(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026827
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】水剤供給装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230221BHJP
A61J 1/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J1/20 314Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132216
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 昌史
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047CC04
4C047JJ04
4C047JJ14
4C047JJ15
4C047JJ28
4C047JJ31
4C047KK12
4C047KK24
4C047KK25
4C047KK32
(57)【要約】
【課題】賦形剤の注ぎ足し処理を開始するまでの時間を短くできる水剤供給装置を提供する。
【解決手段】水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置は、水剤ボトルと賦形剤を収容した賦形剤ボトルとを保持するボトル保持部と、賦形剤ボトルから投薬ボトルへ向かう賦形剤が流れる賦形剤供給管と、賦形剤供給管を移動させる供給管移動部と、水剤供給装置の動作を制御する制御部とを備えている。制御部は、水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する調剤処理を実行し、調剤処理が完了すると直ちに賦形剤供給管を移動させて、賦形剤供給管を投薬ボトルの上部開口に対向させる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水剤を収容した水剤ボトルから前記水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置であって、
前記水剤ボトルと、賦形剤を収容した賦形剤ボトルとを保持するボトル保持部と、
前記賦形剤ボトルから前記投薬ボトルへ向かう前記賦形剤が流れる賦形剤供給管と、
前記賦形剤供給管を移動させる供給管移動部と、
前記水剤供給装置の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記水剤ボトルから前記水剤を前記投薬ボトルに供給する調剤処理を実行し、前記調剤処理が完了すると直ちに前記賦形剤供給管を移動させて、前記賦形剤供給管を前記投薬ボトルの上部開口に対向させる、水剤供給装置。
【請求項2】
前記賦形剤を前記賦形剤ボトルから前記投薬ボトルに供給する注ぎ足し処理を実行する指示を前記水剤供給装置のユーザが入力するための入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記賦形剤供給管を前記投薬ボトルの前記上部開口に対向させた状態で、前記注ぎ足し処理を実行する指示の入力を待ち受ける、請求項1に記載の水剤供給装置。
【請求項3】
前記水剤供給装置は、前記注ぎ足し処理の実施要否を設定可能に構成されており、
前記制御部は、前記注ぎ足し処理を実施しないことが設定されている場合には、前記調剤処理の完了後に前記賦形剤供給管を前記投薬ボトルの前記上部開口に対向するよう移動させることを省略する、請求項2に記載の水剤供給装置。
【請求項4】
前記賦形剤を前記賦形剤ボトルから前記投薬ボトルに供給する注ぎ足し処理を中止する指示を前記水剤供給装置のユーザが入力するための入力部をさらに備え、
前記制御部は、前記賦形剤供給管が前記投薬ボトルの前記上部開口に対向する位置に移動する前に、前記注ぎ足し処理を中止する指示が入力されると、前記賦形剤供給管の移動を中止する、請求項1に記載の水剤供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調剤薬局などでは、液状の薬剤である水剤の調剤が行なわれている。患者に対する処方箋に従って、一種類または複数種類の水剤が所定量ずつ投薬ボトルに順次注入され、必要な賦形剤が注入されて、水剤の調剤が行なわれる。特開2013-184027号公報(特許文献1)には、投薬ボトルに水剤を分注した後に賦形剤を注ぎ足す制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献には、水剤の分注が完了した後に賦形剤の注ぎ足しの要否がユーザーにおいて判断され、注ぎ足しが必要と判断されれば、賦形剤注ぎ足しを指示するためのボタンをユーザーが操作することで、賦形剤が投薬ボトルに分注される。そのため、賦形剤の注ぎ足しを開始するまでの時間が長くなっている。
【0005】
本開示では、賦形剤の注ぎ足し処理を開始するまでの時間を短くできる水剤供給装置が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置が提案される。水剤供給装置は、水剤ボトルと賦形剤を収容した賦形剤ボトルとを保持するボトル保持部と、賦形剤ボトルから投薬ボトルへ向かう賦形剤が流れる賦形剤供給管と、賦形剤供給管を移動させる供給管移動部と、水剤供給装置の動作を制御する制御部とを備えている。制御部は、水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する調剤処理を実行し、調剤処理が完了すると直ちに賦形剤供給管を移動させて、賦形剤供給管を投薬ボトルの上部開口に対向させる。
