(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026884
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】熱転写記録装置、熱転写記録方法及び熱転写記録プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20230221BHJP
B41J 17/38 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J17/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132312
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 顕郎
(72)【発明者】
【氏名】澄川 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】米澤 詩織
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA19
2C065DA22
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068PP09
(57)【要約】
【課題】熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報の保護を可能にする熱転写記録装置、熱転写記録方法及び熱転写記録プログラムを提供する。
【解決手段】1つ又は複数の第1の熱転写インク層及び1つ又は複数の第2の熱転写インク層を有するインクリボンを使用して記録媒体に画像を印刷する熱転写記録装置であって、第1の画像データの一部の領域から第1の印刷データを生成し、前記一部の領域を除く領域から第2の印刷データを生成し、第1の印刷データを1つ又は複数の第1の熱転写インク層によって、記録媒体の第1の面に熱転写し、第2の印刷データを1つ又は複数の第2の熱転写インク層によって、記録媒体の第1の面にさらに熱転写し、第1の画像データを記録媒体の第1の面に印刷することを特徴とする熱転写記録装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の第1の熱転写インク層及び1つ又は複数の第2の熱転写インク層を有するインクリボンを使用して記録媒体に画像を印刷する熱転写記録装置であって、第1の画像データの一部の領域から第1の印刷データを生成し、前記一部の領域を除く領域から第2の印刷データを生成し、前記第1の印刷データを前記1つ又は複数の第1の熱転写インク層によって、前記記録媒体の第1の面に熱転写し、前記第2の印刷データを前記1つ又は複数の第2の熱転写インク層によって、前記記録媒体の前記第1の面にさらに熱転写し、前記第1の画像データを前記記録媒体の前記第1の面に印刷することを特徴とする熱転写記録装置。
【請求項2】
前記第1の印刷データ及び前記第2の印刷データは、前記第1の画像データを所定幅の間隔で縦方向及び横方向に分割し、2つ又は複数の分割領域を設定することによって、生成されることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録装置。
【請求項3】
前記所定幅は、縦方向及び横方向のそれぞれに設定されることを特徴とする請求項2に記載の熱転写記録装置。
【請求項4】
前記所定幅は、前記第1の画像データ内の文字のサイズに応じて変更されることを特徴とする請求項3に記載の熱転写記録装置。
【請求項5】
前記縦方向又は前記横方向のいずれかの前記所定幅は、前記文字のサイズの20%から70%の幅であることを特徴とする請求項4に記載の熱転写記録装置。
【請求項6】
前記第1の面への前記第1の画像データの印刷の後に、前記第1の画像データの印刷時に使用しなかった前記1つ又は複数の第1の熱転写インク層及び前記1つ又は複数の第2の熱転写インク層の一部を使用して、第2の画像データを前記記録媒体の第2の面に印刷することを特徴とした請求項1に記載の熱転写記録装置。
【請求項7】
前記第1の印刷データ及び前記第2の印刷データは、前記第1の画像データの有する文字に対して文字領域を決定し、前記文字領域を所定幅の間隔で縦方向及び横方向に分割し、2つ又は複数の分割領域を設定することによって、生成されることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録装置。
【請求項8】
前記第1の印刷データ及び前記第2の印刷データは、前記第1の画像データを1つ又は複数の任意の図形状に分割し、2つ又は複数の分割領域を設定することによって、生成されることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録装置。
【請求項9】
1つ又は複数の第1の熱転写インク層及び1つ又は複数の第2の熱転写インク層を有するインクリボンを使用して記録媒体に画像を印刷する熱転写記録装置であって、
第1の画像データの一部の領域から第1の印刷データを生成することと、
前記一部の領域を除く領域から第2の印刷データを生成することと、
前記第1の印刷データを前記1つ又は複数の第1の熱転写インク層によって、前記記録媒体の第1の面に熱転写し、前記第2の印刷データを前記1つ又は複数の第2の熱転写インク層によって、前記記録媒体の前記第1の面にさらに熱転写し、前記第1の画像データを前記記録媒体の前記第1の面に印刷することと、
を特徴とする熱転写記録方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載の方法を実行させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンを用いて記録媒体に画像を記録する熱転写記録装置、熱転写記録方法及び熱転写記録プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンを用いて記録媒体に画像を記録する熱転写記録装置が知られている。このような熱転写記録装置では、情報漏洩の防止を目的として、インクリボンの粉砕、溶解、焼却等の方法を用いて、使用済みインクリボンに残った印刷情報の復元を防止する。しかしながら、従来の方法は、装置を設置するスペースが必要となる、機構及び装置を内蔵するにあたり印刷装置の機構が複雑になるという課題があった。
【0003】
