(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026776
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】音声会話装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230221BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 318D
H04R1/00 328D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132114
(22)【出願日】2021-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】520154438
【氏名又は名称】末次 功憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】末次 功憲
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AC16
5D017BB16
5D220AA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静寂でない環境や少し離れた距離で周囲への漏洩を抑制しながら特定の会話相手と会話ができる音声会話装置を提供する。
【解決手段】互いに離隔した複数の話者が双方向で会話するための音声会話装置1は、話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォン10と、音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調部20と、変調部20により変調された信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段である超音波スピーカ30と、超音波スピーカ30が他の音声会話装置1に向くように位置合わせを行う位置合わせ手段である位置合わせ部40と、近距離無線通信により自機と他の音声会話装置とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング処理部50と、会話の開始を受け付けて、ペアリング処理の成功後、超音波スピーカ30を発信させる制御部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔した複数の話者が双方向で会話する音声会話装置であって、
前記話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段と、
前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行う位置合わせ手段と、
近距離無線通信により自機と他の前記音声会話装置とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング手段と、
会話の開始を受け付けて、前記ペアリング処理の成功後、前記音波発信手段を発信させる制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする音声会話装置。
【請求項2】
前記制御手段は、複数の他の前記音声会話装置に対して時間をずらしながら順に前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声会話装置。
【請求項3】
前記ペアリング処理が不成立の場合、前記制御手段は、前記位置合わせ手段により前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向いていることが確認された場合に、他の前記音声会話装置に対して前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声会話装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、前記音波発信手段の音波発信方向における手前側に設けられたのぞき窓と、前記のぞき窓に埋設された目印からなり、前記目印を他の前記音声会話装置と合わせることで前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、自機から他の前記音声会話装置に向かって可視光を照射する発光素子であり、前記可視光が他の前記音声会話装置に照射されるように位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項6】
前記話者を隔てる仕切りに取り付けるための装着部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項7】
前記仕切りは、相対する前記話者同士を隔てる隔壁である、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項8】
前記仕切りは、前記話者の顔面の少なくとも一部を覆う透明性のフェースガードである、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項9】
前記仕切りは、前記話者の口及び鼻を覆うマスクである、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項10】
前記話者の身に着ける装身部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項11】
前記装身部は、前記話者の首に掛けるストラップを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【請求項12】