【0007】
上記の水剤供給装置は、賦形剤を賦形剤ボトルから投薬ボトルに供給する注ぎ足し処理を実行する指示を水剤供給装置のユーザが入力するための入力部をさらに備え、制御部は、賦形剤供給管を投薬ボトルの上部開口に対向させた状態で、注ぎ足し処理を実行する指示の入力を待ち受けてもよい。
【0008】
上記の水剤供給装置は、注ぎ足し処理の実施要否を設定可能に構成されており、制御部は、注ぎ足し処理を実施しないことが設定されている場合には、調剤処理の完了後に賦形剤供給管を投薬ボトルの上部開口に対向するよう移動させることを省略してもよい。
【0009】
上記の水剤供給装置は、賦形剤を賦形剤ボトルから投薬ボトルに供給する注ぎ足し処理を中止する指示を水剤供給装置のユーザが入力するための入力部をさらに備え、制御部は、賦形剤供給管が投薬ボトルの上部開口に対向する位置に移動する前に、注ぎ足し処理を中止する指示が入力されると、賦形剤供給管の移動を中止してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の水剤供給装置によると、賦形剤の注ぎ足し処理を開始するまでの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の水剤供給装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すIII-III線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【
図4】
図2に示すIV-IV線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【
図5】
図2に示すV-V線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【
図7】水剤供給装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】注ぎ足し処理の設定を示すテーブルの一例である。
【
図9】水剤供給装置の起動時のフローチャートである。
【
図10】調剤処理および注ぎ足し処理を示す第1のフローチャートである。
【
図11】調剤処理および注ぎ足し処理を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0013】
図1は、実施形態の水剤供給装置1の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す水剤供給装置1の正面図である。
図3は、
図2に示すIII-III線に沿う水剤供給装置1の断面図である。
図4は、
図2に示すIV-IV線に沿う水剤供給装置1の断面図である。
図5は、
図2に示すV-V線に沿う水剤供給装置1の断面図である。実施形態の水剤供給装置1は、患者に対する処方箋に従って、液状の薬剤である水剤5を、水剤5を収容した水剤ボトル23から投薬ボトル2に供給し、調剤するために用いられる。
【0014】
水剤供給装置1は、水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給する水剤供給部3と、投薬ボトル2に収容される水剤5の重量を検出する重量検出部4とを備える。重量検出部4により検出される水剤5の重量、および、水剤5の比重から、投薬ボトル2に供給された水剤5の体積が算出される。水剤供給部3は、処方箋に従った所定の体積の水剤5が投薬ボトル2に供給されるように制御される。水剤供給部3と重量検出部4とは、筐体6に設けられる。筐体6は、直方体形状に形成され、起立した状態で水平な設置面に設置される。
【0015】
筐体6の内部には、支持フレーム8が設けられる。支持フレーム8は、筐体6の底板9と筐体6の天板10との間に配置され、詳しくは筐体6の天板10寄りに配置される。筐体6の内部空間は、支持フレーム8によって、支持フレーム8よりも上方の上部空間11と支持フレーム8よりも下方の下部空間12とに仕切られる。筐体6の前面部13には、タッチパネル14と、プリンタ17a,17bとが配置される。また前面部13には、下部空間12と筐体6の外部とを連通する下部開口15が形成される。
【0016】
下部開口15は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16bの間に形成される。左右両側部16a,16bの間の、下部開口15の上側には、下部空間12と筐体6の外部とを仕切る、湾曲した板状の前方カバー部18が配置されている。前方カバー部18は、下部空間12を筐体6の前方側の外部から視認可能なように、透明な材料により形成される。前方カバー部18は、左右両側部16a,16bの一方にヒンジを介して取り付けられ、当該ヒンジの軸周りに回動可能に設けられており、これにより、前方カバー部18は開閉可能とされている。
【0017】
水剤供給部3は、下部空間12に配置され、支持フレーム8に対して垂直な軸線(以下、「ドラム軸線」という)まわりに回転自在に設けられる回転体である回転ドラム21と、支持フレーム8の上面に載置され、支持フレーム8に対してドラム軸線回りに回転ドラム21を回転させるドラム回転用モータ22と、を有する。水剤供給部3はまた、回転ドラム21に設けられ、水剤5が収納された複数の水剤ボトル23から投薬ボトル2に水剤を移送する複数のポンプ24と、各ポンプ24を駆動するポンプ駆動ユニット25と、を有する。各ポンプ24は、チューブポンプであってもよい。
【0018】
