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特開2023-26851封入体、吸音部材、制振部材、及び封入体の製造方法
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  • 特開-封入体、吸音部材、制振部材、及び封入体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026851
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】封入体、吸音部材、制振部材、及び封入体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20230221BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/16 160
G10K11/16 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132256
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
(72)【発明者】
【氏名】小松原 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓朗
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA26
5D061CC20
5D061DD11
5D061GG01
(57)【要約】
【課題】発泡体片を用いた物品について、耐熱性及び所望の物性を確保する。
【解決手段】封入体10は、複数の発泡体片20を、耐熱性の容器30に封入した封入体である。発泡体片20は、外方に向けて延びる複数の枝部21を有する骨格構造を備えている。各発泡体片20同士は、接触状態で、かつ非接着状態となっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発泡体片を、耐熱性の容器に封入した封入体であって、
前記発泡体片は、外方に向けて延びる複数の枝部を有する骨格構造を備え、
各前記発泡体片同士は、接触状態で、かつ非接着状態となっている、封入体。
【請求項2】
吸音機能を有する、請求項1に記載の封入体。
【請求項3】
制振機能を有する、請求項1又は請求項2に記載の封入体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の封入体を備える、吸音部材。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の封入体を備える、制振部材。
【請求項6】
発泡体を粉砕して前記発泡体片とする粉砕工程と、
前記発泡体片を前記容器に封入する封入工程と、を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の封入体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封入体、吸音部材、制振部材、及び封入体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発泡体片を用いた物品が検討されている。例えば、特許文献1では、粉砕した発泡体片(軟質ウレタンフォーム)を型に注入し、圧力と温度をかけて徐々に圧縮して得られるシート材が検討されている。
【0003】
特許文献2には、ゴムシートの片面または両面にウレタンフォームシートを密着した吸音材が開示されている。このウレタンフォームシートには、ウレタンフォームを製造する際に生じる削り屑等の発泡体片をバインダーで固めて用いてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-232703号公報
【特許文献2】実公昭51-032401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の発泡体片を用いた物品では、耐熱性及び所望の物性が必ずしも十分でない場合があった。
【0006】
本開示は、発泡体片を用いた物品について、耐熱性及び所望の物性を確保することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の発泡体片を、耐熱性の容器に封入した封入体であって、
前記発泡体片は、外方に向けて延びる複数の枝部を有する骨格構造を備え、
