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特開2023-26786情報処理装置、プログラム、情報処理システム、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026786
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、情報処理システム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20230221BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230221BHJP
   G01S 5/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G06Q10/04
G01S5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132139
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】外園 喜大
(72)【発明者】
【氏名】飯野 卓見
【テーマコード(参考)】
5J062
5L049
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC18
5J062FF01
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】移動機器の測位精度を向上させる。
【解決手段】情報処理装置は、それぞれが地理的な探索範囲に関連付けられている複数の通信装置が移動機器から受信した無線信号の受信電力に関する情報を取得する手段と、複数の通信装置に対する無線信号の到来角に関する情報を取得する手段と、受信電力に関する情報を参照して、複数の通信装置のいずれかである基準通信装置を選択する手段と、到来角に関する情報を参照して、基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で移動機器の位置を推定する手段とを備える。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが地理的な探索範囲に関連付けられている複数の通信装置が移動機器から受信した無線信号の受信電力に関する情報を取得する手段と、
前記複数の通信装置に対する前記無線信号の到来角に関する情報を取得する手段と、
前記受信電力に関する情報を参照して、前記複数の通信装置のいずれかである基準通信装置を選択する手段と、
前記到来角に関する情報を参照して、前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置を推定する手段と
を具備する、情報処理装置。
【請求項2】
距離と、前記通信装置の設置位置と、当該通信装置の設置された空間の環境に関する情報とを参照して、当該通信装置に関連付け可能な探索範囲を決定する手段をさらに具備する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記通信装置の設置された空間の環境に関する情報は、当該通信装置が設置された建物の構造に関する情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記通信装置に関連付け可能な探索範囲を決定する手段は、前記建物の構造に関する情報を参照して、前記通信装置の周囲に存在する障害物の位置および特性を特定し、前記距離および当該通信装置の設置位置によって特定される地理的な範囲を当該障害物の位置および特性に応じて狭めることで、当該通信装置に関連付け可能な探索範囲を決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記通信装置に関連付け可能な探索範囲を決定する手段は、前記建物の構造に関する情報を参照して、当該通信装置が設置された領域に対して電波を遮断する物理的な境界を隔てている周辺領域、または移動時の障害物によって占められる障害物領域のうち少なくとも1つを特定し、前記距離および前記通信装置の設置位置によって特定される地理的な範囲から当該周辺領域、または当該障害物領域のうち少なくとも1つを除外することで、当該通信装置に関連付け可能な探索範囲を決定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記通信装置に関連付け可能な探索範囲を提示する手段をさらに具備する、
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
ユーザ指示に応じて前記通信装置に関連付けられる探索範囲を決定する手段をさらに具備する、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記基準通信装置を選択する手段は、前記受信電力に関する情報を参照して、前記複数の通信装置のうち前記無線信号による受信電力が最大であった通信装置を前記基準通信装置として選択する、
請求項1乃至7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記移動機器の位置を推定する手段は、前記到来角に関する情報を参照して前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置としての尤度が最大となる座標を探索することで、前記移動機器の位置の候補となる座標を決定する、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記移動機器の位置を推定する手段は、前記到来角に関する情報を参照して前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置の候補となる座標を決定し、前記位置の時間変化を平滑化するフィルタを前記移動機器の位置の候補となる座標に適用することで、前記移動機器の位置を推定する、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記移動機器の位置の推定結果を提示する手段をさらに具備する、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記移動機器の位置を推定する手段は、前記基準通信装置における受信電力に関する情報を参照して当該基準通信装置に関連付けられた探索範囲の少なくとも一部であるサブ範囲を選択し、選択したサブ範囲の中から前記移動機器の位置を推定する、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲について、当該探索範囲の一部である第1サブ範囲と、当該基準通信装置に対し前記第1サブ範囲よりも遠距離域をカバーする第2サブ範囲とが定義され、
前記移動機器の位置を推定する手段は、前記基準通信装置における受信電力が電力閾値以上である場合に、前記第1サブ範囲を選択する、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータに、請求項1~請求項13の何れかに記載の各手段を実現させるためのプログラム。