回転ドラム21は、各ポンプ24を保持するポンプ保持体31と、各水剤ボトル23を開口部が上方向に開口するように起立した状態に保持する水剤ボトル保持体32と、を有する。水剤ボトル保持体32は、ポンプ保持体31の下方に設けられており、平面視環状の平板形状に形成されている。ポンプ保持体31には、各ポンプ24が、ドラム軸線を中心とする仮想円の周方向(以下、「ドラム周方向」という)に間隔をあけて配置される。水剤ボトル保持体32には、各水剤ボトル23が、ドラム周方向に間隔をあけて配置される。
【0019】
本実施の形態で回転ドラム21に搭載される水剤ボトル23およびポンプ24の個数は、目的に応じて任意に変更できる。複数の水剤ボトル23の各々に複数の異なる種類の水剤5が収容されてもよい。複数の水剤ボトル23に処方頻度の高い同種の水剤5が収容されてもよい。一つまたは複数の水剤ボトル23には、常水または単シロップなどの賦形剤が収容されている。賦形剤を収容した水剤ボトル23を、以下の説明では賦形剤ボトルとも称する。
【0020】
ポンプ駆動ユニット25は、各ポンプ24の各々を選択的に駆動して、複数の水剤ボトル23から選択的に水剤5または賦形剤を投薬ボトル2に供給する。ポンプ駆動ユニット25によって回転駆動される駆動軸41の先端には、連結部材42が固定される。各ポンプ24のロータの回転軸43には、連結部材42と連結される被連結部材44が固定される。連結部材42と被連結部材44とが連結されることで、回転力がポンプ24に伝達される。ポンプ24は、回転ドラム21の回転に連動して、各々のポンプ24毎に駆動されるよう構成されている。
【0021】
ポンプ駆動ユニット25は、ポンプ24を駆動させるポンプ駆動用モータ40と、ポンプ駆動用モータ40を移動させる移動用モータ39と、を有する。移動用モータ39を駆動することによって、ポンプ駆動用モータ40は前後方向に移動する。このポンプ駆動用モータ40の移動により、ポンプ駆動用モータ40の連結部材42をポンプ24の被連結部材44に連結させる連結状態と、連結部材42が被連結部材44に連結していない連結解除状態と、を切り替えることができるようになっている。回転ドラム21は、連結解除状態において、支持フレーム8に対して回転することができる。
【0022】
連結解除状態で回転ドラム21を回転することによって、水剤供給装置1に入力された処方箋情報に基づき作成された調剤データに従って選択された特定のポンプ24の被連結部材44が連結部材42に対面する位置まで、回転ドラム21を移動させる。回転ドラム21の回転後に、連結部材42を被連結部材44に連結される連結状態に切り替える。これにより、選択された特定のポンプ24を駆動して、所望の水剤ボトル23から供給される水剤5または賦形剤を投薬ボトル2に分注することができる。なお、連結部材42と被連結部材44とは、共にギヤで構成されているが、動力を伝達可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
【0023】
回転ドラム21の水剤ボトル保持体32には、複数の水剤ボトル23が搭載されている。水剤ボトル保持体32の上側に、水剤ボトル23を保持するための複数のカップ58が取り付けられる。カップ58は、有底の中空円筒形状に形成される。カップ58は、水剤ボトル23を保持するホルダとして機能する。水剤ボトル23はカップ58の内部に収容され、水剤ボトル23の底部がカップ58により保持される。
【0024】
水剤ボトル保持体32の下側には、回転力を発生させる回転駆動部51が配置される。回転駆動部51は、水剤ボトル23を水剤ボトル23の中心線に沿って回転させる。この水剤ボトル23の回転に伴って、水剤ボトル23内に収容された水剤5は、水剤ボトル23の回転方向に沿って、水剤ボトル23の内部を、水剤ボトル23の円筒状の側部の周方向に流れる。水剤ボトル23内に収容された水剤5の流れを発生されることにより、水剤ボトル23の内部で水剤5が撹拌される。
【0025】
回転ドラム21のポンプ保持体31には、複数の水剤ボトル23毎に対応するポンプ24が設けられている。ポンプ保持体31の下端には、環状の平板であるノズル取付板53が設けられている。ノズル取付板53は、水剤ボトル保持体32の上方に配置されている。ノズル取付板53と水剤ボトル保持体32とは互いに並行であり、回転ドラム21と共に水平面上でドラム軸線回りに回動可能に構成されている。回転ドラム21の回転によって、複数の水剤ボトル23、ポンプ24および供給ノズル36もまた、水平方向に一体に回動する。回転ドラム21は、供給ノズル36を含む後述する供給管60を移動させる、供給管移動部としての機能を有する。
【0026】
複数の供給ノズル36は、ノズル取付板53の外周部同一円周上に取り付けられている。各供給ノズル36は、ノズル取付板53上に、ドラム軸線を中心とする仮想円上でドラム周方向に等間隔をあけて配置される。投薬ボトル2には上部開口2Aが形成されており、複数の供給ノズル36は、投薬ボトル2の上部開口2Aに対して供給口36Aが相対的に移動可能に構成される。
【0027】
供給ノズル36は、回転ドラム21の回転に伴って、ドラム軸線を中心に回転移動する。供給ノズル36は、ドラム軸線を中心とする仮想円の周方向であるドラム周方向に沿って移動する。供給ノズル36を含む供給管60は、回転ドラム21の回転によってドラム周方向に移動し、投薬ボトル2に対し相対移動する。供給ノズル36の供給口36Aが投薬ボトル2の上部開口2Aに対して相対移動することにより、複数の供給口36Aのうちの一つが順に上部開口2Aに対向配置される。
【0028】
