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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026835
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】キャップ組立体及び蓋体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H01R13/52 302G
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132231
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 健一
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087LL04
5E087LL17
5E087MM09
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】 蓋体が着脱し易く、嵌め込みによる嵌合性がよい蓋体を含むキャップ組立体を提供する。
【解決手段】 電子機器筐体の開口部を介して内部に収容されるコネクタ部を塞ぐキャップ組立体は、外周に開口部に嵌合する溝、溝の外部側に突出する外側嵌合部、及び外側嵌合部から内部のコネクタ部まで延在してコネクタ部に連通する連通孔を有する筒状のホルダと、外側嵌合部の外周に嵌合するカバー周縁部を有するカバー部及びカバー部から連通孔に突出しつつ連通孔を塞ぐ、先端側にテーパを備える中空突出部を有する可撓性の蓋体と、を有する。蓋体の中空突出部はカバー部に対向するフランジ部を有する。ホルダは、蓋体のフランジ部に相補的な形状を有し且つ蓋体のフランジ部に密接可能なクランク部を連通孔の内面に有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器筐体の開口部を介して内部に収容されるコネクタ部を塞ぐキャップ組立体であって、
外周に前記開口部に嵌合する溝、前記溝の外部側に突出する外側嵌合部、及び前記外側嵌合部から内部の前記コネクタ部まで延在して前記コネクタ部に連通する連通孔を有する筒状のホルダと、
前記外側嵌合部の外周に嵌合するカバー周縁部を有するカバー部及び前記カバー部から前記連通孔に突出しつつ前記連通孔を塞ぐ、先端側にテーパを備える中空突出部を有する可撓性の蓋体と、を有し、
前記蓋体の前記中空突出部は前記カバー部に対向するフランジ部を有し、
前記ホルダは、前記蓋体の前記フランジ部に相補的な形状を有し且つ前記蓋体の前記フランジ部に密接可能なクランク部を前記連通孔の内面に有している
ことを特徴とするキャップ組立体。
【請求項2】
前記蓋体において、前記蓋体の前記カバー周縁部の両最遠端に対して対向して少なくとも一方に印加される応力により前記カバー周縁部が変形される場合に、前記カバー周縁部が前記ホルダの前記外側嵌合部から外れ且つ前記中空突出部の前記フランジ部が前記ホルダの前記クランク部から外れるように、前記カバー周縁部より薄い厚さの底壁を有する凹部が、前記中空突出部の根元の反対側の前記カバー部に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のキャップ組立体。
【請求項3】
前記凹部は、前記中空突出部に交差して前記カバー部に形成され且つ前記中空突出部の幅より長く伸長するスリットであって、前記スリットは、前記カバー周縁部が変形される場合に前記スリットの対向する長い辺部が変形しつつ接近して前記中空突出部の前記フランジ部が前記ホルダの前記クランク部から外れる幅を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のキャップ組立体。
【請求項4】
前記スリットの幅は、前記蓋体の前記中空突出部の前記フランジ部の外径と内径の差分より大きい幅を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のキャップ組立体。
【請求項5】
前記蓋体の前記中空突出部は、前記フランジ部の変形を緩和する変形緩和部を、その中空部内面上の前記フランジ部よりも前記コネクタ部の側に有する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項6】
前記ホルダの前記クランク部は、前記外側嵌合部における前記連通孔の内径が前記コネクタ部側の筒部における内径より小さいことにより、形成される
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項7】
前記ホルダは、前記連通孔の前記コネクタ部側に前記コネクタ部を露出させる開口を備えた内壁を有し、
