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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026897
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】測位装置、及び測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20230221BHJP
【FI】
G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132332
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】栃村 雄哉
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062AA12
5J062BB03
5J062CC07
5J062CC17
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようにする。
【解決手段】測位装置は、観測局から観測データを受信する観測データ受信部と、複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、受信した観測データと測位信号とを用いて、観測局の設置位置を基準位置とする第1の相対測位により、第1の時刻における移動体の第1の位置を測位する第1の測位部と、第1の時刻より前の第2の時刻における移動体の位置に基づいて、第1の時刻における移動体の第2の位置を測位する第2の測位部と、第1の位置と第2の位置との差が所定値以上である場合、第2の位置を第1の時刻における移動体の位置として測位結果を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに前記移動体の位置を測位する測位装置であって、
複数の測位衛星についての観測データを取得する、設置位置が既知の観測局から前記観測データを受信する観測データ受信部と、
前記複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、
前記観測データ受信部が受信する前記観測データと、前記測位信号受信部が受信する前記測位信号とを用いて、前記設置位置を基準位置とする第1の相対測位により、第1の時刻における前記移動体の第1の位置を測位する第1の測位部と、
前記第1の時刻より前の第2の時刻における前記移動体の位置に基づいて、前記第1の時刻における前記移動体の第2の位置を測位する第2の測位部と、
前記第1の位置と前記第2の位置との差が所定値以上である場合、前記第2の位置を前記第1の時刻における前記移動体の位置として測位結果を出力する出力部と、
を有する、測位装置。
【請求項2】
前記第2の測位部は、前記第2の時刻における前記移動体の位置を前記設置位置の代わりに前記基準位置として用いる第2の相対測位により、前記第2の位置を測位する、請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記第2の測位部は、前記複数の測位衛星から受信した複数の測位信号のドップラー周波数から算出した前記移動体の速度、及び方向により、前記第2の位置を測位する、請求項1に記載の測位装置。
【請求項4】
前記第2の時刻は、前記第1の時刻より、前記測位周期の1測位周期前の時刻である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項5】
前記出力部は、
前記第2の時刻における前記移動体の前記第1の位置から前記第1の時刻における前記移動体の前記第1の位置までの変化分と、前記第2の時刻における前記移動体の前記第1の位置から前記第1の時刻における前記移動体の前記第2の位置までの相対位置と、の差の絶対値が前記所定値以上である場合、前記第2の時刻における前記移動体の前記第1の位置に、前記相対位置を加算した前記第2の位置を、前記第1の時刻における前記移動体と位置として出力する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記第1の測位部は、RTK-GNSSにより前記移動体の前記第1の位置を測位する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項7】
前記第1の測位部による前記第1の位置の測位結果がフィックス状態であり、かつ前記第1の位置と前記第2の位置との差が所定値以上である場合、前記フィックス状態がミスフィックスであると判断する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測位装置。
【請求項8】
移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに前記移動体の位置を測位する測位装置が、
複数の測位衛星についての観測データを取得する、設置位置が既知の観測局から前記観測データを受信する観測データ受信処理と、
前記複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信処理と、
前記観測データ受信処理で受信する前記観測データと、前記測位信号受信処理で受信する前記測位信号とを用いて、前記設置位置を基準位置とする第1の相対測位により、第1の時刻における前記移動体の第1の位置を測位する第1の測位処理と、
