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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026813
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】バルブ付き合成樹脂注出具
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20230221BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B65D47/06
B65D47/20 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132184
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
(72)【発明者】
【氏名】大田 剛
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA24
3E084AA25
3E084AA39
3E084AB01
3E084BA02
3E084CB02
3E084CC10
3E084DB12
3E084DC10
3E084EA10
3E084EB10
3E084EC04
3E084EC10
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084JA20
3E084KA20
3E084LD01
3E084LD13
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつキャップ内におけるバルブの安定保持性を向上させることが可能なバルブ付き合成樹脂注出具を提供する。
【解決手段】本発明におけるバルブ付き合成樹脂注出具は、本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、前記本体は、天面壁と、前記天面壁から立設されると共に、筒体と、前記筒体より内方へ延在するフランジ面と、前記フランジ面の内周側から垂下して前記バルブを保持可能な係止壁部と、前記筒体の内面に設けられてヒンジ連結部を基点として回転可能なフラップ部と、を有する注出筒と、を含み、前記バルブは、前記筒体の前記係止壁部と前記フランジ面と前記フラップ部との間に形成された収容空間に圧入されて前記注出筒に内包されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、
前記本体は、
天面壁と、
前記天面壁から立設されると共に、
筒体と、前記筒体より内方へ延在するフランジ面と、
前記フランジ面の内周側から垂下して前記バルブを保持可能な係止壁部と、
前記筒体の内側面に設けられてヒンジ連結部を基点として回転可能なフラップ部と、
を有する注出筒と、を含み、
前記バルブは、前記筒体の前記係止壁部と前記フランジ面と前記フラップ部との間に形成された収容空間に圧入されて前記注出筒に内包されてなる、
ことを特徴とするバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項2】
前記注出筒の内壁には、前記フラップ部が収容可能なフラップ収容空間が設けられている、
請求項1に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項3】
前記バルブの上面と前記フラップ部とが接触しながら前記ヒンジ連結部を基点に前記フラップ部が回転することで、前記バルブが前記収容空間に収容されると共に前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容される、
請求項2に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項4】
前記フラップ部は、当該フラップ部の側面から突出する係止突起部を含んで構成されている、
請求項3に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項5】
前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容されたとき、前記係止突起部の上面が前記係止壁部の下端より前記筒体の軸方向に関して下方に配置されている、
請求項2~4のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項6】
前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の上面が、前記係止壁部の底部と接触されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項7】
前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の内側面における上部が、前記係止壁部の内周面と近接されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項8】
前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の底面が、前記係止突起部の上面と接触されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項9】
