(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026823
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】冷却管理システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20230221BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20230221BHJP
B60P 3/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B60H1/32 611B
F25D11/00 101D
B60P3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132208
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】牧之内 卓美
(72)【発明者】
【氏名】小林 倫紀
【テーマコード(参考)】
3L045
3L211
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA02
3L045CA02
3L045MA15
3L045PA01
3L045PA02
3L211AA07
3L211EA32
3L211EA56
3L211EA81
3L211GA21
(57)【要約】
【課題】客先に配達した時点における荷物の品質を維持することができる冷却管理システムを提供すること。
【解決手段】冷却管理システムは、車両の荷室内の温度を管理するために、荷卸し地点の到着時刻における外気温を推定する外気温推定部30と、外気温の環境下での荷物の温度上昇値を想定して、荷卸し時点における荷室温度としての目標温度を設定する目標温度設定部30と、目標温度となるように荷室を冷却する冷却制御部40および冷却器50とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室内の温度を管理する冷却管理システムであって、
荷卸し地点の到着時刻における外気温を推定する外気温推定手段と、
前記外気温の環境下での荷物の温度上昇値を想定して、荷卸し時点における荷室温度としての目標温度を設定する目標温度設定手段と、
前記目標温度となるように前記荷室を冷却する冷却手段と、
を備えることを特徴とする冷却管理システム。
【請求項2】
前記目標温度設定手段は、前記外気温の環境下での荷物の温度が品質保持温度の上限値以下となるように前記目標温度を設定することを特徴とする請求項1に記載の冷却管理システム。
【請求項3】
前記荷室から荷物を取り出す際の扉の過去の開閉時間の実績値を取得する開閉時間取得手段をさらに備え、
前記目標温度設定手段は、前記外気温推定手段によって推定した外気温と前記開閉時間の実績値とに基づいて、前記温度上昇値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の冷却管理システム。
【請求項4】
前記目標温度設定手段は、前記荷物の前記荷室内における位置および/または荷物の搬出しやすさを考慮して前記温度上昇値を調整することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【請求項5】
荷卸し時点において前記目標温度まで前記荷室内の温度を下げるために必要な予備冷却を行う予備冷却時間を算出する予備冷却時間算出手段をさらに備え、
前記冷却手段は、前記予備冷却時間が経過後に前記到着時刻になるように前記荷室の冷却を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された冷蔵庫などの庫内温度を制御する冷却管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通常目標温度と停車中上昇量とに基づいて、停車地点に到達した時点における蓄冷目標温度を設定して、冷凍機のコンプレッサを制御することにより、停車時に庫内温度が通常目標温度を超えないようにした冷凍車貨物冷却制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した冷凍車貨物冷却制御装置では、目的地に到着するまで、通常目標温度を超えないように積荷の温度を維持することはできるが、到着した際の荷卸し作業時の温度の上昇分が考慮されていないため、客先に配達した時点における荷物の温度が高くなってしまい、荷物の品質が低下するおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、客先に配達した時点における荷物の品質を維持することができる冷却管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の冷却管理システムは、車両の荷室内の温度を管理する冷却管理システムであって、荷卸し地点の到着時刻における外気温を推定する外気温推定手段と、外気温の環境下での荷物の温度上昇値を想定して、荷卸し時点における荷室温度としての目標温度を設定する目標温度設定手段と、目標温度となるように荷室を冷却する冷却手段とを備えている。特に、上述した目標温度設定手段は、外気温の環境下での荷物の温度が品質保持温度の上限値以下となるように目標温度を設定することが望ましい。
