユニットと外針ユニット(止血弁付留置針310)との相対回転が防止されるようになっている。
【0177】
ここで、針ハブハウジング316の内部において、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との間には、ディスク弁314が収容配置されている。このディスク弁314は、略円板形状とされており、ゴムやエラストマーなどの弾性を有する材質により形成されている。そして、当該ディスク弁314の中央部分386には、軸方向で貫通するスリット388が形成されている。このスリット388の形状は限定されるものではないが、本実施形態では、周方向の三方に略均等(略120°毎)に延びる放射状とされている。
【0178】
なお、針ハブハウジング316に組み付けられる以前のディスク弁314の単品状態では、ディスク弁314の外径寸法が外周側ハウジング332の、特に押圧リブ350の形成位置における内径寸法より大きくされており、針ハブハウジング316に組み付けられることで、押圧リブ350によりディスク弁314に対して外周側から内周側に向かって径方向の押圧力が及ぼされて、スリット388が安定して閉塞状態とされるようになっている。すなわち、外周側ハウジング332の内周面344(344a)に設けられた押圧リブ350により、ディスク弁314の外周面が内周側に圧縮されるようになっている。
【0179】
かかるディスク弁314の外周部分には、基端側に延びる筒状支持部390が設けられている。また、ディスク弁314の基端側面392における外周部分において、筒状支持部390よりも内周側には、周方向の全周に亘って連続して延びるとともに基端側に開口する環状の周溝394が形成されている。尤も、かかる筒状支持部390は必須なものではない。また、周溝394は必須なものではなく、ディスク弁314の基端側面392に支持筒部370の先端を押し込むことで周溝394が形成されるようになっていてもよい。
【0180】
ここで、内周側ハウジング334の内周側において、ディスク弁314よりも基端側には、筒状の押し子396が収容されており、当該押し子396の中央には、軸方向に貫通する内孔398が形成されている。かかる押し子396の外周面には、軸方向中間部分において、軸直角方向に広がる環状の当接部としての段差面400が形成されている。すなわち、押し子396の外径寸法は、当該段差面400に対して先端側に隣接する部分が、基端側に隣接する部分よりも大径とされており、段差面400よりも基端側が、略一定の外径寸法とされたストレート状外周面402とされている。一方、段差面400よりも先端側は、当該段差面400に対して先端側に隣接する部分を最大外径部分として、先端側に向かって次第に小径となるテーパ状外周面404とされている。
【0181】
なお、本実施形態の押し子396においても、前記第2の実施形態と同様に、押し子396の先端部分の内周面199が先端に向けて小径となるテーパ形状とされていることにより、ディスク弁314の押し開き易さの向上と、内部流路における小さい流動抵抗とを、両立して達成することができる。
【0182】
そして、本実施形態では、後述するように、押し子396における段差面400よりも先端側、即ちテーパ状外周面404の形成部分の略全体が、外部流路(シリンジ414)の接続時において押し子396が先端側に移動せしめられた際にディスク弁314に挿入される挿入領域406(図18参照)とされている。具体的には、本実施形態では、テーパ状外周面404の基端部分を構成する基端側傾斜面410(後述)の軸方向中間部分から先端側が、ディスク弁314に挿入される挿入領域406とされている。
【0183】
すなわち、本実施形態では、テーパ状外周面404が、全体として先細形状として形成されており、それぞれ先細形状とされた先端側傾斜面408と基端側傾斜面410と、これら両傾斜面408,410をテーパ状外周面404(挿入領域406)の軸方向中間部分において接続する先細形状の急傾斜面412とを含んで構成されている。要するに、テーパ状外周面404において、急傾斜面412よりも先端側には相対的に小径とされた先細形状の先端側傾斜面408が設けられているとともに、急傾斜面412よりも基端側には相対的に大径とされた先細形状の基端側傾斜面410が設けられている。これら先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412は、それぞれ周方向の全周に亘って延びる環状テーパ面とされている。なお、基端側傾斜面410を先端側傾斜面408よりも大径とすることで、例えば前記特許文献1に記載の如き単一の傾斜角度(例えば、先端側傾斜面408と同一の角度)しか有さないテーパ状外周面とされている場合に比べて、ディスク弁314への押し子396の挿入時のシール性の向上も図られ得る。
【0184】
この急傾斜面412における軸方向に対する傾斜角度α(図16参照)は、先端側傾斜面408における軸方向に対する傾斜角度β(図16参照)よりも大きくされており(β<α)、本実施形態では、基端側傾斜面410における軸方向に対する傾斜角度γ(図16参照)よりも大きくされている(γ<α)。また、本実施形態では、先端側傾斜面408における軸方向に対する傾斜角度βが、基端側傾斜面410における軸方向に対する傾斜角度γ以上に大きくされている(γ≦β)。なお、これら先端側傾斜面408の傾斜角度βと基端側傾斜面410の傾斜角度γとは相互に等しくされてもよいし(β=γ)、基端側傾斜面410の傾斜角度γが、先端側傾斜面408の傾斜角度βよりも大きくされてもよい(β<γ)。
【0185】