供給ノズル36は、ドラム軸線に対して所定の角度で傾斜して配置されている。供給ノズル36の供給口36Aから流出する水剤5は、投薬ボトル2の上部開口2Aを経由して投薬ボトル2内へ供給される。供給ノズル36がドラム軸線に対して傾斜配置されるので、投薬ボトル2内へ注入される水剤5は投薬ボトル2の内周側壁に沿うように流れる。これにより、投薬ボトル2の内部での水剤5の泡立ちを防止できる。ノズル取付板53の上側には、取付部55が固定されている。供給ノズル36は、取付部55に対して任意に着脱可能に設けられ、取付部55を介在させてノズル取付板53に取り付けられている。
【0029】
重量検出部4は、下部開口15に配置される。重量検出部4は、電子天秤45と、電子天秤45を収容するケーシング46と、電子天秤45に載置されて固定され、投薬ボトル2を上部開口2Aが上方向に開口するように起立した状態に保持する投薬ボトル保持体47とを有する。電子天秤45は、投薬ボトル2に供給された水剤5の重量を検出する。水剤5の重量が所定値に到達することにより、水剤供給部3はポンプ24の駆動を停止し、投薬ボトル2への水剤5の供給を停止する。電子天秤45は、音叉式、ロードセル式または電磁式などの任意の形式であってもよい。ケーシング46は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16b間の下部に設けられる。投薬ボトル保持体47は、投薬ボトル2が載置される載置台48と、載置台48の上側に設けられ投薬ボトル2を保持する保持具49と、を有する。
【0030】
重量検出部4は、
図5に示す駆動部としての昇降装置50により昇降されるようになっている。昇降装置50は、着脱位置と調剤位置との2位置に位置することができるように、重量検出部4を上下方向に移動させ、これに伴い、重量検出部4の載置台48上に載置された投薬ボトル2を移動させる。着脱位置は、投薬ボトル2を水剤供給装置1の載置台48上に取り付ける、または投薬ボトル2を載置台48から取り外すための位置である。調剤位置は、上記着脱位置よりも投薬ボトル2と供給ノズル36とが接近して、投薬ボトル2に水剤5を供給して調剤するための位置である。昇降装置50によって、投薬ボトル2は、着脱位置と調剤位置とを往復移動する。
【0031】
図6は、供給管60の全体構成を示す概略図である。供給管60は、水剤ボトル23から投薬ボトル2へ向かう水剤5または賦形剤が流れる経路を形成する。水剤供給装置1は、複数の水剤ボトル23の各々から投薬ボトル2へ異なる水剤5または賦形剤を供給できるように、複数の供給管60を備える。賦形剤を収容した水剤ボトル23から投薬ボトル2へ向かう賦形剤が流れる供給管60を、以下の説明では賦形剤供給管とも称する。
【0032】
供給管60は、上述した供給ノズル36と、チューブ34と、エルボ部材65とを含む。チューブ34は、一方の端部である吸込端34aと、他方の端部である吐出端34bと、を有する。チューブ34の開口した吸込端34aは、水剤ボトル23の内部に配置され、水剤ボトル23内の水剤5に浸漬している。吸込端34aは、水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給するとき、水剤5がチューブ34内に吸い込まれる側の端部である。吐出端34bは、水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給するとき、水剤5をチューブ34から吐出する側の端部である。チューブ34の吐出端34bは、エルボ部材65に取り付けられている。エルボ部材65は、チューブ34と供給ノズル36とを連結する。
【0033】
供給ノズル36の端部が開口した供給口36Aは、投薬ボトル2側の供給管60の一端を形成する。供給管60の一端は、投薬ボトル2の上部開口2Aに対向して配置されている。水剤ボトル23内の水剤5または賦形剤が投薬ボトル2へ供給されるとき、供給ノズル36の供給口36Aは、投薬ボトル2の上部開口2Aに対向して配置されている。水剤5は、供給管60の一端を経由して、投薬ボトル2へ向けて供給管60から流出する。チューブ34の吸込端34aは、水剤ボトル23側の供給管60の他端を形成する。供給管60の他端は、水剤ボトル23内に挿通され、水剤ボトル23に収容された水剤5中に沈潜している。
【0034】
ポンプ24は、水剤ボトル23内の水剤5を供給ノズル36に向けて吸引する動力源として用いられる。ポンプ24がチューブポンプである場合、吸込端34aと吐出端34bとの間のチューブ34の途中部分は、ポンプ24に挿通され、ポンプ24に着脱自在に把持される。
【0035】
ポンプ24の駆動により、水剤ボトル23内の水剤5は、吸込端34aから供給管60へ吸い込まれ、供給管60の内部を通過して流れ、供給ノズル36の供給口36Aを経由して供給管60から流出する。供給管60から流出した水剤5は、投薬ボトル2の上部開口2Aを経由して、投薬ボトル2内に流入する。このようにして、供給管60を経由して、複数の水剤ボトル23の各々から投薬ボトル2に水剤5が移送され、投薬ボトル2へ水剤5が供給される。水剤ボトル23と供給管60との組み合わせを選択することにより、異なる種類の水剤5または賦形剤が、選択的に投薬ボトル2に供給される。
【0036】
エルボ部材65は、90°エルボの形状を有している。水剤5は、チューブ34からエルボ部材65を経由して供給ノズル36へ流れる。エルボ部材65は、チューブ34からエルボ部材65へ流入する水剤5の流れを鉛直方向に対し上向きに流れる上昇流とし、エルボ部材65から供給ノズル36へ流出する水剤5の流れを鉛直方向に対し下向きに流れる下降流とする。供給管60内を供給口36Aへ向かって流れる水剤5の鉛直方向における流れ方向は、エルボ部材65の内部において変化している。これにより、供給管60の内部に存在する水剤5のうち、ポンプ24の停止時に重力の作用によって供給口36Aへ向かって流れ得る水剤5は、エルボ部材65および供給ノズル36の内部に存在する水剤5のみに限定される。