これに対して、特許文献1は、印刷画像を複数の部分に分割し、元々備わっているインクリボンの早送りと巻き戻し動作により、印刷するインクリボンの使用箇所をランダムに入れ替える機能を有する熱転写記録装置を開示している。特許文献1の熱転写記録装置はインクリボンの使用箇所をランダムに入れ替えるので、使用済みインクリボンに残った印刷情報の復元を困難にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、インクリボンの早送りと巻き戻し動作を複数回実行することとなり、スループットが大幅に低下してしまうという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱転写記録装置は、1つ又は複数の第1の熱転写インク層及び1つ又は複数の第2の熱転写インク層を有するインクリボンを使用して記録媒体に画像を印刷する熱転写記録装置であって、第1の画像データの一部の領域から第1の印刷データを生成し、前記一部の領域を除く領域から第2の印刷データを生成し、前記第1の印刷データを前記1つ又は複数の第1の熱転写インク層によって、前記記録媒体の第1の面に熱転写し、前記第2の印刷データを前記1つ又は複数の第2の熱転写インク層によって、前記記録媒体の前記第1の面にさらに熱転写し、前記第1の画像データを前記記録媒体の前記第1の面に印刷すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報の保護を可能にする熱転写記録装置、熱転写記録方法及び熱転写記録プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態の熱転写記録装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の熱転写記録装置の制御ブロックを示す図である。
【
図3】記録媒体に印刷された画像及びインクリボン上の残画像の具体例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態のインクリボンの構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態のインクリボン上の印刷領域を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の印刷後のインクリボン上の残画像を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の熱転写記録処理を示すフロー図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の画像の分割領域を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の2つの印刷データを示す図である。
【
図10】本発明における分割幅のサイズ及び記録媒体上の画像の白スジwの具体例を示す図である。
【
図11】本発明における文字サイズに対する分割幅の具体例を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態の画像分割の例を示す図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態のインクリボン上の印刷領域を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態のインクリボン上の残画像を示す図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態の熱転写記録処理を示すフロー図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態の画像の分割領域を示す図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態の印刷データを示す図である。
【
図18】本発明の第4の実施形態のインクリボン上の残画像を示す図である。
【
図19】本発明の第4の実施形態の熱転写記録処理を示すフロー図である。
【
図20】本発明の第4の実施形態の文字領域の設定及び分割の具体例を示す図である。
【
図21】本発明の第5の実施形態の画像分割を示す図である。
【
図22】本発明の第5の実施形態の他の画像分割を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
<熱転写記録システムの構成>
本発明の第1の実施形態に係る熱転写記録システムの構成について、
図1から
図3(b)を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
熱転写記録システムは、熱転写記録装置1と、情報処理装置201と、有している。
【0012】
熱転写記録装置1は、図示しないインターフェースを介して情報処理装置201に接続されている。熱転写記録装置1は、情報処理装置201から記録動作を指示する信号、印刷データ、画像データ、又は磁気的若しくは電気的な記録データ等を受信する。熱転写記録装置1は、受信したこれらのデータに基づいて、記録媒体としてのカードに対して、文字又は画像を印刷、又は磁気的若しくは電気的な情報記録を行う。以降、本明細書の実施形態では、カードに対して画像を印刷する状況を想定して説明する。なお、熱転写記録装置1の構成の詳細については後述する。
【0013】
情報処理装置201は、熱転写記録装置1に対して、印刷データ、画像データ、又は磁気的若しくは電気的な記録データ等を送信して、記録動作等の実行を指示する。情報処理装置201は、例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータである。
【0014】
<熱転写記録装置の構成>
本発明の第1の実施形態に係る熱転写記録装置1の構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
熱転写記録装置1は、ハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、画像形成部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回転ユニットFと、を備えている。
【0016】
情報記録部Aは、媒体収容部Cから供給されるカードに対して、文字や画像を記録すると共に磁気的又は電気的な情報記録を行う。情報記録部Aは、文字や画像を記録すると共に磁気的又は電気的な情報記録を行ったカードを画像形成部Bに向けて搬送する。
【0017】
画像形成部Bは、転写媒体としての転写フィルム46を搬送するフィルム状媒体搬送機構を有している。画像形成部Bには、媒体搬送路の延長上に設けられて媒体収容部Cから供給されるカードを移送する搬入経路P1と、搬入経路P1の延長線上に設けられて収容部Dに印刷後のカードを搬送する搬出経路P2と、が設けられている。画像形成部Bは、回転ユニットFから搬送されてくるカードの表面、又は表面及び裏面に対して、顔写真又は文字データ等の画像を印刷する。