前記装身部は、前記話者の耳に掛ける耳掛けを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【請求項13】
前記装身部は、前記話者の頭に掛けるバンドを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声会話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
話者が保持して一人の聴取者に対する会話に使用する携帯式拡声器であって、音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、マイクロフォンにより変換された音声信号を増幅する増幅器と、増幅器で増幅された音声信号を音声に変換するドライブ・ユニットと、使用時に聴取者の耳殻部分に密着させて増幅された音声が外部に漏れるのを防止する耳当パッドとを備えたスピーカ部とを有する携帯式拡声器が知られている(特許文献1)。
【0003】
音声信号を記録している音声再生手段と前記音声再生手段から出力された音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調手段と前記変調手段により生成された信号に基づいて超音波を搬送波とする音声を放射する超指向性スピーカとを備えた音声拡声装置において、音声を聴視する利用者を検知する複数のセンサと、超指向性スピーカの向きを変化させる支持台と、センサの検知信号に応じて音声再生手段から音声信号を出力させると共に支持台を制御して超指向性スピーカの向きを変化させる制御手段とを備えた音声拡声装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-120495号公報
【特許文献2】特開2006-333122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、静寂でない環境や少し離れた距離で周囲への音声の漏洩を抑制しながら特定の会話相手と会話ができる音声会話装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の音声会話装置は、
互いに離隔した複数の話者が双方向で会話する音声会話装置であって、
前記話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段と、
前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行う位置合わせ手段と、
近距離無線通信により自機と他の前記音声会話装置とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング手段と、
会話の開始を受け付けて、前記ペアリング処理の成功後、前記音波発信手段を発信させる制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の音声会話装置において、
前記制御手段は、複数の他の前記音声会話装置に対して時間をずらしながら順に前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の音声会話装置において、
前記ペアリング処理が不成立の場合、前記制御手段は、前記位置合わせ手段により前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向いていることが確認された場合に、他の前記音声会話装置に対して前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置において、
前記位置合わせ手段は、前記音波発信手段の音波発信方向における手前側に設けられたのぞき窓と、前記のぞき窓に埋設された目印からなり、前記目印を他の前記音声会話装置と合わせることで前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行う、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置において、
前記位置合わせ手段は、自機から他の前記音声会話装置に向かって可視光を照射する発光素子であり、前記可視光が他の前記音声会話装置に照射されるように位置合わせを行う、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置において、
前記話者を隔てる仕切りに取り付けるための装着部を有する、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の音声会話装置において、
前記仕切りは、相対する前記話者同士を隔てる隔壁である、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の音声会話装置において、
前記仕切りは、前記話者の顔面の少なくとも一部を覆う透明性のフェースガードである、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項6に記載の音声会話装置において、
前記仕切りは、前記話者の口及び鼻を覆うマスクである、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置において、
前記話者の身に着ける装身部を有する、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の音声会話装置において、
前記装身部は、前記話者の首に掛けるストラップを有する、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の音声会話装置において、
前記装身部は、前記話者の耳に掛ける耳掛けを有する、