【0037】
図7は、水剤供給装置1の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、水剤供給装置1は、水剤供給装置1全体の動作を制御する制御部90を備える。タッチパネル14は、処方箋データなどの水剤供給装置1の動作に係る種々のパラメータ、患者名および薬剤師名などの各種情報、ならびに、調剤処理の完了後に賦形剤を賦形剤ボトルから投薬ボトル2に供給する注ぎ足し処理を実行する指示を入力するための、入力部として機能する。タッチパネル14はまた、水剤供給装置1の運転状態を表示する表示部として機能する。水剤供給装置1は、表示部として、タッチパネル14の他に、たとえば水剤供給装置1の動作不良の発生時に点灯するランプを備えてもよい。
【0038】
電子天秤45は、投薬ボトル2に供給された水剤5の重量を検出し、検出された重量の値を制御部90に入力する。制御部90は、電子天秤45から投薬ボトル2内の水剤5の重量データを受け取りながら、所定量の水剤5を投薬ボトル2に供給する。水剤供給装置1は、投薬ボトル2の位置を検出するためのセンサ85を備える。投薬ボトル2は、上述した通り着脱位置と調剤位置との間を上下に移動する。センサ85は、投薬ボトル2へ水剤5を供給するとき、投薬ボトル2が所定の調剤位置にあることを検出する。センサ85は、投薬ボトル2が調剤位置にあることを検出し、検出結果を制御部90に入力する。
【0039】
水剤供給装置1は、筐体6の内部の下部空間12における各々の水剤ボトル23の位置を検出する、ボトル位置検出手段91を備える。ボトル位置検出手段91は、たとえば各種のセンサであってもよく、当該センサは水剤ボトル保持体32のドラム軸線まわりの回転角を検出してもよい。回転ドラム21の回転に伴って水剤ボトル23はドラム軸線まわりに回転移動するので、水剤ボトル23の現在位置は頻繁に変化する。ボトル位置検出手段91を用いて水剤ボトル23の現在位置が正確に検出され、検出された水剤ボトル23の現在位置に係るデータは制御部90に入力される。
【0040】
水剤供給装置1はまた、外部機器との通信を行ないデータを外部機器から受信するための通信部92を備える。水剤供給装置1の動作に係る種々のパラメータは、上述したタッチパネル14の操作によって制御部90に入力されてもよく、または代替的には、通信部92を介して外部のコンピュータから制御部90に入力されてもよい。
【0041】
水剤供給装置1はまた、制御部90が演算を行なうためのメモリ93を備える。メモリ93には、水剤供給装置1に搭載されている水剤ボトル23に収容された水剤5および賦形剤のデータ、ならびに、水剤ボトル23の現在位置に係るデータなどが格納される。水剤供給装置1はまた、取り外し可能な記録媒体を装着するための記録媒体アクセス部94を備える。上述した水剤5および賦形剤のデータは、記録媒体アクセス部94に装着された各種記録媒体に格納され、制御部90により記録媒体から適宜読み込まれてもよい。
【0042】
制御部90は、以上説明した各種の機器から入力された情報に基づき、水剤供給装置1を制御する。具体的には、制御部90から、ドラム回転用モータ22、移動用モータ39、ポンプ駆動用モータ40、水剤5の撹拌用の撹拌用モータ52、および昇降装置50に制御信号が送信され、各モータが適宜運転および停止することにより、水剤ボトル23から投薬ボトル2への水剤5の供給が行なわれる。水剤5の供給終了後、出力部17を構成するプリンタ17a,17bから、注出結果の印字された紙片が出力される。
【0043】
図8は、注ぎ足し処理の設定を示すテーブルの一例である。実施形態の水剤供給装置1は、処方箋情報に基づいて水剤5を投薬ボトル2に供給する調剤処理と、調剤処理の完了後に賦形剤を賦形剤ボトルから投薬ボトル2に供給する注ぎ足し処理とを実施することができる。注ぎ足し処理の設定は、任意に設定可能である。
【0044】
水剤供給装置1には、調剤データが入力される。調剤データは、処方箋情報に基づいて作成された、水剤供給装置1が動作するためのデータである。この調剤データに、注ぎ足し処理の設定が含まれてもよい。
【0045】
水剤供給装置1を操作する薬剤師などのユーザが、注ぎ足し処理の設定を入力してもよい。たとえばタッチパネル14の操作によって、注ぎ足し処理の設定をユーザが入力できるようにしてもよい。調剤データに注ぎ足し処理の設定が含まれる場合、ユーザは注ぎ足し処理の設定を入力しなくてもよい。調剤データに含まれる注ぎ足し処理の設定を、ユーザの入力によって任意に変更してもよい。
【0046】
図8に示されるように、注ぎ足し処理の設定として、注ぎ足し処理の実施の要否、賦形剤の種類を設定できる。注ぎ足し処理の実行の要否は、水剤供給装置1のユーザが任意に設定可能である。たとえば、病院または薬局の内規などに従い、ユーザが初期設定として注ぎ足し処理の要否を設定することができる。調剤データに賦形剤が含まれる場合、注ぎ足し処理に用いる賦形剤が調剤処理で用いる賦形剤と同一種類となるよう、制御部90が賦形剤の種類の設定をしてもよい。調剤処理で用いる賦形剤を優先しない設定としてもよく、この場合、調剤処理で用いる賦形剤の種類に関わらず、テーブルで設定された賦形剤(
図8の場合、精製水)を用いて、注ぎ足し処理が実施される。
【0047】
図9は、水剤供給装置1の起動時のフローチャートである。水剤供給装置1の起動時には、まずステップ(S11)でユーザが水剤供給装置1の電源をオフからオンに切り替えると、ステップ(S12)において、制御部90は、各モータなどの水剤供給装置1に含まれる機器類の起動時の確認を行ない、全ての機器が正常に動作可能であることを確認する。続いてステップ(S13)において、制御部90からドラム回転用モータ22へ制御信号が伝送され、回転ドラム21を初期位置へ回転移動させる。