前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の外側面が、前記フラップ部の外表面と接触されている、
請求項1~8のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項10】
前記フラップ部の板厚は、前記フラップ収容空間における径方向の幅以下である、
請求項2~5のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項11】
前記フラップ部および前記ヒンジ連結部は、前記注出筒の内壁上で周方向に沿って断続的に複数形成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【請求項12】
隣接する前記複数のフラップ部における先端部は、互いに連結ストラップを介して連結されている、
請求項11に記載のバルブ付き合成樹脂注出具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば容器の口部に取り付け可能なバルブ付き合成樹脂注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば調味料や洗剤など液状の内容物を保存する容器およびスリットバルブ付きキャップが知られている。かようなスリットバルブは、ゴムなどの比較的軟質な樹脂材に吐出口としてのスリットが設けられている。一方で容器については、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂など、上記したスリットバルブに比して硬質の樹脂材などが適用されている。
【0003】
上記したスリットバルブ付きキャップは、キャップとバルブとが別部材で構成されていることからバルブをキャップ内に組み込んで製造されている。
例えば特許文献1においては、キャップ本体7に対して環状側壁拘束体18を介してバルブ(自己閉鎖式排出ノズル25)が嵌合された、3部品(3ピース)構成のバルブ付きキャップが提案されている。
【0004】
また特許文献2では、この特許文献1に開示された3ピース構成に比して2部品(2ピース)で構成されたバルブ付きキャップが開示されている。より具体的に当該特許文献2では、スリットバルブは、外側表面を球面の凹部とし、中央に端部を補強リブで囲んだスリットを刻設し、フラップを形成させたオリフィス形成壁を備え、キャップは、スリットバルブを取着し容器口筒部に螺着されたキャップ基体と、該キャップ基体に被嵌される被せ蓋とからなり、被せ蓋は、その下面にオリフィス形成壁の周縁に係合する押圧面と突出部とを備え、被せ蓋の閉蓋時にオリフィス形成壁に係合し、オリフィス形成壁表面の湾曲度を大きくして、スリットを開くように構成されたバルブ付きキャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2515730号公報
【特許文献2】特開平11-011502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献に提案された構造を含む従来技術においては、未だに市場のニーズを満たしてはおらず下記に述べる課題が存在する。
すなわちまず特許文献1に例示される3ピースタイプのバルブ付きキャップでは、そもそもバルブ止めのために追加の部品を要することから、キャップを構成する部品点数が多い分だけコスト増となってしまう。また、部品点数が多いことから、それぞれの寸法公差をより厳密に管理する必要があり、2ピースタイプのバルブ付きキャップに比して複雑となりやすい等の課題もある。
【0007】
他方で、特許文献2に例示される2ピースタイプのバルブ付きキャップとすれば、3ピースタイプに比して部品点数が削減できる点で有効ではあるものの、この特許文献2で示されたバルブ保持構造ではキャップ内でのバルブ保持の安定性に欠ける課題がある。この点、特に例えば容器の種類によっては当該容器を押圧(スクイズ)して内容物を吐出する形態もあり、かような場合には吐出圧の影響でバルブがキャップ内でズレてしまうことは避けねばならない。
【0008】
このように上記特許文献を含む従来技術では未だに改善の余地はあり、本発明が有する目的の一例としては、スリット等の吐出口が形成されたバルブを保持するバルブ付き合成樹脂注出具においてコストを抑制しつつキャップ内におけるバルブの安定保持性を向上させることが可能なバルブ付き合成樹脂注出具を提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具は、(1)本体と、吐出口を有するバルブと、を有して容器の口部に装着されるバルブ付き合成樹脂注出具であって、前記本体は、天面壁と、前記天面壁から立設されると共に、筒体と、前記筒体より内方へ延在するフランジ面と、前記フランジ面の内周側から垂下して前記バルブを保持可能な係止壁部と、前記筒体の内側面に設けられてヒンジ連結部を基点として回転可能なフラップ部と、を有する注出筒と、を含み、前記バルブは、前記筒体の前記係止壁部と前記フランジ面と前記フラップ部との間に形成された収容空間に圧入されて前記注出筒に内包されてなる、ことを特徴とする。
【0010】
なお上記した(1)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(2)前記注出筒の内壁には、前記フラップ部が収容可能なフラップ収容空間が設けられていることが好ましい。