各前記発泡体片同士は、接触状態で、かつ非接着状態となっている、封入体。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、発泡体片を用いた物品について、耐熱性及び所望の物性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る封入体を、容器を一部破断して模式的に示す平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】半硬質ポリウレタン発泡体(粉砕前)と、これを粉砕して得られた発泡体片(粉砕後)を、倍率40倍、100倍で観察した走査電子顕微鏡(SEM)像である。
図4】軟質ポリウレタン発泡体(粉砕前)と、これを粉砕して得られた発泡体片(粉砕後)を、倍率40倍、100倍で観察したSEM像である。
図5】発泡体片を模式的に表す図である。
図6】実施形態2に係る封入体を、容器を一部破断して模式的に示す平面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・吸音機能を有する、封入体。
・制振機能を有する、封入体。
・封入体を備える、吸音部材。
・封入体を備える、制振部材。
【0011】
・発泡体を粉砕して前記発泡体片とする粉砕工程と、
前記発泡体片を前記容器に封入する封入工程と、を備える、封入体の製造方法。
【0012】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0013】
<実施形態1>
1.封入体10
図1及び図2に示すように、本実施形態の封入体10は、複数の発泡体片20を、耐熱性の容器30に封入した封入体である。発泡体片20は、外方に向けて延びる複数の枝部21を有する骨格構造を備えている。各発泡体片20同士は、接触状態で、かつ非接着状態となっている。なお、図2においては、複数の発泡体片20の外形を二点鎖線で示し、その一部のみを示している。
【0014】
(1)発泡体片20
発泡体片20の材質は特に限定されない。発泡体片20は、耐熱性の観点から、ウレタン発泡体、ゴム発泡体、及びメラミン樹脂発泡体からなる群より選ばれる1種以上の発泡体片であることが好ましい。ウレタン発泡体は、耐熱性の観点から、半硬質ウレタン発泡体又は硬質ウレタン発泡体であることがより好ましい。ゴム発泡体としては、ニトリルブタジエンゴム(NBR)発泡体、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)発泡体、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)発泡体等が挙げられる。
【0015】
発泡体片20は、耐熱性の発泡体片であることが好ましい。耐熱性の発泡体片20としては、例えば、融点が所定温度以上の樹脂発泡体片、又は融点を有しないが分解温度が所定温度以上の樹脂発泡体片が挙げられる。所定温度としては、封入体10の使用環境に応じて、例えば、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、200℃等を例示することができる。所定温度の上限は、例えば200℃である。封入体10がエンジン回りの部材として用いられる場合には、発泡体片20は、例えば、融点が120℃以上の樹脂発泡体片、又は融点を有しないが分解温度が120℃以上の樹脂発泡体片であることが好ましい。
【0016】
発泡体としては、連続気泡発泡体、及び独立気泡発泡体のいずれも用いることができる。なお、吸音部材としては、連続気泡発泡体が用いられることが一般的であるが、封入体10は、複数の発泡体片20を備えることで、独立気泡発泡体であっても吸音性等の所望の性能を発揮できる。
【0017】
図3は、半硬質ポリウレタン発泡体(粉砕前)と、これを粉砕して得られた発泡体片(粉砕後)を、倍率40倍、100倍で観察したSEM(走査電子顕微鏡)像である。図4は、軟質ポリウレタン発泡体(粉砕前)と、これを粉砕して得られた発泡体片(粉砕後)を、倍率40倍、100倍で観察したSEM像である。発泡体片20は、図3のようにセル膜を有していてもよく、図4のようにセル膜を有していなくてもよい。材料となる発泡体がセル膜を有する場合において、発泡体片20は、発泡体を加工する過程でセル膜が除去されていてもよい。
【0018】
材料となる発泡体の気泡の大きさは特に限定されない。JIS K 6400-1に準じて測定される発泡体のセル数は、30個/25mm-120個/25mmが好ましく、40個/25mm-110個/25mmがより好ましく、45個/25mm-100個/25mmがさらに好ましい。セル数の具体的な測定は、厚み10mm以上、幅及び長さ100mm以上の試験片を用意し、倍率が5倍以上の拡大鏡を用い、試験片の表面の直線上における10mm間に存在するセルの個数nを3箇所で数え、n個の平均値(個/10mm)を2.5倍して、セル数N個/25mmを算出する。
【0019】
材料となる発泡体の密度、通気性、圧縮強度、硬さ等は特に限定されない。材料となる発泡体の種類ごとに、密度、通気性、圧縮強度、硬さ等を例示する。なお、通気性は、いずれの発泡体においてもJIS K 6400-7に準じて、厚さ10mmのサンプルで測定した測定値である。