さらに、これら先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412における傾斜角度β,γ,αは、それぞれ軸方向で略一定とされており、先端側傾斜面408と急傾斜面412、および急傾斜面412と基端側傾斜面410とが、それぞれ滑らかな湾曲面で接続されている。これにより、テーパ状外周面404の略全体が、滑らかに連続している。なお、先端側傾斜面408と急傾斜面412、および/または急傾斜面412と基端側傾斜面410とは、屈曲して接続されていてもよい。
【0186】
これら先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412における傾斜角度β,γ,αは、それぞれ何等限定されるものではないが、本実施形態のように、急傾斜面412における傾斜角度αが、先端側傾斜面408における傾斜角度β、基端側傾斜面410における傾斜角度γよりも大きく(β<α,γ<α)されることが好適である。すなわち、傾斜角度αが傾斜角度β,γよりも小さい(α<β,α<γ)場合には、後述するシリンジ414の雄ルアー416の針ハブハウジング316への挿入長によっては、傾斜角度が急とされた先端側傾斜面408や基端側傾斜面410が、弾性変形せしめられたディスク弁314に当接しないことも考えられて、傾斜角度が急とされた部分が安定してディスク弁314に当接する構成としにくく、後述する押し子396の基端側への押し戻し効果が安定して発揮されないおそれがあるからである。
【0187】
また、先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412における傾斜角度β,γ,αは、それぞれ先細形状、即ち0度~90度の範囲内に設定されることが好適であり、先端側傾斜面408における傾斜角度β、基端側傾斜面410における傾斜角度γは、より好適には、それぞれ5度~20度の範囲内に設定されて、本実施形態ではβ=γ=11.5度とされている。特に、基端側傾斜面410における傾斜角度γが20度を超えると、基端側傾斜面410、ひいては挿入領域406の軸方向寸法が短くなることから好ましくない。さらに、急傾斜面412における傾斜角度αは、より好適には25度~75度、更に好適には35度~60度の範囲内に設定されて、本実施形態では45度とされている。すなわち、急傾斜面412における傾斜角度αが75度を超えると、弾性変形せしめられたディスク弁314と急傾斜面412とがしっかり当接せずに当接面積が減少して、後述する押し子396の押し戻し効果が十分に発揮されないおそれがあるからである。これら先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412における傾斜角度β,γ,αが上記範囲内に設定されることにより、後述する押し子396の基端側への押し戻し効果が一層安定して発揮され得る。
【0188】
更にまた、先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412の軸方向寸法も、それぞれ何等限定されるものではないが、本実施形態では、急傾斜面412が、テーパ状外周面404の中央よりやや先端側に設けられており、即ち先端側傾斜面408の軸方向寸法に比べて、基端側傾斜面410の軸方向寸法が大きくされている。特に、本実施形態では、挿入領域406において、急傾斜面412の形成部分の軸方向寸法が0.2mm~0.3mmとされている。また、急傾斜面412の少なくとも一部は、押し子396の先端から1mm~3mmの位置にあることが好ましく、より好ましくはおよそ2mmの位置にあり、本実施形態では、急傾斜面412の先端が、押し子396の先端から1.7mmの位置に存在している。要するに、先端側傾斜面408の形成部分の軸方向寸法が1.7mmとされている。さらに、テーパ状外周面404の形成部分の軸方向寸法は4mm以上とされることが好ましい。各部分の軸方向寸法をこのように設定することで、後述するように様々な雄ルアー長さの外部流路が市場に流通している状況下でも、弾性変形せしめられたディスク弁314と急傾斜面412とを安定して当接させることができる。
【0189】
さらに、先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412における軸直角方向寸法は、押し子396やディスク弁314のサイズなどに応じて設定されるものであり、何等限定されるものではないが、例えばディスク弁314の中央部分386(例えば周溝394の内周側)の径寸法が3.8mmである場合、急傾斜面412の軸直角方向寸法H(図16参照)は、0.1mm~1.0mmの範囲内に設定されることが好適である。
【0190】
以上の如き構造とされた外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とを含んで針ハブハウジング316が構成されており、当該針ハブハウジング316の内部に、ディスク弁314および押し子396が収容配置されている。
【0191】
すなわち、内周側ハウジング334の先端側開口部から押し子396が挿入されて配設される。その際、押し子396の基端位置は、内周側ハウジング334の内周面362に設けられた係合突部364と、押し子396の外周面に設けられた段差面400とが相互に当接することで規定される。また、かかる押し子396の収容状態では、押し子396のストレート状外周面402と係合突部364の内周面とが当接しているか僅かに離隔しているとともに、押し子396のテーパ状外周面404の基端部分(基端側傾斜面410の基端部分、即ちテーパ状外周面404の最大外径部分)における外周面と内周側ハウジング334の案内面366とが当接しているか僅かに離隔している。これにより、押し子396が、内周側ハウジング334の内周面362に案内されつつ、軸方向で移動可能とされている。