【請求項15】
ユーザ指示に応じて、複数の通信装置それぞれに関連付けられる探索範囲を決定する手段と、
前記複数の通信装置における、移動機器から送信された無線信号による受信電力に関する情報を取得する手段と、
前記複数の通信装置における前記無線信号の到来角に関する情報を取得する手段と、
前記受信電力に関する情報を参照して、前記複数の通信装置のうち受信電力が最大であった通信装置を基準通信装置として選択する手段と、
前記到来角に関する情報を参照して前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置としての尤度が最大となる座標を探索することで、前記移動機器の候補となる座標を決定し、カルマンフィルタを前記移動機器の位置の候補となる座標に適用することで、前記移動機器の位置を推定する手段と、
前記移動機器の位置の推定結果を提示する手段と
を具備する、情報処理装置。
【請求項16】
それぞれが地理的な探索範囲に関連付けられている複数の通信装置と、情報処理装置とを具備する情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記複数の通信装置が移動機器から受信した無線信号の受信電力に関する情報を取得する手段と、
前記複数の通信装置に対する前記無線信号の到来角に関する情報を取得する手段と、
前記受信電力に関する情報を参照して、前記複数の通信装置のいずれかである基準通信装置を選択する手段と、
前記到来角に関する情報を参照して、前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置を推定する手段と
を具備する、
情報処理システム。
【請求項17】
コンピュータが、
それぞれが地理的な探索範囲に関連付けられている複数の通信装置が移動機器から受信した無線信号の受信電力に関する情報を取得することと、
前記複数の通信装置に対する前記無線信号の到来角に関する情報を取得することと、
前記受信電力に関する情報を参照して、前記複数の通信装置のいずれかである基準通信装置を選択することと、
前記到来角に関する情報を参照して、前記基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で前記移動機器の位置を推定することと
を実行する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、情報処理システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者、または対象物の正確な位置を把握する技術が求められている。
特許文献1には、天井に設置される機器から受信した無線信号の受信角度と、測定装置の設置位置とに基づいて機器の設置位置を推定する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-082401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、機器の設置位置を精度良く推定することを企図されている。しかしながら、特許文献1の技術は、固定された機器を対象としており、時々刻々と位置が変化する可能性のある移動機器に対して直ちに適用することはできない。
【0005】
本発明の目的は、移動機器の測位精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の情報処理装置は、それぞれが地理的な探索範囲に関連付けられている複数の通信装置が移動機器から受信した無線信号の受信電力に関する情報を取得する手段と、複数の通信装置に対する無線信号の到来角に関する情報を取得する手段と、受信電力に関する情報を参照して、複数の通信装置のいずれかである基準通信装置を選択する手段と、到来角に関する情報を参照して、基準通信装置に関連付けられた探索範囲の中で移動機器の位置を推定する手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態のロケータの構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態の管理端末の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の概要の説明図である。
図6】本実施形態のロケータデータベースのデータ構造を示す図である。
図7】本実施形態の受信ログデータベースのデータ構造を示す図である。
図8】本実施形態のサーバによる測位処理のフローチャートである。
図9】本実施形態の管理端末及びサーバによる探索範囲編集処理のフローチャートである。
図10】本実施形態の探索範囲編集処理において表示される画面例を示す図である。
図11】本実施形態の探索範囲編集処理において表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0009】
以降の説明において、各ロケータに共通の説明を述べる場合に、単に「10」の符号を用いることがある。他方、個別のロケータの説明を述べる場合に、「10-1」、または「10-2」のように「10」に添え字を付した符号を用いることがある。
【0010】
(1)情報処理システムの構成
情報処理システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、情報処理システム1は、ロケータ10-1,10-2と、サーバ30と、管理端末70と、を備える。情報処理システム1は、測位システムと呼ぶこともできる。
ロケータ10は、サーバ30とネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。ここで、サーバ30に接続可能なロケータ10の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。ロケータ10は、移動機器50から送信される無線信号を受信可能に構成される。
サーバ30は、管理端末70とネットワークNWを介して接続される。
【0012】
ロケータ10は、情報処理装置または(無線)通信装置の一例である。ロケータ10は、移動機器50(例えば、無線タグ又はスマートフォン)から送信される無線信号(電波)を受信し、当該無線信号の受信電力(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator))を測定し、かつ当該無線信号のロケータ10に対する到来角を推定する。ロケータ10は、受信電力に関する情報(以下、「受信電力情報」という)と、到来角に関する情報(以下、「到来角情報」という)とを含む受信ログをサーバ30へ送信する。
【0013】
サーバ30は、情報処理装置の一例である。サーバ30は、測位装置と呼ぶこともできる。サーバ30は、複数のロケータ10から送信された受信電力情報および到来角情報と複数のロケータ10の位置とを参照し、移動機器の位置を推定する。サーバ30は、1以上の物理コンピュータによって構成され得る。