【0011】
また上記した(2)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(3)前記バルブの上面と前記フラップ部とが接触しながら前記ヒンジ連結部を基点に前記フラップ部が回転することで、前記バルブが前記収容空間に収容されると共に前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容されることが好ましい。
【0012】
さらに上記した(3)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(4)前記フラップ部は、当該フラップ部の側面から突出する係止突起部を含んで構成されていることが好ましい。
【0013】
また上記した(2)~(4)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(5)前記フラップ部が前記フラップ収容空間へ収容されたとき、前記係止突起部の上面が前記係止壁部の下端より前記筒体の軸方向に関して下方に配置されていることが好ましい。
【0014】
そして上記した(1)~(5)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具においては、(6)前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、
前記基部の上面が、前記係止壁部の底部と接触されていることが好ましい。
【0015】
また上記した(1)~(6)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(7)前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、前記基部の内側面における上部が、前記係止壁部の内周面と近接されていることが好ましい。
【0016】
また上記した(1)~(7)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(8)前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、前記基部の底面が、前記係止突起部の上面と接触されていることが好ましい。
【0017】
また上記した(1)~(8)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(9)前記バルブは、前記収容空間に収容可能な環状の基部と、前記吐出口が形成された頂板部と、前記基部の内周側と前記頂板部とを連接させる薄肉可撓部と、を有し、前記基部の外側面が、前記フラップ部の外表面と接触されていることが好ましい。
【0018】
また上記した(2)~(5)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(10)前記フラップ部の板厚は、前記フラップ収容空間における径方向の幅以下であることが好ましい。
【0019】
また上記した(1)~(10)のいずれかに記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(11)前記フラップ部および前記ヒンジ連結部は、前記注出筒の内壁上で周方向に沿って断続的に複数形成されていることが好ましい。
【0020】
また上記した(11)に記載のバルブ付き合成樹脂注出具は、(12)隣接する前記複数のフラップ部における先端部は、互いに連結ストラップを介して連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバルブ付き合成樹脂注出具によれば、本体とバルブとの2ピースで構成することから相対的にコストを抑制できつつ、筒体の係止壁部と係止突起部との間にバルブが内包されることからキャップ内でバルブを安定して保持することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具の外観斜視図である。
図2】実施形態のバルブ付き合成樹脂注出具を構成するバルブの断面図である。
図3】本体に対してバルブを組み入れる動作を断面図で示した模式図である。
図4】実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具の上面図である。
図5】実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具の底面図である。
図6図4におけるA-A断面図である。
図7図4におけるB-B断面図である。
図8図7におけるα部の部分拡大図である。
図9】圧入治具を用いたバルブ付き合成樹脂注出具の組み立て手法を説明するための模式図である。
図10】変形例1におけるバルブ付き合成樹脂注出具の模式図である。
図11】変形例2におけるバルブ付き合成樹脂注出具の模式図である。
図12】変形例2におけるバルブ付き合成樹脂注出具が開状態となった際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。また、以下で詳述する構成以外については、上記した特許文献を含む公知の容器やスリットバルブ等の構造を適宜援用することができる。
【0024】
≪バルブ付き合成樹脂注出具300≫