前記第1の時刻より前の第2の時刻における前記移動体の位置に基づいて、前記第1の時刻における前記移動体の第2の位置を測位する第2の測位処理と、
前記第1の位置と前記第2の位置との差が所定値以上である場合、前記第2の位置を前記第1の時刻における前記移動体の位置として測位結果を出力する出力処理と、
を実行する、測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信した搬送波の位相に基づいて、移動体の位置を推定する搬送波位相測位が知られている。搬送波位相測位の1つであるRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)では、国土地理院によって設置されている電子基準点からの観測データを用いて、移動体の絶対位置を高い精度で推定することが行われている。
【0003】
これに関連する技術として、標高、方位角又は緯度経度の変化を対象物の運動性能限界能力と比較し、変化が運動性能限界能力を超えている場合の測位解を、誤り測位解(ミスフィックス)と判定する誤り測位解検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、自動車の回転半径を加速度計で測定した加速度と、GNSSの搬送波のドップラー効果による速度を統合、積算して求める技術知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-141684号公報
【特許文献2】特開2013-50392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RTK-GNSSでは、測位結果と同時に出力される判定値によって、所定の測位精度が得られたか否かを判定し、所定の測位精度が得られた状態をフィックス状態、所定の測位精度が得られない状態をフロート状態と呼ぶ。このときに、確率統計的な判定によりフィックス状態であるか否かを判定しているが、所定の測位精度が得られていないにもかかわらず、誤ってフィックス状態と判定してしまう「ミスフィックス」が発生する場合がある。
【0007】
特許文献1に開示された技術では、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値を用いてミスフィックスの検出と訂正を行っているが、機器点数が多いため、例えば、ドローン等の小型、軽量化が求められる用途には不向きであるという問題がある。
【0008】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る測位装置は、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに前記移動体の位置を測位する測位装置であって、複数の測位衛星についての観測データを取得する、設置位置が既知の観測局から前記観測データを受信する観測データ受信部と、前記複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、前記観測データ受信部が受信する前記観測データと、前記測位信号受信部が受信する前記測位信号とを用いて、前記設置位置を基準位置とする第1の相対測位により、第1の時刻における前記移動体の第1の位置を測位する第1の測位部と、前記第1の時刻より前の第2の時刻における前記移動体の位置に基づいて、前記第1の時刻における前記移動体の第2の位置を測位する第2の測位部と、前記第1の位置と前記第2の位置との差が所定値以上である場合、前記第2の位置を前記第1の時刻における前記移動体の位置として測位結果を出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る測位システムの例を示す図である。
図2】一実施形態に係る測位装置の測位結果の例について説明するための図である。
図3】一実施形態に係る測位装置のハードウェア構成の例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る測位装置の機能構成の例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る測位装置の処理の例を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る測位方法について説明するための図である。
図7】第2の実施形態に係る測位装置の処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0013】
<測位システム>
図1は、一実施形態に係る測位システムの例を示す図である。測位システム1は、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとにRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)で移動体の位置を測位する測位装置100を含むシステムである。RTK-GNSSによる測位は、観測局10と、測位装置100とで測位衛星5から出力される測位信号を受信し、測位衛星5と測位装置100との間の距離を計測し、複数の測位衛星5についての連立方程式を解くことで測位装置100の3次元座標を算出する。
【0014】