サーバ30は、管理端末70から送信されたリクエストに応じたレスポンスを管理端末70に提供する。
【0014】
移動機器50は、例えば、スマートフォン、無線タグ、または無線信号の送信機能を備えた任意のデバイスに相当する。移動機器50は、例えば、人間に所持され、または他の動体に備え付けられる。つまり、情報処理システム1によれば、人間または他の動体の測位が可能である。
なお、本実施形態では、情報処理システム1が移動機器50の位置を推定することで人間または他の動体の測位をする場合を中心に説明するが、情報処理システム1による測位対象はこれらに限定されない。例えば、情報処理システム1は、無線タグが設置された静止物の測位を行ってもよい。そして情報処理システム1は、その静止物の位置が変化したことに応じて所定の動作(例えばその物体の管理者への通知)を行ってもよい。
【0015】
管理端末70は、サーバ30にリクエストを送信する情報処理装置の一例である。管理端末70は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。
【0016】
(1-1)ロケータの構成
ロケータの構成について説明する。図2は、本実施形態のロケータの構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、ロケータ10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。
【0018】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0019】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0020】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0021】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、ロケータ10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0022】
入出力インタフェース13は、ロケータ10に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、ロケータ10に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、物理ボタン、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、又は、それらの組合せである。
【0023】
通信インタフェース14は、ロケータ10と外部装置(例えば、サーバ30、移動機器50、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
具体的には、通信インタフェース14は、例えばBluetooth(登録商標)(特にBLE(Bluetooth Low Energy))モジュールを含む。通信インタフェース14は、さらに、Wi-Fi(登録商標)モジュール、イーサネットモジュール、移動体通信(例えば、LTE、4G、または5G等)用モジュール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
なお、移動機器50のハードウェア構成も、上述のロケータ10の構成と同様である。ただし、移動機器50とロケータ10との具体的なハードウェア構成が異なっていてもよい。
【0024】
(1-2)サーバの構成
サーバの構成について説明する。図3は、本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、入出力インタフェース33と、通信インタフェース34とを備える。
【0026】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0027】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0028】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0029】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ32は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0030】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、サーバ30に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0031】
通信インタフェース34は、サーバ30と外部装置(例えば、ロケータ10、管理端末70、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
【0032】
(1-3)管理端末の構成
管理端末の構成について説明する。図4は、本実施形態の管理端末の構成を示すブロック図である。
【0033】
図4に示すように、管理端末70は、記憶装置71と、プロセッサ72と、入出力インタフェース73と、通信インタフェース74とを備える。管理端末70は、ディスプレイ81に接続される。
【0034】
記憶装置71は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置71は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0035】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0036】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0037】
プロセッサ72は、記憶装置71に記憶されたプログラムを起動することによって、管理端末70の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ72は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0038】
入出力インタフェース73は、管理端末70に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、管理端末70に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ81、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0039】
通信インタフェース74は、管理端末70と外部装置(例えばサーバ30)との間の通信を制御するように構成される。
【0040】
ディスプレイ81は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ81は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0041】