・軟質ウレタン発泡体
密度(JIS K 7222) 5kg/m-100kg/m
通気性 10cc/cm/sec-300cc/cm/sec
圧縮強度(JIS K 6400-2 D法) 10N-230N
・半硬質ウレタン発泡体
密度(JIS K 7222) 10kg/m-70kg/m
通気性 0.05cc/cm/sec-30cc/cm/sec
圧縮強度(JIS K 7220:25%圧縮) 5N/cm-50N/cm
・ゴム発泡体(エマルジョンフォーム、スキン層なし)
密度(JIS K 6767) 100kg/m-200kg/m
通気性 0.20cc/cm/sec-5cc/cm/sec
アスカーF硬度 50-70
【0020】
上記以外にも、
ゴム発泡体(エマルジョンフォーム、スキン層あり):密度(JIS K 6401)150kg/m-330kg/m、圧縮強度(JIS K 6254:25%圧縮)0.005MPa-0.056MPa、
メラミン発泡体:密度(JIS K 7222)3kg/m-50kg/m、圧縮強度(JIS K 6400-2 D法)100N-500N、
硬質ウレタンフォーム(ヌレートフォームを含む):密度(JIS A 9521)20kg/m-120kg/m、圧縮強度(JIS A 9521:25%圧縮)8N/cm-200N/cm
ゴム発泡体(ゴムスポンジ):密度(JIS K 6767)100kg/m-300kg/m、アスカーC硬度(SRIS 0101)0-55、
ウレタン発泡体(発泡ウレタンシート):密度(JIS K 6401)100kg/m-800kg/m、アスカーC硬度10-100又は圧縮強度(JIS K 6254:25%圧縮)0.007MPa-1.37MPa、
所定の耐熱温度を有する熱可塑性樹脂発泡体(部分架橋された熱可塑性樹脂発泡体を含む):密度(JIS K 6767)15kg/m-250kg/m、圧縮強度(JIS K 6767:25%圧縮)2kPa-500kPa等の発泡体を用いてもよい。これらの発泡体の通気性は、例えば、0cc/cm/sec-250cc/cm/secであってもよい。
このように、本開示の技術は、発泡体の種類、性状の制約が少なく、種々の発泡体に適用可能な汎用性の高い技術であるといえる。
【0021】
図5に示すように、発泡体片20は、外方に向けて延びる複数の枝部21を有する骨格構造を備えている。複数の枝部21は、外部に向けて突出した構造をなしている。なお、発泡体のセルの形状は、例えば、五角形の面を12個集めた12面体として捉えることができる。この場合に、枝部21は、12面体の各辺を構成する樹脂骨格が分断されて形成され得る。すなわち、樹脂骨格が分断されることによって形成された、分断位置から12面体の頂点までの樹脂骨格の一部(各辺を構成する部分)を枝部12として捉えることができる。
ここで、発泡体片20と発泡ビーズとの相違点を説明する。発泡ビーズは1つの粒の外側部分が所謂スキン層によって覆われている。発泡ビーズは、外方に向けて延びる枝部を有していない。他方、発泡体片20は、上述のように外方に向けて延びる複数の枝部21を有する。すなわち、本実施形態の発泡体片20はスキン層で覆われておらず、樹脂骨格が外部に露出した状態であり、枝部21が外方に向けて延びている。このように両者は構造上、相違する。
【0022】
発泡体片20の大きさは、上記の骨格構造を備え、かつ、容器30に封入可能であれば特に限定されない。発泡体片20の大きさは、例えば、50mm以下とすることができ、また、25mm以下、10mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下であってもよい。発泡体片20の大きさは、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)により発泡体片の拡大画像を取り込み、その外形の最大長を測定して求められる。発泡体片20の大きさによっては、ノギス等の測定器を用いて、その外形の最大長を直接測定してもよい。また、発泡体片20の大きさは、所定寸法の開口径を有する篩を通過した画分として規定することもできる。所定寸法としては、10mm、5mm、2mm、1mm、0.5mmが例示される。各発泡体片20の大きさは、例えば、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、3mm、5mm以上であってもよい。
発泡体片20の大きさは、物品に求められる性能、生産性を考慮して、上記の下限と上限を適宜組み合わせた範囲とすることができる。なお、発泡体片20の大きさは、発泡体片20を得るときの加工条件を変更したり、得られた発泡体片20を適宜分級したりして、所望の範囲とすることができる。
【0023】