【0018】
媒体収容部Cは、カードカセット3に複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納している。媒体収容部Cは、ピックアップローラ19によって、カードカセット3に収納された最前列のカードから順次繰り出して、繰り出したカードを分離開口7から回転ユニットFに、分離ローラ9を用いて供給する。
【0019】
収容部Dは、画像形成部Bから搬送されてくるカードを収容スタッカ55に収容する。収容スタッカ55は、昇降機構56によって
図1において上下方向に移動可能に構成されている。
【0020】
回転ユニットFは、旋回動可能なように構成されており、搬入経路P1に配置されている。回転ユニットFは、媒体収容部Cから供給されるカードを画像形成部B又は情報記録部Aに向けて搬送し、画像形成部Bから搬送されてくるカードを情報記録部Aに向けて搬送する。回転ユニットFは、情報記録部Aによって情報を記録されたカードを画像形成部Bに向けて搬送する。
【0021】
<印刷部の構成>
本発明の第1の実施形態に係る熱転写記録装置1の画像形成部Bの構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0022】
画像形成部Bは、一次転写部と、二次転写部と、を備えている。
【0023】
一次転写部は、サーマルヘッド40と、インクリボンカセット42と、プラテンローラ45と、移送ローラ49と、フィルムカセット50と、支持ピン51と、センサSe2と、センサSe3と、を備えている。一次転写部では、サーマルヘッド40とインクリボン41によって転写フィルム46に画像を転写する。
【0024】
二次転写部は、転写プラテン31と、ピンチローラ32aと、ピンチローラ32bと、転写ローラ33と、ガイドコロ34aと、剥離コロ34bと、デカール機構36と、搬送ローラ37と、搬送ローラ38と、を備えている。二次転写部では、一次転写部によって転写フィルム46に転写された画像を、転写ローラ33によってカードへ再転写する。これにより、画像がカードに印刷されることとなる。
【0025】
センサSe2は転写フィルム46の有無を検出する。
【0026】
センサSe3は搬送経路上を搬送されるカードを検出する。
【0027】
転写プラテン31は、転写フィルム46を挟んで転写ローラ33に対向して配置されている。
【0028】
転写プラテン31、搬送ローラ29、搬送ローラ30、搬送ローラ37及び搬送ローラ38は同一のステッピングモータによって駆動される。ここで、搬送ローラ29、搬送ローラ30、搬送ローラ37及び搬送ローラ38は、カードを搬送する記録媒体搬送手段を構成している。
【0029】
転写プラテン31は、搬送ローラ30により搬入経路P1を搬送されるカードと、フィルムカセット50より搬送されてくる転写フィルム46と、を転写ローラ33との間で挟持して搬送し、転写フィルム46に転写された画像をカードに再転写する。
【0030】
ピンチローラ32a及びピンチローラ32bは、移送ローラ49に対向して配置されている。
【0031】
転写ローラ33は、ヒートローラで構成されており、転写フィルム46上に転写された画像をカードに加熱圧接して再転写する。転写ローラ33は、転写ローラ昇降部(不図示)によって、フィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接する、又は転写プラテン31から離間するように移動可能な構成となっている。
【0032】
ガイドコロ34aは、転写プラテン31よりも搬送方向の上流側に設けられていると共にフィルムカセット50に取り付けられており、転写プラテン31に転写フィルム46を案内する。
【0033】
剥離手段としての剥離コロ34bは、転写プラテン31よりも搬送方向の下流側に設けられていると共にフィルムカセット50に取付けられており、転写フィルム46をカードから剥離する。
【0034】
デカール機構36は、搬送ローラ37と搬送ローラ38との間に配置されており、搬送ローラ37と搬送ローラ38との間に保持されたカードの中央部を押圧してカードに生じたカールを矯正する。デカール機構36は、カム等の昇降機構(不図示)によって
図1において上下方向に移動可能に構成されている。
【0035】
搬送ローラ37は、搬出経路搬出モータ制御回路によって制御されるステッピングモータなどの搬送モータ(不図示)に連結されている。搬送ローラ37は、画像形成部Bの搬送方向の下流側の収容スタッカ55にカードを搬送する搬出経路P2に設けられ、搬送モータが駆動することにより動作してカードを搬送する。
【0036】
搬送ローラ38は、搬出経路搬出モータ制御回路によって制御されるステッピングモータなどの搬送モータ(不図示)に連結されている。搬送ローラ38は、搬出経路P2に設けられ、搬送モータが駆動することにより動作してカードを搬送する。なお、搬送ローラ37及び搬送ローラ38は、搬送ベルト等であってもよい。
【0037】
サーマルヘッド40は、インクリボン41及び転写フィルム46を介してプラテンローラ45に対向して、並びにインクリボン41の搬送方向に対して横断するように、配置されている。サーマルヘッド40とプラテンローラ45の間を、転写フィルム46とインクリボン41とが重ねられた状態で搬送される。搬送時に、インクリボン41のインクが、サーマルヘッド40の長手の温度分布に応じて昇華、あるいは溶融して転写フィルム46に付着し、転写フィルム上に印刷データに基づく画像が転写される。
【0038】
インクリボンカセット42は、印刷装置のハウジングに着脱自在に装着されており、インクリボン41を操出ロール43と巻取ロール44との間に巻装して収容している。インクリボンカセット42は、インクリボン41の位置を検出するセンサSe1を備えている。
【0039】
操出ロール43には、DCモータなどのワインドモータ(不図示)が連結されている。
【0040】
インクリボン搬送手段としての巻取ロール44には、DCモータであるインクリボンワインドモータMr1が連結されている。巻取ロール44は、インクリボンワインドモータMr1が駆動することによってサーマルヘッド40の熱制御と同期して回転して、インクリボン41を所定速度で巻き取る。
【0041】
プラテンローラ45は、フィルムカセット50に装填された転写フィルム46を走行させて、インクリボン41によって転写フィルム46に画像を転写する。
【0042】
移送ローラ49は、転写フィルム46の移送ローラであり、ステッピングモータなどの駆動モータ(不図示)に連結されている。
【0043】
フィルムカセット50は、印刷装置のハウジングに着脱自在に装着されている。フィルムカセット50は、供給スプール47と、巻取スプール48と、を備えている。
【0044】
