(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002689
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】位置検出装置の位置読取値の補正方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20221227BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D5/245 110M
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168154
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2019503255の分割
【原出願日】2017-07-19
(31)【優先権主張番号】1612766.4
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516263638
【氏名又は名称】シーエムアール サージカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】モットラム,エドワード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ポール クリストファー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】関節構造の回転ジョイントの位置を検出する位置検出装置の位置読取値を補正する方法を提供する。
【解決手段】磁極対を含む磁気リングを有するディスクと、磁気リングの磁極対を検出するための磁気センサアレイを有する磁気センサアセンブリと、を含み、磁気リングの各磁極対に対し、磁気センサアレイを用いて較正磁極対位置読取値を取得し、較正磁極対位置読取値73とモデル磁極対位置読取値72を比較することにより磁極対補正関数を生成し、磁気リングの磁極対の磁極対補正関数を平均化して磁気リングの平均磁極対補正関数を生成し、磁気センサアレイを用いて複数の磁極対位置読取値を含む位置読取値を取得し、各磁極対位置読取値から平均磁極対補正関数を差し引くことにより補正位置読取値を生成する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出装置の位置読取値の補正方法であって、前記位置検出装置は関節構造の回転ジョイントの位置を検出するのに適しており、前記位置検出装置は、磁極対を含む磁気リングを有するディスクと、前記磁気リングの前記磁極対を検出するための磁気センサアレイを有する磁気センサアセンブリと、を含み、
前記磁気リングの各磁極対に対して、前記磁気センサアレイを用いて較正磁極対位置読取値を取得し、前記較正磁極対位置読取値とモデル磁極対位置読取値を比較することにより磁極対補正関数を生成し、
前記磁気リングの各前記磁極対に対して、前記較正磁極対位置読取値から前記磁極対補正関数を差し引くことにより、補正された較正磁極対位置読取値を生成し、
前記磁気リングの前記補正された較正磁極対位置読取値をモデル回転位置読取値と比較することにより回転補正関数を生成し、
前記磁気センサアレイを用いて位置読取値を取得し、
前記位置読取値から前記回転補正関数を差し引くことにより補正位置読取値を生成すること、
を含む、位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項2】
前記較正磁極対位置読取値はマルチビットである請求項1に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項3】
前記回転補正関数は周期的に振動する関数を含む請求項1または2に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項4】
前記回転補正関数は正弦関数を含む請求項3に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項5】
前記補正された較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングした前記曲線から前記モデル回転位置読取値を表す線を差し引くことにより前記回転補正関数を生成する請求項1~4の何れか1項に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項6】
最小二乗法を用いて前記補正された較正磁極対位置読取値に前記曲線をフィッティングすることを含む請求項5に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項7】
前記ディスクは、磁極対を有するさらなる磁気リングと、前記さらなる磁気リングの前記磁極対を検出するためのさらなる磁気センサアレイを有する前記磁気センサアセンブリと、を含み、
前記さらなる磁気リングの各前記磁極対に対して、前記さらなる磁気センサアレイを用いてさらなる較正磁極対位置読取値を取得し、前記さらなる較正磁極対位置読取値を前記モデル磁極対位置読取値と比較することによりさらなる磁極対補正関数を生成し、
前記さらなる磁気リングの各前記磁極対に対して、前記さらなる較正磁極対位置読取値から前記さらなる磁極対補正関数を差し引くことによりさらなる補正された較正磁極対位置読取値を生成し、
前記さらなる磁気リングの前記さらなる補正された較正磁極対位置読取値をさらなるモデル回転位置読取値と比較することによりさらなる回転補正関数を生成し、
前記さらなる磁気センサアレイを用いてさらなる位置読取値を取得し、
前記さらなる位置読取値から前記さらなる回転補正関数を差し引くことにより、さらなる補正位置読取値を生成することを含む請求項1~6の何れか1項に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項8】
前記さらなる回転補正関数は、周期的に振動する関数を含む請求項7に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項9】
前記さらなる回転補正関数は正弦関数を含む請求項8に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項10】
前記さらなる補正された較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングされた前記曲線から前記さらなるモデル回転位置読取値を表す線を差し引くことにより前記さらなる回転補正関数を生成することを含む請求項7~9の何れか1項に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項11】
最小二乗法を用いて前記さらなる補正された較正磁極対位置読取値に前記曲線をフィッティングすることを含む請求項10に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項12】
前記モデル回転位置読取値が理論的センサ読取値である請求項1~11の何れか1項に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【請求項13】
前記さらなるモデル回転位置読取値が理論的センサ読取値である請求項7に記載の位置検出装置の位置読取値の補正方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関節構造を含む用途では、多くの場合、関節構造の最も遠位のリンクの遠位端の位置を決定することが望ましい。これは、関節構造に沿った最後の部分に対する各リンクの位置をその基部から最も遠位のリンクまで検知することによって達成することができる。この一連の測定は、基部に対する最も遠位のリンクの遠位端の位置を決定するために、関節構造の既知のレイアウトと組み合わせて用いられてもよい。回転位置センサはリンク間の相対的な回転を感知するために使用される。リニア位置センサは、リンク間の相対的な長さ方向の動きを感知するために使用される。
【0002】
ホール効果磁気センサは、リンク間の相対的な動きを感知するために一般的に使用されている。代表的な回転位置センサでは、リングの周囲に一組の磁極が交互に配列されている。センサはリングと相互に作用しており、感知されることが望まれる回転が生じた際に磁極がセンサを通過するように配置されている。例えば、リングがシャフトの周りに取り付けられていてもよいし、センサが、シャフトがその中で回転するハウジングに取り付けられていてもよい。磁極がセンサを通過すると、センサは極性の変化を検出する。極性の変化の数を数えることによって、基準位置からの回転量を感知することができる。回転方向を感知するために、2つのそのようなリングおよびセンサの対が設けられ、一方のセンサが、他方のセンサがそのリングの磁気変化を検出する位置からオフセットした回転位置で、そのリングの磁気変化を検出するように配置されていてもよい。各センサによって検出された磁気変化の相対的なタイミングを考慮することによって、回転方向が検知されていてもよい。
【0003】
ロボット工学の分野では、ロボットアームとして関節構造を利用している。ロボットアームにとって、正確な位置検知は、それらのエンドエフェクタが意図したとおりに正確に操作されることを保証するために重要である。位置センサの磁気リングが大きいほど、ロボットアームの2つのリンクの相対的な回転がより正確に感知される。しかしながら、いくつかのロボット工学の用途、例えば外科用ロボット工学の分野では、位置センサが利用可能な空間内に収まりかつそれらがアームに加わる重量を最小にするために非常にコンパクトであることが望ましい。
【0004】
