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特開2023-26905性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026905
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230221BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20230221BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132344
(22)【出願日】2021-08-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) ウェブサイトの掲載日:令和3年8月3日 ウェブサイトのアドレス:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210803_1.html (2) 配布日:令和3年8月3日 配布物:プレスリリース「避難安全検証とBIMをデータ連携し、一元化する設計システム「SmartHAK▲TM▼を開発」
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 伸明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】西村 海
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
5B146DC05
5B146DG07
5B146DJ14
5L049CC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させ、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図る性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システムを提供する。
【解決手段】性能検証方法は、部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップS1と、性能検証システムにおいて、空間又は前記部材に関する条件を示すデータを3次元モデルから抽出するデータ抽出ステップS3と、性能検証システムにおいて、構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、データ抽出ステップS3で抽出したデータを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップS5と、を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、
性能検証システムにおいて、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、
前記性能検証システムにおいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出ステップで抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップと、
を行うことを特徴とする性能検証方法。
【請求項2】
請求項1に記載の性能検証方法であって、
前記計算ステップでの計算結果に基づいて前記3次元モデルを再設定することを特徴とする性能検証方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の性能検証方法であって、
前記計算プログラムは、前記構造物の火災継続時間を計算することを特徴とする性能検証方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記計算プログラムは、前記構造物の火災保有耐火時間を計算することを特徴とする性能検証方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記計算プログラムは、前記構造物の火災継続時間を計算する火災継続時間計算プログラムと、前記構造物の火災保有耐火時間を計算する火災保有耐火時間計算プログラムとを備えることを特徴とする性能検証方法。
【請求項6】
請求項5に記載の性能検証方法であって、
前記性能検証システムにおいて、前記火災継続時間及び前記火災保有耐火時間の少なくとも一方が正常か否かを判定する判定ステップを行うことを特徴とする性能検証方法。
【請求項7】
請求項6に記載の性能検証方法であって、
前記判定ステップにおいて、前記火災保有耐火時間が前記火災継続時間以上であるか否かを判定することを特徴とする性能検証方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の性能検証方法であって、
前記判定ステップにおいて前記火災継続時間に異常があると判定した場合に、当該火災継続時間に関連する室を特定することを特徴とする性能検証方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記判定ステップにおいて前記火災保有耐火時間に異常があると判定した場合に、当該火災保有耐火時間に関連する部材を特定することを特徴とする性能検証方法。
【請求項10】
請求項5~9のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記火災継続時間計算プログラムを用いて、火災継続時間計算書を作成し、
前記火災保有耐火時間計算プログラムを用いて、火災保有耐火時間計算を作成することを特徴とする性能検証方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記性能検証システムにおいて、前記3次元モデルに基づいて作成した図面に、前記計算ステップでの計算結果に関する情報を重畳させた図面を出力することを特徴とする性能検証方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の性能検証方法であって、
前記抽出ステップにおいて前記3次元モデルから一次データが抽出された後、前記一次データを前記条件式に入力可能な二次データに変換する前処理ステップが行われ、
前記前処理ステップの後、前記計算プログラムを用いて、前記一次データ及び前記二次データを前記条件式に入力して計算が行われることを特徴とする性能検証方法。
【請求項13】
請求項12に記載の性能検証方法であって、
前記前処理ステップにおいて、前記一次データと前記二次データとを対応付けた変換テーブルに基づいて、前記3次元モデルから抽出した前記一次データを前記二次データに変換することを特徴とする性能検証方法。
【請求項14】
請求項12に記載の性能検証方法であって、
前記前処理ステップにおいて、予め用意された変換式に前記一次データを入力することによって前記二次データを算出することを特徴とする性能検証方法。
【請求項15】
請求項14に記載の性能検証方法であって、
前記抽出ステップにおいて、前記3次元モデルから鋼材の高さ、鋼材の幅、ウェブ厚及びフランジ厚を示す一次データを抽出し、
前記前処理ステップにおいて、鋼材の高さ、鋼材の幅、ウェブ厚及びフランジ厚を示す前記一次データを前記変換式に入力することによって、前記二次データである部材の加熱周長を算出することを特徴とする性能検証方法。
【請求項16】
性能検証システムに、
部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルから、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを抽出する抽出ステップと、
前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出ステップで抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップと、
を実行させることを特徴とする性能検証プログラム。
【請求項17】
部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルから、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを抽出する抽出部と、
前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出部が抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算部と、
を有することを特徴とする性能検証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の性能検証方法、性能検証プログラム及び性能検証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の性能検証方法として、例えば建築基準法施行令の規定に基づく耐火性能検証法がある(非特許文献1)。また、特許文献1、2には、火災継続時間や火災保有耐火時間を算出し、火災リスクを評価することが記載されている。