【0048】
いずれかの供給ノズル36の供給口36Aが投薬ボトル2の上部開口2Aに対向する位置を、回転ドラム21の初期位置として設定してもよい。または、いずれの供給ノズル36の供給口36Aも投薬ボトル2の上部開口2Aに対向しない位置を、回転ドラム21の初期位置として設定してもよい。初期位置への移動が終わると、続いてステップ(S14)へ進み、水剤供給装置1は待機状態になる。このようにして、水剤供給装置1の起動時の一連の動作が行なわれる。
【0049】
図10~
図11は、調剤処理および注ぎ足し処理を示すフローチャートである。実施形態の水剤供給装置1を使用して、処方箋情報に基づく調剤データに従って調剤処理を行なう場合、まずステップ(S21)で調剤開始が指示される。たとえば、水剤供給装置1が調剤データを受信した後、水剤供給装置1のユーザがタッチパネル14を操作し、調剤データを選択しスタートボタンに触れることにより、調剤が開始されてもよい。またたとえば、通信部92を介して制御部90が調剤データを受信すると、直ちに調剤が開始されてもよい。調剤開始が指示されると、制御部90は、患者名、薬局名、服薬時刻および服薬量などを印字した投薬ボトル2貼付用のラベルの印字を、プリンタ17a,17bに対し指令する。
【0050】
次にステップ(S22)において、
図1~5を参照して説明した投薬ボトル保持体47により投薬ボトル2が保持されている状態か否かが判断される。タッチパネル14には、ユーザに対して投薬ボトル2をセットするよう促す旨の表示がなされる。水剤供給装置1のユーザは、投薬ボトル2を投薬ボトル保持体47に保持させると、タッチパネル14の投薬ボトル2のセット完了を指示するボタンを操作する。投薬ボトル2のセット完了ボタンが操作されると、投薬ボトル保持体47により投薬ボトルが保持されていると判断され、ステップ(S23)へ進む。
【0051】
ステップ(S23)では、制御部90が昇降装置50に制御信号を送信し、昇降装置50が重量検出部4を上方へ移動させることにより、着脱位置から調剤位置へ投薬ボトル2が上昇する。重量検出部4は、供給ノズル36から投薬ボトル2への水剤5の供給が可能な調剤位置に到達するまで、上方へ移動する。投薬ボトル2が調剤位置に到達すると、次にステップ(S24)において、投薬ボトル2の上下方向の位置が確認される。投薬ボトル2の上部開口2Aが規定の位置にまで到達すると、
図7に示すセンサ85によって投薬ボトル2の位置が検出される。制御部90は、センサ85から投薬ボトル2の位置を示す信号を受け取り、投薬ボトル2の位置を確認する。
【0052】
次にステップ(S25)において、投薬ボトル2を、回転ドラム21の回転の妨げとならない位置にまで移動する。具体的には、制御部90から昇降装置50へ制御信号が送られ、昇降装置50がある程度下方へ移動することにより、投薬ボトル2もまた下方へ移動する。なお投薬ボトル2の移動方向は上下方向に限られるものではなく、たとえば回転ドラム21から離れる方向であってもよい。
【0053】
投薬ボトル2の移動後、次にステップ(S26)において、ドラム回転用モータ22が制御され、回転ドラム21が回転する。制御部90は、ドラム回転用モータ22へ制御信号を伝送し、ドラム回転用モータ22の駆動力を回転ドラム21へ伝達する。ドラム回転用モータ22が駆動されることにより、回転ドラム21が回転する。回転ドラム21の回転により、投薬ボトル2へ供給されるべき水剤5に対応する供給管60は、その供給ノズル36の供給口36Aが投薬ボトル2の上部開口2Aに臨む位置に到達するまで、ドラム周方向に沿って水平方向に移動する。
【0054】
回転ドラム21の回転が完了すると、次にステップ(S27)において、ポンプ駆動用モータ40を前方に移動し、ポンプ駆動用モータ40の連結部材42をポンプ24の被連結部材44に連結する。これにより、ポンプ駆動用モータ40の回転がポンプ24に伝達可能な状態、すなわち、ポンプ24が駆動可能な状態にする。
【0055】
次にステップ(S28)において、ステップ(S25)で移動した投薬ボトル2を、再度調剤位置へ移動する。制御部90から昇降装置50へ制御信号が送られ、昇降装置50が再度上方へ移動することにより、投薬ボトル2もまた上方へ移動する。これにより、投薬ボトル2は、供給ノズル36から投薬ボトル2への水剤5の供給が可能な調剤位置に配置される。
【0056】
続いてステップ(S29)において、制御部90は、ポンプ駆動用モータ40へ制御信号を伝送し、ポンプ24を駆動する。ポンプ24の駆動により、処方箋により定められた所定量の水剤5を、水剤ボトル23から供給管60を経由して、投薬ボトル2へ供給する。制御部90は、電子天秤45から投薬ボトル2内の水剤5の重量データを受け取り、投薬ボトル2に供給された水剤5の量を確認する。所定量の水剤5が投薬ボトル2に供給されると、第一番目の水剤5の投薬ボトル2への注出が終了する。
【0057】
続いてステップ(S30)において、調剤データに従った投薬ボトル2への水剤5(および、必要な場合には賦形剤)の供給が全て完了し、調剤が完了したか否かが判断される。水剤5の供給が完了していない場合、工程(S25)に戻り、次の水剤5または賦形剤の投薬ボトル2への供給が行なわれる。
【0058】
調剤が完了したと判断された場合、結合子Aを介してステップ(S31)へ進み、注ぎ足し処理を実施するか否かが判断される。制御部90は、
図8に示されるテーブルを参照して、注ぎ足し処理の実施の要否を認識する。注ぎ足し処理を実施する設定である場合、制御部90は、テーブルを参照して、賦形剤の種類を認識する。