複数の発泡体片20は、発泡体片20が集合した粉粒体として把握できる。複数の発泡体片20は、材料となる発泡体を細分化して得ることができる。具体的には、複数の発泡体片20は、後述するように発泡体の粉砕物として得ることができる。複数の発泡体片20は、リサイクル性の観点から、材料となる発泡体として、破棄される予定の使用済み発泡体、又は、発泡体の製造過程で排出される端材を用いてもよい。また、複数の発泡体片20は、発泡体の製造過程で排出される発泡体のカス又は屑を、そのまま用いてもよい。
【0024】
(2)容器30
容器30は、複数の発泡体片20を封入でき、耐熱性を有するものであれば特に限定されない。容器30は、袋状又は箱状であることが好ましい。容器30は、耐熱性以外にも、封入体10の使用環境に応じて、非通水性、紫外線吸収性等の特性を有していてもよい。紫外線吸収性を有する場合において、容器30は、基材層と、紫外線を吸収する層(機能層の例)が積層された構造を有していてもよい。このように、封入体10は外殻をなす容器30に種々の機能層を設けることによって、発泡体片20の材質に関わらず所望の機能性を付与できる。容器30は、非通気性、通気性のいずれであってもよい。但し、容器30が通気性の場合には、容器30内から発泡体片20が外部に漏れ出ないようにするため、通気孔の大きさは発泡体片20よりも小さいことが望ましい。
【0025】
容器30の材質は特に限定されない。容器30の材質は、十分な耐熱性を確保する観点から、融点が所定温度以上のポリマー、又は融点を有しないが分解温度が所定温度以上のポリマーであることが好ましい。所定温度としては、封入体10の使用環境に応じて、例えば、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、180℃、200℃等を例示することができる。所定温度の上限は、例えば200℃である。封入体10がエンジン回りの部材として用いられる場合には、容器30の材質は、例えば、融点が120℃以上のポリマー、又は融点を有しないが分解温度が120℃以上のポリマーであるとよい。
容器30の材質の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリプロピレン(PP)、硬質塩化ビニル(硬質PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルフォン(PSF、PSU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、アセチルセルロース(CA)、ニトロセルロース(CN)、プロピオン酸セルロース(CP)、エチルセルロース(EC)からなる群より選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0026】
容器30は、可撓性シート31によって形成されていることが好ましい。可撓性シート31とは、例えば、接触する物の外形に沿って可撓変形し得るシート状の素材である。可撓性シート31の種類は特に限定されない。可撓性シート31としては、樹脂シート、不織布、織布等を例示できる。可撓性シート31の厚さは、例えば0.01mm以上3mm以下とすることができる。
【0027】
容器30の容積は特に限定されない。容器30は、例えば、内部に複数の発泡体片20を収容した状態で、余分な空気を抜きつつ複数の発泡体片20を梱包して得てもよい。封入体10の吸音性及び制振性を向上する観点から、容器30の内面は、封入した複数の発泡体片20の表面に接触していることが好ましい。
【0028】
(3)封入体10の構成及び用途
封入体10は、複数の発泡体片20を、容器30に封入した封入体である。各発泡体片20同士は、接触状態で、かつ非接着状態となっている。各発泡体片20同士が「接触状態」となっているとは、少なくとも一部の隣り合う発泡体片20同士が直に接触している状態をいう。例えば、隣り合う発泡体片20のうち一方の発泡体片20の枝部21が他方の発泡体片20の枝部21、枝部21以外の骨格構造、セル膜に接触している状態をいう。各発泡体片20同士が「非接着状態」となっているとは、隣り合う発泡体片20同士が溶着による接着や、接着剤等を介した接着をされていない状態をいう。
各発泡体片20同士は、外部から力が作用した場合に、相互の位置ずれが許容されている。
【0029】
封入体10の形状は特に限定されない。封入体10が吸音部材及び制振部材として用いられる場合には、封入体10は、ボード形状に形成されることが好ましい。封入体10の厚さは、例えば、3mm以上100mm以下であってもよい。また、封入体10は、一枚の発泡体ボードからなる吸音部材及び制振部材に比して形状自由度が高い。例えば、封入体10は、封入された複数の発泡体片20の分布を一部変更しつつ容器30を可撓変形させて、設置空間に隙間なく敷き詰めた形状とすることも可能である。
【0030】