また、コンピューター等を用いて建物等の構造物の設計などの技術的な検討を行う際に、部材ごとに形状、位置などを示す数値や仕様などの属性情報が付与された3次元モデルを用いることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-206974号公報
【特許文献2】特開2008-262303号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】平成12年5月31日建設省告示第1433号「耐火性能検証法に関する算出方法等を定める件」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BIM(Building Information Modeling)によりコンピューター上で構造物の3次元モデルを作成することが行われている。但し、構造物の3次元モデル(例えばBIMモデル)と、告示文に明示された検証法の計算手続とのデータ連係が行われていないため、耐火性能検証法に基づく計算と、構造物の3次元モデルとの間で入力ミスや見落としによる不整合が生じるおそれがあり、両者の間の整合性の確認に時間や労力がかかっていた。
【0006】
本発明は、構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させることによって、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明は、部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、性能検証システムにおいて、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、前記性能検証システムにおいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出ステップで抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップと、を行うことを特徴とする性能検証方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の概要を示すフロー図である。
図2図2は、本実施形態の性能検証装置100の全体説明図である。
図3図3は、性能検証システム20が行う処理の一例のフロー図である。
図4図4A及び図4Bは、参照テーブル42の一例の説明図である。
図5図5A及び図5Bは、変換テーブル43の一例の説明図である。
図6図6は、室用途とqの値とを対応付けた変換テーブル101の説明図である。
図7図7は、一次データである鋼材の寸法H、B、t1、t2と、二次データとなる「部材の加熱周長H」との関係を示す変換式201の説明図である。
図8図8は、火災継続時間計算書の説明図である。
図9図9は、火災保有耐火時間計算書の説明図である。
図10図10は、火災継続時間を示す平面図である。
図11図11は、判定結果がNG(異常)の部材を示す3次元表示の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルを3次元モデルシステムに設定する3次元モデル設定ステップと、性能検証システムにおいて、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを前記3次元モデルから抽出する抽出ステップと、前記性能検証システムにおいて、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出ステップで抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップと、を行うことを特徴とする性能検証方法が明らかとなる。このような性能検証方法によれば、構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させているため、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【0012】
前記計算ステップでの計算結果に基づいて前記3次元モデルを再設定することが望ましい。これにより、構造物の設計作業が容易になる。
【0013】
前記計算プログラムは、前記構造物の火災継続時間を計算することが望ましい。また、前記計算プログラムは、前記構造物の火災保有耐火時間を計算することが望ましい。これにより、構造物の3次元モデルデータと火災継続時間や火災保有耐火時間の計算結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0014】
前記計算プログラムは、前記構造物の火災継続時間を計算する火災継続時間計算プログラムと、前記構造物の火災保有耐火時間を計算する火災保有耐火時間計算プログラムとを備えることが望ましい。これにより、構造物の3次元モデルデータと耐火性能検証の計算結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0015】
前記性能検証システムにおいて、前記火災継続時間及び前記火災保有耐火時間の少なくとも一方が正常か否かを判定する判定ステップを行うことが望ましい。これにより、構造物の3次元モデルデータと判定結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0016】
前記判定ステップにおいて、前記火災保有耐火時間が前記火災継続時間以上であるか否かを判定することが望ましい。これにより、構造物の3次元モデルデータと判定結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0017】
前記判定ステップにおいて前記火災継続時間に異常があると判定した場合に、当該火災継続時間に関連する室を特定することが望ましい。また、前記判定ステップにおいて前記火災保有耐火時間に異常があると判定した場合に、当該火災保有耐火時間に関連する部材を特定することが望ましい。これにより、判定結果の異常の有無の確認や、判定結果が異常となる室や部材の確認が容易になる。
【0018】
前記火災継続時間計算プログラムを用いて、火災継続時間計算書を作成し、前記火災保有耐火時間計算プログラムを用いて、火災保有耐火時間計算を作成することが望ましい。これにより、構造物の3次元モデルデータと計算書との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0019】
前記性能検証システムにおいて、前記3次元モデルに基づいて作成した図面に、前記計算ステップでの計算結果に関する情報を重畳させた図面を出力することが望ましい。これにより、3次元モデルと計算結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0020】
前記抽出ステップにおいて前記3次元モデルから一次データが抽出された後、前記一次データを前記条件式に入力可能な二次データに変換する前処理ステップが行われ、
前記前処理ステップの後、前記計算プログラムを用いて、前記一次データ及び前記二次データを前記条件式に入力して計算が行われることが望ましい。これにより、条件式に入力可能なパラメータと同義のデータが3次元モデルデータに含まれていなくても、前処理ステップによって、条件式に入力するデータを補間することができる。
【0021】
前記前処理ステップにおいて、前記一次データと前記二次データとを対応付けた変換テーブルに基づいて、前記3次元モデルから抽出した前記一次データを前記二次データに変換することが望ましい。また、前記前処理ステップにおいて、予め用意された変換式に前記一次データを入力することによって前記二次データを算出することが望ましい。これにより、前処理ステップによって、条件式に入力するデータを補間することができる。
【0022】
前記抽出ステップにおいて、前記3次元モデルから鋼材の高さ、鋼材の幅、ウェブ厚及びフランジ厚を示す一次データを抽出し、前記前処理ステップにおいて、鋼材の高さ、鋼材の幅、ウェブ厚及びフランジ厚を示す前記一次データを前記変換式に入力することによって、前記二次データである部材の加熱周長を算出することが望ましい。これにより、条件式(告示式)に必要な加熱周長Hのデータを補間することができる。
【0023】
性能検証システムに、部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルから、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを抽出する抽出ステップと、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出ステップで抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算ステップと、を実行させることを特徴とする性能検証プログラムが明らかとなる。このような性能検証プログラムによれば、構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させているため、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【0024】
