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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026839
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】電気めっき方法、電気めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/00 20060101AFI20230221BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20230221BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C25D21/00 K
C25D21/00 J
C25D17/10 A
C25D21/10 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132237
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中谷 悦啓
(72)【発明者】
【氏名】笠川 美沙紀
(72)【発明者】
【氏名】小里 和寛
(57)【要約】
【課題】従来よりも均一なめっき膜を形成する。
【解決手段】めっき槽(6)中の電解液(E)に浸漬した対象物(X)に対して電解液を介して対向する、個々に電流制御される複数の陽極(12)を用いて、対象物の表面の少なくとも一部にめっき膜を形成する。制御部(26)は、陽極への印加電流を制御して、対象物へのめっき膜の形成を制御する。また、制御部は、各陽極において、隣接する他の陽極との間の距離D、および、対象物との距離Hを、めっき膜における、膜厚の厚い膜厚極大範囲から該膜厚極大範囲における膜厚よりも膜厚の薄い膜厚極小範囲までの最短距離である距離Wが前記目標値に最も近接する値に決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に対して前記電解液を介して対向する、個々に電流制御される複数の陽極を用いて、前記対象物の表面の少なくとも一部にめっき膜を形成する電気めっき方法であって、
前記めっき膜における、膜厚の厚い膜厚極大範囲から該膜厚極大範囲における膜厚よりも膜厚の薄い膜厚極小範囲までの最短距離である距離Wの目標値を取得する工程と、
各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hを、前記めっき膜における距離Wが前記目標値に最も近接する値に決定する工程と、
前記距離Dおよび前記距離Hを満たす前記陽極を用いて前記めっき膜を形成する工程とを含む電気めっき方法。
【請求項2】
前記めっき膜の形成に先立って、前記めっき槽中の前記電解液に試験対象物を浸漬し、前記電解液を介して対向する共通陽極を用いて、前記試験対象物の表面の少なくとも一部に試験めっき膜を形成する工程をさらに含み、
前記距離Dと前記距離Hとを決定する工程において、前記距離Wが、前記試験めっき膜において決定した、前記膜厚極大範囲から前記膜厚極小範囲までの最短距離である距離W’になるように、前記距離Dと前記距離Hとを決定する請求項1に記載の電気めっき方法。
【請求項3】
各前記陽極における、前記距離Dと、前記距離Hとが、D≦2Hを満たす請求項1または2に記載の電気めっき方法。
【請求項4】
前記距離Dと前記距離Hとを決定する工程において、各前記陽極における、前記距離Dと、前記距離Hとが、前記対象物の表面の各位置における前記距離Wについて、
【数1】
を満たすように決定する請求項1から3の何れか1項に記載の電気めっき方法。
【請求項5】
前記めっき膜を形成する工程において、前記陽極と前記対象物との間、かつ、少なくとも1組の互いに隣接する2つの前記陽極の間に、電気絶縁性を有する遮蔽板を配置した状態において、前記めっき膜を形成する請求項1から4の何れか1項に記載の電気めっき方法。
【請求項6】
前記めっき膜を形成する工程において、前記めっき槽中の前記電解液を循環させるポンプと、前記ポンプから送り出された前記電解液を放出するパイプとを用いて、前記陽極と前記対象物との間の前記電解液の撹拌または入れ替え、および、前記対象物の、前記陽極と対向する表面への、前記電解液の吹き付けを行いつつ、前記めっき膜を形成する請求項1から5の何れか1項に記載の電気めっき方法。
【請求項7】
めっき槽と、
前記めっき槽の内部に位置し、個々に電流制御される複数の陽極と、
前記陽極への印加電流を制御して、前記めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向する複数の前記陽極を用いた、前記対象物の表面の少なくとも一部へのめっき膜の形成を制御し、さらに、前記めっき膜における、膜厚の厚い膜厚極大範囲から該膜厚極大範囲における膜厚よりも膜厚の薄い膜厚極小範囲までの最短距離である距離Wの目標値を取得し、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hを、前記めっき膜における距離Wが前記目標値に最も近接する値に決定する制御部とを備えた電気めっき装置。
【請求項8】
前記めっき槽の内部に位置する共通陽極を備え、
前記めっき膜の形成に先立って、前記めっき槽中の前記電解液に試験対象物を浸漬し、前記共通陽極を用いて、前記試験対象物の表面の少なくとも一部に試験めっき膜を形成し、
前記制御部は、前記距離Wが、前記試験めっき膜において決定した、前記膜厚極大範囲から前記膜厚極小範囲までの最短距離である距離W’になるように前記距離Dと前記距離Hとを決定する請求項7に記載の電気めっき装置。
【請求項9】
各前記陽極における、前記距離Dと、前記距離Hとが、D≦2Hを満たす請求項7または8に記載の電気めっき装置。
【請求項10】
前記制御部が、各前記陽極における、前記距離Dと、前記距離Hとを、前記対象物の表面の各位置における前記距離Wについて、
【数1】
を満たすように決定する請求項7から9の何れか1項に記載の電気めっき装置。
【請求項11】
前記陽極と前記対象物との間、かつ、少なくとも1組の互いに隣接する2つの前記陽極の間に位置し、電気絶縁性を有する遮蔽板をさらに備えた請求項7から10の何れか1項に記載の電気めっき装置。
【請求項12】
めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向し、個々に電流制御される複数の陽極を用いて、前記対象物の表面の少なくとも一部にめっき膜を形成する電気めっき方法であって、
各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hが、D≦2Hを満たす電気めっき方法。
【請求項13】
めっき槽と、
前記めっき槽の内部に位置し、個々に電流制御される複数の陽極と、