転写フィルム搬送手段としての供給スプール47は、DCモータである転写フィルムワインドモータMr2に連結されている。供給スプール47は、転写フィルムワインドモータMr2が駆動することにより動作して、転写フィルム46を供給して搬送すると共に、プラテンローラ45上で画像が転写された転写フィルム46を転写プラテン31と転写ローラ33との間に移送する。
【0045】
巻取スプール48は、DCモータ(不図示)に連結されている。巻取スプール48は、DCモータが駆動することにより動作して、転写プラテン31と転写ローラ33との間でカードに画像を転写した転写フィルム46を巻き取る。
【0046】
支持ピン51は、剥離コロ34bの搬送方向の下流側直後に設けられており、カードの転写面側を支持する。支持ピン51と剥離コロ34bとの間には一定の間隔があり、その間を転写フィルム46が供給スプール47及び巻取スプール48によって搬送される。支持ピン51は、転写ローラ昇降部(不図示)によって、搬出経路P2上のカードの転写面側を支持する位置と、搬出経路P2上から離れカードと接触しない位置との間で移動可能な構成となっている。
【0047】
<回転ユニットの構成>
本発明の第1の実施形態に係る熱転写記録装置1の回転ユニットFの構成について、
図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0048】
回転ユニットFは、ローラ対20及び21と、搬入ローラ22と、を備えている。
【0049】
ローラ対20及び21は、ハウジング2内にて回転自在に軸支持されている。ローラ対20及び21は、カードを搬送するための搬送経路の一部を構成している。ローラ対20及び21は、搬入ローラ22によって搬送されるカードを、情報記録部A又は画像形成部Bに向けて搬送する。ローラ対20及び21はまた、情報記録部Aから搬送されてくるカードを画像形成部Bに向けて搬送する。
【0050】
<制御部の概略構成>
図2は制御部の概略構成を図示したものである。熱転写記録装置1は、情報処理装置201と通信可能に結合された画像処理部202と、熱転写記録装置1の各ユニットを制御する制御部210と、を備える。
【0051】
画像処理部202は、情報処理装置201を介して、ユーザからの印刷指示及び印刷データを受信し、印刷データに対して所定の画像処理を行う。
【0052】
制御部210は、熱転写記録装置1の全体の動作を制御する。制御部210は、記録媒体搬送制御部211と、ヘッド駆動制御部212と、フィルム搬送制御部213と、を有し、ユーザからの印刷指示に基づき、それらを制御する。
【0053】
記録媒体搬送制御部211は、制御部210からの指示に基づき、記録媒体搬送手段の駆動、例えば、各搬送ローラを制御する。
【0054】
ヘッド駆動制御部212は、制御部210からの指示に基づき、一次転写部の駆動、例えばサーマルヘッド40印可制御等、を制御する。
【0055】
フィルム搬送制御部213は、制御部210からの指示に基づき、転写フィルム搬送手段及びインクリボン搬送手段の駆動、例えば、各モータ、ローラ、及びセンサ等を制御する。
【0056】
以上、熱転写記録装置1の構成を説明した。上記の通り、熱転写記録装置1によって、通常の印刷を実施した場合、カードに画像を印刷後、インクリボン41の使用された部分には元の印刷画像の痕跡が残る。以降、インクリボン上に残る印刷画像の痕跡、印刷情報等については、残画像と称す。
【0057】
図3(a)は、印刷される画像301を示し、
図3(b)は、印刷後にインクリボン41上に残る残画像302を示す。画像301は、文字サイズの異なる2つの文字列「ABCD表」を有する(以降、文字サイズの大きい文字列を「ABCD表(大)」、文字サイズの小さい文字列を「ABCD表(小)」と称す)。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、通常の印刷方法では、印刷する画像の情報がインクリボン上に判読可能な状態で残り、情報を容易に復元できてしまう。本発明は残画像302をインクリボン41上で判読及び復元が困難な状態にすることを目的としている。
【0058】
<インクリボンの使用方法>
次に本発明の第1の実施形態におけるインクリボン及びインクリボンの印刷領域を説明する。本発明におけるインクリボンの構成を
図4に示す。
図4に示すのは1枚のカードに対して使用されるインクリボン41である。以降の説明では、1枚のカードに対し1色を印刷するインクリボンの範囲を1枚と呼称する。1枚のカードに対し、インクリボンは使用色ごとに411から415の5枚の連なったインク層を使用する。
【0059】
インクリボン41は、搬送方向から、溶融顔料のブラック層411と、溶融顔料のブラック層412と、染料のシアン層413と、染料のマゼンタ層414と、染料のイエロー415層との5枚連続の構成となっている。
【0060】
溶融顔料のブラックが2つある理由は、表面印刷と裏面印刷にそれぞれ使用するためである。溶融顔料のブラックは主に文字情報の印刷に使用されており、表面及び裏面の両面に使用されることが多いため、表面印刷用と裏面印刷用の2枚のブラック層を有している。インクリボンカセット全体では、上記5枚連続のインク層が繰り返し連なってロール状に巻かれた形態をとっている。
【0061】
次に、
図5から
図6を参照しながら、第1の実施形態における、文字画像を印刷する場合のブラック層411及びブラック層412の印刷領域を説明する。
図5(a)の画像301はカードに印刷される画像データである。画像301を印刷領域a及び印刷領域bに分割し、
図5(b)に示すように、ブラック層411を用いて印刷領域aをカードに印刷し、
図5(c)に示すように、ブラック層412を用いて印刷領域bをカードに印刷する。印刷後、
図6(a)に示すように、ブラック層411上には、印刷領域aの文字情報のみが残り(残画像601)、
図6(b)に示すように、ブラック層412上には、印刷領域bの文字情報のみが残る(残画像602)。
【0062】
このように、1つの画像を2枚のブラック層を用いて1つのカードに印刷することで、インクリボン上に残った画像の痕跡(残画像)を分割でき、したがって、情報の判読を困難にできる。
【0063】
<熱転写記録処理>
本発明の第1の実施形態に係る熱転写記録装置1における熱転写記録処理について、
図7から
図9を参照しながら、詳細に説明する。
【0064】
ステップ701にて、情報処理装置201は、ユーザの操作に従って、画像データを作成する。
【0065】
ステップ702にて、情報処理装置201は、作成した画像データを、熱転写記録装置1の画像処理部202の特定用途向け集積回路(以降、ASICと記載)に転送する。
【0066】
ステップ703にて、画像処理部202は、情報処理装置201から転送された画像データを熱転写記録装置1内のメモリ(不図示)に格納する。