部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルから、前記空間又は前記部材に関する条件を示すデータを抽出する抽出部と、前記構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前記抽出部が抽出した前記データを、予め用意された条件式に入力して計算する計算部と、を有することを特徴とする性能検証システムが明らかとなる。このような性能検証システムによれば、構造物の3次元モデルと構造物の性能検証に用いられるデータとを連係させているため、性能検証のための作業を軽減させ確実性向上を図ることができる。
【0025】
===実施形態===
<概要>
図1は、本実施形態の概要を示すフロー図である。
【0026】
本実施形態では、まず、3次元モデル設定ステップが行われる(S1)。3次元モデル設定ステップでは、部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルが3次元モデルシステムに設定される。この3次元モデル設定ステップによって、3次元モデルシステムを構成するコンピューターに、構造物の3次元モデルが設定されることになる。3次元モデルは、構造物の3次元データであり、例えばBIMモデルである。構造物は、例えば建築物であり、部材で構成される空間を有する。3次元モデルには、構造物の3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)が記述されており、3次元モデルには、構造物の空間や部材に関する条件(空間条件、部材条件)を示すデータ(空間条件データ、部材条件データ)が含まれている。
【0027】
次に、抽出ステップが行われる(S3)。この抽出ステップでは、性能検証システムにおいて、空間又は部材に関する条件を示すデータ(空間条件データ、部材条件データ)を3次元モデルから抽出する処理が行われる。この抽出ステップでは、性能検証システムを構成するコンピューターが抽出プログラムに基づいて所定のデータを抽出することによって、構造物の性能検証に必要な空間条件や部材条件に関するデータを効率良く、確実に収集できる。
【0028】
次に、計算ステップが行われる(S5)。この計算ステップでは、構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、前述の抽出ステップで抽出したデータを、予め用意された条件式に入力して計算することが行われる。これにより、構造物の3次元モデルを構成する3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)と、告示文に明示された検証法の計算手続との間でデータ連携を行うことができるため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0029】
なお、計算ステップでは、例えば構造物の耐火性能検証のための計算プログラムを用いて告示式(条件式に相当)に基づく計算が行われる。但し、計算ステップでは、構造物の耐火性能検証に関する計算に限られず、別の性能検証に関する計算が行われても良い。例えば、計算ステップでは、耐火性能検証のための計算を行う代わりに、避難安全検証や、通常火災や延焼防止に関する検証のための計算が行われても良い。
【0030】
計算ステップの後、出力ステップが行われる(S7)。出力ステップでは、計算ステップの計算結果が出力されることになる。出力ステップでは、例えば、計算結果をディスプレイに表示したり、計算結果を印刷したり、計算結果を保存したりすることが行われる。
【0031】
<性能検証装置の主な構成>
以下、図1のフローを実現する性能検証装置について説明する。
図2は、本実施形態の性能検証装置100の全体説明図である。
【0032】
性能検証装置100は、構造物(例えば建築物)の性能を検証するためのシステムである。性能検証装置100は、1台又は複数台のコンピューターで構成される。ここでは、性能検証装置100は、構造物の耐火性能検証を行う。但し、性能検証装置100は、構造物の耐火性能検証を行うものに限られず、耐火性能検証とは別の性能検証(例えば避難安全検証など)を行っても良い。性能検証装置100は、3次元モデルシステム10と、性能検証システム20とを有する。
【0033】
3次元モデルシステム10は、部材で構成される空間を有する構造物(例えば建築物)の3次元モデルデータを管理する。ここでは、3次元モデルシステム10は、BIMモデル14(14A、14B)を管理するBIMモデルシステムであり、1台又は複数台のコンピューターで構成される。3次元モデルシステム10は、BIMモデル14(14A、14B)及び拡張データ16(16A、16B)を記憶するデータ記憶部を有し、BIMモデル14及び拡張データ16の管理を行う。なお、図2では、BIMモデル14AとBIMモデル14Bとが分割して描かれているが、BIMモデル14A及びBIMモデル14BはBIMモデルとして一体のデータ(データベース)である。3次元モデルシステム10は、BIM管理プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより、実現される。
【0034】
BIMモデル14(14A、14B)は、部材で構成される空間を有する構造物の3次元モデルのデータであり、構造物の3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)とから構成されている。BIMモデル14(14A、14B)の形状データ及び属性データには、性能検証に必要とされる空間に関する条件(空間条件)を示すデータ(空間条件データ)や、部材に関する条件(部材条件)を示すデータ(部材条件データ)等が含まれている。なお、BIMモデル14は、建築データ(意匠データ)や構造データによって構成されている。拡張データ16は、性能検証システム20によって追加・設定されたデータである。拡張データ16は、BIMモデル14内に組み込まれたデータでも良い。
【0035】
性能検証システム20は、構造物の性能を検証する装置である。ここでは、性能検証システム20は、構造物の耐火性能検証を行うコンピューターである。性能検証システム20は、1台又は複数台のコンピューターで構成される。また、性能検証システム20は、性能検証プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。性能検証システム20は、3次元モデルシステム10を構成するコンピューターとは別のコンピューターで構成されても良いし、3次元モデルシステム10を構成するコンピューターで構成されていても良い。例えば、3次元モデルシステム10を管理制御するBIM管理プログラムに、後述する性能検証処理を行うための性能検証プログラムを追加(拡張)することによって、3次元モデルシステム10が性能検証システム20として機能しても良い。
【0036】
性能検証システム20は、抽出ステップにおいて、BIMモデル14から耐火性能検証に必要なデータを自動的に抽出することになる。また、性能検証システム20は、抽出したデータを、計算プログラムに予め用意した条件式(告示式)に入力することによって、耐火性能検証に必要な情報(具体的には火災継続時間や火災保有耐火時間など)を計算する。これにより、構造物の3次元モデルを構成する3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)と、告示文に明示された検証法の計算手続との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。性能検証システム20は、計算処理部30(30A、30B)を有する。
【0037】
計算処理部30(30A、30B)は、BIMモデル14(14A、14B)からデータを抽出し、耐火性能検証のための所定の計算を行う。計算処理部30は、性能検証プログラムが有する計算処理プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。計算処理部30は、抽出部22と、前処理部23と、計算部24と、判定部25とを有する。なお、抽出部22によって、図1の抽出ステップ(S3)が行われることになる。また、前処理部23、計算部24及び判定部25によって、図1の計算ステップ(S5)が行われることになる。計算処理部30の各部の具体的な処理については、後述する。
【0038】