前記蓋体の前記中空突出部は、前記内壁に当接し前記コネクタ部を囲む環状リブを先端に有する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項8】
前記蓋体は前記ホルダの材質より柔らかいエラストマで形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項9】
前記ホルダの前記外側嵌合部の外周とこれに接触する前記蓋体の前記カバー周縁部の外周とは、互いに相補的な形状を有する凹凸面を有している
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項10】
前記ホルダの前記クランク部及び前記内壁の間の距離は前記蓋体の前記中空突出部の前記フランジ部及び前記環状リブ先端の間の距離より短く、
前記ホルダの前記連通孔の幅は前記連通孔に接触する前記蓋体の前記中空突出部部分の幅より狭い
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載のキャップ組立体。
【請求項11】
電子機器筐体の開口部を介して内部に収容されるコネクタ部を塞ぐ可撓性の蓋体であって、
前記開口部の周りの前記電子機器筐体の外面に接触して覆うカバー部と、
前記カバー部の前記開口部側に突出して形成され、その根元の外周に前記開口部に嵌合するフランジ部を備え、その先端側にテーパを備える中空突出部と、を有し、
前記カバー部と前記中空突出部の前記フランジ部は前記開口部を塞ぎ、
前記カバー部の周縁部の両最遠端に対して対向して少なくとも一方に印加される応力により前記カバー部の周縁部が変形される場合に、前記中空突出部の根元の前記フランジ部が前記電子機器筐体の前記開口部から外れるように、前記カバー部の周縁部より薄い厚さの底壁を有する凹部が、前記中空突出部の根元の反対側の前記カバー部に形成されている
ことを特徴とする蓋体。
【請求項12】
前記凹部は、前記中空突出部に交差して前記カバー部に形成され且つ前記中空突出部の幅より長く伸長するスリットであって、前記スリットは、前記カバー部の周縁部が変形される場合に前記スリットの対向する長い辺部が変形しつつ接近して前記フランジ部が前記電子機器筐体の前記開口部から外れる幅を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の蓋体。
【請求項13】
前記スリットの幅は、前記フランジ部の外径と内径の差分より大きい幅を有する
ことを特徴とする請求項12に記載の蓋体。
【請求項14】
前記中空突出部は、前記フランジ部の変形を緩和する変形緩和部を、その中空部内面上の前記フランジ部よりも前記コネクタ部の側に有する
ことを特徴とする請求項11乃至13の何れか一項に記載の蓋体。
【請求項15】
前記中空突出部は、前記コネクタ部の周囲を囲むように該周囲に接触する閉端部を先端に有する
ことを特徴とする請求項11乃至14の何れか一項に記載の蓋体。
【請求項16】
前記蓋体は前記電子機器筐体の材質より柔らかいエラストマで形成されている
ことを特徴とする請求項11乃至15の何れか一項に記載の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器筐体内部に収容されるコネクタ部を覆い防水性や防塵耐性を有するキャップ組立体及び蓋体の蓋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気コネクタ用防水キャップに環状エラストマ部材が設けられた防水パッキンと筐体との間への異物の噛み込みを防止する防水キャップ構造が記載されている。特許文献2には、防水キャップ構造として、操作時の防塵防滴の機能低下を防ぐために並設された2つのコネクタ用開口を独立して覆う防水キャップをそれらの開口の間に設けたボスに装着して取り付ける構造が記載されている。特許文献3には、コネクタを抜く時に同時に防水蓋をつかむような誤操作を防止できる、固着部と蓋体部との係合部が互いに形成された防水キャップ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-252794号公報
【特許文献2】特開2003-217734号公報