【0067】
ステップ704にて、画像処理部202は、
図8に示すように、画像データを24個の印刷領域に分割する。ここでは、説明を目的として、画像データを24個に分割したが、分割する数量は24個でなくてもよい。
【0068】
ステップ705にて、画像処理部202は、
図8に示すように、24個に分割された画像データの各印刷領域へ24個分の領域番号を割り振る。
【0069】
ステップ706にて、画像処理部202は、
図9に示すように、領域番号に基づいて、各印刷領域が互い違いになるように、ブラック層411用の印刷領域901及びブラック層412用の印刷領域902の2組の印刷領域を設定する。
【0070】
ステップ707にて、画像処理部202は、
図9に示すように、印刷領域901に基づいて、画像データから印刷データ903を生成、及び印刷領域902に基づいて、画像データから印刷データ904を生成する。
【0071】
ステップ708にて、画像処理部202は、印刷データ903及び印刷データ904を制御部210に転送する。
【0072】
ステップ709にて、制御部210は、印刷データ903及び印刷データ904をカードに印刷する。この印刷の際には、印刷データ903はブラック層411を使用して印刷され、印刷データ904はブラック層412を使用して印刷される。
【0073】
以上、第1の実施形態により、画像の印刷情報はブラック層411及び412に2分割され、熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報の保護が可能となった。
【0074】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について
図10から
図12を参照しながら説明する。第2の実施形態の熱転写記録装置1は、第1の実施形態の説明で使用した
図1から
図4と同一構成であるので、それらの説明を省略する。
【0075】
本発明の第1の実施形態では、画像データを24個の印刷領域に分割し、2枚のブラック層を用いて1つの画像をカード上に印刷する例で説明した。本発明の第2の実施形態では、画像内の文字サイズに合わせて、画像の分割幅を選択する方法を説明する。
【0076】
<分割方向>
第1の実施形態では、カードに画像を印刷すると、カード上において、1枚目のブラック層による印刷領域及び2枚目のブラック層による印刷領域の位置にずれが発生することがある。それにより、それぞれの印刷領域の間に隙間が生じて白スジとなり、カード上で目立ってしまうことがある。
【0077】
2枚のブラック層の印刷領域の位置ずれは、インクリボンの伸縮のばらつき、及び/又はカードの搬送速度のばらつき等によって引き起こされる、カードの搬送方向の位置ずれが主な原因である。
【0078】
上記の様なカードの搬送方向の前後のずれによって、搬送方向に対して垂直な方向(以降、ヒータ列方向と称す)に沿った白スジが発生しやすい。従って、ヒータ列方向に沿って画像データを細かく分割すると、白スジの発生個所が増え、印刷品質が低下する。
【0079】
一方、ヒータ列方向の位置ずれは、印刷用のヒータの配置が固定されているため、発生しない又は発生する可能性が低い。その結果、搬送方向に沿った白スジは発生しにくい。従って、搬送方向に沿って画像データを細かく分割しても、白スジが発生しない、又は目立ちにくい。
【0080】
図10(a)及び
図10(b)は、ヒータ列方向に沿った分割の分割幅とカード上に印刷された画像の白スジwとの対応関係を示している。
【0081】
図10(a)の分割例Gは、ヒータ列方向に沿って細かく分割した場合のブラック層411の残画像1001、ブラック層412の残画像1002、カード上に印刷された画像1003、及び印刷された画像1003上の白スジwを示している。
【0082】
図10(b)の分割例Hは、ヒータ列方向に沿って粗く分割した場合のブラック層411の残画像1004、ブラック層412の残画像1005、カード上に印刷された画像1006、及び印刷された画像1006上の白スジwを示している。
【0083】
分割例Gの場合、残画像1001及び残画像1002に残る文字画像の判読は、分割例Hの場合よりも困難になるが、印刷後の画像1003の分割箇所に入る白スジwの本数は、分割例Hの場合よりも増え、目立ってしまう。
【0084】
一方、分割例Hの場合、残画像1004及び残画像1005に残る文字画像の判読は分割例Gの場合よりも容易になるが、印刷後の画像1006の分割箇所に入る白スジwの本数は分割例Gの場合よりも減り、目立ちにくくなる。
【0085】
<分割幅のサイズ>
上記では、分割幅のサイズによって、カード上の白スジwの発生数が増減することについて、説明した。以降の説明では、画像データ内の文字のサイズに対する適切な分割のサイズの例を示す。
【0086】
図11は、文字サイズと分割幅のサイズの関係を示す。
図11は、印刷する画像301、及び、搬送方向に沿って3種類の分割幅で分割された画像301を印刷した後のインクリボン上に残った、3種類の残画像を示している。
【0087】
図11の分割例I、分割例J、及び分割例Kは、それぞれ分割幅のサイズが異なる場合を示す。各分割例の1枚目のブラック層411及び2枚目のブラック層412には、それぞれ搬送方向に沿った分割のみ実行した残画像1101、残画像1102、残画像1103、残画像1104、残画像1105、残画像1106が残っている。
【0088】
図11(a)の分割例Iは、文字サイズに対して分割幅のサイズが大きすぎる場合である。残画像1101に示すように、文字列「ABCD表(小)」は1つの分割の領域内に「表」以外の文字が全て収まっている。このように文字サイズに対して分割幅のサイズが大きすぎると、文字が1つの分割領域内に完全に収まってしまい、容易に情報が判読できてしまう。
【0089】
図11(b)の分割例Jは、文字サイズに対し分割幅のサイズが小さすぎる場合である。残画像1103、及び残画像1104に示すように、文字列「ABCD表(大)」、及び「ABCD表(小)」のどちらも分割はされているものの、各文字のアウトラインを判読できる。このように文字サイズに対して分割幅のサイズが小さすぎると、各文字のアウトラインがわかり、容易に情報が判読できてしまう。
【0090】
以上、分割例I及び分割例Jに示すように、分割幅のサイズは文字サイズに対して大きすぎても、小さすぎても、情報が判読可能になってしまう。分割例I及び分割例Jのような状況を回避するにあたり、判読を困難にする分割幅のサイズを用いて、画像データを分割する必要がある。本明細書においては、判読を困難にするのに効果的な分割幅を、文字サイズの20%から~70%の間のサイズとして、説明を実施する。20%から~70%の間のサイズという範囲に限定されず、その他の範囲を任意の方法を用いて、設定できることが理解されよう。