【0192】
そして、かかる内周側ハウジング334の先端部分において、ディスク弁314の筒状支持部390が被せられて支持されている。すなわち、ディスク弁314の基端側面392に設けられた周溝394内に、内周側ハウジング334の先端となる支持筒部370の先端部分が挿入されている。本実施形態では、支持筒部370の先端部分の内外周面が、周溝394の内面を構成する内外周面にそれぞれ当接しているか、僅かに離隔している。なお、支持筒部370の先端面と周溝394の溝底面との軸方向間には隙間が設けられてもよい。
【0193】
また、ディスク弁314の筒状支持部390における内周面が支持筒部370の外周面に当接しており、ディスク弁314の基端側に対して内周側ハウジング334の先端部分が嵌め入れられている。そして、本実施形態では、かかるディスク弁314の支持状態において、ディスク弁314の基端側面392に対して押し子396の先端が当接しており、押し子396が、ディスク弁314と係合突部364との軸方向間で位置決めされている。なお、押し子396の先端は、必ずしもディスク弁314の基端側面392と当接する必要はなく、押し子396の先端とディスク弁314の基端側面392とが軸方向で相互に離隔していてもよい。
【0194】
かかるディスク弁314の先端側から外周側ハウジング332が組み付けられている。すなわち、先端にディスク弁314を被せて支持した状態で内周側ハウジング334の先端部分を外周側ハウジング332の基端側開口部354から挿入して、内周側ハウジング334の係合突起372,372を外周側ハウジング332の係合孔352,352に係合させることにより、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とが内外挿状態で、且つ軸方向で直列して略同一中心軸上で連結固定される。
【0195】
本実施形態では、係合突起372,372の先端側端面が傾斜面374,374とされていることから、係合孔352,352内への係合突起372,372の嵌まり込みが容易とされている。また、係合突起372,372の基端側端面が垂直面376,376とされていることから、係合孔352,352からの係合突起372,372の抜出し、即ち外周側ハウジング332からの内周側ハウジング334の抜出しが防止されている。
【0196】
また、本実施形態では、外周側ハウジング332の基端側開口部354には、傾斜面358,358を含んで構成される傾斜溝360,360が形成されていることから、外周側ハウジング332への内周側ハウジング334の挿入に際して、傾斜溝360,360に係合突起372,372が差し入れられることで、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との周方向の相対回転が防止され得る。また、傾斜面358,358の案内作用によって係合突起372,372が安定して係合孔352,352まで案内されることから、係合突起372,372がより確実に係合孔352,352に係合され得る。
【0197】
更にまた、内周側ハウジング334を外周側ハウジング332に挿入する際、外周側ハウジング332の基端側開口部354に設けられた切欠き356,356に内周側ハウジング334の位置決め突起378,378を挿入することにより、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とが周方向で容易に位置決めされて、係合突起372,372が一層確実に係合孔352,352に係合され得る。
【0198】
そして、かかる外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との組付状態では、ディスク弁314の外周部分が、相互に組み付けられた外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との間で軸方向および軸直角方向に位置決めされて保持されることにより、ディスク弁314が、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とに嵌め合わされた嵌合状態で組み付けられている。すなわち、ディスク弁314の外周部分が、外周側ハウジング332に設けられた環状壁部348の基端側端面である段差面349と内周側ハウジング334の先端部分である支持筒部370との軸方向間で挟持されている。また、ディスク弁314において基端側に突出する筒状支持部390が、外周側ハウジング332の周壁336と支持筒部370との径方向間において、好適には圧縮状態で挟持されている。さらに、ディスク弁314が、外周側ハウジング332の周壁336の、特に押圧リブ350により、径方向内方に圧縮されて組み付けられている。
【0199】
以上の如きカニューラ312と針ハブ324と弾性チューブ328と内部にディスク弁314および押し子396を備える針ハブハウジング316とを軸方向で連結することにより、本実施形態の止血弁付留置針310が構成されている。かかる止血弁付留置針310は、例えば止血弁付留置針310を外針ユニットとして、針先を備える内針を含んで構成される図示しない内針ユニットが挿通されることで止血弁付きの留置針組立体として使用される。すなわち、外針ユニット(止血弁付留置針)310に内針ユニットが挿通された状態で患者の皮膚に穿刺された後、外針ユニット310から内針ユニットを基端側に引き抜くことにより、患者の血管に外針ユニット310が経皮的に挿し入れられた状態で留置される。または、カニューラ312が、針先を有する金属製などの中空針とされることで、止血弁付留置針310を患者の血管に直接穿刺して留置することも可能である。なお、かかる血管への留置状態では、止血弁付留置針310の内部流路318がディスク弁314により遮断されている。