図8に示されるテーブルは、メモリ93(
図7)に予め記憶されている。制御部90は、メモリ93からテーブルを読み出すことで、注ぎ足し処理の要否の設定と、賦形剤の種類の設定とを判断する。
【0059】
注ぎ足し処理を実施する設定であると判断されれば(ステップ(S31)でYES)、次にステップ(S32)において、投薬ボトル2を移動する。この処理は、ステップS(25)と同様に行なわれる。
【0060】
次にステップ(S33)において、注ぎ足し処理を中止する指示の入力があるか否かが判断される。水剤供給装置1のユーザは、たとえばタッチパネル14の操作によって、注ぎ足し処理を中止する指示を入力できる。注ぎ足し処理の実施が必要ないとユーザが判断する場合、注ぎ足し処理を中止する指示が、タッチパネル14の操作により入力される。たとえば、投薬ボトル2の目盛りに投薬ボトル2内の水剤5の液面が一致していること、または、今回の調剤処理に対しては注ぎ足し処理を行なわないことなどを理由に、水剤供給装置1のユーザが、注ぎ足し処理が不要であると判断できる。
【0061】
注ぎ足し処理を中止する指示の入力がないと判断されると(ステップ(S33)においてNO)、ステップ(S34)に進み、ステップ(S26)と同様に回転ドラム21が回転する。回転ドラム21の回転により、注ぎ足し処理に用いる賦形剤に対応する供給管60(すなわち、賦形剤供給管)は、その供給ノズル36の供給口36Aが投薬ボトル2の上部開口2Aに臨む位置に到達するまで、ドラム周方向に沿って水平方向に移動する。
【0062】
次にステップ(S35)において、ステップ(S27)と同様に、ポンプ24が駆動可能な状態にする。続いてステップ(S36)において、ステップ(S28)と同様に、投薬ボトル2を、供給ノズル36から投薬ボトル2への賦形剤の供給が可能な調剤位置に配置する。
【0063】
この状態で、水剤供給装置1は、待機状態になる。待機状態では、注ぎ足し処理を終了する指示の入力があるか否かの判断(ステップ(S37))と、注ぎ足し処理を終了する指示の入力がないと判断された場合に、注ぎ足し処理を開始する操作が行なわれたか否かの判断(ステップ(S38))とがなされる。注ぎ足し処理を開始する操作が行なわれないと(ステップ(S38)においてNO)、ステップ(S37)の判断とステップ(S38)の判断とが繰り返される。
【0064】
待機状態で、水剤供給装置1のユーザは、たとえばタッチパネル14の操作によって、注ぎ足し処理を終了する指示を入力できる。注ぎ足し処理の実施が必要ないとユーザが判断する場合、注ぎ足し処理を終了する指示が、タッチパネル14の操作により入力される。また、待機状態で、水剤供給装置1のユーザは、投薬ボトル2に収容された水剤5の液量と、投薬ボトル2の目盛りが示す見かけの液量とを、目視により比較できる。ユーザは、目視による液量の比較の結果、注ぎ足し処理の実施が必要であると判断する場合、注ぎ足し処理を開始する指示を入力する。注ぎ足し処理を開始する指示は、筐体6に設けられたボタンを押下する操作によって行なわれてもよく、タッチパネル14の操作によって行なわれてもよい。
【0065】
注ぎ足し処理を開始する操作が行なわれたと判断されると(ステップ(S38)においてYES)、次にステップ(S39)において、制御部90は、ポンプ駆動用モータ40へ制御信号を伝送し、ポンプ24を駆動する。ポンプ24の駆動により、注ぎ足し処理に用いられる賦形剤が、賦形剤ボトルから供給管60を経由して、投薬ボトル2へ供給される。
【0066】
続いて、ステップ(S40)において、注ぎ足し処理を終了する操作が行なわれたか否かの判断がなされる。ボタンが押下されている間、制御部90がポンプ24を駆動するように構成されていてもよく、この場合、ユーザがボタンから手を離してボタンが押下されなくなることを検出することで、注ぎ足し処理を終了する操作が行なわれたと判断されてもよい。または、注ぎ足し処理を開始するために操作されるボタンと、注ぎ足し処理を終了ために操作されるボタンとが、別々に設けられてもよい。
【0067】
水剤供給装置1のユーザは、投薬ボトル2に収容された水剤5の液量と、投薬ボトル2の目盛りとを目視する。水剤5の液面が投薬ボトル2の目盛りに一致するまで、注ぎ足し処理を終了する操作は行なわれず(ステップ(S40)においてNO)、この間、制御部90はポンプ24を駆動し続け、投薬ボトル2への賦形剤の供給が続けられる。注ぎ足し処理を終了する操作が行なわれたと判断されると(ステップ(S40)においてYES)、ステップ(S41)において、制御部90は、ポンプ駆動用モータ40へ制御信号を伝送し、ポンプ24を停止する。これにより、投薬ボトル2への賦形剤の供給が停止する。
【0068】
その後水剤供給装置1は待機状態へと戻り、ステップ(S37)の判断が再度行なわれる。水剤供給装置1のユーザが、これ以上の注ぎ足し処理の実施が必要ないと判断すると、注ぎ足し処理を終了する指示が、タッチパネル14の操作により入力される。注ぎ足し処理を終了する指示が入力されたと判断されると(ステップ(S37)においてYES)、ステップ(S42)へ進む。
【0069】
ステップ(S33)の判断において、注ぎ足し処理を中止する指示が入力されたと判断された場合(ステップ(S33)においてYES)、および、ステップ(S31)の判断において、注ぎ足し処理を実施しない設定であると判断された場合(ステップ(S31)においてNO)には、注ぎ足し処理は行なわれない。ステップ(S34)の処理がスキップされるので、賦形剤供給管を投薬ボトル2の上部開口2Aに対向する位置へ移動させることなく、ステップ(S42)へ進む。
【0070】