図1~8を参照しつつ、本実施形態に係るバルブ付き合成樹脂注出具300の構造について詳細に説明する。図1図3などに示すとおり、本実施形態のバルブ付き合成樹脂注出具300は、本体100と、吐出口Dpを有するバルブ200と、を有して容器(不図示)の口部に装着可能に構成されている。なお上記した容器の口部へのバルブ付き合成樹脂注出具300の取付態様としては、例えば後述するネジを用いた螺合の他に、例えば打栓式嵌合など他の公知の取付手法を適用してもよい。
【0025】
ここで、本実施形態に好適な容器としては、液状の内容物を保存可能であれば特に制限はなく、例えばPETボトルなどの比較的硬質の容器やパウチなどの軟質で可撓性の容器など公知の種々の容器形態が例示できる。また、容器の材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などのオレフィン樹脂あるいは公知のゴム材などが好適であるが、特に制限はなく公知の種々の材質が適用できる。なお容器の材質としては、上記した樹脂材などが積層された構造であってもよい。
【0026】
上記した容器に保存される液状の内容物としては、特に制限はなく、例えば洗剤や調味料、あるいは水やお茶など清涼飲料水など公知の種々の液体が適用できる。また、上記した容器に保存される内容物としては、上記した各種の液体に代えて、例えばゼリーなどゲル状の公知の半固体材料を適用してもよい。
【0027】
<本体100>
次に図面を参照しつつ、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300を構成する本体100の構成について詳述する。
本実施形態の本体100は、図1などから理解されるとおり、天面壁10と、この天面壁10から立設される注出筒20と、この天面壁10の周縁から垂下する公知のスカート壁30と、を含んで構成されている。
【0028】
この本体100の材質としては、例えばPET樹脂などバルブに比して相対的に硬質の樹脂が例示できる。なお、図6などで例示されるように、天面壁10の底面側には公知のインナーリング11が設けられており、このインナーリング11を介して上記した容器の口部が密封可能となっている。
【0029】
注出筒20は、図4~8などに示すように、筒体21、フランジ面22、係止壁部23及びフラップ部24などを含んで構成されている。
筒体21は、上記した天面壁10から鉛直上方(Z方向上方)へ向けて延びるように立ち上がる中空の筒状部である。図1及び3などに示すように、この筒体21は、天面壁10との接続部である下端から上端(後述するフランジ面22)に向けて外周面21bが漸次縮径するように立設されていることが好ましい。なお、本実施形態における筒体21は、図1及び3に示すような上方に向けて縮径する形態に限られず、外周面21bが縮径せずに天面壁10から立設する円筒状の外形であってもよい。
【0030】
フランジ面22は、前記した筒体21より内方(筒体21の開口における中心側)へ延在する部位である。より具体的に本実施形態のフランジ面22は、筒体21の上端を基点にして、内方へ延びるよう延在して設けられている。
【0031】
係止壁部23は、例えば図6~8などに示されるように、前記したフランジ面22の内周側から下方(Z方向下方)に向けて垂下するように設けられている。これらの図から理解されるとおり、係止壁部23は、フランジ面22を介して筒体21から所定の距離だけ内方に位置して設けられている。なお同図から明らかなとおり、Z方向の上方から見た場合、係止壁部23は、後述するフラップ収容空間FCSに収容された際のフラップ部24の係止突起部25の先端よりも中心側(すなわち頂板部220側)に位置付けられている。
本実施形態の係止壁部23は、後述するとおり、少なくとも係止壁部23の底面23aを介して前記したバルブ200を保持可能なように構成されている。
【0032】
フラップ部24は、前記した筒体21の内側面21aに設けられてヒンジ連結部24aを基点として回転可能に構成されている。また、図3及び図8を合わせて参照すると理解できるように、本実施形態における注出筒20の内壁(具体的には筒体21の内側面21a)には、前記したフラップ部24が収容可能なフラップ収容空間FCSが設けられている。これにより、バルブ200の本体100への組み入れ時に、バルブ200の上面とフラップ部24とが接触しながらヒンジ連結部24aを基点にフラップ部24が回転することで、バルブ200が収容空間CSに収容されると共にフラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容される。
【0033】
また、例えば図3及び8などに示すように、フラップ部24の外表面24b(フラップ収容空間FCSに収容される内面とは反対側の面)には、当該外表面24bから突出してバルブ200の基部210における底面210eを支持可能な係止突起部25が設けられている。
係止突起部25は、例えば図3図7及び図8などに示されるように、フラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容されたときに、前記した筒体21の内側面21aから径方向内側に向けて突出するように設けられている。そして本実施形態の係止突起部25は、後述するとおり、少なくとも係止突起部25の上面25aを介して前記したバルブ200を保持可能なように構成されている。なお、図8に示すように、フラップ部24の板厚t(バルブ200の外側面と密着する面)は、前記したフラップ収容空間FCSにおける径方向の幅d以下であることが好ましい。
【0034】