封入体10は、好ましくは吸音機能を有する。封入体10は、吸音部材として好適である。封入体10は、JIS A 1409:1998に基づく残響室法吸音率測定において、500Hz-6300Hzの範囲における吸音率の平均が0.30以上であることが好ましい。上記の吸音率の平均は、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上、0.60以上、0.70以上であることがさらに好ましい。上記の吸音率の平均の上限は、特に限定されない。
なお、吸音率は、1m×1m×厚み20mmのサイズの測定用のサンプルを用いて、周波数500Hz、630Hz、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、4000Hz、5000Hz、6300Hzにおいて測定する。そして、これらの周波数の吸音率の算術平均を、吸音率の平均とする。この際、測定用のサンプルの外周をアルミ製の固定具で覆い、テストピースと固定具の隙間をアルミテープでシールする。
【0031】
封入体10は、好ましくは制振機能を有する。封入体10は、制振部材として好適である。封入体10は、JIS K 7391:2008に準じて測定される、150Hz付近の反共振点における損失係数が0.030以上であることが好ましい。上記の損失係数は、0.054以上であることがより好ましく、0.090以上、0.150以上であることがさらに好ましい。上記の損失係数は、特に限定されない。
なお、損失係数は、40mm×500mm×厚み20mmのサイズの測定用のサンプルを用いて測定する。この際、測定用のサンプルの下に厚み2mmのアルミ板を配置する。
【0032】
封入体10は、好ましくは120℃以上の耐熱性を有する。封入体10は、高温環境下で使用される吸音部材、制振部材、吸音制振部材として好適である。そのような部材としては、エンジン用吸音部材、モータ用吸音部材等が挙げられる。本開示において「120℃以上の耐熱性を有する」とは、例えば、後述する方法で測定した発泡体片20の120℃における収縮率が90%以上であり、容器30を120℃で7日間静置しても溶融又は熱分解しない性質とする。
【0033】
2.封入体10の製造方法
封入体10の製造方法は、例えば、発泡体を粉砕して複数の発泡体片20とする粉砕工程と、複数の発泡体片20を容器30に封入する封入工程と、を備える。ここで、本開示において「粉砕」とは、発泡体を細分化することを指し、細分化する方法は特に限定されない。発泡体を、磨砕、研磨、研削、切削、切断によって細分化してもよい。また。封入体10の製造方法は、粉砕工程の後であって、封入工程の前に、複数の発泡体片20を分級する分級工程をさらに備えていてもよい。
【0034】
粉砕工程では、例えば、粉砕機、グラインダーを用いることができる。粉砕機は、特に限定されない。粉砕機の刃や、粉砕時間を適宜変更して、所望の大きさの発泡体片20を得ることができる。グラインダーは、特に限定されない。グラインダーに用いる砥石や、砥石の回転速度を適宜変更して、所望の大きさの発泡体片20を得ることができる。
【0035】
分級工程は、例えば、所定寸法の開口径を有する篩を用いた篩い分け操作によって行われる。分級工程では、製品に求められる性能に応じて、所定(第1)の篩を通過した画分として発泡体片20を得てもよく、所定(第2)の篩を通過しない画分として発泡体片20を得てもよい。
【0036】
封入工程は、例えば、開口した状態の容器30に複数の発泡体片20を充填して、容器30の開口を封じる工程である。容器30が袋状の場合には、開口は折り返して封じられてもよく、熱溶着等によって封じられてもよい。開口を封じる際には、複数の発泡体片20を均して、容器30の内部の余分な空気を抜きつつ封じるとよい。なお、図1及び図2においては、容器30の開口が封じられた部分が省略されて示されている。容器30が箱状の場合には、開口は別体の蓋によって封じられてもよい。
【0037】
3.本実施形態の作用及び効果
本実施形態の封入体10によれば、複数の発泡体片20を用いた、耐熱性及び所望の性能を有する物品を提供できる。封入体10の所望の性能としては、吸音機能、制振機能が例示される。それ以外にも、封入体10は、断熱機能、クッション機能、衝撃吸収機能等を有していてもよい。
【0038】
発泡体片20には、生産時に生じる端材や、従来廃棄されていたカスや屑を用いることができる。このため、材料ロスの少ない、環境に対応した物品を提案することができる。特に、発泡体片20を容器30に封入した封入体10として用いることで、製品全体に占めるリサイクル材料の割合が高い物品を提供できる。
【0039】
封入体10が吸音機能を有する場合には、吸音部材として好適である。このような性能が発揮される理由は定かではないが、次のように推測される。すなわち、複数の発泡体片20を容器30に封入した構成では、隣接する2つの発泡体片20の枝部21同士が接触することによって、隣り合う発泡体片20の間に空隙が形成される。この空隙によって、好適に音による振動を吸収できると推測される。独立気泡の発泡体の発泡体片であっても、枝部21を有する骨格構造を備えた発泡体片20とすることで、一枚の発泡体ボードの構成に比して吸音機能を向上できる。