【特許文献3】実開平7-020519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら特許文献に記載された防水キャップ構造では、防水キャップの筐体への嵌合力を高めれば永続的に防水性を維持できるが、嵌合力が強いため、取り外しが困難になる。逆に嵌合力を弱めれば弱い力で防水キャップの取り外しが容易となるが、封止力が低下し防水性が弱くなる。このように、防水キャップの防水性(嵌合力)と着脱性はトレードオフの関係にあるといった問題点もあった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、蓋体すなわち防水キャップが着脱し易く、嵌め込みによる嵌合性を改善したキャップ組立体及び蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるキャップ組立体は、電子機器筐体の開口部を介して内部に収容されるコネクタ部を塞ぐキャップ組立体であって、外周に前記開口部に嵌合する溝、前記溝の外部側に突出する外側嵌合部、及び前記外側嵌合部から内部の前記コネクタ部まで延在して前記コネクタ部に連通する連通孔を有する筒状のホルダと、前記外側嵌合部の外周に嵌合するカバー周縁部を有するカバー部及び前記カバー部から前記連通孔に突出しつつ前記連通孔を塞ぐ、先端側にテーパを備える中空突出部を有する可撓性の蓋体と、を有し、前記蓋体の前記中空突出部は前記カバー部に対向するフランジ部を有し、前記ホルダは、前記蓋体の前記フランジ部に相補的な形状を有し且つ前記蓋体の前記フランジ部に密接可能なクランク部を前記連通孔の内面に有していることを特徴とする。
【0007】
本発明による蓋体は、電子機器筐体の開口部を介して内部に収容されるコネクタ部を塞ぐ可撓性の蓋体であって、前記開口部の周りの前記電子機器筐体の外面に接触して覆うカバー部と、前記カバー部の前記開口部側に突出して形成され、その根元の外周に前記開口部に嵌合するフランジ部を備え、その先端側にテーパを備える中空突出部と、を有し、前記カバー部と前記中空突出部の前記フランジ部は前記開口部を塞ぎ、前記カバー部の周縁部の両最遠端に対して対向して少なくとも一方に印加される応力により前記カバー部の周縁部が変形される場合に、前記中空突出部の根元の前記フランジ部が前記電子機器筐体の前記開口部から外れるように、前記カバー部の周縁部より薄い厚さの底壁を有する凹部が、前記中空突出部の根元の反対側の前記カバー部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャップ組立体及び蓋体によれば、蓋体が可撓性のカバー部及び中空突出部を備え、カバー部の周縁部が変形される場合に、前記中空突出部の根元の前記フランジ部が前記電子機器筐体の前記開口部から外れるように、前記カバー部の周縁部より薄い厚さの底壁を有する凹部が、前記中空突出部の根元の反対側の前記カバー部に形成されているので、蓋体が着脱し易く、嵌め込みによる嵌合性を高めたキャップ組立体及び蓋体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例に係るキャップ組立体の概略分解斜視図である。
図2】本実施例に係るキャップ組立体の外観を示す概略斜視図である。
図3】本実施例に係るキャップ組立体においてキャップがホルダに挿入される様子を説明する概略斜視図である。
図4図2の線xxにおけるキャップ組立体を示す概略断面図である。
図5】本実施例に係るキャップ組立体の概略分解断面図である。
図6】本実施例に係るキャップ組立体においてキャップがホルダから抜去される様子を説明する概略断面図である。
図7】本実施例に係るキャップ組立体(筐体を除く)の概略分解断面図である。
図8】本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップを示す概略斜視図である。
図9】本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップを示す概略断面図である。
図10】本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップの一部分を示す概略断面図である。
図11】本発明による第2の実施例である電子機器の筺体のキャップを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明による第1の実施例のキャップ組立体を説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0011】
(電子機器筐体)
図1に示すように、本実施例において、筐体1内部においてスペーサーSP上に固定されたプリント基板1bに実装されたコネクタ部1aは、筐体1の外部からアクセスできるように筐体1の開口部1dに対向して配置されている。
【0012】
(キャップ組立体)
本実施例のキャップ組立体は、電子機器筐体1の開口部1dと内部に収容されるコネクタ部1aとを塞ぐものであって、防水キャップであるキャップ2(カバー部2a及びこれから突出する中空突出部2bからなる蓋体)とキャップ2に閉塞される筒体のホルダ3(すなわち防水キャップホルダ)とから構成される。
【0013】