計算処理部30は、第1処理部30Aと、第2処理部30Bとを有している。ここでは、第1処理部30Aは屋内火災継続時間の計算を行い、第2処理部30Bは屋内火災保有耐火時間の計算を行うことになる。第1処理部30A及び第2処理部30Bは、同じコンピューターで構成されても良いし、別々のコンピューターで構成されても良い。第1処理部30A及び第2処理部30Bは、それぞれ、抽出部22(22A、22B)と、前処理部23(23A、23B)と、計算部24(24A、24B)と、判定部25(25A、25B)を有する。なお、計算処理部30は、1つの処理部で構成されても良いし、3以上の処理部で構成されても良い。例えば、計算処理部30は、火災継続時間又は火災保有耐火時間の一方だけを計算しても良いし、屋外火災保有耐火時間の計算を行うための第3処理部を有していても良い。
【0039】
<性能検証装置の処理>
図3は、性能検証装置100が行う処理のフロー図である。
【0040】
・BIMモデル設定ステップ(3次元モデル設定ステップ)
まず、BIMモデル設定ステップが行われる(S01)。図3のBIMモデル設定ステップは、図1の3次元モデル設定ステップ(S1)に相当する。このBIMモデル設定ステップ(S01)によって、BIMモデル14(14A、14B)が3次元モデルシステム10を構成するコンピューターに設定されることになる。BIMモデル14には、空間条件データや部材条件データなどのデータが含まれている。なお、後述するように、BIMモデル14は、火災継続時間や火災保有耐火時間(屋内火災保有耐火時間、屋外火災保有耐火時間)の計算結果に基づいて再設定されることもある。
【0041】
・室設定ステップ
次に、室設定ステップが行われる(S02)。室設定ステップにおいて、性能検証システム20は、例えば、ディスプレイ上に設定画面を表示させ、作業者に入力装置(キーボード、マウスなど)を用いて所定の設定データを入力させ、入力された設定データに応じて、構造物(建築物)の各階に複数の火災室を設定したり、各火災室に複数の室や室名を設定したり、それぞれの室にID番号を付与したりする。室設定ステップでの設定に応じて、構造物(建築物)における各室の配置が特定される。この結果、それぞれの室を構成する壁、床、天井などが特定され、それぞれの室に対して、BIMモデル14の空間条件(室の固有番号(ID番号)、室の名前(室名)、面積、天井高さなど)や部材条件(部材の固有番号(ID番号)、部材の名前(部材名)、内装用建築材料の厚さ、部材の種別、断面寸法など)のデータが対応付けられることになる。なお、室設定ステップによって設定された設定データは、例えば拡張データ16に記憶されても良いし、性能検証システム20のデータ記憶部に記憶されても良い。
【0042】
・抽出ステップ
次に、抽出ステップが行われる(S03)。図3の抽出ステップ(S03)は、図1の抽出ステップ(S3)に相当する。
【0043】
抽出部22(22A、22B;図2参照)は、3次元モデルシステム10のBIMモデル14(14A、14B)から所定のパラメータのデータを抽出する。抽出部22は、計算処理プログラムが有する抽出プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。抽出部22が抽出するデータには、空間条件や部材条件を示す数値や文字列などのデータが含まれる。すなわち、抽出部22は、BIMモデル14に含まれる構造物の形状データや属性データから性能検証に関わる空間条件データ及び部材条件データを抽出する。また、抽出部22が抽出するデータには、計算部24での計算に用いられる条件式(後述)に直接入力可能なデータ(建設省告示第1433号に定められた各種パラメータと同義のデータ)や、条件式に入力するデータを算出するための間接的なデータなどが含まれる。また、抽出部22が抽出するデータには、計算部24による条件式の計算に用いられないデータが含まれても良い。例えば、抽出部22が抽出するデータには、性能検証の確認に用いられるデータ(ID番号など)が含まれても良い。抽出部22が抽出プログラムを用いてBIMモデル14から所定のデータを抽出することによって、耐火性能検証に必要な空間条件や部材条件に関するデータをBIMモデル14から効率良く、確実に収集できる。
【0044】
抽出部22は、参照テーブルに基づいて、所定の複数種類のデータをBIMモデル14から抽出する。
図4A及び図4Bは、参照テーブル42の一例の説明図である。それぞれの参照テーブルには、抽出部22が抽出すべきデータのパラメータ名が示されている。抽出部22を構成する抽出プログラムには、予め参照テーブル42が用意されている。
【0045】
図4Aは、第1処理部30Aの抽出部22Aに用いられる参照テーブル42Aの説明図である。この参照テーブル42Aには、第1処理部30Aの抽出部22Aが抽出すべきデータが示されている。第1処理部30Aの抽出部22Aは、図4Aに示す参照テーブル42Aに基づいて、屋内火災継続時間に関する各種データをBIMモデル14Aから抽出する。抽出部22Aは、各室ごとに、それぞれの室に対応する各種データを参照テーブル42Aに基づいて抽出する。このため、抽出部22Aは、各室のID番号に対応付けて、それぞれの室に対応する各種データを抽出することになる。ここでは、抽出部22Aは、図4Aに示す参照テーブル42Aに従って、室のID番号、室名、室の用途、面積(床面積)、内装用建築材料の種類(不燃材料、難燃材料など)、壁芯の寸法、天井高さ、などの各種データをBIMモデル14Aから抽出する。例えば、抽出部22Aは、参照テーブル42Aに基づいて、室名のデータ(数値や文字列)をBIMモデル14Aから抽出したり、床面積Aγのデータ(数値)をBIMモデル14Aから抽出したりする。抽出部22Aが抽出するデータは、主に、室の空間条件を示すデータとなる。
【0046】
図4Bは、第2処理部30Bの抽出部22Bに用いられる参照テーブル42Bの説明図である。この参照テーブル42Bには、第2処理部30Bの抽出部22Bが抽出すべきデータが示されている。第2処理部30Bの抽出部22Bは、図4Bに示す参照テーブル42Bに基づいて、火災保有耐火時間(ここでは屋内火災保有耐火時間)に関する各種データをBIMモデル14Bから抽出する。抽出部22Bは、構造物の部材(例えば壁、柱、梁などの主要構造部)ごとに、それぞれの部材に対応する各種データを参照テーブルに基づいて抽出する。
【0047】
なお、図4Bに示すように、参照テーブル42Bは、共通参照テーブル421(図4B上側の表)と、部材の種類に応じた部材別参照テーブル422(図4B下側の表)とを有する。ここでは、第2処理部30Bの抽出部22Bは、まず、共通参照テーブル421に従って、部材のID番号、部材名、部材の種別などのデータをBIMモデル14Bから抽出する。次に、抽出部22Bは、共通参照テーブル421に基づいて抽出した「部材の種別」を示すデータに応じて、部材別参照テーブル422に従って各種データを抽出する。なお、部材別参照テーブル422(図4B下側参照)に示すように、部材が耐力壁の場合と、部材が鉄骨柱の場合とで、抽出すべきデータが異なっている。例えば、或る部材の種別が鉄骨柱である場合には、その部材に対応するデータとして、部材の床面からの高さ、鋼材の高さ(成)、鋼材の幅、ウェブ厚、フランジ厚などの各種データをBIMモデル14Bから抽出する。
【0048】
・前処理ステップ(計算ステップ)
図3に示すように、抽出ステップ(S03)の後、前処理ステップが行われる(S04)。前処理ステップ(S04)は、図1の計算ステップ(S5)の一部に相当する。前処理ステップ(S03)は、抽出されたデータを告示式(条件式)に当てはめるために必要に応じて行われる事前処理である。
【0049】
前処理部23(23A、23B;図2参照)は、抽出部22が抽出した一次データを二次データに変換する。前処理部23は、計算処理プログラムが有する前処理プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。前処理部23は、抽出部22が抽出した一次データを前処理プログラムに入力して、前処理プログラムによって一次データを解析し、計算部24に必要なデータ(二次データ)を計算する。ここでは、前処理部23は、計算部24での計算に用いられる条件式に入力可能なデータ(建設省告示第1433号に定められた各種パラメータと同義のデータ)を計算する。前処理部23は、BIMモデル14から抽出したデータ(一次データ)に基づいて二次データを計算することによって、建設省告示第1433号に定められた告示式(条件式)に必要とされる各種パラメータのデータを補間する。これにより、建設省告示第1433号に定められた各種パラメータと同義のデータがBIMモデル14に含まれていなくても、告示式(条件式)に必要とされる各種パラメータのデータを収集できる。但し、抽出部22が計算部24での計算に必要な全てのデータをBIMモデル14から抽出できる場合には、前処理部23は無くても良い。
【0050】
前処理部23は、変換テーブルに基づいて、一次データに基づいて二次データを算出する。
図5A及び図5Bは、変換テーブル43の一例の説明図である。変換テーブル43には、二次データと、二次データの算出に用いられる一次データと、変換条件とが対応付けられている。前処理部23を構成する前処理プログラムには、予め変換テーブル43が用意されている。