ことを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項10に記載の音声会話装置において、
前記装身部は、前記話者の頭に掛けるバンドを有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、静寂でない環境や少し離れた距離で音声の周囲への漏洩を抑制しながら特定の会話相手と会話ができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、互いに離隔した複数の会話相手と時間をずらしながら会話することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、互いに離隔した会話相手と確実に会話することができる。
【0022】
請求項4、5に記載の発明によれば、会話相手の他の音声会話装置との位置合わせをすることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、話者を隔てる仕切りに容易に設置することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、話者を隔てる隔壁越しに会話ができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、フェースガード越しに明瞭な会話ができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、マスク越しに明瞭な会話ができる。
【0027】
請求項10、11、12、13に記載の発明によれば、音声会話装置をハンズフリーで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態に係る音声会話装置のブロック構成例を示すブロック図である。
【
図2】超音波スピーカの構成例を示す模式図である。
【
図3】位置合わせ部の構成例を示す音声会話装置の外形斜視図である。
【
図4】実施例1に係る音声会話装置の外形の一例を示す斜視図である。
【
図5】実施例2に係る音声会話装置の外形の一例を示す斜視図である。
【
図6】(a)はストラップを差し込むストラップホルダを有する実施例3に係る音声会話装置の一例を示す外形斜視図、(b)はストラップを有する実施例3に係る音声会話装置の装着状態を示す図である。
【
図7】(a)は耳掛けを有する実施例3に係る音声会話装置の一例を示す外形斜視図、(b)は耳掛けを有する実施例3に係る音声会話装置の装着状態を示す図である。
【
図8】(a)はバンドを有する実施例3に係る音声会話装置の一例を示す外形斜視図、(b)はバンドを有する実施例3に係る音声会話装置の装着状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、理解の容易のために説明に必要な要素以外の図示は適宜省略されている。
【0030】
(1)音声会話装置の構成と動作
図1は本実施形態に係る音声会話装置1のブロック構成例を示すブロック図、
図2は超音波スピーカ30の構成例を示す模式図、
図3は位置合わせ部40の構成例を示す音声会話装置1の外形斜視図である。
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る音声会話装置1について説明する。
【0031】
音声会話装置1は、
図1に示すように、話者の音声(可聴周波数の音波)を音声信号に変換するマイクロフォン10と、マイクロフォン10が集音した音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調部20と、変調部20により変調された音声信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段の一例としての超音波スピーカ30と、超音波スピーカ30が他の音声会話装置1に向くように位置合わせするための位置合わせ手段の一例としての位置合わせ部40と、近距離無線通信により時機と他の音声会話装置1とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング処理部50と、会話の開始を受け付けて、ペアリング処理の成功後、超音波スピーカ30を発信させる制御部60と、を備えて構成されている。
【0032】
マイクロフォン10は、話者の音声が届く位置に配置されて、話者の音声(可聴周波数の音波)を、音声信号に変換する変換器であり、マイクロフォン10で集音した音声信号が超音波スピーカ30を介して会話相手に送られる。
なお、マイクロフォン10の形式としては、話者の音声周波数を集音できるものであれば、ダイナミックマイク、コンデンサマイク等、特に限定されるものではない。また、マイクロフォン10の指向性も特に要求されるものではないが、話者の口元の音声を積極的に集音できるものであることが好ましい。
【0033】
超音波スピーカ30は、話者の音声信号を超音波周波数(20kHz以上の周波数)に変調する変調部20で変調された変調信号を増幅する増幅回路31によって超音波を発生させる超音波発生器であって、増幅回路31の駆動信号を空気振動に変換して、人間の可聴帯域よりも高い周波数(例えば20kHz以上)の空気振動を発生させる。超音波スピーカ30の構造や形式等は特に限定されないが、具体的な一例としては、超音波を出力する複数の超音波振動子32がアレイ状、例えばマトリックス状に集合配置されたものであり、他の音声会話装置1を有する会話相手の頭部(具体的には耳元付近)へ超音波の照射方向を向けて配置される。
【0034】
超音波振動子32は、
図2に示すように、シート状の振動部材32Aと、振動部材32Aの一方の面に全面が接着剤によって固定され、全面が振動部材32Aによって拘束されている圧電振動子32Bと、から構成され、振動部材32Aの縁は枠部32Cにより支持されている。