図1に示すように、電子機器筐体1の開口部1dに取り付けられたホルダ3にキャップ2を取り付ける際には、カバー部2a側からキャップ2の中空突出部2bをホルダ3の第1の開口OP1に押し込むと、円錐テーパ面2qがガイドとなり中空突出部2bが連通孔3iに入り込み、図2に示すような閉塞状態となる。この中空突出部2bの挿入時、図3に示すように、ホルダ3の第1の開口OP1縁部により円錐テーパ面2qが弾性変形しつつキャップ2がホルダ3の連通孔3iに入る。
【0014】
キャップ2はホルダ3の材質より柔らかいエラストマで形成されている。キャップ組立体の材質例としては、ホルダ3がプラスチックなどの樹脂又は硬質ゴムなど材料が、キャップ2がホルダ3より硬度の低い軟質ゴム材などが挙げられる。
【0015】
(ホルダ)
図3図5に示すように、ホルダ3は、その筒体の外部側に近い外周面に形成された環状の溝3gを有し、溝3gが筐体1の開口部1d(内周縁部)に嵌合されることにより、すなわち開口部1dに溝3gを嵌めることにより電子機器筐体1に予め取り付けられる。
【0016】
また、ホルダ3は、溝3gの外端部側すなわち筐体1の外部側に突出して第1の開口OP1を備える外側嵌合部3hを備える。
【0017】
ホルダ3は、内端部側すなわち筐体1の内部側に内壁3nを有し、内壁3nにはコネクタ部1aを露出させる第2の開口OP2を備える。
【0018】
また、ホルダ3は、外端面側の外側嵌合部3hから内端面側のコネクタ部1aまで延在する、第1の開口OP1と第2の開口OP2とに連通する連通孔3iを有する。
【0019】
ホルダ3の連通孔3iには、すなわち、溝3g及び外側嵌合部3h近傍の連通孔3iの内面には、キャップ2のフランジ部2sと相補的な形状を有し且つフランジ部2sに密接可能なクランク部3pを備えている。
【0020】
さらに、ホルダ3の外側嵌合部3hの外周面には、ホルダ3の第2の開口OP2の方向に先細る第1の錐面3haが全周に亘って設けられている。
【0021】
(キャップ)
キャップ2は、可撓性材料から一体成型された部材であって、ホルダ3の外側嵌合部3hを覆うカバー部2a及びこれから突出する中空突出部2bから構成される。カバー部2a本体の中央には、開放された中空部2iを備える中空突出部2bが配置され、カバー部2aの周縁には、カバー周縁部2cが配置されている。
【0022】
キャップ2のカバー周縁部2cはホルダ3の外側嵌合部3hの外周面に嵌合する(外側嵌合)。キャップ2の中空突出部2bは連通孔3iを塞ぎ、すなわちホルダ3の連通孔3iに嵌合する(内側嵌合)。
【0023】
(外側嵌合)
キャップ2のカバー周縁部2cには、筐体1外面に交わる第2の錐面2caを備える環状凹部が形成され、第2の錐面2caは、ホルダ3の外側嵌合部3hの外周面の第1の錐面3haに液密的に接触するような相補形状を有する。これによって、ホルダ3にキャップ2が嵌められると、第1の錐面3haと第2の錐面2caが液密的に嵌合する状態となる。
【0024】
(内側嵌合)
キャップ2の中空突出部2bは、カバー部2aに対向(例えば平行に対向)するフランジ部2sを有し、フランジ部2sがホルダ3の連通孔3iのクランク部3pに接触可能、すなわち嵌合可能となるように構成されている。すなわち、キャップ2の中空突出部2bのフランジ部2sは、ホルダ3のクランク部3pに液密的に嵌合するような相補形状を有する。これよって、ホルダ3にキャップ2が嵌められると、フランジ部2sとクランク部3pが液密的に接触する状態となる。
【0025】
(カバー凹部)
また、キャップ2は、外部の操作面側すなわち中空突出部2bの根元の反対側のバー部2aの表面に形成された長方形のスリット2t等の凹部を有する。スリット2tは、カバー周縁部2cより薄い厚さの底壁を有する凹部である。図6(a)~(c)に示すように、キャップ2の取り外しの際に、人の指(図示せず)などによるカバー周縁部2cの両最遠端に対して対向して少なくとも一方に印加される応力によりカバー周縁部2cが弾性変形される場合、カバー周縁部2cがホルダ3の外側嵌合部3hから外れ更に中空突出部2bのフランジ部2sがホルダ3のクランク部3pから外れるように、すなわちカバー部2aの弾性変形が容易となるように、スリット2tがカバー周縁部2cより浅い深さ(薄い底壁の厚さ)でカバー部2aに形成されている。
【0026】
スリット2tは、図7に示すように、具体的に、中空突出部2bの筒部の幅D2より長く伸長するように中空突出部2bに交差してカバー周縁部2cの両端の間に亘ってカバー部2aに形成される。スリット2tは、カバー周縁部2cが弾性変形される場合にスリット2tの対向する長い辺部L(図6参照)が弾性変形しつつ接近してカバー部2aのカバー周縁部2cがホルダ3の外側嵌合部3hから外れ且つ中空突出部2bのフランジ部2sがホルダ3のクランク部3pから外れる幅Sを有する。
【0027】