【0200】
そして、かかる止血弁付留置針310における針ハブハウジング316の基端側開口部(内周側ハウジング334の基端側開口部)380に、外部流路として、例えばシリンジ414が接続される。これにより、図17,18に示されるように、シリンジ414などの雄ルアー416が押し子396を先端側へ押し込んで、当該押し子396の先端部分がディスク弁314に挿入されることで、ディスク弁314の中央部分386が先端側に押し広げられつつディスク弁314のスリット388が開放されて、内部流路318が連通状態とされるようになっている。これにより、カニューラ312の内孔、弾性チューブ328の内孔および押し子396の内孔398を含んで構成される内部流路318を通じて、輸液や採血、血液透析などが実施され得る。
【0201】
一方、輸液や採血、血液透析の終了時または中断時において、針ハブハウジング316からシリンジ414を抜去することで、ディスク弁314の弾性的な復元作用によりディスク弁314が初期形状に復元変形せしめられるとともに、復元変形したディスク弁314に押し戻されて、押し子396が前記図13~16に示される初期位置まで基端側に移動させられるようになっている。これにより、ディスク弁314のスリット388が閉塞せしめられて、内部流路318が遮断状態とされるようになっている。なお、本実施形態では、かかる押し子396の基端側への移動が、押し子396の外周面に設けられた段差面400と、針ハブハウジング316(内周側ハウジング334)の内周面362に設けられた係合突部364との当接によって規制されるようになっている。
【0202】
ここにおいて、針ハブハウジング316の基端側開口部380からシリンジ414が接続されて押し子396が先端側へ移動することにより、押し子396の先端部分、本実施形態では、特に図18図19に示されているように、基端側傾斜面410の軸方向中間部分から先端側がディスク弁314に挿入されるようにされており、即ち本実施形態では、基端側傾斜面410の軸方向中間部分から先端側が、ディスク弁314に挿入される挿入領域406とされている。したがって、押し子396の先端側への移動に伴い先端側へ弾性変形せしめられたディスク弁314の中央部分386が、先端側傾斜面408から基端側傾斜面410に跨って当接するようになっている。これにより、図19に示されるように、シリンジ414の接続時(押し子396の先端側への移動時)には、ディスク弁314の弾性的な復元力A(図19中において白矢印で図示)が、急傾斜面412に及ぼされる。尤も、かかる弾性的な復元力は、先端側傾斜面408や基端側傾斜面410にも及ぼされるが、図示を省略する。
【0203】
かかる弾性的な復元力Aは、押し子396に対して軸方向の分力ax (図19中において細線で図示)および軸直角方向の分力ay (図19中において細線で図示)として作用することから、押し子396が、シリンジ414の抜去に伴って軸方向の分力ax に従って基端側に移動せしめられるようになっている。
【0204】
一方、例えば前記特許文献1のように、押し子396の先端部分のテーパ状外周面404が単一の傾斜角度しか有さない、即ち図19中において二点鎖線で示されるように、先端側傾斜面408と同一の傾斜角度を有する仮想的なテーパ状外周面418を想定した場合、当該テーパ状外周面418には、ディスク弁314の弾性的な復元力B(図19中において二点鎖線で図示)が及ぼされる。かかる弾性的な復元力Bは、押し子396に対して軸方向の分力bx (図19中において二点鎖線で図示)および軸直角方向の分力by (図19中において二点鎖線で図示)として作用する。それ故、これら軸方向の分力ax とbx を比較することでも分かるように、テーパ状外周面404において傾斜角度の大きな急傾斜面412を設けることで弾性的な復元力における軸方向成分を増大させることができる。なお、図19中において二点鎖線で図示される、単一の傾斜角度を有するテーパ状外周面418の傾斜角度は11.5度とされている。
【0205】
すなわち、押し子396におけるディスク弁314への挿入領域406において、先端側傾斜面408(例えば、傾斜角度が11.5度)よりも傾斜角度の大きな急傾斜面412を設けることで、ディスク弁314の弾性的な復元力を押し子396に対して基端側に、より効果的に作用させることができることから、シリンジ414の抜去時において押し子396をより安定して基端側へ移動させることができる。したがって、従来構造(例えば前記特許文献2)の挿入領域は、単一の傾斜角度のみを有するシングルテーパ形状であったが、本発明に係る止血弁付留置針310は、挿入領域406において先端側よりも傾斜角度の大きな急傾斜面412を設けた点について、新規な構成を有するものである。
【0206】