(2)実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。図5は、本実施形態の概要の説明図である。
【0042】
複数のロケータ10は、例えば建物の内部空間に設置され得る。具体的には、図5に示すように、ロケータ10-1~10-13が、空間SP10の天井、壁又は床に設置される。空間SP10は、複数の領域、すなわち部屋A~Dと、廊下とに区分される。空間SPには、例えば、テーブルTB1、壁、間仕切り、または扉、などの障害物が設置されている。障害物は、移動機器50の移動を阻む。障害物の一部は、領域間の電波の伝搬を遮断する遮蔽物としてもはたらく。
【0043】
各ロケータ10は、それぞれ地理的な探索範囲に関連付けられている。一例として、ロケータ10-1が、探索範囲SR10-1に関連付けられている。探索範囲SR10-1は、ロケータ10-1の位置を中心とする所定サイズの直方体に包含され、かつ部屋Dの内部である範囲として定義される。
【0044】
部屋Dに存在する移動機器50が、無線信号を送信する。この無線信号は、部屋Dに存在するロケータ10-1~10-3によって受信される。ロケータ10-1~10-3は、無線信号の受信電力を測定し、かつ当該無線信号の到来角(到来方向)を推定する。ロケータ10-1~10-3は、受信電力情報と到来角情報とを含む受信ログをサーバ30へ送信する。
【0045】
サーバ30は、受信電力情報を参照して、ロケータ10-1~10-3のうちロケータ10-1を基準通信装置として選択する。サーバ30は、到来角情報を参照して、基準通信装置に関連付けられた探索範囲SR10-1の中で移動機器50の位置を推定する。故に、サーバ30は、移動機器50が探索範囲SR10-1外の異常な場所(例えば、部屋Dの周囲の壁(つまり、障害物)の内部の位置P10a、または空間SP10の外の位置P10b)に位置するとは推定せず、妥当な推定結果を導き出すことができる。つまり、本実施形態のサーバ30によれば、移動機器の測位精度を向上させることができる。
【0046】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置31に記憶される。
【0047】
(3-1)ロケータデータベース
本実施形態のロケータデータベースについて説明する。図6は、本実施形態のロケータデータベースのデータ構造を示す図である。
【0048】
ロケータデータベースには、ロケータ情報が格納される。ロケータ情報は、ロケータ10に関する情報である。
【0049】
図6に示すように、ロケータデータベースは、「ロケータID」フィールドと、「空間ID」フィールドと、「設置位置」フィールドと、「探索範囲」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0050】
「ロケータID」フィールドには、ロケータIDが格納される。ロケータIDは、ロケータ情報に対応するロケータ10を識別する情報である。ロケータIDは、ロケータ情報の主キーとして用いることができる。
【0051】
「空間ID」フィールドには、空間IDが格納される。空間IDは、ロケータ情報に対応するロケータ10が設置されている空間を識別する情報である。空間IDは、様々な粒度で付与することができる。第1例として、空間IDは、建物ごとに付与される。第2例として、空間IDは、建物のフロアごとに付与される。第3例ととして、空間IDは、建物のフロア内の区画(例えば、部屋、または廊下)ごとに付与される。
【0052】
「設置位置」フィールドには、設置位置情報が格納される。設置位置情報は、ロケータIDによって識別されるロケータ10の設置位置に関する情報である。設置位置情報は、例えば何らかの基準座標系における2次元または3次元の座標である。例えばロケータ10の高さが既定である場合に、設置位置情報は、高さを含まない2次元座標で表現可能である。
【0053】
「探索範囲」フィールドには、探索範囲情報が格納される。探索範囲情報は、ロケータIDによって識別されるロケータ10に関連付けられる地理的な探索範囲に関する情報である。探索範囲情報は、アルゴリズム、ユーザ指示、またはそれらの組み合わせによって決定され得る。
【0054】
(3-2)受信ログデータベース
本実施形態の受信ログデータベースについて説明する。図7は、本実施形態の受信ログデータベースのデータ構造を示す図である。
【0055】
受信ログデータベースには、受信ログ情報が格納される。受信ログ情報は、サーバ30によって各ロケータ10から収集される受信ログに関する情報である。
【0056】
図7に示すように、受信ログデータベースは、「ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「ロケータID」フィールドと、「移動機器ID」フィールドと、「受信電力」フィールドと、「到来角」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0057】
「ログID」フィールドには、ログIDが格納される。ログIDは、受信ログを識別する情報である。ログIDは、受信ログ情報の主キーとして用いることができる。
【0058】
「日時」フィールドには、日時情報が格納される。日時情報は、受信ログに関連付けられる日時に関する情報である。一例として、日時情報は、ロケータ10による無線信号の受信日時、サーバ30における受信ログの取得日時、または移動機器50による無線信号の送信日時であり得る。
【0059】
「ロケータID」フィールドには、ロケータIDが格納される。ロケータIDは、受信ログの情報源であるロケータ10を識別する情報である。ロケータIDは、ロケータデータベース(図6)に登録されるロケータIDと1対1対応する。
【0060】
「移動機器ID」フィールドには、移動機器IDが格納される。移動機器IDは、受信ログの情報源であるロケータ10によって受信された無線信号の送信元である移動機器50を識別する情報である。移動機器IDの特定は、ロケータ10によって行われてもよいし、サーバ30によって行われてもよい。
【0061】
「受信電力」フィールドには、ロケータ10から収集された受信電力情報が格納される。
【0062】
「到来角」フィールドには、ロケータ10から収集された到来角情報が格納される。
【0063】
移動機器50は、無線信号を繰り返し送信する。この無線信号を受信したロケータ10は、当該無線信号の受信電力を測定し、かつ当該無線信号の到来角を推定する。ロケータ10は、受信電力情報および到来角情報を含む受信ログをサーバ30へ送信する。サーバ30は、受信ログをバックグラウンドで受信し、受信ログデータベース(図7)を更新する。
【0064】
(4)情報処理
本実施形態の情報処理について説明する。
【0065】
(4-1)測位処理
本実施形態の測位処理について説明する。図8は、本実施形態のサーバによる測位処理のフローチャートである。
【0066】
測位処理は、以下の開始条件のいずれかの成立に応じて開始する。
・他の処理によって測位処理が呼び出された(例えば、サーバ30が管理端末70から測位リクエストを受信した)。