換言すれば、スリット2tの幅Sは、図7に示すキャップ2の中空突出部2bの筒部の外径D2とホルダ3の第1の開口OP1の内径Xの差分すなわちキャップ2の中空突出部2bのフランジ部2sの幅の略二倍(フランジ部の外径と内径の差分)より大きい幅を有する。
【0028】
(変形緩和部)
また、キャップ2の中空突出部2bの内面には、撓み防止リング2fが装填されている。撓み防止リング2fは、中空突出部2bの筒部の弾性変形を防止する変形緩和部であって、キャップ2の柔軟性を補強し嵌合時の変形や撓みによる防水性能の低下を防ぐ。撓み防止リング2fは、キャップ2の材料以上に固い樹脂や金属などの硬質な材料から形成される。なお、変形緩和部は、リング形状の撓み防止リング2fの他に円盤形状に形成されてもよい。撓み防止リング2fの外径Rは、図7に示すホルダ3の第1の開口OP1の内径Xよりも、キャップ2の中空突出部2bの筒部の外径D2を考慮して小さく設定する。
【0029】
キャップ2の中空突出部2bは、フランジ部2sの変形を緩和する撓み防止リング2fを、その中空部2i内面上の電子機器筐体1の開口部1dよりもコネクタ部1aの側に位置するリング装着部2h(撓み防止リング2fの外周に嵌合する溝)に有する。
【0030】
(環状リブ)
さらに、キャップ2の中空突出部2bには、筒部から先端に先細る円錐テーパ面2qと、最先端に環状リブ2rが設けられている。円錐テーパ面2qはホルダ3の第1の開口OP1へのキャップ2の案内面として機能し、先端の環状リブ2rはホルダ3の連通孔3iの内壁3nに当接しコネクタ部1aを囲む防水機能を有する。
【0031】
ホルダ3は、キャップ2を嵌合するための中空突出部2bを保持し且つコネクタ部1aの外形に合わせた第2の開口OP2から装置内部に指や異物が侵入しないようにガードする機能を発揮する。ホルダ3の開口部1d付近にキャップ2の抜け防止のためのクランク部3pがあるので、ホルダ3にキャップ2が差し込まれた際、図4に示すように、クランク部3pにキャップ2のフランジ部2sが引っ掛かることで液密的に封止でき防水性能を確保する。
【0032】
本実施例において、キャップ2に外側嵌合されるホルダ3の外側嵌合部3hの寸法より当該キャップ2の対応接触部分の寸法を若干小さめにすると共に、図7に示すように、キャップ2の中空突出部2bとホルダ3内部の寸法関係を、ホルダ3のクランク部3p及び内壁3nの間の距離H3がキャップ2の中空突出部2bのフランジ部2s及び前記環状リブ先端の間の距離H2より短く(H3<H2)、更に、ホルダ3の連通孔3iの幅D3がこれに接触するキャップ2の中空突出部2bの部分の幅D2より狭く(D3<D2)なるように、設定する。
【0033】
このように、キャップ2のフランジ部2s・環状リブ2r先端の間の距離H2をホルダ3のクランク部3p・内壁3nの間の距離H3よりも若干大きめにし、キャップ2の中空突出部2bの筒部の外径D2(幅)をこれに嵌る連通孔3iの内面の内径D3(幅)よりも若干大きめにすることで、キャップ2をホルダ3に挿入した際に、キャップ2がホルダ3の内壁3nから与えられる反力をクランク部3pとフランジ部2sの引っ掛かり部で受けとめ、防水性能を高めるようになっている。更に、クランク部3pとフランジ部2sの引っ掛かり寸法(D2-X、図7参照)よりスリット2tの幅Sを大きくすることで、クランク部3pからフランジ部2sの引っ掛かりを解除できる関係となっている。
【0034】
(動作の説明)
本実施例のキャップ2の取り外し動作において、図6に示すように、キャップ2のスリット2tをつぶすようにカバー部2aを弾性変形させるとクランク部3pからフランジ部2sの引っ掛かりが解除され、キャップ2が取り外せるようになる。
【0035】
以上のように、本実施例によれば防水性能を確保する強い嵌合力を持ちながら、スリット2tを押しつぶすようにカバー部2aを弾性変形させるという簡単な操作でキャップ2を取り外すことができることである。
【0036】
また、ホルダ3に差し込んだ際、キャップ2がホルダ3から受ける反力で装置外に飛び出そうとする力をクランク部3pで受け止めて高い防水性能を確保することができる。
【0037】
撓み防止リング2fを内部に装填することによりキャップ2がホルダ3から受ける反力によるゴムの弾性変形を撓み防止リングが補強することで防水性能の低下を回避する。
【0038】
キャップ2とホルダ3の嵌合形状(クランク部3pとフランジ部2s)が強く接触された強い嵌合状態で防水性能を確保していることで、取り外しにはその嵌合力より大きな力が必要となるため取り外しにくいキャップ2を所定のスリット幅(S)に設定することでクランク部3pと外側嵌合部3hを解除しキャップ2を容易に取り外すことができる。
【0039】
(変形例)