前記陽極への印加電流を制御して、前記めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向する複数の前記陽極を用いた、前記対象物の表面の少なくとも一部へのめっき膜の形成を制御し、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hが、D≦2Hを満たすように前記距離Dと前記距離Hとを決定する制御部とを備えた電気めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気めっき方法、および電気めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気めっきを行うための装置として、複数の陽極を備えた装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-226899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電気めっきにより形成されるめっき膜は、均質性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る電気めっき方法は、めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に対して前記電解液を介して対向する、個々に電流制御される複数の陽極を用いて、前記対象物の表面の少なくとも一部にめっき膜を形成する電気めっき方法であって、前記めっき膜における、膜厚の厚い膜厚極大範囲から該膜厚極大範囲における膜厚よりも膜厚の薄い膜厚極小範囲までの最短距離である距離Wの目標値を取得する工程と、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hを、前記めっき膜における距離Wが前記目標値に最も近接する値に決定する工程と、前記距離Dおよび前記距離Hを満たす前記陽極を用いて前記めっき膜を形成する工程とを含む。
【0006】
本開示の他の一態様に係る電気めっき装置は、めっき槽と、前記めっき槽の内部に位置し、個々に電流制御される複数の陽極と、前記陽極への印加電流を制御して、前記めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向する複数の前記陽極を用いた、前記対象物の表面の少なくとも一部へのめっき膜の形成を制御し、さらに、前記めっき膜における、膜厚の厚い膜厚極大範囲から該膜厚極大範囲における膜厚よりも膜厚の薄い膜厚極小範囲までの最短距離である距離Wの目標値を取得し、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hを、前記めっき膜における距離Wが前記目標値に最も近接する値に決定する制御部とを備える。
【0007】
本開示の他の一態様に係る電気めっき方法は、めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向し、個々に電流制御される複数の陽極を用いて、前記対象物の表面の少なくとも一部にめっき膜を形成する電気めっき方法であって、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hが、D≦2Hを満たす。
【0008】
本開示の他の一態様に係る電気めっき装置は、めっき槽と、前記めっき槽の内部に位置し、個々に電流制御される複数の陽極と、前記陽極への印加電流を制御して、前記めっき槽中の電解液に浸漬した対象物に、前記電解液を介して対向する複数の前記陽極を用いた、前記対象物の表面の少なくとも一部へのめっき膜の形成を制御し、各前記陽極において、隣接する他の前記陽極との間の距離D、および、前記対象物との距離Hが、D≦2Hを満たすように前記距離Dと前記距離Hとを決定する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
従来よりも均一なめっき膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態1に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の模式図である。
図2】本開示の実施形態1に係る電気めっき装置の一部における等価回路図の一例である。
図3】本開示の実施形態1に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図4】本開示の実施形態1に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の他の部分における拡大模式図である。
図5】本開示の実施形態1に係るめっき膜の例を説明する、めっき膜の一部分における拡大模式図である。
図6】本開示の実施形態1に係る電気めっき方法を説明するフローチャートである。
図7】本開示の実施形態1に係る電気めっき方法におけるめっき条件の決定方法を説明するフローチャートである。
図8】本開示の実施形態2に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図9】本開示の実施形態2に係る電気めっき装置の別例を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図10】本開示の実施形態3に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図11】本開示の実施形態3に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の他の一部分における拡大模式図である。
図12】本開示の実施形態4に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図13】本開示の実施形態5に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の一部分における拡大模式図である。
図14】本開示の実施形態6に係る電気めっき方法を説明する、電気めっき装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
(めっき装置)
図1は、本実施形態に係る電気めっき装置と、当該電気めっき装置を用いてめっき膜が形成される様子とを示す模式図である。図1においては、後述するめっき膜の材料を含む電解液Eを用いて、プリント基板である対象物Xの表面にめっき膜を形成する方法を説明する。
【0012】
図1に示す電気めっき装置2は、液槽4を備える。例えば、液槽4は、電解液Eによって満たされためっき槽6と、該めっき槽6とは隔壁8によって隔離された循環槽10とを含む。本実施形態において、めっき槽6の容積を超える電解液Eは、隔壁8を超えて、循環槽10に溢れるように、液槽4が設計される。
【0013】
電気めっき装置2は、複数の陽極12を備える。例えば、陽極12のそれぞれは、平板形状を有し、めっき槽6の内部に位置する陽極支持具14の一方の面上に、二次元的に配置される。このため、めっき槽6に電解液Eを満たした場合、陽極12は電解液Eに浸漬される。例えば、電気めっき装置2は、2つの陽極支持具14を備え、陽極12が形成された面が互いに向かい合うように配置されていてもよい。この場合、対象物Xへのめっき膜の形成の間、対象物Xは、2つの陽極支持具14の間に配置されてもよい。例えば、各陽極12は、陽極支持具14上に、隣接する他の陽極12との間に、距離Dだけ間隔をおいて配置されている。
【0014】
本実施形態において、各陽極12の形状、および、各陽極12の陽極支持具14上への配置方法については、特に問われない。例えば、本実施形態においては、陽極支持具14上に矩形状の各陽極12を行列方向に対し略等間隔に並べて配置してもよい。あるいは、互いに大きさの異なる枠形状または円環形状の陽極12を、陽極支持具14の中心から周囲にかけて、次第に大きさが大きくなるように配置してもよい。さらに、本実施形態においては、陽極12をメッシュ状とし、電解液Eを含むめっき槽6中の液体が陽極12を通過できるようにしてもよい。加えて、陽極支持具14は、例えば、板状、枠形状、または格子形状であってもよい。