・管理端末70のユーザが測位処理を呼び出すための操作を行った。
・サーバ30が所定の状態(例えば電源投入)になった。
・所定の日時が到来した。
・所定のイベント(例えば、サーバ30の起動、または測位処理の前回の実行)から所定の時間が経過した。
【0067】
図8に示すように、サーバ30は、各種情報の取得(S130)を実行する。
具体的には、サーバ30は、対象となる移動機器50(以下、「対象機器」という)の対象日時における位置を測定するために必要な各種情報を取得する。対象機器は、管理端末70のユーザによって指定されてもよいし、アルゴリズムによって決定されてもよい。対象日時は、管理端末70のユーザによって指定されてもよいし、アルゴリズムによって決定されてもよい。
一例として、サーバ30は、対象機器によって送信された無線信号を対象日時付近に受信したロケータ10から収集されたログ情報を取得する。例えば、サーバ30は、抽出条件を満足する受信ログ情報を受信ログデータベース(図7)から抽出する。抽出条件は、対象機器を識別する移動機器IDを備え、かつ対象日時付近の日時に関する日時情報を備えること、であってよい。
【0068】
ステップS130の後に、サーバ30は、基準通信装置の選択(S131)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS130において取得した受信電力情報を参照して、対象機器から送信された無線信号を対象日時付近に受信した複数のロケータ10のうちのいずれかを基準通信装置として選択する。一例として、サーバ30は、受信電力が最大であったロケータ10を基準通信装置として選択する。
【0069】
ステップS131の後に、サーバ30は、探索範囲の特定(S132)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS131において選択した基準通信装置に関連付けられる探索範囲を特定する。一例として、サーバ30は、ロケータデータベース(図6)を参照して、基準通信装置を識別するロケータIDに関連付けられる探索範囲を特定する。
【0070】
ステップS132の後に、サーバ30は、位置の推定(S133)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS130において取得した到来角情報を参照して、ステップS132において特定した探索範囲の中で対象機器の位置を推定する。
一例として、サーバ30は、探索範囲の中の各座標について、当該座標に対象機器が存在する尤もらしさを表す尤度(以下、「対象機器の位置としての尤度」という)を算出する。サーバ30は、尤度が最大となる座標を探索することで、対象機器の位置の候補となる座標を決定する。サーバ30は、位置の時間変化を平滑化するフィルタ(例えば、カルマンフィルタ)を対象機器の位置の候補となる座標に適用することで、当該対象機器の位置を推定する。
【0071】
ステップS133の後に、サーバ30は、位置の提示(S134)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS133において推定した対象機器の対象日時における位置を管理端末70のユーザに提示する。一例として、サーバ30は、この位置に関する情報を含むレスポンスを管理端末70へ送信する。管理端末70は、レスポンスに基づく画面をディスプレイ81に表示する。一例として、管理端末70は、空間を表現するマップ画像に、対象機器を表現するアイコンを重畳した画像をディスプレイに表示する。マップ画像におけるアイコンの位置は、対象機器の対象日時における位置に対応するように定められる。
【0072】
なお、サーバ30によるS134における位置の提示処理のタイミングは、S133における位置の推定処理の直後に限定されない。例えば、サーバ30は、S130~S133の処理を定期的に行うことで対象機器の位置情報を継続的に更新し、位置情報の提示の要求を受け付けたタイミングで最新の位置情報を提示してもよい。
【0073】
(4-2)探索範囲編集処理
本実施形態の探索範囲編集処理について説明する。図9は、本実施形態の管理端末及びサーバによる探索範囲編集処理のフローチャートである。図10は、本実施形態の探索範囲編集処理において表示される画面例を示す図である。図11は、本実施形態の探索範囲編集処理において表示される画面例を示す図である。
【0074】
図9の探索範囲編集処理は、以下の開始条件のいずれかに応じて開始する。
・他の処理によって探索範囲編集処理が呼び出された。
・管理端末70のユーザが探索範囲編集処理を呼び出すための操作を行った。
・管理端末70が所定の状態(例えばアプリ起動)になった。
・所定の日時が到来した。
・所定のイベントから所定の時間が経過した。
【0075】
図9に示すように、管理端末70は、指示の受付(S170)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ユーザ(つまり、オペレータ)からロケータ情報の閲覧または変更を希望する空間(以下、「対象空間」という)を選択する指示を受け付ける。
【0076】
一例として、管理端末70は、ディスプレイに画面P10(図10)を表示する。
図10の画面P10は、デジタルオブジェクト(操作オブジェクトB10a、および操作オブジェクトB10b)を含む。操作オブジェクトB10aは、選択可能な空間のいずれかに関連付けられている。
【0077】
管理端末70は、入力デバイスが受け付けたユーザ指示に応じて、対象空間を特定する。ユーザ指示は、例えば、タップ、クリック、キー入力、音声入力、および、ジェスチャ入力の少なくとも1つであってよい。管理端末70は、操作オブジェクトB10bが選択されたことに応じて、操作オブジェクトB10aの選択状態に対応する対象空間を特定する。
【0078】
ステップS170の後に、管理端末70は、リクエスト(S171)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS170において受け付けた指示に応じてリクエストを生成する。管理端末70は、生成したリクエストをサーバ30へ送信する。
一例として、管理端末70は、ステップS170において受け付けた指示によって特定された対象空間を識別する情報(例えば空間ID)を含むリクエストをサーバ30へ送信する。
【0079】
ステップS171の後に、サーバ30は、各種情報の取得(S230)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS171において送信されたリクエストを取得する。サーバ30は、上記リクエストに応じて、管理端末70が対象空間に関連付けられるロケータ10(例えば対象空間に設置されたロケータ10)のロケータ情報をユーザに閲覧させるために必要な情報を取得する。例えば、サーバ30は、以下の情報の少なくとも1つを取得してもよい。
・ロケータデータベース(図6)に格納されたロケータ情報
・対象空間の環境に関する情報
【0080】
対象空間の環境は、対象空間(例えば、建物)の構造を含む。一例として、対象空間の構造は、以下の少なくとも1つを含む。