したがって、正確さとコンパクトさの競合する要求をバランスさせる改良された位置センサが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、位置検出装置の位置読取値を補正する方法が提供されており、この位置検出装置は関節構造の回転ジョイントの位置を検出するのに適しており、位置検出装置は、磁極対を含む磁気リングを有するディスクと、磁気リングの磁極対を検出するための磁気センサアレイを有する磁気センサアセンブリと、を含み、この方法は、磁気リングの各磁極対に対して、磁気センサアレイを用いて較正磁極対位置読取値を取得し、較正磁極対位置読取値とモデル磁極対位置読取値を比較することにより磁極対補正関数を生成し、磁気リングの磁極対の磁極対補正関数を平均化して磁気リングの平均磁極対補正関数を生成し、磁気センサアレイを用いて複数の磁極対位置読取値含む位置読取値を取得し、各磁極対位置読取値から平均磁極対補正関数を差し引くことにより補正位置読取値を生成すること、を含む。
【0006】
較正磁極対位置読取値はマルチビットであってもよい。
【0007】
磁極対補正関数は、周期的に振動する関数を含んでいてもよい。この周期的に振動する関数は正弦関数を含んでいてもよい。
【0008】
各磁極対に対して、磁極対補正関数は、較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングした曲線からモデル磁極対位置読取値を表す線を差し引くことにより生成されていてもよい。かかる曲線は、最小二乗法を用いて較正磁極対位置読取値にフィッティングされていてもよい。
【0009】
好ましくは、ディスクは、磁極対を有するさらなる磁気リングと、さらなる磁気リングの磁極対を検出するためのさらなる磁気センサアレイを有する磁気センサアセンブリと、を含み、この方法は、さらなる磁気リングの各磁極対に対して、さらなる磁気センサアレイを用いてさらなる較正磁極対位置読取値を取得し、さらなる較正磁極対位置読取値をモデル磁極対位置読取値と比較することによりさらなる磁極対補正関数を生成し、さらなる磁気リングの磁極対のさらなる磁極対補正関数を平均化して、さらなる磁気リングの平均化したさらなる磁極対補正関数を生成し、さらなる磁気センサアレイを用いて複数の磁極対位置読取値を含むさらなる位置読取値を取得し、各磁極対位置読取値から平均化したさらなる磁極対補正関数を差し引いて、補正されたさらなる位置読取値を生成すること、を含む。
【0010】
さらなる磁極対補正関数は、周期的に振動する関数を含んでいてもよい。この周期的に振動する関数は、正弦関数を含んでいてもよい。
【0011】
さらなる磁極対補正関数は、さらなる較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングした曲線からモデル磁極対位置読取値を表す線を差し引くことによって生成されていてもよい。かかる曲線は、最小二乗法を用いてさらなる較正磁極対位置読取値にフィッティングされていてもよい。
【0012】
この方法はさらに、磁気リングの各磁極対に対して、較正磁極対位置読取値から磁極対補正関数を差し引くことにより、補正された較正磁極対位置読取値を生成し、磁気リングの補正された較正磁極対位置読取値をモデル回転位置読取値と比較することにより回転補正関数を生成し、各磁極対位置読取値から平均磁極対補正関数を差し引くことにより、そして位置読取値から回転補正関数を差し引くことにより、補正位置読取値を生成すること、を含んでいてもよい。
【0013】
回転補正関数は、周期的に振動する関数を含んでいてもよい。この周期的に振動する関数は、正弦関数を含んでいてもよい。
【0014】
この方法は、補正された較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングした曲線からモデル回転位置読取値を表す線を差し引くことにより回転補正関数を生成することを含んでいてもよい。かかる曲線は、最小二乗法を用いて、補正された較正磁極対位置読取値にフィッティングされていてもよい。
【0015】
この方法は、さらなる磁気リングの各磁極対に対して、さらなる較正磁極対位置読取値からさらなる磁極対補正関数を差し引くことによりさらなる補正された較正磁極対位置読取値を生成し、磁気リングのさらなる補正された較正磁極対位置読取値をさらなるモデル回転位置読取値と比較することによりさらなる回転補正関数を生成し、各磁極対位置読取値から平均化されたさらなる磁極対補正関数を差し引くことにより、そして位置読取値からさらなる回転補正関数を差し引くことにより、補正位置読取値を生成すること、を含んでいてもよい。
【0016】
さらなる回転補正関数は、周期的に振動する関数を含んでいてもよい。この周期的に振動する関数は、正弦関数を含んでいてもよい。
【0017】
この方法は、補正された較正磁極対位置読取値に曲線をフィッティングし、フィッティングされた曲線からモデル回転位置読取値を表す線を差し引くことによりさらなる回転補正関数を生成することを含んでいてもよい。かかる曲線は、最小二乗法を用いて、補正された較正磁極対位置読取値にフィッティングされていてもよい。
【0018】
本発明を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】位置検出装置を備えたシャフトの概略図である。
【
図5】位置センサ読取値の理論値および実測値を示すグラフである。
【
図6】内側の半径方向の境界が制限されている時に2つの磁気リングに対して磁極対の数を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図7】外側の半径方向の境界が制限されている時に2つの磁気リングに対する磁極対の数を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図8】位置センサ読取値の理論値および実測値を示すグラフである。
【
図9】ディスクを取り付けるための装置を示す図である。
【
図10】磁気センサアレイによって検出された磁場を示す図である。
【
図11】単一の磁極対が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された位置センサ読取値の理論値および実測値を示す図である。
【
図13】磁気リング全体が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された位置センサ読取値の理論値および実測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は、関節構造用の位置検出装置、および位置検出装置を組み立てる方法に関するものである。関節構造の各ジョイントの位置を感知することによって、関節構造の遠位端の位置が、感知されたジョイント位置と関節構造の既知のレイアウトとの組み合わせから決定され得る。ロボットアームの場合では、ロボットアームの基部は、ジョイントによって互いに結合された一連のリンクを介してロボットアームの遠位端でエンドエフェクタに結合されている。これらのジョイントは、回転ジョイントまたは直進ジョイントであってもよい。回転ジョイントの場合、ジョイントの回転が感知される。言い換えれば、回転ジョイントが取り付けられている2本のシャフトの相対的な回転が検知される。回転角度および回転方向が感知される。直進ジョイントの場合、ジョイントの長手方向の動きが感知される。言い換えれば、直進ジョイントが取り付けられている2本のシャフトの相対的な運動が感知される。移動距離と移動方向が感知される。
【0021】
図1は、軸2周りのシャフト1の回転を検出するための位置検出装置の一例を示している。位置検出装置は、軸2周りのシャフト1の回転角度および回転方向を検出する。位置検出装置は、磁気センサアセンブリとディスク3とを備えている。ディスク3は
図2に詳細に示されている。ディスク3は、外側の半径方向の境界4と内側の半径方向の境界5を有する環状体である。環状体の両方の境界4,5は、ディスク3の中心点を中心としている。外側の半径方向の境界4の半径はr
oである。内側の半径方向の境界5の半径はr
iである。ディスク3は、その位置が検知されているエレメントに固定されている。今回の場合、ディスク3はシャフト1に堅固に取り付けられている。シャフト1とディスク3の間の相対的な運動は許容されていない。ディスク3は軸2周りに回転する。言い換えれば、ディスク3とシャフト1は共通の軸2周りに回転する。
【0022】
2つの磁気リング6、7がディスク3上に配置されている。磁気リング6、7の相対的な運動は許容されていない。2つの磁気リング6、7は同心である。両方の磁気リング6、7はディスク3の中心を中心としている。言い換えれば、磁気リング6、7は、シャフト1の回転軸2を軸とする円周上に配置されている。ディスク3の中心と内側の磁気リング6の中心線9との間の半径方向の距離はrmである。ディスク3の中心と外側の磁気リング7の中心線10との間の半径方向の距離はrnである。磁気リング6、7の中心線9、10は半径方向で距離sだけ離れている。半径方向の距離sの最小値は予め定められている。好ましくは、半径方向の距離sは少なくとも磁極対の長さがあることが望ましい。言い換えれば、s≧2yである。
【0023】
各磁気リング6、7は磁極8を画定する多数の永久磁石を伴っている。各磁気リング6、7の検知面では、磁石はリング周りのN極とS極の間で極性が交互に切り替わる。内側の磁気リング6は、m個の磁極対を有している。外側の磁気リング7は、n個の磁極対を有している。内側の磁気リング6上の各磁極8は、製造公差内で、同じ形状およびサイズである。外側の磁気リング7上の各磁極8は、製造公差内で、同じ形状および大きさである。好ましくは、内側の磁気リング6上の各磁極8は、製造公差および内側の磁気リング6の半径が外側の磁気リング7の半径と異なるという事実の範囲内で、外側の磁気リング7上の各磁極8と同じ形状およびサイズであることが望ましい。磁気リング6、7の一部が