【0051】
図5Aは、第1処理部30Aの前処理部23Aに用いられる変換テーブル43Aの説明図である。この変換テーブル43Aには、第1処理部30Aの前処理部23Aが算出する二次データと、一次データとの関係が示されている。第1処理部30Aの前処理部23Aは、図5Aに示す変換テーブル43Aに基づいて、屋内火災継続時間に関する各種データ(二次データ)を算出する。
【0052】
例えば、第1処理部30Aの前処理部23Aは、図5Aに示す変換テーブル43Aに従って、パラメータ「室用途」を示す一次データと、変換テーブル101とに基づいて、二次データqを算出する。図6に示すように、変換テーブル101には、室用途と二次データqの値とが予め対応付けられている。そして、パラメータ「室用途」を示す一次データが「控室」である場合には、前処理部23Aは、二次データqの数値として「560」を算出することになる。このように、建設省告示第1433号に定められているパラメータq(室内の収納可燃物の床面積一平方メートル当たりの発熱量)と同義のデータが3次元モデルシステム10のBIMモデル14Aに含まれていなくても、一次データに基づいてデータq(二次データ)を算出することができる。
【0053】
ところで、建設省告示第1433号第一第2項には、「室の種類」に応じて「室内の収納可燃物の床面積一平方メートル当たりの発熱量q」の数値を定められている。但し、BIMモデル14Aから抽出した「室用途」のデータは、建設省告示第1433号で定められた「室の種類」と必ずしも一致しない(例えば、建設省告示第1433号第一第2項の「室の種類」には「会議室その他これに類するもの」という項目はあるが、「控室」という項目は無い)。但し、本実施形態では、図6に示す変換テーブルを予め設けることによって、パラメータ「室用途」を示す一次データが「控室」である場合には、パラメータq(室内の収納可燃物の床面積一平方メートル当たりの発熱量)の数値データを、「会議室その他これに類するもの」に対応する「160」にすることができる。
【0054】
なお、一次データから二次データに変換する方法は、変換テーブルを用いる方法に限られるものではない。前処理部23は、予め定められた変換式に基づいて、一次データから二次データを算出しても良い。例えば、パラメータ「当該室の内装用建築材料の種類ごとの各部分の表面積A」を示すデータ(二次データ)を、一次データとして抽出した壁芯の寸法(単位:メートル)と天井高さ(単位:メートル)とに基づいて、壁芯の寸法と天井高さとの積(変換式003に相当)として算出することが可能である。
また、二次データの算出に用いられる一次データは、1つに限られるものではなく、複数でも良い。また、前処理部23は、或る二次データを算出する際に、一次データだけでなく、一次データから算出した二次データが用いられても良い。
【0055】
図5Bは、第2処理部30Bの前処理部23Bに用いられる変換テーブル43Bの説明図である。この変換テーブル43Bには、第2処理部30Bの前処理部23Bが算出する二次データと、一次データとの関係が示されている。第2処理部30Bの前処理部23Bは、図5Bに示す変換テーブル43Bに基づいて、屋内火災保有耐火時間に関する各種データ(二次データ)を算出する。例えば、前処理部23Bは、図5Bに示す変換テーブル43Bに従って、一次データである鋼材の「成(高さ)H」、「鋼材の幅B」、「ウェブ厚t」及び「フランジ厚t」と、図7に示す変換式(図5Bの変換式201に相当)とに基づいて、パラメータ「部材の加熱周長H」を示すデータ(二次データ)を算出する。
【0056】
ここでは、抽出ステップ及び前処理ステップによって、告示式(条件式)に必要とされる各種パラメータのデータを収集している。但し、前処理ステップにおいて、告示式(条件式)に必要とされる一部のパラメータのデータを作業者に入力させ、入力されたデータを、二次データとして補間しても良い。このように、仮に作業者によって一部のデータが入力されたとしても、残りのデータはBIMモデル14と連係しているため、告示式(条件式)の計算に必要なデータの入力ミスを軽減することができる。一方、データの入力ミスを防ぐためには、抽出ステップ及び前処理ステップによって、告示式(条件式)に必要とされる全てのパラメータのデータを収集できることが望ましい。
【0057】
・計算ステップ
図3に示すように、前処理ステップ(S04)の後、火災継続時間の計算処理(S05A)と、火災保有耐火時間の計算処理(S05B)とが行われる。図3の計算処理(S05A、S05B)は、図1の計算ステップ(S5)に相当する。ここでは、第1処理部30Aの計算部24Aは、屋内火災継続時間の計算を行い(S05A)。また、第2処理部30Bの計算部24Bは、屋内火災保有耐火時間の計算を行う(S05B)。
【0058】
計算部24(24A、24B;図2参照)は、抽出部22によって抽出した一次データと、前処理部23によって計算した二次データを、予め用意された条件式(告示式)に入力して計算する。計算部24は、計算処理プログラムが有する計算プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。計算部24(計算部24A、24B)を構成する計算プログラムは、構造物の火災継続時間を計算する火災継続時間計算プログラムと、構造物の火災保有耐火時間を計算する火災保有耐火時間計算プログラムとを有している。
【0059】
図3の計算ステップ(S05A)において、第1処理部30Aの計算部24Aは、それぞれの室ごとに、「当該室の可燃物の発熱量Qγ」を算出する。なお、計算部24Aは、図4Aに示すパラメータ「床面積Aγ」のデータ(一次データ)や、図5Aに示すパラメータ(q、q、A、・・・)のデータ(二次データ)を、建設省告示第1433号第一に定められた「当該室の可燃物の発熱量Qγ」を算出するための条件式の各パラメータ(変数)に入力することによって、「当該室の可燃物の総発熱量Qγ」の数値を算出する。また、計算部24Aは、それぞれの室ごとに、「当該室内の可燃物の一秒当たりの発熱量q」を算出する。なお、計算部24Aは、所定のパラメータの示す数値(一次データ及び二次データ)を、建設省告示第1433号第二に定められた「当該室内の可燃物の一秒当たりの発熱量q」を算出するための条件式の各パラメータ(変数)に入力することによって、「当該室内の可燃物の一秒当たりの発熱量q」の数値を算出する。そして、計算部24Aは、それぞれの室ごとに、「当該室の可燃物の発熱量Qγ」と「当該室内の可燃物の一秒当たりの発熱量q」の数値を、建築基準法施行令第108条の3第2項に定められた条件式(t=Qγ/60q)に入力することによって、「屋内火災継続時間t」の数値を算出する。なお、計算部24Aを構成する火災継続時間計算プログラムには、上記の条件式(告示式)に相当する関数が予め用意されている。
【0060】
同様に、図3の計算ステップ(S05B)において、第2処理部30Bの計算部24Bは、構造物の部材ごとに、抽出部22B及び前処理部23Bによって抽出したデータ(一次データ及び二次データ)を、建設省告示第1433号第三に定められた条件式に入力して、「屋内火災保有耐火時間tfγ」を算出する。例えば鉄骨柱の場合には、計算部24Bは、抽出部22B及び前処理部23Bによって抽出したデータ(一次データ及び二次データ)に基づいて、「火災温度上昇係数α」、「部材近傍火災温度上昇係数α」、「部材温度上昇係数h」、「限界部材温度Tcγ」を算出するとともに、算出したα、α、h及びTcγに基づいて「屋内火災保有耐火時間tfγ」を算出することになる。なお、計算部24Bは、図5Bに示す「部材の加熱周長H」を示すデータ(二次データ)を、「部材温度上昇係数h」を算出するための条件式に入力することになる。なお、計算部24Bを構成する火災保有耐火時間計算プログラムには、上記の条件式(告示式)に相当する関数が予め用意されている。
【0061】
・判定ステップ(計算ステップ)
図3に示すように、計算ステップ(S05A、S05B)の後、判定ステップが行われる(S06A、S06B、S07)。判定ステップ(S06A、S06B、S07)は、図1の計算ステップ(S5)の一部に相当する。なお、本実施形態では、判定ステップにおいて、一次判定ステップ(S06A、S06B)と、二次判定ステップ(S07)の2段階の処理が行われるが、判定ステップが1段階の処理だけで構成されても良いし、3段階以上の多段階の処理で構成されても良い。
【0062】
一次判定ステップ(S06A)において、第1処理部30Aの判定部25A(図2参照)は、計算部24Aによって計算された屋内火災継続時間tが所定の基準範囲か否かを判定する。判定部25Aは、屋内火災継続時間tが所定の基準範囲内である場合には「O.K.(正常)」と判定し、屋内火災継続時間tが基準範囲外である場合には「NG(異常)」と判定する。また、判定部25Aは、一次判定ステップ(S06A)の後、計算部24Aによって計算した屋内火災継続時間tを第2処理部30B(ここでは判定部25B)に受け渡す。なお、判定部25Aは、計算処理プログラムが有する計算プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。