振動部材32Aは、金属や樹脂など、脆性材料である圧電振動子32Bに対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。振動部材32Aは、圧電振動子32Bから発生した振動によって振動し、例えば、周波数が20kHz以上の音波を発振する。圧電振動子32Bも、自身が振動することによって、例えば、周波数が20kHz以上の音波を発振する。
【0035】
このように構成される超音波スピーカ30は、話者の音声信号を超音波周波数(20kHz以上の周波数)に変調した超音波を会話相手の頭部に向けて与え、会話相手側(頭部付近や耳元付近など)で超音波から可聴周波数に自己変調させて、話者の音声(可聴周波数の音波)を会話相手側で発生させるものである。このように超音波スピーカ30は、指向性が高く、音声の周囲への漏洩を抑制して話者の音声を会話相手に伝達することができる。
【0036】
位置合わせ部40は、
図3(a)に示すように、超音波スピーカ30の音波発信方向(
図3(a)中 矢印R1参照)における手前側に設けられたのぞき窓41と、のぞき窓41に埋設された目印42からなり、目印42を会話相手が保持する他の音声会話装置1と合わせることで自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行うようになっている。
【0037】
のぞき窓41は、貫通した孔であり、位置合わせを行うための目印42が埋め込まれている。目印42は透明性を有する板材に印刷または刻印された十字、点または2本以上の線、矢印、目盛等、話者が容易に位置合わせをすることが可能である印であればよい。目印42は黒色でもよく、わかりやすいように赤等の黒色以外の色で形成されていてもよい。
また、のぞき窓41は、
図3(a)においては、円形であるが、多角形や楕円等、位置合わせの対象となる他の音声会話装置1が十分目視することができればどのような形状、大きさでもよい。
【0038】
「変形例」
位置合わせ部40は、
図3(b)に示すように、自機から他の音声会話装置1に向かって可視光を照射する発光素子43で構成されてもよい。発光素子43としては、可視光を発する素子であれば特に限定されないが、可視光帯域の発光波長を有するLED(発光ダイオード)素子が挙げられる。
話者は、自機の音声会話装置1の位置合わせ部40から他の音声会話装置1に向かって可視光を照射して(
図3(b)中 矢印R2参照)会話相手の位置を確認し、自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行ってもよい。
【0039】
本実施形態に係る音声会話装置1においては、指向性の高い超音波スピーカ30を使用しながら、位置合わせ部40によって自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行うことで、少し離れた距離にある会話相手に確実に話者の音声を伝達することができる。
【0040】
本実施形態において、音声会話装置1と他の音声会話装置1とは、近距離無線通信が可能になっている。例えば、ブルートゥース(登録商標)規格の近距離無線通信により相互に通信が可能になっている。
ブルートゥース(登録商標)規格の近距離無線通信は、数メートル程度の距離間での通信を可能にするものであり、例えば、話者の音声会話装置1と会話相手の他の音声会話装置1とが近距離無線通信により適切に通信ができれば、話者の音声会話装置1を中心にして半径が数メートル以内の範囲に会話相手の他の音声会話装置1が位置していると特定できる。
【0041】
ペアリング処理部50は、自機の音声会話装置1と、会話相手の他の音声会話装置1とを関連付ける。
ペアリング処理部50は、会話相手の他の音声会話装置1から順次に送信されてくるペアリング登録データに基づいて、ペアリング情報を更新する処理を行う。すなわち、ペアリング処理部50は、対応付けられている会話相手の他の音声会話装置1との間で近距離無線通信によりデータの送受が可能な状態にあるときには、ペアリング登録データを形成して、制御部60に送信する。また、ペアリング処理部50は、対応付けられている会話相手の他の音声会話装置1との間で近距離無線通信によりデータの送受が不能な状態にあるときには、ペアリング登録データを送信しない。このようにして、ペアリング処理部50が、ペアリング情報を更新して管理することにより、会話相手の他の音声会話装置1の存在/不存在を管理する。
【0042】
具体的に、ペアリング処理部50は、「ペアリング情報」が「OFF」である会話相手の他の音声会話装置1からペアリング登録データが送信されてきたときには、「ペアリング情報」を「ON」にする。そして、ペアリング処理部50は、ペアリング登録データが所定のタイミングごとに送信されてきている間は、「ペアリング情報」の「ON」を維持する。
このように、「ペアリング情報」が「ON」にされている会話相手の他の音声会話装置1は、対応付けられている話者の音声会話装置1とペアリングされている(あるいは、ペアリング状態である)という。
【0043】
また、ペアリング処理部50は、「ペアリング情報」が「ON」である会話相手の他の音声会話装置1からペアリング登録データが所定時間以上送信されてこないときには、ペアリングオフ(OFF)にする。そして、ペアリング登録情報が送信されてくるまで、「ペアリング情報」の「OFF」状態を維持する。
このように、「ペアリング情報」が「OFF」にされている会話相手の他の音声会話装置1は、対応付けられている話者の音声会話装置1とペアリングされていない(あるいはペアリング解除状態である)という。