図5に示すように、本実施形態のフラップ部24およびヒンジ連結部24aは、前記した注出筒20の内壁上で周方向に沿って断続的に複数形成されている。このように上記したフラップ部24(さらには係止突起部25)は、筒体21の内側面21aにおいて、周方向(θz方向)に断続して複数形成されていることが好ましい。より具体的には図5などに示されるように、本実施形態では、周方向(Z軸周り、θz方向)に沿って断続的に6つのフラップ部24及び係止突起部25が筒体21の内側面21aに設けられている。なお、本実施形態ではフラップ部24及び係止突起部25が周方向に沿って6つ設けられているが、この態様に限られず例えば6つ以外の少なくとも2つのフラップ部24及び係止突起部25としてもよい。また、バルブ200の底面を保持可能であれば係止突起部25は必須ではなく適宜省略してもよい。
【0035】
また本実施形態では図5に示すように、本体100の底面側から見た場合に、周方向に関してフラップ部24(及び係止突起部25)が互いに等間隔となるように設けられている。また、図5から理解されるとおり、本実施形態においては、複数のフラップ部24は、それぞれが頂板部220の吐出口Dpを基点として対称となるように(すなわち、あるのフラップ部24に対して吐出口Dpを基点とした反対側には他のフラップ部24が配置される関係)周方向に配置されていてもよい。なお本実施形態は、上記形態に限られず、例えば複数のフラップ部24のうちのいずれか同士の間隔が他の間隔と異なるように、周方向において少なくとも一部の区間で非等間隔で複数のフラップ部24が設けられていてもよい。
【0036】
このように本実施形態では、筒体21の内側面21a、フランジ面22の底面、係止壁部23の底面23aと内周面23b、及びフラップ部24(さらには係止突起部25の上面25a)との間において、バルブ200を収容可能な収容空間CSが形成されている。そして本実施形態のバルブ200は、例えば後述する圧入治具を介して、筒体21の係止壁部23とフランジ面22とフラップ部24との間に形成された収容空間CSに圧入されて注出筒20に内包される。
【0037】
従って、例えば図8から理解されるとおり、前記した係止突起部25の上面25aが、前記したフラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容されたときに、前記した係止壁部23の下端(底面23a)より筒体21の軸方向(Z方向)に関して下方に配置されていることが好ましい。これにより、上記した係止壁部23の底部(底面23a)がバルブ200の基部210(上面210a)と接触して後述するシールポイントを形成することが可能となっている。
【0038】
<バルブ200>
次に図面を参照しつつ、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300を構成するバルブ200の構成について詳述する。
本実施形態のバルブ200は、図2などから理解されるとおり、基部210と、頂板部220と、薄肉可撓部230と、を含んで構成されている。このバルブ200の材質としては、例えば天然又は合成のゴム材や、ポリエチレンなどの軟質なオレフィン樹脂などが例示できる。
【0039】
基部210は、図3などからも理解されるとおり、上記した本体100における収容空間CSに収容可能な大きさの外形を有する環状の部位である。なお本実施形態においては、バルブ200を本体100の収容空間CSに圧入したときに、図8に示すとおり本体100の係止壁部23の底部(底面23a)と基部210の上面210aとが接触してシールポイント(互いに密着して密封作用が形成される点)が形成される。そのため、基部210は、バルブ200が収容空間CSに圧入された際に係止壁部23の下端(底面23a)を押圧する程度の体積を有することが好ましい。
【0040】
頂板部220は、上記した環状の基部210の内側(環の内側)に配置される円盤状の部位である。図2に示すように、この頂板部220の中央部には、容器に保存された内容物を吐出可能な吐出口Dpが設けられている。かような吐出口Dpとしては、例えば十字状のスリットや微細孔など、液状の内容物を吐出可能な公知の吐出口の構造を適用してもよい。
【0041】
薄肉可撓部230は、図2などから理解されるとおり、前記した基部210の内周側と前記した頂板部220とを連接させる部位である。同図から明らかなとおり、薄肉可撓部230は、基部210の内周に沿って環状となるように、基部210と頂板部220との間に介在し、断面形状としては基部の上面210aより内方へ延出したのち、頂板部220の外周縁部上面に接続するよう垂下する形状となっている。頂板部220は、この薄肉可撓部230によって支持されることで、鉛直方向への移動を許容されつつ吐出口Dpを介して液状の内容物を吐出することが可能となっている。
【0042】
<収容空間CS内におけるバルブ200の支持態様>
次に図6~8も参照しつつ、収容空間CS内におけるバルブ200の支持態様について説明する。
上述したとおり、例えば調味料や洗剤などを保存する容器や注出具がスパウトであるケースでは、当該容器をスクイズして内容物を注出することが求められる場合があり、かような場合にはスクイズした際における加圧の影響で本体100内の収容空間CSからバルブ200がズレてしまうことは避けねばならない。
【0043】
そこで本実施形態では、注出筒20内における少なくとも筒体21のフランジ面22、係止壁部23、フラップ部24及び係止突起部25との間に形成された収容空間CSにバルブ200が内包される構成が採用されている。