【0015】
電気めっき装置2は、複数の電源16を備える。各電源16は、陽極12のそれぞれと電気的に接続する。これにより、電気めっき装置2は、各電源16の出力電流値を個別に制御することにより、各陽極12への電流印加を個別に制御できる。また、各電源16は、接地側の電極として、対象物Xと電気的に接続される。
【0016】
電気めっき装置2は、対象物Xを把持することにより、対象物Xをめっき槽6中に支持する、対象物支持具18を備える。対象物支持具18は、対象物Xを、陽極支持具14上の各陽極12と距離をおいて支持する。例えば、図1に示すように、電気めっき装置2は、2つの陽極支持具14の間、かつ、めっき槽6の下方と上方とのそれぞれに位置する、一対の対象物支持具18を備えていてもよい。この場合、対象物支持具18は、対象物Xをめっき槽6の上下方向に把持することにより、対象物Xをめっき槽6中に固定してもよい。
【0017】
めっき槽6に電解液Eを満たした場合、陽極支持具14上の各陽極12と、対象物支持具18に支持された対象物Xとは、電解液Eに浸漬される。このため、電気めっき装置2による対象物Xへのめっき膜の形成の間、対象物Xと各陽極12とは、電解液Eを介して互いに対向する。
【0018】
後に詳述するが、陽極支持具14による各陽極12の支持、および、対象物支持具18による対象物Xの支持により、各陽極12は、対象物Xに対して、距離Hだけ距離をおいて固定される。陽極支持具14または対象物支持具18は可動であってもよい。この場合、陽極支持具14または対象物支持具18の移動に伴い、各陽極12における、対象物Xに対する距離Hは変化する。
【0019】
電気めっき装置2は、液体ポンプであるポンプ20を備える。さらに、電気めっき装置2は、液体が流動できる中空のパイプとして、循環槽10とポンプ20とを連通する循環槽パイプ22、および、めっき槽6とポンプ20とを連通するめっき槽パイプ24を備える。ポンプ20は、循環槽パイプ22を介して循環槽10内の電解液Eを取り込み、めっき槽パイプ24を介してめっき槽6内に電解液Eを送り込む。
【0020】
例えば、めっき槽パイプ24の、電解液Eを放出する側の開口は、めっき槽6の底部近傍に位置する。当該構成により、電気めっき装置2は、めっき槽6の上部において、隔壁8から循環槽10に溢れ出た電解液Eを、循環槽パイプ22、ポンプ20、およびめっき槽パイプ24を順に介して、めっき槽6の下部に送りこむ。これにより、電気めっき装置2は、めっき槽6中の電解液Eを撹拌させることができる。加えて、本実施形態においては、循環槽10中の電解液Eの取出し、および、循環槽10への電解液Eの追加を行うことにより、めっき槽6中の電解液Eの入れ替えを行ってもよい。
【0021】
めっき槽パイプ24はめっき槽6の内部において分岐していてもよく、また、分岐しためっき槽パイプ24のそれぞれの先端に開口が形成されていてもよい。めっき槽パイプ24の複数の先端が、陽極12と対象物Xとの間に配置されることにより、めっき槽パイプ24は、対象物Xに向かって電解液Eを送り込む構造を有していてもよい。
【0022】
例えば、陽極12がメッシュ状であり電解液Eを通し、陽極支持具14が枠形状または格子形状等一部分において電解液Eを通す構造を有するとする。この場合、めっき槽パイプ24の開口を有する先端が、陽極支持具14の陽極12とは反対の側から陽極12に向かって電解液Eを送り込むように、めっき槽パイプ24を配置してもよい。
【0023】
電気めっき装置2は、制御部26を備える。制御部26は、電気めっき装置2の各部の動作を制御する。例えば、制御部26は、陽極支持具14または対象物支持具18の位置を制御することにより、各陽極12における、対象物Xに対する距離Hを制御してもよい。また、制御部26は、各電源16を制御して、各陽極12への印加電流を個々に制御してもよい。また、制御部26は、ポンプ20の制御により、めっき槽6内の電解液Eの循環を制御してもよい。
【0024】
制御部26は、ユーザによる不図示の入力インターフェースの操作、あるいは、不図示のメモリ等に記録されたプログラム等に基づいて、各部の制御を行ってもよい。制御部26と電気めっき装置2の各部または外部との通信は、不図示の信号線等を介した信号送受信によって実施されてもよく、不図示の通信手段を用いた信号送受信によって実施されてもよい。
【0025】
(電源の制御方法)
図2は、制御部26による、電源16の制御、ならびに、各陽極12への印加電流の制御をより詳細に説明するための、電気めっき装置2の一部における等価回路図の一例である。図2において、点線にて囲まれた各部は、対象物Xへのめっき膜の形成の間、めっき槽6の内部に位置する。
【0026】
例えば、制御部26は、信号生成部28と、演算命令部30とを備えていてもよい。信号生成部28は、各電源16の制御のための信号を生成する。信号生成部28が生成した信号は、演算命令部30に入力される。演算命令部30は、信号生成部28からの信号に基づき、各電源16に入力する信号を生成する。演算命令部30による各電源16入力する信号の生成は、例えば、信号生成部28からの信号を、信号を入力する電源16を切り替えながら、各電源16に送信することにより実現してもよい。
【0027】
各電源16は、演算命令部30からの信号に基づき、各陽極12に印加する信号を生成し、各陽極12への電流印加を実施する。ここで、複数の陽極12の間には、漏洩抵抗12Rが形成されている場合がある。この場合、信号生成部28は、それぞれの漏洩抵抗12Rの抵抗値を考慮して信号を生成してもよい。
【0028】
演算命令部30による各電源16に入力する信号の生成は、例えば、信号生成部28からの信号を、信号を入力する電源16を切り替えながら、各電源16に送信することにより実現してもよい。あるいは、信号生成部28を内蔵する電源16のそれぞれが生成すべき電流の情報を制御部26において演算し、当該演算に基づいて各電源16が内蔵する信号生成部28が信号を生成してもよい。
【0029】
制御部26による各制御は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)によって実行されてもよい。この場合、AIは制御部26において動作するものであってもよいし、他の装置(例えば、エッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)において動作するものであってもよい。
【0030】
(電気めっきの具体的方法)
図3を参照して、本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xの表面へのめっき膜の方法について、より詳細に説明する。図3は、電気めっき装置2による対象物Xの表面へのめっき膜の形成の間における、電気めっき装置2の一部を拡大した模式図であり、特に、図1の領域Aについて拡大した模式図である。
【0031】
図3には、電気めっき装置2の陽極12のうち、第1陽極12Aと第2陽極12Bとを抜き出して示している。電気めっき装置2が各陽極12の電流印加を行うことにより、各陽極12には電界が生じる。例えば、図3に示すように、第1陽極12Aと第2陽極12Bとのそれぞれへの電流印加により、第1陽極12Aと第2陽極12Bとのそれぞれから電界が生じる。これに伴い、電解液E中の電解質には、第1陽極12Aからの電界に起因する電気力と、第2陽極12Bからの電界に起因する電気力とが作用する。図3には、第1陽極12Aおよび第2陽極12Bのそれぞれからの電界により形成される第1電気力線EAおよび第2電気力線EBの例が示される。
【0032】
例えば、対象物Xがプリント基板である場合、対象物Xの表面XSに位置する配線が、各陽極12に対応する陰極として機能する。このため、対象物Xと各陽極12とを電解液Eに浸漬した状態において、各陽極12の電流制御を行うことにより、電解液E中の電解質が対象物Xの表面XSに向かって流動する。これに伴い、流動した電解質が表面XSに近接し、当該電解質が対象物Xとの間において電子を授受することにより、図3に示す通り、表面XSには、めっき膜Pが形成される。
【0033】
ここで、本実施形態において、各陽極12と対象物Xとの距離Hが、互いに隣接する陽極12の間の距離Dよりも十分に長く、具体的には、D≦2Hである。このため、表面XSのうち、ある陽極12と対向する部分に対し、当該陽極12と隣接する陽極12とが形成する電場に対応しためっき膜Pが形成される。具体的には、例えば、表面XSのうち、第1陽極12Aと対向する部分へのめっき膜Pの形成に、第2陽極12Bからの電界が影響する。
【0034】
このように、本実施形態に係る電気めっき装置2においては、対象物Xへのめっき膜Pの形成の間、互いに隣接する陽極12の一方が、他方と対向する表面XSへのめっき膜Pの形成に関与する。換言すれば、本実施形態に係る電気めっき装置2において、互いに隣接する陽極12の間には、相互作用が生じている。具体的には、例えば、第2陽極12Bへ印加する電流の制御により、表面XSのうち、第1陽極12Aと対向する部分へのめっき膜Pの膜厚制御が可能である。図3においては、例として、第1陽極12Aと第2陽極12Bとに同一の電圧を印加してめっき膜Pの形成した場合について示す。めっき膜Pの詳細については後述する。
【0035】
(めっき膜の膜厚制御)
本実施形態において、表面XS上には、めっき膜Pの形成を行わない位置に対し、予め、ドライフィルムレジスト等の感光性レジストを含む、レジストRが形成されていてもよい。これにより、表面XSの一部のみに、めっき膜Pを形成できる。例えば、レジストRは、対象物Xの表面XSにおける配線パターンに沿って形成される。このため、表面XSの状態によっては、表面XS上のレジストRの密度が表面XSの位置によって異なる場合がある。
【0036】
ここで、例えば、本実施形態においては、表面XSのうち、第1陽極12Aと対向する位置の近傍は、第2陽極12Bと対向する位置の近傍と比較して、表面XS上のレジストRの密度が高く、一方、配線パターンの密度が低いとする。この場合、各陽極12に同一の電流を印加した場合、第1陽極12Aと対向する位置の近傍の配線パターンには、第2陽極12Bと対向する位置の近傍の配線パターンと比較して、第1陽極12Aからの電界が集中する。このため、各陽極12に同一の電流を印加した場合、第1陽極12Aと対向する位置の近傍に形成されるめっき膜Pは、第2陽極12Bと対向する位置の近傍に形成されるめっき膜Pと比較して、膜厚がより厚くなる。
【0037】
図4を参照して、本実施形態に係る電気めっき装置2により対象物Xの表面XSに形成されるめっき膜Pについて、および、当該めっき膜Pの膜厚の均一度の評価について、より詳細に説明する。図4は、めっき膜Pの表面近傍を拡大した模式図である。特に、図4は、図3に示す対象物Xと当該対象物Xの表面XSに形成されためっき膜Pのみを抜き出して図示している。また、表面XS上におけるめっき膜Pの厚みの変動をより明瞭に示すため、図4に示すめっき膜Pの縮尺は図3に示すめっき膜Pの縮尺から変更されている。
【0038】
めっき膜Pの膜厚は、図4に示す通り、厳密には均一ではない場合がある。ここで、本明細書において、めっき膜Pの膜厚とは、図4に示すように、表面XSと平行な表面方向DXと直交する、膜厚方向DPに沿った、めっき膜Pの厚みを指す。
【0039】
本実施形態において、図4に示すように、表面XSに形成されためっき膜Pの均一性の評価のために、予め設定した領域内において、めっき膜Pの測定点PA~PFの6点において、めっき膜Pの膜厚の測定を行った。その結果、各測定点において、それぞれめっき膜Pの膜厚TA~TFを得たとする。本実施形態においては、膜厚を測定した測定点のそれぞれにおける膜厚を比較して、膜厚が厚い範囲(以下、膜厚極大範囲)とそれよりも膜厚が薄い範囲(膜厚極小範囲)とを探索し決定する。これにより、表面方向DXに沿った膜厚極大範囲と膜厚極小範囲との最短の距離となる距離Wを算出する。ここで、膜厚の測定は、例えば、渦電流式試験方法、蛍光X線式試験方法、触針走査法、走査電子顕微鏡試験方法など、各種公知の方法により5点以上の測定点において膜厚を測定することにより行ってもよい。
【0040】
図4には、例えば、膜厚の探索の結果、膜厚TAを有する測定点PAが膜厚極大範囲A1に含まれる点であり、膜厚TBを有する測定点PBが膜厚極小範囲A2に含まれる点であると特定したとする。ここで、膜厚TAはめっき膜Pの膜厚の最大値とは限らず、膜厚TBはめっき膜Pの膜厚の最小値とは限らない。例えば、膜厚TAおよび膜厚TBとほぼ同じ膜厚を有する測定点は、それぞれ膜厚極大範囲A1および膜厚極小範囲A2に含まれるとみなしてもよい。ただし、後記するように、ここでいう「極大」・「極小」とは、一般に数学において定義される極大・極小とは意味が異なる。
【0041】
例えば、測定点PCにおけるめっき膜Pの膜厚TCが膜厚TAよりも大きい場合においても、膜厚TCと膜厚TAとの差が膜厚TAの10パーセント以下であれば、測定点PCは膜厚極大範囲に含まれるとみなす。また、測定点PDにおけるめっき膜Pの膜厚TDが膜厚TBよりも小さい場合においても、膜厚TDと膜厚TBとの差が膜厚TBの10パーセント以下であれば、測定点PDは膜厚極小範囲A2に含まれるとみなす。ただし、膜厚TAと膜厚TBとの間の膜厚である膜厚TEを有する測定点PEおよび膜厚TFを有する測定点PFは、膜厚極大範囲A1および膜厚極小範囲A2の探索の考慮から除外する。
【0042】
本実施形態においては、膜厚極大範囲A1に含まれる膜厚測定点と膜厚極小範囲A2に含まれる膜厚測定点との距離のうち、最短距離となるものを距離Wとして採用する。これにより、距離Wは、めっき膜Pの膜厚極大範囲A1から膜厚極小範囲A2までの最短距離とみなせる。この場合、一般に、膜厚極大範囲A1の膜厚平均値と、膜厚極小範囲A2の膜厚平均値の差が小さくなるほど、めっき膜Pの均一性が向上する。
【0043】
本実施形態において、めっき膜Pの各位置における膜厚は、各陽極12の電流制御により制御できる。特に、互いに隣接する2つの陽極12の間において相互作用が生じている場合、当該陽極12のそれぞれと対向する表面XSにおけるめっき膜Pの膜厚を、当該陽極12の電流制御により、より厳密に制御することができる。
【0044】
したがって、本実施形態に係る電気めっき装置2は、各陽極12の電流制御を行うことにより、めっき膜Pの膜厚極大範囲と膜厚極小範囲の平均膜厚差を低減することができる。
【0045】
ここで、電気めっき装置2の各陽極12の何れか1つのみに電流印加を行い、平板の電極に対しめっき膜Pの成膜を行った場合における、当該めっき膜Pの膜厚極大範囲A1から膜厚極小範囲A2までの最短距離を距離WAとする。この場合、本実施形態において、制御部26は、各陽極12に対し共通の電流を印加して対象物Xの表面XSに形成しためっき膜Pの距離Wを目標値とし、上述した距離WAをこの目標値により近づけてもよい。より具体的に、制御部26は、例えば、距離WAが距離Wに最も近接する値となるように、各陽極12における距離Dおよび距離Hを決定してもよい。これにより、各陽極12の電流制御により膜厚極大範囲A1の膜厚平均値と、膜厚極小範囲A2の膜厚平均値の差をより効率的に低減することができる。
【0046】
本実施形態において、制御部26は、互いに隣接する陽極12の距離Dと、当該陽極12と対象物Xとの距離Hとを決定し、上述した距離WAを決定する。これにより、対象物Xの表面XSに形成されためっき膜Pについて、距離Dと距離Hとの制御を通じて、膜厚極大範囲A1の膜厚平均値と、膜厚極小範囲A2の膜厚平均値の差をより効率的に低減することができる。
【0047】
上記構成により、本実施形態に係る電気めっき装置2により、対象物Xの表面XSの状態によらず、例えば、プリント基板の配線の疎密等によらず、よりめっき膜Pを均一に形成できる。これにより、めっき膜Pの特性が改善する。また、めっき膜Pを研磨して膜厚を均一とする工程を簡素化できる。これに伴い、めっき膜Pが無駄に厚く形成される部分が低減するため、めっき膜Pの材料のコストが低減する。さらに、従来めっき膜Pの均一性を向上するために使用されている、陽極間の遮蔽板等を不要とする、または簡素化できる。
【0048】
本実施形態において、上述の通り、各陽極12において、隣接する他の陽極12との間の距離Dと、対象物Xとの距離Hとは、D≦2Hを満たす。このため、本実施形態に係る電気めっき装置2においては、めっき膜Pの形成の間、各陽極12について、他の陽極12との間に相互作用が生じる。したがって、本実施形態に係る電気めっき装置2は、より効果的に均一なめっき膜Pを形成できる。
【0049】
本実施形態において、めっき膜Pの距離Wは、隣接する他の陽極12との間の距離D、および対象物Xとの距離Hを用いた、下記の式を満たす。
【0050】
【数1】
【0051】
したがって、目標とする距離W’が決定している場合、制御部26は、上記式を満たすように、距離Dと距離Hとを決定してもよい。これにより、電気めっき装置2を用いて、当該距離W’を有するめっき膜Pを効率的に形成できる。さらに、上記構成によれば、陽極12の電流制御を行うと、元々観測されていた膜厚極大範囲A1と膜厚極小範囲A2が観測できなくなり、W’も決定できない状態になるまで、めっき膜Pの平坦性が向上する。換言すれば、目標とする距離W’が決定している場合、制御部26は、上記式によって、距離Dと距離Hとをより容易に決定でき、それに加えて、陽極12の電流制御を行うことにより、めっき膜Pの平坦性を向上させることができる。
【0052】
本実施形態において、対象物Xの表面XSにレジストRが形成されている場合、当該レジストRと電気めっき装置2によって成膜しためっき膜Pとの境界近傍においては、めっき膜Pの膜厚が周囲と比較して増減する場合がある。本実施形態に係る電気めっき装置2によって形成され得るめっき膜Pの例を、図5を参照して説明する。図5は、めっき膜Pの例について、対象物Xの表面XSに形成されためっき膜Pの一部分の近傍を拡大して示す模式図である。
【0053】
図5のめっき膜形成例502に示すように、例えば、めっき膜Pは、レジストRからの距離に関わらず、略一定膜厚にて形成されていてもよい。一方、図5のめっき膜形成例504に示すように、めっき膜Pは、レジストRとの境界の近傍において、周囲よりも膜厚の薄いエッジ部E1が形成されていてもよい。あるいは、図5のめっき膜形成例506に示すように、めっき膜Pは、レジストRとの境界の近傍において、周囲よりも膜厚の厚いエッジ部E2が形成されていてもよい。
【0054】
図5に示すエッジ部E1またはエッジ部E2は、めっき膜PとレジストRとの境界の近傍における電界が、周囲における電界と比較して増減することにより形成される。本実施形態における電気めっき装置2によるめっき膜Pの形成時には、エッジ部E1またはエッジ部E2が形成されることを想定して、各陽極12の電流制御を行ってもよく、あるいは、各陽極12における距離Dおよび距離Hを制御してもよい。
【0055】
(試験めっきおよび本めっき)
本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xに対するめっき膜Pの形成方法について、図6を参照し、より詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた電気めっきの方法を示すフローチャートである。本実施形態においては、対象物Xに対するめっき膜Pの形成に先立ち、当該めっき膜Pの形成に必要な各条件を決定するための仮めっきを行う方法を例に挙げて説明する。
【0056】
はじめに、電気めっき装置2のめっき槽6を電解液Eにて満たし、対象物支持具18に試験対象物を支持させることにより、電解液Eに試験対象物を浸漬する(ステップS2)。試験対象物は、対象物Xと同一の形状、および同一の材料からなるものであってもよい。対象物Xがプリント基板の場合、試験対象物は、対象物Xと同一の配線パターンを有するプリント基板であってもよい。また、対象物XがレジストRを有する場合、試験対象物には、対象物Xと同一の形成パターンを有するレジストRが形成されていてもよい。
【0057】
次に、各電源16の制御により、各陽極12の電流制御を行い、試験対象物に試験めっき膜を形成する(ステップS4)、試験めっきを実行する。ここで、試験めっきは、各電源16の制御により、全ての陽極12に同一の電流を印加することにより実施してもよい。ここで、試験めっきにおいては、各陽極12について、距離Dおよび距離Hが、D≦2Hを満たすとする。これにより、各陽極12は、試験対象物と電解液Eを介して対向する共通陽極として機能する。ただし、各陽極12からの電界の均一性をより向上させるために、可能な限りHをDに対して大きくしてもよい。あるいは、試験めっきにおいて、複数の陽極12に代えて、陽極支持具14上に形成した単一の共通陽極を用いて、試験対象物への試験めっき膜を形成してもよい。
【0058】
試験対象物への試験めっき膜の形成の後、対象物支持具18から試験対象物を取り外し、めっき槽6から試験対象物を取り出す(ステップS6)。次に、試験対象物に形成された試験めっき膜の特性を測定する(ステップS8)。例えば、試験めっき膜の特性の測定においては、試験めっき膜の各位置における膜厚極大範囲A1および膜厚極小範囲A2を測定し、試験めっき膜における、膜厚極大範囲A1と膜厚極小範囲A2との最短距離である距離W’を測定する。
【0059】
次に、測定された試験めっき膜の特性から、対象物Xへのめっき膜Pの形成に用いる、各陽極12における、上述した距離Dおよび距離Hの条件を含む、めっき条件を決定する(ステップS10)。めっき条件を決定する具体的な方法について、図7を参照し、より詳細に説明する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る電気めっき装置2を用いてめっき膜Pを対象物Xに形成する際における、各陽極12における、上述した距離Dおよび距離Hを含むめっき条件の決定方法を示すフローチャートである。
【0061】
はじめに、電気めっき装置2によって成膜されるめっき膜Pの距離Wの目標値を決定する(ステップS10-2)。距離Wの目標値は、例えば、ステップS8にて得られた距離W’であってもよい。本実施形態において、距離W’は、ステップS8において実際にめっき膜を形成し、当該めっき膜の膜厚を測定することにより取得されているが、これに限られない。例えば、距離W’は、電気めっき装置2の使用者によるシミュレーションにより予め決定されてもよい。距離Wの目標値は、形成するめっき膜Pの要求仕様、または電気めっき装置2の装置設計の制約から決定されてもよい。
【0062】
次いで、電気めっき装置2における、各陽極12についての距離Dと距離Hとの制約条件を取得する(ステップS10-4)。例えば、本実施形態に係る電気めっき装置2において、各陽極12は陽極支持具14に直接形成されるため、互いに隣接する2つの陽極12の間の距離は固定されている。また、本実施形態に係る電気めっき装置2においては、各陽極12と対象物Xとの距離は陽極12によらず全て一定である。このように、各陽極12についての距離Dと距離Hとの制約条件は、電気めっき装置2の構成によって、当該電気めっき装置2の製造者によって予め決定されている。
【0063】
次いで、ステップS10-4において取得された制約条件下において、距離Wが最もステップS10-2において取得された目標値に近接する距離Dおよび距離Hを決定する(ステップS10-6)。ステップS10-6において、制御部26は、例えば、ステップS8において得られた距離W’を含む、試験めっき膜の特性に基づき、対象物Xへのめっき膜Pの形成工程において、どのような電界を対象物Xにかけるべきかを求める。次いで、制御部26は、得られた電界と最も近接する電界を対象物Xに印加することの可能な各陽極12の構成を、距離Dおよび距離Hの制約条件下にて決定する。以上により、電気めっき装置2を使用して対象物Xにめっき膜Pを形成する際のめっき条件として、各陽極12についての距離Dと距離Hとが、制御部26によって決定される。例えば、制御部26は、距離Dおよび距離Hの制約条件下にて、めっき膜Pの距離Wが、ステップS8において得られた距離W’に最も近接する距離Dおよび距離Hを、所定のアルゴリズムによって決定してよい。
【0064】
図6の参照に戻ると、ステップS10に次いで、変更後のめっき条件を満たす陽極12を用意する(ステップS11)。ステップS11は、例えば、ステップS10-6において得られた距離Dを満たすように各陽極12が形成された陽極支持具14を電解液Eに浸漬することにより実行されてもよい。また、ステップS11は、各陽極12においてステップS10-6において得られた距離Hが満たされるように、陽極支持具14を配置することにより実現してもよい。
【0065】
次に、対象物支持具18に対象物Xを支持させることにより、電解液Eに対象物Xを浸漬する(ステップS12)。次に、各電源16の制御により、各陽極12の電流制御を行い、対象物Xにめっき膜Pを形成する(ステップS14)、本めっきを実行する。ここで、本めっきは、例えば、試験めっき膜の特性の測定結果を参照して、各電源16の制御を行うことにより実施してもよい。対象物Xへのめっき膜Pの形成の後、対象物支持具18から対象物Xを取り外し、めっき槽6から対象物Xを取り出す(ステップS16)ことにより、対象物Xに対するめっき膜Pの形成が完了する。上述した試験めっきおよび本めっきの間、ポンプ20の制御により、めっき槽6中の電解液Eを循環させてもよい。
【0066】
図6に示すフローチャートに沿って、対象物Xにめっき膜Pを形成する方法を採用する場合、試験対象物に形成した試験めっき膜の特性から、対象物Xへのめっき膜Pの形成に使用するめっき条件を制御部26が決定できる。このため、上記方法により、電気めっき装置2はより特性を改善しためっき膜Pを形成できる。
【0067】
〔実施形態2〕
(遮蔽板)
図8は、本実施形態に係る電気めっき装置2による対象物Xの表面へのめっき膜の形成の間における、電気めっき装置2の一部を拡大した模式図であり、特に、図3に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。本実施形態に係る電気めっき装置2は、さらに、遮蔽板32を備える点を除き、前実施形態に係る電気めっき装置2と同一の構成を備える。
【0068】
遮蔽板32は、電気絶縁性を有し、少なくとも一部が、各陽極12の間に位置する。例えば、遮蔽板32は例えば、ポリ塩化ビニルを含む絶縁体を含んでいてもよい。例えば、遮蔽板32の少なくとも一部は、対象物Xから陽極12への方向に延伸する。例えば、遮蔽板32は、図8に示すように、接着部34を介して陽極支持具14上に形成されていてもよい。遮蔽板32は、各陽極12の間に形成されていてもよいが、少なくとも1組の互いに隣接する陽極12の間に形成されていればよい。
【0069】
遮蔽板32は、さらに、電解液Eを介して、対象物XおよびレジストRと重なる位置に、補助陰極36を含んでいてもよい。補助陰極36は、例えば、陽極12および陽極支持具14とは、絶縁材を挟んで対向する。補助陰極36は、例えば、SUSを含むステンレス鋼を含んでいてもよい。補助陰極36は、例えば、接地されていてもよく、電気的に遊離していてもよい。
【0070】
本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xへのめっき膜Pの形成は、図6に示したフローチャートに沿って実行されてもよい。この場合、各遮蔽板32の有無または形状は、試験めっき膜の特性の測定結果に基づいて、制御部26が決定してもよい。
【0071】
本実施形態に係る電気めっき装置2を用いて、めっき膜Pの形成を行う場合、遮蔽板32によって、互いに隣接する陽極12の間における相互作用を低減することができる。このように、本実施形態においては、互いに隣接する陽極12の間における相互作用を適切に設計でき、めっき膜Pの均一性がより効率よく向上する。
【0072】
ここで、遮蔽板32の対象物Xの表面XSの平面方向における厚みをD’、遮蔽板32の対象物X側の先端から対象物Xまでの距離をH’とする。この場合、厚みD’と距離H’とは、D’≦2H’を満たしていてもよい。この場合、何れかの陽極12について、上述した距離Dと距離HとがD≦2Hを満たさない場合においても、当該陽極12と隣接する陽極12との間の相互作用を生じさせることが可能である。
【0073】
さらに、本実施形態において、めっき膜Pの距離Wは、上述した数式1について、距離Dを距離D’、距離Hを距離H’に読み替えた式を満たしてもよい。この場合、何れかの陽極12について、上述した距離Dと距離Hとが、数式1を満たさない場合においても、目標とする距離Wが決まっている場合、当該距離Wを有するめっき膜Pを効率的に形成できる。さらに、各陽極12における電流制御を行うことにより、膜厚極大範囲と膜厚極小範囲とが観測されなくなり、距離Wが観測されない状態となるまで、めっき膜Pの平坦性が向上する。
【0074】
また、遮蔽板32が補助陰極36を含む場合、各陽極12から補助陰極36への方向にも電気力線が生じる。このため、本実施形態に係る電気めっき装置2を用いて、めっき膜Pの形成を行う場合、補助陰極36上に余剰めっき膜PRが形成される。このように、補助陰極36により、各陽極12における電界分布を矯正し、対象物Xの表面XSに形成されるめっき膜Pの厚みをより容易に制御することができる。
【0075】
本実施形態における遮蔽板32および補助陰極36の構成は、図8に示す構成に限られない。本実施形態における遮蔽板32および補助陰極36の構成の他の例について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態における遮蔽板32および補助陰極36の構成の例を説明する、電気めっき装置2の一部分における拡大模式図であり、それぞれ、図3に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。
【0076】
図9の構成例802および構成例804に示すように、電気めっき装置2は遮蔽板32を備える一方、補助陰極36を備えていなくともよい。例えば、図9の構成例802に示すように、電気めっき装置2は、陽極支持具14から対象物Xへの方向に延伸する遮蔽板32を、各陽極12の間に備えていてもよい。一方、例えば、図9の構成例804に示すように、電気めっき装置2は、陽極支持具14と対象物Xとの間に、各陽極12の端部を遮蔽する遮蔽板32を備えていてもよい。
【0077】
図9の構成例806に示すように、電気めっき装置2は補助陰極36を備える一方、遮蔽板32を備えていなくともよい。特に、例えば、図9の構成例806に示すように、電気めっき装置2は、陽極支持具14と対象物Xとの間において、対象物Xの端部に位置する補助陰極36を備えていてもよい。
【0078】
他に、例えば、図9の構成例808に示すように、電気めっき装置2は、各陽極12の間に位置する遮蔽板32と、陽極支持具14と対象物Xとの間の補助陰極36とを備えていてもよい。ここで、図9の構成例808に示すように、遮蔽板32は、陽極支持具14から対象物Xへの方向において各陽極12の端部を遮蔽する庇部を有してもよい。また、図9の構成例808に示すように、補助陰極36は、陽極支持具14から対象物Xへの方向においてレジストRと重なる位置に、レジストRの形成パターンに合せて形成されていてもよい。
【0079】
〔実施形態3〕
(可動陽極)
図10および図11は、本実施形態に係る電気めっき装置2による対象物Xの表面へのめっき膜の形成の間における、電気めっき装置2の一部を拡大した模式図である。特に、図10は、図3に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。図11は、液槽4の上側から下側に向かう方向において、後述する、図10に示す第1可動陽極38Aおよびその周囲について拡大した模式図である。換言すれば、図11は、図10の紙面に向かって上側から下側に向かってみた場合における、図10に示す第1可動陽極38Aおよびその周囲について拡大した模式図である。図10および図11においては、陽極支持具14の上面と液槽4の底面との双方に平行な方向をX軸方向、液槽4の底面の法線方向をY軸方向、陽極支持具14から対象物Xへの方向をZ軸方向とする。
【0080】
本実施形態に係る電気めっき装置2は、各陽極12に代えて、可動陽極と陽極制御部とを備える点を除き、実施形態1に係る電気めっき装置2と同一の構成を備える。
【0081】
より具体的には、例えば、図10および図11に示すように、本実施形態に係る電気めっき装置2は、第1陽極12Aに代えて、第1可動陽極38Aと、第1可動支持部39Aと、第1陽極制御部40Aとを備える。第1可動支持部39Aは第1可動陽極38Aを支持し、第1陽極制御部40Aは第1可動支持部39Aの位置を制御する。さらに、本実施形態に係る電気めっき装置2は、図10に示すように、第2陽極12Bに代えて、第2可動陽極38Bと、第2可動陽極38Bを支持する第2可動支持部39Bと、第2可動支持部39Bの位置を制御する第2陽極制御部40Bとを備える。
【0082】
第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれは、例えば、略球形状の電極であり、導電性の第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bの先端部にそれぞれ形成される。第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれは、電源16により第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bを介して個別に電流制御される。
【0083】
第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bのそれぞれは、第1陽極制御部40Aおよび第2陽極制御部40Bによる制御を介して、X軸、Y軸、Z軸の3方向について個別かつ3次元的に位置制御される。例えば、第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bのそれぞれは、第1陽極制御部40Aおよび第2陽極制御部40Bのそれぞれにより、表面XSの平面方向に沿って移動することにより、X軸方向またはY軸方向における位置を制御される。また、第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bのそれぞれは、第1陽極制御部40Aおよび第2陽極制御部40Bのそれぞれにより、表面XSの平面方向と略垂直方向であるZ軸方向に沿って位置を制御される。
【0084】
したがって、第1可動支持部39Aおよび第2可動支持部39Bの位置の制御に伴い、第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれは、3次元的に位置を制御される。第1陽極制御部40Aおよび第2陽極制御部40Bは、例えば、ロボットまたは多軸アクチュエータ等であってもよい。
【0085】
このため、第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれは、X軸方向またはY軸方向における位置を個別に制御される。換言すれば、第1可動陽極38Aは、隣接する第2可動陽極38Bとの間の距離Dを制御される。さらに、第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれは、Z軸方向における位置を個別に制御されることにより、表面XSとの距離Hを個別に制御されてもよい。第1可動陽極38Aおよび第2可動陽極38Bのそれぞれの位置制御は、制御部26による、第1陽極制御部40Aおよび第2陽極制御部40Bのそれぞれの制御により実行されてもよい。
【0086】
さらに、図11に示すように、本実施形態に係る電気めっき装置2は、第3可動陽極38Cと、第3可動陽極38Cを支持する第3可動支持部39Cと、第3可動支持部39Cの位置を制御する第3陽極制御部40Cとを備える。第3可動陽極38Cと、第3可動支持部39Cと、第3陽極制御部40Cとは、配置される位置を除き、第1可動陽極38Aと、第1可動支持部39Aと、第1陽極制御部40Aとのそれぞれと同一の構成を備えていてもよい。例えば、第3陽極制御部40Cは、第1陽極制御部40Aと、X軸方向において互いに隣接する位置に配置されていてもよい。
【0087】