ここでは、GNSSの一例であるGPS(Global Positioning System)を用いる形態について説明するため、測位衛星5から出力される測位信号はGPS信号である。ただし、これに限られず、GNSSは、例えば、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、又はGallileo等の他のGNSSを利用して3次元座標を算出しても良い。
【0015】
図1において横軸は時間軸を表す。ここでは、一例として、測位装置100が移動体の一例であるドローン20に搭載されている形態について説明する。RTK-GNSSでは、測位装置100は、観測局10から受信した観測データと、測位衛星5から受信した測位信号とを用い、観測局10の設置位置を基準位置とする相対測位によって、測位装置100の位置を測位する。ここでは、測位装置100の位置はドローン20の位置と同義である。
【0016】
観測局10は、正確な設置位置(緯度、経度、標高を表す3次元座標)が既知であり、複数の測位衛星5からGPS電波を受信(取得)して各測位衛星5までの距離を測定する。観測局10は、設置位置を表す位置データと、各測位衛星5までの距離を表す距離データとを含む観測データを常時出力している。観測データに含まれる距離データは、所定期間Tごとに更新される。観測局10と複数の測位衛星5との位置関係が変動するためである。観測局10には、例えば、国土地理院によって設置されている電子基準点等が含まれる。
【0017】
ドローン20は、移動体の一例であり、測位装置100を搭載する無人航空機である。ドローン20は、一例として、測位装置100によって測位されるドローン20の位置を表す3次元座標に基づいて、ドローン20の航行制御を行う航行制御装置を有している。
【0018】
RTK-GNSSでは、測位結果と同時に出力される判定値によって、所定の測位精度が得られたか否かを判定し、所定の測位精度が得られた状態をフィックス状態、所定の測位精度が得られない状態をフロート状態と呼ぶ。例えば、図1に示す時刻t-1においてフィックス状態であったとしても、次の測位周期である時刻tではフロート状態に変化する場合がある。
【0019】
一般的にRTK-GNSSでは、フィックス状態においては、観測局10の観測データに基づいて測位を行うことによって数センチメートル程度の高い測位精度が得られる。しかしながら、フロート状態においては、観測局10との間の距離が長いことや、観測データの更新のタイミングからの経過時間が長いこと等の要因によって、測位精度が数メートル程度にまで劣化する場合がある。
【0020】
またRTK-GNSSでは、確率統計的な判定によりフィックス状態であるか否かを判定しているが、所定の測位精度が得られていないにもかかわらず、誤ってフィックス状態と判定してしまう「ミスフィックス」が発生する場合がある。ミスフィックスが発生すると、フィックス状態における数センチメートル程度の高い測位精度を得ることができない。
【0021】
そのため、特許文献1に開示された技術では、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値を用いてミスフィックスの検出と訂正を実施しているが、機器点数が多いため、例えば、ドローン等の小型、軽量化が求められる用途には不向きであるという問題がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置100において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようにする。
【0023】
例えば、測位装置100は、RTK-GNSSにより、ドローン(移動体)20の位置(第1の位置)を測位するとともに、例えば、1測位周期前のRTK-GNSSによる絶対位置を基準位置とした相対測位により、ドローン20の位置(第2の位置)を測位する。
【0024】
図1の例では、測位装置100は、時刻t(第1の時刻)において、観測局10の設置位置を基準位置とする第1の相対測位(RTK-GNSS)により、ドローン20の位置(第1の位置)を測位する。また、測位装置100は、時刻tより1測位周期前の時刻t-1(第2の時刻)において、RTK-GNSSで測位したドローン20の位置を、基準位置として用いる第2の相対測位により、ドローン20の位置(第2の位置)を測位する。ここで、第2の相対測位は、1測位周期前の測位装置100の測位結果を基準とするため、ミスフィックスが発生し難い。
【0025】
例えば、測位装置100は、RTK-GNSSでフィックス状態のとき、RTK-GNSS(第1の相対測位)で測位した第1の位置と、1測位周期前のドローン20の位置を基準位置とする第2の相対測位で測位した第2の位置とを比較する。また、測位装置100は、第1の位置と第2の位置との差が所定値以上である場合、ミスフィックスであると判断する。ミスフィックス状態では、多くの場合、測位した第1の位置が、通常のフィックス状態で測位した第1の位置より、数メートルから数十メートルの差分が生じるため、測位装置100は、第1の位置と第2の位置との差の大きさにより、ミスフィックスが発生したことを判断することができる。
【0026】