図3に詳細に示されている。各磁極8は、半径方向の長さxおよび円周方向の長さyを有している。一例として、yは2mmである。この例では、磁極対(すなわち、N極と隣接するS極との対)は、4mmの円周方向の長さを有している。
【0024】
磁気センサアセンブリは、2つのエレメント間の相対的な回転を検出するように関節構造に取り付けられている。磁気センサアセンブリは、磁気センサアセンブリがそのエレメントに対して動くことができないように、それらのエレメントのうちの1つに堅固に取り付けられている。磁気リング6、7が他方のエレメントに対して動くことができないように、ディスク3は他方のエレメントに堅固に取り付けられている。
図1の場合、ディスク3はシャフト1に堅固に取り付けられている。磁気センサアセンブリは、シャフト1がそれに対して回転する関節構造の部位に堅固に取り付けられている。
【0025】
磁気センサアセンブリは、第1および第2の磁気リング6、7と磁気センサアセンブリとの相対的な回転を検出する。磁気センサアセンブリは、2つの磁気センサアレイ11、12を含んでいる。内側の磁気センサアレイ11は、内側の磁気リング6に隣接して整列して配置されている。外側の磁気センサアレイ12は、外側の磁気リング7に隣接して整列して配置されている。シャフト1が回転するときには、磁気センサアセンブリはシャフト1がそれに対して回転する関節構造に取り付けられていることから、磁気リング6および7は磁気センサアレイ11、12を通過して回転する。各センサアレイ11、12は、磁気リング6、7のN極とS極がセンサアレイ11、12を通過して移動するときに、配置されている磁気リング6、7のN極とS極間の変化を検出できる。代表的な実施形態では、第1および第2の磁気リング6、7は少なくとも磁極対の長さだけ半径方向に分離されている。リング6、7間の間隔を広げると、各リングが他のリングのセンサに与える干渉が減少する。それゆえ、少なくとも磁極対の長さだけリング6、7を離すことは、内側の磁気センサアレイ11が内側の磁気リング6の変化を検出することだけを助け、かつ外側の磁気センサアレイ12が外側の磁気リング7の変化を検出することだけを助ける。
【0026】
各磁気センサアレイ11、12は、一組のセンサを含んでいる。
図4は、磁気センサアレイが4つの個々のセンサ13a,13b,13c,13dを含む例を示す。各磁気センサアレイ11、12は直線的である。
図4から分かるように、個々のセンサ13は一直線上に配置されている。一組のセンサ13はすべて同じサイズと形状で、等しい間隔だけ離れている。各センサ13は幅tと長さuを有し、次のセンサ13から距離vだけ離れている。隣接するセンサ13の中心が距離zだけ離れている。磁気センサアレイ11、12が4つの個々のセンサ13を有する
図4に示す例では、zは磁極対の長さの4分の1と同じ長さである。言い換えれば、z=y/2である。したがって、1および3とマークされた、センサ13の中心は隣接する磁極間の境界上にあるが、2と4とマークされた、センサ13の中心は隣接する磁極の中心上にある。外側のセンサ13の中心(1と4とマークされている)は、磁極対の長さの4分の3離れている。代表的な実施形態では、tは磁気リング6,7の半径方向の広がりxよりも小さい。言い換えれば、t<xである。
【0027】
個々のセンサ13a,13b,13c,13dは直線上にあるのに対し、磁気リング6,7は円形であるので、シャフト1が回転するにつれて各センサ13の中心は磁極の中心と一貫して位置決めされていない。センサ13の中心と磁極の中心間のオフセットは、シャフト1が回転するにつれて変化する。この可変オフセットはセンサ出力に系統的な誤差を生じさせる。他の実施形態では、磁気センサアレイ11、12はそれぞれ、ディスク3の中心を中心とする円形内にある。この場合、各磁気センサアレイ11、12の中心線の半径は、センサ13が読み取っている磁気リング6,7の中心線9,10の半径と同じである。それゆえ、磁気センサアレイ11、12の中心線は、シャフトが回転している時に読み取りを行うセンサ11、12が磁気リング6,7の中心線9,10に対して一貫して位置決めされている。
【0028】
センサ13は、例えば、ホール効果センサ、リードセンサ、磁気抵抗センサまたは誘導センサであってもよい。
【0029】
各磁気センサアレイ11、12は、それに隣接する磁極の相対的な位置を表すマルチビット出力を提供するように構成されている。磁気リング6,7上の磁極の数および相対的な配置は、測定されるべき回転角度の範囲内でシャフト1の各位置が2つの磁気センサアレイ11、12からの特有の一組の出力と関連するように配置されている。内側のリング6上の磁極対の数mと外側のリング7上の磁極対の数nは異なっており、互いに素である。それらの選択については、以下でさらに説明される。センサ13からの出力は、プロセッシングユニット14に渡される。
【0030】
磁気センサアレイ11、12の円周方向の位置および軸2周りのディスク3の回転位置は、磁気センサアレイ11によって検知される内側の磁気リング6上の磁極8間の変化が、磁気センサアレイ12によって検知される外側の磁気リング7上の磁極8間の変化とは異なるシャフト1の回転位置に対して生じるように選択されていてもよい。これにより、各磁気センサアレイ11、12によって検知された変化の相対的な順序からシャフト1の回転方向を推測することが可能になる。
【0031】
磁気センサアレイ11、12の出力はプロセッシングユニット14に渡される。プロセッシングユニット14は、磁気センサアレイ11、12からの信号を解釈するためにハードコード化されているか、またはメモリ16に非一時的に記憶されたソフトウェアコードを実行するように構成された汎用プロセッサであるプロセッサデバイス15を備えている。プロセッサデバイス15は、センサ13からの信号を結合して、17においてまとめられた出力信号を形成する。
【0032】
次に、内側の磁気リング6上の磁極対の数mと外側の磁気リング7上の磁極対の数nを選択する方法について説明する。
【0033】
mおよびnの選択は、以下の制約のうちの任意の1つ、任意の組合せ、またはすべてを条件としてもよい。
【0034】
1.内側および外側の磁気リング6、7は両方ともディスク3に取り付ける必要がある。好ましくは、内側および外側の磁気センサアレイ11、12もそれぞれディスク3の設置面積内に配置されていることが望ましい。内側の半径方向の境界5は半径riである。内側の半径方向の境界5を超えずに内側の磁気センサアレイ11をディスク3上に取り付けるために、内側の磁気リング6の中心線9は、少なくとも内側の磁気リング6の中心線9と内側の半径方向の境界5との間に配置された磁気センサアレイ11の半径方向の幅の分だけ内側の半径方向の境界5から離されている。これは、磁気センサアセンブリの半径方向の幅の半分、すなわちwm/2であってもよい。言い換えれば、rm>ri+wm/2である。センサアレイ11,12がセンサアセンブリ内で半径方向にオフセットされている場合、それはさらに大きくなってもよい。一例として、rm>ri+(wm+t)/2である。外側の半径方向の境界4は半径roである。外側の半径方向の境界4を超えずに外側の磁気センサアレイ12をディスク3上に取り付けるために、外側の磁気リング7の中心線10は、少なくとも外側の磁気リング7の中心線10と内側の半径方向の境界4との間に配置された磁気センサアレイ12の半径方向の幅の分だけ外側の半径方向の境界4から離されている。これは、磁気センサアセンブリの半径方向の幅、すなわちwn/2であってもよい。言い換えれば、rn<ro-wn/2である。センサアレイ11,12がセンサアセンブリ内で半径方向にオフセットされている場合、それはさらに大きくなってもよい。一例として、rn<ro-(wn+t)/2である。
【0035】
2.隣接するセンサ13の中心は、磁極対の長さの4分の1だけ離されている。言い換えれば、隣接するセンサ13はy/2だけ離されている。これにより、ディスク3が回転するときに磁気センサアレイ11,12が各磁極8の変化を確実に検出できる。
【0036】
3.内側の磁気リング6の中心線9と外側の磁気リング7の中心線10との間の半径方向の距離sは所定の距離よりも大きい。この所定の距離は、浮遊磁場に対する所望の鈍感性によって設定されている。好ましくは、s>2yであることが望ましい。この場合、内側の磁気センサアレイ11が検出している内側の磁気リング6上の最も近い磁極8は、常に外側の磁気リング7上の磁極8よりも近い。同様に、外側の磁気センサアレイ12が検出している外側の磁気リング7上の最も近い磁極8は、常に内側の磁気リング6上の磁極8よりも近い。それゆえ、一方の磁気リング上の磁気センサアレイが他方の磁気リングからの磁界を検出することによって生じる干渉を防ぐことができる。
【0037】
4.各磁気センサアレイ11,12内のセンサ13の最小数bは閾値より大きい。この閾値は、明確な位置読み取りに対して十分な空間サンプリングがあるようになっている。好ましくは、b≧4であることが望ましい。磁気高調波が検出されない場合は、4つのセンサ13a,13b,13c,13dで十分である。
【0038】
5.各磁気センサ13a,13b,13c,13dの幅tは、磁気リング6,7の半径方向の広がりxよりも小さい。言い換えれば、t<xである。磁気センサアレイ11,12が磁気リング6,7よりも狭い場合、検出された変化の信号対雑音比は減少する。
【0039】
6.ディスク3の内側の半径方向の境界5は、関節構造によって拘束されていてもよい。例えば、
図1では、ディスク3の内側の半径方向の境界5はシャフト1によって制限されている。この場合、内側の半径方向の境界5の半径r
iは少なくともシャフト1の半径と同じ大きさでなければならない。
【0040】