なお本実施形態における「収容空間CSにバルブ200が内包される」とは、バルブ200の少なくとも上下(図6における±Z方向の端部であり図示では基部210の頂部側と底部側)から挟み込むように収容空間CSに抑え込む支持形態を言う。これにより、本体100内におけるバルブ200の安定保持性を大きく向上させることが可能となっている。
【0044】
より具体的には、図6図8などから理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、基部210の内側面(薄肉可撓部230と近い側)における上部210gが、前記した係止壁部23の内周面23bと近接されていることが好ましい。なお本実施形態では上述のとおり上部210gと内周面23bとが近接される形態としたが、これらが密着している形態であってもよい。すなわち本実施形態における上部210gと内周面23bとの位置関係は、これらが接近して数mm程度の間隙を有する他、上記したシールポイントを形成する程度の状態も含めてこれらが密着する形態も含む。
【0045】
また、同図から理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、少なくとも前記した基部210の底面210eが、筒体21のうち係止突起部25の上面25aと接触されていることが好ましい。これによりバルブ200が意図せず鉛直下方(-Z方向)に脱落してしまうことを抑制できる。なお本実施形態では基部210の底面のうちの少なくとも一部(底面210e)を係止突起部25が下支えする形態を示しているが、基部210の底面すべて(本例では底面210eと底面210e)を係止突起部25が下支えして支持する形態であってもよい。また、この基部210の底面210eと係止突起部25の上面25aとの接触態様は、必ずしもシールポイントが形成される程度の密着状態でなくともよい。
【0046】
また、同図から理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、前記した基部210の外側面210d(少なくとも外側面210のうち下部210d)が、前記した筒体21のうちフラップ部24の外表面24bと接触されていることが好ましい。これにより、基部210の外側面210dの下部210dとフラップ部24の外表面24bとで上記したシールポイントを形成することもできる。さらに、これにより係止壁部23と協働してバルブ200が意図せず水平方向(XY平面方向)にズレてしまうことを抑制できる。
【0047】
なお本実施形態では基部210の外側面のうちの少なくとも一部(外側面210の下部210d)を筒体21のうちフラップ部24の外表面24bが側方支持する形態を示しているが、基部210の外側面のすべて(本例では外側面210の下部210dと外側面210の上部210d)を筒体21の内側面21aとフラップ部24の外表面24bとで側方支持する形態であってもよい。すなわち、本実施形態では基部210の外側面のうち上側の外側面210dと筒体21の内側面21aとが所定の間隙を有しているが、この態様に限られずこれらが互いに接触する形態であってもよい。
【0048】
また、同図から理解されるとおり、本実施形態におけるバルブ200は、基部210の頂部210bが、前記した筒体21におけるフランジ面22の底面と近接されていることが好ましい。なお本実施形態では上述のとおり頂部210bとフランジ面22の底面とが近接される形態としたが、これらが密着している形態であってもよい。すなわち本実施形態における頂部210bとフランジ面22の底面との位置関係は、これらが接近して数mm程度の間隙を有する他、上記したシールポイントを形成する程度の状態も含めてこれらが密着する形態も含む。
【0049】
<本体100へのバルブ200の取付方法>
次に図9も参照しつつ、本実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具300の製造方法の一例、すなわち圧入治具を用いた本体100へのバルブ200の組入手法について説明する。すなわち同図から理解されるとおり、本体100の収容空間CSへのバルブ200の圧入に際しては、バルブ200の底面を押し上げ可能な不図示の圧入治具を用いてもよい。
【0050】
このとき、図9(a)に示されるバルブの圧入前状態においては、フラップ部24はヒンジ連結部24aを基点にフラップ収容空間FCSから離脱した状態となっている。そしてバルブ200をフラップ収容空間FCSに向けて上記した圧入治具等で押し上げると、基部210の外側上部210cとフラップ部24の外表面24bが接触する。
【0051】
次いでバルブ200をフラップ収容空間FCSに向けて更に押し上げると、ヒンジ連結部24aを基点にフラップ部24が旋回しながら係止突起部25も基部210に接触し、最終的にはフラップ部24がフラップ収容空間FCSへ収容されるとともにバルブ200が前記収容空間CSに収容されて図9(b)に示される圧入完了状態となる。
【0052】
なお図8も合わせて参照すると理解されるとおり、本実施形態における基部210の外側上部210cは、上方(頂部210b側)に向けて径方向内側へ漸次縮径するテーパー状の傾斜面ISを構成していることが好ましい。これにより、収容空間CSに向けて押し上げるようにバルブ200を圧入する際にフラップ部24を適正な方向へヒンジ連結部24aを介して旋回させることが可能となっている。