【0091】
図11(c)の分割例Kは、文字サイズの20%から~70%のサイズの分割幅にて、画像データを分割した例を示す。画像301は文字サイズの異なる2種類の文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD表(小)」を有しているため、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD表(小)」の両方が、それぞれの文字サイズの20%から~70%の間のサイズで分割されるように、分割幅を調整している。
【0092】
分割例Kの分割幅のサイズは、文字列「ABCD表(大)」に対して40%の幅であり、かつ文字列「ABCD表(小)」に対して60%の幅である。従って、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD表(小)」の両方が、それぞれの文字サイズの20%から~70%の間のサイズで分割されている。
【0093】
ブラック層411及びブラック層412上の残画像1105及び残画像1106は、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD表(小)」の両方の文字のアウトラインが判読しにくい状態であり、元の文字情報の判読が困難になっている。
【0094】
以上、分割方向による分割幅及び文字サイズに対しての分割幅の効果的なサイズについて説明した。次に、上記内容を踏まえた最適化された分割例を
図12(a)及び
図12(b)に示す。
図12(a)及び
図12(b)において、横方向をカードの搬送方向とし、縦方向をヒータ列方向とする。また、印刷する画像301の文字列「ABCD表(大)」の縦幅は5mmであり、文字列「ABCD表(小)」の縦幅は3mmである。
【0095】
<横方向への分割>
まず、横方向への分割幅の設定の流れを説明する。文字列「ABCD表(大)」の縦幅の20%から~70%の間のサイズは、1mmから3.5mmの範囲である。文字列「ABCD表(小)」の縦幅の20%から~70%の間のサイズは、0.6mmから2.1mmの範囲である。これら2つ範囲の重複する1mmから2.1mmの間の任意のサイズが、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD表(小)」を横方向に沿って分割する際の効果的な分割幅となる。
【0096】
第2の実施形態では、上記1mmから2.1mmの範囲の中から、
図12(a)に示すように、横方向の分割幅として、1.5mmの分割幅を選択したものとする。従って、横方向に沿って、文字列「ABCD表(大)」は文字サイズに対して30%のサイズで分割され、文字列「ABCD表(小)」は文字サイズに対して50%のサイズで分割されることとなる。これにより、各文字がアウトラインを読み取れない幅で横方向に分割される。
【0097】
<縦方向への分割>
前述の通り、縦方向(ヒータ列方向)に沿って細かく分割すると、インクリボン上の残画像の判読性を低下できるが、それに伴いカード上に印刷された画像の白スジwが目立ちやすくなる。第2の実施形態では、横方向への分割幅の設定とは別に、縦方向への分割幅を別途設定することとし、縦方向へ20mm間隔で分割する例で説明する。これにより、横方向には文字の判読を困難にする幅で、縦方向には白スジwが目立ちにくい幅で、画像データが分割されることとなった。
【0098】
第2の実施形態では、20mm間隔で分割するが、カードのサイズ及び/又は印刷される画像の種類によって、白スジが目立たなくなる分割幅は変動する為、カードのサイズ及び/又は印刷される画像の種類に応じた、分割幅を任意の方法で選択することが望ましい。
【0099】
以上の分割領域(縦幅1.5mm、横幅20mm)で画像を分割し、カード上に画像301を印刷した場合、ブラック層411には残画像1201が残り、ブラック層412上には残画像1202が残る。
【0100】
残画像1201及び残画像1202のいずれも、文字のアウトラインが分からない状態に分割され、情報の判読が困難になっている。また、カードへ印刷された画像1203は、縦方向の分割を少なくしたことで、横方向のずれによる白スジwの発生が抑制され、白スジwが目立たなくなっている。
【0101】
以上の様に、画像データの分割領域を、文字サイズ応じて最適化することによって、インクリボン上の残画像の情報の判読を困難にするとともに、カード上のずれによる白スジwを目立たなくすることができるようになった。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様のフローで実施することができる。具体的には、第1の実施形態のステップ703及びステップ704の間に、文字サイズに応じて分割領域を決定するステップを挿入することで、第2の実施形態は実施できる。
【0102】
(第3の実施形態)
上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、カードの表面のみ印刷する場合を説明した。第3の実施形態では、カードの表面及び裏面の両方を印刷する場合のインクリボン上での画像の分割方法について、
図13から
図17を参照しながら説明する。また、第3の実施形態の熱転写記録装置1は、第1の実施形態の説明で使用した
図1から
図4と同一構成であるので、それらの説明を省略する。
【0103】
まず、第3の実施形態における、熱転写記録装置1によるカードの両面印刷の概要フローを説明する。画像分割のフローの詳細については、後述する。
【0104】
<両面印刷の概要>
ユーザは、熱転写記録装置1のカードカセット3に、表面を上に向けてカードをセットする。
【0105】
次に、ユーザからの両面印刷命令を、情報処理装置201が熱転写記録装置1に転送する。両面印刷命令を受信した熱転写記録装置1は、印刷データに基づいて両面印刷用の画像データを生成する。両面印刷用の画像データの生成の詳細については、後述する。
【0106】
次に、熱転写記録装置1は、一次転写部の駆動を制御して、サーマルヘッド40とプラテンローラ45の間を、転写フィルム46とインクリボン41とを重ねた状態で搬送し、サーマルヘッド40を加熱させ、搬送時に、インクリボン41のブラック層411及びブラック層412のインクを、サーマルヘッド40の長手の温度分布に応じて昇華、あるいは溶融して転写フィルム46に付着させ、転写フィルム46上に印刷データに基づく画像を転写する。ブラック層411及びブラック層412の詳細な使用方法については、後述する。
【0107】