7.ディスク3の外側の半径方向の境界4は、関節構造によって拘束されていてもよい。例えば、位置センサは、関節構造のハウジングの内側に備えられていてもよい。この場合、外側の半径方向の境界4の半径roは、少なくともハウジングの広がりと同じくらい小さくなければならない。
【0041】
8.位置センサは最大回転角を検出するように構成されている。この最大回転角は、回転が検出されるエレメントによって異なる。回転ジョイントの場合、検出される最大回転角は、運動連鎖されたそのジョイントの位置によって異なる。検出される最大回転角は、360°未満であってもよい。検出される最大回転角は、360°より大きくてもよい。位置測定の精度は、検出される回転角に比例する。検出されるべき回転角が大きければ大きいほど、必要とされる位置測定の精度は高くなる。センサの読み取り精度は次の式で与えられる。
【0042】
【0043】
Σ磁極対は、ディスク3上のすべての磁気リングの磁極対の数の合計である。ディスク3上に2つの磁気リング6,7がある場合、Σ磁極対=m+nである。磁気リング6,7上の磁極対の数が多いほど、磁気リングは大きくなる。したがって、磁気リング6,7が大きいほど、より正確な位置測定につながる。検出されるべき回転角が大きいほど、より大きいmおよび/またはnが、要求される精度を達成するために求められる。それゆえ、あるエレメントの他のエレメントに対する回転を検出するための磁気リング6,7上の磁極対の数は、2つのエレメント間で検出される相対的な回転角によって制約される。回転ジョイントの場合、mおよびnの選択は、検出されるその回転ジョイントの最大回転角に特有のものである。
【0044】
図5は、
図1に示す形態の位置検出装置から得られた位置センサの理論値および実測値を示すグラフである。x軸は外側の磁気センサアレイ12の位置センサの実測値であり、y軸は内側の磁気センサアレイ11の位置センサの実測値である。星形のプロットは、100%の精度を有する理論値を示している。実線のプロットは、実測値の例を示している。これらの代表的な実測値は、ディスク3上の磁気リング6,7の磁化における製造上のばらつき、磁気センサアレイ11,12における製造上のばらつき、および/または磁気リング6,7と磁気センサアレイ11,12間の位置ずれのために、理論値と異なる。
図5では、実測値は理論値から一貫したオフセットを有しており、これは実測値における系統的な誤差を示している。このオフセットは、ディスク3を磁化するときのエラーが原因であるかもしれない。例えば、磁気リング6,7の中心はディスク3の回転中心からわずかにずれているかもしれない。
図5はまた、系統的な誤差を超える、読取値におけるさらなる誤差を示している。どのセンサ13の読取値が目論見通りかを正確に検出するためには、
図5のプロットにおける実測値が、他の理論値よりも正確な理論値に近い必要がある。
【0045】
続いて、mおよびnの値を決定する方法が、ディスク3の内側の半径方向の境界5が制限されている場合について説明される。例えば、ディスク3がシャフト1に取り付けられていてもよいし、それゆえディスク3の内側の半径方向の境界5の半径r
iはシャフト1の半径より大きくなければならない。
図6はこの方法のステップを示している。
【0046】
ステップ20で、最小値rm,minが決定される。これは、制限された内側の半径riによって許容される内側の磁気リング6の中心線9の最小半径である。上記の制約1で説明したように、この最小半径において、内側の磁気リング6の中心線9は、内側の磁気リング6の中心線9と内側の半径方向の境界5との間に配置された磁気センサアレイ11の半径方向の幅の分だけ内側の半径方向の境界5から離されている。これは、磁気センサアレイ11が内側の半径方向の境界5内に制限されることを確実にするためである。一例では、最小値rm,minは、次式によって与えられる。
【0047】
【0048】
ステップ21で、内側の磁気リング6における磁極対の最小数mが決定される。磁気リング6は、多数の磁極対を有している。それゆえ、mは整数である。rm,minは、次式のrmの最小値まで増やされる。
【0049】
【0050】
ステップ22で、最小値rn,minが決定される。これは、制限された内側の半径riによって許容された外側の磁気リング7の中心線10の最小半径である。上記の制約3で説明したように、この最小半径において、外側の磁気リング7の中心線10は内側の磁気リング6の中心線9から所定の距離だけ半径方向に離されている。この所定の距離は、他の磁気リングによる1つの磁気リングのセンサ読み取りにおける干渉を低減または最小化するために十分に大きいことが望ましい。
【0051】
【0052】
ステップ23で、外側の磁気リング7に対する磁極対の最小数nが決定される。磁気リング7は、多数の磁極対を有している。それゆえ、nは整数である。rn,minは、次式のrnの最小値まで増やされる。
【0053】
【0054】
ステップ24で、ステップ21および23で決定されたmおよびnの値が互いに素であるかどうかが判定される。mとnが互いに素であるならば、これらmとnのペアは最もコンパクトなディスク3を提供する。この場合、mは内側の磁気リング6上の磁極対の数となるように選択され、nは外側の磁気リング7上の磁極対の数となるように選択される。次にステップ25に進み、ここで位置検出装置は、m個の磁極対を有する内側の磁気リング6とn個の磁極対を有する外側の磁気リング7とを有するディスク3を関節構造に取り付けることによって構成される。ディスク3は、その位置を感知するように構成されている関節構造のエレメントに堅固に取り付けられている。ディスク3は、その位置を感知するように構成されているエレメントと同じ軸周りに回転するように取り付けられている。
【0055】
ステップ24で、ステップ21および23で決定されたmおよびnの値が互いに素ではないと判定された場合、ステップ26に進む。ステップ26では、ステップ23で決定されたnの値が1だけ増やされる。ステップ27で、ステップ26で決定されたnの新しい値とステップ21で決定されたmの値が互いに素であるかどうかが判定される。それらが互いに素でない場合、ステップ26に戻り、nの値が1だけ増やされる。次に、ステップ27に戻り、そこでnの新しい値がmと互いに素であるかどうかが判定される。nがmと互いに素である値に達するまで、ステップ26および27が反復され、各反復でnの値が1ずつ増やされる。これにより、各反復は、mとnとの間の差を1ずつ増やす。
【0056】
mと互いに素であるnの値が見つかると、ステップ28に進む。ステップ28で、ステップ21で決定されたmの値が、内側の磁気リング6の磁極対の数の範囲の下限として設定される。また、ステップ28で、ステップ27においてmと互いに素であると判定されたnの値が、外側の磁気リング7の磁極対の数の範囲の上限として設定される。
【0057】
ステップ29で、ステップ28で設定された範囲内にある、さらなる互いに素であるm、nの対が識別される。言い換えれば、互いに素であり、mがステップ28で設定された下限より大きく、nがステップ28で設定された上限より小さい、さらなるmとnの値が識別される。これらの互いに素であるm、nの対はまた、外側の磁気リング7が内側の磁気リング6から少なくとも距離sの所定の最小値だけ離されているというような他の制約も満たす。
【0058】
例示的な実施形態では、ステップ21および23で最初に決定されたmおよびn値は、m=30およびn=35である。これらは互いに素ではない。ステップ26でnを反復すると、m=30およびn=37のm、n対が得られる。ステップ29で、以下のさらなる互いに素である対が識別される。すなわち、m=31,n=36、m=31,n=37、m=32,n=37である。
【0059】
ステップ30で、一対の互いに素であるm、n対が選択される。このm、n対は、ステップ21で決定されたmの値およびステップ27でそのmの値と互いに素であると判定されたnの値であってもよいし、あるいはm、n対は、ステップ29で決定されてもよい。選択されるm、n対は実施態様に依存する。
【0060】
一例では、mの最大値を有する互いに素であるm、n対はステップ30で選択される。上記の例では、m=32、n=37が選択される。[数1]から分かるように、mの最大値を有するm、n対を選択することは、結果として得られるセンサ13の精度を最大にする。
【0061】
別の例では、ステップ30で、nの最小値を有する互いに素であるm、n対が選択される。上記の例では、m=31、n=36が選択される。nの最小値を有するm、n対を選択することは、ディスク3の外側の半径roを最小にし、それゆえセンサ13によって占められる全体の空間を最小にする。
【0062】
別の例では、ステップ30で、(n-m)の最小値を有する互いに素であるm、n対が選択される。(n-m)の最小値を有するm、n対を選択することはディスク3の半径方向の幅を最小にし、それゆえ最もコンパクトなセンサ13を提供する。上記の例では、2つのm、n対が(n-m)の最小値を有している。すなわち、m=31、n=36と、m=32、n=37である。
【0063】
ステップ30で選択されたm、n対は、感知される最大回転角に応じて選択されてもよい。上述したように、最大回転角は必要とされる最小精度を特定し、それは次に磁気リング6,7上の磁極対の数の必要とされる最小合計を特定する。これは、コンパクトなセンサ13を提供するための競合する制約である。これらの競合する要求をバランスさせるために、その合計が磁気リング6,7上の磁極対の数の必要とされる最小合計を超える互いに素である最小のm、n対がステップ30で選択されてもよい。
【0064】
特定の実施形態では、これらの基準のいずれか1つまたは組み合わせが適用されてもよい。例えば、(n-m)の最小値を有する互いに素であるm、n対が選択されてもよい。(n-m)の最小値を有する2つ以上の互いに素であるm、n対がある場合、最大のmを有するもののうちの1つが選択されてもよい。それゆえ、上記の例では、m=32、n=37が選択されるであろう。