・対象空間の形状
・対象空間に含まれる領域同士の関係
・対象空間における地理
・領域間の境界を構成する建築部材の数量もしくは特性
【0081】
対象空間の環境に関する情報は、対象空間の構造に関する情報を含む。対象空間の構造に関する情報は、例えば、空間モデル情報(一例として、BIM(Building Information Modeling)データ)、設計図情報、マップ情報、またはそれらの組み合わせである。
【0082】
ステップS230の後に、サーバ30は、レスポンス(S231)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS230において取得した情報を含むレスポンスを生成する。サーバ30は、生成したレスポンスを管理端末70へ送信する。
【0083】
ステップS231の後に、管理端末70は、指示の受付(S172)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ユーザから探索範囲情報の編集に関する指示を受け付ける。
【0084】
一例として、管理端末70は、ステップS231において送信されたレスポンスを取得する。管理端末70は、取得したレスポンスを参照して、画面P11(図11)を生成する。管理端末70は、ディスプレイに画面P11を表示する。これにより、ユーザは、対象空間に関連付けられるロケータ10のロケータ情報(特に、探索範囲情報)を閲覧することができる。
【0085】
画面P11は、表示オブジェクトA11a~A11bを含む。
表示オブジェクトA11aは、対象空間の環境に関する情報と、当該対象空間におけるロケータ10の配置に関する情報とを表示するオブジェクトである。表示オブジェクトA11a上では、対象空間の地理を表すマップ画像上に、各ロケータ10を表すロケータアイコンA11a1~A11a13が配置される。ロケータアイコンA11a1~A11a13の位置は、対応するロケータ10の設置位置に対応する。画面P11では、選択されているロケータアイコンは星印で、選択されていないロケータアイコンは三角印で、それぞれ描かれている。さらに、表示オブジェクトA11a上では、選択されているロケータアイコンに対応するロケータ10(以下、「対象ロケータ」という)の探索範囲を表示する表示オブジェクトA11cが表示される。ただし、アイコンの表示はこの例に限定されず、各ロケータ10のアイコンが同一種別であってもよい。また例えば、複数のロケータ10の位置関係によりアイコンの形状又は色が異なっていてもよい。具体的には、同じ部屋に設置されたロケータ10が同一種別のアイコンで表示されてもよい。
【0086】
表示オブジェクトA11bは、対象ロケータの探索範囲情報に関する設定を表示するオブジェクトである。表示オブジェクトA11bは、フィールドオブジェクトF11と、操作オブジェクトB11a~B11bとを含む。
【0087】
フィールドオブジェクトF11は、距離の指定を受け付けるオブジェクトである。距離は、対象ロケータの基本的な探索範囲のサイズを規定する。基本的な探索範囲の第1例は、対角線の長さが指定された距離の2倍に一致する正方形である上面および底面を有する直方体である。基本的な探索範囲の第2例は、対象ロケータの設置位置を中心とし、半径の長さが指定された距離に一致する円形である上面および底面を有する円柱である。これら直方体または円柱の高さ(つまり、上面の高さおよび底面の高さ)は、移動機器50の取り得る高さの範囲に基づいて、アルゴリズム、またはユーザ指示によって決定可能である。これら直方体または円柱は、中心軸(つまり、上面の中心および底面の中心を通る直線)が、対象ロケータの設置位置を通るように位置決めされる。
【0088】
操作オブジェクトB11aは、対象ロケータの設置されている領域(以下、「対象領域」という)の周囲にある他の領域(以下、「周辺領域」という)、または対象領域内の障害物(例えば、テーブル)によって占められる領域(以下、「障害物領域」という)を探索範囲に含めるか否かを切り替えるためのユーザ指示を受け付けるオブジェクト(チェックボックス)である。チェックを外されている操作オブジェクトB11aに対応する周辺領域または障害物領域は、対象ロケータの探索範囲に含めることができる。他方、チェックを入れられている操作オブジェクトB11aに対応する周辺領域または障害物領域は、対象ロケータの探索範囲から除外される。周辺領域および障害物領域は、対象空間の環境に関する情報を参照して特定することができる。
【0089】
対象領域と周辺領域との間に、電波を遮断する物理的な境界(例えば、壁などの障害物)が存在する場合に、当該周辺領域を対象ロケータの探索範囲から除外することで、対象ロケータに無線信号の届く可能性の殆どない場所に移動機器50が位置するとの誤った推定を防ぐことができる。他方、電波を遮断する物理的な境界が存在しない場合、または電波を部分的に遮断する物理的な境界(例えば、柱、間仕切りなどの障害物)が存在するに過ぎない場合に、当該周辺領域を対象ロケータの探索範囲に含められるようにすることで、対象領域外ではあるが対象ロケータに無線信号の届く可能性のある場所に移動機器50が存在する場合にも、当該移動機器50の位置を妥当に推定することができる。
【0090】
障害物領域を対象ロケータの探索範囲から除外することで、例えば壁の中、またはテーブルの上に移動機器50の所持者が位置するとの非現実的な推定を防ぐことができる。
【0091】
操作オブジェクトB11bは、対象ロケータの探索範囲情報の編集を確定するためのユーザ指示を受け付けるオブジェクトである。
【0092】
管理端末70は、ユーザ指示に応じて、ロケータアイコンA11a1~A11a13のいずれかを選択する。管理端末70は、選択されたロケータアイコンの形態を星印に変更し、その他のロケータアイコンの形態を三角印にする。さらに、管理端末70は、対象ロケータの探索範囲情報を参照し、表示オブジェクトA11bおよび表示オブジェクトA11cを表示する。
【0093】
管理端末70は、フィールドオブジェクトF11、または操作オブジェクトB11aに対するユーザ指示に応じて、対象ロケータの暫定的な探索範囲(つまり、対象ロケータに関連付け可能な探索範囲)を導出し、表示オブジェクトA11cを更新する。一例として、管理端末70は、対象ロケータの設置位置と、フィールドオブジェクトF11において指定された距離とに応じて基本的な探索範囲を決定し、チェックを入れられている操作オブジェクトB11aに対応する周辺領域または障害物領域を当該基本的な探索範囲から除外することで、対象ロケータの暫定的な探索範囲を導出する。
【0094】
ステップS172の後に、管理端末70は、リクエスト(S173)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS172において受け付けた指示に応じてリクエストを生成する。管理端末70は、生成したリクエストをサーバ30へ送信する。