次に、熱転写記録装置1は、カードをカードカセット3から二次転写部へ搬送し、カード及び画像転写済みの転写フィルム46を、転写プラテン31と転写ローラ33との間で加熱圧接して、転写フィルム46上に転写された画像をカードの表面に再転写する。これにより、まずカードの表面に画像が印刷される。熱転写記録装置1は、表面印刷済みのカードを、搬出経路を介して搬出し、収容部Dへ収納する。
【0108】
次に、ユーザは、収容部Dに収納された表面印刷済みのカードを、カードカセット3に、今度は裏面を上に向けてセットする。
【0109】
次に、ユーザが表面印刷済みのカードをカードカセット3にセットしたのに応じて、熱転写記録装置1は、表面の印刷時に使用したブラック層411及びブラック層412を裏面の印刷に使用するために、インクリボン41を巻き戻す。続いて、表面の印刷と同様の流れで、カードへの転写を実施する。このようにしてカードの両面印刷が完了する。
【0110】
次に、
図13(a)から
図13(c)を参照しながら、第3の実施形態における、ブラック層411及びブラック層412の印刷領域について説明する。
【0111】
図13(a)から
図13(c)は、カードの表面に画像を印刷するときに使用する印刷領域、及びカードの裏面に画像を印刷するときに使用する印刷領域に分割されたブラック層411及びブラック層412の印刷領域を示す。
【0112】
図13(a)は、表面に印刷する画像301及び裏面に印刷する画像1301を示す。
図13(b)は、印刷領域a及び印刷領域bに分割された画像301、並びに、印刷領域c及び印刷領域dに分割された画像1301を示している。
図13(c)は、画像301を印刷する領域a及び画像1301を印刷する印刷領域cを割り当てられたブラック層411を示し、並びに、画像301を印刷する印刷領域b及び画像1301を印刷する印刷領域dを割り当てられたブラック層412を示す。
【0113】
図13上で、横方向は搬送方向、縦方向はヒータ列方向、画像の左側を画像先端、画像の右側を画像後端とする。カードの表面に印刷する画像301は、ブラック層411の印刷領域a及びブラック層412の印刷領域bを使用して印刷される。カードの裏面に印刷する画像1301は、ブラック層411の印刷領域c及びブラック層412の印刷領域dを使用して印刷される。
【0114】
このように、第3の実施形態では、画像301及び画像1301の印刷領域をブラック層411及びブラック層412のそれぞれに分けることにより、表面の画像301及び裏面の画像1301が2枚のインク層に混在することとなる。
【0115】
図14は、印刷後にインク層に残る残画像1401及び残画像1402を示す。
図14に示すように、ブラック層411には、画像301の印刷領域a及び画像1301の印刷領域cの痕跡である残画像1401が残り、ブラック層412には、画像301の印刷領域b及び画像1301の印刷領域dの痕跡である残画像1401が残る。したがって、インクリボン上で、2枚の画像情報が、2枚のインク層状で分割された状態で混在することとなるので、情報の判読がより困難となる。
【0116】
以上のように、第3の実施形態に示す方法によれば、両面印刷を行うとともに、インクリボン上の残画像からの情報の判読を困難にできる。
【0117】
<熱転写記録処理>
本発明の第3の実施形態に係る熱転写記録装置1における熱転写記録処理について、
図15から
図17を参照しながら、詳細に説明する。
【0118】
情報処理装置201から画像処理部202に画像データが転送されるフローまでは第1の実施形態及び第2の実施形態と同じであるため、説明を省略する。第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点は、画像処理部202にて受信した画像データが、表面の画像データと裏面の画像データの2つあり、それぞれ別の画像データとしてメモリへ転送される点である。以下、フローの詳細を説明する。
【0119】
ステップ1501にて、情報処理装置201は、ユーザの操作に従って、両面印刷用の画像データを作成する。両面印刷用の画像データは、表面用の画像データ(以降、1面目の画像データと称す)及び裏面用の画像データ(以降、2面目の画像データと称す)を有する。
【0120】
ステップ1502にて、情報処理装置201は、作成した両面印刷用の画像データを、熱転写記録装置1の画像処理部202のASICに転送する。
【0121】
ステップ1503にて、画像処理部202は、情報処理装置201から転送された両面印刷用の画像データを熱転写記録装置1内のメモリ(不図示)に格納する。ここで、1面目の画像データ及び2面目の画像データはそれぞれ別のデータとして、メモリ内に格納される。
【0122】
ステップ1504にて、画像処理部202は、
図16に示すように、1面目の画像301と、2面目の画像1301とを、それぞれ24個の印刷領域に分割する。第1の実施形態にて説明したのと同様に、印刷領域の個数は24個に限定されず、印刷領域のサイズ、個数等は任意の方法で設定可能である。
【0123】
ステップ1505にて、画像処理部202は、
図16に示すように、24個に分割された1面目の画像301及び2面目の画像1301の2つの画像データの各印刷領域へ、それぞれ24個分の領域番号を割り振る。
【0124】
ステップ1506にて、画像処理部202は、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、各印刷領域が互い違いになるように、ブラック層411用の印刷領域1701及び印刷領域1702と、ブラック層412用の印刷領域1703及び印刷領域1704の4つの領域を設定する。
【0125】
ステップ1507にて、画像処理部202は、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、印刷領域1701に基づいて、画像データから印刷データ1705を生成し、印刷領域1702に基づいて、画像データから印刷データ1706を生成し、印刷領域1703に基づいて、画像データから印刷データ1707を生成し、印刷領域1704に基づいて、画像データから印刷データ1708を生成する。
【0126】
ステップ1508にて、画像処理部202は、印刷データ1705、印刷データ1706、印刷データ1707、及び印刷データ1708を制御部210に転送する。
【0127】
ステップ1509にて、制御部210は、印刷データ1705及び印刷データ1707をカードの表面に印刷し、印刷データ1706及び印刷データ1708をカードの裏面に印刷する。この印刷の際には、印刷データ1705及び1706はブラック層411を使用して印刷され、印刷データ1707及び1708はブラック層412を使用して印刷される。これにより、
図14に示すような、画像301がカードの表面に印刷され、画像1301がカードの裏面に印刷される。また印刷後、残画像1401及び残画像1402がインクリボン上に残る。