【0065】
ステップ30で互いに素であるm、n対が選択されると、選択されたm、n対のmは内側の磁気リング6上の磁極対の数となるように選択され、選択されたm、n対のnは外側の磁気リング7の磁極対の数となるように選択される。次にステップ25に進み、そこで位置検出装置は、m個の磁極対を有する内側の磁気リング6とn個の磁極対を有する外側の磁気リング7を有するディスク3を前述のように関節構造に取り付けることによって組み立てられる。
【0066】
mおよびnの値を決定する方法を、ディスク3の外側の半径方向の境界4が制限されている場合についてここで説明する。例えば、ディスク3はハウジング内に取り付けられてもよく、それゆえディスク3の外側の半径方向の境界4の半径r
oは、ハウジングからディスク3の中心点までの最も近い距離よりも小さくなければならない。
図7はこの方法のステップを示す。
【0067】
ステップ40で、最大値rn,maxが決定される。これは、制限された外径roによって許容された外側の磁気リング7の中心線10の最大半径である。上記の制約1で説明したように、かかる最大値において、外側の磁気リング7の中心線10は、外側の磁気リング7の中心線10と外側の半径方向の境界4の間に配置された磁気センサアレイ12の半径方向の幅の分だけ外側の半径方向の境界4から離されている。これは、磁気センサアレイ12が外側の半径方向の境界4内に制限されることを確実にするためである。一例では、最大値rn,maxは次式で与えられる。
【0068】
【0069】
ステップ41で、外側の磁気リング7に対する磁極対の最大数nが決定される。磁気リング7は、多数の磁極対を有している。それゆえ、nは整数である。rn,maxは、次式で表されるrnの最大値まで減少する。
【0070】
【0071】
ステップ42で、最大値rm,maxが決定される。これは、制限された外径roによって許容された内側の磁気リングの中心線9の最大半径である。上記の制約3で説明したように、かかる最大値において、内側の磁気リングの中心線9は、外側の磁気リングの中心線10から所定距離だけ半径方向に離されている。この所定距離は、他の磁気リングによる1つの磁気リングのセンサ読み取りにおける干渉を低減または最小化するために十分に大きいことが望ましい。
【0072】
【0073】
ステップ43で、内側の磁気リング6に対する磁極対の最大数mが決定される。磁気リング6は、多数の磁極対を有している。それゆえ、mは整数である。rm,maxは、次式で表されるrmの最大値まで減少する。
【0074】
【0075】
ステップ44で、ステップ41および43において決定されたmおよびnの値が互いに素であるかどうかが判定される。mとnが互いに素である場合、これらは最もコンパクトなディスク3を提供するm、n対である。この場合、mは内側の磁気リング6上の磁極対の数となるように選択され、nは外側の磁気リング7上の磁極対の数となるように選択される。次にステップ45に進み、ここで位置検出装置は、m個の磁極対を有する内側の磁気リング6とn個の磁極対を有する外側の磁気リング7とを有するディスク3を関節構造に取り付けることによって構成される。ディスク3は、その位置を感知するように構成されている関節構造のエレメントに堅固に取り付けられている。ディスク3は、その位置を感知するように構成されているエレメントと同じ軸周りに回転するように取り付けられている。
【0076】
ステップ44で、ステップ41および43において決定されたmおよびnの値が互いに素でないと判定された場合、ステップ46に進む。ステップ46で、ステップ43において決定されたmの値が1だけ減らされる。ステップ47では、ステップ46で決定されたmの新しい値とステップ41で決定されたnの値が互いに素であるかどうかが判定される。それらが互いに素でない場合、ステップ46に戻り、そこでmの値が1だけ減らされる。その後、ステップ47に戻り、ここで、mの新しい値がnと互いに素であるかどうかが判定される。ステップ46および47は、mの値がnと互いに素である値に達するまで、各反復でmの値が1だけ減らされることが反復される。これにより、各反復で、mとnとの間の差は1ずつ増える。
【0077】
nと互いに素であるmの値が見つかると、ステップ48に進む。ステップ48では、ステップ41で決定されたnの値が、外側の磁気リング7の磁極対の数の範囲の上限として設定される。また、ステップ48において、ステップ47でnと互いに素であると判定されたmの値が、内側の磁気リング6の磁極対の数の範囲の下限として設定される。
【0078】
ステップ49で、ステップ48で設定された範囲内にある、さらなる互いに素であるm、nの対が識別される。言い換えれば、互いに素であり、mがステップ48で設定された下限より大きく、nがステップ48で設定された上限より小さい、さらなるmとnの値が識別される。これらの互いに素であるm、nの対はまた、外側の磁気リング7が内側の磁気リング6から少なくとも所定の距離だけ離されているというような他の制約も満たす。
【0079】
ステップ50で、互いに素であるm、n対の1つが選択される。このm、n対は、ステップ41で決定されたnの値とステップ47でそのnの値と互いに素であると決定されたmの値であるか、あるいはステップ49で決定されたm、n対、のどちらか一方であってもよい。選択されたm、n対は実施態様に依存する。
【0080】
一例では、ステップ40で、mの最大値を有する互いに素であるm、n対が選択される。mの最大値を有するm、n対を選択することは、結果として得られるセンサ13の精度を最大にし、そのことは[数1]から分かる。
【0081】
別の例では、ステップ50で、(n-m)の最小値を有する互いに素であるm、n対が選択される。(n-m)の最小値を有するm、n対を選択することは、ディスク3の半径方向の幅を最小にし、それゆえ最もコンパクトなセンサ13を提供する。
【0082】
ステップ50で選択されたm、n対は、感知される最大回転角に応じて選択されてもよい。その合計が磁気リング6,7上の磁極対の数の必要とされる最小合計を超える最小の互いに素であるm、n対が、ステップ50で選択されてもよい。
【0083】
特定の実施形態では、これらの基準のいずれか1つまたは組み合わせが適用されてもよい。例えば、(n-m)の最小値を有する互いに素であるm、n対が選択されてもよい。(n-m)の最小値を有する2つ以上の互いに素であるm、n対がある場合、最大のmを有するもののうちの1つが選択されてもよい。
【0084】
ステップ50で互いに素であるm、n対が選択されると、選択されたm、n対のmは内側の磁気リング6上の磁極対の数となるように選択され、選択されたm、n対のnは外側の磁気リング7上の磁極対の数になるように選択される。次にステップ45に進み、そこで位置検出装置はm個の磁極対を有する内側の磁気リング6とn個の磁極対を有する外側の磁気リング7を有するディスク3を前述のように関節構造に取り付けることによって組み立てられる。
【0085】
図6および
図7のフローチャートは、ディスク3の内側の半径方向の境界5または外側の半径方向の境界4が制限されている場合に、内側および外側の磁気リング6,7上の磁極の数を決定する代表的方法を表していることが理解されよう。磁極の数を決定するために、記載されたステップのすべてが必ずしも必要とされるわけではない。例えば、
図6のステップ21および23で決定された磁極の最小数mおよびnは、最小半径r
m,minおよびr
n,minを実際に決定することなく決定されてもよい。同様に、
図7のステップ41および43で決定された磁極の最大数mおよびnは、最大半径r
m,maxおよびr
n,maxを実際に決定することなく決定されてもよい。
【0086】
センサ13によって検出された回転角度は、以下のように内側の磁気リング6および外側の磁気リング7からのセンサ13の読取値から決定され得る。検出された回転角は、外側の磁気リング7の全回転数に外側の磁気リング7に対する現在のセンサ13の読取値を加えたものに等しい。
図8は、
図1に示す形態の位置検出装置から得られた理論値および実測値を示すグラフである。x軸は、外側の磁気センサアレイ12の位置センサの測定値である。y軸は、((外側のセンサアレイ12の読取値×n)-(内側のセンサアレイ11の読取値×m))で表される組み合わされたセンサ13の読取値である。星形のグラフは、100%の精度を有する理論値を示している。実線のプロットは、実測値を示している。星形のプロットは一連の直線である。各直線は、外側の磁気リング7の特定の回転数および内側の磁気リング6の特定の回転数を表している。それゆえ、センサ13によって検出された回転角を決定する1つの方法は、以下を決定することである。
【0087】
【0088】
そして、Xを外側のリング7の回転数にマッピングするルックアップテーブルと比較する。回転角は次式のようになる。
【0089】
【0090】
あるいは回転角は、内側のセンサアレイ11の読取値に関して同様の方法で決定されてもよい。
【0091】
図1および
図2に示す例では、磁気リング6および7の両方がディスク3の同じ面に配置されている。しかしながら、磁気リング6および7はディスク3の対向する面に配置されていてもよい。この場合、磁気センサアレイ11,12はディスク3の対向する面上に取り付けられている。内側の磁気センサアレイ11は、内側の磁気リング6上の磁極の変化を検出するように内側の磁気リング6上に取り付けられている。外側の磁気センサアレイ12は、外側の磁気リング7上の磁極の変化を検出するように外側の磁気センサアレイ7上に取り付けられている。この場合、内側および外側の磁気リング6,7の中心線9と10との間の最小の半径方向の間隔sは、磁気リング6,7がディスク3の同じ表面上にある場合よりも小さい。これは、磁極が磁気センサアレイ11,12に対してディスク3の対向する面に露出している磁気リング6,7によって磁気センサアレイ11,12に引き起こされる干渉が、磁気センサアレイ11,12に対してディスク3の同じ側に同じ距離だけ離れている磁気リング6,7によって引き起こされる干渉よりも小さいためである。それゆえ、内側の磁気リング6と外側の磁気リング7の中心線9,10間の半径方向の距離は、磁極対の長さ2yよりも短くてもよい。