【0063】
また、一次判定ステップ(S06B)において、第2処理部30Bの判定部25B(図2参照)は、計算部24Bによって計算された屋内火災保有耐火時間tfγが所定の基準範囲か否かを判定する。判定部25Bは、計算部24Bによって計算された屋内火災保有耐火時間tfγが所定の基準範囲内である場合には「O.K.(正常)」と判定し、屋内火災保有耐火時間tfγが基準範囲外である場合には「NG(異常)」と判定する。
また、一次判定ステップ(S06B)の後の二次判定ステップ(S07)において、判定部25Bは、計算部24Bによって計算された屋内火災保有耐火時間tfγと、判定部25Aから取得した屋内火災継続時間tとに基づいて、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間以上であるか否かを判定する。判定部25Bは、計算部24Aが算出した屋内火災継続時間と、計算部24Bが算出した屋内火災保有耐火時間とを対比することによって、部材(壁、柱、梁などの主要構造部)ごとに、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間以上であるか否かを判定することになる。なお、判定部25Bは、計算処理プログラムが有する計算プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。
【0064】
判定部25は、他の判定を行っても良い。例えば、処理部が屋外火災保有耐火時間を計算する場合には、判定部25は、部材(壁、柱、梁などの主要構造部)ごとに、屋外火災保有耐火時間が所定時間以上(延焼のおそれのある部分で1時間以上、それ以外の部分で30以上)であるか否かを判定しても良い。
なお、判定部25が「NG(異常)」と判定した場合には、一次データや二次データの再設定や、BIMモデル14の再設定が行われても良い(再設定ステップ)。この再設定ステップについては、後述する。
【0065】
・出力ステップ
図3に示すように、判定ステップ(S06A、S06B、S07)の後、出力ステップが行われる(S08)。出力ステップ(S08)は、図1の出力ステップ(S7)に相当する。出力ステップ(S08)では、例えば、計算結果をディスプレイに表示したり、計算結果を印刷したり、計算結果を保存したりすることが行われる。以下、出力ステップの出力例について説明する。
【0066】
チェック表作成部26(図2参照)は、チェック表を作成し、作成したチェック表を出力する。チェック表作成部26は、性能検証プログラムをプロセッサーが読み出して実行することにより実現される。
まず、チェック表作成部26は、計算処理部30(30A、30B)による処理結果のデータ(結果データ)を、計算処理部30から取得する。チェック表作成部26が取得する結果データには、例えば、抽出部22(抽出部22A、22B)が抽出した一次データ、前処理部23が計算した二次データ、計算部24が計算した火災継続時間や火災保有耐火時間などのデータ、判定部25の判定結果のデータなどが含まれる。なお、チェック表作成部26は、それぞれの室ごとに対応付けて(室のID番号に対応付けて)、若しくは、それぞれの部材ごとに対応付けて(部材のID番号に対応付けて)、計算処理部30(30A、30B)の結果データを取得する。
次に、チェック表作成部26は、計算処理部30(30A、30B)から取得した結果データに基づいて、チェック表を作成し、作成したチェック表をディスプレイに表示する。例えば、チェック表作成部26は、室設定ステップ(図3のS02参照)によって設定された室と、その室に対応する屋内火災継続時間と、その屋内火災継続時間の計算に用いられた各種データ(一次データ、二次データなど)とを対応付けた一覧表を、チェック表としてディスプレイに表示する。これにより、屋内火災継続時間と、その計算の根拠となったデータの確認が容易になる。また、例えば、チェック表作成部26は、構造物の部材と、その部材に対応する屋内火災保有耐火時間と、その屋内火災保有耐火時間の計算に用いられた各種データ(一次データ、二次データなど)とを対応付けた一覧表を、チェック表としてディスプレイに表示する。これにより、屋内火災保有耐火時間と、その計算の根拠となったデータの確認が容易になる。
なお、チェック表作成部26は、判定部25(25A、25B)の判定結果をチェック表に含めても良い。これにより、判定結果がNG(異常)の場合に、異常となった室や部材を特定することが容易になる。また、異常となった屋内火災継続時間や屋内火災保有耐火時間の計算の根拠となった各種データ(一次データ、二次データなど)を確認することが容易になり、異常の原因の確認が容易になる。
【0067】
上記の説明では、チェック表作成部26は、チェック表をディスプレイに表示させているが、チェック表作成部26は、チェック表の代わりに、計算書(次述)に含まれる表をチェック表として表示させても良い。また、チェック表作成部26は、チェック表をディスプレイに表示させる代わりに、チェック表を印刷しても良いし、チェック表をデータ記憶部(不図示)に保存しても良い。
【0068】
出力ステップ(S08)において、計算書が出力されても良い。例えば、図2に示すように、第1処理部30Aの判定部25Aは、火災継続時間計算書を作成し、出力する。また、第2処理部30Bの判定部25Bは、火災保有耐火時間計算書を作成し、出力する。
【0069】
図8は、屋内火災継続時間計算書の説明図である。判定部25Aは、第1処理部30Aの結果データ(抽出部22Aが抽出した一次データ、前処理部23Aが計算した二次データ、計算部24Aが計算した火災継続時間などのデータ、判定部25Aの判定結果のデータなど)に基づいて、図中の屋内火災継続時間計算書を作成する。屋内火災継続時間計算書には、各室に対応する屋内火災継続時間や、屋内火災継続時間の計算の根拠となる各種データが含まれている。判定部25Aは、作成した屋内火災継続時間計算書を、印刷装置に出力して印刷させても良いし、ディスプレイに表示させても良いし、データ記憶部(不図示)に保存しても良い。
【0070】
図9は、屋内火災保有耐火時間計算書の説明図である。判定部25Bは、第2処理部30Bによる結果データ(抽出部22Bが抽出した一次データ、前処理部23Bが計算した二次データ、計算部24Bが計算した火災保有耐火時間などのデータ、判定部25Bの判定結果のデータなど)と、第1処理部30Aから取得した第1処理部30Aの結果データとに基づいて、屋内火災保有耐火時間計算書を作成する。屋内火災保有耐火時間計算書には、各部材に対応する屋内火災保有耐火時間(図中では屋内火災保有耐火時間)や、判定結果や、屋内火災保有耐火時間の計算の根拠となる各種パラメータが含まれている。判定部25Bは、作成した屋内火災保有耐火時間計算書を、印刷装置に出力して印刷させても良いし、ディスプレイに表示させても良いし、データ記憶部(不図示)に保存しても良い。
【0071】
なお、出力ステップ(S08)で出力される書類は、火災継続時間計算書や火災保有耐火時間計算書などの計算書に限られず、例えば建築確認申請の申請書でも良い。本実施形態では、性能検証システム20が性能検証プログラムを用いてBIMモデル14から収集したデータに基づいて各種書類(計算書、申請書)を作成することによって、構造物の3次元モデルを示すBIMモデル14と、各種書類との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。また、BIMモデル14と各種書類との間での整合が確実であることから、審査時間の短縮も期待できる。
【0072】
出力ステップ(S08)において、BIMモデルに基づいて作成した構造物の図面に、計算部24(24A、24B)の計算結果に関する情報を重畳させた図面を出力しても良い。以下、この点について説明する。
図2に示すように、判定部25(25A、25B)は、計算処理部30(30A、30B)による処理結果のデータ(結果データ)を、BIMモデル14の拡張データ16として3次元モデルシステム10に保存する。そして、表示部27(27A、27B)は、3次元モデルシステム10のBIMモデル14に基づいて構造物の図面を作成するとともに、その構造物の図面に、拡張データ16に含まれる火災継続時間や火災保有耐火時間などの計算結果に関する情報を重畳させた図面を作成する。BIMモデル14に基づいて作成した構造物の図面に、計算部24の計算結果に関する情報を重畳させた図面を作成することによって、構造物の3次元モデルの図面と計算結果との間の整合性の確認作業が容易になる。なお、図2では、表示部27(27A、27B)が性能検証システム20から分離して描かれているが、性能検証システム20の性能検証プログラムによって構成されるものであり、性能検証システム20に含まれる部位である。
【0073】