【0053】
<変形例1>
次に図10を参照しつつ上記した実施形態に適用可能な変形例1に係る本体110について説明する。上記した実施形態の本体100においては、複数のフラップ部24は互いに独立してそれぞれヒンジ連結部24aを介して旋回可能に構成されていた。これに対して変形例1に係る本体110は、上記実施形態の本体100に加えて更に連結ストラップ26を備えている点に主とした特徴がある。
従って以下(後述する変形例2も同様)では、既述の構成については同じ参照番号を付して適宜その説明は省略する。
【0054】
すなわち図10に示すように変形例1の本体110においては、隣接する複数のフラップ部24における先端部は上記した連結ストラップ26によって連結されている。これにより、バルブ200を収容空間CSに圧入して収容するときに、複数のフラップ部24がほぼ同期してヒンジ連結部24aを介して旋回することが可能となり、いずれかのフラップ部24が旋回できずに圧入不良となってしまうことが抑制できる。
【0055】
かような連結ストラップ26は、上記したようにフラップ部24のうちヒンジ連結部24aとは反対側の先端同士が連なるように隣り合うフラップ部24同士を連結する態様であってもよいし、先端以外で連結される態様であってもよい。
また、連結ストラップ26は、フラップ部24の上記旋回を阻害しないようにU字状やV字状など適度な曲部を有していることが好ましい。
また、連結ストラップ26は、例えば本体110の射出成型時にフラップ部24と一体的に成形されてもよいし、連結ストラップ26だけ別途成形して公知の接着剤や融着などでフラップ部24と結合される態様であってもよい。
【0056】
<変形例2>
≪バルブ付き合成樹脂注出具310≫
次に図11及び図12を参照しつつ、本実施形態におけるバルブ付き合成樹脂注出具310について説明する。本例のバルブ付き合成樹脂注出具310は、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300に比して、スカート壁30から所定の間隙を有して径方向外側に配置されて天面壁10から垂下する外環壁40と、この外環壁40に対してヒンジ接続部53を介して接続されるヒンジキャップ50をさらに具備している点に主とした特徴がある。
従って、既述の構成については同様の参照番号を付して、適宜その説明は省略する。
【0057】
これらの図に示すように、外環壁40は天面壁10の周縁から垂下するとともに、スカート壁30は二重壁を構成するようにこの外環壁40の内側に配置されている。また、天面壁10の上面周縁にはフック部12fを備えた環状突出部12が設けられている。これにより、ヒンジキャップ50における周壁52の内側に設けられたアンダーカット52aと係合して注出筒20を閉塞することが可能となっている。
【0058】
すなわち、ヒンジキャップ50は、頂壁51からそれぞれ垂下する環状壁54と封止筒55を備えて構成されている。従ってヒンジキャップ50のアンダーカット52aがフック部12fと係合したときに、環状壁54の内周面が筒体21の外周面21bと密着するとともに封止筒55の先端が頂板部220に設けられた吐出口Dpを閉塞することが可能となっている。
【0059】
なおこれらの図に示すように、ヒンジキャップ50には、当該ヒンジキャップ50の開状態を維持することが可能な公知のブリッジ部56及び切り欠き58a、58bを備えていてもよい。また、同図に示すように、ヒンジキャップ50のヒンジ接続部53とは反対側に、使用者が指などを引っ掛けることが容易となるように径方向外側に突出する突出部57が設けられていてもよい。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、本体100とバルブ200の2ピースで注出具を構成することから従来の3ピース構造に比して材料面でもコストを抑制することが可能となっている。これに加え、本実施形態によれば、例えば筒体21の係止壁部23とフラップ部24の係止突起部25とで挟み込みつつ内側面21aも含めて包み込むようにバルブ200を内包することから、従来構造に比して収容空間CSでバルブ200を格段に安定して保持することが可能となっている。
【0061】
なお上記した実施形態は一例であって、本願の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。例えば本体100におけるスカート壁30の内側に形成されるネジ部31は省略して公知のアンダーカットを付与することで本体100が容器の口部に打栓される形態であってもよい。
【0062】
また、上記したバルブ付き合成樹脂注出具300としては、上記した容器に螺合や打栓などで装着可能なキャップに限られず、例えば公知のパウチに装着可能なスパウト(飲み口)の形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、低コストでありつつバルブの高い安定保持性を両立させたバルブ付き合成樹脂注出具を実現するのに好適である。
【符号の説明】
【0064】
100、110 本体
10 天面壁
20 注出筒
30 スカート壁
40 外環壁
50 上蓋
200 バルブ
210 基部
220 頂板部
230 薄肉可撓部
300、310 バルブ付き合成樹脂注出具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12