また、本実施形態では、先端側傾斜面408が先細形状とされていることから、先端側傾斜面408の軸方向に対する傾斜角度βが0度~90度の範囲内とされる。すなわち、例えばシリンジ414における雄ルアー416の針ハブハウジング316への挿入量、即ち押し子396の先端側への移動量が小さい場合には、ディスク弁314と急傾斜面412との当接面積が小さく、それ故、ディスク弁314の弾性的な復元力が小さくなり、押し子396が基端側に移動しづらくなる。しかしながら、上記の傾斜角度βを有する先端側傾斜面408を設けて、押し子396が先端側に移動した際に先端側傾斜面408とディスク弁314とを当接させることで、ディスク弁314の弾性的な復元力から有効な軸方向成分を得やすくすることができる。これにより、押し子396の先端側への移動量が小さい場合でも、シリンジ414の抜去に伴い押し子396を安定して基端側に移動させることができる。
【0207】
さらに、本実施形態では、基端側傾斜面410が先細形状とされていることから、基端側傾斜面410の軸方向に対する傾斜角度γが0度~90度の範囲内とされる。すなわち、例えばシリンジ414における雄ルアー416の針ハブハウジング316への挿入量、即ち押し子396の先端側への移動量が大きい場合には、押し子396を初期位置まで押し戻す際に、より大きなディスク弁314の復元力が必要となるが、上記の傾斜角度γを有する基端側傾斜面410を設けることで、急傾斜面412だけでなく基端側傾斜面410からも有効な軸方向力を得ることができる。これにより、押し子396の先端側への移動量が大きい場合でも、シリンジ414の抜去に伴い押し子396を安定して基端側に移動させることができる。
【0208】
すなわち、本実施形態の止血弁付留置針310では、シリンジ414における雄ルアー416の針ハブハウジング316への挿入量が大きい場合であっても小さい場合であっても、要するに雄ルアー416の針ハブハウジング316への挿入量に拘らず、押し子396を安定して基端側に移動させることができる。ちなみに、現在市場に流通している、かかる止血弁付留置針310に接続され得る外部流路の雄ルアー416の長さは様々で、最大で1.7mmの違いがあることが確認されている。ここにおいて、本実施形態では、押し子396の先端から1.7mmの位置に急傾斜面412の先端を設けていることから、雄ルアー416の長さに拘らず、ディスク弁314を一層確実に急傾斜面412に当接させることができて、押し子396に対して基端側への移動力を安定して得ることができる。
【0209】
特に、本実施形態のように、先端側傾斜面408の傾斜角度βを基端側傾斜面410の傾斜角度γより大きく設定することで、上記のように基端側への有効な移動力を得つつ、基端側傾斜面410における軸方向寸法、ひいてはディスク弁314への挿入領域406の軸方向寸法を十分に確保することができる。これにより、押し子396がより確実にディスク弁314に挿入されて、内部流路318の連通状態が安定して維持され得る。
【0210】
なお、急傾斜面412の軸方向に対する傾斜角度αは、例えば90度や90度以上であってもよいが、本実施形態のように先細形状、即ち傾斜角度αを0度~90度の範囲内とすることで、押し子396の先端側への移動時(ディスク弁314の弾性変形時)において、ディスク弁314と急傾斜面412との間に隙間が生じるおそれが低減されて、急傾斜面412にディスク弁314の弾性的な復元力を効果的に及ぼすことができる。特に、急傾斜面412の傾斜角度αを軸方向で略一定とすることで、局所的な凹凸が形成されないことから、ディスク弁314と急傾斜面412との間に隙間が生じるおそれが一層低減され得る。
【0211】
また、先端側傾斜面408および基端側傾斜面410の傾斜角度β,γを軸方向で略一定とすることで、先端側傾斜面408および基端側傾斜面410とディスク弁314との間に隙間が生じるおそれも低減されることから、ディスク弁314の弾性的な復元力を押し子396に対して基端側への移動力として効果的に及ぼすことができる。
【0212】
さらに、本実施形態では、針ハブハウジング316(内周側ハウジング334)の内周面362に係合突部364が設けられているとともに、押し子396の外周面に当接部としての段差面400が設けられており、これら係合突部364と段差面400とが相互に当接することにより、押し子396の基端側への移動が規制されている。これにより、本実施形態のように、シリンジ414の抜去時においてディスク弁314の弾性的な復元作用により押し子396が基端側に移動し易くなった場合でも、針ハブハウジング316からの押し子396の脱落が効果的に防止され得る。
【0213】
更にまた、本実施形態では、針ハブハウジング316が、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334を内外挿することで構成されており、これら外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との間でディスク弁314が支持されることから、針ハブハウジング316とディスク弁314との組付けが容易とされ得る。特に、ディスク弁314の筒状支持部390が、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334との径方向間で圧縮状態で挟まれて支持されることから、押し子396の先端側への移動時、即ちディスク弁314の先端側への弾性変形時にも、ディスク弁314が針ハブハウジング316から抜け落ちることが防止され得る。
【0214】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0215】
たとえば、留置針組立体を構成する内針ユニットは、前記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、内針と内針ハブとを含んで構成される従来公知の内針ユニットが採用され得る。すなわち、針先プロテクタの形状も前記実施形態のものに限定されるものではない。尤も、本発明に係る留置針組立体122において、針先プロテクタ132は必須なものではなく、また、接続キャップ172も必須なものではない。