図10は、火災継続時間を示す平面図である。表示部27Aは、3次元モデルシステム10のBIMモデル14に基づいて構造物の平面図を作成するとともに、拡張データ16Aに含まれる火災継続時間のデータに応じて室ごとに色分けした図面を作成する。なお、平面図に示された各室は、図3の室設定ステップ(S02)において設定された設定データに基づいている。このように、表示部27Aは、3次元モデルシステム10のBIMモデル14に基づいて平面図上に各室を示すとともに、計算部24Aで計算された火災継続時間に関する情報を各室に対応付けて平面図に重畳させた図面を作成する。なお、表示部27Aは、火災継続時間に応じて室ごとに色分けをする代わりに、火災継続時間を示す数値を室ごとに記載した図面を作成しても良い。また、表示部27Aは、火災継続時間を示す伏図を作成しても良い。図10に示すように、BIMモデル14に基づく構造物の平面図に火災継続時間(計算結果)に関する情報を重畳させることによって、BIMモデル14と計算結果と間の整合性の確認作業が容易になる。
【0074】
なお、判定部25(25A、25B)が火災継続時間や火災保有耐火時間の異常を判定した場合には、表示部27Aは、その火災継続時間に関連する室を特定した図面や、その火災保有耐火時間に関連する部材を特定した図面を作成することが望ましい。これにより、判定結果の異常の有無の確認や、判定結果が異常となる室や部材の確認が容易になる。この具体例を次に説明する。
【0075】
図11は、判定結果が異常の部材を示す3次元表示の説明図である。表示部27Bは、3次元モデルシステム10のBIMモデル14に基づいて構造物の図面を作成するとともに、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間よりも短い部材(判定結果が異常の部材)がある場合には、例えばその部材の強調表示を重畳させることによって、判定結果が異常の部材を特定した図面を作成する。図11では、構造物や部材が3次元表示された図面が示されているが、表示部27Bは、構造物や部材を平面図や立面図で示しても良い。これにより、作業者は、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間よりも短い部材(判定結果が異常の部材)の有無の確認や、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間よりも短い部材の位置の確認が容易になる。図11に示すように、BIMモデル14に基づく構造物の図面に屋内火災保有耐火時間の計算結果に関する情報を重畳させることによって、BIMモデル14と計算結果と間の整合性の確認作業が容易になる。
【0076】
表示部27(27A、27B)は、作成した図面のデータを、3次元モデルシステム10の拡張データ16に出力用データとして保存する。但し、表示部27(27A、27B)は、作成した図面のデータを、性能検証システム20のデータ記憶部(不図示)に保存しても良い。なお、性能検証システム20は、3次元モデルシステム10の拡張データ16の出力用データに基づいて、図面を出力しても良い。例えば、図2に示すように、性能検証システム20は、拡張データ16の出力用データ(例えば図10図11に示す図面のデータ)に基づく図面を、申請書の一部として出力しても良い。これにより、構造物の3次元モデルを示すBIMモデル14と、申請書との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。また、BIMモデル14と各種書類との間での整合が確実であることから、申請書の審査時間の短縮も期待できる。
なお、表示部27(27A、27B)は、作成した図面のデータを、作業者(設計者)が確認するための確認用データとして、3次元モデルシステム10の拡張データ16に保存しても良い。
【0077】
・再設定ステップ
上記の通り、判定部25が「NG(異常)」と判定した場合には、一次データ及び二次データの再設定や、BIMモデル14の再設定が行われても良い(再設定ステップ)。以下、この再設定ステップについて説明する。
【0078】
一次判定ステップ(S06A)において、判定部25Aが屋内火災継続時間の異常を判定した場合、判定部25Aは、その屋内火災継続時間に関連する室のデータ(例えば、床面積、内装用建築材料の種類などの一次データや二次データ;計算部24Aの条件式に入力するデータ)を変更する。なお、計算処理プログラムが有する再設定プログラムには、予め再設定パターンが用意されており、判定部25Aは、計算部24Aが計算した火災継続時間に応じた再設定パターンに従って、所定のパラメータのデータを変更する。
また、一次判定ステップ(S06B)において、判定部25Bが屋内火災保有耐火時間の異常を判定した場合、判定部25Bは、その屋内火災保有耐火時間に関連する部材のデータ(例えば、部材の種別、部材の各種寸法などの一次データや二次データ;計算部24Bの条件式に入力するデータ)を変更する。なお、判定部25Bは、再設定プログラムに予め用意されている再設定パターンに従って、所定のパラメータのデータを変更する。
また、二次判定ステップ(S07)において、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間よりも短い旨の異常を判定部25Bが判定した場合、判定部25Bは、その屋内火災継続時間に関連する室のデータや、その屋内火災保有耐火時間に関連する部材のデータを変更する。なお、判定部25Bは、再設定プログラムに予め用意されている再設定パターンに従って、所定のパラメータのデータを変更する。
なお、一次データ及び二次データの再設定は、再設定プログラムを用いて自動的に行うものでなくても良い。例えば、ディスプレイ上に設定画面を表示させ、作業者に入力装置(キーボード、マウスなど)を用いて所定のパラメータのデータを入力させ、作業者の入力に応じてデータを設定しても良い。この場合、ディスプレイに表示される設定画面には、異常と判定された室や部材に関するデータのみを入力可能にすることが望ましい。これにより、作業者の入力ミスを抑制できる。
【0079】
判定部25(25A、25B)が所定のデータ(一次データや二次データ)を変更した後、計算部24(24A、24B)は、変更後のデータを条件式(告示式)に入力して再計算を行う。すなわち、計算部24(24A、24B)は、再設定されたデータに基づいて、計算ステップ(S05A、S05B)を再度行う。そして、判定部25(25A、25B)は、再度の計算ステップ(S06A、S06B)で計算された計算結果(屋内火災継続時間、屋内火災保有耐火時間)に基づいて、判定ステップ(S06A、S06B、S07)を再度行う。このように、計算処理部30(30A、30B)は、計算ステップでの計算結果に基づいて、データの再設定と、再設定されたデータに基づく再計算とを繰り返し行う。これにより、耐火性能検証法に適合可能なデータを導出する。
【0080】
データの再設定が行われた後、判定部25が「O.K.(正常)」と判断した場合には、図2に示すように、判定部25は、3次元モデルシステム10の拡張データ16(16A、16B)に、再設定後のデータを保存する。再設定後のデータは、抽出部22が抽出するデータ(一次データ)と共通のパラメータのデータとして、拡張データ16に保存される。BIMモデルの設定を行う作業者(設計者)は、拡張データ16に保存された再設定後のデータと、そのデータと共通のパラメータのBIMモデル14の元のデータとを比較・検討し、BIMモデル14の元のデータを再設定後のデータに変更するか否かを決定することができる。作業者が再設定後のデータに変更するか否かを決定する代わりに、再設定プログラムが自動的にBIMモデル14の元のデータを再設定後のデータに変更しても良い。再設定後のデータは、計算ステップ(S05A、S05B)の計算結果(屋内火災継続時間、屋内火災保有耐火時間)を反映したデータであるため、BIMモデル14の元のデータが再設定後のデータに変更されることによって、BIMモデル14は、計算ステップ(S05A、S05B)の計算結果(屋内火災継続時間、屋内火災保有耐火時間)に基づいて再設定されることになる。このように、計算ステップ(S05A、S05B)の計算結果(屋内火災継続時間、屋内火災保有耐火時間)に基づいてBIMモデルが再設定されることによって、耐火性能検証法に適合する構造物をBIMモデル14に設定することが容易になる。また、構造物の3次元モデルを構成する3次元形状情報(形状データ)と属性情報(属性データ)と、告示文に明示された検証法の計算手続との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0081】
<小括>
上記の通り、本実施形態の性能検証方法では、部材で構成される空間を有する構造物のBIMモデル14(3次元モデルの一例)を3次元モデルシステム10に設定する3次元モデル設定ステップと(図1のS1、図3のS01参照)、性能検証システム20が空間又は部材に関する条件を示すデータをBIMモデル14から抽出する抽出ステップと(図1のS3、図3のS03参照)、性能検証システム20が、構造物の性能を検証するための計算プログラムを用いて、抽出ステップで抽出したデータを、予め用意した条件式に入力して計算する計算ステップと(図1のS5、図3のS05A、S05B参照)、が行われている。このような性能検証方法によれば、構造物の3次元モデルデータと、性能検証法に基づく計算との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。また、このような性能検証方法によれば、例えば耐火性能検証のデータを入力する際の入力ミスがなくなり、入力情報検証の効率性と確実性を向上できる。