ミスフィックスと判断した場合、測位装置100は、第2の相対測位で測位した第2の位置を、ドローン20の位置として出力する。なお、測位装置100が、ミスフィックスが発生したか否かを判断する処理はオプションであり、必須ではない。例えば、測位装置100は、ミスフィックスが発生したか否かの判断を省略して、第1の相対測位で測位した第1の位置と、第2の相対測位で測位した第2の位置との差が所定値以上である場合に、第2の相対測位で測位した第2の位置を、ドローン20の位置として出力しても良い。
【0027】
図2は、一実施形態に係る測位装置の測位結果の例について説明するための図である。図2(A)は、従来の技術で所定の時間測位した測位結果の例を示している。従来の技術では、ミスフィックスが発生すると、図2(A)に示すように、ミスフィックスが発生していないときの測位結果211から数メートル離れたエリア212に、誤った測位結果213が出力される場合がある。
【0028】
一方、本実施形態に係る測位装置100は、例えば、図2(A)に示すようなミスフィックスが発生した場合、誤った測位結果213に代えて、1測位周期前の測位結果に基づく第2の相対測位による第2の位置を測位結果として出力する。従って、例えば、図2(B)に示すように、ミスフィックスが発生した場合でも、ミスフィックスが発生していないときの測位結果221から数メートル離れたエリアに、誤った測位結果が出力されてしまうことを解消することができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置100において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようになる。
【0030】
<ハードウェア構成>
図3は、一実施形態に係る測位装置のハードウェア構成の例を示す図である。測位装置100は、一例として、CPU(Central Processing Unit)301、メモリ302、ストレージデバイス303、WAN(Wide Area Network)通信装置304、GNSS受信装置305、I/F(Interface)306、及びバス307等を有する。
【0031】
CPU301は、例えば、ストレージデバイス303等の記憶媒体に格納された所定のプログラムを実行することにより、測位装置100の全体を制御するプロセッサである。メモリ302は、例えば、CPU301のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリであるRAM(Random Access Memory)、及びCPU301の起動用のプログラム等を記憶した不揮発性のメモリであるROM(Read Only Memory)等を含む。ストレージデバイス303は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)等の不揮発性、かつ大容量の記憶デバイスである。
【0032】
WAN通信装置304は、無線WAN通信により、測位装置100をインターネット等の通信ネットワークに接続し、観測局10と通信するための通信デバイス、及びアンテナ等を含む。GNSS受信装置305は、複数の測位衛星5から測位信号を受信する受信デバイス、及びアンテナ等を含む。I/F306は、例えば、ドローン20の航行制御を行う航行制御装置等と、測位装置100とを接続するためのインタフェースである。バス307は、上記の各構成要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号、及び各種の制御信号等を伝送する。
【0033】
[第1の実施形態]
<機能構成>
図4は、第1の実施形態に係る測位装置の機能構成の例を示す図である。測位装置100は、例えば、CPU301が、ストレージデバイス303等の記憶媒体に記憶したプログラムを実行することにより、図4に示すような機能構成を実現している。図4の例では、測位装置100は、観測データ受信部401、測位信号受信部402、第1の測位部403、記憶部404、第2の測位部405、及び出力部406等を有している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0034】
観測データ受信部401は、例えば、WAN通信装置304を用いて、観測局10から観測データを受信する観測データ受信処理を実行する。測位信号受信部402は、例えば、GNSS受信装置305を用いて、複数の測位衛星5から測位信号を受信する測位信号受信処理を実行する。
【0035】
第1の測位部403は、観測データ受信部401が受信する観測データと、測位信号受信部402が受信する測位信号とを用いて、観測局10の設置位置を基準位置とする第1の相対測位により、ドローン20の第1の位置を測位する第1の測位処理を実行する。第1の測位部403は、一例として、1つの周波数帯のGPS信号を受信し、受信したGPS信号と、観測局10から受信した観測データとに基づいて測位装置100の位置を測位する1周波RTKにより、第1の時刻におけるドローン20の第1の位置を測位する。
【0036】
例えば、第1の測位部403は、測位周期ごとにRTK-GNSSによってドローン20の位置を測位するために、受信した測位信号と、受信した観測データとに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺する。また、第1の測位部403は、誤差を相殺した測位信号に基づいて観測局10の設置位置に対する測位装置100の相対的な位置を求め、求めた相対的な位置と、観測局10の設置位置とに基づいて、ドローン20の第1の位置を求める。第1の測位部403は、求めたドローン20の第1の位置を、時刻情報と共に、記憶部404に記憶する。