【0092】
図1および
図2に示す例では、内側および外側の磁気リング6、7は同じディスク3上にある。あるいは、内側の磁気リング6と外側の磁気リング7は異なるディスク上に配置されていてもよい。それらの異なるディスクは同じ回転軸を有し、かかる回転軸は回転が検出されるエレメントと同じである。しかしながら、それらの異なるディスクは回転軸に沿って分離されている。例えば、回転ジョイントの回転を測定するとき、ディスクはジョイントの反対側に取り付けられていてもよい。これは包装やコンパクトさの理由で望ましいかもしれない。この例では、内側および外側の磁気リング6,7上の磁極対の数mおよびnは、ここに記載されているように決定されるであろう。しかし、内側および外側の磁気リング6,7は軸方向に分離されているので、一方の磁気リングが他方の磁気リングを感知することによって生じる干渉は無視できるほど小さく、それゆえ磁気リング6,7が半径方向に分離されていることに対する制約はない。
【0093】
ここに記載されている装置および方法は、一方のエレメントの他方のエレメントに対する1回転未満の回転を検出するために使用することができる。ここに記載の装置および方法はまた、一方のエレメントの他方の対する1回転を超える回転を検出するためにも使用することができる。
【0094】
代表的な実施形態では、モータが、関節構造のエレメントを駆動するギアボックスを駆動する。一方の磁気リングが、モータからの出力であるモータシャフトに堅固に取り付けられている。他方の磁気リングは、ギアボックスからの出力であるドライブシャフトに堅固に取り付けられている。それゆえ、2つの磁気リングは軸方向に分離されている。モータシャフトとドライブシャフトの回転軸は同じである。磁気リングは両方ともこの回転軸の中心に置かれている。好ましくは、m個の磁極を有する内側の磁気リングはモータシャフトに取り付けられ、n個の磁極を有する外側の磁気リングはドライブシャフトに取り付けられていることが望ましい。n>mである。フラクショナルギア比が使用されている場合、ドライブシャフトの2回転以上を区別することができる。たとえば、13:4のギア比では、最大4回転のドライブシャフトを区別できる。このことは、ドライブシャフトを一方の方向にそして次に他の方向に1回転させる必要なしに、セットアップ中にドライブシャフトの位置を決定することを可能にすることから、ロボットの実施形態において有用である。
【0095】
mが閾値よりも小さい構成では、内側の磁気リング6用の磁気センサアレイ11は、リニアアレイよりむしろ軸上の円形アレイとして実施される。閾値は、リニア磁気センサアレイが、使用可能な読み取りを提供するに足るだけ内側の磁気リング6の中心線9の円弧と交差しない磁極の最大数mである。
【0096】
一実施態様では、m=1である。この場合、内側の磁気リング6にはたった1つの磁極対しかない。この磁極対はディスク3の中心に置かれている。この磁極対はディスク3の回転軸上にある。この磁極対は、外側の磁気リング7上のどの磁極対とも位置合わせされていない。これにより回転方向を検出することができる。m=1を用いると、非常にコンパクトなセンサ13を使用できるが、精度は低くなる([数1]参照)。
【0097】
上述したように、選択されたm、n対は互いに素である。全ての場合において、(n-m)>1である。内側および外側の磁気リング6、7がディスク3の同じ面上にある場合、(n-m)≧7である。これは、干渉を回避するために、内側および外側の磁気リング6、7の中心線9、10間の半径方向の距離sが磁極対の長さ以上であるためである。各磁気リング6、7上の磁極対の数は整数である。それゆえ、2つの磁気リング6、7上の磁極対の数の最小差は2πよりも大きい最初の整数で、7である。一例では、(n-m)≧8である。例えば、n=41、m=33である。他の例では、(n-m)≧10である。例えば、n=47、m=37である。
【0098】
上記の装置および方法は、2つの磁気リング6、7の回転を感知することに関するものである。同じ方法を3つ以上の磁気リングの回転を感知するように適合させることができる。すべての磁気リングは同軸である。それらは全て同じディスクあるいはいくつかのディスク上に回転軸に沿って軸方向に分離された状態で配置されていてもよい。[数1]は、磁気リング上の磁極対の合計が増加するにつれて感知される位置の精度が増加することを示している。それゆえ、さらなる磁気リングを利用することによって、より正確な位置が測定される。各磁気リング上の磁極対の数は、他のすべての磁気リング上の磁極対の数と互いに素である。したがって、m、n、およびh個の磁極対を有する3つの磁気リングがある場合、m、n、およびhはすべて互いに素である。各磁気リングは、隣接する磁気リングから少なくとも所定の距離だけ半径方向に分離されていることが望ましい。磁気リングがすべてディスクの同じ面上にある場合、各磁気リングは隣接する磁気リングから少なくとも磁極対の長さ2yだけ分離されていることが望ましい。
【0099】
図6の場合、3つ以上の磁気リングを有する位置センサに対して、最小のmと最小のnは、ステップ21と23で示されているように決定されるであろう。第3の磁気リングがある場合、最小のhはステップ22および23を介して決定されたnと同じ方法で決定されるが、今回は最小の半径方向の間隔はn個の磁極対を有するリングとh個の磁極対を有するリングとの間である。同様に、さらなる磁気リングがある場合、ステップ22および23は、さらなる磁気リングそれぞれに対して対応する方法で繰り返される。ステップ24で全ての磁極対の数が互いに素である場合にのみ、ステップ25に進む。そうでなければ、ステップ26および27が、各リングに対する一組の互いに素である磁極対の数が決定されるまで、さらなる各リングに対して実行される。ステップ28で、最小の磁気リングの磁極対の数がその磁気リングの下限として設定される。ステップ28で、最大の磁気リングの磁極対の数がその磁気リングの上限として設定される。ステップ29で、さらなる互いに素である磁極対の数が全ての磁気リングに対して決定され、隣接するリング間の間隔は少なくとも最小の半径方向の間隔であることを保証する。磁極対の組み合わせは、上述の方法にしたがってステップ30で選択される。位置検出装置は、ステップ30で選択された各リング上の磁極対の数を有する一群の磁気リングを有する関節構造にディスクを取り付けることによって構成されている。
【0100】
図7の場合、2つ以上の磁気リングを有する位置センサに対して、最大のnと最大のmが、ステップ41と43で示されるように決定されるであろう。第3の磁気リングがある場合、最大のhはステップ42および43を介して決定されたmと同じ方法で決定されるが、今回は最小の半径方向の間隔はm個の磁極対を有するリングとh個の磁極対を有するリングとの間である。同様に、さらなる磁気リングがある場合、ステップ42および43は、さらなる磁気リングそれぞれに対して対応する方法で繰り返される。ステップ44で全ての磁極対の数が互いに素である場合にのみ、ステップ45に進む。そうでなければ、この方法のステップ46および47は、各リングに対する一組の互いに素である磁極対の数が決定されるまで、さらなる各リングに対して実行される。ステップ48で、最小の磁気リングの磁極対の数がその磁気リングの下限として設定される。ステップ48で、最大の磁気リングの磁極対の数がその磁気リングの上限として設定される。ステップ49で、さらなる互いに素である磁極対の数が全ての磁気リングに対して決定され、隣接するリング間の間隔は少なくとも最小の半径方向の間隔sであることを保証する。磁極対の組み合わせは、上述した方法にしたがってステップ50で選択される。位置検出装置は、ステップ50で選択された各リング上の磁極対の数を有する一群の磁気リングを有する関節構造にディスクを取り付けることによって構成される。
【0101】
ここに記載の位置センサは、2つの物体の相対的な回転位置を絶対的に決定することができる。言い換えれば、位置は、例えば相対的な回転位置が基準構成にあることから運動を数え上げる必要なしに、センサの出力から直接決定することができる。
【0102】
図1および
図2を参照して説明した装置および方法は、2つのエレメントの相対的な回転を測定することに関するものである。しかし、同じ原理が2つのエレメントの相対的な直線運動の測定にも当てはまる。この場合、磁気アレイが磁極対のリングとして配置されるのではなく、それらは磁極対のリニアトラックとして配置される。2つ以上のリニアトラックが使用される。トラックは、互いに素である磁極対の数を有している。各トラックは、その位置が検知されているエレメントの直線運動と平行である。エレメントが動くにつれてリニア磁気センサアレイがそのリニア磁気センサアレイの磁極の変化を検出するように、各リニア磁気センサアレイは各磁気トラック上に取り付けられている。例えば、ハウジング内で直線的に動くエレメントに対して、磁気センサアレイがそのエレメントに取り付けられ、磁気トラックがそのハウジングに固定されていてもよい。
【0103】
製造時には、ディスク3は、磁気リング6、7が上述のレイアウトを有するように磁化される。ディスク3を磁化するために、
図1の磁気センサアレイ11、12と同じ方法で磁化ヘッドがディスク3上に乗せられる。磁気バックプレートが、磁化ヘッドが乗せられている面とは反対側のディスク3の面に配置される。ディスク3が回転し、それによって磁気リング6、7の各磁極対を磁化する。