【0044】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えたマイクロプロセッサであり、ペアリング処理部50のペアリング情報を用い、自機の超音波スピーカ30の発信制御を行う。すなわち、制御部60は、話者の会話開始の指示を受け付けて、ペアリング処理部50のペアリング情報を取得して、会話相手の音声会話装置1とペアリング状態にあると判断された場合、超音波スピーカ30を駆動してマイクロフォン10で集音した音声信号が会話相手に送信される。
ペアリングが不成立の場合、話者が位置合わせ部40を介して、自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行い、会話開始の指示をした場合、制御部60は、自機の超音波スピーカ30を駆動してマイクロフォン10で集音した音声信号を会話相手に送信する。これにより、互いに離隔した会話相手と確実に会話することができる。
【0045】
また、制御部60は、自機とペアリグされている会話相手の音声会話装置1の表示部13への表示制御も行う。具体的には、自機と会話相手の音声会話装置1がペアリング状態にある場合に、例えばLED(Light Emitting Diode)を点灯させ、ペアリング状態にない場合には、LEDを消灯させる。
【0046】
更に、制御部60は、自機と複数の会話相手の音声会話装置1がペアリングされている場合、ペアリング状態にある会話相手の音声会話装置1を順次切り替えながら、自機の超音波スピーカ30を駆動して音声信号を会話相手に送信する。具体的には、ペアリング状態にある複数の会話相手の音声会話装置1のうち、次に会話する予定の会話相手の音声会話装置1のみとペアリング状態を維持し、ペアリング状態にある会話相手の音声会話装置1に向かって音声信号を送信する。これにより、互いに離隔した複数の会話相手と時間をずらしながら会話することができる。
【0047】
このように、制御部60は、ペアリング処理部50と協働することにより、ペアリングされている会話相手の音声会話装置1を優先して音声信号を送信する。すなわち、音声会話装置1が、話者から会話開始の指示を受け付けた場合、制御部60は、ペアリング処理部50のペアリング情報を取得して、自機と会話相手の音声会話装置1とがペアリング状態にあるか否か判定する。ペアリング状態にあると判断された場合、自機と会話相手の音声会話装置1の表示部を点灯させ、自機の超音波スピーカ30を駆動してマイクロフォン10で集音した音声信号を会話相手に向かって送信する。
【0048】
ペアリング状態ではないと判断された場合、自機と会話相手の音声会話装置1の表示部は非点灯のまま、話者からの会話開始の指示を待つ。このとき、例えば、話者が位置合わせ部40を介して、自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行い、会話開始の指示をした場合、制御部60は、自機の超音波スピーカ30を駆動してマイクロフォン10で集音した音声信号を会話相手に送信する。
【0049】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る音声会話装置1Aの外形の一例を示す斜視図である。
音声会話装置1Aは、本体11と、本体11の先端側に取り付けられた超音波スピーカ30と、本体11の上部で超音波スピーカ30の音波発信方向における手前側に設けられた位置合わせ部40を含み、全体を片手で保持できる程度の大きさと重さで構成されている。
【0050】
本体11は、話者が手で保持する把持部11Aと、把持部11Aと繋がり前方に延びるスピーカ部11Bからなり、把持部11Aの内部には、制御部60、ペアリング処理部50、変調部20等が実装された基板(不図示)と、電池又は充電式電池で構成され基板及び超音波スピーカ30等に動作電力を供給する電源ユニット(不図示)が配置されている。
また、把持部11Aには、話者が会話の開始を指示するスイッチ12が配置され、スイッチ12を押下することで、制御部60は会話開始の指示を受け付ける。
【0051】
スピーカ部11Bの手前側(話者側)には、話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォン10が配置されている。また、スピーカ部11Bの手前側には、ペアリング状態を表示する表示部13が配置されている。
スピーカ部11Bの先端側には超音波スピーカ30が超音波振動子32が外側を向くようにして配置されている。スピーカ部11Bの上部にはマイクロフォン10と超音波スピーカ30の間に位置合わせ部40が配置されている。
【0052】
このように構成される音声会話装置1Aを少し離れた距離で会話する話者同士が保持することで、周囲への音声の漏洩を抑制しながら特定の会話相手と会話ができる。
特に、静寂でない環境でも、拡声器やメガホン等を用いることなく、大きな声を出すこともなく会話相手に音声を伝えることができる。
また、ペアリング処理部50で、会話相手の音声会話装置1Aとペアリング状態にあることを確認することで、一対一、或いは複数の会話相手を選択して会話することができる。
【0053】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る音声会話装置1Bの外形の一例を示す斜視図である。
音声会話装置1Bは、本体11と、本体11の先端側に取り付けられた超音波スピーカ30と、本体11の超音波スピーカ30とは反対側の手前側に取り付けられ、話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォン10と、本体11の上部で超音波スピーカ30の音波発信方向における手前側に設けられた位置合わせ部40と、話者を隔てる仕切りに取り付けるための装着部14を含み、音声会話装置1Bを仕切りに取り付けて話者同士が会話することができるように構成されている。
【0054】