一例として、管理端末70は、操作オブジェクトB11bの選択を受け付けると、その時点でのフィールドオブジェクトF11、および操作オブジェクトB11aの入力内容に基づく探索範囲情報を特定可能な情報(例えば入力内容、または当該入力内容に基づいて導出された探索範囲情報)と、対象ロケータを識別する情報(例えばロケータID)を含むリクエストを生成する。
【0095】
ステップS173の後に、サーバ30は、探索範囲情報の更新(S232)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS173において送信されたリクエストを取得する。サーバ30は、上記リクエストに応じて、ロケータデータベース(図6)に格納された探索範囲情報を更新する。
【0096】
ステップS232の後に、サーバ30は、レスポンス(S233)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS232における探索範囲情報の更新結果を含むレスポンスを生成する。サーバ30は、生成したレスポンスを管理端末70へ送信する。
【0097】
ステップS233の後に、管理端末70は、レスポンスの取得(S174)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS173において送信したリクエストに対するレスポンスを取得する。管理端末70は、レスポンスの取得に応じて画面P11を更新してもよい。一例として、管理端末70は、対象ロケータに対応するロケータアイコンの選択状態を解除してもよい。つまり、管理端末70は、このロケータアイコンを星印から三角印に戻し、表示オブジェクトA11bおよび表示オブジェクトA11cを非表示にしてもよい。
ステップS174の終了を以て、管理端末70は探索範囲編集処理を終了する。
【0098】
(5)小括
本実施形態のサーバ30は、移動機器50から無線信号を受信した複数のロケータ10の受信電力情報を参照して、当該複数のロケータ10のいずれかである基準通信装置を選択する。サーバ30は、複数のロケータ10の到来角情報を参照して、基準通信装置に関連付けられた地理的な探索範囲の中で移動機器50の位置を推定する。このように、サーバ30は、基準通信装置から見て地理的に妥当な座標に移動機器50が位置すると推定する一方で、異常な場所(例えば、空間外、または壁の内部)に移動機器50が位置するとは推定しない。これにより、移動機器50の測位精度を向上させることができる。さらに、探索範囲を限定することで、計算量が抑えられる。
【0099】
サーバ30または管理端末70は、距離と、ロケータ10の設置位置と、当該ロケータ10の設置された空間の環境に関する情報(例えば、当該ロケータ10が設置された建物の構造に関する情報)とを参照して、当該通信装置に関連付け可能な探索範囲(つまり、暫定的な探索範囲)を決定してもよい。これにより、ロケータ10に対して環境を考慮した妥当な探索範囲を関連付けることができる。
【0100】
サーバ30または管理端末70は、ロケータ10に関連付け可能な探索範囲(つまり、暫定的な探索範囲)を例えば管理端末70のユーザに提示してもよい。ただし、かかる処理は、管理端末70によって実行されてもよい。これにより、管理端末70のユーザにロケータ10に関連付け可能な探索範囲を知らせることができる。
【0101】
サーバ30または管理端末70は、管理端末70のユーザによる指示(例えば、画面P11(図11)のフィールドオブジェクトF11、または操作オブジェクトB11a~B11bの選択)に応じてロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定してもよい。これにより、ユーザは、ロケータ10の探索範囲をカスタマイズすることができる。
【0102】
サーバ30は、受信電力情報を参照して、複数のロケータ10のうち無線信号による受信電力が最大であったロケータ10を基準通信装置として選択してもよい。これにより、移動機器50の最も近くに設置されている可能性があるロケータ10を基準通信装置として選択し、移動機器50の測位精度をいっそう向上させることができる。
【0103】
サーバ30は、複数のロケータ10の到来角情報を参照して上記探索範囲の中で移動機器50の位置としての尤度が最大となる座標を探索することで、当該移動機器50の位置の候補となる座標を決定してもよい。これにより、移動機器50の測位精度をいっそう向上させることができる。
【0104】
サーバ30は、複数のロケータ10の到来角情報を参照して上記探索範囲の中で移動機器50の位置の候補となる座標を決定し、位置の時間変化を平滑化するフィルタを当該座標に適用することで、移動機器の位置を推定してもよい。これにより、移動機器50の推定位置が短時間に大きく動くような不自然な位置変化を抑制することができる。
【0105】
サーバ30は、移動機器50の位置の推定結果を提示してもよい。これにより、例えば、管理端末70のユーザに、指定した日時における移動機器50の位置を知らせることができる。
【0106】
(6)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0107】
(6-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、管理端末70のユーザの入力を必要とすることなく、ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定する例である。
【0108】
サーバ30は、ロケータ10からの距離と、ロケータ10の設置位置と、当該ロケータ10の設置された空間の環境に関する情報とを参照して、当該ロケータに関連付けられる探索範囲を決定する。
【0109】
距離は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。距離が可変値である場合に、サーバ30は、以下の少なくとも1つに基づいて距離を決定してよい。
・移動機器50による無線信号の送信電力
・ロケータ10の受信感度
・当該ロケータ10と隣接する他のロケータ10との間の距離
【0110】
サーバ30は、ロケータデータベース(図6)に格納されたロケータ情報に基づいて、ロケータ10の設置位置を特定可能である。
【0111】
空間の環境に関する情報は、空間(例えば建物)の構造に関する情報を含む。具体的には、空間の構造に関する情報は、ロケータ10の周囲に存在する障害物の位置および特性を特定可能な情報である。
【0112】
サーバ30は、ロケータ10からの距離および当該ロケータ10の設置位置に応じて当該ロケータ10の基本的な探索範囲を導出する。サーバ30は、空間の構造に関する情報を参照して、ロケータ10の周囲に存在する障害物の位置および特性を特定し、上記基本的な探索範囲を当該障害物の位置および特性に応じて狭めることで、当該ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定する。一例として、サーバ30は、空間の構造に関する情報を参照して、ロケータ10が設置された領域に対して電波の伝搬を遮断する物理的な境界(例えば壁などの障害物)を隔てている周辺領域、または移動時の障害物によって占められる障害物領域のうち少なくとも1つを特定する。サーバ30は、上記基本的な探索範囲から、特定した周辺領域、または障害物領域のうち少なくとも1つを除外することで、ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定する。