本実施形態とは異なり、発泡体片を型に注入し圧力と温度をかけて得られるシートや、発泡体片がバインダーで固められたシートでは、発泡体片の内部や、発泡体片同士の間の空間が埋まることに起因して、吸音性を十分に確保できない懸念がある。他方、本実施形態では、発泡体片20の内部や、発泡体片20同士の間の空間に十分な空間が形成され、吸音性が発揮され得る。
【0040】
封入体10が制振機能を有する場合には、制振部材として好適である。このような性能が発揮される理由は定かではないが、次のように推測される。すなわち、複数の発泡体片20を容器30に封入した構成では、一枚の発泡体ボードのように連続した骨格を有していないため、振動の固体伝搬がなくなり、制振機能が発揮されると推測される。
【0041】
<実施形態2>
実施形態2の封入体110として、内部が複数の区画41に仕切られた構造体40を更に備えるものを例示する。以下、封入体110について、図6及び図7を参照しつつ説明する。以下の説明では、実施形態1と共通する点についてはその説明を省略する。なお、図7においては、複数の発泡体片20の外形を二点鎖線で示し、その一部のみを示している。
【0042】
構造体40は、ボード状の外形をなし、容器30に収容されている。構造体40の厚さは、封入体110の厚さと略同じであり、例えば、3mm以上100mm以下である。構造体40は、例えば、容器30よりも剛性の高い材料で形成されている。具体的には、容器30が可撓性シート31で形成される場合には、構造体40は樹脂ボード、厚紙等で形成されている。また、構造体40は、複数の区画41を有する中空構造(いわゆるハニカム構造)を有することで、剛性が確保されている。
【0043】
各区画41同士は、壁部によって仕切られている。各区画41は、平面視多角形状をなしている。各区画41内には、複数の発泡体片20が収容されている。すなわち、複数の発泡体片20は、構造体40の区画41内に収容された状態で容器30に封入されている。
【0044】
本実施形態によれば、構造体40が封入体110の形状を保持する骨格として機能して、封入体110の形状を保持できる。また、本実施形態によれば、複数の発泡体片20を複数の区画41内に収容することで、発泡体片20の片寄りを抑制できる。すなわち、一の区画41内の発泡体片20が、仕切りを超えて隣の区画41内に進入することを抑制できる。その結果、封入体110は、所望の性能を安定して発揮できる。
【実施例0045】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0046】
1.実施例1-7及び比較例1-5の作製
実施例1は、半硬質ポリウレタン発泡体を、粉砕機を用いて粉砕して、大きさ5mm-10mmの発泡体片とした。半硬質ポリウレタン発泡体は次のようにして作製した。以下のA液とB液を100:155となるように計量したものを、液温約20℃に温調した。そして、A液にB液を投入し、回転数3000rpm、5秒間攪拌したものを型に流し込み硬化させ、半硬質ウレタンフォームを得た。得られた半硬質ポリウレタン発泡体は、通気性を有し、密度21kg/m、セルの数が58個/25mm、通気量0.831cm/cm/sec、圧縮強度11.9N/cmであった。
粉砕には、ホーライ社製の粉砕機を用いた。発泡体片は、開口径が10mmの篩を通過した画分として得た。
A液:アクトコール SK-1907(三井化学SKCポリウレタン社製)
B液:コスモネート MC-400HW(三井化学SKCポリウレタン社製)
【0047】
得られた発泡体片を、1000mm×1200mm×厚さ0.05mmの耐熱性の袋に封入して、実施例1の残響室吸音率測定用のサンプルとした。袋の材質は、融点が200℃以上のポリエチレンテレフタレート(PET)とした。残響室吸音率測定用のサンプルサイズは、1m×1m×厚み20mmとした。
また、得られた発泡体片を、80mm×500mm×厚さ0.012mmの耐熱性の袋に封入して、実施例1の制振性に関する損失係数測定用のサンプルとした。袋の材質は、融点が200℃以上のポリエチレンテレフタレート(PET)とした。損失係数測定用のサンプルサイズは、40mm×500mm×厚み20mmとした。
【0048】
実施例2は、NBR発泡体(ゴム発泡体、エマルジョンフォーム、スキン層なし)を、グラインダーを用いて研磨して、1mm以下の大きさの発泡体片とした。NBR発泡体は以下のようにして作製した。NBRラテックスゴムにゲル化剤、整泡剤、加硫促進剤、を添加し混合させた。次に、連続式発泡機により、機械的に上記NBRラテックスゴムへ空気を混合分散させ発泡状態にした。発泡状態のNBRラテックスゴムを型に流し込んだ。蒸気、温風、超音波などで加熱し架橋させた。架橋後に乾燥炉にて乾燥させNBR発泡体を得た。NBR発泡体は適宜スライスや裁断など加工した。得られたNBR発泡体は、通気性を有し、密度150kg/m、セルの数が70個/25mm、アスカーF硬度58度であった。