【0216】
また、本発明に係る止血弁付留置針10において、弾性チューブ28は必須なものではない。すなわち、前記実施形態では、カニューラ12が針ハブ24に固定支持されていたが、カニューラ12は接続コネクタ14に固定支持されてもよく、要するに接続コネクタ14が針ハブの機能を備えていてもよい。
【0217】
さらに、前記実施形態では、コネクタカバー32の内周面44に凹溝60が設けられて、当該凹溝60の開口部114がディスク弁16で覆蓋されることで、エア抜き通路118を構成するトンネル状の通路116が構成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、ディスク弁16の外周面に凹溝60を設けて、当該凹溝60の開口部114がコネクタカバー32の内周面44により覆蓋されることでトンネル状の通路116が構成されるようになっていてもよいし、コネクタカバー32の内周面44とディスク弁16の外周面との両方に凹溝を設けて、これら凹溝の開口周縁部を相互に突き合わせることでトンネル状の通路が構成されるようになっていてもよい。なお、前記実施形態では4つ(二対)の凹溝60,60,60,60が設けられていたが、かかる態様に限定されるものではなく、例えば1つや2つ(一対)、3つ以上でもよく、その数は何等限定されるものではない。
【0218】
更にまた、前記第1の実施形態では、エア抜き通路118が、トンネル状の通路116,116,116,116、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との隙間108,108,110,110とを含んで構成されており、内部流路18におけるディスク弁16よりカニューラ12側のエアが係合孔50,50を通じて外部空間に排出されるようになっていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、エア抜き通路118の形状や、内部流路18への開口位置または外部空間への開口位置などは何等限定されるものではない。たとえば、コネクタカバー32の周壁36に貫通孔を設けて、当該貫通孔によりエア抜き通路が構成されてもよい。かかる場合には、当該貫通孔内にフィルタが圧縮された状態で装着される。また、エア抜き通路の外部空間への開口位置が、例えばガイドコネクタ34の内周面62に設けられてもよく、即ち止血弁付留置針10の内部流路18におけるディスク弁16より先端側の空間は、エア抜き通路を通じてディスク弁16より基端側の空間に連通されてもよい。かかる場合には、ガイドコネクタ34の基端側開口部86を通じて、内部流路18におけるディスク弁16より先端側の空間のエア抜きが達成される。なお、互いに独立した複数のエア抜き通路を並列的に設けることも可能である。
【0219】
さらに、前記第1の実施形態では、エア抜き通路118上に略環状の収容領域112が設けられて、当該収容領域112に略筒状のフィルタ120が配されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、例えば収容領域が周方向で分断されて半環状とされる場合には、当該収容領域の形状に合わせてフィルタが半筒状とされてもよく、フィルタ120の形状は、エア抜き通路118や収容領域112の形状に合わせて適宜変更され得る。
【0220】
更にまた、前記第1の実施形態では、組付前におけるフィルタ120の径方向幅寸法が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向対向寸法より大きくされて、フィルタ120が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間に挟まれることで、径方向で圧縮されるようになっていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、組付前におけるフィルタ120の径方向幅寸法は、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向対向寸法と略等しいか僅かに小さくてもよく、例えば、コネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間に別の部材を介在させることで、フィルタ120が径方向で圧縮されるようになっていてもよいし、フィルタ120が、ディスク弁16とガイドコネクタ34との軸方向間で圧縮されることにより径方向に膨らんで、これによりコネクタカバー32とガイドコネクタ34との径方向間で圧縮されるようになっていてもよい。
【0221】
また、前記第1の実施形態では、接続コネクタ14がコネクタカバー32とガイドコネクタ34とを含んで構成されていたが、接続コネクタは、一体成形品による1つの部材により構成されてもよい。さらに、前記実施形態のように複数の部材により構成される場合であっても、これら複数の部材は、例えば単なる筒状体とされてもよい。更にまた、前記実施形態では、ガイドコネクタ34の先端部分がコネクタカバー32に挿入されていたが、例えばコネクタカバー32の基端部分がガイドコネクタ34に挿入されてもよいし、コネクタカバー32の基端側開口部52とガイドコネクタ34の先端側開口部とを相互に突き合わせて、接着や溶着などにより固着してもよい。
【0222】