【0037】
記憶部404は、例えば、CPU301が実行するプログラムと、ストレージデバイス303、又はメモリ302等とによって実現され、測位装置100の第1の位置、及び時刻情報等を含む様々な情報を記憶する。
【0038】
第2の測位部405は、第1の時刻より前の第2の時刻におけるドローン20の位置を、観測局10の設置位置の代わりに基準位置として用いる第2の相対測位により、第1の時刻におけるドローン20の第2の位置を測位する第2の測位処理を実行する。
【0039】
例えば、第2の測位部405は、1測位周期前に測位したドローン20の位置を基準位置として用い、1測位周期前に測位装置100が観測した観測データ(例えば、絶対位置、及び複数の衛星までの距離、位相等)と、測位信号受信部402が受信した測位信号とに基づいて、RTK-GNSSと同様にして測位信号に含まれる誤差を相殺する。また、第2の測位部405は、誤差が相殺された測位信号を用いて基準位置に対するドローン20の位置を求め、基準位置と、基準位置に対するドローン20の位置とに基づいてドローン20の絶対位置(第2の位置)を測位する。ドローン20の第2の位置は、基準位置の座標に、基準位置に対するドローン20の相対位置を表す座標の差分を加えることで求めることができる。
【0040】
出力部406は、第1の時刻に、第1の測位部403が測位した第1の位置と第2の測位部405が測位した第2の位置との差が所定値以上である場合、第2の位置を第1の時刻におけるドローン20の位置として測位結果を出力する出力処理を実行する。
【0041】
例えば、第1の測位部403は、図1の時刻t(第1の時刻)において、観測局10の設置位置を基準位置とする第1の相対測位(RTK-GNSS)により、時刻tにおけるドローン20の絶対位置Aを測位する。このとき、出力部406は、記憶部404に記憶されている時刻t-1におけるドローン20の絶対位置Bから、絶対位置Aまでの変化分Cを算出する。
【0042】
また、第2の測位部405は、絶対位置Bを基準位置として用いる第2の相対測位により、時刻tにおけるドローン20の相対位置Dを測位する。この相対位置Dは、例えば、図1において、時刻t-1におけるドローン20の位置を基準とした、時刻tにおけるドローン20の相対位置30を示す。さらに、第2の測位部405は、絶対位置Bに相対位置Dを加算して、時刻tにおけるドローン20の絶対位置(第2の位置)を測位する。
【0043】
出力部406は、絶対位置Bから絶対位置Aまでの変化分Cと、ドローン20の相対位置との差の絶対値Eを算出する。この絶対値Eは、時刻t(第1の時刻)に、第1の測位部403が測位した第1の位置と、第2の測位部405が測位した第2の位置との差を表している。
【0044】
出力部406は、算出したEの値が所定値(例えば、1メートル)以上である場合、絶対位置Bに相対位置Dを加算した結果(第2の位置)を、時刻tにおけるドローン20の位置として測位結果を出力する。上記の測位方法の処理の流れを、図5のフローチャートに示す。
【0045】
<処理の流れ>
図5は、第1の実施形態に係る測位装置の処理の例を示すフローチャートである。測位装置100は、図5に示す処理を、例えば、所定の測位周期T(例えば、0.1秒~数秒程度)ごとに繰り返し実行する。
【0046】
ステップS501において、第1の測位部403は、観測局10の設置位置を基準位置とする第1の相対測位(RTK-GNSS)により、図1の時刻t(第1の時刻)の絶対位置A(第1の位置)を測位する。
【0047】
ステップS502において、出力部406は、図1の時刻t-1(第2の時刻)において、測位装置100が出力したドローン20の絶対位置Bから、ステップS501で測位したドローン20の絶対位置Aまでの変化分Cを算出する。
【0048】
ステップS503において、第2の測位部405は、上述した絶対位置Bを基準位置として用いる第2の相対測位(本実施形態ではセルフRTKと呼ぶ)により、時刻tにおけるドローン20の相対位置D(絶対位置Bからの相対位置)を測位する。また、第2の測位部405は、絶対位置Bに、相対位置Dを加算することにより、第2の相対測位で測位した時刻tにおけるドローン20の絶対位置(第2の位置)を算出する。
【0049】
ステップS504において、出力部406は、ステップS502で算出した変化分Cと、ステップS503で測位した相対位置Dの差の絶対値Eを算出する。この絶対値Eは、いずれも、時刻t-1に測位装置100が測位したドローン20の絶対位置を起点としているため、実質的に、時刻tにおける第1の測位部403が測位した第1の位置と第2の測位部405が測位した第2の位置との差を表している。
【0050】
ステップS505において、出力部406は、ステップS504で算出したEの値が、例えば、1メートル以上であるか否かを判断する。ここで、1メートルは所定の値の一例である。所定の値は、時刻tにおいて、第1の測位部403が測位した第1の位置が、RTK-GNSSのフィックス状態の測位精度(例えば、センチメートル単位の測位精度)を有しているか否かを判断するためのしきい値を予め定めておくものとする。
【0051】
Eの値が1メートル以上である場合、出力部406は、処理をステップS506に移行させる。一方、Eの値が1メートル未満である場合、出力部406は、処理をステップS507に移行させる。