ステップ(S42)において、投薬ボトル2が下降する。制御部90から昇降装置50に制御信号が送信され、昇降装置50が載置台48を下方へ移動させることにより、投薬ボトル2は下降する。載置台48は、調剤位置から着脱位置に戻るまで、下方へ移動する。その後ステップ(S43)において、回転ドラム21が初期位置へ移動する。その後ステップ(S44)へ進み、水剤供給装置1は待機状態になる。このようにして、実施形態の水剤供給装置1を使用した、調剤処理および注ぎ足し処理が完了する(
図11の「終了」)。
【0071】
以上説明した実施形態の水剤供給装置1においては、
図10,11に示されるように、制御部90は、水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給する調剤処理を実行し、調剤処理が完了すると直ちに賦形剤供給管を移動させて、賦形剤供給管を投薬ボトル2の上部開口2Aに対向させる。
【0072】
調剤処理を完了した後の投薬ボトル2内の液面を確認してから賦形剤供給管を移動させるのではなく、投薬ボトル2内の実際の液面レベルに関わらず、調剤処理が完了すると賦形剤供給管を移動させる構成とされている。水剤供給装置1のユーザの指示を待たずに賦形剤供給管を移動させることにより、ユーザは、投薬ボトル2内の水剤5の液面を確認し次第、注ぎ足し処理を開始することができる。ユーザの指示を待つ時間を省略できることにより、賦形剤の注ぎ足し処理を開始するまでの時間を短くすることができ、調剤時間を短縮することができる。
【0073】
水剤供給装置1が自動制御されている間、水剤供給装置1のユーザは、他の調剤作業を行なうことができる。一方、注ぎ足し処理では、ユーザは、投薬ボトル2内の液面の確認と、注ぎ足し処理を開始する操作とを行なう必要がある。調剤処理を完了した後の投薬ボトル2内の液面を確認してから賦形剤を注ぎ足す必要があることを判断し、その判断の後に賦形剤供給管の移動を開始していては、賦形剤供給管の移動中にユーザは他の調剤作業を行なうことができず、調剤作業に無駄が生じてしまう。実施形態の水剤供給装置1では、投薬ボトル2内の実際の液面レベルに関わらず、調剤処理が完了すると賦形剤供給管を移動させる構成とされていることで、調剤作業の効率を向上でき、調剤時間を短縮することができる。
【0074】
また
図11に示されるように、制御部90は、賦形剤供給管を投薬ボトル2の上部開口2Aに対向させた状態で、注ぎ足し処理を実行する指示の入力を待ち受ける。このようにすれば、水剤供給装置1のユーザが注ぎ足し処理を実行する指示を入力すると直ぐに、投薬ボトル2へ賦形剤を注ぎ足すことができる。注ぎ足し処理を開始するまでの時間を短くすることができ、調剤時間を短縮することができる。
【0075】
また
図11に示されるように、制御部90は、注ぎ足し処理を実施しないことが設定されている場合には、調剤処理の完了後に賦形剤供給管を投薬ボトル2の上部開口2Aに対向するよう移動させることを省略する。注ぎ足し処理を実施しないのであれば、賦形剤供給管を移動させることは不要な動作であるので、この不要な動作を省くことによって調剤時間を短縮することができる。
【0076】
また
図11に示されるように、制御部90は、賦形剤供給管が投薬ボトル2の上部開口2Aに対向する位置に移動する前に、注ぎ足し処理を中止する指示が入力されると、賦形剤供給管の移動を中止する。注ぎ足し処理を実施しないのであれば、賦形剤供給管を移動させることは不要な動作であるので、この不要な動作を省くことによって調剤時間を短縮することができる。
【0077】
上記の実施形態の説明では、投薬ボトル2を移動するステップ(S32)の後のステップ(S33)において、注ぎ足し処理を終了する指示の入力があるか否かが判断された。この例に限られず、ステップ(S32)における投薬ボトル2の移動を開始してからステップ(S36)における投薬ボトル2の調剤位置への移動を終了するまでの任意のタイミングで、注ぎ足し処理を中止する指示の入力があるか否かが判断されてもよい。この場合、注ぎ足し処理を中止する指示が入力されると、注ぎ足し処理のための水剤供給装置1の動作を直ちに停止することができ、これにより不要な動作が省ける。典型的には、投薬ボトル2の上部開口2Aに対向する位置にまで賦形剤供給管が移動するよりも前に、注ぎ足し処理を中止する指示が入力されると、投薬ボトル2の上部開口2Aに対向する位置への賦形剤供給管の移動を中止することができ、これにより調剤時間を短縮することができる。
【0078】
実施形態の説明では、注ぎ足し処理のために駆動していたポンプ24を停止した後に、水剤供給装置1が待機状態へと戻り、注ぎ足し処理を終了する指示の入力を受けて投薬ボトル2を下降させる例を説明した。この場合、注ぎ足し処理を終了するというユーザの意図に従って注ぎ足し処理を終了することになるので、注ぎ足し処理を実施することによる投薬ボトル2内の液面の調整をより確実に行なうことができる。一方、この例に限られず、ポンプを停止するステップ(S41)の後に直ちにステップ(S42)へ進んで投薬ボトル2を下降させてもよく、この場合、調剤時間をさらに短縮することができる。
【0079】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 水剤供給装置、2 投薬ボトル、2A 上部開口、3 水剤供給部、5 水剤、14 タッチパネル、21 回転ドラム、22 ドラム回転用モータ、23 水剤ボトル、24 ポンプ、25 ポンプ駆動ユニット、34 チューブ、34a 吸込端、34b 吐出端、36 供給ノズル、36A 供給口、50 昇降装置、85 センサ、90 制御部、91 ボトル位置検出手段、92 通信部、93 メモリ、94 記録媒体アクセス部。