【0104】
磁極がディスク3上に位置決めされる精度は製造誤差によって制限される。それらの誤差には、半径方向の位置決め誤差および角度方向の間隔誤差が含まれる。関節構造に取り付けられたときに磁気リング6,7の中心とディスク3の回転軸との間にオフセットがあると、半径方向の位置決め誤差が生じる。取り付け時には、各磁気リング6,7の中心線9,10は回転軸から一定の範囲にない。位置センサに使用されるときには、回転軸2からの各磁気リング6,7の中心線9,10の範囲は、その円周の周りで可変であり、したがって磁気リング6,7の異なる磁極対に対して異なる。磁化ヘッドの意図された半径方向の位置と実際の半径方向の位置との間にオフセットがある場合にも、半径方向の位置決め誤差が生じる。そのような場合、磁化ヘッドによって誘導された磁気リング6,7は、ディスク3の中心から一定の広がりを有しているが、意図された広がりではない。それゆえ、全数の磁極対が磁気リング6,7の円周の周りに収まらず、そのことが磁気リング6,7の1つまたは複数の磁極対の長さを不均一にする。
【0105】
各磁気リング6,7の磁極対は、2yの一定の円周長を有するようにされている。磁極の円周方向の長さが磁気リング6,7の周りで均等でない場合、角度方向の間隔誤差が発生する。これは、磁化中にディスク3が磁化ヘッドの下で均等に回転しなかった場合に発生するかもしれない。磁極が一様な長さではない場合、検知位置は不正確になる。
【0106】
半径方向の位置決め誤差および角度方向の間隔誤差は、不規則で回転軸と同心ではない磁極パターンをもたらす。必要な位置測定の精度は、それが何に使用されているかによる。ロボット工学、特に外科用ロボット工学の分野では、位置測定は非常に正確である必要がある。ロボットアームの全てのジョイントの位置測定は、エンドエフェクタの位置を決定するためにロボットアームの既知のレイアウトと組み合わせて使用される。エンドエフェクタの位置は、それを制御して患者内の組織を縫合するなどの細かい制御が必要とされる手術を実行するために高精度で知る必要がある。位置測定は、±25μmの精度を有することが必要とされることがあり、その精度は[数1]によって決定される。前述のように、必要とされる精度は、検出する必要がある回転角によって変わる。検出する必要がある回転角が大きいほど、要求される精度も高くなる。
【0107】
ディスク3の全ての磁気リングは、同じ磁化治具上で同時に磁化される。磁化治具は、ディスク3上の磁化されるべき磁気リングと同数の磁化ヘッドを有している。各磁化ヘッドは1つの磁気リングの磁極対パターンを誘導する。代表的な実施形態では、2つの磁気リング上の磁極の配置間の差は、(±2y×(1/2)×(1/Σ磁極対))の範囲内で正確である。同じ設定を使用してすべての磁気リングを同時に磁化することによって、あらゆる半径方向の位置決め誤差がすべての磁気リングにわたって一貫して適用される。同様に、ディスク3が一様な速度で回転していないことに起因するいかなる角度方向の間隔誤差も、すべての磁気リングにわたって一貫して適用されることになる。これらの系統的誤差は全ての磁気リングの磁極対に等しく影響を及ぼし、それゆえ、2つの磁気リング上の磁極の配置間の差によってもたらされる誤差は、2つのリングに個別にもたらされる誤差の合計よりも小さくなる。したがって、所望の精度を達成するために両方のリングが一緒に磁化されるときに磁化に要求される許容誤差は、リングが個々に磁化される場合に要求される許容差に対して有意である(ほぼ半分である)。系統的誤差は位置測定において検出可能で、補償されてもよい。例えば、
図5を参照すると、実線プロットの実測値における誤差の一部は系統的であり、これは実線が理論値から一貫してオフセットされているという事実から分かる。このオフセットは、おそらく上述したタイプの磁化誤差によるものである。この一定のオフセットは、より正確な結果を生み出すために決定され除去され得る。
【0108】
磁化治具の磁化ヘッドは、それが磁化治具に取り付けられるときにディスク3の回転中心から同じ半径方向の線上に配置されていてもよい。これにより、磁化中にディスク3の回転が不均一になることによって生じる誤差が、同じ半径方向の線に沿ってすべての磁気リングに確実に適用される。位置検出装置の磁気センサアレイは、ディスク3が関節構造に取り付けられたときにディスク3の回転中心から同じ半径方向の線上に配置される。磁気センサアレイは、磁化ヘッドが磁化中に配置されるのと同じディスク3に対して同じ位置および向きに配置される。
【0109】
磁気センサアレイ内のセンサはモノリシックであってもよい。同じプロセスでセンサを形成することによって、いかなる誤差もセンサ間で一致し、したがって、いかなる誤差も位置測定値を生成するためにセンサ読取値が評価されているときに系統的誤差としてより容易に識別される。
【0110】
ディスク3の磁気リング上の磁極対の数の値m、n、hなどは、他の制約内でできるだけ大きくなるように選択されてもよい。これにより、その後の測定の精度が向上し、したがって製造工程によってもたらされる同心度誤差および位置誤差が減少する。
【0111】
ディスク3は、磁化治具に取り付けられているのと同じ構成で関節構造に取り付けられている。言い換えれば、ディスク3は、磁化治具に取り付けられているのと同じ位置および向きで関節構造に取り付けられている。好ましくは、ディスク3が磁化治具および関節構造に取り付け可能である唯一の単一の向きがあることが望ましい。ディスク3は、磁化治具に取り付けられたのと同じ構成でユーザがディスク3を関節構造に取り付けるのを助ける取付装置を備えている。
【0112】
図9は、代表的な取付装置を示す図である。取付装置は、一組のスルーホール60a、60b、60c、60dを含んでいる。これらのスルーホール60a、60b、60c、60dはディスク3上に非対称パターンを形成している。スルーホール60a、60b、60c、60dは、ディスク3を磁化治具および関節構造上の相補的形状に取り付けることを可能にしている。これらの相補的形状は、ディスク3上のスルーホール60a、60b、60c、60dの非対称パターンと同じ非対称パターンで配置されている。例えば、ディスク3は、ディスク3上のスルーホール60a、60b、60c、60dのパターンと同じ配置で磁化治具/関節構造から突き出ているピンに取り付けられていてもよい。この例では、ディスク3は、磁化治具/関節構造に対してディスク3を保持する保持機構によって磁化治具/関節構造に固定されている。例えば、ピンはねじ付きピンであってもよく、ねじ付きナットがねじ付きピンにねじ込まれてディスク3を磁化治具/関節構造に保持するようになっていてもよい。別の例では、磁化治具/関節構造は、ディスク3上のスルーホール60a、60b、60c、60dのパターンと同じ非対称パターンのねじ付き凹部を有していてもよい。ディスク3は、スルーホール60a、60b、60c、60dを通してねじ付き凹部内にディスク3を磁化治具/関節構造に対してネジ止めすることによって磁化治具/関節構造に保持していてもよい。
【0113】
図9は、取付装置の取付形状としてのスルーホール60a、60b、60c、60dを示す。しかしながら、相補的形状が磁化治具/関節構造に同じ非対称パターンで提供される限り、そしてディスク3が取付形状と相補的形状によって磁化治具/関節構造に固定されることができる限り、他のタイプの取付形状が望ましい。例えば、ディスク3上の取付形状はピンであってもよく、磁化治具/関節構造は相補的形状を有している。
【0114】
それゆえ、
図9に示されているオフセット取付形状パターンの使用は、ディスク3を単一の向きでのみ相補的な磁化治具/関節構造に取り付けることを可能にする。
【0115】
図9はまた、さらなる代表的な取付装置を示す。取付装置は、1つ以上の位置合わせノッチ61を含んでいる。磁化治具または関節構造上に取り付けられたとき、位置合わせノッチ61は、磁化治具/関節構造上の相補的形状に位置合わせされる。これにより、磁化治具と関節構造の両方に取り付けられたときにディスク3が同じ向きになることを可能にする。
図9は位置合わせノッチ61を示しているが、対応するマーキングが磁化治具/関節構造上に提供されてディスク3のマーキングを位置合わせする限り、ディスク3上のマーキングの種類は任意のものでよい。
【0116】
製造中に一旦ディスク3が磁化されると、磁極位置を正確に測定し記録することができる。各磁極の長さ、または意図した長さからの各磁極の長さの誤差が記録されていてもよい。ディスク3の回転軸と磁極との間の半径方向の距離が記録されてもよい。これらの測定値はプロセッシングユニット14に記録されていてもよい。磁極位置のこの特徴は、製造中にもたらされた誤差を補償するために、位置センサの使用に続いて用いられてもよい。ディスク3が磁化治具に取り付けられたのと同じ向きで関節構造に取り付けられることを確実にする取付装置を用いることによって、プロセッシングユニット14は、センサアレイのセンサからの感知データを磁気リングの記録された特徴付けデータにマッピングすることができる。そして、それにより既知の製造誤差を修正し、それによってより正確な位置測定をもたらす。
【0117】
代替的に又は追加的に、位置検出装置は較正されていてもよい。較正プロセスは、より正確な補正位置読取値を生成するために位置読み取りに続いて適用される補正関数を生成することを含んでいる。
【0118】