研磨には、砥粒#50-#100の研磨材を取り付けた回転式グラインダーを用いた。
その他は、実施例1と同様にして残響室吸音率測定用のサンプルと制振性に関する損失係数測定用のサンプルを得た。
【0049】
実施例3は、軟質ポリウレタン発泡体を大きさ5mm-50mmに粉砕したものを発泡体片とした。軟質ポリウレタン発泡体は、イノアックコーポレーション社製、EL-67Fを用いた。この軟質ポリウレタン発泡体は、通気性を有し、セルの数が48個/25mmであった。
粉砕には、安田鉄工社製の粉砕機を用いた。実施例3の軟質ポリウレタン発泡体と発泡体片を図4に示す。
その他は、実施例1と同様にして残響室吸音率測定用のサンプルと制振性に関する損失係数測定用のサンプルを得た。
【0050】
比較例1は、発泡体片に換えて、炭酸カルシウム粉末(丸尾カルシウム社製、スーパー4S)を用いた他は、実施例1と同様にして残響室吸音率測定用のサンプルと制振性に関する損失係数測定用のサンプルを得た。
【0051】
比較例2は、ポリエチレン発泡体を、粉砕機を用いて粉砕して、大きさ0.5mm-2mmの発泡体片とした。粉砕には、ホーライ社製の粉砕機を用いた。発泡体片は、開口径が1mmの篩を通過した画分として得た。
その他は、実施例1と同様にして残響室吸音率測定用のサンプルと制振性に関する損失係数測定用のサンプルを得た。
【0052】
2.評価方法
<吸音性>
JIS A1409:1998に準じた実施形態に記載の方法で、残響室吸音率測定用のサンプルの500Hz-6300Hzの範囲における吸音率の平均を求めた。この吸音率の平均が高い程、吸音性に優れるサンプルであるといえる。求めた吸音率の平均について、以下の基準で判定した。
「A」:0.70以上
「B」:0.50以上0.70未満
「C」:0.30以上0.50未満
「D」:0.30未満
【0053】
<制振性>
JIS K 7391:2008に準じた実施形態に記載の方法で、制振性に関する損失係数測定用のサンプルの150Hz付近の反共振点における損失係数を求めた。この損失係数が高い程、制振性に優れるサンプルであるといえる。求めた損失係数について、以下の基準で判定した。
「A」:0.08以上
「B」:0.05以上0.08未満
「C」:0.02以上0.05未満
「D」:0.02未満
【0054】
<耐熱性>
800mLのカップに、約300mLの高さまで発泡体片20を入れて、高さを測定する。この高さ(mm)を「初期の高さ」とする。そのまま120℃で、7日間静置して、冷却後の発泡体片20の高さを測定する。この高さ(mm)を「120℃、7日間後の高さ」とする。収縮率(%)を以下式に基づいて、算出する。
収縮率(%)=[(120℃、7日間後の高さ)/(初期の高さ)]×100

この収縮率が100%に近い程、耐熱性に優れるサンプルであるといえる。求めた収縮率について、以下の基準で判定した。
「A」:80%以上
「B」:60%以上80%未満
「C」:40%以上60%未満
「D」:40%未満
【0055】
<総合判定>
吸音性、制振性、及び耐熱性の判定のうち、最も悪い判定結果を総合判定結果とした。3.結果
実施例1-3及び比較例1,2の評価結果を表1に示す。「吸音率」の欄は、上記の評価方法で求めた吸音率の平均を表している。「損失係数」の欄は、上記の評価方法で求めた損失係数を表している。「耐熱性」の欄は、上記の評価方法で求めた耐熱性を表している。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1-3は、吸音性に関する評価がA又はBであり、吸音機能を有していた。実施例1-3は、制振性に関する評価がA又はBであり、制振機能を有していた。実施例1-3は、耐熱性に関する評価がAであり、120℃以上の耐熱性を有していた。実施例1-3は、総合評価がA又はBであり、耐熱性の吸音部材、耐熱性の制振部材、又は耐熱性の吸音制振部材として有用な製品であることが確認された。
【0058】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、発泡体片を用いた物品について、耐熱性及び所望の物性を確保できる。また、そのような製品の製造方法を提供できる。
【0059】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,110…封入体(吸音部材、制振部材)
20…発泡体片
21,21A…枝部
30…容器
31…可撓性シート
40…構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7