本体11は、その内部に、制御部60、ペアリング処理部50、変調部20等が実装された基板(不図示)と、電池又は充電式電池で構成され、基板及び超音波スピーカ30等に動作電力を供給する電源ユニット(不図示)を収容している。また、本体11には、話者が会話の開始を指示するスイッチ12が配置され、スイッチ12を押下することで、制御部60は会話開始の指示を受け付ける。
【0055】
本体11には、音声会話装置1Bを仕切りに取り付けるための装着部14が設けられている。
装着部14は、仕切りの具体的な態様に応じて、音声会話装置1Bを仕切りに固定することができるように構成されている。装着部14としては、例えば、仕切りが相対する話者同士を隔てる隔壁の一例としてのアクリル板又はガラス板である場合は、その内部を真空状態/非真空状態に切り替えることができる吸盤機構が挙げられる。尚、装着部14としては、吸盤機構に限られず、両面テープ機構、フック機構、クランプ機構のいずれかであってもよい。
また、音声会話装置1Bを軽量小型に構成し、仕切りとして、話者の顔面の少なくとも一部を覆う透明性のフェースガードに吸盤機構で取り付けて使用してもよい。更に、仕切りが話者の口及び鼻を覆うマスクである場合は、マスクの表面に粘着剤で一時的に接着して使用してもよい。
【0056】
(実施例3)
図6、
図7、
図8は、実施例3に係る音声会話装置1Cの外形の一例を示す斜視図である。
音声会話装置1Cは、本体11と、本体11の正面側に取り付けられた超音波スピーカ30と、話者の口元に向けて配置され、話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォン10と、話者の身につける装身部15を含み、音声会話装置1Cを話者の身に着けてハンズフリーで話者同士が会話することができるように構成されている。
【0057】
装身部15は、音声会話装置1Cを話者の身に着けるための機構であり、本実施形態においては、話者の首に掛けるストラップ15A、話者の耳に掛ける耳掛け15B、話者の頭に掛けるバンド15Cが挙げられる。
このように、音声会話装置1Cは、話者が装身部15で身に着けて使用することから、位置合わせ部40を使用することなく、話者が会話相手の方向を向くことで会話相手との位置合わせが行われる。
【0058】
図6(a)にはストラップ15Aを差し込むストラップホルダ15aを有する音声会話装置1Cの外形の一例、
図6(b)にはストラップ15Aを有する音声会話装置1Cの装着状態を示している。
音声会話装置1Cは、本体11の正面に超音波スピーカ30が配置されている。本体11の上面には、マイクロフォン10の集音部10a、表示部13としてのペアリング状態確認ランプ(LED)が設けられている。本体11の側面には、話者が会話の開始を指示するスイッチ12が設けられている。そして、本体11の側面上部には、音声会話装置1Cを携帯できるようにストラップ15Aを差し込むストラップホルダ15aが設けられ、話者は音声会話装置1Cをストラップ15Aで首に掛けてハンズフリーで使用することができる。
【0059】
図7(a)には耳掛け15Bを有する音声会話装置1Cの外形の一例、
図7(b)には耳掛け15Bを有する音声会話装置1Cの装着状態を示している。
音声会話装置1Cは、話者が耳掛け15Bで左耳あるいは右耳に装着した場合に、外側となる本体11の前面に超音波スピーカ30が話者の正面を向くように配置されている(
図7(b)中 矢印参照)。また、本体側面には、話者が会話の開始を指示するスイッチ12が設けられている。
本体11の先端側には、マイクロフォン10の集音部10aが配置されている。尚、マイクロフォン10は、
図7(b)に示すように、マイクアーム10bを介して集音部10aが話者の口元に向くように取り付けられてもよい。
このように、音声会話装置1Cを耳掛け15Bで耳に掛けてハンズフリーで使用することができる。
【0060】
図8(a)にはバンド15Cを有する音声会話装置1Cの外形の一例、
図8(b)にはバンド15Cを有する音声会話装置1Cの装着状態を示している。
音声会話装置1Cは、話者がバンド15Cで頭に装着した場合に、外側となる本体11の前面に超音波スピーカ30が話者の正面を向くように配置されている(
図8(b)中 矢印参照)。
本体11の先端側には、マイクロフォン10の集音部10aが配置されている。尚、マイクロフォン10は、
図8(b)に示すように、マイクアーム10bを介して集音部10aが話者の口元に向くように取り付けられてもよい。また、本体側面には、話者が会話の開始を指示するスイッチ12が設けられている。
このように、音声会話装置1Cをバンド15Cで頭に装着してハンズフリーで使用することができる。
【0061】
実施例3に係る音声会話装置1Cは、装身部15を介して身に着けて使用できることから、話者が会話相手の方向を向いて発音することで、ハンズフリーで会話相手と会話することができる。尚、会話相手は、装身部15を備えた音声会話装置1Cを身に着けていてもよく、実施例1に係るハンド型の音声会話装置1Aを保持していてもよい。
【0062】
(3)音声会話装置の作用
本実施形態に係る音声会話装置1は、マイクロフォン10で集音した話者の音声を音声信号に変換し、変調部20で超音波を搬送波とする信号に変調する。変調部20により変調された信号は超音波を搬送波とする音波として超音波スピーカ30から発信され、会話相手側で超音波から可聴周波数に自己変調させて話者の音声(可聴周波数の音波)を会話相手側で発生させている。これにより、静寂でない環境や少し離れた距離で音声の周囲への漏洩を抑制しながら特定の会話相手と会話ができる。
【0063】
音声会話装置1は、指向性の高い超音波スピーカ30を使用しながら、位置合わせ部40によって自機の超音波スピーカ30が他の音声会話装置1を保持する会話相手に向くように位置合わせを行い、少し離れた距離にある会話相手に確実に話者の音声を伝達することができる。
【0064】