前記実施形態では、空気流出口が、コネクタカバー32とガイドコネクタ34(194)との位置決めに利用される係合孔50,50によって構成されていたが、空気流出口を係合孔50,50とは別に設けることも可能であり、例えば、コネクタカバー32の周壁36における係合孔50,50よりも先端側に開口するように形成され得る。
【0223】
また、前記実施形態では、フィルタ120(220)を挟持する硬質部材が、接続コネクタ14(192)の構成部材や、ディスク弁16を支持する弁支持部材204によって構成されている例を示したが、例えば、接続コネクタ14や弁支持部材204とは別に硬質部材を設けることも可能である。また、薄膜状のメンブレンフィルタを採用する場合において、メンブレンフィルタの外周端部をコネクタカバーに押し付けて挟持する環状の硬質部材を採用することも考えられる。なお、上記構造を採用する場合には、メンブレンフィルタの外周端部が硬質部材とコネクタカバーによって挟持されているだけでなく、メンブレンフィルタの外周端部が硬質部材とコネクタカバーの少なくとも一方に溶着されることが望ましい。
【0224】
また、前記第1の実施形態において、フィルタ120が径方向に挟まれて圧縮状態で装着された態様を示すとともに、前記第2の実施形態において、フィルタ220がエアの流れる方向に対して直交する方向(径方向および軸方向)に挟まれて圧縮状態で装着された態様を示したが、径方向および軸方向に対して傾斜する方向で挟まれて圧縮されていてもよい。更に、例えば環状ではない湾曲板状のフィルタが止血弁付留置針の周方向で挟まれて圧縮されていてもよい。加えて、上記の如きメンブレンフィルタを用いる場合には、フィルタがエアの流れる方向に対して直交する方向に圧縮状態で配されることは必須ではなく、フィルタが薄膜状であることから、圧縮されずに装着される場合もある。
【0225】
更にまた、フィルタの配設位置は、第1の実施形態や第2の実施形態の態様に限定されるものでなく、接続コネクタに設けられたエア抜き通路内の任意の場所にフィルタを配置することが可能である。具体的には、エア抜き通路の形態に応じて、例えば止血弁の外周側や止血弁よりも先端側や基端側の任意の位置において、フィルタを、径方向又は軸方向で圧縮状態で、或いは非圧縮状態で、エア抜き通路内に配置することができる。
【0226】
なお、フィルタの濾材は特に限定されず、各種の材質や構造が採用可能であり、例えば、実施形態に例示したような立体的な濾過構造体の他、メンブレンフィルタの如き平面的な濾過構造体も採用され得る。また、例えば、フィルタに液体を吸収する高吸収性高分子を担持させることも可能である他、液体がフィルタをより通過し難くなるように、液体の通過を防止する機能を更に付与することもできる。さらに、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが採用されるが、当然として如何なる状態においても完全な液密性を有するフィルタに限定されるものではない。すなわち、フィルタは、液体を容易には通過させないものであるが、フィルタの液体不透過性能の限界は存在することから、液体がフィルタに対して過剰に大きな圧力で接する場合、フィルタの液体不透過性能の限界を超えれば液体がフィルタを通過し得る。
【0227】
また、例えば、前記第3の実施形態では、急傾斜面412が先細形状、即ち急傾斜面412の軸方向に対する傾斜角度αが0度~90度の範囲内に設定されていたが、急傾斜面412の傾斜角度αは、90度であってもよいし、90度より大きくてもよい。すなわち、急傾斜面412の傾斜角度αが90度とされる場合は、当該急傾斜面412は、軸直角方向に広がる段差状面とされる。また、前記実施形態では、先端側傾斜面408および基端側傾斜面410も先細形状、即ち先端側傾斜面408および基端側傾斜面410の軸方向に対する傾斜角度β,γも0度~90度の範囲内に設定されていたが、先端側傾斜面408および基端側傾斜面410の傾斜角度β,γは0度であってもよい。すなわち、急傾斜面412の先端側および/または基端側は、軸方向に対して傾斜しない(軸方向に対して平行な)環状面であってもよい。
【0228】
また、前記第3の実施形態では、先端側傾斜面408、基端側傾斜面410、急傾斜面412の傾斜角度が軸方向で略一定とされていたが、かかる態様に限定されるものではなく、例えばそれぞれ傾斜角度が軸方向で次第に変化する湾曲面とされてもよい。すなわち、例えば押し子396の先端部分に設けられるテーパ状外周面404は、軸方向の略全長に亘って傾斜角度が滑らかに変化する湾曲面により構成されてもよい。
【0229】
さらに、前記第3の実施形態では、テーパ状外周面404の軸方向中間部分に環状の急傾斜面412が1つ設けられていたが、軸方向で相互に離隔する複数の急傾斜面412が設けられてもよい。すなわち、急傾斜面412の先端側および/または基端側は、屈曲または湾曲して傾斜角度が変化する部分を有していてもよい。要するに、急傾斜面412の先端側および/または基端側には、1つまたは複数の軸直角方向に広がる段差状面が設けられてもよく、例えば押し子396の先端部分が、略全体に亘って先細となる階段状とされてもよい。かかる場合には、軸方向で相互に離隔して軸直角方向に広がる急傾斜面412が複数設けられていると捉えることも可能であるし、1つの軸直角方向に広がる急傾斜面412よりも先端側および基端側の部分がそれぞれ階段状とされていると把握することも可能である。
【0230】