図8は本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップを示す概略斜視図である。キャップ2に形成されたスリット2tが長方形の凹部を有する場合を本実施例では説明したが、当該スリットは、カバー周縁部2cより薄い厚さの底壁を有する凹部であればよく、変形例として、図8(a)に示す長円形のスリット2tや、図8(b)に示すように、円形の凹部2tbでも、本発明に含まれる。
【0040】
図9は、本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップを示す概略断面図である。キャップ2の中空突出部2bの内面に設けられた変形緩和部として撓み防止リング2fが装填される場合を本実施例では説明したが、当該変形緩和部は、フランジ部2sの変形を緩和するものであればよく、変形例として、図9に示すように、キャップ2の中空突出部2bにおいて、フランジ部2sの変形を緩和する一体成形された充填部2faを、その中空部2i内の電子機器筐体1の開口部1d(フランジ部2s)よりもコネクタ部の側(環状リブ2r側)に配置されるように、設けることができる。
【0041】
図10は、本実施例に係る変形例であるキャップ組立体のキャップ2の一部分のカバー周縁部2cを示す概略断面図である。
【0042】
ホルダ3の外側嵌合部3hとキャップ2のカバー周縁部2cとが第1の錐面3haと第2の錐面2caにより筐体外側で嵌合する場合を本実施例では説明したが、当該外側嵌合は、ホルダ3の外側嵌合部3hの外周とこれに接触するキャップ2のカバー周縁部2cの外周とが、互いに相補的な形状を有する凹凸面を有しているのであればよく、変形例として、図10(a)に示すように、相補的な形状であるホルダ3の外側嵌合部3hの第1の円柱面3hbとキャップ2のカバー周縁部2cの第2の円柱面2cbが筐体外側で嵌合する場合や、図10(b)に示すように、相補的な形状であるホルダ3の外側嵌合部3hの環状凹面3hcとキャップ2のカバー周縁部2cの環状凸面2ccが筐体外側で嵌合する場合や、図10(c)に示すように、相補的な形状であるホルダ3の外側嵌合部3hの環状凸面3hdとキャップ2のカバー周縁部2cの環状凹面2cdが筐体外側で嵌合する場合も、本発明に含まれる。
【実施例0043】
図11は、第2の実施例である電子機器の筺体のキャップを示す部分断面図である。第2の実施例は、蓋体のキャップ2であって、第1の実施例のホルダ3を省略してキャップ2のみ電子機器筐体1の開口部1dと内部に収容されるコネクタ部1aとを塞ぐ構成とし、ホルダ3の第1の開口OP1に嵌める代わりに電子機器筐体1の開口部1dにキャップ2を直接嵌め、クランク部を当該開口部1dとし、中空突出部2b先端の環状リブ2rの代わりに中空突出部2bが、コネクタ部1aの周囲を囲むように該周囲に接触する閉端部2raを先端に有する以外、第1の実施例と同一である。
【0044】
本実施例のキャップ2は、電子機器の筐体1の開口部1dを介して内部に収容されるコネクタ部1aを塞ぐ可撓性の蓋体である。キャップ2は、開口部1dの周りの筐体1の外面に接触して覆うカバー部2aと、カバー部2aの開口部1d側に突出して形成され、その根元の外周に開口部1dに嵌合するフランジ部2sを備え、その先端側にテーパを備える中空突出部2bと、を有する。
【0045】
キャップ2のカバー部2aと中空突出部2bのフランジ部2sは開口部1dを塞ぐように構成されている。
【0046】
カバー部2aの周縁部の両最遠端に対して対向して少なくとも一方に印加される応力によりカバー部2aの周縁部が変形される場合に、中空突出部2bの根元のフランジ部2sが筐体1の開口部1dから外れるように、カバー部2aの周縁部より薄い厚さの底壁を有する凹部としてのスリット2tは、中空突出部2bの根元の反対側のカバー部2aに形成されている
以上のように第2の実施例によれば、第1の実施例とほぼ同様な効果が得られ、1の実施例よりも部品点数が少なく機器の筐体1のコネクタ部1aを塞ぐ構成が達成できる。
【0047】
いずれの実施例でも、キャップ2のカバー部2aの外径は、カバー部2aの弾性変形のマージンのために、そのフランジ部2sからカバー部2aでの距離よりも十分大きく確保することが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 筐体
1a コネクタ部
1b プリント基板
1d 開口部
2 キャップ
2a カバー部
2b 中空突出部
2c カバー周縁部
2ca 第2の錐面
2f 防止リング
2h リング装着部
2i 中空部
2q 円錐テーパ面
2r 環状リブ
2s フランジ部
2t スリット
3 ホルダ
3g 溝
3h 外側嵌合部
3i 連通孔
3n 内壁
3p クランク部
3ha 第1の錐面
OP1 第1の開口
OP2 第2の開口
10 キャップ組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11