【0082】
また、前述の実施形態では、計算ステップでの計算結果に基づいて、BIMモデル14(3次元モデルの一例)を再設定している。具体的には、性能検証システム20(コンピューターの一例)は、S04A及びS04Bの計算ステップでの計算結果(屋内火災継続時間、屋内火災保有耐火時間)に基づいて一次判定(S06A、S06B)や二次判定を(S07)の判定ステップを行い、判定結果が異常の場合には、その屋内火災継続時間に関連する室のデータや、その屋内火災保有耐火時間に関連する部材のデータを計算結果に基づいて変更(再設定)するとともに、再設定されたデータと共通のパラメータのBIMモデル14上の元のデータを再設定後のデータに変更(再設定)することによって、BIMモデル14の再設定を行う。これにより、耐火性能検証の要求を満たす構造物の設計作業が容易になる。
【0083】
前述の計算プログラムは、構造物の火災継続時間を計算している(図3のS05A参照)。このように、計算プログラムを用いて、BIMモデル14(3次元モデルの一例)から抽出したパラメータに基づいて構造物の火災継続時間を計算することによって、構造物の3次元モデルデータと火災継続時間の計算との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
また、前述の計算プログラムは、構造物の火災保有耐火時間を計算している(図3のS05B参照)。このように、計算プログラムを用いて、BIMモデル14(3次元モデルの一例)から抽出したパラメータに基づいて構造物の火災保有耐火時間を計算することによって、構造物の3次元モデルデータと火災保有耐火時間の計算との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。計算プログラムが計算する火災保有耐火時間は、屋内火災保有耐火時間に限られるものではなく、屋外火災保有耐火時間でも良い。
【0084】
なお、計算プログラムは、耐火性能検証とは別の性能の検証を行っても良い。例えば、性能検証システム20は、構造物のBIMモデル14(3次元モデルの一例)から抽出したデータに基づいて、避難安全検証や、通常火災や延焼防止に関する検証を行っても良い。例えば、性能検証システム20は、避難安全検証を行う場合には、構造物のBIMモデル14(3次元モデルの一例)から空間又は部材に関する条件を示すデータをBIMモデル14から抽出し(抽出ステップ)、避難安全検証を行うための計算プログラムを用いて、予め用意した条件式(避難安全検証に定められた条件式)に抽出データを入力して、各種時間や歩行距離などを算出すると良い。
【0085】
また、前述の計算プログラムは、構造物の火災継続時間を計算する火災継続時間計算プログラムと、構造物の火災保有耐火時間を計算する火災保有耐火時間計算プログラムとを備える。これにより、構造物の3次元モデルデータと、火災継続時間及び火災保有耐火時間の計算との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0086】
また、性能検証システム20は、火災継続時間及び火災保有耐火時間の少なくとも一方が正常か否(異常)かを判定する判定ステップ(S06A、S06B、S07)を行う。また、性能検証システム20は、屋内火災保有耐火時間が屋内火災継続時間以上であるか否かを判定している(図3のS06参照;二次判定ステップ)。このように、本実施形態では、抽出プログラムによってBIMモデル14(3次元モデルの一例)からデータを抽出するとともに、計算プログラムによって火災継続時間や火災保有耐火時間を計算し、その計算結果に基づいて正常か否(異常)かを判定することによって、構造物の3次元モデルデータと判定結果との間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0087】
また、性能検証システム20は、判定ステップ(S06A、S07)において火災継続時間に異常があると判定した場合には、当該火災継続時間に関連する室を特定する。なお、室を特定する方法としては、例えば、火災継続時間を示す平面図(図10参照)を出力する際に、屋内火災保有耐火時間の計算結果に応じて室ごとに色分けするとともに、判定結果がNG(異常)の室の色を警告色(例えば赤色)にしたり、室名や識別番号を強調表示したりする方法が挙げられるが、他の方法でも良い。
また、性能検証システム20は、判定ステップ(S06B、S07)において火災保有耐火時間に異常があると判定した場合には、当該火災保有耐火時間に関連する部材を特定する。なお、部材を特定する方法としては、例えば図11に示すように構造物の3次元表示上で部材を強調表示する方法に限られるものではなく、他の方法でも良い。例えば、平面図(図10参照)や伏図上で判定結果がNG(異常)の部材を強調表示しても良いし、屋内火災保有耐火時間計算書(図9参照)において、判定結果がNG(異常)の部材の欄を強調表示しても良い。
上記のように、性能検証システム20が室や部材を特定することによって、判定結果の異常の有無の確認や、判定結果が異常となる室や部材の確認が容易になる。
【0088】
また、性能検証システム20は、火災継続時間計算プログラムを用いて火災継続時間計算書(図2図8参照)を作成するとともに、火災保有耐火時間計算プログラムを用いて火災保有耐火時間計算書(図2図9参照)を作成する。なお、図8に示すように、屋内火災継続時間計算書には、屋内火災継続時間や、当該屋内火災継続時間の計算に用いた各種データが含まれている。また、図9に示すように、屋内火災保有耐火時間計算書には、屋内火災保有耐火時間や、当該屋内火災保有耐火時間の計算に用いた各種データが含まれている。これらの計算書に示された各種データは、3次元モデルデータから抽出したデータに基づくものである。このように、構造物の3次元モデルデータと計算書との間でデータ連携が行われているため、両者の間の整合性の確認作業を軽減させることができる。
【0089】
また、性能検証システム20は、BIMモデル14に基づいて作成した図面に、計算ステップでの計算結果(例えば火災継続時間や火災保有耐火時間)に関する情報を重畳させた図面を出力する(図10図11参照)。これにより、BIMモデル14と計算結果と間の整合性の確認作業が容易になる。
【0090】
また、性能検証システム20は、抽出ステップにおいてBIMモデル14から一次データを抽出した後、一次データを条件式に入力可能な二次データに変換する前処理ステップを行う(図3のS04参照)。これにより、条件式に入力可能なパラメータと同義のデータがBIMモデル14に含まれていなくても、前処理ステップによって、条件式に入力するデータを補間することができる。
【0091】
また、図6に示すように一次データと二次データとを対応付けた変換テーブル43が予め用意されており、性能検証システム20は、前述の前処理ステップ(図3のS04参照)において、変換テーブル43に基づいて、BIMモデル14から抽出した一次データを二次データに変換している。このように変換テーブルを用いることによって、条件式に入力する二次データを補間することが可能である。
また、前述の前処理ステップ(図3のS04参照)では、予め用意された変換式に一次データを入力することによって二次データを算出する。例えば、抽出ステップにおいて、BIMモデル14から鋼材の高さH、鋼材の幅B、ウェブ厚t及びフランジ厚tを示す一次データを抽出し、これらの一次データの数値を図7に示す変換式に入力することによって、パラメータ「部材の加熱周長H」を示すデータ(二次データ)を算出する。このように変換式に一次データを入力することによって、条件式に入力する二次データを補間することが可能である。
【0092】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0093】
10 3次元モデルシステム、12 管理制御部、
14 BIMモデル、16 拡張データ、
20 性能検証システム、
21 設定部、22 抽出部、
23 前処理部、24 計算部、25 判定部、
26 チェック表作成部、27 表示部、
30A 第1処理部、30B 第2処理部、
42 参照テーブル、421 共通参照テーブル、422 部材別参照テーブル、
43 変換テーブル、
50 確認画面、52 区画画面、54 データ表示画面、
100 性能検証装置

図1
図2
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図6
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図11