【0007】
荷物の荷卸し時の外気温を考慮して荷物の温度上昇値を想定し、荷卸し時の荷室温度を設定しているため、客先に配達した際に外気温の環境下で温度が上昇した場合であってもその時点における荷物の品質を維持することが可能となる。
【0008】
また、上述した荷室から荷物を取り出す際の扉の過去の開閉時間の実績値を取得する開閉時間取得手段をさらに備え、目標温度設定手段は、外気温推定手段によって推定した外気温と開閉時間の実績値とに基づいて、温度上昇値を算出することが望ましい。荷室の扉の開閉時間の長短に応じて荷卸し作業の長さ、すなわち、荷物が外気温の環境下に置かれる時間がわかるため、より正確な温度上昇値を算出することが可能となる。
【0009】
また、上述した目標温度設定手段は、荷物の荷室内における位置および/または荷物の搬出しやすさを考慮して温度上昇値を調整することが望ましい。これにより、荷卸し作業が長くなる場合を考慮して温度上昇値を調整することができるため、作業が長引いて荷物の温度が想定以上に上昇してしまうことを防止することができる。
【0010】
また、荷卸し時点において目標温度まで荷室内の温度を下げるために必要な予備冷却を行う予備冷却時間を算出する予備冷却時間算出手段をさらに備え、冷却手段は、予備冷却時間が経過後に到着時刻になるように荷室の冷却を行うことが望ましい。これにより、必要以上に長い時間、目標温度を維持せずにすむため、荷室の冷却に必要な電力消費や燃料消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態の冷却管理システムの構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の冷却管理システムにおける荷室内の荷物の温度推移を示す図である。
【
図3】変形例の荷室内の荷物の温度推移を示す図である。
【
図4】変形例の冷却管理システムの構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す冷却管理システムにおける荷室内の荷物の温度推移を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態の冷却管理システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態の冷却管理システムは、トラックなどの車両の荷室内の温度を低温に管理するものであり、荷卸しした荷物を客先に配達した時点で荷物の品質を維持するために必要な荷室温度を設定している。
【0014】
図1は、一実施形態の冷却管理システムの構成を示す図である。
図1に示す本実施形態の冷却管理システムは、外気温推定部10、開閉時間取得部20、目標温度設定部30、冷却制御部40、冷却器50を備える。
【0015】
外気温推定部10は、荷卸し地点の到着時刻における外気温を推定する。「到着時刻」の特定方法としてはいくつかの場合が考えられる。例えば、図示しないナビゲーション装置の経路探索機能を用いて目的地としての荷物Bの配達先の到着時刻を用いる場合や、顧客との話し合い等により配達時刻が予め決められている場合、この車両の運転者の経験等により予測した到着時刻を用いる場合などが考えられる。また、「外気温」の推定方法についてもいくつかの方法が考えられる。例えば、各地の時間ごとの気温情報(外気温)を配信しているサーバからネットワーク経由で取得する場合や、運転者等が入手した気温情報を手動で入力する場合などである。なお、推定した外気温は、気象の急変などにより、推定値から大きく外れる場合が考えられるため、センサで実際の外気温を測定し、荷卸し地点が近づいた時点で誤差が大きい場合には、推定した外気温を補正するようにしてもよい。
【0016】
開閉時間取得部20は、温度管理の対象になっている荷室100の荷卸し用の扉の過去の開閉時間の実績値を取得する。例えば、毎回の荷卸し時に扉の開閉時間(荷卸しのために扉を開放している時間)を記録しておいて、その平均値を実績値として用いる場合が考えられる。
【0017】
目標温度設定部30は、荷卸し時点における外気温の環境下での荷物Bの温度上昇値を想定して、荷卸し時点における荷室100の温度としての目標温度を設定する。外気温の環境下での荷物Bの温度が品質保持温度の上限値以下となるように目標温度が設定される。具体的には、目標温度設定部30は、外気温推定部10によって推定した外気温と、開閉時間取得部20によって取得した扉の開閉時間の実績値とに基づいて、温度上昇値を算出し、荷物Bの品質維持に必要な温度よりもこの温度上昇値分低い温度を目標温度として設定する。
【0018】