音声会話装置1は、ペアリング処理部50のペアリング情報を用い、自機の超音波スピーカ30の発信制御を行うことで、互いに離隔した話者と確実に会話することができる。
また、自機と複数の会話相手の音声会話装置1がペアリングされている場合、ペアリング状態にある会話相手の音声会話装置1を順次切り替えながら、自機の超音波スピーカ30を駆動して音声信号を会話相手に送信することで、複数の会話相手を選択して会話することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B、1C・・・音声会話装置
10・・・マイクロフォン
10a・・・集音部、10b・・・マイクアーム
11・・・本体、12・・・スイッチ、13・・・表示部、14・・・装着部、15・・・装身部
20・・・変調部
30・・・超音波スピーカ
31・・・増幅回路、32・・・超音波振動子
40・・・位置合わせ部
41・・・のぞき窓、42・・・目印、43・・・発光素子
50・・・ペアリング処理部
60・・・制御部
【手続補正書】
【提出日】2021-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔した複数の話者が双方向で会話する音声会話装置であって、
前記話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段と、
前記話者が、前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行うために利用する位置合わせ手段と、
近距離無線通信により自機と他の前記音声会話装置とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング手段と、
会話の開始を受け付けて、前記ペアリング処理の成功後、前記音波発信手段を発信させる制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする音声会話装置。
【請求項2】
前記制御手段は、複数の他の前記音声会話装置に対して時間をずらしながら順に前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声会話装置。
【請求項3】
前記ペアリング処理が不成立の場合、前記制御手段は、前記位置合わせ手段により前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向いていることが確認された場合に、他の前記音声会話装置に対して前記音波発信手段を発信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声会話装置。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、前記音波発信手段の音波発信方向における手前側に設けられたのぞき窓と、前記のぞき窓に埋設された目印からなり、前記目印を他の前記音声会話装置と合わせることで前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、自機から他の前記音声会話装置に向かって可視光を照射する発光素子であり、前記可視光が他の前記音声会話装置に照射されるように位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項6】
前記話者を隔てる仕切りに取り付けるための装着部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項7】
前記仕切りは、相対する前記話者同士を隔てる隔壁である、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項8】
前記仕切りは、前記話者の顔面の少なくとも一部を覆う透明性のフェースガードである、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項9】
前記仕切りは、前記話者の口及び鼻を覆うマスクである、
ことを特徴とする請求項6に記載の音声会話装置。
【請求項10】
前記話者の身に着ける装身部を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音声会話装置。
【請求項11】
前記装身部は、前記話者の首に掛けるストラップを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【請求項12】
前記装身部は、前記話者の耳に掛ける耳掛けを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【請求項13】
前記装身部は、前記話者の頭に掛けるバンドを有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の音声会話装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の音声会話装置は、
互いに離隔した複数の話者が双方向で会話する音声会話装置であって、
前記話者の音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号を超音波を搬送波とする信号に変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された前記信号を超音波を搬送波とする音波として発信する音波発信手段と、
前記話者が、前記音波発信手段が他の前記音声会話装置に向くように位置合わせを行うために利用する位置合わせ手段と、
近距離無線通信により自機と他の前記音声会話装置とを繋ぐペアリング処理を実行するペアリング手段と、
会話の開始を受け付けて、前記ペアリング処理の成功後、前記音波発信手段を発信させる制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする。