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▶ 田邊 裕貴の特許一覧

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  • 特開-緑内障チューブ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026840
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】緑内障チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132238
(22)【出願日】2021-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月30日にWorld Glaucoma Congress(世界緑内障会議)におけるフィルムフェスティバルにおいて、特願2021-132238に関連する内容の動画が下記のURLに公開された。 https://www.youtube.com/watch?v=srLSBEmm4Ew 上記の動画の公開と同時に、当該動画の内容を詳述した論文が以下のURLにて公開された。 https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2021/07090/Heart_rhythm_synchronized_fibrin_flap_in_a.50.aspx
(71)【出願人】
【識別番号】511160594
【氏名又は名称】田邊 裕貴
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田邊 裕貴
(57)【要約】
【課題】 緑内障チューブを用いたシャント手術後、眼科医が、手術後の眼の健康状態を推し量ることが可能となり、かつ、運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となる緑内障チューブの一例を開示する。
【解決手段】 緑内障チューブ1は、管部2の入口部2Aに、流入する房水の流れに応じて往復動可能なフィン状の変位体3を有する。これにより、緑内障チューブ1を用いたシャント手術後、眼科医が、変位体3の動きを観察することにより、手術後の眼の健康状態を推し量ることが可能となるとともに、運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
房水を排出するための緑内障チューブにおいて、
房水が流通する管部と、
前記管部の入口部に設けられ、流入する房水の流れに応じて往復動するように変位する変位体と
を備える緑内障チューブ。
【請求項2】
前記変位体は、心臓弁状に構成されている請求項1に記載の緑内障チューブ。
【請求項3】
前記変位体は、フィブリン膜と同等の物理的性質を有する請求項1又は2に記載の緑内障チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内の房水を排出するための緑内障チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障チューブは、特許文献1に記載されているように、眼内に挿入されて眼内の房水を排出する管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7431709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、緑内障チューブを用いたシャント手術後、眼科医が、手術後の眼の健康状態を推し量ることが可能となり、かつ、運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となる緑内障チューブの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る緑内障チューブは、発明者である医師が2021年に開催されたWorld Glaucoma Congress(世界緑内障会議)で発表した内容に示された知見を基礎とするものである。
【0006】
なお、当該内容は、同年の世界緑内障会議におけるフィルムフェスティバルで世界第3位を受賞した動画として発表され、かつ、その詳細は、Medicine (Baltimore)に掲載された論文として発表されている。
【0007】
そして、当該知見を基礎とする緑内障チューブであって、房水を排出するための緑内障チューブは、例えば、房水が流通する管部(2)と、管部(2)の入口部に設けられ、流入する房水の流れに応じて往復動するように変位する変位体(3)とを備えることが望ましい。
【0008】
これにより、緑内障チューブを用いたシャント手術後、眼科医が、変位体(3)の動きを観察することにより、手術後の眼の健康状態を推し量ることが可能となるとともに、運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【0009】
なお、変位体(3)は、心臓弁状に構成されていることが望ましい。これにより、心臓外科医が、心臓弁の状態から健康状態を評価する際の知見を応用して運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【0010】
また、変位体(3)は、フィブリン膜と同等の物理的性質を有することが望ましい。これにより、弾力性のある変位体(3)を得ることが可能となる。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る緑内障チューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された緑内障チューブは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0015】
(第1実施形態)
<1.緑内障チューブの構成>
本実施形態に係る緑内障チューブ1は、図1に示されるように、管部2及び変位体3等を少なくとも備える。管部2は、眼内の房水が流通するチューブである。なお、管部2は、当該管部2の入口部2Aが眼球内に位置するように施術される。
【0016】
変位体3は、フィン、つまり鰭(ヒレ)状の薄膜であって、管部2の入口部2Aに設けられている。当該変位体3は、図1の実線及び二点鎖線で示されるように、流入する房水の流れに応じて往復動するように変位する。
【0017】
なお、管部2及び変位体3は、例えば、SIBS材料等の軟質な樹脂製である。変位体3は、例えば、管部2に一体成形された一体品、又は別部材として製造された後、管部2に接合されて管部2に一体化された構成である。
【0018】
変位体3は、例えば、心臓弁状に構成されていることが望ましい。心臓弁状に構成された変位体3とは、「変位体3が心臓弁を模した形状及び動作特性を有する」という意味である。そして、変位体3は、フィブリン膜と同等の物理的性質を有することが望ましい。
【0019】
<2.本実施形態に係る緑内障チューブの特徴等>
本実施形態に係る緑内障チューブ1は、2021年に開催されたWorld Glaucoma Congress(世界緑内障会議)におけるフィルムフェスティバルで世界第3位を受賞した動画に示された知見を基礎とするものである。
【0020】
因みに、上記の動画の簡略版は、以下のURLにて確認可能である。
https://www.youtube.com/watch?v=srLSBEmm4Ew
上記動画の内容を詳述した論文は、以下のURLにて参照可能である。
https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2021/07090/Heart_rhythm_synchronized_fibrin_flap_in_a.50.aspx
なお、World Glaucoma Congress(世界緑内障会議)とは、緑内障科学とケアのための独立した、公平な、倫理的な、グローバルな組織である。そして、世界緑内障会議の主な目的は、世界中の緑内障をなくすことである。
【0021】
世界緑内障会議の構成員及び意思決定者(以下、これらを総称して構成員という。)は、全て医療従事者である。そして、世界緑内障会議の構成員は、日々の高いレベルの臨床や研究を続けながら、世界緑内障会議のために時間と専門知識を提供している。
【0022】
また、世界緑内障会議の構成員の全ては、緑内障の分野において世界的に有名な専門家である。このため、これら構成員の意見は日常的に求められており、かつ、彼らの論文は定期的に出版され、参照されている。つまり、世界緑内障会議に発表される内容は、緑内障医学の進歩に寄与する高品質の実証に基づく科学の源である。
【0023】
そして、本実施形態に係る緑内障チューブ1は、2021年の世界緑内障会議におけるフィルムフェスティバルで世界第3位を受賞した動画、及びMedicine (Baltimore)に掲載された論文に示された知見に基づく発明である。
【0024】
具体的には、当該発明に係る緑内障チューブでは、管部2の入口部2Aに、流入する房水の流れに応じて往復動可能なフィン状の変位体3が設けられている。
【0025】
これにより、緑内障チューブ1を用いたシャント手術後、眼科医が、変位体3の動きを観察することにより、手術後の眼の健康状態を推し量ることが可能となるとともに、運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【0026】
変位体3は、心臓弁状に構成されていることが望ましい。これにより、心臓外科医が、心臓弁の状態から健康状態を評価する際の知見を応用して運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【0027】
すなわち、発明者が世界緑内障会議にて発表した論文及び動画に示されていたように、緑内障チューブが挿入された患者の観察においては、房水が管部に流入する際に、フィブリンにて形成されたフィン(フラップ)状の変位体が心臓弁のごとく挙動することが確認された。したがって、心臓外科医が、心臓弁の状態から健康状態を評価する際の知見を応用して運動と眼圧下降効果との関係を明確に評価することが可能となり得る。
【0028】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、変位体3と管部2とが一体化されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、変位体3と管部2とが別体であってもよい。
【0029】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1… 緑内障チューブ
2… 管部
図1