冷却制御部40は、冷却器50を動作させるとともに荷室100内の温度を測定するセンサTを監視しながら、目標温度設定部30によって設定された目標温度となるように、荷卸し時の荷室100の庫内温度を制御する。冷却器50は、荷室100内を冷却するためのものであるが、設定温度に応じて荷室100内を冷凍あるいは冷蔵することができる。
【0019】
図2は、本実施形態の冷却管理システムにおける荷室100内の荷物Bの温度推移を示す図である。
図2において、「荷物搬出」が荷卸し時点を、「荷物受入」が客先で配達が終了した時点(あるいは客先の冷蔵庫や冷凍庫への荷物の収容が終了した時点)を示している。本実施形態では、荷物搬出の時点における外気温が推定され、この推定値に基づいて目標温度が設定される。したがって、荷室100から搬出された時点の荷物Bの温度Tbは、目標温度と等しくなっている。その後、この荷物Bは、外気温の環境下に置かれるため、その温度Tbは上昇するが、品質保持温度に達する前に荷物受入が終了する。
【0020】
このように、本実施形態の冷却管理システムでは、荷物Bの荷卸し時の外気温を考慮して荷物の温度上昇値を想定し、荷卸し時の荷室温度を設定しているため、客先に配達した際に外気温の環境下で温度が上昇した場合であってもその時点における荷物Bの品質を維持することが可能となる。特に、荷室100の扉の開閉時間の長短に応じて荷卸し作業の長さ、すなわち、荷物Bが外気温の環境下に置かれる時間がわかるため、この開閉時間を考慮して温度上昇値を算出することにより、より正確な温度上昇値を算出することが可能となる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、目標温度設定部30は、外気温推定部10によって推定した外気温と、開閉時間取得部20によって取得した扉の開閉時間の実績値とに基づいて、温度上昇値を算出したが、荷物Bの荷室100内における位置および/または荷物Bの搬出しやすさを考慮して温度上昇値を調整するようにしてもよい。荷物Bの荷室100内における位置や荷物Bの搬出しやすさ(荷室100や扉の構造など)によって荷卸し作業の時間が異なる場合があるため、これらを考慮して温度上昇値を調整することにより、作業が長引いて荷物の温度が想定以上に上昇してしまうことを防止することができる。
【0022】
同様に、温度上昇値が変動する要因として、荷物Bの重量や体積、作業者情報(荷物Bの荷卸しを行う作業者が熟練者か初心者か、筋力はどの程度かなど)、搬出先の状況(荷卸し作業の容易さの程度など)などがあり、これらの情報を収集して温度上昇値を調整するようにしてもよい。これらの情報は、サーバからネットワーク経由で取得してもよいし、手動で入力するようにしてもよい。
【0023】
また、
図2に示す例では、荷室100の庫内温度を最初(倉庫出荷時)から目標温度に設定するようにしたが、
図3に示す変形例のように、荷物搬出(荷卸し)時に目標温度に到達するように、それまで徐々に庫内温度を下げるようにしてもよい。このようにすることで、冷却器50の電力消費(あるいは燃料消費)を節約することが可能となる。
【0024】
ところで、庫内温度は品質保持温度を満たすことができれば、電力消費等の節約のためには高く設定する方が望ましい。
【0025】
図4は、変形例の冷却管理システムの構成を示す図である。
図4に示す冷却管理システムは、
図1に示した冷却管理システムに対して、予備冷却時間算出部60を追加した点が異なっている。
図5は、
図4に示す冷却管理システムにおける荷室100内の荷物Bの温度推移を示す図である。
【0026】
予備冷却時間算出部60は、荷卸し時点において目標温度まで荷室内の温度を下げるために必要な予備冷却を行う最短の予備冷却時間tを算出する。この予備冷却時間tは、荷卸し時点における外気温の推定値や冷却器50の冷却能力に基づいて算出することができる。冷却制御部40は、荷物搬出(荷卸し)前の予備冷却時間tに庫内温度が目標温度となるように冷却器50を動作させる。したがって、予備冷却時間tよりも前は、荷室100の庫内温度を、品質保持温度をわずかに下回る程度で維持すればよい。これにより、必要以上に長い時間、目標温度の庫内温度を維持せずにすむため、荷室100の冷却に必要な電力消費や燃料消費をさらに抑えることができる。
【0027】
また、上述した実施形態では、荷卸し時における外気温のみに着目したが、出荷時から搬出時までの車両走行状態における各位置での外気温推定値を取得し、各外気温推定値を考慮して庫内温度が品質保持温度を超えないように冷却器50を制御することにより更なる省エネを図るようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述したように、本発明によれば、荷物の荷卸し時の外気温を考慮して荷物の温度上昇値を想定し、荷卸し時の荷室温度を設定しているため、客先に配達した際に外気温の環境下で温度が上昇した場合であってもその時点における荷物の品質を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
10 外気温推定部
20 開閉時間取得部
30 目標温度設定部
40 冷却制御部
50 冷却器
60 予備冷却時間算出部