更にまた、前記第3の実施形態では、針ハブハウジング316が、外周側ハウジング332と内周側ハウジング334とを含んで構成されていたが、針ハブハウジング316は一体で形成されてもよい。また、別体とされた部材を相互に組み付けて固定する場合であっても、前記実施形態のように内外挿により組み付けられる必要はなく、例えば軸方向で直列的に連結されてもよい。さらに、別体とされた部材の固定手段は、前記実施形態の如き係止構造に限定されるものではなく、溶着や接着など、従来公知の固定手段が何れも採用され得る。
【0231】
また、前記第3の実施形態では、押し子396の先端部分が、略全体として、先細形状とされたテーパ状外周面404により構成されていたが、かかる態様に限定されるものではなく、例えば押し子396の先端部分の外周面に、急傾斜面412を備える突起を設けるなどしてもよい。尤も、当該突起に対してディスク弁314が基端側から当接して押し子396の基端側への移動を妨げる態様は好ましくない。
【0232】
さらに、前記第3の実施形態では、押し子396のテーパ状外周面404において、基端側傾斜面410の軸方向中間部分から先端側がディスク弁314に挿入される挿入領域406とされていたが、かかる態様に限定されるものではなく、先端側に弾性変形せしめられたディスク弁314が急傾斜面412に当接するようになっていればよい。すなわち、例えば急傾斜面412から先端側が挿入領域406とされてもよく、本発明において、急傾斜面412から基端側の形状は何等限定されるものではない。
【0233】
なお、前記第3の実施形態の押し子396では、基端側傾斜面410の基端部分がストレート状外周面402より外周側に位置して、これら基端側傾斜面410とストレート状外周面402との間に段差面400が形成されていたが、かかる段差面400は必須なものでなく、即ち、例えばストレート状外周面402の先端部分に連続して急傾斜面412や基端側傾斜面410が形成されてもよい。尤も、基端側傾斜面410の基端部分をストレート状外周面402の外周側まで突出させることで段差面400を巧く形成することが可能であり、当該段差面400と針ハブハウジング316の内周面362に設けられた係合突部364とを組み合わせることで、押し子396の基端側への移動規制機構を設けることができる。
【0234】
また、前記第3の実施形態に係る押し子396の外周面において、少なくとも弾性弁体(ディスク弁314)が当接する部分(例えば、挿入領域406の外周面)には、潤滑剤が塗布されることが好ましく、特に急傾斜面412に塗布されることが好ましい。これにより、外部流路の抜去時の押し子396の基端側への戻りがスムーズになる。すなわち、本発明に係る押し子396では、急傾斜面412の傾斜角度が大きいので、弾性弁体に差し入れられた押し子396を基端側へ押し戻す方向に作用する弾性弁体による反発力の効率は上がるが、摩擦力が増大する。そこで、押し子396と弾性弁体との接触面の摩擦力を潤滑剤で下げることにより、弾性弁体の復元変形に伴う押し子396の基端側への戻り性を更に向上させることが可能になる。なお、採用する潤滑剤の組成や粘度などの具体的仕様は、押し子や弾性弁体の設計に応じて適宜に選択すればよいし、押し子396への潤滑剤の付着方法も限定されない。また、潤滑剤は、押し子396の外周面に塗布されることが好ましいが、押し子396に加えて又は代えて、ディスク弁314の表面に塗布等されてもよい。
【符号の説明】
【0235】
10,190,310:止血弁付留置針(外針ユニット)、12:カニューラ、14,192:接続コネクタ、16,314:ディスク弁(止血弁,弾性弁体)、18:内部流路、32:コネクタカバー(硬質部材)、34,194:ガイドコネクタ(硬質部材)、36:コネクタカバーの周壁、44:コネクタカバーの内周面、46:ガイドコネクタの外周面、50:係合孔、60:凹溝、74:環状支持部、78:係合突起、89:内孔(内部流路を構成する流路)、108,110,214:隙間、114:凹溝の開口部、116:トンネル状の通路、118,218:エア抜き通路、120,220:フィルタ、122:留置針組立体、128:内針、204:弁支持部材(硬質部材)、212:圧縮リブ、222:嵌着部、316:針ハブハウジング(ハウジング,接続コネクタ)、332:外周側ハウジング(コネクタカバー)、334:内周側ハウジング(ガイドコネクタ)、364:係合突部(係合壁部)、390:筒状支持部、90,396:押し子、92,400:段差面(当接部)、94,404:テーパ状外周面、406:挿入領域、408:先端側傾斜面、410:基端側傾斜面、97,412:急傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的に血管に挿し入れられるカニューラを先端側に有していると共に、接続コネクタを基端側に備えており、該カニューラから該接続コネクタに至る内部流路が形成されていると共に、該接続コネクタの内部に止血弁が配されている止血弁付留置針において、
前記接続コネクタには前記内部流路を前記止血弁よりも前記カニューラ側において外部空間へ連通させるエア抜き通路が形成されており、該エア抜き通路上に、気体は通過させるが液体は通過させないフィルタが装着されていると共に、
該接続コネクタが、該内部流路を構成する流路を有するガイドコネクタと、該ガイドコネクタの先端部が挿入されて固定されるコネクタカバーとを含んで構成されており、且つ、
該ガイドコネクタの外周面には外周側に突出する係合突起が設けられている一方、該コネクタカバーの周壁には径方向で貫通する係合孔が設けられており、該ガイドコネクタの先端部が該コネクタカバーに挿入されることで該係合突起が該係合孔に係合して、該ガイドコネクタと該コネクタカバーが相互に固定されていると共に、該係合孔を含んで前記エア抜き通路が構成されていることを特徴とする止血弁付留置針。