図10は、磁気リングが磁気センサアレイに対して回転するときに磁気センサアレイによって検出される磁界を示す。70は第1の磁極対から検出された磁界を示すグラフの部分を示し、71は第2の磁極対から検出された磁界を示すグラフの部分を示す。個々のセンサは、磁極対に対して1、2、3および4と印を付けた位置に配置されていてもよい。言い換えれば、前述したように、センサの中心は磁極対の長さの4分の1だけ離れている。外側のセンサの中心(1と4とマークされている)は、磁極対の長さの4分の3離れている。理論的には、磁界は、磁気リングが磁気センサアレイを通過するにつれて正弦波的に変化し、正弦波の1周期が1つの磁極対を表している。しかしながら、磁気リングの製造および磁気センサアセンブリと磁気リングとの位置合わせにおける不完全性は、磁界を完全な正弦波から逸脱させる。
【0119】
図11は、単一の磁極対が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された理論的なセンサ読取値を示す。この理論的なセンサ読取値はマルチビットであり、
図11の線72で表されている。
図11はまた、単一の磁極対が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された実際のセンサ読取値を示す。実際のセンサ読取値はマルチビットであり、
図11の曲線73で表されている。
【0120】
ここで、
図11に示す誤差に対して、測定されたセンサ位置読取値を補正することを目的とした較正プロセスについて説明する。このプロセスはディスク3の各磁気リングに個別に適用される。
【0121】
第1に、位置読取値73が磁気リングの各磁極対に対して磁気センサアレイによって取得される。この位置読取値は、以下ではその磁極対に対する較正磁極対位置読取値と呼ばれる。各磁極対に対して、その磁極対についての磁極対補正関数を生成するために、較正磁極対位置読取値73がモデル磁極対位置読取値72と比較される。
図11から分かるように、較正磁極対位置読取値73の曲線は、モデル磁極対位置読取値72の直線周りに振動する。較正磁極対位置読取値73の曲線は、モデル磁極対位置読取値72の直線周りに周期的に振動していてもよい。各磁極対に対して、磁極対補正関数は、較正磁極対位置読取値73に曲線をフィッティングし、次いでフィッティングされた曲線からモデル磁極対位置読取値の直線を差し引くことによって生成されていてもよい。この曲線は、最小二乗法を使用してフィッティングされていてもよい。あるいは、この曲線は当技術分野で公知の他の方法を使用してフィッティングされていてもよい。フィッティングされた曲線は、周期的に振動する関数によって記述されていてもよい。例えば、フィッティングされた曲線は正弦関数であってもよい。
図12は、振幅Aの正弦波である磁極対の補正関数を示している。言い換えれば、Asinθであり、ここで、θは磁極対正弦波内の角度である。
図12は第1次高調波であるAsinθのみを示しているが、より高次の高調波が磁極対の補正関数に含まれていてもよい。
【0122】
次に、磁気リングの磁極対の磁極対補正関数を平均して、磁気リングの平均磁極対補正関数を生成する。各磁極対の補正関数が正弦波で表される場合、平均磁極対補正関数は次式で与えられる。
【0123】
【0124】
好ましくは、この補正関数はプロセッシングユニット14に記憶されていることが望ましい。続いて、位置センサが位置測定を行うときには、位置測定は平均磁極対補正関数を用いて補正される。位置測定は、複数の磁極対位置読取値を含んでいる。平均磁極対補正関数は、位置測定値の各磁極対位置読取値から差し引かれ、それによって補正位置測定値が生成される。
【0125】
磁気リングの各磁極対の位置読取値から平均磁極対補正関数を差し引くことは、各個々の磁極対の誤差を利用するよりも正確ではない。しかしながら、磁気リング毎に1つの平均磁極対補正関数のみを記憶することは、補正に必要なメモリ使用量を減少させる。また、平均磁極対補正関数を差し引くことは、個々の磁極対誤差を使用するよりもアルゴリズム的に複雑ではないので、補正に必要な処理能力が減少する。
【0126】
図13は、磁気リング全体が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された理論的センサ読取値を示す。これらの理論的センサ読取値はマルチビットであり、
図13の線74によって表されている。
図13はまた、磁気リング全体が磁気センサアセンブリを通過する間に取得された実際のセンサ読取値を示している。これらの実際のセンサ読取値はマルチビットであり、
図13の曲線75で表されている。曲線76は、
図10から
図12に関して説明したように磁極対誤差に対して補正された実際のセンサ読取値を表す。
図13は、実際のセンサ読取値のさらなる誤差を示す。この誤差は、直線74で表される理論的センサ読取値と比較してほぼ正弦波誤差である。
【0127】
図13に示されたさらなる誤差に対して測定されたセンサ位置読取値を補正することを目的とする較正プロセスがここで説明される。このプロセスはディスクの各磁気リングに個別に適用される。
【0128】
第1に、位置読取値73が磁気リングの各磁極対について磁気センサアレイによって取得される。上記のように、この位置読取値は、その磁極対に対する較正磁極対位置読取値と呼ばれる。各磁極対に対して、較正磁極対位置読取値73をモデル磁極対位置読取値72と比較して、上述したようにその磁極対についての磁極対補正関数を生成する。次に、各磁極対に対して、その磁極対に対する較正磁極対位置読取値から磁極対補正関数を差し引くことによって、補正された較正磁極対位置読取値が生成される。
図13の例では、曲線76は磁気リングの全ての磁極対の補正された較正磁極対位置読取値を表す。
【0129】
次に、磁気リング上の全ての磁極対に対する補正された較正磁極対位置読取値をモデル回転位置読取値と比較することによって回転補正関数が生成される。
図13から分かるように、補正された較正磁極対位置読取値76の曲線は、モデル回転位置読取値74の直線の周りで振動する。補正された較正磁極対位置読取値76の曲線は、モデル回転位置読取値74の直線周りに周期的に振動してもよい。回転補正関数は、補正された較正磁極対位置読取値76に曲線をフィッティングし、そしてフィッティングされた曲線からモデル回転位置読取値74の直線を差し引くことによって生成されていてもよい。この曲線は、最小二乗法を使用してフィッティングされていてもよい。あるいは、曲線は当技術分野で公知の他の方法を使用してフィッティングされていてもよい。フィッティングされた曲線は、周期的に振動する関数によって記述されていてもよい。例えば、フィッティングされた曲線は正弦関数であってもよい。正弦関数は振幅Bの正弦波、すなわちBsinφであってもよく、ここでφは回転正弦波内の角度である。この例では、フィッティングされた曲線は第1次高調波Bsinφのみであるが、より高次の高調波が含まれていてもよい。
【0130】
回転補正関数はプロセッシングユニット14に記憶されていてもよい。続いて、位置センサが位置測定を行うとき、位置測定値から回転補正関数を差し引くことにより回転補正関数を使用して位置測定が補正される。
【0131】
説明した両方の較正機構を位置測定値に対して実行してもよく、これにより位置測定値は平均磁極対補正関数と回転補正関数の両方を使用して補正される。あるいは、較正機構のうちの1つのみが実行されてもよい。この単一の較正機構は、平均磁極対補正機構でも回転補正機構であってもよい。
【0132】
較正機構は、磁気ディスクが回転ジョイントまたは関節構造内で相対的な回転が感知されている他のエレメントに取り付けられた後に実行されてもよい。この段階で較正を実行することによって、製造中に導入された誤差だけでなく、位置センサを適所に組み立てる間に(例えば、磁気センサアセンブリを磁気ディスク上に位置合わせさせるときに)導入される誤差を検出し補償されていてもよい。センサは、上述の較正機構を使用して、使用中に再較正されてもよい。較正機構は製造中に実行されてもよく、位置センサは、上述の補正関数を備え、補正関数はプロセッシングユニット14に記憶されており、その後使用中に測定位置読取値に上述の補正関数が適用される。
【0133】
ロボット工学、特に外科用ロボット工学の分野では、ロボットアームは可能な限り小型で軽量であることが望ましい。ロボットアームの各ジョイントに使用される位置センサもまた小型で軽量であることが望ましい。例えば、ディスク3はアルミニウム製でもよい。この分野では、ロボットアーム上でその場でディスク3を磁化することは実用的ではない。ロボットアームのコンパクトな性質のために、ディスク3を磁化するためにロボットアームの周りに標準的な磁化治具を適用するためのスペースが十分ではない。さらに、ディスク3を磁化するために、磁化の間にディスク3に対して磁気バックプレートが使用される。このバックプレートとしては、例えば鋼が用いられる。その場でディスク3を磁化するためには、ディスク3は鋼鉄または他の磁性材料で作られる必要がある。これは、ディスク3をアルミニウムのような軽量材料で作ることを妨げるであろう。それゆえ、ディスク3はその場で磁化されないが、その代わりに、製造中に導入された誤差を補償するために、関節構造において磁化治具環境を再現する本明細書に記載されている手段がとられている。
【0134】
出願人はこれによって、ここに記載の分離した各個別の特徴および2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを開示しており、そのような特徴または特徴の組み合わせが当業者の共通の一般的な知識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることが可能な程度に開示されている。なお、そのような特徴または特徴の組合せが本明細書に開示される任意の問題を解決するかどうかは関係がなく、またかかる具体的記載が特許請求の範囲を限定するものでもない。出願人は、本発明の態様は、このような個々の特徴または特徴の組み合わせから成ってもよいことを示している。以上の説明に鑑みて、種々の改変が本発明の範囲内でなされ得ることは当業者にとって明らかであろう。