【0052】
ステップS506に移行すると、出力部406は、第2の測位部405が、絶対位置Bに相対位置Cを加算して求めた結果(第2の位置)を、時刻tのドローン20の絶対位置として出力する。
【0053】
一方、ステップS507に移行すると、出力部406は、第1の測位部403が測位した絶対位置A(第1の位置)を、時刻tにおけるドローン20の絶対位置として出力する。
【0054】
上記の処理により、ドローン(移動体の一例)20に搭載され、所定の測位周期ごとにドローン20の位置を測位する測位装置100において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようになる。
【0055】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、第2の測位部405は、例えば、図1において、時刻t-1におけるドローン20の位置を基準とした、時刻tにおけるドローン20の相対位置30(相対位置D)を、セルフRTKで求めていた。
【0056】
第2の実施形態では、第2の測位部405が、GNSS搬送波のドップラー効果を用いて、時刻t-1におけるドローン20の位置を基準とした、時刻tにおけるドローン20の相対位置30(相対位置D)を求める場合の例について説明する。
【0057】
図6は、第2の実施形態に係る測位方法について説明するための図である。第2の実施形態では、測位装置100の第2の測位部405は、測位信号受信部402が複数の測位衛星5から受信した複数のGNSS搬送波のドップラー効果から、ドローン20の速度と方向を表すベクトルを求める。ドップラー効果は、GNSS搬送波の発生源である測位衛星5、及び測位装置100が移動することにより、GNSS搬送波の周波数観測値が変化する現象である。
【0058】
例えば、第2の測位部405は、測位信号受信部402が複数の測位衛星5から受信した複数のGNSS搬送波のドップラー周波数を計算する。また、第2の測位部405は、複数のGNSS搬送波のドップラー周波数と、各GNSS搬送波を送信した測位衛星5の位置から、移動体の一例であるドローン20の速度と方向(ベクトル)を算出する。
【0059】
なお、複数のGNSS搬送波のドップラー効果により、移動体の速度、方向等を求める技術は、例えば、特許文献2に示されるように公知なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0060】
オープンスカイ(障害物が少ない上空)環境では、上述した、GNSS搬送波のドップラー効果を用いて、0.03m/sの精度で速度を算出可能とされている。このように、第2の測位部405は、第1の実施形態で説明したセルフRTKに代えて、GNSS搬送波のドップラー効果により、時刻t-1におけるドローン20の位置を基準とした、時刻tにおけるドローン20の相対位置30(相対位置D)を求めても良い。なお、第2の実施形態に係る測位装置100の第2の測位部405以外の機能構成は、例えば、図4で説明した第1の実施形態に係る測位装置100の機能構成と同様で良い。
【0061】
<処理の流れ>
図7は、第2の実施形態に係る測位装置の処理の例を示すフローチャートである。なお、図7に示す処理のうち、ステップS501、S502、S504~S507の処理は、図5で説明した第1の実施形態に係る測位装置の処理と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0062】
ステップS701において、第2の測位部405は、測位信号受信部402が複数の測位衛星5から受信した複数のGNSS搬送波のドップラー周波数により、時刻tにおけるドローン20の相対位置D(絶対位置Bからの相対位置)を算出する。また、第2の測位部405は、絶対位置Bに、相対位置Dを加算することにより、第2の相対測位で測位した時刻tにおけるドローン20の絶対位置(第2の位置)を算出する。
【0063】
このように、第2の実施形態においても、ドローン(移動体の一例)20に搭載され、所定の測位周期ごとにドローン20の位置を測位する測位装置100において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようになる。
【0064】
以上、本発明の各実施形態によれば、移動体に搭載され、所定の測位周期ごとに移動体の位置を測位する測位装置において、ジャイロセンサ、又は加速度センサ等の計測値によらずに、ミスフィックスの訂正を行えるようになる。
【0065】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、又は応用が可能である。例えば、上記の各実施形態では、移動体がドローン20であるものとして説明を行ったが、移動体はドローン20に限られず、例えば、車両、船舶、ロボット、又は有人の航空機等であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 測位システム
5 測位衛星
10 観測局
20 ドローン(移動体の一例)
100 測位装置
401 観測データ受信部
402 測位信号受信部
403 第1の測位部
405 第2の測位部
406 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7