【0128】
以上、第3の実施形態により、カードの両面印刷においても、画像データの印刷情報はブラック層411及びブラック層412に分割され、熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報を保護することが可能になる。
【0129】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について
図18から
図20を参照しながら説明する。第4の実施形態では、1つの画像データ上の複数の文字及び/又は文字列の文字サイズが大きく異なり、第1から第3の実施形態では、画像を適切に分割できない場合に対応できる手段を説明する。また、第4の実施形態の熱転写記録装置1は、第1の実施形態の説明で使用した
図1、
図2及び
図4と同一構成であるので、それらの説明を省略する。
【0130】
図18は、文字のサイズが大きく異なる文字列2種類有する画像1801、及び第4の実施形態で画像1801を印刷した場合にインクリボンに残る残画像1802及び残画像1803を示す。
【0131】
第1の実施形態から第3の実施形態は、画像データ全体を所定の分割幅間隔で分割する。しかしながら、画像1801の様に、サイズの極端に異なる複数の文字列を有する画像の場合、画像データ全体を所定の分割幅間隔で分割する方法では、極めて小さいサイズの文字列「ABCD表」(以降、「ABCD表(極小)」と称す)を適切に分割できず、印刷情報の保護ができない。そこで、第4の実施形態では、分割画像を生成するときに、画像データ上の複数の文字サイズを認識し、認識した文字又は文字列の文字領域を設定し、文字領域ごとに文字サイズに応じた分割幅のサイズを決める方法を適応した。
【0132】
図18に示すように、第4の実施形態にて印刷を実施した場合、ブラック層411には残画像1802が残り、ブラック層412には残画像1803が残る。これにより、画像1801のような画像を印刷する場合においても、インクリボン上に残る残画像の判読を困難にできる。
【0133】
第4の実施形態では、説明を目的として、文字列の縦幅及び横幅の50%のサイズで文字領域を分割する例で説明するが、分割幅のサイズは50%に限定されず、画像を判読困難にできる幅を任意の方法で選択できる。
【0134】
<熱転写記録処理>
本発明の第4の実施形態に係る熱転写記録装置1における熱転写記録処理について、
図19及び
図20を参照しながら、詳細に説明する。
【0135】
ステップ1901にて、情報処理装置201は、ユーザの操作に従って、画像データを作成する。
【0136】
ステップ1902にて、情報処理装置201は、作成した画像データ及び、画像データ内で使用する文字列情報を、熱転写記録装置1の画像処理部202のASICに転送する。文字列情報には、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD(極小)」の文字情報が含まれている。
【0137】
ステップ1903にて、画像処理部202は、情報処理装置201から転送された画像データ及び文字列情報を熱転写記録装置1内のメモリ(不図示)に格納する。
【0138】
ステップ1904にて、画像処理部202は、
図20に示すように、画像データ内の文字を認識し、文字列情報に基づいて、画像データ内の文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD(極小)」に対してそれぞれ文字領域を設定する。ここで、文字領域は、文字列の最高点から最低点までを縦幅とし、文字列の左端の文字の最左端点から文字列の右端の文字の最右端点までを横幅とした、長方形で設定される。
【0139】
ステップ1905にて、画像処理部202は、
図20に示すように、文字列「ABCD表(大)」及び「ABCD(極小)」の各文字領域を、縦幅及び横幅の50%のサイズで分割する。文字領域分割後は、ステップ705と同様のフローを実施し、カードへ画像データを印刷する。
【0140】
第4の実施形態において、カードの両面に印刷を行う場合、表面の印刷に使用した2枚のブラック層を、裏面の印刷に使用せず、未使用の次の2枚のブラック層を使用して裏面の印刷を実施する場合がある。これは、表面の文字サイズと裏面の文字サイズが大きく異なり、表面の印刷に使用した2枚のブラック層を裏面印刷に再利用できない場合がある為である。
【0141】
以上、第4の実施形態により、カードの両面印刷においても、画像データの印刷情報は使用済みブラック層411及び412に分割され、熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報の保護を可能にする。
【0142】
(第5の実施形態)
次に第5の実施形態について
図21及び
図22を参照しながら説明する。上記の第1から第4の実施形態においては、分割形状を長方形としたが、
図21に示すように、長方形以外の図形での分割形状においても同様の効果を得ることは可能である。また、第5の実施形態の熱転写記録装置1は、第1の実施形態の説明で使用した
図1から
図4と同一構成であるので、それらの説明を省略する。
【0143】
図21において、分割例Lは三角形での分割例を示している。三角形の分割領域2101のように画像データを分割し、印刷領域eをブラック層411、印刷領域fをブラック層412で、カードに印刷する。印刷後のインクリボンには、残画像2102及び残画像2103が残り、第1から第4の実施形態と同様に、文字が分割され判読を困難にしている。
【0144】
図22において、分割例Mは円形での分割例を示している。円形の分割領域2201のように画像データを分割し、印刷領域gをブラック層411、印刷領域hをブラック層412で、カードに印刷する。印刷後のインクリボンには、残画像2202及び残画像2203が残り、第1から第4の実施形態と同様に、文字が分割され判読を困難にしている。
【0145】
また、三角形の分割領域2101及び円形の分割領域2201のサイズは、第2の実施形態の様に、文字サイズに応じて変更してもよい。さらに、分割する範囲は、第4の実施形態の様に、各文字列の文字領域に限定する方法でもよい。
【0146】
以上のように第5の実施形態の方法では、分割形状を長方形に限定せずとも、印刷情報を保護する効果を得ることが可能である。
【0147】
以上、第1から第5の実施形態で説明したように、本発明の熱転写記録装置を使用すれば、印刷後のインクリボン上の残画像を、熱転写記録装置の機構を大きく変えることなく、かつスループットを低下させずに印刷情報の保護を可能にする。
【符号の説明】
【0148】
41 インクリボン
411 ブラック層
412 ブラック層
413 シアン層
414 マゼンタ層
415 イエロー層