【0113】
ただし、探索範囲の決定方法はこれに限定されない。例えば、ユーザにより事前に空間内の複数の領域が指定されており、ある領域に含まれる位置のロケータ10の探索範囲として当該領域が設定されてもよい。
【0114】
以上説明したように、変形例1のサーバ30は、ロケータ10からの距離と、ロケータ10の設置位置と、当該ロケータ10の設置された空間の環境に関する情報(例えば、当該ロケータ10が設置された建物の構造に関する情報)とを参照して、当該ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定する。これにより、管理端末70のユーザの入力を必要とせずに、ロケータ10に対して環境を考慮した妥当な探索範囲を関連付けることができる。
【0115】
サーバ30は、空間の構造に関する情報を参照して、ロケータ10の周囲に存在する障害物の位置および特性を特定し、基本的な探索範囲を当該障害物の位置および特性に応じて狭めることで、当該ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定してもよい。これにより、管理端末70のユーザの入力を必要とせずに、ロケータ10に対して障害物の位置および特性を考慮した妥当な探索範囲を関連付けることができる。
【0116】
サーバ30は、空間の構造に関する情報を参照して、ロケータ10が設置された領域に対して電波を遮断する物理的な境界を隔てている周辺領域、または移動時の障害物によって占められる障害物領域のうち少なくとも1つを特定し、基本的な探索範囲から当該周辺領域、または障害物領域のうち少なくとも1つを除外することで、当該ロケータ10に関連付けられる探索範囲を決定してもよい。これにより、ロケータ10に無線信号が届く可能性の殆どない周辺領域、または移動機器50が存在する可能性の低い障害物領域に移動機器50が存在するとの誤った推定を防ぐことができる。
【0117】
(6-2)変形例2
変形例2について説明する。変形例2は、基準通信装置に関連付けられた探索範囲のサブ範囲を選択して移動機器50の位置を推定する例である。
【0118】
変形例2では、基準通信装置に関連付けられた探索範囲において、複数の異なるサブ範囲を定義することができる。各サブ範囲は、探索範囲の少なくとも一部である。異なるサブ範囲の間には、重複する部分があってもよいし、重複する部分がなくてもよい。異なるサブ範囲は互いに共通部分および非共通部分を備えていてもよいし、あるサブ範囲が別のサブ範囲を完全に包含してもよい。サブ範囲の1つが探索範囲と同一の範囲として定義されてもよい。
【0119】
サーバ30は、例えば、基準通信装置における受信電力情報を参照してサブ範囲を選択する。一例として、サーバ30は、基準通信装置における受信電力が電力閾値以上である場合に、当該基準通信装置に関連付けられた探索範囲のうち当該基準通信装置に相対的に近接した一部であるサブ範囲を選択してもよい。例えば、第1サブ範囲が探索範囲のうち基準通信装置に最も近い座標を含み、かつ第2サブ範囲が第1サブ範囲を完全に包含するように定義されていたとする。この仮定の下では、サーバ30は、基準通信装置における受信電力が電力閾値以上である場合に、第1サブ範囲を選択することになる。サーバ30は、サブ範囲を選択した場合に、当該サブ範囲の中から移動機器50の位置を推定する。つまり、サーバ30は、探索範囲内であってサブ範囲に含まれない領域を、探索の対象としない。
【0120】
サーバ30は、基準通信装置における受信電力情報以外に、以下の情報の少なくとも1つを参照してサブ範囲を選択してもよい。
・移動機器50の位置の推定結果の履歴
・基準通信装置における到来角情報
・基準通信装置以外のロケータ10における受信電力情報または到来角情報
【0121】
以上説明したように、変形例2のサーバ30は、基準通信装置における受信電力情報を参照してサブ範囲を選択し、当該サブ範囲の中から移動機器50の位置を推定する。これにより、測位精度をさらに向上させ、かつ計算量をさらに抑制することができる。
【0122】
サーバ30は、基準通信装置における受信電力が電力閾値以上である場合に、探索範囲のうち当該基準通信装置に対して遠距離域をカバーする第2サブ範囲ではなく、当該基準通信装置に対して近距離域をカバーする第1サブ範囲を選択してもよい。これにより、移動機器50が基準通信装置に近接している可能性が高い場合に、探索の対象を適切に絞り込むことができる。
【0123】
(7)その他の変形例
記憶装置11は、ロケータ10の外部に存在し、ネットワークNWを介してロケータ10と接続されてもよい。記憶装置31は、サーバ30の外部に存在し、ネットワークNWを介してサーバ30と接続されてもよい。記憶装置71は、管理端末70の外部に存在し、ネットワークNWを介して管理端末70と接続されてもよい。ディスプレイ81は、管理端末70に組み込まれてもよい。
【0124】
上記の情報処理の各ステップは、ロケータ10、サーバ30、及び管理端末70の何れでも実行可能である。
上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。
【0125】
変形例1は、サーバ30によって決定された探索範囲を、ユーザ指示に応じて変更できるようにさらに変形されてもよい。つまり、サーバ30は、暫定的な探索範囲を決定してもよい。
【0126】
図8を用いた上述の測位処理の説明において、サーバ30はステップS134の処理により対象機器の推定位置をユーザに提示するものとした。ただし、サーバ30による対象機器の推定位置の使用方法はこれに限定されない。例えば、サーバ30は、ステップS133において取得した対象機器の推定位置を示す情報を、外部の記憶装置へ出力してもよい。また例えば、サーバ30は、ステップS133において取得した対象機器の推定位置が所定の条件を満たした場合(例えば推定位置が空間SP10内の特定の部屋の内部である場合)に、当該条件が満たされたことを示す情報を出力してユーザに通知してもよい。また例えば、サーバ30は、所定期間における対象機器の推定位置の変化を分析することで得られる情報を出力してもよい。
【0127】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 :情報処理システム
10 :ロケータ
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
30 :サーバ
31 :記憶装置
32 :プロセッサ
33 :入出力インタフェース
34 :通信インタフェース
50 :移動機器
70 :管理端末
71 :記憶装置
72 :プロセッサ
73 :入出力インタフェース
74 :通信インタフェース
81 :ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11