このため、第3可動陽極38Cについても、X軸方向またはY軸方向における位置を個別に制御される。換言すれば、第3可動陽極38Cは、例えば、隣接する第1可動陽極38Aとの間の距離Dを制御される。さらに、第3可動陽極38Cは、Z軸方向における位置を個別に制御されることにより、表面XSとの距離Hを個別に制御されてもよい。第3可動陽極38Cの位置制御は、第1可動陽極38Aまたは第2可動陽極38Bの位置制御と同一の方法により実行されてもよい。
【0088】
本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xへのめっき膜Pの形成は、図6に示したフローチャートに沿って実行されてもよい。この場合、各可動陽極の位置制御は、試験めっき膜の特性の測定結果に基づいて実行されてもよい。
【0089】
本実施形態においては、各可動陽極の位置を個別に制御できる。このため、本実施形態に係る電気めっき装置2は、各可動陽極における電界分布をより厳密に制御できる上、互いに隣接する可動陽極の間の相互作用をより厳密に制御できる。したがって、本実施形態に係る電気めっき装置2は、より均一なめっき膜Pを形成できる。
【0090】
〔実施形態4〕
(伸縮部)
図12は、本実施形態に係る電気めっき装置2による対象物Xの表面へのめっき膜の形成の間における、電気めっき装置2の一部を拡大した模式図であり、特に、図3に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。本実施形態に係る電気めっき装置2は、複数の伸縮部をさらに備える点において、実施形態1に係る電気めっき装置2と構成が異なる。より具体的には、例えば、図12に示すように、本実施形態に係る電気めっき装置2は、第1伸縮部42Aと第2伸縮部42Bとを備える。
【0091】
第1伸縮部42Aおよび第2伸縮部42Bのそれぞれは、対象物Xの表面XSの平面方向と略垂直方向、換言すれば、めっき膜Pの膜厚方向と略同一方向に対して伸縮する部材である。第1伸縮部42Aおよび第2伸縮部42Bのそれぞれは、例えば、制御部26により制御されてもよい。第1伸縮部42Aおよび第2伸縮部42Bのそれぞれは、例えば、エアシリンダであってもよい。
【0092】
第1伸縮部42Aの対象物X側の先端部には、第1陽極12Aが形成され、また、第2伸縮部42Bの対象物X側の先端部には、第2陽極12Bが形成される。このため、第1伸縮部42Aおよび第2伸縮部42Bのそれぞれの伸縮に伴い、第1陽極12Aおよび第2陽極12Bのそれぞれの対象物Xとの距離Hが変動する。第1伸縮部42Aおよび第2伸縮部42Bのそれぞれの伸縮を個別に制御することにより、第1陽極12Aおよび第2陽極12Bのそれぞれにおける距離Hを個別に制御できる。
【0093】
上述した構成を除き、本実施形態に係る電気めっき装置2は、実施形態1に係る電気めっき装置2と同一の構成を備える。本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xへのめっき膜Pの形成は、図6に示したフローチャートに沿って実行されてもよい。この場合、各伸縮部の伸縮による、各陽極12の位置制御は、試験めっき膜の特性の測定結果に基づいて実行されてもよい。
【0094】
本実施形態においては、各陽極12における距離Hを個別に制御できる。このため、本実施形態に係る電気めっき装置2は、各陽極12における電界分布をより厳密に制御できる上、互いに隣接する陽極12の間の相互作用をより厳密に制御できる。したがって、本実施形態に係る電気めっき装置2は、より均一なめっき膜Pを形成できる。
【0095】
〔実施形態5〕
(さらに分割された陽極)
図13は、本実施形態に係る電気めっき装置2による対象物Xの表面へのめっき膜の形成の間における、電気めっき装置2の一部を拡大した模式図であり、特に、図3に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。本実施形態に係る電気めっき装置2は、各陽極12に代えて、当該陽極をさらに分割した陽極を備える点を除き、実施形態1に係る電気めっき装置2と同一の構成を備える。より具体的には、例えば、図13に示すように、本実施形態に係る電気めっき装置2は、第1陽極12Aに代えて、複数の第1陽極44Aを備える。
【0096】
第1陽極44Aは、第2陽極12Bを含む他の陽極とは独立して個別に電流制御される。さらに、複数の第1陽極44Aの間においても、個別に電流制御される。
【0097】
例えば、第1陽極44Aは、対象物Xのうち、表面XS上の配線パターンがより密集するまたは微細である位置と対向する位置に形成される。これにより、本実施形態に係る電気めっき装置2は、細かい配線パターンに対しより厳密なめっき膜Pの膜厚制御を実現する。
【0098】
上記構成により、本実施形態に係る電気めっき装置2においては、対象物Xの表面XS上の配線パターンに応じて、より適切な膜厚制御を行うことができる。このため、本実施形態に係る電気めっき装置2は、対象物Xの表面XS上の配線パターンによらず、対象物Xにより均一なめっき膜Pを形成できる。
【0099】
〔実施形態6〕
(分割パイプ)
図14は、本実施形態に係る電気めっき装置と、当該電気めっき装置を用いてめっき膜が形成される様子とを示す模式図であり、特に、図1に示す模式図と同一の位置において拡大した模式図である。本実施形態に係る電気めっき装置46は、実施形態1に示す電気めっき装置2と比較して、めっき槽パイプ24に代えて、めっき槽パイプ48と分割パイプ50とを備える点においてのみ構成が異なる。
【0100】
本実施形態において、めっき槽パイプ48は、ポンプ20から、陽極支持具14の内部までを連通する。また、本実施形態における陽極支持具14には、各陽極12の間に、分割パイプ50がそれぞれ形成されている。各分割パイプ50は、陽極支持具14の内部と連通し、また、対象物Xと対向する開口を有する。
【0101】
ポンプ20によってめっき槽パイプ48を介し陽極支持具14の内部に送り込まれた、電解液Eを含む液体は、各分割パイプ50に分配され、各分割パイプ50から対象物Xに向かって吹き付けられる。陽極支持具14の内部には、例えば、めっき槽パイプ48からの液体を、各分割パイプ50に略均一に分配するように設計された流路が形成されていてもよい。
【0102】
本実施形態に係る電気めっき装置46は、ポンプ20によって、めっき槽6中の電解液Eの撹拌または入れ替えを行うとともに、各分割パイプ50に電解液Eを送り込むことにより、各陽極12と対向する対象物Xの表面に電解液Eを吹き付ける。これにより、対象物Xへのめっき膜Pの形成過程において、最も電解液Eの濃度変化が大きくなり得る陽極12と対象物Xとの間における電解液Eの撹拌または入れ替えをより効率的に実施できる。したがって、本実施形態に係る電気めっき装置2は、より均一なめっき膜Pを形成できる。
【0103】
本実施形態に係る電気めっき装置2を用いた、対象物Xへのめっき膜Pの形成は、図6に示したフローチャートに沿って実行されてもよい。本実施形態において、対象物Xへのめっき膜Pの形成の間、ポンプ20の動作により、分割パイプ50から対象物Xへの電解液Eの吹き付けが実施されてもよい。
【0104】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0105】
2、46 電気めっき装置
6 めっき槽
12 陽極
16 電源
20 ポンプ
22 循環槽パイプ
24、48 めっき槽パイプ
26 制御部
32 遮蔽板
50 分割パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14